説明

鋳型造型金型及び同金型段替え方法

【課題】作業者が鋳型造型金型の段替え作業等を簡便に行えるようにする。
【解決手段】上型1及び下型2の各々が、互いに水平方向に分割可能に構成された複数の分割型からなり、上型1及び下型2各々の複数の分割型同士をそれぞれ一体化するように該分割型をクランプする上型及び下型クランプ装置と、下型2の下側に設けられ、エジェクタピン47が立設された第1エジェクタプレート48と、上下方向に進退可能に構成された押出ロッドにより上側に押圧されるように構成され、リターンピン52が立設された第2エジェクタプレート49と、第1エジェクタプレート48を第2エジェクタプレート49に着脱可能に取り付けるエジェクタプレート着脱装置61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上型と下型とを備え、該上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、該両型間に、鋳砂が充填されるキャビティが形成される鋳型造型金型及び同金型段替え方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋳造用の砂中子等の鋳型を造型するための鋳型造型金型は、上型と下型とを備え、該上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、該両型間に、鋳砂が充填されるキャビティが形成され、このキャビティで鋳型が造型される。また、下型に設けられたキャビティ形成用凹部の底壁部には、上下方向に延びる挿通孔が形成されており、この挿通孔に、キャビティで造型された鋳型を押し出すためのエジェクタピンが、下型の下側からキャビティ形成用凹部に対して進退可能に挿通されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような鋳型造型金型においては、上型の流入口からキャビティに鋳砂が勢い良く流れ込んでくるために成形面の摩耗が激しく、そのため、型修正を頻繁に行う必要がある。これにより、作業者は、鋳型造型金型の成形面の摩耗状態を頻繁に確認し、所定以上の摩耗があることが確認された場合には、型修正を行うために、上下両型、エジェクタピン、及び、エジェクタピンが立設されたエジェクタプレートを、一式でホイスト等によって吊り上げることによって、それらを支持する支持部材から取り外して、予め決められた位置まで搬送している。また、別の鋳型を造型するために鋳型造型金型の段替え作業を行う際にも、上記型修正のための着脱作業と同様の作業が行われる。
【0004】
上記のような作業において、上下両型等の上記支持部材に対する着脱時に、ホイスト位置が金型設置位置からずれていたとすると、作業者がホイストワイヤや金型を持って力尽でその位置や傾きを調整しているのが現状である。
【0005】
そこで、特許文献1では、鋳型造型金型を軽量化して段替え作業等の容易化を図るべく、鋳型造型金型を軽合金製にすることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−23580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、鋳型造型金型を軽合金製にしたとしても、エジェクタピン及びエジェクタプレートを含む金型全体が大きくて重い場合には、それらをホイスト等によって吊り上げる必要があり、また、ホイスト位置が金型設置位置からずれていた場合には、作業者がホイストワイヤや金型を持って力尽でその位置や傾きを調整する必要がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業者が鋳型造型金型の段替え作業や型修正のための着脱作業を簡便に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、上型と下型とを備え、該上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、該両型間に、鋳砂が充填されるキャビティが形成される鋳型造型金型を対象として、上記上型及び下型の各々が、互いに水平方向に分割可能に構成された複数の分割型からなり、上記上型及び下型各々の複数の分割型同士をそれぞれ一体化するように該分割型をクランプする上型及び下型クランプ装置と、上記下型のキャビティ形成用凹部の底壁部に上下方向に延びるように形成された挿通孔に、該下型の下側から該キャビティ形成用凹部に対して進退可能に挿通されるエジェクタピンと、上記下型の側方に設けられたガイド部材に上下方向に移動可能となるようにガイドされ、上記上型と下型とが合わせられるときに、該上型により下側に押圧されるリターンピンと、上記下型の下側に設けられ、上記エジェクタピンが立設された第1エジェクタプレートと、上下方向に進退可能に構成された押出ロッドにより上側に押圧されるように構成され、上記リターンピンが立設された第2エジェクタプレートと、上記第1エジェクタプレートを上記第2エジェクタプレートに着脱可能に取り付けるエジェクタプレート着脱装置とを備えている、という構成とした。
【0010】
上記の構成により、上型及び下型の各々が複数の分割型からなるので、各分割型の重量を軽くすることができるとともに小型化することができる。この結果、作業者は、クランプを解除した状態の各分割型を、ホイスト等を用いずに手に持って容易に移動させることができるようになる。また、鋳型造型金型の段替え時に、第1エジェクタプレートを第2エジェクタプレートに着脱可能に取り付けるエジェクタプレート着脱装置によって、エジェクタピンが立設された第1エジェクタプレートを第2エジェクタプレートから外した後、該第2エジェクタプレートに、新たなエジェクタピンが立設された新たな第1エジェクタプレートを取り付けることで、エジェクタピンを、新たな下型に対応したものに容易に交換することができる。よって、鋳型造型金型の段替え作業や型修正のための着脱作業が容易に行えるようになる。
【0011】
上記鋳型造型金型において、上記上型及び下型クランプ装置は、水平方向に移動可能なクランプ部材をそれぞれ有し、上記上型及び下型クランプ装置のクランプ部材は、上記上型及び下型それぞれの分割型の側面部をクランプするように構成されている、ことが好ましい。
【0012】
このことにより、水平方向に分割された複数の分割型同士を容易に一体化することができる。
【0013】
