説明

鋳物の塗装前後加熱装置

【課題】塗装前の鋳物を、高速かつ高い熱効率で良好に加熱することができ、かつ、塗装後の加熱処理も良好に行うことができ、さらに設備費や設置面積を少なく抑えることができる鋳物の塗装前後加熱装置を提供する。
【解決手段】粉粒体2を熱媒体とし、塗装前のワーク1がその流動層部11aに浸漬される流動層加熱炉10と、その加熱熱源が電熱式ヒータであり、前記熱媒体を加熱および流動させる熱風を発生する熱風発生器と、前記流動層加熱炉10から排出された排気ガスが導入されるとともに、塗装後のワーク1が導入されて、ワーク1の塗装の硬化を促進させるキュアリング炉30と、キュアリング炉30からの排出された排気ガスを回収して前記熱風発生器に送って加熱させ、この熱風を再度流動層加熱炉10に送り込む送風器と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物を塗装前に加熱し、かつ、塗装後に鋳物塗装の硬化を促進させる鋳物の塗装前後加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの液体が送られる管路や、この管路に設けられるバルブの弁箱などには、防錆などのために塗装された鋳物が用いられる。この鋳物は塗装工程での処理速度を向上させたり、塗装品質を確保したりするために、塗装前に加熱処理される。また、鋳物を塗装した後に、その塗装の硬化を促進するために後加熱することも行われている。
【0003】
このような塗装前や塗装後の加熱処理などにつき、以下に詳しく述べる。まず鋳物の部品などの塗装方法としては、液体塗料を用いて塗装する方法と、粉体塗料を用いて塗装する方法とがあり、また、前記液体塗料を用いる塗装方法としては、浸漬、刷毛塗り、噴霧塗装、静電塗装などがあり、前記粉体塗料を用いる塗装方法としては、振り掛け塗装、吹き付け塗装、流動層浸漬塗装、静電塗装などがあり、これらの塗装方法により鋳物への塗装が行われる。これらの塗装方法を行うに際して、何れの塗装方法を用いる場合でも、塗料の付着、成膜を確実に行って塗膜品質を向上させることが要求されるとともに、成膜工程や硬化工程での加熱処理速度を上げて生産能率を向上させることが望まれ、これらの要望に対応する処理として、鋳物素材に対して事前に加熱する塗装前加熱(事前加熱処理)が行われる。
【0004】
この塗装前加熱の加熱温度は、塗料の種類や塗装方法に対応した最適な温度で処理できるよう、鋳物素材や鋳物を塗装する塗装ラインの構成、塗装ラインなどでの温度低下を考慮しながら設定される。
【0005】
塗装前加熱などを行う従来の加熱装置としては、主として、燃料としてガスや油を用いて燃焼ガスを発生させ、この燃焼ガスで鋳物などのワークを加熱する燃焼ガス雰囲気炉(例えば、特許文献1等)が使用されている。なお、加熱温度が100℃以下でよい場合には温水加熱槽なども用いられる。
【0006】
ただし、樹脂系塗料を用いて塗装する前に処理する塗装前加熱処理には、加熱温度は300℃未満でよいが、粉体塗装用に加熱する場合には、塗料を溶融するために約150℃以上に加熱できることが必要であるため、熱容量の小さな燃焼ガスを熱媒体として対流伝熱により加熱する手法が主体として用いられる。
【0007】
また、鋳物の素材を、高速処理ラインで粉体塗装した場合には、塗装後に塗装の硬化を促進すべく、後加熱処理であるキュアリングを行うために、長い距離にわたって配設されたキュアリング炉が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−57621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、燃焼ガスを熱媒体とする加熱装置を用いる場合には、回収した排ガスの保有熱を熱交換器で回収したり、燃料の燃焼に必要な酸素を供給すべく新鮮な冷空気を常に補充したりしなければならないため、熱交換器分の設備費が増加したり、熱効率が低下したりする欠点がある。また、上記のように熱容量の小さな燃焼ガスを熱媒体として対流伝熱により加熱する加熱装置を用いて加熱処理速度を増加させようとすると、加熱経路が長くて大型の加熱炉が必要となるため、設備費が極めて高額となるとともに、多大な設置面積が必要となる欠点もある。
