説明

銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法

【課題】抽伸加工あるいは転造加工で成形性に優れ、焼鈍後に残油量が少ない銅管加工用潤滑油を提供すること
【解決手段】銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油である。添加剤として、アルコールを5〜40%(重量%、以下同じ)含有する。残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量100以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有する。動粘度が100〜1000cSt(at40℃)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機器、冷凍・冷蔵機器の熱交換等に使用される銅あるいは銅合金からなる銅管の製造に使用される銅管加工用潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ルームエアコン等の空調機、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍機の熱交換器には伝熱管が使用されている。伝熱管には、伝熱性、加工性、耐食性に優れた銅及び銅合金(以下、銅と称する。)管が用いられている。該銅管は、内面及び外面に潤滑油を供して、所定の寸法、内面形状になるよう抽伸あるいは転造し、数1000mに及ぶ銅管を整列巻きにしたレベルワウンドコイルにする。その後、所定の調質になるよう必要に応じて焼鈍処理が施される。実際、焼鈍処理を行う場合には、銅管内を窒素ガスや水素ガスなどの非酸化性ガスで置換した後、約500℃で約1時間焼鈍される。
【0003】
従来の銅管の抽伸あるいは転造加工では、工具の焼き付き防止や所定の溝形状を形成し易くするために、高粘度の高分子合成炭化水素に脂肪酸エステルあるいはアルコール、ポリオールエステル等の油性剤が添加された潤滑油が、銅管内外面に供給される。抽伸及び転造加工後においては、銅管内面に潤滑油が付着した状態になるが、その付着潤滑油は、非酸化性ガス内での焼鈍により、気化あるいは熱分解する。それら気化物質は、体積膨張だけでは銅管外に放出されず、銅管冷却時に凝集し、銅管内面に油分として残留する。その量は、潤滑油の種類、置換ガス、あるいは銅管の長さ、コイルの大きさ、さらには、焼鈍速度、冷却速度によって左右される。
【0004】
銅管に残油が多いと、機器組み立て時に行われるろう付け接合において接合不良が生じ易くなる。また、近年のフロン使用規制にともなって、塩素フリーの代替フロン冷媒が使用されるが、それらは、銅管残留油との相溶し難い。その結果、コンタミネーションによりキャピラリー部が閉塞や冷凍機の性能が低下するという問題が生じるため、残油を極力減らすべく、その対策が検討されている。
【0005】
例えば、加工後の銅管内面を洗浄する方法や、銅管を真空中で焼鈍する方法(特許文献1)、焼鈍時にDXガスを通しながら焼鈍し、気化あるいは熱分解気化した物質を銅管外に排出し、残留油を最小限にする方法(特許文献2)等が報告されている。
しかしながら、これらの従来技術では、生産性の低下、莫大な設備費や設備設置スペースが必要となる欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開平1−287258号公報
【特許文献2】特開平6−170348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、抽伸加工あるいは転造加工での成形性に優れ、焼鈍後の残油量が少ない銅管加工用潤滑油を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油であって、
添加剤として、アルコールを5〜40%(重量%、以下同じ)含有し、
残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有し、
動粘度が100〜1000cSt(at40℃)であることを特徴とする銅管加工用潤滑油にある(請求項1)。
【0009】
本発明の銅管加工用潤滑油は、添加剤と基油の成分を選定し、動粘度を調整することにより、成形性に優れ、焼鈍後の残油量が少ない銅管加工用潤滑油を得ることができる。
すなわち、上記添加剤の必須成分として、アルコールを5〜40%含有する。これにより、成形性を向上させることができる。
また、残部に、基油としては、平均分子量30000以上のポリイソブチレン1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを組み合わせて含有し、その組合せの割合を調整することによって、潤滑油全体の動粘度が100〜1000cStとなるように調整する。これにより、優れた成形性を維持し、かつ焼鈍後の残油量を少なくすることができる。
