説明

鋏の或いは鋏に関する改良

枢動可能に接続された第一(12)及び第二(14)の刃部材を有する鋏(10)、特に手術鋏であって、少なくとも一方の刃部材は、この刃部材に沿って少なくとも部分的に延びる拘束部材(46)と組み合わされ、拘束部材から離間し、切断行程中に刃部材の互いに対して遠ざかる相対的横方向移動を拘束するために切断時に他方の刃部材を少なくとも部分的に収容するスロット(56)を画定している鋏(10)。これにより、刃部同士を遠ざける方向に広げてしまうであろう切れにくいものや滑りやすいものの切断が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋏、特に手術鋏に関するが、手術鋏に限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
手術鋏は、外科医や手術室スタッフ、その他の医療実務者にとって欠かせない道具であり、患者の組織の切断や摘出、縫合に使用される。これら鋏は、きれいに、効果的に且つ正確に切断できる必要があり、壊れにくく、殺菌に適したものである必要がある。全ての手術手続きにおいて、切断の正確性が重要であることは理解できるであろう。きれいに切断を行うことは、外傷や周りの組織の炎症を最小限に抑えるために特に重要である。
【0003】
従来の手術鋏は2個の鋏部材を有し、各鋏部材は遠位の刃部と近位の持ち手部とを有する。刃部は、カッティングエッジと接触面と外面と先端とを有する。指穴は持ち手部の近位端に配置されている。鋏部材は、刃部と持ち手部の間の枢軸において互いに枢動可能に接続されており、鋏が閉じられると接触面同士は当接できる。従来の鋏においては、持ち手部を互いに握りしめることにより刃部の先端同士は接近方向に移動し、刃部の接触面は、それらの面に平行に互いに摺動する。その間に、カッティングエッジは互いに交差し、接点において互いに接触するが、刃部材が互いに近づくに伴って接点はカッティングエッジに沿って遠位側に移動する。接点における対向する刃部のカッティングエッジの剪断作用により切断が達成される。従来、手術鋏は、人間工学に基づいて左手でも右手でも使用できるように構成されている。
【0004】
この従来の鋏の設計は、靭帯や大きな組織部分等の切れにくい繊維組織を切断する場合は効果的ではない。そのような状況においては、鋏の刃部材は外に広がってしまったり組織が滑ったりして、正確に切断できないか或いは全く切れない。更に、刃部材同士が広がることによって誤った位置合せが行われると、広がった刃部材の間に組織が挟まれ、挟まった組織を取り除くまで鋏は使用できなくなってしまう。刃部が広がる機会を最小限に抑えるため、外科医は、一回できれいな切断を行うのではなく、切れにくい組織に対して細かい切断を何度も行わなければならない。しかしながら、細かい切断を何度も行うと、不正確で乱雑なギザギザ断面の切断となり、手術を長引かせてしまうことになる。
【0005】
手術鋏は、手術や殺菌の厳しい環境に耐えられなくなることが多い。鋏は、頻回に修理する、或いは廃棄や取替えを行う必要がある。一般に、2本の刃部は互いに枢軸ピンによって保持されているが、枢軸ピンは緩むと使用時に刃部同士が広がる危険が増す。更に、刃部は、繰り返しの使用によって切れにくくなるため、何度も研ぐ必要がある。
【0006】
従来の手術鋏の幾つかの問題点を克服できる一方法は、刃部同士が容易に広がらないようにより硬い刃を使用することであろう。より硬い刃は、高価なより硬い材料を使用することにより、或いは刃部をより肉厚に形成することにより達成できる。しかしながら、刃が厚いと、鋏が嵩張り限られた空間で操作しにくく、重量も増し、使用すると疲れる上、製作費用も高くなるので望ましくなく、実際的ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、壊れにくく、きれいに且つ効果的に切断でき、上述の従来の鋏の問題点を避けた或いは最小限に抑えた改良された鋏を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
