説明

鋳片の凝固判定方法及び装置並びに連続鋳造鋳片の製造方法

【課題】完全非接触で連続鋳造鋳片のクレータエンド位置を検出する。
【解決手段】鋳片1に対し、横波用の送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波をパルス単位で繰り返し送信する送信ステップと、前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された受信信号における各パルスを加算平均するとともに、その加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下として信号処理し、この信号処理結果に基づいて前記鋳片の凝固状態を判定する判定ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼材の連続鋳造において、横波電磁超音波により鋳片の凝固状態を判定する鋳片の凝固状態判定方法及び装置並びに連続鋳造鋳片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材製造における鋳造工程にあっては、溶鋼を保持する鋳型から表層部が凝固した鋳片を連続的に引き抜くとともに、その引抜進行につれて鋳片の凝固部分を中心部まで至らしめ完全凝固させる、連続鋳造法が広く用いられている。
【0003】
ここで、連続鋳造鋳片の完全凝固端(クレータエンド)が連続引抜過程にある鋳片のどの位置にあるかを判定することが極めて重要である。クレータエンドの位置検出をすることが鋳片の生産性や品質の向上に大きく貢献するためである。
【0004】
例えば生産性を向上させるために鋳造速度を増やすと、クレータエンドは鋳片の下流側に移動する。ここで、その位置が鋳片切断機による切断位置を超えてしまうと溶鋼漏れといった大事故になる可能性がある。したがって、クレータ位置が明確にわからない場合には、鋳造速度を無闇に増速できない。
【0005】
また、凝固の中心偏析を減らし、高品質化を図るための軽圧下操業では、クレータエンドを軽圧下帯近傍に位置させるように鋳造速度や2次冷却量を制御する必要がある。これらの要求に応えるためには、鋳片の凝固状態を、連続的に計測する必要がある。
【0006】
したがって、鋳片内部の凝固状態を判定するために、今までに種々の方法が提案されている。
【0007】
例えば鋳片の内部の完全凝固/未凝固を判定するために、超音波の横波の透過強度を求める方法が知られている。横波は固相のみ透過し、液相があると透過しないという性質がある。そこで、横波を鋳片の厚み方向に送信し、鋳片を透過した信号が検出されれば完全に凝固していると判断でき、信号が得られなければ未凝固部が残存していると判断できる。この性質を利用し、さらにクレータエンドが具体的にどの位置にあるかを判定する方法として、透過波の伝播時間を利用する方法も知られている。
【0008】
ここで、横波超音波を熱間の鋳片に発生検出させるための方法として、電磁的な超音波の送受信方法である電磁超音波法が知られている。
【0009】
特許文献1(特開昭52-130422号公報)では図10に示すように二つの横波用電磁超音波センサで鋳片を挟み横波超音波の透過強度を測定するようにしている。
【0010】
特許文献2(特開昭62-148850号公報)では縦波と横波を同時に発生できる電磁超音波センサを用いるようにし、横波の透過強度で凝固状態を判定する。同時に、未凝固部があっても透過する縦波の信号を用いることによりリフトオフ変動やセンサ異常もチェックできるようにしている。
【0011】
特許文献3(特開平10-197502号公報)では鋳片での横波の共鳴周波数を測定し、中心固相率(鋳片軸心部の固液共存相における固相の比率)0.25〜1.0の間で共鳴周波数から求めた横波透過時間から固相率を推定するようにしている。
【0012】
しかしながら、これらの横波電磁超音波法は感度が低いという問題がある。例えば、炭素鋼の連続鋳造では材料の温度は1000℃以上と非常に高い温度となる。しかし、図11(非特許文献1(非破壊検査Vol.34, No.11, pp.796-803 電磁超音波の基礎と応用、川島))に示されているように、炭素鋼では800℃を超えると横波電磁超音波の感度は極めて低くなることが知られている。軸心部の凝固状態が液相から固相にまたは固相から液相に移る瞬間を精度良く判定するためには透過信号の強度が出るか出ないかの微弱な信号を検出する必要があるが、上述のように熱間では横波電磁超音波の感度が極めて低いため精度良い測定が困難である。
【0013】
また、電磁超音波センサの感度はリフトオフ(材料とセンサとのギャップ)を離すほど弱くなっていくため、微弱な信号を検出するためにはリフトオフを狭くしなければならず、一般にリフトオフは2mm程度が限度とされている。これを連続鋳造機内で保つために、例えば特許文献4(特開平11-183449号公報)のようにセンサにタッチロールを取付け、このタッチロールで鋳片に押し付けるようにするなどの工夫が必要である。このようにしても、数100℃を超えかつスケールも多い環境下で連続的に使用していると、センサと鋳片の間にスケールが詰まってセンサを破壊したり、タッチロールが固着して特許文献5(特開昭60-11110号公報)に述べられているようにセンサが鋳造ロールに巻き込まれたりするなどの問題が残っている。このため、鋳片の凝固状態を安定して連続的に判定することは実現困難である。
【0014】
従って、電磁超音波センサの感度を高めてリフトオフを広くし、タッチロールなどなしに鋳片に完全に非接触で計測できるようにすることが必要であり、電磁超音波センサの感度を向上させる方法として以下の技術が提案されている。
【0015】
特許文献6(特開昭53-106085号公報)では、ローレンツ力による電磁超音波を使用し、熱間鋼材に冷却用流体を吹き付けて材料温度をキュリー点以下にし、強磁場を得るとともに電気伝導度も高めるようにしている。ローレンツ力による電磁超音波の駆動力はF=B×Jであるので、BとJが大きくなることで感度が高くなる。
【0016】
特許文献7(特開2000-266730号公報)では、所定パルス幅内で周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を用い、受信信号に対し、前記送信信号と同一または類似の波形の参照信号を用いて相関演算を行うようにしている。受信信号と送信信号の相関は高いが、ノイズと送信信号との相関は低いため、相関演算によってS/N(信号対雑音比)が向上する。
【0017】
特許文献8(特開昭53-57088号公報)では、電磁超音波発生器に同期して受信信号を平均するようにしている。ノイズはパルス繰り返し毎でランダムな波形であるから、平均化によってS/Nが向上する。
【特許文献1】特開昭52−130422号公報
【特許文献2】特開昭62−148850号公報
【特許文献3】特開平10−197502号公報
【特許文献4】特開平11−183449号公報
【特許文献5】特開昭60−11110号公報
【特許文献6】特開昭53−106085号公報
【特許文献7】特開2000−266730号公報
【特許文献8】特開昭53−57088号公報
【非特許文献1】川島、「電磁超音波の基礎と応用」、非破壊検査、Vol.34、No.11、p.796-803