【0010】
第2の発明は、銅又は銅合金からなる銅管の少なくとも内面に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の上記銅管加工用潤滑油を供給し、抽伸加工あるいは転造加工を施すことを特徴とする銅管の製造方法にある(請求項7)。
本発明の銅管の製造方法は、抽伸加工あるいは転造加工において、第1の発明の上記銅管加工油を用いることで、優れた内面形状を有し、焼鈍時に焼き付きや外面変色がなく、成形後に焼鈍した場合の焼鈍後の残油量が少ない銅管を作製することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明の銅管加工用潤滑油においては、上述したように、添加剤として、アルコールを5〜40%(重量%、以下同じ)含有する。
上記アルコールの含有量が5%未満の場合には、潤滑不足となり、適正なリップルフィン形状が得られないという問題があり、一方、上記アルコールの含有量が40%を超える場合には、焼鈍後の残油量が多くなるという問題がある。
【0012】
また、上記第1の発明においては、残部に、基油として、分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有する。
上記平均分子量30000以上のポリイソブチレンが含まれない場合には、摩擦面へ導入される油量が少なく潤滑不足となるという問題があり、一方、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンが含まれない場合には、高粘度となり、取り扱いが困難で作業性を悪化させるという問題がある。
【0013】
また、上記平均分子量30000以上のポリイソブチレンとしては、工業的に入手することが可能な平均分子量30000〜平均分子量60000のポリイソブチレンであることが好ましい。
また、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンとしては、引火の危険性や、潤滑油の臭気を考慮すると、平均分子量80〜平均分子量400のイソパラフィン又はポリイソブチレンであることが好ましい。
【0014】
また、上記銅管加工用潤滑油は、動粘度が100〜1000cSt(at40℃)である。
上記動粘度が100cSt未満の場合には、潤滑性が不足するという問題があり、一方、上記動粘度が1000cStを超える場合には、動粘度が増加し取り扱いが困難になるという問題や、焼鈍後の残油が増加するという問題がある。
上記動粘度は、JIS K 2283の「原油及び石油製品の動粘度試験方法」に準拠して40℃における動粘度を測定し、測定器具としては、JIS K 2839の「石油類試験用ガラス器具」のキャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定することができる。
また、上記基油の含有量は、基本的に、上記添加剤の含有量が確保できる、且つ、動粘度が上記特定の値となる範囲とし、潤滑不足を防ぎ、適正な成形性を確保する。
【0015】
なお、添加剤として上記アルコールのみを含有する場合、上記基油の合計含有量は、60〜95%の範囲となる。しかし、後述する添加剤をさらに加えた場合には、添加剤の含有量に応じて、添加剤と基油との合計が100%となるように、基油の合計含有量が変化する。
また、本発明の銅管加工用潤滑油は、上記基油と添加剤とにより100%になるものであるが、実使用に際して、上述の優れた効果を安定的に操業するために、上記100%の外に、必要に応じて、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の一種又は二種以上をさらに添加することも勿論可能である。
【0016】
上記酸化防止剤としては、例えば、DBPC(2,6−ジターシャリーブチル−P−クレゾール)等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミン等の芳香族アミン、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの部分エステル、リン酸エステル及びその誘導体等が挙げられる。
上記錆止め剤としては、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等が挙げられる。
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系のものが挙げられる。
【0017】
上記アルコールは、下記の一般式(1)で表されることが好ましい(請求項2)。
【化3】

(但し、R1は、炭素数9〜18の炭化水素基である。)