上記鋳型造型金型において、上記エジェクタプレート着脱装置は、上記第1エジェクタプレートの下面から、該第1エジェクタプレートの下側に設けられた上記第2エジェクタプレートに形成された開口を通って該第2エジェクタプレートの下側にまで延びて、その先端部が水平方向に折れ曲がった略L字状のロック部材と、上記第2エジェクタプレートの下面に、上記第2エジェクタプレートの下面に沿ってスライド可能に設けられた着脱部材と、を有し、上記着脱部材は、上記ロック部材の先端部の上側に位置して該先端部と係合可能な係合部を有していて、該着脱部材のスライドにより、該係合部が、上記ロック部材の先端部と係合する係合位置と、上記ロック部材の先端部の上側から退避して上記係合を解除する係合解除位置との間で移動可能に構成されている、ことが好ましい。
【0014】
このことで、着脱部材をスライドさせることで、係合部を係合位置に移動させたり係合解除位置に移動させたりすることが容易にできる。そして、係合部を係合位置に移動させれば、係合部がロック部材の先端部と係合することで、第1エジェクタプレートが第2エジェクタプレートに取り付けられることになる。一方、係合部を非係合位置に移動させれば、係合部がロック部材の先端部の上側から退避することで、第1エジェクタプレートが第2エジェクタプレートから取り外すことが可能になる。よって、第1エジェクタプレートの第2エジェクタプレートに対する取付け及び取外しを容易に行うことができる。
【0015】
上記鋳型造型金型において、上記上型及び下型それぞれの分割型は、固定分割型と可動分割型とで構成され、上記上型クランプ装置は、上記上型の可動分割型を、該上型の固定分割型の側へ押圧する上型可動分割型用クランプ装置を含み、上記下型クランプ装置は、上記下型の可動分割型を、該下型の固定分割型の側へ押圧する下型可動分割型用クランプ装置を含む、ことが好ましい。
【0016】
こうすることで、上型可動分割型用クランプ装置により、上型の固定分割型と可動分割型とを互いの分割合わせ面で密着させることができるとともに、下型可動分割型用クランプ装置により下型の固定分割型と可動分割型とを互いの分割合わせ面で密着させることができる。よって、上型(下型)の可動分割型を上型(下型)の固定分割型に対して正確に位置決めすることができる。
【0017】
上記鋳型造型金型において、上記上型、上記下型及び上記第1エジェクタプレートが、ジュラルミン製である、ことが好ましい。
【0018】
このことにより、上型の各分割型、下型の各分割型及び第1エジェクタプレートを出来る限り軽量にして、鋳型造型金型の段替え作業や型修正のための着脱作業をより一層容易に行えるようにすることができる。
【0019】
本発明の別の態様は、上型と下型とを備え、該上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、該両型間に、鋳砂が充填されるキャビティが形成される鋳型造型金型の段替え方法の発明であり、この発明では、上記上型及び下型の各々が、互いに水平方向に分割可能に構成された複数の分割型からなり、上記上型及び下型各々の複数の分割型同士をそれぞれ一体化するように該分割型をクランプする上型及び下型クランプ装置と、上記下型のキャビティ形成用凹部の底壁部に上下方向に延びるように形成された挿通孔に、該下型の下側から該キャビティ形成用凹部に対して進退可能に挿通されるエジェクタピンと、上記下型の側方に設けられたガイド部材に上下方向に移動可能となるようにガイドされ、上記上型と下型とが合わせられるときに、該上型により下側に押圧されるリターンピンと、上記下型の下側に設けられ、上記エジェクタピンが立設された第1エジェクタプレートと、上下方向に進退可能に構成された押出ロッドにより上側に押圧されるように構成され、上記リターンピンが立設された第2エジェクタプレートと、上記第1エジェクタプレートを上記第2エジェクタプレートに着脱可能に取り付けるエジェクタプレート着脱装置とを備え、上記下型及び上記ガイド部材は、下型支持部材の上面に設けられたものであり、上記上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、上記上型クランプ装置による上型の分割型のクランプを解除する工程と、上記クランプを解除した上型の全分割型を上記下型から取り除く工程と、上記上型を上記下型から取り除いた後、上記下型クランプ装置による下型の分割型のクランプを解除する工程と、上記クランプを解除した下型の全分割型を上記下型支持部材の上面から取り除く工程と、上記エジェクタプレート着脱装置により、上記エジェクタピンが立設された第1エジェクタプレートを上記第2エジェクタプレートから外れた状態にして、該第1エジェクタプレートを上記第2エジェクタプレートから取り除く工程と、上記第1エジェクタプレートを取り除いた上記第2エジェクタプレートに対して、上記エジェクタプレート着脱装置により、新たなエジェクタピンが立設された新たな第1エジェクタプレートを取り付ける工程と、上記下型を取り除いた下型支持部材の上面に、新たな下型の全分割型を、該下型の挿通孔に上記新たなエジェクタピンが挿通されるように載せる工程と、上記新たな下型上に、新たな上型の全分割型を該両型の合わせ面が合わされるように載せる工程と、上記下型クランプ装置により、上記下型支持部材の上面における新たな下型の分割型同士を一体化する工程と、上記新たな下型の分割型の一体化後に、上記上型クランプ装置により、上記新たな下型上における新たな上型の分割型同士を一体化する工程と、を含むものとする。
【0020】
すなわち、鋳型造型金型の段替えを行うには、先ず、上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、上型クランプ装置による上型の分割型のクランプを解除し、そのクランプを解除した上型の全分割型を下型から取り除く。このとき、上型の各分割型は、小さくて軽いので、作業者は各分割型を手に持って下型から容易に取り除くことができる。
【0021】
続いて、下型クランプ装置による下型の分割型のクランプを解除し、そのクランプを解除した下型の全分割型を下型支持部材の上面から取り除く。このとき、エジェクタピンが下型の挿通孔から抜ける。下型の各分割型は、小さくて軽いので、作業者は各分割型を手に持って下型支持部材の上面から容易に取り除くことができる。
【0022】
次いで、エジェクタプレート着脱装置により、エジェクタピンが立設された第1エジェクタプレートを第2エジェクタプレートから外れた状態にして、該第1エジェクタプレートを第2エジェクタプレートから取り除き、その後、上記第2エジェクタプレートに対して、上記エジェクタプレート着脱装置により、新たなエジェクタピンが立設された新たな第1エジェクタプレートを取り付ける。エジェクタピンを含む第1エジェクタプレートの重量は、第2エジェクタプレートの重量よりも軽くすることができ、第1エジェクタプレートの交換も容易に行うことができる。
【0023】
続いて、上記下型を取り除いた下型支持部材の上面に新たな下型の全分割型を載せる。このとき、下型の挿通孔に上記新たなエジェクタピンを挿通する。そして、新たな下型上に、新たな上型の全分割型を載せる。上記のように上型及び下型各々の分割型は、小さくて軽いので、これらの作業は容易に行える。
