説明

銅粒子含有水の処理方法及び装置

【課題】銅粒子含有水中の銅粒子を効率的に沈降させて固液分離することにより銅を回収すると共に、放流可能な良好な水質の処理水を得る。
【解決手段】銅粒子含有水に銅イオンを添加混合し、pHを8〜10に調整して水酸化銅のフロックを生成させるとともに、このフロック内に銅粒子を取り込ませ、次いで固液分離する銅粒子含有水の処理方法。固液分離は、浮上濾材層を有する濾過装置を用いて行うのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅粒子含有水中の銅粒子を効率的に除去する銅粒子含有水の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銅は有価金属であるため、これを多量に含有する排水から銅を除去して銅原料として回収利用されている。例えば、銅を銅イオンとして含む排水の処理方法としては、排水にアルカリを添加して銅を水酸化銅として不溶化させて固液分離する方法があり、特許第3593726号公報には、硫酸が共存する銅含有排水にアルカリを添加して銅不溶化物を固液分離する方法が提案されている。
【0003】
一方、銅を銅イオンとしてではなく、固体の銅粒子として含む排水であれば、これを固液分離処理することにより銅粒子を回収することが可能であると考えられる。
【0004】
しかし、銅製品の研磨工程等から排出される銅粒子含有水は、粒径0.1〜10μm程度の微細な銅粒子から粒径10〜100μm程度の比較的粗大な銅粒子まで、様々な粒径の銅粒子を多量に含むものであり、そのままでは、長時間静置しても銅粒子は殆ど沈降しない。
【0005】
この銅粒子含有水中の銅粒子の難沈降性は、固液分離に先立ち、銅粒子含有水に高分子凝集剤を添加して凝集処理を行っても殆ど変わることはない。しかも、長時間の沈降分離によりある程度の銅粒子を分離除去しても、分離水中にはなお微細な銅粒子が含まれるため、これをそのまま放流することができないという問題もあった。
【特許文献1】特許第3593726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、銅粒子含有水中の銅粒子を効率的に沈降させて固液分離することにより銅を回収すると共に、放流可能な良好な水質の処理水を得ることができる銅粒子含有水の処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)の銅粒子含有水の処理方法は、銅粒子含有水に銅イオンを添加混合し、pHを8〜10に調整して水酸化銅のフロックを生成させるとともに、このフロック内に銅粒子を取り込ませ、次いで固液分離することを特徴とする。
【0008】
請求項2の銅粒子含有水の処理方法は、請求項1において、浮上濾材層を有する濾過装置を用いて前記固液分離を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項3の銅粒子含有水の処理方法は、請求項2において、前記濾過装置が、筒軸方向を上下方向とした筒形の濾過塔内に浮上濾材による濾過層が形成された浮上濾過装置であって、該濾過層の下部に原水を旋回方向に導入して該濾過層下部に旋回流動を生じさせる原水導入配管と、該濾過層下部から該浮上濾材の一部を取り出し再度該濾過層下部に導入する濾材循環手段と、該濾過塔の底部から浮上濾材含有沈降物が導入され該浮上濾材含有沈降物から浮上濾材を分離するための沈降物受入槽と、該沈降物受入槽内で固形分が分離された浮上濾材を前記原水導入配管に導く浮上濾材返送手段と、を備えてなり、該浮上濾材返送手段は、前記原水導入配管に設けられたエゼクタ式吸引手段を有し、該エゼクタ式吸引手段によって該沈降物受入槽から浮上濾材を吸引して該原水導入配管に返送するものであることを特徴とする。
【0010】
本発明(請求項4)の銅粒子含有水の処理装置は、銅粒子含有水に銅イオンを添加混合する混合手段と、該混合手段で得られた混合水をpHを8〜10に調整して水酸化銅のフロックを生成させるとともに、このフロック内に銅粒子を取り込ませるpH調整手段と、該pH調整手段からの水を固液分離する手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5の銅粒子含有水の処理装置は、請求項4において、前記固液分離手段が、浮上濾材層を有する濾過装置であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の銅粒子含有水の処理装置は、請求項5において、前記濾過装置が、筒軸方向を上下方向とした筒形の濾過塔内に浮上濾材による濾過層が形成された浮上濾過装置であって、該濾過層の下部に原水を旋回方向に導入して該濾過層下部に旋回流動を生じさせる原水導入配管と、該濾過層下部から該浮上濾材の一部を取り出し再度該濾過層下部に導入する濾材循環手段と、該濾過塔の底部から浮上濾材含有沈降物が導入され該浮上濾材含有沈降物から浮上濾材を分離するための沈降物受入槽と、該沈降物受入槽内で固形分が分離された浮上濾材を前記原水導入配管に導く浮上濾材返送手段と、を備えてなり、該浮上濾材返送手段は、前記原水導入配管に設けられたエゼクタ式吸引手段を有し、該エゼクタ式吸引手段によって該沈降物受入槽から浮上濾材を吸引して該原水導入配管に返送するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、銅粒子含有水中の銅粒子を銅イオンを不溶化させて生成させた水酸化銅(Cu(OH))のフロック内に取り込ませることにより、良好な共沈作用で円滑に沈降させることができる。このため、銅粒子の沈降性の悪い銅粒子含有水であっても、効率的に固液分離処理して銅を回収すると共に、そのままで、或いは必要に応じて軽微な後処理を施した後、放流可能な良好な水質の処理水を得ることができる。