上記アルコールの上記炭化水素基R1の炭素数が8以下の場合には、潤滑性が劣るという問題があり、一方、上記R1の炭素数が19以上の場合には、潤滑油が残留し易くなるという問題がある。そのため、上記アルコールのアルキル基の炭素数は12〜15であることがより好ましい。
また、上記炭化水素基としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。より好ましくは、上記アルコールの炭化水素基R1は、アルキル基又はアルケニル基である。
【0018】
また、上記銅管加工用潤滑油は、添加剤として、さらに、下記の一般式(2)で表されるリン酸エステルを1〜20%含有することが好ましい(請求項3)。
【化4】

(但し、R2は、炭素数が12〜18の炭化水素基であり、R3及びR4は炭素数が1〜4の炭化水素基である。)
上記特定のリン酸エステルの含有量が1%未満の場合には、連続加工した場合に、成形性が悪くなるという問題があり、一方、上記含有量が20%を超える場合には、焼鈍後の残油量が増加するという問題がある。
【0019】
上記特定のリン酸エステルの炭化水素基R2の炭素数が11以下である場合には、潤滑性が劣るという問題があり、一方、上記炭化水素基R2の炭素数が19以上の場合には、残油しやすくなるという問題がある。
上記特定のリン酸エステルの上記炭化水素基R3及び上記炭化水素基R4の炭素数が5以上の場合には、焼鈍後に残油量が増加するおそれがある。
また、上記炭化水素基としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。より好ましくは、上記R2はアルキル基又はアルケニル基であり、上記炭化水素基R3及びR4はアルキル基である。
【0020】
上記特定のリン酸エステルの具体例としては、例えば、ドデシルフォスフォン酸ジメチルエステル、テトラデシルフォスフォン酸ジメチルエステル、オレイルフォスフォン酸ジメチルエステル、ドデシルフォスフォン酸ジエチルエステル、ドデシルフォスフォン酸ジブチルエステル、テトラデシルフォスフォン酸ジエチルエステル等がある。
【0021】
上記銅管加工用潤滑油は、添加剤として、さらに、芳香族炭化水素を1〜10%含有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、成形性をさらに向上させるという効果を得ることができる。
上記芳香族炭化水素の含有量が1%未満である場合には、効果が現れず、一方、上記芳香族炭化水素の含有量が10%を超える場合には、残油量が増加するおそれや、臭気が発生するおそれがある。
【0022】
また、上記銅管加工用潤滑油は、上記銅管の内面を加工する際に該内面に供給される内面加工用であることが好ましい(請求項5)。
銅管の内面に残留した潤滑油を除去することは外面に比べ相当困難である。すなわち、この場合には、残油量が少ないことが重要となるため、特に有効である。上記銅管は、ルームエアコン等の空調機、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍機の熱交換器に用いられる伝熱管として、特に好適に使用することができる。なお、加工の種類を特定することなく、多目的に利用が可能であることは言うまでもない。
【0023】
上記内面加工は、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工であることが好ましい(請求項6)。
上記転造加工は、銅管内にプラグを入れて、例えば、外面から回転ボールで圧下することによって、銅管内面に複雑なリップルフィンを付与する、非常に過酷な加工である。また、内面形状が複雑となる分だけ残油しやすくなる。このような転造加工においても、上記潤滑油は、優れた成形性を有し、焼鈍後の残油量を少なくすることができ、特に有効である。
【0024】
第2の発明の銅管の製造方法において、上記抽伸加工あるいは上記転造加工を施した後に焼鈍を行う場合には、上記抽伸加工あるいは上記転造加工を施した上記銅管の管内雰囲気を非酸化性ガスで置換し、焼鈍を行うことが好ましい(請求項8)。
この場合には、焼鈍後の上記銅管の内面に残留する潤滑油の量の低減に非常に有効である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。なお、これらの実施例は、本発明の1実施様態を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
本例では、本発明の実施例及び比較例として、総重量500kgのリン脱銅管を、表1及び表2に示す組成の潤滑油(試料E1〜試料E17、試料C1〜試料C12)を使用して転造加工を行い、銅管外径φ7.00mm、銅管内径φ6.35mm、肉厚0.25mm、長さ約5000mとし、切断及び整列巻取りして重量250kgのレベルワウンドコイル状の銅管を作製した。