【0010】
また、鋳物の塗装後の硬化を促進すべく、長い距離にわたってキュアリング炉を直線状に配設させた場合には、多大な設置面積や長い設置空間が必要となってしまう。
本発明は、上記欠点や問題を解消するもので、塗装前の鋳物を、高速かつ高い熱効率で良好に加熱することができ、かつ、塗装後の加熱処理も良好に行うことができ、さらに設備費や設置面積を少なく抑えることができる鋳物の塗装前後加熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記欠点や問題を解消するために本発明は、鋳物からなるワークを塗装前に加熱し、かつ塗装後にも加熱する鋳物の塗装前後加熱装置であって、粉粒体を熱媒体とし、塗装前のワークがその流動層部に浸漬される流動層加熱炉と、その加熱熱源が電熱式ヒータであり、前記熱媒体を加熱および流動させる熱風を発生する熱風発生器と、前記流動層加熱炉から排出された排気ガスが導入されるとともに、塗装後のワークが導入されて、ワークの塗装の硬化を促進させるキュアリング炉と、前記キュアリング炉からの排出された排気ガスを回収して前記熱風発生器に送って加熱させ、この熱風を再度流動層加熱炉に送り込む送風器と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、鋳物からなるワークを、粉粒体を熱媒体とする流動層部に浸漬させて加熱するため、塗装前の鋳物であるワークを高速かつ良好な熱効率で加熱することができる。すなわち、粉粒体を熱媒体とする流動層部にワークを浸漬して加熱するので、ガス雰囲気炉などと比較して高速に、かつワークを全表面から均等に、局部過熱などを生じることなく安定して加熱することができ、設置スペースも比較的小さく抑えることが可能となる。また、加熱熱源が電熱式ヒータであるので、電熱式ヒータにより加熱された熱風を流動層加熱炉内およびキュアリング炉内に導入して加熱しても、燃焼ガスを導入した場合のように、回収した排ガスの保有熱を熱交換器で回収したり、燃焼用空気に利用しようとして酸素や冷空気を導入したりする必要もなく、また、排出された熱風を回収して流動層加熱炉だけでなくキュアリング炉にも循環使用することで、極めて高い熱効率を維持することができる。しかも、1つの熱風発生器により、塗装前の加熱と塗装後の加熱との両者の加熱を行えるので、それぞれ個別に加熱熱源を設けた場合に比較して設備費を低減できるとともに設置スペースも小さく抑えることができる。
【0013】
また、本発明の鋳物の塗装前後加熱装置は、流動層加熱炉の略上方位置にキュアリング炉を配設し、流動層加熱炉とキュアリング炉とを連通する連通路を通して流動層加熱炉の排気ガスがキュアリング炉に導入されるよう構成したことを特徴とする。
【0014】
このように、流動層加熱炉の上方位置にキュアリング炉を配設することで、流動層加熱炉とキュアリング炉とを連通する連通路を設けるだけで、この連通路を通して流動層加熱炉の排気ガスがキュアリング炉に自然に導入されやすくなり、流動層加熱炉から排出される排気ガスをキュアリング炉へ積極的に送り込むための送風器を別個に設けなくて済み、この分だけ製造コストを低減できるとともに稼動維持費用も低減できる。
【0015】
また、本発明の鋳物の塗装前後加熱装置は、流動層加熱炉に、流動層加熱炉本体へワークが搬入される搬入通路と、流動層加熱炉本体からのワークが搬出される搬出通路とを設け、前記搬入通路部の端部に設けた流動層加熱炉入口を、搬入通路と流動層加熱炉本体との接続部よりも低く配置し、前記搬出通路部の端部に設けた流動層加熱炉出口を、搬出通路と流動層加熱炉本体との接続部よりも低く配置したことを特徴とする。
【0016】
この構成により、流動層加熱炉本体の流動層部から排出される高温の排気ガスが、搬入通路や搬出通路を通して排出され難くなり、これにより、熱効率が低下することを最小限に抑えることができる。
【0017】
また、本発明の鋳物の塗装前後加熱装置は、キュアリング炉のワークの入口および出口を、キュアリング炉の本体部よりも低く配置したことを特徴とする。この構成によれば、キュアリング炉に導入された高温の排気ガスが、キュアリング炉の入口や出口から排出され難くなり、これによっても、熱効率が低下することを最小限に抑えることができる。