広義においては、本発明は、枢動可能に接続された第一及び第二の刃部材を有する鋏であって、第二の刃部材は、この刃部材に沿って少なくとも部分的に延びる拘束部材と組み合わされ、拘束部材から離間し、切断行程中に刃部材の互いに対して遠ざかる相対的横方向移動を拘束するために切断時に第一の刃部材を少なくとも部分的に収容するスロット或いはチャネルを画定している鋏である。
【0009】
拘束部材は刃部材の広がり変形に対抗し、靭帯等の切れにくい組織の切断を容易にする。
【0010】
切断行程の最後に鋏が閉じられたとき、第一の刃部材と拘束部材の間に間隙が形成され、第一の刃部材はスロット或いはチャネルの幅より薄くてもよい。この場合、拘束部材は、通常の切断中は第一の刃部材とは必ずしも接触しないが、第一の刃部材が若干変形して間隙がなくなると、拘束部材は更なる変形を制限し始める。
【0011】
また、拘束部材は切断行程中に第一の刃部材に対して当接していることも可能である。例えば、拘束部材は、切断行程中に第一の刃部材が移動するのに伴って、弾性的に変形するように第一の刃部材に弾性的に当接することができる。この場合、拘束部材は、第一の刃部材の変形に抵抗するために連続的に作用できる。実際、第一の刃部材はスロット或いはチャネルの幅より肉厚に、即ち、幅広にすることができ、この場合は拘束部材の弾性変形は、第一の刃部材を収容するのに不可欠である。鋏のクリーニングや殺菌を容易にするために、拘束部材は円形断面とすることができる。
【0012】
第二の刃部材と拘束部材とは、共有する長さの少なくとも一部に沿って連結できる。例えば、第二の刃部材と拘束部材とは、一緒になってU字状断面を画定できる。これは、剛性が高く製造しやすい。例えば、第二の刃部材と拘束部材とは互いに一体的に形成できる。これに替えて、第二の刃部材と拘束部材とは、共有する長さの殆どに沿って離れていてもよい。例えば、拘束部材の両端で連結されていてもよい。即ち、第二の刃部材と拘束部材とは、一緒になって底の開いたスロットを画定でき、これはクリーニングし易く、閉塞を起こしにくい。
【0013】
これに替えて、第二の刃部材と拘束部材とは、拘束部材の遠位端は第二の刃部材に連結せずに拘束部材の近位端において連結できる。拘束部材の近位端は、第一の刃部材と第二の刃部材の間の支点を形成できることが有利である。
【0014】
従来と同様、第一の刃部材は第一のカッティングエッジを画定し、第二の刃部材は第二のカッティングエッジを画定し、これら相互の交差点は切断行程中に遠位側に移動する。拘束部材は第三のカッティングエッジを画定でき、第一のカッティングエッジは、切断行程中、第二のカッティングエッジと第三のカッティングエッジの間を通る。これらカッティングエッジの少なくとも1個は、面取りされ、即ち、横方向に傾斜していてもよく、これにより、組織が刃の外に移動することを防止できる。カッティングエッジは、更に、或いはこれに替えて、鋸歯状、湾曲状、或いは長手方向にスカラップ形状とすることができ、これにより組織が刃の外に移動することを防止できる。
【0015】
第一の刃部に変形力が加わる点の反対側において第一の刃部の広がり変形に対抗するため、第一の刃部と拘束部材の間の接点或いは接触領域は、対向するカッティングエッジ同士の交差点と整合して一緒に移動できることが有利である。
【0016】
拘束部材のエッジは、好ましくは、第二の刃部のカッティングエッジと平行であり、より好ましくは、第二の刃部のカッティングエッジと同じ高さであるか或いは同一面上に存在する。
【0017】
最適な切断効率のため、拘束部材は、好ましくは、第二の刃部よりも背が低く、画定される高さの差は拘束部材と第二の刃部の間のスロット或いはチャネルの幅と少なくとも等しい。
【0018】
拘束部材と第一の刃部材とは、対向する協働可能な面を有することが有益であり、その配置は、切断行程が進むのに伴ってスロット或いはチャネルに収容される第一の刃部材の部分が増加するような配置が好ましい。これにより、第一の刃部材の遠位端に対する支持は次第に大きくなる。
【0019】