なお、転造加工では、フィン高さ0.24mm、フィン頂角10°、リード角30°の条件で加工を行うことにより、図1に示すごとく、内側に突出した多数のリップルフィンを有する断面形状に成形した。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
表1及び表2の記号を説明する。
A1:平均分子量60000のポリイソブチレン
A2:平均分子量30000のポリイソブチレン
A3:平均分子量3700のポリイソブチレン
B1:平均分子量120のイソパラフィン
B2:平均分子量270のポリイソブチレン
C1:ヘキサデシルアルコール
C2:ドデシルアルコール
C3:オクチルアルコール
C4:エイコシルアルコール
D1:ドデシルフォスフォン酸ジメチルエステル
D2:テトラデシルフォスフォン酸ジメチルエステル
D3:オレイルフォスフォン酸ジメチルエステル
【0030】
得られた各試料を用い、以下の評価試験を行った。結果を表3及び表4に示す。
<リップルフィン高さ>
リップルフィン高さH(図1)は、転造加工直後の銅管長手方向における、転造開始より100mの位置の断面を、拡大鏡を用いて観察し、存在する全てのリップルフィンの高さを測定し、それらの平均値を求めることにより評価した。
(評価基準)
5:0.235mm以上
4:0.230mm以上0.235mm未満
3:0.225mm以上0.230mm未満
2:0.220mm以上0.225mm未満
1:0.220mm未満
【0031】
<リップルフィン高さ維持性>
リップルフィン高さ維持性は、転造直後の銅管長手における転造開始より100m、及び転造終了100m手前の2ヵ所の位置での、リップルフィン高さを、上記リップフィン高さHと同様にして測定し、両測定値の差分より評価した。
(評価基準)
5:0.005mm以下
4:0.005mm超え0.010mm以下
3:0.010mm超え0.015mm以下
2:0.015mm超え0.020mm以下
1:0.020mm超え
【0032】
次に、上記レベルワウンドコイル状の銅管の銅管内雰囲気を、水素混合ガス(H2:5%、N2:95%)により置換した後、量産用のローラーハース型焼鈍炉を用いて、銅管の両端を封止することなく、DXガス雰囲気中において軟質材の焼鈍条件に従って530℃で1時間焼鈍処理を施した。
また、焼鈍処理後の各試料について以下の評価試験を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0033】
<残油量>
残油量は、焼鈍処理後、上記レベルワウンドコイル上面に相当する銅管をコイルの入り口端から出側端までの各段について1m長さで残油測定用銅管を採取し、有機溶剤で抽出洗浄し、赤外分光分析法によって3000〜2800cm-1における赤外吸光度を測定した。事前に作成しておいた検量線を元に、銅管内に残留する焼鈍残油量を求め、評価した。
(評価基準)
5:0.03mg/m以下
4:0.03mg/m超え0.05mg/m以下
3:0.05mg/m超え0.07mg/m以下
2:0.07mg/m超え0.10mg/m以下
1:0.10mg/m超え
【0034】
<相溶性>
相溶性は、JIS K 2211「冷凍機油」の付属書2「冷媒との化学安定性試験方法(シールドチューブテスト)」に準拠して、シールドチューブテストを実施し、得られた焼鈍残油が冷凍システムに与える影響を調査することで評価した。
上記シールドチューブテストは以下のように行った。内径がφ10mmであるガラス管に10mLの冷媒と、1mLの試験油と、太さが1.6mm、長さ50mmである金属線からなる触媒とを入れた後、ガラス管の上部を溶融して密閉した。次に、ガラス管を170℃の温度で14日間保持した後に、液層の状態変化を観察し、相溶性を評価した。
(評価基準)
○:変化がない場合
×:触媒の劣化、液層の変色、白濁もしくは析出物が存在する場合
【0035】
本実施例に置いて、試料としては、焼鈍残油0.01gと、冷凍機油1.0gとを混合したものを使用し、触媒としては、鉄、銅、及びアルミニウムの線材を用いた。また、冷媒としては、R410Aを使用し、冷凍機油としてはエステル油を用いた。
リップルフィン高さ、リップルフィン高さ維持性、残油性とも、評価1以下を不合格、評価2以上を合格、相溶性は評価×を不合格、評価○を合格とした。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
表3より知られるごとく、本発明の実施例である試料E1〜試料E17は、リップルフィン高さ、リップルフィン高さ維持性、残油量、及び相溶性のいずれの項目においても、良好な結果を示した。
【0039】
また、試料E11〜試料E14、及び試料E17はリン酸エステルを含有しているため、過酷な加工条件下でも優れた成形性を有することができ、リップルフィン高さ維持性がより優れている。
また、試料E15〜試料E17は芳香族炭化水素を含有しているため、さらに成形性を向上することができ、リップルフィン高さがより優れている。
【0040】