【0018】
また、本発明の鋳物の塗装前後加熱装置は、キュアリング炉を、塗装後のワークがキュアリング炉内でUターンできる形状とし、キュアリング炉内でのワークの搬送経路をUターンする形状としたことを特徴とする。
【0019】
この構成により、流動層加熱炉と略同じ長さのキュアリング炉で、長い距離にわたって塗装後の加熱(キュアリング)を行うことができながら、塗装前後加熱装置の設置面積や設置空間を最小限に抑えることができる。
【0020】
また、本発明の鋳物の塗装設備は、鋳物の塗装前後加熱装置と、塗装装置と、流動層加熱炉で加熱されたワークを塗装装置に搬送するとともにこの塗装装置で塗装されたワークをキュアリング炉に搬送する搬送手段とを備えたことを特徴とする。この構成により、連続的かつ効率的に、鋳物を塗装することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鋳物からなるワークを、粉粒体を熱媒体とする流動層部に浸漬させて加熱するため、ガス雰囲気炉などと比較して高速に、かつワークを全表面から均等に、局部過熱などを生じることなく安定して加熱することができ、設置スペースも比較的小さく抑えることが可能となる。また、加熱熱源を電熱式ヒータとすること、ならびに、排出された熱風を回収して流動層加熱炉だけでなくキュアリング炉にも循環使用することで、極めて高い熱効率を維持することができる。しかも、1つの熱風発生器により、塗装前の加熱と塗装後の加熱との両者の加熱を行え、それぞれ個別に加熱熱源を設けた場合に比較して設備費を低減できるとともに設置スペースも小さく抑えることができる。
【0022】
また、流動層加熱炉の略上方位置にキュアリング炉を配設して、流動層加熱炉とキュアリング炉とを連通する連通路を設けることにより、この連通路を通して流動層加熱炉の排気ガスがキュアリング炉に自然に導入されやすくなり、流動層加熱炉から排出される排気ガスをキュアリング炉へ積極的に輸送する送風器を別個に設けなくて済み、この分だけ製造コストを低減できるとともに稼動維持費用も低減できる。
【0023】
また、流動層加熱炉に搬入通路や搬出通路を設け、流動層加熱炉入口と流動層加熱炉出口とを流動層加熱炉本体と搬入通路や搬出通路との接続部よりも低く配置したことにより、流動層加熱炉本体の流動層部から排出される高温の排気ガスが、流動層加熱炉入口と流動層加熱炉出口とを通して排出され難くなり、これにより、熱効率が低下することを最小限に抑えることができる。
【0024】
また、キュアリング炉を、塗装後のワークがキュアリング炉内でUターンできる形状とし、キュアリング炉内でのワークの搬送経路をUターンする形状としたことにより、流動層加熱炉と同じ長さで、長い距離にわたって塗装後の加熱(キュアリング)を行うことができながら、塗装前後加熱装置の設置面積や設置空間を最小限に抑えることができる。
【0025】
また、本発明の塗装設備として、前記鋳物の塗装前後加熱装置と、塗装装置と、流動層加熱炉で加熱されたワークを塗装装置に搬送するとともにこの塗装装置で塗装されたワークをキュアリング炉に搬送する搬送手段とを備えたことにより、連続的かつ効率的に、鋳物を塗装することができて高い生産能率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋳物の塗装前後加熱装置(塗装設備)の一部切欠正面断面図である。
【図2】同塗装前後加熱装置の側面断面図である。
【図3】同塗装前後加熱装置(塗装設備)の簡略的な平面図である。
【図4】同塗装前後加熱装置のキュアリング炉の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係る鋳物の塗装前後加熱装置ならびに塗装設備について図面を参照しながら説明する。