【0024】
次に、上記下型クランプ装置により、上記下型支持部材の上面における新たな下型の分割型同士をクランプし、その後、上記上型クランプ装置により、上記新たな下型上における新たな上型の分割型同士をクランプする。
【0025】
このように、鋳型造型金型の段替え作業に際して、作業者は、上型及び下型各々の分割型をホイスト等を用いて吊り上げる必要がなく、各分割型を手に持って容易に移動させることができ、よって、金型の段替え作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によると、作業者は、上型及び下型の各分割型並びに第1エジェクタプレートを、ホイスト等を用いずに手に持って容易に移動させることができ、これにより、鋳型造型金型の段替え作業や型修正のための着脱作業が容易に行えるようになり、よって、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る鋳型造型金型を概略的に示す側面図である。
【図2】図1のII方向矢示図である。
【図3】図1のIII方向矢示図である。
【図4】下型支持プレートの上面から下型を取り除いた状態を示す図2相当図である。
【図5】上型支持プレートの下面から上型を取り除いた状態を示す図3相当図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【図8】第2エジェクタプレートの下側を示す、下側から見た斜視図であり、(a)は、着脱部材が係合位置にある状態を示し、(b)は、着脱部材が係合解除位置にある状態を示す。
【図9】鋳型造型金型の段替え手順を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る鋳型造型金型を示す。この鋳型造型金型は、鋳造用の砂中子等の鋳型を造型する鋳型造型装置に設けられたものである。この鋳型造型金型は、平面視で四角形状のジュラルミン製の上型1及び下型2を備えていて、該上型1と下型2とを互いの合わせ面(上型1の下面及び下型2の上面)で合わせた状態で、該両型1,2間に、鋳砂が充填されるキャビティが形成される。このキャビティで、鋳型が造型される。尚、図1〜図3では、鋳型造型金型を概略的に示しており、簡略化して描いている。
【0030】
上記上型1は、互いに水平方向(図1〜図5に示すX方向)に分割可能に構成された第1及び第2分割型1a,1bからなり、上記下型2も、互いに水平方向(X方向)に分割可能に構成された第1及び第2分割型2a,2bからなる。上型1の第1分割型1aと下型2の第1分割型2aとが互いに合わせられ、上型1の第2分割型1bと下型2の第2分割型2bとが互いに合わせられる。上型1及び下型2各々の第1分割型1a,2aと第2分割型1b,2bとの分割合わせ面は、分割方向(X方向)と垂直なY方向(図2〜図5参照)でかつ上下方向に延びている。上型1の第1及び第2分割型1a,1bには、キャビティ形成用凹部1cがそれぞれ形成され、下型2の第1及び第2分割型2a,2bにも、キャビティ形成用凹部2cがそれぞれ形成されている。上型1と下型2とを互いの合わせ面で合わせたときに、上型1のキャビティ形成用凹部1cと下型2のキャビティ形成用凹部2cとにより2つのキャビティが形成されることになる。本実施形態では、鋳型造型金型全体として2つのキャビティが形成されるが、3つ以上のキャビティが形成されてもよく、1つのキャビティが形成されてもよい。また、キャビティは、上型1の第1及び第2分割型1a,1b(下型2の第1及び第2分割型2a,2b)に跨って形成されてもよい。
【0031】
上型1(第1及び第2分割型1a,1b)は、上型支持プレート5(図5参照)の下面に設けられ、下型2(第1及び第2分割型2a,2b)は、下型支持プレート6(図4参照)の上面に設けられている。上型支持プレート5は、鋳型造型装置の可動プラテン7の下面の凹んだ部分に固定されたものであり、下型支持プレート6は、鋳型造型装置の固定プラテン8の上面の凹んだ部分に固定されたものであって、下型2を支持する下型支持部材に相当する。可動プラテン7及び固定プラテン8は互いに上下方向に対向配置されており、上型支持プレート5及び下型支持プレート6も互いに上下方向に対向配置されることになる。可動プラテン7(上型支持プレート5)は、不図示の型締装置により固定プラテン8(下型支持プレート6)に対して上下方向に移動可能に構成され、この上下移動により、型閉じ(型締め)及び型開きが行われる(図1では、可動プラテン7及び上型支持プレート5が型開きの位置に位置している)。尚、図1では、上型支持プレート5及び下型支持プレート6は見えていない。上型支持プレート5及び下型支持プレート6は必ずしも必要なものではなく、上型1を可動プラテン7に直接支持し、下型2を固定プラテン8に直接支持するようにしてもよい。この場合、固定プラテン8が、下型2を支持する下型支持部材となる。
【0032】
図4に示すように、下型支持プレート6には、該下型支持プレート6の厚み方向(上下方向)に貫通する貫通孔6aが形成され、下型支持プレート6の上面には、第1〜第4位置決めキー11〜14が設けられている。第1〜第3位置決めキー11〜13は、下型2の第1分割型2aの下型支持プレート6に対する位置決め用のものであり、第4位置決めキー14は、下型2の第2分割型2bの下型支持プレート6に対する位置決め用のものである。尚、固定プラテン8における上記貫通孔6aに対応する位置には、貫通孔6aと同様の貫通孔が形成されている。
【0033】
下型2の第1分割型2aは、第1〜第3位置決めキー11〜13により、水平方向の互いに垂直なX方向及びY方向において位置決めされるが、下型2の第2分割型2bは、第4位置決めキー14によりY方向のみにおいて位置決めされ、下型支持プレート6の上面においてX方向には移動可能になっている。第2分割型2bのX方向の位置決めは、後述の第5の下型クランプ装置20により第2分割型2bを第1分割型2aの側へ押圧して、第1及び第2分割型2a,2bの互いの分割合わせ面同士を密着させることで行う。
【0034】
図2及び図4に示すように、上記固定プラテン8の上面には、下型2の第1及び第2分割型2a,2b同士を一体化するように該第1及び第2分割型2a,2bをクランプする第1〜第5の下型クランプ装置16〜20が設けられている。第1の下型クランプ装置16は、下型2の第1分割型2aにおけるY方向一側の側面をクランプし、第2の下型クランプ装置17は、第1分割型2aにおけるY方向他側の側面をクランプし、第3の下型クランプ装置18は、下型2の第2分割型2bにおけるY方向一側の側面をクランプし、第4の下型クランプ装置19は、第2分割型2bにおけるY方向他側の側面をクランプする。
【0035】