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献6(特開昭53-106085号公報)の冷却用流体を吹き付ける方法では、図12に示すように磁束密度の絶対値はキュリー点近傍ではまだ小さく、キュリー点より200℃以上下回らなければ強磁場を得る効果は得られない。しかし、鋳片の材質上、冷やし過ぎも問題があるため、あまり冷やすこともできない。またローレンツ力による電磁超音波の変換効率は元々非常に低いこともあり、S/N向上効果は少ない。
【0019】
特許文献7(特開2000-266730号公報)のバースト波を用いる方法では、これを電磁超音波に適用しようとすると、送信信号に比べて受信信号が極めて微弱なため、受信信号に送信信号が漏れこんでしまう。このため、バースト波のパルス幅が長すぎると、送信信号が鋳片透過信号を隠してしまうため、あまり長いパルス幅にできない。特に連続鋳造に適用しようとすると、鋳片の内部温度が操業中様々に変化することから、透過信号の現れる位置が変動するが、これを勘案するとパルス幅はあまり長くできず、S/N向上効果は少ない。
【0020】
特許文献8(特開昭53-57088号公報)の同期加算平均を用いる方法では、連続鋳造の場合、上述のように透過信号の現れる位置が変動することから、平均回数が多すぎるとノイズばかりか透過信号も小さくなってしまう問題がある。このため、平均回数はあまり大きくできず、S/N向上効果は少ない。
【0021】
以上のように、従来技術ではS/Nの向上効果が十分でなく、非接触計測を行うほどには電磁超音波センサのリフトオフを大きくすることができない。このため、連鋳鋳片に対しタッチロールも何も使わず完全に非接触でクレータエンド検出計測することは実現されていない。
【0022】
本発明は、このような実情を考慮してなされたもので、その第1の目的は、S/N比を改善することで、より正確に連続鋳造鋳片のクレータエンド位置の検出を可能とした鋳片の凝固状態判定方法を提供することにある。
【0023】
また、第2の目的は、完全非接触で連続鋳造鋳片のクレータエンド位置を検出することを可能とした鋳片の凝固状態判定方法及び装置を提供することにある。
【0024】
また、第3の目的は、完全非接触の計測で得られる連続鋳造鋳片の凝固状態情報を利用して生産性又は品質を高めることを可能とした連続鋳造鋳片の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明者は、横波電磁超音波を連続鋳造に適用した場合の感度について種々の実験と考察を重ねた結果、以下の各S/N改善方法を適宜組み合わせることで(場合によっては単独で)、完全非接触で計測できるセンサのリフトオフを実現できることを見出した。
【0026】
第1のS/N改善方法は、被測定材の表層部を冷却によって相変態させ、この冷却した部位に近接して横波用の送信用電磁超音波センサと受信用電磁超音波センサを配置するものである(以下、「表層冷却によるS/N改善」という場合がある)。
【0027】
この方法が特許文献6(特開昭53-106085号公報)と異なる点は、冷却によって相変態させるようにしていることと、横波用電磁超音波センサを用いるようにしている点にある。冷却過程においては、冷却速度が速くかつ冷却時間が短い場合、被測定材をキュリー点以下に低下させたとしても、過冷却のため結晶はしばらくγ相のままであり、磁性はすぐには回復しない。そこで本発明においては確実に磁性が回復するように相変態するまで冷却するようにしている。このようにすると、横波電磁超音波を磁性体に適用することとなるが、超音波の発生メカニズムとしてローレンツ力でなく磁歪の効果が支配的になるという新たな効果を得ることができる。
【0028】
図4でこれを説明する。キュリー点より高い温度では、横波電磁超音波はローレンツ力のみで発生している。ここで冷却すると、過冷却のためキュリー点より若干低い温度で磁性が回復する。これにつれて、ローレンツ力の効果は大きくなっていくが、ここで磁歪の効果も出てくるようになる、磁歪の効果はローレンツ力よりもさらに大きくため、磁歪による電磁超音波は、ローレンツ力による電磁超音波より高い感度が得られる。従って、被測定材の表層部を冷却によって相変態させ、この冷却した部位に近接して横波用の送信用電磁超音波センサと受信用電磁超音波センサを配置すれば、大幅な感度向上を得ることができる。
【0029】
ここで、冷却によって相変態させる必要のある被測定材の表層部としては、その幅が電磁超音波センサのコイル幅以上、長さが電磁超音波センサのコイル長さ以上、深さが用いる超音波の周波数における浸透深さ程度、例えば前記周波数が1MHzであれば0.1〜0.2mm程度以上であることが望ましい。なお、相変態させる必要のある表層部は、全てα相となることが望ましいが、表層部におけるγ相からα相への相変態の仕方は冷却条件や表層部の組成状態等により複雑に変化するため、部分的にγ相が残っている状態であってもある程度以上α相に変態していれば本発明の効果は得られる。
【0030】
第2のS/N改善方法は、送信信号のバースト波パルス幅がその伝播時間を超えない範囲で最大のパルス幅となるようにするものである(以下、「バースト波によるS/N改善」という場合がある)。具体的には、鋳片厚み、鋳片温度、音速とから定まる最大数の近傍に設定した所定パルス幅内で、周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を送信用電磁超音波センサに印加して鋳片内に横波超音波を送信する。これを受信用電磁超音波センサにより受信し、その受信信号に対し、送信信号と同一または類似の波形の参照信号を用いて相関演算を行うようにする。
【0031】
ここでは特許文献7(特開2000-266730号公報)と同様に、変調した送信信号を用い、受信信号の相関演算を行うようにしている。相違点は、これによる効果を最大限に得るために、送信信号のパルス幅を鋳片厚み、鋳片温度、音速とから定まる最大数の近傍に設定する点である。
【0032】
鋳片を透過した信号は、図5に示されるように、送信信号から伝播時間だけ遅れた位置に現れる。伝播時間dTは、鋳片厚みd、鋳片温度T(x)、音速C(T)とから、以下のように推定できる。なお、ここでTaは鋳片の平均温度である。
【0033】
【数1】

【0034】
鋳片の温度分布は、大まかには伝熱計算で容易に求まるため、予め鋳片の厚み、操業条件に応じて平均温度を求めておけば伝播時間が求められる。従って、この伝播時間を超えない範囲で最大のパルス幅を設定することで、最大のS/N改善が得られる。
【0035】
第3のS/N改善方法は、平均回数を16回以上かつ平均後の透過信号が小さくならない範囲に設定した平均回数で、相関後の信号または受信信号を送信信号に同期して加算平均するものである(以下、「加算平均によるS/N改善」という場合がある)。ここでは特許文献8(特開昭53-57088号公報)と同様に、同期加算平均を行うようにしているが、鋳片温度は操業状態によって様々に変化するため、図6に示すように透過信号の現れる位置は刻一刻変化することになる。この結果、伝播時間の変化率が大きい時、平均処理後に透過信号が小さくなってしまい、凝固状態の判定精度が低くなる。図6は平均回数が2回の場合を示しているが、平均回数がさらに多いと、より伝播時間の変化割合は増えてしまうため、より透過信号が小さくなる。これを避けるため、平均後の透過信号が小さくならない範囲に設定するようにしている。ここで、S/N比を最大にする平均回数は次のように定められる。