図1〜図4に示すように、本発明の実施の形態に係る鋳物の塗装前後加熱装置100は、鋳物からなるワーク1を塗装前に加熱し、かつ塗装後にも加熱する鋳物の塗装前後加熱装置100である。この塗装前後加熱装置100は、セラミック粒子からなる粉粒体2を熱媒体とし、塗装前のワーク1がその流動層部11aに浸漬される流動層加熱炉10と、その加熱熱源が電熱式ヒータであり、前記熱媒体である粉粒体2を加熱および流動させる熱風を発生する熱風発生器(電気加熱装置)21と、流動層加熱炉10から排出された排気ガスが導入されるとともに、塗装後のワーク1が導入されて、ワーク1の塗装の硬化を促進させるキュアリング炉30と、キュアリング炉30からの排出された排気ガスを回収して熱風発生器21に送って加熱させ、この熱風を再度流動層加熱炉10に送り込む送風器22と、ワーク1を加熱用搬送経路R1(図3参照)に沿って搬送しながら流動層加熱炉10の流動層部11aに浸漬させながら移動させる流動層用搬送手段としての加熱用コンベア40と、ワーク1をキュアリング用搬送経路R2(図3参照)に沿って搬送しながらキュアリング炉30内を移動させるキュアリング用搬送手段としてのキュアリング用コンベア50などを備えている。
【0028】
流動層加熱炉10は、ワーク1が浸漬される流動層部11aが形成された流動層加熱炉本体11と、流動層加熱炉本体11へワーク1を搬入させる略筒形状の搬入通路12と、流動層加熱炉本体11で浸漬されたワーク1を搬出する略筒形状の搬出通路13とからなる。流動層加熱炉本体11の流動層部11aでは、粉粒体2が溜められた略箱型で長手方向に沿って直線に長い炉体11bの底部に、熱風が上向きに噴出される孔部を多数有する熱風噴出管11cが横向きに所定間隔ごとに多数配設されており、これらの熱風噴出管11cから吐出される熱風により粉粒体2が加熱および流動される。
【0029】
また、流動層加熱炉本体11には、炉体11b内における流動層部11aの上方に、流動層部11aから排出された排気ガスが一時的に留められる流動層空間部11dが形成され、この流動層空間部11d内にワーク1を配設(通過)することも可能に構成されている。そして、ワーク1が、搬入通路12と流動層加熱炉本体11と搬出通路13とにわたって形成された加熱用搬送経路R1を通過できるよう加熱用コンベア40が配設されている。
【0030】
加熱用コンベア40は、流動層加熱炉10の上方位置を流動層加熱炉10の長手方向に沿って延びる搬送用レール41と、搬送用レール41に対して所定間隔おきに複数配設されて、各部が走行自在であるとともにチェーン42aなどによりワーク1を吊り下げた状態で移動するハンガ体42などからなる。なお、ハンガ体42などによりワーク1の吊り下げ位置を昇降させて調節可能に構成してもよい。また、この加熱用コンベア40により、ワーク1は流動層加熱炉10内を連続的または間欠的に搬送される。
【0031】
ここで、図1に示すように、搬入通路12の一端部(加熱用搬送経路R1の前端)が、ワーク1が流動層加熱炉10に導入される流動層加熱炉入口12aとされ、搬入通路12においては流動層加熱炉入口12aの箇所が最も低く、搬送方向に対して斜め上方に延びて、流動層加熱炉本体11(詳しくは流動層加熱炉本体11の流動層空間部11d)との接続部12bが最も高くなるように形成されている。また、流動層加熱炉本体11は、搬送方向に対しては水平に延びており、ワーク1は流動層加熱炉本体11に導入されると搬送されながら流動層部11aに浸漬されて加熱される。一方、搬出通路13の一端部(加熱用搬送経路R1の後端)が、ワーク1が流動層加熱炉10から取り出される流動層加熱炉出口13aとされ、搬出通路13においては、流動層加熱炉本体11(詳しくは流動層加熱炉本体11の流動層空間部11d)との接続部13bが最も高く、搬送方向に対して斜め下方に延びて、流動層加熱炉出口13aの箇所が最も低くなるように配置されている。
【0032】