【0014】
なお、銅イオンではなく、鉄イオン(例えば、塩化第二鉄)、或いは鉄イオンとカオリン等の粘土鉱物を添加してアルカリ性にpH調整しても銅粒子を水酸化鉄のフロックに取り込んで固液分離することが可能であるが、この場合には、回収された汚泥は、銅と鉄、或いは更にカオリンとを含むものとなり、銅の回収再利用には不利である。
【0015】
本発明によれば、銅粒子を水酸化銅のフロック内に取り込んで効率的に沈降させることができるが、なお、その沈降性は十分ではなく、浮上し易いフロックも存在する。従って、本発明では、固液分離は浮上濾材層を有する濾過装置を用いて行い、沈降し易いフロックを沈降分離し、浮上し易いフロックは浮上濾材層で捕捉するようにすることが好ましい(請求項2,5)。
【0016】
そして、この浮上濾材層を有する濾過装置としては、筒軸方向を上下方向とした筒形の濾過塔内に浮上濾材による濾過層が形成された浮上濾過装置において、該濾過層の下部に原水を旋回方向に導入して該濾過層下部に旋回流動を生じさせる原水導入配管と、該濾過層下部から該浮上濾材の一部を取り出し再度該濾過層下部に導入する濾材循環手段と、該濾過塔の底部から浮上濾材含有沈降物が導入され該浮上濾材含有沈降物から浮上濾材を分離するための沈降物受入槽と、該沈降物受入槽内で固形分が分離された浮上濾材を前記原水導入配管に導く浮上濾材返送手段とを備えてなり、該浮上濾材返送手段は、前記原水導入配管に設けられたエゼクタ式吸引手段を有し、該エゼクタ式吸引手段によって該沈降物受入槽から浮上濾材を吸引して該原水導入配管に返送するものである浮上濾過装置が好ましく(請求項3,6)、この浮上濾過装置であれば、次のような効果のもとに効率的な固液分離を行える。
【0017】
(1) 浮上濾材による濾過層の下部が旋回流動するので、濾過層の下面部が懸濁物質で目詰りしにくい。そのため、洗浄頻度を少なくしても低圧損で濾過運転を継続することができる。また、浮上濾材として粒度の小さいものを用いても、目詰りによる圧損の増大が十分に抑制される。
(2) 濾過運転を行っているときに、濾過層の下部から該浮上濾材の一部を取り出し再度該濾過層下部に導入するが、この濾過層下部に再導入される濾材が濾過層に衝突して濾過層下部を撹乱させ、旋回流動層の形成と濾過層下部の更新が促進される。また、濾材の衝突により濾材に付着している付着物が剥離するので、濾過層の目詰りが抑制される。
(3) 濾過運転を行っていると、浮上濾材に固形分が付着して一部の浮上濾材が濾過塔の底部に沈降する。この浮上濾材含有沈降物は、濾過塔から沈降物受入槽に導入され、この沈降物受入槽内において浮上濾材と付着固形分とが分離される。浮上濾材は、この沈降物受入槽内において浮上し、原水導入配管を介して濾過塔に戻される。
(4) 原水導入配管にエゼクタ式吸引手段を設け、このエゼクタ式吸引手段によって沈降物受入槽内の浮上濾材を吸引して原水導入配管に導くようにしているので、浮上濾材が沈降物受入槽から原水導入配管へスムーズに移送される。このため、沈降物受入槽内に浮上濾材が残留することが防止される。
【0018】
なお、この浮上濾過装置の浮上性濾材は、比較的高比重かつ大粒径の大粒径濾材と比較的低比重かつ小粒径の小粒径濾材とを含んでおり、小粒径濾材により濾過層の上部側が構成され、大粒径濾材により濾過層の下部側が構成されており、濾過操作時に原水が大粒径濾材よりなる濾過層の上下方向の途中部分に導入され、これにより、濾過操作時には、濾過層には上から順に小粒径濾材よりなる固定層、大粒径濾材よりなる固定層及び大粒径濾材よりなる流動層が形成されるものであることが好ましく、このような浮上濾過装置によると、濾過層の下部が大粒径濾材よりなる流動層となっていることから、濾過層の目詰りを長期にわたって抑制することができる。また、濾過層の上部が小粒径濾材よりなるため、純度の高い濾過処理水を得ることができる。
【0019】
また、この場合においては、沈降物受入槽内に、大粒径濾材よりも開口が小さいフィルタが設けられ、フィルタ通過物を沈降物受入槽から排出するものであることが好ましく、このようにすることで、沈降物受入槽内に設けられたフィルタにより、濾材の流出が防止される。このフィルタの開口が比較的大きいので、フィルタの目詰りも抑制される。
【0020】
更に、この場合において、沈降物受入槽内には、フィルタによって区画された上室及び下室が設けられており、フィルタの下側に気体を供給する手段が設けられていることが好ましく、このようにすることで、フィルタの下側に空気等の気体を導入することにより、固形分が付着した浮上濾材が該沈降物受入槽内で撹拌され、付着固形分が浮上濾材から効率良く分離される。また、沈降物受入槽内で固まった汚泥がほぐれて細かくなり、フィルタを通して排出できるようになる。