【0036】
透過信号を周波数fの正弦波とし、透過信号の単位時間あたりの伝播時間変化率をτ(=(t2-t1)/T)、パルス繰り返し周波数をPRF(=1/Tprf)、平均回数をNとすると、加算平均後の透過信号の振幅Xsは以下の式で表される。
【0037】
【数2】

【0038】
また、ノイズの振幅Xnは
【0039】
【数3】

【0040】
である。
【0041】
よって、平均後のS/N比改善量αとして、
【0042】
【数4】

【0043】
が得られる。そこで、これらの式に基づいて最大の平均回数を求めれば良い。
従って、これを超えない範囲で平均回数を設定することで、最大のS/N改善を得るようにする。
【0044】
以上、個々のS/N改善方法について説明したが、1番目の「表層冷却によるS/N改善」は電磁超音波の発生原理を利用したもの、2番目の「バースト波によるS/N改善」は送信信号とノイズとの相関を利用したもの、3番目の「加算平均によるS/N改善」はノイズの時間ランダム性を利用したものであり、これらのS/N改善効果は全て異なる原理で得ている。従って、S/N改善量は加算されていくこととなり、大きなS/N改善量が得られることになる。
【0045】
これらのS/N改善方法や送信信号の高出力化方法を適宜組み合わせていくと、ある段階で電磁超音波センサにタッチロールを付けて鋳片に接触させるようなことをしなくても構わないほど、リフトオフを広く取ることができるようになる。従来技術では、リフトオフはせいぜい2mmであり、発明者が知る限り、現実に、完全非接触でかつ連続的に連続鋳造鋳片の凝固状態を判定できるシステムは存在しない。しかし、本発明では上記したS/N改善方法同士、あるいはS/N改善方法と送信信号の高出力化方法を組み合わせることで、従来は不可能であった完全非接触かつ連続的な連続鋳造鋳片の凝固状態判定を現実に可能なものとした。
【0046】
上記課題を解決するために、具体的には以下のような手段が提供される。
(1)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する方法であって、
前記鋳片の表層部が相変態するまで当該鋳片を冷却する冷却ステップと、
前記冷却ステップにて冷却された鋳片に対し、横波用の送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波を送信する送信ステップと、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した受信信号に基づき、前記鋳片の凝固状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする鋳片の凝固判定方法。
(2)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する方法であって、
前記電磁超音波が鋳片を透過する伝播時間を超えない時間の最大数に対し、その50%から150%の範囲に設定されたパルス幅内で、周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を、横波用の送信用電磁超音波センサによって送信する送信ステップと、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した受信信号に対し、前記送信信号と同一または類似の波形の参照信号を用いて相関演算を行い、前記鋳片の凝固状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする鋳片の凝固判定方法。
(3)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する方法であって、
前記鋳片に対し、横波用の送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波をパルス単位で繰り返し送信する送信ステップと、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された受信信号における各パルスを加算平均するとともに、その加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下として信号処理し、この信号処理結果に基づいて前記鋳片の凝固状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする鋳片の凝固判定方法。
(4)前記送信用電磁超音波センサ及び前記受信用電磁超音波センサは、鋳片と非接触状態にあることを特徴とする上記(1)乃至(3)のうち何れかに記載の鋳片の凝固判定方法。
(5)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する方法であって、
前記鋳片の表層部が相変態するまで当該鋳片を冷却する冷却ステップと、
前記電磁超音波が鋳片を透過する伝播時間を超えない時間の最大数に対し、その50%から150%の範囲に設定されたパルス幅内で、周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を、前記冷却ステップにて冷却された鋳片に対して、鋳片と非接触状態にある横波用の送信用電磁超音波センサによって送信する送信ステップと、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した受信信号に対し、前記送信信号と同一または類似の波形の参照信号を用いて相関演算を行い、前記鋳片の凝固状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする鋳片の凝固判定方法。
(6)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する方法であって、
前記鋳片の表層部が相変態するまで当該鋳片を冷却する冷却ステップと、
前記冷却ステップにて冷却された鋳片に対し、鋳片と非接触状態にある横波用の送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波をパルス単位で繰り返し送信する送信ステップと、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された受信信号における各パルスを加算平均するとともに、その加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下として信号処理し、この信号処理結果に基づいて前記鋳片の凝固状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする鋳片の凝固判定方法。
(7)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する方法であって、