第1〜第4の下型クランプ装置16〜19の構成は、同じであるので、第1の下型クランプ装置16の構成のみを具体的に説明する。第1の下型クランプ装置16は、Y方向に進退するシリンダロッド25が設けられたシリンダ24と、シリンダロッド25に連結されかつX方向に延びる連結部材26と、この連結部材26の両端部にそれぞれ固定されたクランプ部材27とを有している。クランプ部材27は、シリンダロッド25の進退動作により、水平方向(Y方向)に移動する。
【0036】
図6に示すように、クランプ部材27の先端部の下面には、下型2の第1分割型2aに向かって上側に傾斜する傾斜面27aが形成されている。また、下型2の第1分割型2aにおけるY方向一側の側面においてクランプ部材27に対応する部分には、クランプ部材27の傾斜面27aに対応する傾斜面2dが形成されている。そして、シリンダロッド25が下型2の第1分割型2aに向かって進出すると、クランプ部材27が第1分割型2aにおけるY方向一側の側面をクランプする。このとき、クランプ部材27の傾斜面27aが第1分割型2aの傾斜面2dに当接して第1分割型2aを下側へ押し付ける。こうして第1の下型クランプ装置16は、第1分割型2aのY方向一側の側面をクランプすることによって、第1分割型2aを下型支持プレート6の上面に押圧固定する。尚、クランプ部材27において傾斜面27aを構成する部分を他の部分とは異なる材料(摩耗し難い材料)で構成してもよい。同様に、下型2において傾斜面2dを構成する部分を他の部分とは異なる材料(摩耗し難い材料)で構成してもよい。
【0037】
第1及び第2の下型クランプ装置16,17により、下型2の第1分割型2aが下型支持プレート6の上面に押圧されて固定され、第3及び第4の下型クランプ装置18,19により、下型2の第2分割型2bが下型支持プレート6の上面に押圧されて固定されることになる。
【0038】
第5の下型クランプ装置20は、下型2の第2分割型2bにおけるX方向の第1分割型2aとは反対側の側面をクランプする。具体的には、第5の下型クランプ装置20は、Y方向に進退するシリンダロッド31が設けられた2つのシリンダ30を有している。これら2つのシリンダ30は、Y方向に対向配置されている。各シリンダロッド31の先端には、平面視で三角形状のクランプ部材32がそれぞれ固定されており、2つのクランプ部材32の間には、押圧部材33が介在している。そして、両シリンダ30のシリンダロッド31が相手側のシリンダ30に向かって進出すると、押圧部材33がクランプ部材32によって第2分割型2bの側へ押圧されて、第2分割型2bが第1分割型2aの側へ押圧される。つまり、クランプ部材32が押圧部材33を介して第2分割型2bにおけるX方向の第1分割型2aとは反対側の側面をクランプする。これにより、下型2の第1分割型2aと第2分割型2bとの分割合わせ面同士が合わされた状態(密着した状態)となる。したがって、第1〜第5の下型クランプ装置16〜20により、下型2の第1分割型2aと第2分割型2bとが、下型支持プレート6を介して一体化されることになる。
【0039】
下型2の第1分割型2aは、下型支持プレート6の上面に固定される固定分割型に相当し、下型2の第2分割型2bは、その固定分割型の側へ押圧される可動分割型に相当する。また、第5の下型クランプ装置20は、下型2の可動分割型を、該下型2の固定分割型の側へ押圧する下型可動分割型用クランプ装置に相当する。
【0040】
図3及び図5に示すように、上記可動プラテン7の下面には、上型1の第1及び第2分割型1a,1b同士を一体化するように該第1及び第2分割型1a,1bをクランプする第1〜第5の上型クランプ装置36〜40が設けられている。第1の上型クランプ装置36は、上型1の第1分割型1aにおけるY方向一側の側面をクランプし、第2の上型クランプ装置37は、第1分割型1aにおけるY方向他側の側面をクランプし、第3の上型クランプ装置38は、上型1の第2分割型1bにおけるY方向一側の側面をクランプし、第4の上型クランプ装置39は、第2分割型1bにおけるY方向他側の側面をクランプする。
【0041】
第1〜第4の上型クランプ装置36〜39の構成は、第1〜第4の下型クランプ装置16〜19と同様であり(第1〜第4の下型クランプ装置16〜19と同じ構成要素には、同じ符号を付している)、第1及び第2の上型クランプ装置36,37により、上型1の第1分割型1aが上型支持プレート5に押圧されて固定され、第3及び第4の上型クランプ装置38,39により、上型1の第2分割型1bが上型支持プレート5に押圧されて固定される。また、第5の上型クランプ装置40の構成は、第5の下型クランプ装置20と同様であり(第5の下型クランプ装置20と同じ構成要素には、同じ符号を付している)、第5の上型クランプ装置40により、上型1の第1分割型1aと第2分割型1bとの分割合わせ面同士が合わされた状態となる。したがって、第1〜第5の上型クランプ装置36〜40により、上型1の第1分割型1aと第2分割型1bとが、上型支持プレート5を介して一体化されることになる。尚、図3中、1dは、上型1に形成された、下型2の傾斜面2dと同様の傾斜面である。
【0042】
上型1の第1分割型1aは、上型支持プレート5の下面に固定される固定分割型に相当し、上型1の第2分割型1bは、上型支持プレート5の下面においてその固定分割型の側へ押圧される可動分割型に相当する。また、第5の上型クランプ装置40は、上型1の可動分割型を、該上型1の固定分割型の側へ押圧する上型可動分割型用クランプ装置に相当する。
【0043】
尚、第1及び第3の上型クランプ装置36,38には、X方向に延びかつシリンダロッド25に対してX方向に移動可能な後退阻止部材43が設けられ、第2及び第4の上型クランプ装置37,39には、X方向に延びかつシリンダロッド25に対してX方向に移動可能な後退阻止部材43が設けられている点が、第1〜第4の下型クランプ装置16〜19とは異なる。こられ後退阻止部材43の一端部には、作業者が操作して後退阻止部材43をX方向に移動させるための操作部43aが設けられている。そして、第1〜第4の上型クランプ装置36〜39のシリンダロッド25が進出してクランプ部材27により第1及び第2分割型1a,1bのY方向両側の側面をクランプしている状態にあるときに、作業者が後退阻止部材43を第5の上型クランプ装置40の側へ移動させておくことで、仮に第1〜第4の下型クランプ装置16〜19が何等かの異常で作動したとしても、クランプ部材32の後退が阻止されるようになっている。すなわち、後退阻止部材43におけるX方向のクランプ部材27に対応する位置には、クランプ部材27が嵌る貫通孔43bが形成されており、作業者が後退阻止部材43を第5の上型クランプ装置40の側へ移動させたときには、貫通孔43bの位置がクランプ部材27の位置に対してずれるために、クランプ部材27が後退できなくなる(図1及び図3参照)。クランプ部材27による第1及び第2分割型1a,1bのクランプを解除する際には、作業者が後退阻止部材43を第5の上型クランプ装置40とは反対側へ移動させる。こうすることで、貫通孔43bの位置がクランプ部材27の位置と同じになり(図5及び図9参照)、クランプ部材27の後退が可能になる。尚、後退阻止部材43におけるシリンダロッド25が通過する通過孔43cは、後退阻止部材43がシリンダロッド25に対してX方向に移動できるようにX方向に長い長孔状に形成されている。