【0021】
更に、この場合において、沈降物移送用の弁を開くことにより濾過塔内の沈降物を沈降物受入槽に流入させることが好ましい。濾過塔底部においても、比較的高比重且つ大粒径の濾材が比較的低比重且つ小粒径の濾材の下側に沈積しているので、弁を開いたときに先に大粒径の濾材が沈降物受入槽内に流入し、後から小粒径の濾材が流入してくる。そのため、沈降物受入槽内のフィルタの開口が小粒径濾材の粒径よりも大きくても、小粒径濾材はフィルタを殆ど通過しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の銅粒子含有水の処理方法及び装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
[銅粒子含有水]
本発明において、処理対象となる銅粒子含有水は、銅製品の研磨工程、銅粒子を原料として製品に加工する工程等から排出される銅粒子含有水であって、このような銅粒子含有水は、一般に銅粒子をSS濃度として10〜1000mg/L程度含み、その他は、ほぼ純水であるpH5〜8程度の排水である。このような銅粒子含有水中の銅粒子は通常酸化銅(CuO)の形態で存在しており、従って排水は茶褐色を呈している。
【0024】
本発明は、このような銅粒子含有水のうち、特に銅粒子の粒径分布が広く、沈殿分離するには時間がかかりすぎ、ふるいで分離するには、適切なふるいがない場合に有効である。
【0025】
[銅イオン]
銅粒子含有水に添加する銅イオンとしては、特に制限はないが、硫酸銅、塩化第二銅、硝酸銅、炭酸銅等の銅化合物由来のものが用いられる。これらは、通常5〜25重量%水溶液として銅粒子含有水に添加される。また、銅イオン供給源として、銅メッキ工程、銅製品酸洗浄工程等から排出される銅イオン含有排水を用いることもできる。銅イオンは各種の銅化合物や排水由来のものを1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0026】
銅イオンの添加量は、銅粒子含有水中の銅粒子を十分な共沈作用で沈降させうる量であれば良く、銅粒子含有水中の銅粒子の量やその沈降性(粒径等)によっても異なるが、通常銅粒子含有水中の銅粒子の銅換算量に対して添加する銅イオン量が0.1〜5重量倍、特に0.5〜2重量倍程度となる量であることが好ましい。
【0027】
[pH調整]
銅粒子含有水に銅イオンを添加して混合した後は、必要に応じてアルカリ等のpH調整剤を添加してpH8〜10、好ましくはpH9〜10に調整して水酸化銅のフロックを生成させると共に、フロック内に銅粒子を取り込む。ここで、生成したフロック内に十分に安定に銅粒子を取り込ませるために、アルカリの添加に先立ち、銅粒子含有水と添加した銅イオン(銅イオン含有水)とを十分に撹拌混合することが好ましい。
【0028】
前述の如く、銅粒子含有水は通常pH5〜8程度の中性排水であり、これに銅イオンを添加した後の混合液もpH5〜8程度であるため、通常pH調整剤としては、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリが用いられる。ここで、調整pHが低過ぎると、水中の銅イオンを水酸化銅として十分にフロック化することができず、高過ぎてもフロックの生成量には大差はなくアルカリ添加量が増え不経済であると共に、処理水の放流のために酸を添加してpH調整を行う必要が生じ好ましくない。
【0029】
[凝集処理]
銅粒子含有水に銅イオンを添加してpH8〜10に調整した後は、生成したフロックを固液分離するが、固液分離に先立ち凝集剤を添加して凝集処理を行うことが好ましい。
【0030】
この凝集処理に用いる凝集剤としては有機高分子凝集剤、特にポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドの部分加水分解物等が好ましく、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
凝集剤の添加量は、処理する銅粒子含有水の水質や調整pH等によっても異なるが、通常0.1〜5mg/L程度である。
【0032】
凝集処理により、水中のフロックを1〜10mm程度に増大化させて、固液分離性を高めることができる。
【0033】
[固液分離処理]
前述の如く、銅粒子を取り込んだ水酸化銅フロックは、銅粒子含有水中の銅粒子よりも沈降性が改善されるが、なお、更に、沈降性の悪いものも混在しているため、本発明ではこのようなフロックの固液分離は、浮上濾材層を有する濾過装置、好ましくは後述の図2,3に示す浮上濾過装置を用いて行うことが好ましい。
【0034】
なお、このような浮上濾過装置を用いて固液分離を行う場合、この通水LVが大き過ぎるとフロックが沈降せずにその大部分が浮上濾材層に捕捉されることにより浮上濾材層の差圧が急速に上昇し、濾過不能になるおそれがある。また、浮上濾材層に捕捉されたフロック自体が濾材機能を本来有しているが、通水LVが大き過ぎると、フロックがこわれて、SSの捕捉性が悪くなり、処理水水質が低下すると共に濾過塔の下部へフロックが沈降しにくくなるため、分離汚泥の濃度も低いものとなる。従って、通水LVは25m/hr以下であることが好ましい。濾過効率の面からは、通水LVは7m/hr以上、特に10〜20m/hrとすることが好ましい。