塗装後のワーク1の塗装硬化を促進させるキュアリング炉30は、図3に示すように、塗装後のワーク1がキュアリング炉30内でUターンできるように平面視U字形状とされているとともに、流動層加熱炉10の略上方位置、この実施の形態では斜め上方両側に配設されている。また、図2に示すように、流動層加熱炉10とキュアリング炉30とを仕切る仕切壁にはこれらの炉の間を連通する連通路(連通孔)25が多数形成され、これらの連通路25を通して流動層加熱炉10の排気ガスがキュアリング炉30に導入される。そして、この排気ガスにより、塗装後のワーク1の塗装硬化を促進させる。なお、キュアリング炉30のUターン部分(湾曲経路部)は、キュアリング炉30の本体部31と同じ高さとされている一方、キュアリング炉30の搬入通路部32は搬送方向下流側ほど斜め上方となるように傾斜して形成され、また、キュアリング炉30の搬出通路部33は搬送方向下流側ほど斜め下方となるように傾斜して形成されている。これにより、キュアリング炉30のワーク1の入口32aおよび出口33aが、キュアリング炉30の本体部31よりも低く配置されている。
【0033】
ワーク1をキュアリング用搬送経路R2に沿ってキュアリング炉30内を移動させるキュアリング用搬送手段としてのキュアリング用コンベア50は、キュアリング炉30の上方位置をキュアリング炉30の長手方向に沿って延びる搬送用レール51と、搬送用レール51に対して所定間隔おきに複数配設されて、各部が走行自在であるとともにチェーン52aなどによりワーク1を吊り下げた状態で移動するハンガ体52などからなる。そして、このキュアリング用コンベア50により、キュアリング炉30内でのワークの搬送経路(キュアリング用搬送経路R2)がキュアリング炉30の形状と同様に、Uターンする形状とされている。なお、ハンガ体52などによりワーク1の吊り下げ位置を昇降させて調節可能に構成してもよい。なお、このキュアリング用コンベア50により、ワーク1はキュアリング炉30内を連続的または間欠的に搬送される。
【0034】
また、キュアリング炉30の本体部31におけるワーク搬送方向に対する上流端部と下流端部には、キュアリング炉30内の排気を吸引する排気吸引孔36や排気吸引通路37が設けられ、キュアリング炉30内から吸引された排気は、集塵機23を通ることで除塵された後、送風機22側に回収される。そして、この回収された排気ガスが熱風発生器(電気加熱装置)21で加熱されることで、再度、流動層加熱炉10やキュアリング炉30に送り込まれて循環される。
【0035】
また、このように構成された鋳物の塗装前後加熱装置100における、流動層加熱炉出口13aと、キュアリング炉30の入口32aとに跨って臨む位置に、流動層加熱炉10で加熱された鋳物からなるワーク1を塗装する塗装装置110が配設されている。さらに、塗装装置110の近傍には、流動層加熱炉10と塗装装置110との間、および塗装装置110とキュアリング炉30との間でワーク1を搬送する搬送ロボット120が配設されており、この搬送ロボット120は、流動層加熱炉10の出口部分に送り出された加熱済みのワーク1を塗装装置110に搬送するとともにこの塗装装置110で塗装されたワーク1をキュアリング炉30の導入位置に搬送する。そして、この塗装前後加熱装置100と、塗装装置110と、搬送ロボット(搬送手段)120とにより塗装設備200が構成されている。
【0036】
上記構成において、ワーク1は、塗装前後加熱装置100における流動層加熱炉入口12aから連続的に(或いは間欠的に)導入されて、流動層加熱炉10の搬入通路12を通過した後、搬送されながら流動層加熱炉本体11の流動層部11aに浸漬されて加熱(塗装前加熱処理)される。そして、流動層加熱炉本体11の流動層部11aから取り出されて、搬出通路13を通過した後、搬送ロボット120により塗装装置110に導入されて塗装される。また、塗装装置110により塗装されたワーク1は、搬送ロボット120によりキュアリング炉30側に渡され、キュアリング炉30では、キュアリング用コンベア50により、キュアリング炉30内でここに導入された排気ガスにより加熱(塗装後加熱処理)されてワーク1の塗装の硬化が促進され、この後、キュアリング炉30の出口33aから、塗装の硬化も終了したワーク(鋳物1)が連続的に(或いは間欠的に)取り出される。
【0037】