次に、本発明をより容易に理解するため、添付図面を参照し実施例を用いて現時点での好ましい実施形態を更に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
最初に図1を参照する。図1は、第一及び第二の細長い鋏部材12、14を有する一組の手術鋏10を示す。従来と同様、各鋏部材12、14は遠位の刃部16、18と近位の持ち手部20、22とを有し、鋏部材12と14とは、刃部16、18と持ち手部20、22の間の枢軸においてリベット、ねじ、スタッド或いはピン24によって互いに枢動可能に接続されている。従来と同様に、刃部16、18はカッティングエッジ26、28と接触面30、32と外面34、36と遠位端38、40とを有し、持ち手部20、22の近位端には指穴42、44が設けられている。
【0021】
従来とは異なり、本発明によれば、第二の刃部18に拘束部材46が組み合わされる。拘束部材46は、第二の刃部18と一体的に形成されているか、或いは第二の刃部18とは別個であるが第二の刃部18に取り付けられている。一体の拘束部材46を図1に示す。拘束部材46は第二の刃部18と略同じ形状であり、内面48と、外面50と、内面48及び外面50に対して垂直な平坦な上縁52とを有する。
【0022】
拘束部材46の内外面48、50は第二の刃部18の接触面32及び外面36に平行であり、拘束部材46の内面48は第二の刃部18の接触面32に対向して離間している。図1の一体の拘束部材46及び第二の刃部18は(図8(a)に示すように)U字断面を有し、U字の一方の直線部分を第二の刃部18が形成し、他方の直線部分を拘束部材46が形成し、両方の直線部分は共通ベース54によって接続されている。
【0023】
第二の刃部18の接触面32と拘束部材46の内面48とは、切断時に第一の刃部16のカッティングエッジ部を収容するためのチャネル或いはスロット56を画定している。鋏10が閉じているとき、カッティングエッジ26を含む第一の刃部16の殆どの部分は、第二の刃部18と拘束部材46とに挟まれてチャネル或いはスロット56内に横たわっている。第一の刃部16の外面34と拘束部材46の内面48とは、互いに離間して小さな間隙を画定してもよいし、互いにすべりばめ状態で当接してもよい。拘束部材46は、必要であれば第一の刃部16の摺動移動を促進するために弾性変形できる。これは、チャネル或いはスロット56の幅が、収容する第一の刃部16の厚さよりも狭い場合に必要であろう。
【0024】
従来と同様、切断動作は持ち手部20、22を互いに握りしめることにより行われ、これにより、刃部16、18の先端38、40は互いに向けて開位置から閉位置に枢動する。この移動の間、第一及び第二の刃部16、18の対向するカッティングエッジ26、28は相互に交差しながら互いに対して摺動する。対向するカッティングエッジ26、28の交差点即ち接点は、最初は枢軸24の近くにあるが、刃部16、18の先端38、40が互いに接近するのに伴ってカッティングエッジ26、28に沿って遠位方向へ移動する。
【0025】
本発明によれば、拘束部材46は、第一の刃部16が第二の刃部18から遠ざかる方向に横方向に広がる移動を拘束する。このような横方向の移動は、刃部16、18の長さ方向に対して横断方向であり、枢動可能な接続部24によって画定される枢軸に対し平行である。第一及び第二の刃部16、18の先端38、40が互いに接近するのに伴い、第二の刃部18の接触面32と拘束部材46の内面48とによって画定されたスロット或いはチャネル56内に収容される第一の刃部16の部分は増加する。従って、第一の刃部16は、拘束部材46と接触するため、第二の刃部18から遠ざかる方向に広がることが防止される。
【0026】