前記電磁超音波が鋳片を透過する伝播時間を超えない時間の最大数に対し、その50%から150%の範囲に設定されたパルス幅内で、周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の送信用電磁超音波センサによってパルス単位で繰り返し送信する送信ステップと、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された受信信号における各パルスを加算平均する第1の信号処理と、受信信号に対し前記送信信号と同一または類似の波形の参照信号を用いて相関演算を行う第2の信号処理とを、第1,第2の信号処理の順あるいは第2,第1の信号処理の順に実行し、その信号処理結果に基づいて前記鋳片の凝固状態を判定するとともに、前記第1の信号処理における加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下とする判定ステップとを有することを特徴とする鋳片の凝固判定方法。
(8)前記鋳片の表層部が相変態するまで当該鋳片を冷却する冷却ステップを備え、
前記送信ステップは、前記冷却ステップにて冷却された鋳片に対して送信信号を送信することを特徴とする請求項7記載の鋳片の凝固判定方法。
(9)前記信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数は、256回とすることを特徴とする上記(3)、(4)、(6)、(7)又は(8)のうち何れかに記載の鋳片の凝固判定方法。
(10)前記送信用電磁超音波センサ及び前記受信用電磁超音波センサは、前記鋳片との距離を4mm以上離して設置されることを特徴とする上記(4)乃至(9)のうち何れかに記載の鋳片の凝固判定方法。
(11)前記送信用電磁超音波センサ及び又は前記受信用電磁超音波センサは、電磁超音波の送受信に電磁石を用いるとともに、当該電磁石の励磁電流を、凝固判定に必要な計測時間よりは長時間継続するパルス電流としたことを特徴とする上記(1)乃至(10)のうち何れかに記載の鋳片の凝固判定方法。
(12)溶鋼を凝固させつつ、連続鋳造鋳片をモールドから引き抜く引抜ステップと、
前記引抜ステップにて引き抜かれた鋳片内部の凝固状態を、上記(1)乃至(11)のうち何れかに記載の鋳片の凝固判定方法により判定する凝固判定ステップと、
前記凝固判定ステップにおける判定結果に基づき、鋳片の鋳造速度又は冷却を制御する制御ステップとを有することを特徴とする連続鋳造鋳片の製造方法。
(13)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する装置であって、
前記鋳片の表層部が相変態するまで当該鋳片を冷却する冷却手段と、
前記冷却手段にて冷却された鋳片に対し、鋳片と非接触状態にある横波用の送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波を送信する送信手段と、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信手段と、
前記受信手段において受信した受信信号に基づき、前記鋳片の凝固状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする鋳片の凝固判定装置。
(14)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する装置であって、
前記電磁超音波が鋳片を透過する伝播時間を超えない時間の最大数に対し、その50%から150%の範囲に設定されたパルス幅内で、周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の送信用電磁超音波センサによって送信する送信手段と、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信手段と、
前記受信手段において受信した受信信号に対し、前記送信信号と同一または類似の波形の参照信号を用いて相関演算を行い、前記鋳片の凝固状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする鋳片の凝固判定装置。
(15)連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する装置であって、
前記鋳片に対し、鋳片と非接触状態にある横波用の送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波をパルス単位で繰り返し送信する送信手段と、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信手段と、
前記受信手段で受信された受信信号における各パルスを加算平均するとともに、その加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下として信号処理し、この信号処理結果に基づいて前記鋳片の凝固状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする鋳片の凝固判定装置。
(16)前記送信用電磁超音波センサ及び又は前記受信用電磁超音波センサは、電磁超音波の送受信に電磁石を用いるとともに、当該電磁石の励磁電流を、凝固判定に必要な計測時間よりは長時間継続するパルス電流としたことを特徴とする上記(13)乃至(15)のうち何れかに記載の鋳片の凝固判定装置。
(17)熱間鋼材である被測定材に対し、電磁超音波を透過させることによりその計測を行う電磁超音波計測方法であって、
前記被測定材を透過する伝播時間を超えない時間の最大数に対し、その50%から150%の範囲に設定されたパルス幅内で、周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を、送信用電磁超音波センサによって送信する送信ステップと、
前記送信信号が被測定材を透過した透過信号を、受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した受信信号に対し、前記送信信号と同一または類似の波形の参照信号を用いて相関演算を行い、前記被測定材に対する計測を行う計測ステップとを有することを特徴とする電磁超音波計測方法。
(18)熱間鋼材である被測定材に対し、電磁超音波を透過させることによりその計測を行う電磁超音波計測方法であって、
前記被測定材に対し、送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波をパルス単位で繰り返し送信する送信ステップと、
前記送信信号が被測定材を透過した透過信号を、受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された受信信号における各パルスを加算平均するとともに、その加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下として信号処理し、この信号処理結果に基づいて前記被測定材に対する計測を行う計測ステップとを有することを特徴とする電磁超音波計測方法。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、S/N比を改善することで、より正確に連続鋳造鋳片のクレータエンド位置の検出ができる鋳片の凝固状態判定方法を提供することができる。
【0048】
また、完全非接触で連続鋳造鋳片のクレータエンド位置を検出することができる鋳片の凝固状態判定方法及び装置を提供することができる。