上記構成によれば、鋳物からなるワーク1を、粉粒体2を熱媒体とする流動層部11aに浸漬させて加熱するため、塗装前の鋳物であるワーク1を高速かつ良好な熱効率で加熱することができる。すなわち、粉粒体2を熱媒体とする流動層部11aにワークを浸漬して加熱するので、ガス雰囲気炉などと比較して高速に、かつワーク1を全表面から均等に、局部過熱などを生じることなく安定して加熱することができ、設置スペースも比較的小さく抑えることが可能となる。また、熱風発生器21の加熱熱源が電熱式ヒータであるので、電熱式ヒータにより加熱された熱風を流動層加熱炉10内およびキュアリング炉30内に導入して加熱しても、燃焼ガスを導入した場合のように、回収した排ガスの保有熱を熱交換器で回収したり、燃焼用空気に利用しようとして酸素や冷空気を導入したりする必要もなく、また、排出された熱風を回収して流動層加熱炉10だけでなくキュアリング炉30にも循環使用することで、極めて高い熱効率を維持することができる。しかも、1つの熱風発生器21により、塗装前の加熱と塗装後の加熱との両者の加熱を行えるので、それぞれ個別に加熱熱源を設けた場合に比較して設備費を低減できるとともに設置スペースも小さく抑えることができる。
【0038】
また、流動層加熱炉10の上方(この実施の形態では斜め上方)にキュアリング炉30を配設することで、流動層加熱炉10とキュアリング炉30とを連通する連通路25を設けるだけで、この連通路25を通して流動層加熱炉10の排気ガスがキュアリング炉30に自然に導入されやすくなり、流動層加熱炉10から排出される排気ガスをキュアリング炉30へ積極的に送り込むための送風器などを別個に設けなくて済み、この分だけ製造コストを低減できるとともに稼動維持費用も低減できる。
【0039】
また、上記のように、流動層加熱炉10に搬入通路12や搬出通路13を設け、流動層加熱炉入口12aと流動層加熱炉出口13aとを流動層加熱炉本体11と搬入通路12や搬出通路13との接続部12b、13bよりも低く配置したため、流動層加熱炉本体11の流動層部11aから排出される高温の(すなわち上方に溜まりやすい)排気ガスが、搬入通路12や搬出通路13を通して排出され難くなり、これにより、流動層加熱炉10の熱効率が低下することを最小限に抑えることができる。したがって、ワーク1を連続的または間欠的に処理するために、搬送経路途中に排気流出用の開閉扉などを設けることができない構成でありながら、比較的高い熱効率を維持できる。
【0040】
また、キュアリング炉30のワーク1の入口32aおよび出口33aを、キュアリング炉30の本体部31よりも低く配置したことにより、キュアリング炉30に導入された高温(すなわち上方に溜まりやすい)の排気ガスが、キュアリング炉30の入口32aや出口33aから排出され難くなり、これにより、キュアリング炉30においても熱効率が低下することを最小限に抑えることができる。したがって、この構成においても、ワーク1を連続的または間欠的に処理するために、搬送経路途中に排気流出用の開閉扉などを設けることができない構成でありながら、比較的高い熱効率を維持できる。
【0041】
また、上記のように、キュアリング用搬送経路R2をUターンする形状とすることで、流動層加熱炉10とほぼ同じ長さで、長い距離にわたって塗装後の加熱(キュアリング)を行うことができながら、塗装前後加熱装置100の設置面積や設置空間を最小限に抑えることができる。
【0042】
また、上記の構成によれば、本発明の鋳物の塗装設備200として、前記塗装前後加熱装置100と、塗装装置110と、これらの間でワーク1を搬送する搬送手段としての搬送ロボット120とを備えることにより、連続的に鋳物を塗装することができる。また、塗装装置110を、流動層加熱炉出口13aと、キュアリング炉30の入口32aとに跨って臨む位置に配設することで、塗装前後加熱装置100の塗装装置110に対するワーク1の受け渡しを迅速に行うことができて、効率的に鋳物を塗装することができる。なお、塗装手法としては粉体塗料を用いて塗装する場合に最適であるが、これに限るものではなく、液体塗料を用いて塗装する方法にも適用可能である。
【0043】
なお、ワーク1の流動層部11aにおける浸漬する位置(時間)は、加熱用コンベア50の吊り下げ用チェーンの長さが固定されている場合には、搬送用レール51の形状に見合った所定位置(時間)となるが、これに限るものではなく、加熱用コンベア50のハンガ体52などによりワーク1を自由に昇降可能に制御できる場合には、ワーク1の大きさや熱容量に対応して、流動層部11aにおける浸漬する位置(時間)を調整できるよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ワーク(鋳物)