第一の刃部16と拘束部材46の間に間隙がある場合、この間隙が無くなって、第一の刃部16の外面34が拘束部材46の内面48と接触するとすぐに、第一の刃部16の横方向の移動が拘束される。間隙がない場合、即ち、第一の刃部16の外面34が拘束部材18の内面48と摺動接触している場合は、第一の刃部16の横方向の移動は最初から拘束される。いずれの場合においても、第一の刃部16と拘束部材46の接点或いは接触領域は、対向するカッティングエッジ26、28の交差点と整合して一緒に移動し、第一の刃部16の広がり変形は、変形力が加わる点の反対側で拘束される。これにより、刃部同士を遠ざける方向に広げてしまうであろう切れにくいものや滑りやすいものの切断が可能となり有利である。
【0027】
拘束部材46の上縁52は第三のカッティングエッジ58を提供でき、第三のカッティングエッジ58は、任意ではあるが、図示のように第二の刃部18のカッティングエッジ28と平行である。この第三のカッティングエッジ58は第一の刃部16の補助カッティングエッジ60と協働できる、或いは第二の刃部18のカッティングエッジ28と協働する第一の刃部16の同じカッティングエッジ26と協働できる。図8(a)にも示すが、図1の第二及び第三のカッティングエッジ60、58は、面一であり、同一面上に存在し、鋏部材12、14間の枢動可能な接続部を中心とした第一の刃部16の移動面に対し垂直な面に配置されている。
【0028】
図2〜図7の実施形態は、第一及び第二の刃部のカッティングエッジや拘束部材の上縁が、切断前或いは切断時における鋏による組織の掴みを改良するように構成されている点が図1と異なる。
【0029】
図2の実施形態においては、第二の刃部18のカッティングエッジ28a及び拘束部材46の上縁52aは鋸歯状である。図3の実施形態は、第一の刃部16のカッティングエッジ26bも鋸歯状である点のみが図2の実施形態と異なる。
【0030】
図4の実施形態においては、第一及び第二の刃部16、18のカッティングエッジ26c、28c及び拘束部材46の上縁52cは凹状に湾曲している。図示していないが、カッティングエッジの1個のみをこのように湾曲させ、残りのカッティングエッジを直線状或いは他の形状とすることも可能である。また、鋏全体の重量を減少させ操作性を改善するため、遠位の刃部16、18のカッティングエッジと反対側のエッジ及び/又は近位の持ち手部20、22も同様に凹状に湾曲させることもできる。
【0031】
図5の実施形態においては、第一の刃部16のカッティングエッジ26dは、波形スカラップ形状(scalloped)の線を画定する複数の凹状湾曲部或いは山と谷を有する。図6の実施形態においては反対に、第二の刃部18のカッティングエッジ28e及び拘束部材46の上縁52eのみが複数の凹状湾曲部を有する。しかしながら、全てのカッティングエッジを同様に形成できることは明確であろう。
【0032】
図7は更に別の実施形態を示す。この実施形態は、拘束部材46の上縁52f及び第二の刃部18のカッティングエッジ28fの凹状湾曲部が鋸歯状である点が図6の実施形態と異なる。これに替えて、スカラップ形状エッジ28f、52fの一方だけを鋸歯状とすることができる。図示していないが、図4及び図5に示す各実施形態の湾曲エッジも鋸歯状にできることは明らかであろう。鋏が、少なくとも1個の凹凸のない鋸歯状のエッジと上述の鋸歯状及び/又は鋸歯状でない湾曲エッジとを組み合わせて有する更に別の各種実施形態も可能である。鋸歯状のエッジは、組織の掴みが改善され、鋸歯のないエッジに比べて研ぐ回数が低減される点において有利である。
【0033】
図8(b)及び図8(c)と図9(a)〜図9(c)とは、前述の全ての実施形態の鋏についての各種変形例の断面図である。図8(b)及び図8(c)は、第二の刃部18のカッティングエッジ28gが平坦でなく面取りされている点が図1〜図7及び図8(a)と異なる。図8(b)においては、拘束部材46の上縁52gも面取りされている。図8(c)においては、第二の刃部18のカッティングエッジ28gのみが面取りされており、拘束部材46の上面52hは平坦であり、内面48及び外面50に対して垂直である。この変形例においては、拘束部材46は第二の刃部18より背が低く、高さの差はそれらの間の間隙の幅、即ち、対向する第二の刃部18の接触面32と拘束部材46の内面48の間の距離と等しい。拘束部材46の背が低いため、拘束部材46と第二の刃部18の間のチャネル56により簡単に近づける。これは、洗浄や殺菌のために有利である。拘束部材46と第二の刃部18の高さの差と、それらの間の間隙の幅の比率は1:1より大きくても小さくてもよい。即ち、拘束部材の高さは、拘束部材と第二の刃部の間の間隙の幅よりも小さくても大きくてもよい。