【0044】
図5に示すように、上記上型支持プレート5には、その厚み方向(上下方向)に貫通する貫通孔5aが設けられているが、下型支持プレート6に設けられた第1〜第4位置決めキー11〜14のような位置決め部材は設けられていない。尚、可動プラテン7における上記貫通孔5aに対応する位置には、貫通孔5aと同様の貫通孔が形成されている。
【0045】
上型1の第1及び第2分割型1a,1bは、上型支持プレート5に位置決めされるのではなくて、下型支持プレート6に位置決めされた第1及び第2分割型2a,2bに対してそれぞれ位置決めされる。すなわち、下型2の第1及び第2分割型2a,2bにおける上型1との合わせ面(上面)には、位置決め用ダボ2eがそれぞれ突出形成されており、上型1の第1及び第2分割型1a,1bにおける下型2との合わせ面(下面)には、位置決め用ダボ2eが嵌合する位置決め用穴1eが形成されている。但し、上型1の第2分割型1bは、下型2の第2分割型2bに位置決めされた状態で、第2分割型2bに対してX方向に僅かに移動可能になっている。そして、後述の如く、鋳型造型金型を組み立てる際には、上記のようにクランプされた下型2上に上型1を載せた状態で、上型1を第1〜第5の上型クランプ装置36〜40によりクランプする。このようにすることで、上型1と下型2との位置関係が正確に維持される。
【0046】
図7に示すように、下型2の各キャビティ形成用凹部2cの底壁部には、複数の挿通孔2fが上下方向に延びて該底壁部を貫通するように形成され、該各挿通孔2fにエジェクタピン47がそれぞれ挿通されている。ここで、挿通孔2f、エジェクタピン47等は図7にのみ示し、図1、図2等では記載を省略している。また、図7では、固定プラテン8の記載を省略している。尚、キャビティ形成用凹部2cの、水平方向に沿って切断した断面積の大きさによっては、1つのキャビティ形成用凹部2cにおいて1つの挿通孔2fしか形成されていないものであってもよい。
【0047】
上記エジェクタピン47は、下型の下側に設けられたジュラルミン製の第1エジェクタプレート48に立設されて固定されていて、挿通孔2fに、下型2の下側からキャビティ形成用凹部2cに対して進退可能に挿通されている。第1エジェクタプレート48及び後述のガイドプレート51は、本実施形態では、鋳型造型金型において1つしか設けられていないが、各キャビティ形成用凹部2c毎に設けてもよい。エジェクタピン47を含む第1エジェクタプレート48の重量は、後述の第2エジェクタプレート49よりも軽量であって、作業者が手に持つことが可能な重量である。
【0048】
上記エジェクタピン47は、下型2と第1エジェクタプレート48との間の高さ位置に設けられたガイドプレート51のガイド孔51aによってガイドされている。このガイドプレート51は、下型支持プレート6の貫通孔6aの周壁部に形成された段部6bに水平に延びた状態で載せられており、このガイドプレート51の厚み方向(上下方向)に貫通するガイド孔51aにエジェクタピン47が挿通されている。そして、下型2が下型支持プレート6の上面に載せられているときには、エジェクタピン47は、基本的に下型2の挿通孔2fによってガイドされる。しかし、ガイドプレート51がないと、下型2を下型支持プレート6の上面に載せる際に、エジェクタピン47の先端側がふらつくために、下型2の挿通孔2fにエジェクタピン47を挿通することが困難になる。そこで、ガイドプレート51を設けることで、エジェクタピン47の先端側のふらつきを抑制して、下型2を、その挿通孔2fにエジェクタピン47を挿通しながら下型支持プレート6の上面に容易に載せることがきるようにする。
【0049】
上記下型2の4つの角部(第1分割型2aのX方向一側の2つの角部及び第2分割型2bのX方向他側の2つの角部)には、リターンピン52を上下方向に移動可能となるようにガイドするガイド部材53が設けられている。リターンピン52は、第1エジェクタプレート48の下側に設けられた第2エジェクタプレート49に立設されて固定されていて、リターンピン52の上部が、ガイド部材53に上下方向に貫通するように形成された嵌合孔53aに、上下方向に移動可能となるように嵌合されている。尚、第2エジェクタプレート49は、鋳型造型金型において1つしか設けられていない。
【0050】
上記リターンピン52の上端部は、拡径された拡径部52aとされ、この拡径部52aに対応して、上記嵌合孔53aの上端部は、拡径部52aが嵌合する大径部53bとされている。上型1と下型2とが互いの合わせ面で合わされた状態にあるとき、リターンピン52の拡径部52aは、嵌合孔53aの大径部53b内に嵌り込んでいる。このとき、拡径部52aの下面が大径部53bの底面に当接して、リターンピン52及び第2エジェクタプレート49は、それ以上下側には下降できないようになっている。
【0051】
第1エジェクタプレート48は、エジェクタプレート着脱装置61によって、第2エジェクタプレート49に着脱可能に取り付けられている。このエジェクタプレート着脱装置61は、本実施形態では、第1エジェクタプレート49の下面に設けられた略L字状のロック部材62と、第2エジェクタプレート49の下面に沿ってスライド可能に設けられた着脱部材63とを有している。
【0052】
ロック部材62は、第1エジェクタプレート48の下面から、第2エジェクタプレート49に形成された開口49aを通って該第2エジェクタプレート49の下側にまで延びて、その先端部62aが水平方向に折れ曲がっている。
【0053】
図8に示すように、着脱部材63は、第2エジェクタプレート49の下面におけるY方向に離れた2箇所にそれぞれ設けられた2つの支持ピン64が、着脱部材63の長孔63cにそれぞれ嵌ることで、第2エジェクタプレート49にY方向にスライド可能に支持されている。また、着脱部材63は、ロック部材62の先端部62aの上側に位置して該先端部62aと係合可能な係合部63aを有していて、着脱部材63のY方向のスライドにより、該係合部63aが、ロック部材62の先端部62aと係合する係合位置(図8(a)参照)と、ロック部材62の先端部62aの上側から退避して上記係合を解除する係合解除位置(図8(b)参照)との間で移動可能に構成されている。本実施形態では、着脱部材63は、第2エジェクタプレート49におけるX方向の2箇所にそれぞれ設けられている(図8では、X方向2箇所のうちの1箇所に設けられた着脱部材63を示す)。