【0049】
また、本発明によれば、完全非接触の計測で得られる連続鋳造鋳片の凝固状態情報を利用して生産性又は品質を高めることができる連続鋳造鋳片の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0051】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る鋳片の凝固状態判定装置の一例を示す構成図である。
【0052】
同図においては、炭素鋼の連続鋳造鋳片1を連続鋳造ロール2が鋳片1を挟みこむとともに、図中右側へ引き抜いている。鋳片1の内部には未凝固部7が存在し、その先端がクレータエンド7aである。また、ロール2間に設けられた水冷用ノズル5は、連続鋳造鋳片1の表層部に対して水を放出して冷却し、その所定領域6をγ相からα相へ変態させている。
【0053】
鋳片の凝固状態判定装置は、鋳片1をα相変態した位置で挟んで対向配置させた送信用横波電磁超音波センサ3及び受信用横波電磁超音波センサ4からなるセンサ部と、送信用横波電磁超音波センサ3に送信信号を出力する送信出力系8,9(14,15),16と、受信用横波電磁超音波センサ4にて受信した受信信号を処理する受信処理系10,11,12,13,17とからなっている。
【0054】
送信用横波電磁超音波センサ3は、送信信号を横波の電磁超音波として発信し、電磁超音波が鋳片1を透過した透過信号を受信用横波電磁超音波センサ4が受信する。この受信信号を処理することによりクレータエンド7aの位置検出が行われる。なお、図1においては、センサ3,4の位置では鋳片内部が完全に凝固しており、クレータエンド7aはセンサ部上流にある。
【0055】
また、送信出力系は、送信信号のトリガー信号発生部8と、送信信号発生部9と、バースト波のパルス幅を設定するパルス幅設定部16とから構成される。送信信号発生部9は、さらにトリガー信号に基づいて設定されたパルス幅のバースト波を発生するバースト波発生部14と、発生したバースト波を増幅して送信信号としてセンサ3に出力する電力増幅部15とからなっている。
【0056】
一方、受信処理系は、受信信号の増幅部10、同期加算平均部12、平均回数設定部13、相関処理部17、及び、受信信号から透過信号を抽出して凝固状態を判定する評価部11とから構成されている。
【0057】
次に、以上のように構成された本実施形態における鋳片の凝固状態判定装置の動作について説明する。
【0058】
まず、トリガー信号発生部8から、送信のタイミング信号が出ると、バースト波発生部14は、周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を発生する。ここで、パルス幅は、パルス幅設定部16にて指定された値とする。送信信号は電力増幅部15で増幅され、送信用横波電磁超音波センサ3に印加される。
【0059】
図2は本実施形態の電磁超音波センサの構造例を示す図である。
【0060】
同図に示すように、送信用横波電磁超音波センサ3はコイル19を備えており、連続鋳造鋳片1の表層部でα層に変態している所定領域6に、送信信号による高周波の振動磁場Bvを鋳片の表面に平行な方向に加える。この結果、鋳片の表面に平行な応力が磁歪によってかかるため、せん断波すなわち横波が発生することになる。なお、ここで送信用横波電磁超音波センサ3は垂直方向に磁極を持つ磁石20も備えているが、これは静磁場Bsにより磁歪の効果を増すために用いられる。この磁石は永久磁石でも電磁石でも良い。
【0061】
このようにして、発生した横波超音波は鋳片を透過し、送信とは反対側の表面に到達する。こちら側には、図2と同様の受信用横波電磁超音波センサ4が対向しており、連続鋳造鋳片1の表層部でα層に変態している部分6に、磁石22により静磁場Bsがかけられている。ここに、横波が到達すると、磁歪の逆効果として、この部分の透磁率が変化する。この結果、受信用横波電磁超音波センサ4のコイルを横切る磁束Bsが高周波で振動的に変化するため、電磁誘導によってセンサコイル21に電圧が発生し、受信信号が得られる。
【0062】
この受信信号は増幅部10で増幅された後、同期加算平均部12に入力され、平均回数設定部13により設定された回数だけ平均化される。同期加算平均部12は種々の方法で実施可能だが、ここではA/D変換を行って数値化し、トリガー発生部8の信号に同期して計算機によって平均化するようにした。演算式は以下の方法などを適用することができる。
【0063】
【数5】

【0064】
平均された受信信号は、相関処理部17に入力される。ここでは、既に数値化されているので、具体的にはさらに計算を行っていることが相関処理部17に相当する。相関処理は以下の式で実施できるが、直接この式を計算しないで、入力信号をFFTしたものと参照信号をFFTしたものの共役とを乗算し、その結果を逆FFTして出力を得るのが最も高速に処理できるため有用である。
【0065】
【数6】

【0066】
なお、バースト波発生部14は、周波数、振幅もしくは位相のいずれか、またはこれらの任意の組み合せにより変調したバースト状の送信信号を発生するが、変調方式はどの方式でも良い。変調方式の一例として、周波数変調であるチャープ波の例を次の式で示す。
【0067】
【数7】

【0068】
チャープ波は自己相関関数が鋭い性質を持つ波形である。鋳片を透過してきた受信信号の波形は、送信信号と相似であるから、相関処理部17を通過した受信信号は、送信信号のパルス幅より短くなるパルス圧縮効果が得られ、パルス幅の短い鋭い波形となる。これは、評価部11で凝固状態の判定を行う際に以下の点で有用である。一つ目は、透過信号の強度を求める際、透過信号の時間帯だけにゲートをかけて、その中の最大値を求めれば良いが、パルス幅の短い鋭い波形だとゲートの幅を狭くできるので、余分なノイズを拾わなくなる。二つ目は、透過信号の伝播時間を求める際、短いパルスだと時間の精度が高くなり、より精度良い鋳片の凝固状態判定ができるようになる。
【0069】
以上のようにして、相関処理の出力を得て、評価部11で凝固状態の判定を行う。これも計算で実施できるので、同期加算平均部12、相関処理部17、評価部11は一つあるいは複数の計算機で実施できる。
【0070】
次に各部の設定値について、実施例を示す。
【0071】
[表層冷却によるS/N改善]
まず、連続鋳造鋳片の表層部を相変態させる条件は次のようにした。
【0072】
ここでは、センサ手前の鋳片の表面温度は900℃で、水冷用ノズル5の水量は-20℃/sの冷速が得られる量とし、鋳片の移動速度は2.4mpm(40mm/s)とする。被測定材の連続冷却変態線図(CCT)は図3のようであったため、冷却速度-20℃/sの時の変態開始温度(曲線a)は約620℃である。図4で説明した磁歪の効果を得るためには、変態開始よりも温度を下げて変態終了温度(曲線b)に近づければ良いので、表層部が620℃以下となるようにする。下げれば下げるほど効果は大きくなるため、表面割れなどがないように、品質上の制約から温度を決めれば良い。ここでは、表層の温度を600℃まで冷やすとすると、280℃低下させれば良い。従って、冷却ゾーン長(冷却水をかける長さ)は280℃/20(℃/s)*40(mm/s)=560mmとした。
【0073】