【0035】
ただし、固液分離は、浮上濾材層を有する濾過装置に限らず、浮上分離装置、沈殿槽と固定濾過層を有する濾過装置とを組合せたもの等を用いて行うこともできる。
【0036】
固液分離で得られた汚泥は、フィルタープレス、スクリュープレス、ベルトプレス等の脱水機で脱水処理された後、銅の回収工程に供される。一方、分離水は必要に応じて更にpH調整等の後処理を施した後、放流、又は現場作業用水等の工業用水として回収される。
【0037】
[処理フロー]
図1に本発明の実施に好適な処理フローの一例を示す。
【0038】
原水の銅粒子含有水は混合槽61に導入され、銅イオン、例えば硫酸銅含有排水や銅化合物水溶液等が添加され5〜10分程度撹拌混合される。混合槽61からの混合水は、pH調整槽62に導入され、NaOH等のアルカリが添加され、pH8〜10、好ましくは9〜10に調整される。このpH調整槽62では、5〜15分程度の撹拌混合を行うのが好ましい。
【0039】
pH調整槽62からのpH調整水は高分子凝集剤が添加された後、濾過装置63で固液分離され、分離水は処理水槽64を経て系外へ排出され放流される。
【0040】
一方、分離汚泥は、汚泥槽65を経て脱水機66で脱水処理され、脱水ケーキは系外へ排出され銅回収工程へ送給される。
【0041】
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示の態様に限定されるものではない。
【0042】
例えば、pH調整槽62と濾過装置63との間に凝集槽を設けても良く、また、種晶作用を得るために、濾過装置63で分離された汚泥の一部をpH調整槽62に返送しても良く、また、この汚泥をアルカリと混合してpH調整槽62に添加しても良い。
【0043】
[浮上濾材層を有する濾過装置]
以下に本発明におけるフロックの固液分離手段として好適な浮上濾材層を有する濾過装置について、図2,3を参照して説明する。
【0044】
図2は本発明におけるフロックの固液分離に用いる濾過装置として好適な浮上濾過装置の一例を示す系統図であり、図3はその濾過塔の水平断面図である。
【0045】
この浮上濾過装置は、原水槽1内の原水を配管2、バルブV、ポンプP、配管3、バルブV、配管4を介して濾過塔10内に導入し、浮上性濾材よりなる濾過層13によって濾過し、集水管14及び配管30より濾過処理水として取り出し、この濾過処理水をバルブV及び配管31を介して濾過水槽33に導くようにしたものである。
【0046】
なお、濾過水槽33内の水を配管2に導くためにバルブVを備えた配管5が配管2に合流しており、また、配管3から分岐した配管6がバルブV及び配管8を介して濾過塔10の頂部近傍に接続されている。
【0047】
この濾過塔10は、上端部及び下端部付近を除いて円筒形状であり、筒軸方向を上下方向にして設置されている。この濾過塔10内の最上部には集水管14が設けられている。また、濾過塔10内の上部には、浮上性濾材よりなる濾過層13が形成されている。この濾過層13は、小粒径濾材よりなる濾過層(以下、「小粒径層」と称することがある。)11と、その下側の大粒径濾材よりなる濾過層(以下、「大粒径層」と称することがある。)12とからなる。
【0048】
大粒径濾材及び小粒径濾材の比重は原水の比重と同等以下であり、確実に浮上するように比重は原水の比重よりも所要程度小さいことが好ましい。小粒径濾材の比重は大粒径濾材の比重よりも小さく、後述の通り、逆洗後に小粒径濾材の方が大粒径濾材よりも先に浮上するように、小粒径濾材の比重が大粒径濾材の比重よりも所要程度小さいものとなっている。例えば、小粒径濾材の比重が0.08〜0.30、大粒径濾材の比重が0.50〜0.95であることが好ましく、特に小粒径濾材の比重が0.10〜0.15、大粒径濾材の比重が0.85〜0.95であることが好ましい。
【0049】
これら大粒径濾材及び小粒径濾材の粒径は、原水中の懸濁物質の粒径や要求処理水水質に応じて適宜選択されるが、通常の場合、大粒径濾材は0.7〜2.5mmとりわけ1.0〜1.5mm、小粒径濾材は0.1〜0.6mmとりわけ0.3〜0.5mm程度のものが好適である。
【0050】
浮上性濾材の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの合成樹脂、無機質発泡体など各種のものを用いることができるが、中でも発泡スチロール等の発泡合成樹脂が好適である。
【0051】
大粒径濾材及び小粒径濾材は、表面に界面活性剤やポリビニルアルコールを担持させる等の表面親水化処理を施すことが好ましい。これにより、後述の逆洗後の静置時に、大粒径濾材と小粒径濾材との凝集が防止され、適切に大粒径層と小粒径層を形成することができる。
【0052】
これら大粒径濾材及び小粒径濾材の充填量は、該濾過層13の下面が配管4の接続部よりも若干下位となるようにする。また、小粒径層11と大粒径層12との界面が配管4の接続部よりも所要距離上位となるようにする。
【0053】
この原水導入用の配管4は、図3に示される通り、それから濾過塔10内に導入される原水の導入方向が円筒形濾過塔10の水平断面において旋回方向となるように接続されており、好ましくは該配管4は円筒形濾過塔10に対し接線方向に接続される。
【0054】