【0034】
図9(a)〜図9(c)、図10及び図11の変形例は、第二の刃部18及び拘束部材46の断面がU字状でない点において前出の全ての実施形態と異なる。その他の点では、これらは図8(a)〜図8(c)にそれぞれ対応している。例えば、図9(c)は、面取りされた第二の刃部18のカッティングエッジ28gと、拘束部材46の内外面48、50に対して垂直な拘束部材46の平坦な上縁52hとを示し、拘束部材46と第二の刃部18の高さの差はそれらの間の間隙の幅と等しい。これらは上と同様に一体的に形成されているが、第二の刃部18と拘束部材46とは、全長に亘って延びる共通ベースを有さず、代わりに端部同士が接続されている。これに替えて、第二の刃部18と拘束部材46とは、長手方向の一部或いは複数の部分に亘って延びる共通ベースを有していてもよい。言い換えると、第二の刃部18と拘束部材46とは、長手方向に沿った数箇所において共通ベースによって連結でき、共通ベースは、第二の刃部18と拘束部材46との一方又は両方と一体的に形成されている、或いは第二の刃部18及び拘束部材46とは別個であるがこれらに取り付けられている。図示していないが、拘束部材の長さは第二の刃部18の長さよりも短くすることができる。これは先端が鋭く尖った鋏においては非常に有益である。この場合は、短めの拘束部材を用いることにより、第一及び第二の刃部の鋭く尖った先端の捩れ或いは先端同士の交差を防止できる。
【0035】
図10は、第二の刃部18が、刃部16、18と持ち手部20、22の間の枢軸24に近接して配置されたリベット、ねじ、スタッド或いはピン100によって近位端において拘束部材46に接続された状態を示す。図11に示す実施形態は、第二の刃部18が、リベット、ねじ、ボルト或いはピン102によって拘束部材46に接続されている位置が近位端ではなく遠位端38、40である点が図10に示す実施形態と異なる。図示していないが、第二の刃部18と拘束部材46とは、近位端と遠位端の両方においてリベットにより接続できることが分かるであろう。
【0036】
図8(b)及び図8(c)、図9、図10並びに図11の各変形例は、前出の全ての実施形態に適用できる。例えば、図2の実施形態に図9(a)の断面形状を適用できる。
【0037】
図9(a)〜図9(c)の各変形例の利点は、第二の刃部と拘束部材の間のチャネル或いはスロット内に汚物や他の残骸が詰まりにくい点である。底が完全に或いは部分的に開いていると、クリーニング時或いは殺菌処理時にスロット56をより容易に洗い流しやすい。第一の刃部のスロット内への移動も使用時の自己クリーニング動作である。
【0038】
更に別の実施形態を図12〜図14に示す。この実施形態は、第二の刃部18の全長に亘って延びる第二の刃部18と略等しい長さの拘束部材46aを有するが、拘束部材46aは横方向断面が略円形の円筒形である点が先に述べた各変形例と異なる。拘束部材46aは、ワイヤ或いはロッドの一部分であり、自由端の、即ち、取り付けられていない遠位端、即ち先端104を有する。拘束部材46aの他方の端部は、刃部16、18と持ち手部20、22の間の枢軸における支点を形成している。このように、この拘束部材46aの端部は、第一の刃部16に形成された孔を貫通して延び、第二の刃部18に固定されている。拘束部材46aの丸い外形は、通常のクリーニング技法や殺菌技法を用いて洗浄し易いので有利である。図示していないが、拘束部材46aは、拘束部材46aの両端において第二の刃部18と接続するか或いは一体的に形成できるが、そのようにすることにより第一の刃部16の広がりを低減できる。
【0039】