以上の条件で、実際に透過信号のS/Nを測定すると、冷却しないでローレンツ力で電磁超音波を発生させた場合に比較して、冷却して相変態させ磁歪で電磁超音波を発生させた場合は10dBのS/N改善効果があった。
【0074】
なお、電磁超音波の周波数を考慮し、振動磁場の浸透深さ程度までが相変態開始するように冷却するとより感度を高くすることができる。
【0075】
[バースト波によるS/N改善]
次に送信信号は次のようにした。
【0076】
透過信号は、送信後、図5に示すように伝播時間分だけ遅れた位置に現れる。従って、送信信号の漏れ込みが透過信号に重ならないように、この伝播時間より送信信号のパルス幅を短くすれば良い。ここで伝播時間は、鋳片厚み、鋳片温度、音速とから決定される。音速は鋳片温度と鋼種に依存し、横波で炭素鋼の場合、概略3000-0.65T(m/s)である。すなわち温度が低いほど音速は遅くなり、伝播時間は短くなる。
【0077】
従って、適用しようとする測定位置において、鋳片の温度が最も低くなる場合が最も伝播時間が短くなる場合であるから、この時の伝播時間が最大数である。そこで、送信信号のパルス幅はこの値の近傍に設定すれば良い。本発明は鋳片の凝固状態を判定するために使うので、鋳片の温度が最も低くなる場合とは、軸心の温度で1100℃程度、平均温度で1000℃程度と考えれば良い。
【0078】
パルス幅の許容範囲は以下のように決められる。S/Nはパルス幅の√にほぼ比例するため、パルス幅を1/2位に短くすると6dB近く低下して効果が少なくなってしまう。一方、長すぎると透過信号に重なってしまうようになるが、波形の両端は、センサや増幅器の特性により多少振幅が小さくなるため、パルス幅は上記最大値の1.5倍位まで許容できる。このため、S/N向上効果の出るパルス幅の範囲としては最大数の50%以上、150%以下が望ましく、最適な範囲としては80%以上、120%以下が望ましい。
【0079】
下表に、厚み200mm,250mm,300mmの鋳片について定めた送信信号の最適なパルス幅を示す。ここでは最低の温度を平均温度で1000℃とし、その時の音速は2350m/sとした。
【0080】
【表1】

【0081】
なお、送信信号の漏洩信号が大きい場合、漏洩信号により受信アンプが飽和し、いわゆる追い込み現象によりしばらくの時間不感帯になる場合がある。従って、追い込みがある場合は、上表の値からこの追い込み時間を引いた値にパルス幅を設定すれば良い。
【0082】
表1の内、鋳片厚み250mm、パルス幅100μs、周波数100kHzの場合について、実際に透過信号のS/Nを測定すると、100kHzの1波のsin波に比較して、12dBのS/N改善効果があった。従って、上記のパルス幅の範囲に設定することで最低6dBのS/N改善効果が得られる。
【0083】
[加算平均によるS/N改善]
次に同期加算平均の平均回数は次のようにした。
【0084】
鋳造中の温度変化による伝播時間の変化率が大きい場合ほど、図6に示すように、平均化によって透過信号が小さくなってしまう可能性がある。そこで、伝播時間の変化率について様々な実験を繰り返した結果、同変化率がかなり大きくなる場合において、0.03μs/s〜0.3μs/s程度であった。そこで、この値をパラメータとし、超音波の周波数100kHz、パルス繰り返し周波数100Hzの場合の場合について、(2)式に基づいて、平均回数と透過信号の振幅の関係を求めると図7のようになった。
【0085】
同図によれば、単位時間あたりの伝播時間の変化率τが最も早い0.3μs/sの時に平均回数256回程度までなら、振幅の低下はほとんどないことから、この場合は、平均回数の最大数は256と定められる。この時のS/N改善効果は(4)式のように√平均回数であるから24dBが得られた。なお、上記最大数の算出に当たっては、透過信号強度の低下が1dB前後であれば振幅の低下がほとんどないことを基準にしている。すなわち「伝播時間の変化率τ0.3μs/sの時に平均回数の最大数256回」という値は、透過信号強度の低下1dBの場合である。伝播時間の変化率τが他の値となる場合にも、同様な基準により平均回数の最大数が算出される。
【0086】
また、平均回数が少ないとS/N向上効果は少なくなるので、効果の出る範囲としては16回以上が望ましい。この場合、+12dBの効果がある。反対に平均回数が多すぎると図6のように振幅が小さくなるため、上記最大数の2倍程度以内が望ましい。最適な範囲としては上記最大数の50%以上、200%以下が適当である。
【0087】
なお、式(2)から明らかなように、超音波の周波数やパルス繰り返し周波数を変更する場合は、τを比例させて変化させた点で図7を読むことで、図7から平均回数と透過信号の振幅の関係を求めることができる。
【0088】
さて、以上の効果は上述のように全て独立のため、これらを全て組み合わせることにより、10+6+12=28dBのS/N改善効果が得られる。
【0089】
電磁超音波センサのリフトオフ感度特性は-4dB/mm程度であるため、28/4=+7mmリフトオフを広くすることができるようになる。
【0090】
このように、本発明の実施の形態に係る鋳片の凝固状態判定方法及び装置によれば、S/N改善によりリフトオフを十分に大きくすることができるので、電磁超音波センサをタッチロールも何も使わずに、連続鋳造鋳片に対し完全に非接触の状態で連続鋳造機内へ設置し、安定かつ連続的に鋳片内の凝固状態を精度よく計測し判定することができる。これにより、連続的にクレータエンド位置を検出することができる。
【0091】
なお、本実施形態においては、「表層冷却によるS/N改善」、「バースト波によるS/N改善」及び「加算平均によるS/N改善」のすべてを組み合わせた場合を説明したが、これらすべてを組合さなくてもセンサ非接触を実現できる場合がある。具体的には、完全に非接触で計測可能なリフトオフ改善量としては従来技術(1〜2mm)より望ましくは+7mm以上あれば良いが、+4mm以上でも良い。そこで、センサのリフトオフ特性がおよそ-4dB/mmであることを考慮すると、従来より16dB以上のS/N改善があればセンサ〜鋳片間を非接触とすることが可能である。
【0092】
したがって、「表層冷却によるS/N改善」、「バースト波によるS/N改善」及び「加算平均によるS/N改善」は、センサ非接触を実現できる範囲で種々組み合わせることが可能である。例えば「表層冷却によるS/N改善」及び「バースト波によるS/N改善」の組み合せでは10+6=16dBのS/N改善効果が得られ、リフトオフ感度特性は-4dB/mm程度として、16/4=+4mmリフトオフ改善が得られる。同様に、「表層冷却によるS/N改善」及び「加算平均によるS/N改善」、「バースト波によるS/N改善」及び「加算平均によるS/N改善」、あるいは、平均回数を64回以上にした「加算平均によるS/N改善」のみにより、それぞれ約+5.5mm、+4.5mm、+4.5mmのリフトオフ改善が得られる。
【0093】
(第2の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態で説明したS/N改善方法に、電磁超音波センサの高性能化方法を組み合わせるものである。これにより、完全非接触計測が可能なまでにリフトオフを大きくする。すなわち、本実施形態では図2の電磁超音波センサの磁石22を電磁石とし、その磁化力を増すために尖頭値の高いパルス状の電流を磁化電流に用いている。S/Nを改善するためには磁化電流を増やせば良い。しかし、直流で電流を大きくすることは、電磁石が発熱してしまうために困難である。これに対し、パルス磁化電流を用いることで、電磁石の発熱を抑えるとともに、強力な磁場を形成することができる。