濾過塔10の側面には、濾過層13の下部より若干下方に、浮上性濾材と原水の混合物を取り出すための配管21が接続されている。この配管21は、上記配管2のうち原水ポンプPより下流の位置に接続されている。この配管21にはバルブVが設けられている。
【0055】
前記濾過水取り出し用の配管30には、該配管30内を大気に連通させるための大気開放用バルブVが設けられている。
【0056】
配管30からは配管32が分岐しており、該配管32はバルブVを介して汚泥貯槽60に導かれている。
【0057】
濾過塔10の下部は下端に向かって縮径するテーパ形状となっている。
【0058】
濾過塔10の下端には、沈降した汚泥及び濾材を排出するための配管41が設けられ、この配管41にはバルブVが設けられている。配管41を介して排出された汚泥及び濾材は、沈降物受入槽50に導入される。この沈降物受入槽50内は、略逆円錐形のフィルタ51によって上室52と下室53とに区画されており、汚泥及び濾材は該上室52に導入される。このフィルタ51の開口の大きさは大粒径濾材よりも小さいが小粒径濾材よりも大きいものとなっている。なお、この沈降物受入槽50は、濾過塔10の下端より下の位置に設けられると、沈降物が濾過塔10から沈降物受入槽50に移行し易いので好ましい。
【0059】
沈降物受入槽50の上端は、濾材の流出用の配管54、バルブV10及び配管55を介
して原水導入用配管3に接続されている。この配管55は、該配管3の下流側に向って徐々に配管3に接近するように該配管3に対し斜交している。このため、配管3内をポンプPから水が流れると、配管3と配管55と合流付近に対し配管55内の水がエゼクタ作用により配管3内に吸引されるようになっている。ただし、配管55を配管3に斜交させる代りにエゼクタを配管3に設け、このエゼクタに配管55を接続してもよい。
【0060】
配管54からは、バルブV11付きの配管56が分岐している。
【0061】
上室52内から汚泥を汚泥貯槽60へ排出するように、バルブV12付きの配管57が該沈降物受入槽50内に差し込まれている。この配管57は、フィルタ51の中央部から上方に立ち上げられている。
【0062】
下室53内から汚泥を汚泥貯槽60へ排出するように、バルブV13付きの配管58が沈降物受入槽50の底部に接続されている。
【0063】
この実施の形態では、下室53内に空気を吹き込むように、バルブV14付きの配管59が沈降物受入槽50に接続されている。
【0064】
なお、汚泥貯槽60内の汚泥は、ポンプを有する汚泥取り出し用配管(図示略)を介して汚泥処理工程へ送泥可能とされている。
【0065】
このように構成された浮上濾過装置を用いて浮上濾過運転を行う作動について次に説明する。
【0066】
第1工程:水張り
先ず濾過運転の準備運転として、バルブV,V,V,V,V10を開とし、その他のバルブ(V〜V,V,V11〜V14)を閉として、ポンプPを駆動する。このポンプPを駆動することにより、原水槽1内の原水が配管2,3,4を介して濾過塔10内に導入され、この濾過塔10内の空気がバルブVから放出され、濾過塔10内が満水状態とされる。また、濾過塔10内の水の一部が配管41を介して沈降物受入槽50内に導入され、この沈降物受入槽50内が満水状態とされた後、余剰の原水は配管55を介して配管3に戻される。なお、この沈降物受入槽50への水張りの初期において、バルブV10を閉、バルブV11を開とし、沈降物受入槽50内の空気が配管56から放出されるようにしてもよい。
【0067】
第2工程:濾材撹拌
次に、バルブV,V,V,V,V10を開とし、その他のバルブV,V,V,V,V,V11〜V14を閉とし、ポンプPを作動させる。これにより、濾過塔10内の水が配管3,4,6及び配管21,41,55を介して循環し、濾過層13の濾材全体が撹拌される。
【0068】
第3工程:沈静
次に、ポンプPを停止すると共に、バルブV,V,V10を開とし、それ以外のすべてのバルブを閉とする。これにより、濾過塔10内の水が沈静化し、濾過塔10内に上側の小粒径層11及び下側の大粒径層12よりなる濾過層13が形成される。
【0069】
第4工程:濾材層洗浄
濾過運転を開始するに先立って、濾過層13の洗浄工程を行う。この洗浄工程にあっては、バルブV,V,V,V,V,V10を開、その他のバルブを閉とし、ポンプPを駆動する。これにより、原水槽1内の原水が配管3,4、濾過層13、配管32の
順に流れ、汚泥貯槽60へ排出される。この通水を継続すると、濾過層13の流出水水質が次第に良好になってくるので、流出水水質が規定よりも良好となった時点でこの洗浄工程を終了する。
【0070】
なお、この洗浄運転中には、大粒径層12の下部が配管4からの流入水により旋回流動し、旋回流動層12aを形成する。また、配管21と、配管41、沈降物受入槽50、配管55とを介して濾過塔10内の水の一部が配管3へ吸い出されて循環する。後述の第5工程においても同様である。
【0071】
第5工程:通水
そこで、第4工程の状態からバルブVを閉、バルブVを開とし(即ち、V〜V,V,V,V10を開、その他のバルブを閉とし)、ポンプPを駆動する。これにより、原水槽1内の原水が配管3,4、濾過塔10内の濾過層13、配管30,31の順に流れ、濾過水が濾過水槽33に導入される。