図15及び図16は本発明の鋏の更に別の実施形態を示す。この実施形態が前出の各実施形態と異なる点は、第二の刃部18に拘束部材を組み合わせる代わりに、鋏10の近位の持ち手部の内の少なくとも一方が、他方の近位の持ち手部に向かって持ち手部の長さ方向に対して垂直な方向に延びる楔状の少なくとも1個の突起或いは突出部を有する点である。楔状突出部110は、肉厚の端部112と、薄い端部114と、他方の刃部材と摺動接触している少なくとも1個の傾斜面116とを有する。楔状突出部110は略三角形断面である。
【0040】
図15は、第一の持ち手部20から第二の持ち手部20に向けて延びるこのような楔状突出部110を有する一丁の鋏10を示す。楔状突出部110は、第一の持ち手部20の全長の略中間に位置している。楔状突出部110の肉厚の端部112は、第一の持ち手部20に対して固定された位置において、第一の持ち手部20と一体的に形成されているか、或いは別個ではあるが第一の持ち手部20に取り付けられている。楔状突出部110は、第一の持ち手部20に沿って移動可能なように配置することもできる。任意ではあるが、移動可能な楔状突出部110を有する鋏10は、移動可能な楔状突出部を第一の持ち手部20に沿った所定の位置に固定できる固定機構を有することができる。
【0041】
使用時においては、従来の鋏を用いた切断動作と同様に持ち手部20、22を互いに接近させると、楔状突出部110の傾斜面116と第二の持ち手部22の対向面(図示せず)とは互いに摺動する。楔状突出部110の傾斜面116におけるこれらの接触領域は、薄い端部114から肉厚の端部112へ向けて移動し、第一及び第二の持ち手部20、22は広げられる、即ち強制的に横方向に遠ざけられる。これは、刃部16、18を互いに向けて、横方向に、即ち、切断時の通常の鋏の運動と同様に刃部16、18の移動方向に対し横断方向に押し付ける、即ち、付勢する。互いに近づく方向への刃部16、18の付勢は、切断時の刃部16、18の横方向に広がる移動に対抗する。楔状突出部110の位置決め及びその傾斜面116の角度は、鋏10(持ち手部及び刃部)が開位置にあるとき楔状突出部110が持ち手部20、22の間に横方向の力を与えない角度となっている。
【0042】
楔面116は、有効な切断のために、楔による押し込み力が切断行程の間に増加するように或いは少なくとも減少しないように連続している。これは、持ち手部に形成される公知のラチェット機構とは異なる。ラチェット機構は、不連続の楔面を有する複数の楔を含んでいるということができるが、不連続の楔面では、切断行程の間に継続的な楔力は提供されない。
【0043】
図16は、第二の持ち手部22も同様に、第一の持ち手部20に向けて延びる楔状突出部110を備える点が図15の実施形態と異なる。この第二の楔状突出部110は、外観も機能的にも図15の突出部と同様である。第二の楔状突出部110の傾斜面116は、第一の持ち手部20の対向面と摺動接触している。図示していないが、第一及び第二の持ち手部20、22は、2個以上の楔状突出部を含むことができ、楔状突出部は、長さ方向の任意の位置に位置決めできる。これら楔状突出部110は、持ち手部20、22に対して固定することもできるし、移動可能とすることもできる。
【0044】
一以上の移動可能な楔状突出部110を有する利点は、楔効果、即ち、持ち手部20、22同士を広げて離し刃部16、18同士を近づける力を、ユーザに要求される力を最小限に抑えながら、信頼性の高い切断のために調節できることである。
【0045】
本発明は、添付の特許請求の範囲及び本明細書におけるその他の発明の記載に定義されるような基本的な性質から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化できる。例えば、第二の刃部及び拘束部材の外面は平行とする必要はない。また、第一の刃部に拘束部材を組合せて、第二の刃部材を収容して第二の刃部材の変形を最小限に抑えるチャネル或いはスロットを画定することも可能である。しかしながら、拘束部材は、組み合わされる刃部材を補強する効果があることは明らかであろう。拘束部材は、第二の刃部と略等しい形状或いは長さのものである必要はない。本発明の鋏を手術鋏として説明したが、布地や他の材料の切断等、非手術用途や非医療用途にも同様に適している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の鋏の一実施形態の斜視図である。