【0054】
図8(b)に示すように、各着脱部材63には、4つの係合部63aが設けられている。4つの係合部63aのうち2つずつが、着脱部材63におけるY方向の同じ位置に位置していて、着脱部材63におけるX方向両側の側面にそれぞれ設けられている。これら係合部63aに対応して、ロック部材62及び開口49aがそれぞれ設けられている。
【0055】
着脱部材63の一端部には、作業者が、着脱部材63を押したり引いたりするための操作部63bが設けられており、作業者が操作部63bを介して着脱部材63を押すことで、着脱部材63が係合位置に移動する。これにより、着脱部材63の係合部63aが、ロック部材62の先端部62aの上側に位置して該先端部62aと係合して、第1エジェクタプレート48が第2エジェクタプレート49に取り付けられた状態となる。尚、図8(a)に示すように、第2エジェクタプレート49における操作部63bに対応する部分には、着脱部材63が係合位置からずれて係合解除位置に移動しないように、移動阻止部材65が上下移動可能に設けられている。この移動阻止部材65は、その重力により下側に下降していて、着脱部材63が係合位置からずれるのを阻止する。
【0056】
一方、作業者が、移動阻止部材65を手で持って上昇させた状態で、着脱部材63の操作部63bを介して着脱部材63を引くことで、着脱部材63が係合解除位置に移動する。これにより、係合部63aがロック部材62の先端部62aの上側から退避して、上記係合を解除する。そして、第1エジェクタプレート48を上側へ引き上げることで、第2エジェクタプレート49から取り外すことができる。尚、後述の如く下型2を下型支持プレート6から取り除けば、エジェクタピン47を含む第1エジェクタプレート48を、貫通孔6aを通して、下型支持プレート6の上側へ引き上げることが可能になる。
【0057】
上記第2エジェクタプレート49の下面には、不図示のシリンダにより上下方向に進退可能に構成された不図示の押出ロッドにより上側に押圧される押圧部49bが突出形成されている。第1エジェクタプレート48が第2エジェクタプレート49に取り付けられた状態でかつ上型1が下型2から取り除かれた状態において、押圧部49bが上記押出ロッドの前進により上側に押圧されると、第2エジェクタプレート49に取り付けられた第1エジェクタプレート48も上側に押圧されることとなり、これにより、エジェクタピン47が下型2のキャビティ形成用凹部2cに進出する。この結果、上記キャビティで造型された鋳型が該キャビティ形成用凹部2cから押し出されて、鋳型を取り出すことが可能になる。尚、第2エジェクタプレート49の上昇によりリターンピン52も上昇する。
【0058】
上記鋳型を取り出した後、上記押出ロッドが後退すると、第1及び第2エジェクタプレート48,49は、その自重により下降する。これにより、エジェクタピン47及びリターンピン52は上昇前の元の状態に復帰する。但し、第1及び第2エジェクタプレート48,49の自重だけでは、エジェクタピン47及びリターンピン52が元の状態に復帰しない場合がある。このような場合があっても、型閉じ状態にするべく上型1と下型2とが合わせられるときに、リターンピン52の上端部が上型1によって下側に押圧され、これにより、エジェクタピン47及びリターンピン52が元の状態に確実に復帰する。
【0059】
尚、図示は省略するが、上型支持プレート5の上側には、上型1の流入口(図示せず)に接続されるノズルを有しかつ鋳砂が収容されたブローヘッドが設けられており、このブローヘッドのノズルから上記流入口を介して上記キャビティ内に鋳砂が吹き込まれて充填される。
【0060】
次に、別の鋳型を造型するべく、上型1、下型2及びエジェクタピン47を新たなものに交換する手順、つまり鋳型造型金型の段替え手順を説明する。
【0061】
図9(a)に示すように、予め、上記型締装置により、上型1と下型2とを互いの合わせ面で合わせた状態(型閉じ状態)にして、後退阻止部材43を第5の上型クランプ装置40(図3及び図5参照)とは反対側へ移動させておく。この型閉じ状態で、第1〜第5の上型クランプ装置36〜40(図3及び図5参照)による上型1の第1及び第2分割型1a,1bのクランプを解除する。
【0062】
続いて、図9(b)に示すように、上記型締装置を作動させて、可動プラテン7及び上型支持プレート5を型開き位置へ上昇させる。上記クランプの解除により、上型支持プレート5が上昇しても、上型1は上昇せず、下型2上に載ったままとなる。そして、図9(c)に示すように、作業者が、上記クランプを解除した上型1の全分割型(第1及び第2分割型1a,1b)を下型2から取り除く。このとき、上型1の第1及び第2分割型1a,1bは、小さくて軽いので、作業者は各分割型1a,1bを手に持って下型2から容易に取り除くことができる。
【0063】
次いで、第1〜第5の下型クランプ装置16〜20(図2及び図4参照)による下型2の第1及び第2分割型2a,2bのクランプを解除し、この後、図9(d)に示すように、作業者が、そのクランプを解除した下型2の全分割型(第1及び第2分割型2a,2b)を下型支持プレート6から取り除く。このとき、エジェクタピン47(図2及び図4参照)が下型2の挿通孔2fから抜ける。下型2の第1及び第2分割型2a,2bは、小さくて軽いので、作業者は各分割型2a,2bを手に持って下型支持プレート6から容易に取り除くことができる。
【0064】
続いて、作業者が、エジェクタプレート着脱装置61における着脱部材63の操作部63bを引いて着脱部材63を係合解除位置に移動させて、着脱部材63の係合部63aの、ロック部材62の先端部62aとの係合を解除する(図8(b)参照)。この後、作業者が、エジェクタピン47を含む第1エジェクタプレート48を、下型支持プレート6の貫通孔6aを通して、下型支持プレート6の上側へ引き上げることで、第2エジェクタプレート49から取り外す。第1エジェクタプレート48を上側へ引き上げる際、ガイドプレート51が第1エジェクタプレート48の上面に当接して、第1エジェクタプレート48と共に上側へ引き上げられる。
【0065】
次に、作業者が、新たな下型2に対応した新たなエジェクタピン47が立設された新たな第1エジェクタプレート48を、下型支持プレート6の貫通孔6aの上側から貫通孔6aを通して、上記第1エジェクタプレート48を取り除いた第2エジェクタプレート49の上側へ降ろす。このとき、新たなガイドプレート51を、そのガイド孔51aに上記新たなエジェクタピン47を挿通した状態で新たな第1エジェクタプレート48の上面に載せておく。この新たなガイドプレート51は、新たな第1エジェクタプレート48を下型支持プレート6の貫通孔6aを通して下降させる途中で、該貫通孔6aの周壁部における段部6bに載る。このため、新たなガイドプレート51は、段部6bに載ったまま、それ以上下降できなくなり、新たな第1エジェクタプレート48の上面から離れる。