【0072】
即ち、ポンプPを駆動することにより、原水槽1内の原水が配管2,3,4を介して濾過塔10内に旋回方向に導入されると共に、大粒径層12の下部の大粒径濾材の一部が水と共に配管21を介して配管2に導入され、さらにポンプP、配管3を介して循環する。このように、浮上濾過運転中は、この導入された原水及び循環浮上濾材により、大粒径層12の下部に旋回流動層12aが形成される。原水は、この旋回流動層12aを含む大粒径層12及び小粒径層11を通って濾過処理された後、集水管14を通り、配管30,31から濾過水槽33へ送られる。この濾過運転に際し、濾過層13の下部が旋回流動層12aを形成するため、濾過層13の下部での浮上性濾材の目詰りが抑制され、濾過層13の洗浄頻度を著しく少なくしても、低圧損にて連続して長期に亘り濾過運転を続行することができる。濾過層13のうち、目詰りが生じ易い下部は大粒径濾材よりなる流動層12a及び大粒径層12であるため目詰りが防止される。また、濾過層13の上部が小粒径層11となっているため、高精度の濾過が可能であり、これにより、高純度の濾過処理水を得ることができる。
【0073】
上述のように、原水が旋回方向に導入されることにより濾過層13下部に大粒径濾材の旋回流動層12aが形成されるが、この際、原水と共に旋回流動層12aに循環浮上性濾材も導入されるので、濾材が濾過層下表面へ衝突して濾過層下部を撹乱させ、旋回流動層12aの形成と更新を容易にする。また、濾材の衝突は濾材に付着している付着物を剥離させ、目詰りの抑制に寄与する。さらに、大粒径濾材で形成される固定層は旋回流の影響で逆円錐形となるので、最も目詰りの起こりやすい濾過層下面の面積が大きくなる。従って、この浮上濾過装置は、例えばSS1000mg/L以上のSS濃度が非常に高い原水を濾過することも可能である。
【0074】
そして、旋回流動が形成されることにより、濾過層下方の濾過塔10内の水も旋回し、原水に含有されている比較的重質の懸濁物質、旋回流動によって濾材から剥離した濾滓がサイクロン作用によって濾過塔10内中央部付近に集合して沈降しやすい状態になり、濾過塔10の底へ沈降する。濾過塔10の底部に沈降した汚泥は配管41から沈降物受入槽50へ排出される。
【0075】
なお、原水導入用のポンプPを用いて浮上性濾材を循環させる実施例を示したが、濾過塔50の大きさ等の条件によっては、濾材循環専用のポンプを設置し、旋回流動をさらに強く起こすようにしてもよい。
【0076】
浮上濾過運転中に沈降物受入槽50の下部に溜まった汚泥を抜き出す際には、バルブV13を開としてこの汚泥を配管58を介して汚泥貯槽60に抜き出す。
【0077】
上記の如く、濾過運転を長期に亘り継続すると、次第に濾過圧損が増大してくるので、濾過層13の逆洗を行う。
【0078】
この逆洗に先立って、まず前記第3工程のバルブ状態として沈静化させるのが好ましい。これは、濾過層13の下部に混在することがある小粒径濾材をなるべく濾過層13の上側に戻し、次の排泥工程時に小粒径濾材が沈降物受入槽50へ流出しないようにするためである。ただし、この逆洗に先立って沈静化工程は省略されてもよい。
【0079】
第6工程:排泥
ポンプPを停止した状態で、バルブV,V,V13を開、その他のバルブを閉とする。これにより、濾過塔10内の水が配管41、沈降物受入槽50及び配管58を介して汚泥貯槽60へ排出され、濾過塔10及び沈降物受入槽50内に沈積していた汚泥が汚泥貯槽60へ排出される。濾過塔10へは上部からバルブVを介して空気が導入される。
【0080】
第7工程:水張り
次に、バルブV,V,V,V,V10を開、その他のバルブを閉とし、ポンプPを駆動し、濾過水槽33内の濾過水で濾過塔10内を満たす。濾過塔10内の空気はバルブVを介して大気へ放出される。
【0081】
第8工程:逆洗
そこで、バルブV,V,V,V,V10を常開とし、その他のバルブを閉とし、ポンプPを駆動する。これにより、濾過塔10の下部及び底部からそれぞれ配管21及び配管41、沈降物受入槽50、配管55を介して水が抜き出されると共に、この水が配管8を介して濾過塔10の上部に導入され、濾過塔10内の水が循環され、濾過層13が逆洗される。なお、間欠的にバルブV又はV13を開弁させ、逆洗中に水の一部を配管32又は58を介して汚泥貯槽60へ排出する。このように水を汚泥貯槽60へ排出するときには濾過水槽33内の水が配管5,3,6,8を介して濾過塔10へ補充される。
【0082】
バルブVを開閉すると、そのときの衝撃により集水管14も洗浄される。
【0083】
なお、このように濾過塔10内の水を循環させて逆洗する工程にあっては、大粒径濾材及び小粒径濾材は撹拌、混合される。この際、濾材同士が衝突し、濾材に付着した異物が剥離する。特に、濾材には比重の大きい大粒径濾材が含まれており、この大粒径濾材は衝突力が大きいことから、小粒径濾材のみしかない場合に比べて洗浄効果が大幅に向上する。
【0084】
第9工程:フィルタ洗浄