【図2】本発明の鋏の第二の実施形態の斜視図である。
【図3】本発明の鋏の第三の実施形態の斜視図である。
【図4】本発明の鋏の第四の実施形態の斜視図である。
【図5】本発明の鋏の第五の実施形態の斜視図である。
【図6】本発明の鋏の第六の実施形態の斜視図である。
【図7】本発明の鋏の第七の実施形態の斜視図である。
【図8(a)】図1〜図7の各実施形態のいずれかの断面図である。
【図8(b)】図1〜図7の各実施形態のいずれかの断面図である。
【図8(c)】図1〜図7の各実施形態のいずれかの断面図である。
【図9(a)】図1〜図7の各実施形態のいずれかの断面図である。
【図9(b)】図1〜図7の各実施形態のいずれかの断面図である。
【図9(c)】図1〜図7の各実施形態のいずれかの断面図である。
【図10】図1〜図7の各実施形態のいずれかの変形例の斜視図である。
【図11】図1〜図7の各実施形態のいずれかの更に別の変形例の斜視図である。
【図12】本発明の鋏の第八の実施形態の斜視図である。
【図13】本発明の鋏の第八の実施形態の斜視図である。
【図14】本発明の鋏の第八の実施形態の斜視図である。
【図15】本発明の鋏の第九の実施形態の斜視図である。
【図16】本発明の鋏の第十の実施形態の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢動可能に接続された第一及び第二の刃部材を有する鋏であって、第二の刃部材は、この刃部材に沿って少なくとも部分的に延びる拘束部材と組み合わされると共に拘束部材から離間され、切断行程中に刃部材の互いに対して遠ざかる相対的横方向移動を拘束するために切断時に第一の刃部材を少なくとも部分的に収容するスロット或いはチャネルを画定している鋏。
【請求項2】
切断行程の最後において鋏が閉じられたとき、第一の刃部材と拘束部材の間に間隙がある、請求項1に記載の鋏。
【請求項3】
第一の刃部材はスロット或いはチャネルの幅よりも薄い、請求項2に記載の鋏。
【請求項4】
切断行程中、拘束部材は第一の刃部材に当接している、請求項1に記載の鋏。
【請求項5】
切断行程中、第一の刃部材の移動に伴って拘束部材が弾性変形する、請求項4に記載の鋏。
【請求項6】
第一の刃部材はスロット或いはチャネルの幅よりも厚い、請求項4又は5に記載の鋏。
【請求項7】
拘束部材は円形断面である、請求項1〜6のいずれかに記載の鋏。
【請求項8】
第二の刃部材と拘束部材とは、共有の長さの少なくとも一部に沿って連結されている、請求項1〜7のいずれかに記載の鋏。
【請求項9】
第二の刃部材と拘束部材とはU字断面を画定している、請求項8に記載の鋏。
【請求項10】
第二の刃部材と拘束部材とは、共有の長さに沿って所定の間隔で連結されている、請求項8又は9に記載の鋏。
【請求項11】
拘束部材は遠位端と近位端とを有し、第二の刃部材と拘束部材とは共有の長さの殆どに沿って分離されている、請求項1〜10のいずれかに記載の鋏。
【請求項12】
第二の刃部材と拘束部材とは拘束部材の両端において接合されている、請求項11に記載の鋏。
【請求項13】
第二の刃部材と拘束部材とは拘束部材の遠位端において接合されている、請求項11に記載の鋏。
【請求項14】
第二の刃部材と拘束部材とは拘束部材の近位端において接合されており、拘束部材の遠位端は第二の刃部とは接合されていない、請求項1〜13のいずれかに記載の鋏。
【請求項15】
拘束部材の近位端は第一の刃部材と第二の刃部材の間の支点を形成している、請求項14に記載の鋏。
【請求項16】
第二の刃部材と拘束部材とは、第一の刃部材を収容するための底が開いたスロットを画定している、請求項11〜15のいずれか一項に記載の鋏。
【請求項17】
第二の刃部材と拘束部材とは一体的に形成されている、請求項1〜16のいずれかに記載の鋏。
【請求項18】