【0094】
図8は本発明の第2の実施形態に係る鋳片の凝固状態判定装置の一例を示す構成図であり、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0095】
この鋳片の凝固状態判定装置は、パルス磁化電流を用いるためのパルス磁化電流発生部18を備える他、第1の実施形態と同様に構成されている。
【0096】
パルス磁化電流発生部18は、トリガー信号発生部8の信号に同期してパルス磁化電流を発するようになっている。パルス磁化電流の継続時間は超音波計測に関わる時間とすればよく、伝播時間の約2倍以上の200μs以上が適当である。この程度であれば、送信パルスの繰返し周期に対する時間は1/50程度であるから、磁化電流による発熱量は非常に少なく、大電流を流すことができる。
【0097】
直流電流を用いた場合には磁化電流3A程度が限界であったが、パルス磁化電流を用いると尖頭値で10Aが可能となり、約10dBのS/N改善が得られる。
【0098】
このように、本発明の実施の形態に係る鋳片の凝固状態判定方法及び装置によれば、第1の実施形態と同様な構成を備えるとともに、パルス磁化電流により電磁超音波を発信および受信するようにしたので、第1の実施形態と同様な作用効果が得られる他、電磁超音波センサの感度を高めることができる。これにより、一層容易に、連続鋳造鋳片に対する完全非接触のセンサ設置、連続的な凝固状態計測及びクレータエンド位置検出を行うことができる。
【0099】
したがって、本実施形態の場合には、電磁超音波センサの高性能化方法を組み合わせることで、S/N改善方法としては、上記した「表層冷却によるS/N改善」、「バースト波によるS/N改善」又は「加算平均によるS/N改善」を単独で用いることも可能となる。具体的には、「表層冷却によるS/N改善」のみで+5mm、「バースト波によるS/N改善」のみで+4mm、「加算平均によるS/N改善」のみで+5mmのリフトオフ改善を得ることができる。
【0100】
なお、直流電流を用いる場合であっても、以下(イ)及び/又は(ロ)の方法を用いることにより磁化電流を10A程度に上げることが可能となり、前記パルス磁化電流を用いた場合と同様の電磁超音波センサの高性能化を達成することができる。これにより、前記パルス磁化電流を用いた場合と同様に各S/N改善方法を単独で用いた場合においても充分なリフトオフ改善効果を有し、連続鋳造鋳片に対する完全非接触のセンサ設置、連続的な凝固状態計測及びクレータエンド位置検出を行うことが可能となる。
(イ)電磁石に用いる銅線を太くすることによって銅線の抵抗を下げ、磁化電流を大きくした場合の発熱を少なくする。
(ロ)電磁石の冷却に用いる冷却水あるいは冷却オイルの循環を速くして冷却能力を大きくする。
【0101】
ただし、現実の連続鋳造機では、多くの場合、前記(イ)、(ロ)を行うスペースを確保できない。従って、上述した何れかのS/N改善方法の1つと前記(イ)、(ロ)を組み合わせることは困難性が高いことがある。
【0102】
(第3の実施形態)
本実施形態においては、第1、第2の実施形態で説明した鋳片の凝固判定方法を利用した連続鋳造鋳片の製造方法を説明する。
【0103】
図9は本発明の第3の実施形態に係る連続鋳造鋳片の製造方法を説明するための設備構成例を示す図であり、図1〜図8と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0104】
同図に示す連続鋳造機及び鋳片の凝固判定装置は、第1又は第2の実施形態と同様に構成されている。ここで、電磁超音波センサ3,4は連続鋳造機の末端部に取り付けられている。
【0105】
センサ3,4よりも下流には、鋳片を切断するためのカッター21が設けられている。また、その遥か上流の連続鋳造鋳片1の引抜開始位置には、溶鋼を保持する鋳型22が設けられ、鋳型22からの引き抜き直後下流には、鋳片1を冷却するための2次冷却帯23が設けられている。
【0106】
次に、本実施形態の連続鋳造鋳片の製造方法について説明する。
【0107】
まず、横波電磁超音波が透過している場合、クレータエンド7aは鋳造機末端までは届いていないと判断される。ここで、鋳造速度が上がり、クレータエンド7aが下流に延びてきてセンサ3,4を通過すると、透過信号がなくなるので、センサ3,4による計測で同位置にクレータエンド7aが到達したと判断される。
【0108】
この時には、カッター21までわずかの距離しかないので、鋳造速度をゼロに近い値まで下げるようにする。こうすると、鋳片の凝固は早まるので、クレータエンド7aは上流に向かうようになる。その後、センサ3,4により透過信号が現れたのを確認したら、また鋳造速度を速くし、定常の操業に戻すようにする。以上のようにすれば、鋳造速度を高速に保ち、高い生産性を得ることができる。
【0109】
なお、ここでクレータエンドがセンサを通過する直前の伝播時間(以後、Δtcとする)を記憶するようにすると、次のような製造方法も可能となる。すなわち、センサにクレータエンドが近づいてくると、鋳片温度が高くなってくるので、伝播時間が長くなってくる。そこで、伝播時間を連続的に計測し、この伝播時間がΔtcに近づいてきたら、鋳造速度を少しだけ抑える、または、二次冷却23の流量を増やしてより鋳片を冷却するようにする。一方、伝播時間がΔtcから短い側に遠ざかっていったら、鋳造速度を少しだけ上げる、または、二次冷却23の流量を減らして鋳片の冷却を弱めるようにする。このようにすると、常に鋳造速度が最高速に近い状態に保つことができ、大幅に生産性を高めることができる。
【0110】
なお、以上の実施形態では、センサ3,4を鋳造機の末端に取り付けた場合を示したが、センサ3,4を軽圧下帯の近傍に取り付け、クレータエンド7aを常に軽圧下帯に位置させるような製造の場合も同様に実施できる。
【0111】
このように、本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の製造方法によれば、第1又は第2の実施形態の鋳片の凝固判定装置からの計測結果を利用して、鋳造速度や鋳片冷却を制御するようにしたので、鋳造速度を高速化したり、軽圧下製造を安定して行い、品質を向上させたりすることができる。
【0112】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わされた効果が得られる。
【0113】
例えば各実施形態においては、各センサ3,4は鋳片1を挟んで対抗配置され、センサ3からの入射信号は鋳片の表裏に向けて透過することになる。しかし、本明細書で「信号が透過する」という場合には、信号が鋳片の内部所定位置まで透過し当該所定位置で反射されて入射面に戻ってくる場合も含む。この場合には、受信用横波電磁超音波センサ4は、鋳片に対し、送信用横波電磁超音波センサ3と同一面側に配置されることになる。本発明は、各センサ3,4をこのように配置させても実現できるものである。
【0114】