その後、ポンプPを停止すると共にバルブV11,V12,V14を開、その他のバルブを閉とする。また、配管59を介して沈降物受入槽50内に空気を吹き込む。これにより、フィルタ51その他の沈降物受入槽50内部が洗浄される。空気混じりの水は配管57を介して排出される。このとき、沈降物に巻き付かれて小粒径濾材が下室53にまで落ちてしまったとしても、空気の吹き込み効果で沈降物が小粒径濾材から剥れ、この小粒径濾材がフィルタ51を通過して濾過塔10に返送可能となるので、小粒径濾材が汚泥貯槽60に排出される心配がない。なお、沈降物受入槽50に気体を供給する手段としてバルブV14付きの配管59を設けたが、この配管59に代えて又はこの配管59と共に、沈降物受入槽50に振動機を取り付けてもよい。この場合、振動機による効果で沈降物が小粒径濾材から剥れる。
【0085】
第10工程:排泥
その後、バルブV,V,V13を開とし、その他のバルブを閉とする。これにより、濾過塔10内の水が配管41、沈降物受入槽50、配管58を介して汚泥貯槽60へ排出され、濾過塔10及び沈降物受入槽50内の汚泥も汚泥貯槽60へ排出される。
【0086】
その後、好ましくは、上記第6工程〜第10工程の一連の工程を1〜5回繰り返す。
【0087】
その後、第1工程に復帰し、第2工程〜第4工程の各工程を経て第5工程の通水運転に移行し、濾過運転を行う。
【実施例】
【0088】
以下に実験例及び実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0089】
実験例1
銅製品のバフ研磨工程から排出された表1に示す水質の銅粒子含有水を用いて、沈降性を調べる実験を行った。
【0090】
この銅粒子含有水は、茶褐色の粒状銅を含む液体であり、その色より、銅は酸化銅(I)CuOの状態で存在していることがわかる。この銅粒子含有水中の銅粉は長時間静置で沈降するが、銅粒子の粒径がマチマチで沈降しないものは、いつまでも沈降しない。
【0091】
【表1】

【0092】
<No.1,2>
銅イオン供給源として銅盤を硫酸で洗浄する洗浄工程から排出された、上記表1に示す水質の硫酸銅含有排水を添加して処理を行った。
【0093】
硫酸銅含有排水をCu換算添加量として表2に示す量となるように銅粒子含有水に添加して1分撹拌した後、NaOHを添加して表2に示すpHに調整し、3分撹拌した。その後、高分子凝集剤として栗田工業(株)製アニオン系高分子凝集剤「PA−331」を表2に示す量添加し、1分撹拌した後静置して、フロックの9割が沈降するに要する時間を調べ、結果を表2に示した。
【0094】
<No.3>
硫酸銅含有排水の代りに硫酸銅五水和物の1重量%水溶液を用い、その添加量、調整pHを表2に示す通りとした以外は、上記No.1と同様に処理を行い、結果を表2に示した。
【0095】
<No.4>
銅粒子含有水をそのまま静置して沈降時間を調べ、結果を表2に示した。
【0096】
<No.5>
銅粒子含有水に高分子凝集剤を表2に示す量添加するのみで静置して沈降時間を調べ、結果を表2に示した。
【0097】
<No.6,7>
銅粒子含有水に硫酸銅含有排水の代りに塩化第二鉄を表2に示す量添加したこと以外はNo.1と同様に処理を行い、結果を表2に示した。
【0098】
【表2】

【0099】
表2より、銅粒子含有水は沈降性が悪く、そのままでは銅粒子が沈降し得ず、また、高分子凝集剤を添加しても沈降性は改善されないことが分かる(No.4,5)。
【0100】
塩化第二鉄を添加することにより沈降性は改善するが、十分ではなく、また、この場合には分離汚泥中に鉄が混入するという不具合がある(No.6,7)。
【0101】
これに対して、銅イオンを添加することにより沈降性が顕著に改善され1分程度の沈降時間でフロックを沈降させることができることが分かる(No.1〜3)。
【0102】
なお、硫酸銅含有排水と高分子凝集剤を多量に添加したNo.2では、沈降時間は速いが沈降汚泥は水ぶくれ状態であった。これは過剰添加された高分子凝集剤が液中に残留したためと考えられる。
【0103】
実施例1
表1に示す銅粒子含有水と銅イオン供給源としての硫酸銅含有排水と、高分子凝集剤として栗田工業(株)製アニオン系高分子凝集剤「PA−331」を用い、図1に示すフローで処理を行った。濾過装置としては図2,3に示す浮上濾過装置を用いた。この浮上濾過装置の仕様は下記の通りである。
【0104】
<浮上濾過装置>
濾過塔10:直径300mm×高さ1000mmの円筒状
濾材層高:大粒径層(12,12a)250mm
小粒径層(11) 250mm
沈降物受入槽:直径150mm×高さ600mmの円筒状
【0105】
混合槽61で銅粒子含有水に硫酸銅含有排水を銅イオン換算添加量が50mg−Cu/Lとなるように添加して1分間撹拌混合した後、pH調整槽62でNaOHを添加して3分間撹拌混合してpH9.26に調整し、その後高分子凝集剤を0.4mg/Lをライン注入して浮上濾過装置で固液分離した。このときの通水LVは10m/hrとした。
【0106】
この結果、浮上濾過装置では半分以上のフロックは沈降し、残部が浮上濾材層に供給されて捕捉された。このときの浮上濾過装置における差圧の経時変化は図4に示す通りであった。また、得られた処理水(浮上濾過装置の濾過水)の水質と分離汚泥(浮上濾過装置の沈降物受入槽内に溜った汚泥)の濃度は表3に示す通りであった。
【0107】
実施例2
実施例1において、浮上濾過装置の通水LVを20m/hrとしたこと以外は同様に処理を行った。このときの浮上濾過装置における差圧の経時変化は図5に示す通りであった。また、処理水の水質、汚泥濃度は表3に示す通りであった。