第一の刃部材は第一のカッティングエッジを画定し、第二の刃部材は第二のカッティングエッジを画定し、切断行程中、カッティングエッジ同士の交差点は遠位方向に移動する、請求項1〜17のいずれかに記載の鋏。
【請求項19】
拘束部材は第三のカッティングエッジを画定し、第一のカッティングエッジは、切断行程中、第二のカッティングエッジと第三のカッティングエッジの間を通る、請求項18に記載の鋏。
【請求項20】
カッティングエッジの内の少なくとも1個は面取りされている或いは傾斜している、請求項18又は19に記載の鋏。
【請求項21】
カッティングエッジの内の少なくとも1個は長手方向に湾曲しているか或いはスカラップ形状である、請求項18〜20のいずれかに記載の鋏。
【請求項22】
カッティングエッジの内の少なくとも1個は鋸歯状である、請求項18〜21のいずれかに記載の鋏。
【請求項23】
第一の刃部と拘束部材の接点或いは接触領域は、第一の刃部の広がり変形を、変形力が加わる点の反対側で拘束するため、対向するカッティングエッジ同士の交差点と整合して一緒に移動する、請求項18〜22のいずれかに記載の鋏。
【請求項24】
拘束部材のエッジは第二の刃部のカッティングエッジと平行である、請求項18〜23のいずれかに記載の鋏。
【請求項25】
拘束部材のエッジは第二の刃部のカッティングエッジと同じ高さである、請求項24に記載の鋏。
【請求項26】
拘束部材のエッジと第二の刃部のカッティングエッジと同一面上に存在する、請求項25に記載の鋏。
【請求項27】
拘束部材は第二の刃部より背が低く、これらの高さの差は、拘束部材と第二の刃部の間のスロット或いはチャネルの幅に少なくとも等しい、請求項1〜26のいずれかに記載の鋏。
【請求項28】
拘束部材と第一の刃部とは、対向する協働可能な面を有する、請求項1〜27のいずれかに記載の鋏。
【請求項29】
切断行程が進むのに伴い、スロット或いはチャネルに収容される第一の刃部材の部分が増加する、請求項1〜28のいずれかに記載の鋏。
【請求項30】
枢動可能に接続された第一及び第二の刃部材を有し、各刃部材は持ち手部と刃部とを有する鋏であって、
切断行程中の刃部同士が離れる相対的横方向移動に対抗するため、持ち手部同士を横方向に離れるように付勢させて刃部同士を横方向に接近させるように付勢するため、少なくとも一方の持ち手部は、切断行程中に他方の持ち手部と協働可能な楔手段を含むことを特徴とする鋏。
【請求項31】
楔手段は、切断行程中に他方の持ち手部と摺動接触する傾斜面を有する、請求項30に記載の鋏。
【請求項32】
楔手段は肉厚の端部と薄い端部とを有し、楔手段と他方の持ち手部の間の接触領域は、切断行程中に薄い端部から肉厚の端部に向けて移動する、請求項30又は31に記載の鋏。
【請求項33】
楔手段は、一方の持ち手部から他方の持ち手部に向かって突出している、請求項30〜32のいずれかに記載の鋏。
【請求項34】
楔手段は、持ち手部の全長の略中間に配置されている、請求項30〜33のいずれかに記載の鋏。
【請求項35】
一方の持ち手部に組み合わせられた第二の楔手段を更に有する、請求項30〜34のいずれかに記載の鋏。
【請求項36】
第二の楔手段は他方の持ち手部に組み合わせられる、請求項35に記載の鋏。
【請求項37】
添付図面のいずれかを参照して明細書において説明したか或いは添付図面のいずれかに図示したものと実質的に同一の鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−529700(P2008−529700A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555698(P2007−555698)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000544
【国際公開番号】WO2006/087554
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507196859)
【Fターム(参考)】