また、実施形態に記載した手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピーディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブルやデータ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスクや半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る鋳片の凝固状態判定装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る電磁超音波センサの構造例を示す図である。
【図3】本発明の説明に係る被測定材料の連続冷却変態線図である。
【図4】本発明の説明に係る横波電磁超音波の発生メカニズムを示す図である。
【図5】本発明の説明に係る送信信号と伝播時間の関係を示す図である。
【図6】本発明の説明に係る伝播時間の変化と平均処理の関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る鋳片の凝固状態判定装置の一例を示す構成図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る鋳片の凝固状態判定装置の一例を示す構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る連続鋳造鋳片の製造方法を説明するための設備構成例を示す図である。
【図10】従来技術の説明に係る電磁超音波の熱間での特性例を示す図である。
【図11】従来技術を示す構成図である。
【図12】従来技術の説明に係る磁束密度の温度特性を示す図である。
【符号の説明】
【0116】
1 連続鋳造鋳片
2 連続鋳造ロール
3 送信用横波電磁超音波センサ
4 受信用横波電磁超音波センサ
5 水冷用ノズル
6 所定領域
7 未凝固部
7a クレータエンド
8 トリガー信号発生部
9 送信信号発生部
10 受信信号の増幅部
11 評価部
12 同期加算平均部
13 平均回数設定部
14 バースト波発生部
15 電力増幅部
16 パルス幅設定部
17 相関処理部
18 パルス磁化電流発生部
19 コイル
20 磁石
21 カッター
22 鋳型
23 2次冷却帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する方法であって、
前記鋳片に対し、横波用の送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波をパルス単位で繰り返し送信する送信ステップと、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された受信信号における各パルスを加算平均するとともに、その加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下として信号処理し、この信号処理結果に基づいて前記鋳片の凝固状態を判定する判定ステップとを有することを特徴とする鋳片の凝固判定方法。
【請求項2】
前記送信用電磁超音波センサ及び前記受信用電磁超音波センサは、鋳片と非接触状態にあることを特徴とする請求項1に記載の鋳片の凝固判定方法。
【請求項3】
前記信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数は、256回とすることを特徴とする請求項1または2に記載の鋳片の凝固判定方法。
【請求項4】
前記送信用電磁超音波センサ及び前記受信用電磁超音波センサは、前記鋳片との距離を4mm以上離して設置されることを特徴とする請求項2または3に記載の鋳片の凝固判定方法。
【請求項5】
前記送信用電磁超音波センサ及び/又は前記受信用電磁超音波センサは、電磁超音波の送受信に電磁石を用いるとともに、当該電磁石の励磁電流を、凝固判定に必要な計測時間よりは長時間継続するパルス電流としたことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の鋳片の凝固判定方法。
【請求項6】
溶鋼を凝固させつつ、連続鋳造鋳片をモールドから引き抜く引抜ステップと、
前記引抜ステップにて引き抜かれた鋳片内部の凝固状態を、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載の鋳片の凝固判定方法により判定する凝固判定ステップと、
前記凝固判定ステップにおける判定結果に基づき、鋳片の鋳造速度又は冷却を制御する制御ステップとを有することを特徴とする連続鋳造鋳片の製造方法。
【請求項7】
連続鋳造鋳片に対し、電磁超音波の横波を透過させることによりその凝固状態を判定する装置であって、
前記鋳片に対し、鋳片と非接触状態にある横波用の送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波をパルス単位で繰り返し送信する送信手段と、
前記送信信号が鋳片を透過した透過信号を、鋳片と非接触状態にある横波用の受信用電磁超音波センサによって、受信する受信手段と、
前記受信手段で受信された受信信号における各パルスを加算平均するとともに、その加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下として信号処理し、この信号処理結果に基づいて前記鋳片の凝固状態を判定する判定手段とを有することを特徴とする鋳片の凝固判定装置。
【請求項8】
前記送信用電磁超音波センサ及び/又は前記受信用電磁超音波センサは、電磁超音波の送受信に電磁石を用いるとともに、当該電磁石の励磁電流を、凝固判定に必要な計測時間よりは長時間継続するパルス電流としたことを特徴とする請求項7に記載の鋳片の凝固判定装置。
【請求項9】
熱間鋼材である被測定材に対し、電磁超音波を透過させることによりその計測を行う電磁超音波計測方法であって、
前記被測定材に対し、送信用電磁超音波センサによって、送信信号としての横波超音波をパルス単位で繰り返し送信する送信ステップと、
前記送信信号が被測定材を透過した透過信号を、受信用電磁超音波センサによって、受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された受信信号における各パルスを加算平均するとともに、その加算平均回数を、16回以上、かつ、信号伝播時間の変化がパルス加算による信号強度の相殺低下を生じさせない程度の時間幅に相当するパルス回数以下として信号処理し、この信号処理結果に基づいて前記被測定材に対する計測を行う計測ステップとを有することを特徴とする電磁超音波計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−208394(P2006−208394A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74346(P2006−74346)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【分割の表示】特願2001−127369(P2001−127369)の分割
【原出願日】平成13年4月25日(2001.4.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】