また、試料E1及び試料E2はアルコールのアルキル基の炭素数が本発明の好ましい範囲にあり、優れた潤滑性を有するため、アルコールのアルキル基の炭素数が本発明の好ましい範囲の下限を下回る試料E9と比較すると、リップルフィン高さがより優れている。
また、試料E1及び試料E2はアルコールのアルキル基の炭素数が本発明の好ましい範囲にあり、残油量を抑制することができるため、アルコールのアルキル基の炭素数が本発明の好ましい範囲の下限を下回る試料E10と比較すると、残油量がより優れている。
【0041】
表4より知られるごとく、本発明の比較例である試料C1及び試料C2は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンが含有されていないため、潤滑性が劣り、成形性が低下したため、リップルフィン高さが不合格であった。
【0042】
また、本発明の比較例である試料C3は、潤滑油全体の動粘度が本発明の下限を下回っているため、潤滑性が劣り、成形性が低下し、リップルフィン高さ及びリップルフィン高さ維持性が不合格であった。
【0043】
また、本発明の比較例である試料C4は、潤滑油全体の動粘度が本発明の上限を上回っており、動粘度が高いため、残油量、及びリップルフィン高さが不合格であった。
【0044】
また、本発明の比較例である試料C5、試料C7、試料C9、及び試料C11は、アルコールの含有量が本発明の上限を上回るため、焼鈍後の銅管内残油量が多くなり、冷媒への不溶解生成物が増加するため、残油量及び相溶性が不合格であった。
【0045】
また、本発明の比較例である試料C6、試料C8、試料C10、試料C12は、アルコールの含有量が本発明の下限を下回るため、潤滑性が劣り成形性が低下し、リップルフィン高さが不合格であった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】転造加工後の銅管の断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 銅管
2 リップルフィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油であって、
添加剤として、アルコールを5〜40%(重量%、以下同じ)含有し、
残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有し、
動粘度が100〜1000cSt(at40℃)であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項2】
請求項1において、上記アルコールは、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【化1】

(但し、R1は、炭素数9〜18の炭化水素基である。)
【請求項3】
請求項1または2において、添加剤として、さらに、下記の一般式(2)で表されるリン酸エステルを1〜20%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【化2】

(但し、R2は、炭素数が12〜18の炭化水素基であり、R3及びR4は炭素数が1〜4の炭化水素基である。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、添加剤として、さらに、芳香族炭化水素を1〜10%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記銅管加工用潤滑油は、上記銅管の内面を加工する際に該内面に供給される内面加工用であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項6】
請求項5において、上記内面加工は、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項7】
銅又は銅合金からなる銅管の少なくとも内面に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の上記銅管加工用潤滑油を供給し、抽伸加工あるいは転造加工を施すことを特徴とする銅管の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、上記抽伸加工あるいは上記転造加工を施した上記銅管の管内雰囲気を非酸化性ガスで置換し、焼鈍を行うことを特徴とする銅管の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−154053(P2007−154053A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351753(P2005−351753)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】