【0066】
そして、作業者が、新たな第1エジェクタプレート48に設けられたロック部材62の先端部62aを、第2エジェクタプレート49の開口49aを通して第2エジェクタプレート49の下側にまで移動させる。この状態で、作業者が、エジェクタプレート着脱装置61の着脱部材63を、操作部63bを介して押して係合位置に移動させる。これにより、着脱部材63の係合部63aが、ロック部材62の先端部62aと係合する(図8(a)参照)。こうして、エジェクタプレート着脱装置61により、新たなエジェクタピン47が立設された新たな第1エジェクタプレート48を、第2エジェクタプレート49に対して取り付ける。エジェクタピン47及びガイドプレート51を含む第1エジェクタプレートは軽量であるので、第1エジェクタプレート48の交換を容易に行うことができる。
【0067】
続いて、下型2を取り除いた下型支持プレート6の上面に、新たな下型2の第1及び第2分割型2a,2bを載せる。このとき、新たな下型2の挿通孔2fに上記新たなエジェクタピン47が挿通されるようにする。新たなエジェクタピン47は、新たなガイドプレート51のガイド孔51aにより先端側のふらつきが抑制されるので、新たな下型2を、その挿通孔2fに新たなエジェクタピン47を挿通しながら下型支持プレート6の上面に容易に載せることができる。尚、下型支持プレート6の上面に第1分割型2aを載せる際には、第1〜第3位置決めキー11〜13により下型支持プレート6に対する第1分割型2aの位置決めを行い、第2分割型2bを載せる際には、第4位置決めキー14により下型支持プレート6に対する第2分割型2bの位置決めを行う。
【0068】
次いで、新たな下型2の第1分割型2a上に、新たな上型1の第1分割型1aを該両型1a,2aの合わせ面が合わされるように載せるとともに、新たな下型2の第2分割型2b上に、新たな上型1の第2分割型1bを該両型1b,2bの合わせ面が合わされるように載せる。このとき、下型2の第1分割型2aにおける位置決め用ダボ2eと上型1の第1分割型1aにおける位置決め用穴1eとにより、下型2の第1分割型2aに対する上型1の第1分割型1aの位置決めを行い、下型2の第2分割型2bにおける位置決め用ダボ2eと上型1の第2分割型1bにおける位置決め用穴1eとにより、下型2の第2分割型2bに対する上型1の第2分割型1bの位置決めを行う。
【0069】
続いて、第1〜第5の下型クランプ装置16〜20により、下型支持プレート6の上面における新たな下型2の第1及び第2分割型2a,2b同士を下型支持プレート6を介して一体化する(図9(b)と同じ状態となる)。
【0070】
この後、上記型締装置を作動させて、可動プラテン7及び上型支持プレート5を型閉じの位置へ下降させる。これにより、上型支持プレート5の下面が上記新たな上型1の上面に略接する。この状態で、第1〜第5の上型クランプ装置36〜40により、新たな下型2上における新たな上型1の第1及び第2分割型1a,1b同士を上型支持プレート5を介して一体化する(図9(a)と同じ状態となる)。本実施形態では、最後に、作業者が後退阻止部材43を第5の上型クランプ装置40の側へ移動させて、第1〜第4の上型クランプ装置36〜39のクランプ部材27の後退を阻止する。こうして鋳型造型金型の段替えが終了する。
【0071】
ここで、鋳型造型金型の型修正を行うために、上型1及び下型2を上型支持プレート5及び下型支持プレート6に対して取り付けたり取り外したりする着脱作業も、上記段替え作業と同様である。但し、型修正のための着脱作業においては、第1エジェクタプレート48の第2エジェクタプレート49に対する取付け及び取外しを行う必要はない。
【0072】
したがって、本実施形態では、作業者は、上型1及び下型2の第1及び第2分割型1a,1b、2a,2b並びに第1エジェクタプレート48を、ホイスト等を用いて吊り上げる必要がなくて、手に持って容易に移動させることができる。また、作業者は、着脱部材63を押したり引いたりすることで、着脱部材63の係合部63aをロック部材62の先端部62aに係合させたり該係合を解除したりすることが容易に行え、この結果、第1エジェクタプレート48の第2エジェクタプレート49に対する取付け及び取外しを容易に行うことができる。よって、鋳型造型金型の段替え作業や型修正のための着脱作業の作業性を向上させることができる。
【0073】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0074】
例えば、上記実施形態では、上型1及び下型2それぞれの分割数を2つにしたが、2つには限らず、3つ以上であってもよい。この分割数は、1つの分割型の重量が、作業者が手に持つことができる程度になるようにすればよい。
【0075】
また、上記実施形態では、上型1及び下型2並びに第1エジェクタプレート48をジュラルミン製としたが、作業者が手に持つことができるのであれば、どのような材料であってもよい。但し、上型1及び下型2については鋳型の成形性に問題がない材料にする必要がある。また、上型1及び下型2を出来る限り軽量にするために、上型1及び下型2に対して出来る限り肉抜きを施すようにすることが好ましい。
【0076】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、上型と下型とを備え、該上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、該両型間に、鋳砂が充填されるキャビティが形成される鋳型造型金型及び同金型段替え方法に有用であり、上下両型等が重量のある大型のものである場合に有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 上型
1a 第1分割型(固定分割型)
1b 第2分割型(可動分割型)
1c キャビティ形成用凹部
2 下型
2a 第1分割型
2b 第2分割型
2c キャビティ形成用凹部
2f 挿通孔
6 下型支持プレート(下型支持部材)
16 第1の下型クランプ装置
17 第2の下型クランプ装置
18 第3の下型クランプ装置
19 第4の下型クランプ装置
20 第5の下型クランプ装置(下型可動分割型用クランプ装置)
27 クランプ部材
32 クランプ部材
36 第1の上型クランプ装置
37 第2の上型クランプ装置
38 第3の上型クランプ装置
39 第4の上型クランプ装置
40 第5の上型クランプ装置(上型可動分割型用クランプ装置)
47 エジェクタピン
48 第1エジェクタプレート
49 第2エジェクタプレート