2 粉粒体(熱媒体)
10 流動層加熱炉
11 流動層加熱炉本体
11a 流動層部
11b 炉体
11c 熱風噴出管
11d 流動層空間部
12 搬入通路
12a 流動層加熱炉入口
13 搬出通路
13a 流動層加熱炉出口
21 熱風発生器(電気加熱装置)
22 送風器
23 集塵機
25 連通路
30 キュアリング炉
31 本体部
32 搬入通路部
32a 入口
33a 出口
37 排気吸引通路
40 加熱用コンベア(流動層用搬送手段)
50 キュアリング用コンベア
100 塗装前後加熱装置
110 塗装装置
120 搬送ロボット
200 塗装設備
R1 加熱用搬送経路
R2 キュアリング用搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物からなるワークを塗装前に加熱し、かつ塗装後にも加熱する鋳物の塗装前後加熱装置であって、
粉粒体を熱媒体とし、塗装前のワークがその流動層部に浸漬される流動層加熱炉と、
その加熱熱源が電熱式ヒータであり、前記熱媒体を加熱および流動させる熱風を発生する熱風発生器と、
前記流動層加熱炉から排出された排気ガスが導入されるとともに、塗装後のワークが導入されて、ワークの塗装の硬化を促進させるキュアリング炉と、
前記キュアリング炉からの排出された排気ガスを回収して前記熱風発生器に送って加熱させ、この熱風を再度流動層加熱炉に送り込む送風器と、
を備えたことを特徴とする鋳物の塗装前後加熱装置。
【請求項2】
流動層加熱炉の略上方位置にキュアリング炉を配設し、流動層加熱炉とキュアリング炉とを連通する連通路を通して流動層加熱炉の排気ガスがキュアリング炉に導入されるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の鋳物の塗装前後加熱装置。
【請求項3】
流動層加熱炉に、流動層加熱炉本体へワークが搬入される搬入通路と、流動層加熱炉本体からのワークが搬出される搬出通路とを設け、
前記搬入通路部の端部に設けた流動層加熱炉入口を、搬入通路と流動層加熱炉本体との接続部よりも低く配置し、
前記搬出通路部の端部に設けた流動層加熱炉出口を、搬出通路と流動層加熱炉本体との接続部よりも低く配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の鋳物の塗装前後加熱装置。
【請求項4】
キュアリング炉のワークの入口および出口を、キュアリング炉の本体部よりも低く配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の鋳物の塗装前後加熱装置。
【請求項5】
キュアリング炉を、塗装後のワークがキュアリング炉内でUターンできる形状とし、
キュアリング炉内でのワークの搬送経路をUターンする形状としたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の鋳物の塗装前後加熱装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の鋳物の塗装前後加熱装置と、塗装装置と、流動層加熱炉で加熱されたワークを塗装装置に搬送するとともにこの塗装装置で塗装されたワークをキュアリング炉に搬送する搬送手段とを備えたことを特徴とする鋳物の塗装設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−149560(P2011−149560A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8622(P2010−8622)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(501003825)谷汽罐工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】