【0108】
【表3】

【0109】
実施例1,2の結果から次のことが分かる。
【0110】
銅粒子含有水に硫酸銅含有排水を添加してpHアルカリ性に調整することにより、銅粒子を水酸化銅のフロックに取り込んで沈降性を改善することができ、これを固液分離することにより、良好な水質の処理水が得られるが、その際の浮上濾過装置の通水LVは処理効率に影響し、LV20m/hrで行った実施例2では、大部分のフロックは沈降せずに浮上濾材層に供給されるため、急速に差圧が上昇して濾過不能となった。また、汚泥濃度も低く、処理水への若干のSSの流出も認められた。
【0111】
これに対して、通水LV10m/hrで処理した実施例1では、半分以上のフロックは沈降し、残りが浮上濾材層に供給されたため、差圧の上昇もそれほど大きくなく、30分以上の運転継続が可能であった。
【0112】
また、汚泥も高濃度に圧密されており、その後の脱水処理に有利であり、処理水のSS濃度も低く、良好な水質の処理水が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の銅粒子含有水の処理方法及び装置の実施の形態を示す系統図である。
【図2】本発明におけるフロックの固液分離に好適な濾過装置の一例を示す系統図である。
【図3】図2の濾過塔の水平断面図である。
【図4】実施例1における浮上濾過装置の濾過差圧の経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例2における浮上濾過装置の濾過差圧の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0114】
1 原水槽
10 濾過塔
11 小粒径層
12 大粒径層
12a 流動層
13 濾過層
33 濾過水槽
50 沈降物受入槽
60 汚泥貯槽
61 混合槽
62 pH調整槽
63 濾過装置
64 処理水層
65 汚泥槽
66 脱水機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粒子含有水に銅イオンを添加混合し、pHを8〜10に調整して水酸化銅のフロックを生成させるとともに、このフロック内に銅粒子を取り込ませ、次いで固液分離することを特徴とする銅粒子含有水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、浮上濾材層を有する濾過装置を用いて前記固液分離を行うことを特徴とする銅粒子含有水の処理方法。
【請求項3】
請求項2において、前記濾過装置が、
筒軸方向を上下方向とした筒形の濾過塔内に浮上濾材による濾過層が形成された浮上濾過装置であって、
該濾過層の下部に原水を旋回方向に導入して該濾過層下部に旋回流動を生じさせる原水導入配管と、
該濾過層下部から該浮上濾材の一部を取り出し再度該濾過層下部に導入する濾材循環手段と、
該濾過塔の底部から浮上濾材含有沈降物が導入され該浮上濾材含有沈降物から浮上濾材を分離するための沈降物受入槽と、
該沈降物受入槽内で固形分が分離された浮上濾材を前記原水導入配管に導く浮上濾材返送手段と、
を備えてなり、
該浮上濾材返送手段は、前記原水導入配管に設けられたエゼクタ式吸引手段を有し、該エゼクタ式吸引手段によって該沈降物受入槽から浮上濾材を吸引して該原水導入配管に返送するものであることを特徴とする銅粒子含有水の処理方法。
【請求項4】
銅粒子含有水に銅イオンを添加混合する混合手段と、該混合手段で得られた混合水をpHを8〜10に調整して水酸化銅のフロックを生成させるとともに、このフロック内に銅粒子を取り込ませるpH調整手段と、該pH調整手段からの水を固液分離する手段とを備えることを特徴とする銅粒子含有水の処理装置。
【請求項5】
請求項4において、前記固液分離手段が、浮上濾材層を有する濾過装置であることを特徴とする銅粒子含有水の処理装置。
【請求項6】
請求項5において、前記濾過装置が、
筒軸方向を上下方向とした筒形の濾過塔内に浮上濾材による濾過層が形成された浮上濾過装置であって、
該濾過層の下部に原水を旋回方向に導入して該濾過層下部に旋回流動を生じさせる原水導入配管と、
該濾過層下部から該浮上濾材の一部を取り出し再度該濾過層下部に導入する濾材循環手段と、
該濾過塔の底部から浮上濾材含有沈降物が導入され該浮上濾材含有沈降物から浮上濾材を分離するための沈降物受入槽と、
該沈降物受入槽内で固形分が分離された浮上濾材を前記原水導入配管に導く浮上濾材返送手段と、
を備えてなり、
該浮上濾材返送手段は、前記原水導入配管に設けられたエゼクタ式吸引手段を有し、該エゼクタ式吸引手段によって該沈降物受入槽から浮上濾材を吸引して該原水導入配管に返送するものであることを特徴とする銅粒子含有水の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−83179(P2007−83179A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276054(P2005−276054)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(593063448)株式会社全研 (3)
【Fターム(参考)】