52 リターンピン
53 ガイド部材
53a 嵌合孔
61 エジェクタプレート着脱装置
62 ロック部材
62a ロック部材の先端部
63 着脱部材
63a 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とを備え、該上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、該両型間に、鋳砂が充填されるキャビティが形成される鋳型造型金型であって、
上記上型及び下型の各々が、互いに水平方向に分割可能に構成された複数の分割型からなり、
上記上型及び下型各々の複数の分割型同士をそれぞれ一体化するように該分割型をクランプする上型及び下型クランプ装置と、
上記下型のキャビティ形成用凹部の底壁部に上下方向に延びるように形成された挿通孔に、該下型の下側から該キャビティ形成用凹部に対して進退可能に挿通されるエジェクタピンと、
上記下型の側方に設けられたガイド部材に上下方向に移動可能となるようにガイドされ、上記上型と下型とが合わせられるときに、該上型により下側に押圧されるリターンピンと、
上記下型の下側に設けられ、上記エジェクタピンが立設された第1エジェクタプレートと、
上下方向に進退可能に構成された押出ロッドにより上側に押圧されるように構成され、上記リターンピンが立設された第2エジェクタプレートと、
上記第1エジェクタプレートを上記第2エジェクタプレートに着脱可能に取り付けるエジェクタプレート着脱装置とを備えていることを特徴とする鋳型造型金型。
【請求項2】
請求項1記載の鋳型造型金型において、
上記上型及び下型クランプ装置は、水平方向に移動可能なクランプ部材をそれぞれ有し、
上記上型及び下型クランプ装置のクランプ部材は、上記上型及び下型それぞれの分割型の側面部をクランプするように構成されていることを特徴とする鋳型造型金型。
【請求項3】
請求項1又は2記載の鋳型造型金型において、
上記エジェクタプレート着脱装置は、
上記第1エジェクタプレートの下面から、該第1エジェクタプレートの下側に設けられた上記第2エジェクタプレートに形成された開口を通って該第2エジェクタプレートの下側にまで延びて、その先端部が水平方向に折れ曲がった略L字状のロック部材と、
上記第2エジェクタプレートの下面に、上記第2エジェクタプレートの下面に沿ってスライド可能に設けられた着脱部材と、
を有し、
上記着脱部材は、上記ロック部材の先端部の上側に位置して該先端部と係合可能な係合部を有していて、該着脱部材のスライドにより、該係合部が、上記ロック部材の先端部と係合する係合位置と、上記ロック部材の先端部の上側から退避して上記係合を解除する係合解除位置との間で移動可能に構成されていることを特徴とする鋳型造型金型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の鋳型造型金型において、
上記上型及び下型それぞれの分割型は、固定分割型と可動分割型とで構成され、
上記上型クランプ装置は、上記上型の可動分割型を、該上型の固定分割型の側へ押圧する上型可動分割型用クランプ装置を含み、
上記下型クランプ装置は、上記下型の可動分割型を、該下型の固定分割型の側へ押圧する下型可動分割型用クランプ装置を含むことを特徴とする鋳型造型金型。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の鋳型造型金型において、
上記上型、上記下型及び上記第1エジェクタプレートが、ジュラルミン製であることを特徴とする鋳型造型金型。
【請求項6】
上型と下型とを備え、該上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、該両型間に、鋳砂が充填されるキャビティが形成される鋳型造型金型の段替え方法であって、
上記上型及び下型の各々が、互いに水平方向に分割可能に構成された複数の分割型からなり、
上記上型及び下型各々の複数の分割型同士をそれぞれ一体化するように該分割型をクランプする上型及び下型クランプ装置と、
上記下型のキャビティ形成用凹部の底壁部に上下方向に延びるように形成された挿通孔に、該下型の下側から該キャビティ形成用凹部に対して進退可能に挿通されるエジェクタピンと、
上記下型の側方に設けられたガイド部材に上下方向に移動可能となるようにガイドされ、上記上型と下型とが合わせられるときに、該上型により下側に押圧されるリターンピンと、
上記下型の下側に設けられ、上記エジェクタピンが立設された第1エジェクタプレートと、
上下方向に進退可能に構成された押出ロッドにより上側に押圧されるように構成され、上記リターンピンが立設された第2エジェクタプレートと、
上記第1エジェクタプレートを上記第2エジェクタプレートに着脱可能に取り付けるエジェクタプレート着脱装置とを備え、
上記下型及び上記ガイド部材は、下型支持部材の上面に設けられたものであり、
上記上型と下型とを互いの合わせ面で合わせた状態で、上記上型クランプ装置による上型の分割型のクランプを解除する工程と、
上記クランプを解除した上型の全分割型を上記下型から取り除く工程と、
上記上型を上記下型から取り除いた後、上記下型クランプ装置による下型の分割型のクランプを解除する工程と、
上記クランプを解除した下型の全分割型を上記下型支持部材の上面から取り除く工程と、
上記エジェクタプレート着脱装置により、上記エジェクタピンが立設された第1エジェクタプレートを上記第2エジェクタプレートから外れた状態にして、該第1エジェクタプレートを上記第2エジェクタプレートから取り除く工程と、
上記第1エジェクタプレートを取り除いた上記第2エジェクタプレートに対して、上記エジェクタプレート着脱装置により、新たなエジェクタピンが立設された新たな第1エジェクタプレートを取り付ける工程と、
上記下型を取り除いた下型支持部材の上面に、新たな下型の全分割型を、該下型の挿通孔に上記新たなエジェクタピンが挿通されるように載せる工程と、
上記新たな下型上に、新たな上型の全分割型を該両型の合わせ面が合わされるように載せる工程と、
上記下型クランプ装置により、上記下型支持部材の上面における新たな下型の分割型同士を一体化する工程と、
上記新たな下型の分割型の一体化後に、上記上型クランプ装置により、上記新たな下型上における新たな上型の分割型同士を一体化する工程と、
を含むことを特徴とする鋳型造型金型の段替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−250246(P2012−250246A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123411(P2011−123411)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】