説明

鋼の連続鋳造用モールドフラックス

【課題】粉末モールドフラックスの飛散に起因する粉塵の発生及びFに起因する連続鋳造機の腐食を抑制しつつ、良好な鋳片表面品質が得られる鋼の連続鋳造用モールドフラックスを提供する。
【解決手段】Na2O‐CaO‐SiO2系又はNa2O‐CaO‐SiO2‐B2O3系のプリメルト原料を40〜95質量%、シリカ原料を0〜30質量%、フッ素原料を0〜5質量%、炭酸塩を1〜15質量%、バインダーを0.5〜5質量%、膨張黒鉛を0.5〜5質量%含有し、顆粒状に成形した鋼の連続鋳造用モールドフラックスである。
【効果】粉塵の発生並びに連続鋳造機の腐食を同時に抑制できる総合的な環境改善効果を有しつつ、現状と変わらない表面品質の鋳片を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、その形状を顆粒にすることで鋳造時の飛散を抑制し、また、Fの含有量を0若しくは少量とすることで連続鋳造機の腐食を抑制する鋼の連続鋳造用モールドフラックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造では、浸漬ノズルとモールドフラックスを用いた鋳造が広く普及しており、特にモールドフラックスの適用により、圧延によって鋼板等の鉄鋼製品を製造するための素材の生産方法として工業的に普及していった。
【0003】
モールドフラックスは、浸漬ノズルを用いて鋳型内に注入された溶鋼の表面に投入され、溶鋼からの熱により滓化・溶融して溶融スラグとなる。溶融スラグは、鋳型と凝固殻との間に流入し、潤滑フィルムを形成して消費される。
【0004】
鋳型内の溶鋼表面への投入から、鋳型と凝固殻間に流入して消費される間のモールドフラックスの主な役割は、溶鋼の保温、溶鋼と大気との接触の遮断、溶鋼から浮上する介在物の捕捉、凝固殻と鋳型との間の潤滑、凝固殻から鋳型への抜熱の抑制などである。
【0005】
ところで、モールドフラックスが粉末の場合、鋳型内の溶鋼表面に投入した際及びその後の溶鋼からの熱による上昇気流により、モールドフラックスが飛散して製造環境が悪化する。従って、現状では大型集塵機を設置するための場所並びに費用が必要となって、環境面並びに経済面に負担がある。
【0006】
また、消費されたモールドフラックスは、鋳型下方のスプレー冷却帯で水と接触することになるが、このモールドフラックスと接触した水は、粘度及び凝固点を調整するために含有されるモールドフラックス中のFが溶出することによって酸性となる。この酸性となった水は、連続鋳造機内の高温環境により蒸発し、酸性の蒸気が発生する。これら酸性の水及び蒸気により、鋼を主とした金属製のフレームおよびロール等で構成される連続鋳造機が腐食される。さらには、Fを含んだ水を適切に処理する必要もある。
【0007】
そこで、Fの含有量を不可避分若しくはできるだけ少量とし、かつ、現状のモールドフラックスと同程度の表面品質を有する鋳片を得ることができるモールドフラックスが必要となる。
【0008】
このようなモールドフラックスとして、例えば特許文献1にFレスもしくは低Fのモールドフラックスが開示されており、このモールドフラックスの使用により、連続鋳造機の腐食は低減される。しかしながら、特許文献1には、粉末の飛散を軽減する作業環境の改善に関する記載はない。
【0009】
一方、特許文献2には、膨張黒鉛を使用し、鋳型内で焼結現象を起こさず、保温性に優れた鋼の連続鋳造用モールドフラックスが開示されており、このモールドフラックスは溶融特性に優れることが示唆されている。しかしながら、特許文献2には、F濃度軽減および粉塵抑制によって環境負荷を軽減することについての記載や示唆はない。
【0010】
また、特許文献3には、膨張黒鉛を配合した顆粒状とすることにより、環境汚染を抑制しつつ、鋳型内溶鋼表面の保温性を高めるモールドフラックスが開示されている。しかしながら、特許文献3には、モールドフラックスの作製および設計において重要となる原料の配合方法に関して、十分な記述がない。さらに、環境に関して重要なFレス若しくは低F化を両立する方法について明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−167867号公報
【特許文献2】特許第3128496号公報
【特許文献3】特開2008−43987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする問題点は、従来は、モールドフラックスの飛散による製造環境の悪化、及び消費されたF含有モールドフラックスと接触して酸性となった水及びこの水が蒸発した蒸気による連続鋳造機の腐食を同時に改善できないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、鋳片の表面品質を良好に保つべく緩冷却を促すために凝固時に特定の結晶系を析出させるように組成を選定したモールドフラックスにおいて、上述の従来技術が有する問題点を解消すべくなしたものである。
【0014】
すなわち、本発明の鋼の連続鋳造用モールドフラックスは、
緩冷却を促すことに加えて、粉塵抑制による大気環境の改善及びF濃度軽減による水質環境の改善を同時に果たして総合的な環境負荷を小さくすることを可能とするために、
Na2O‐SiO2‐CaO系又はNa2O‐CaO‐SiO2‐B2O3系のプリメルト原料を40〜95質量%、シリカ原料を0〜30質量%、フッ素原料を0〜5質量%、炭酸塩を1〜15質量%、バインダーを0.5〜5質量%、膨張黒鉛を0.5〜5質量%含有し、顆粒状に成形したことを最も主要な特徴としている。
【0015】
プリメルト原料とは、モールドフラックスを構成する、CaO,SiO2,Na2O,B2O3等を含有する原料のうち、炭素質原料を除く成分の全部を溶融して粉砕した原料である。
【0016】
本発明の鋼の連続鋳造用モールドフラックスは、Na2O‐SiO2‐CaO系又はNa2O‐CaO‐SiO2‐B2O3系のプリメルト原料を40〜95質量%含有するので、水質環境の改善のためにF含有量を抑制しても、モールドフラックスの凝固時に、容易に結晶が晶出又は析出し、緩冷却効果を発揮する。
【0017】
また、顆粒状に成形するので、粉塵の発生を大きく抑制することができるのと共に、膨張黒鉛を配合しているので、溶鋼表面に供給後に顆粒が熱崩壊して崩壊後の嵩比重が小さくなり、溶融性及び鋳型内溶鋼表面の保温性に優れる。
【0018】
本発明において、塩基度(CaO/SiO2)を0.4〜0.8としたものが第2の本発明で、さらにNa2O及びLi2O及びK2Oを合わせて13〜28質量%含有し、溶融後に凝固した際に、X(Na2O,Li2O,K2Oのいずれか1つまたは複数)‐SiO2‐CaOから成る結晶を主として晶出又は析出させたものが、第3の本発明である。第2の本発明では、潤滑性の確保と操業安定性が良くなり、また第3の本発明では、凝固時の結晶の晶出又は析出が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、粉塵の発生並びに連続鋳造機の腐食を同時に抑制できる総合的な環境改善効果を有しつつ、現状と変わらない表面品質の鋳片を製造することができる、従来にないモールドフラックスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明では、緩冷却を促し、かつ、粉塵抑制及び水質環境改善を同時に果たすという目的を、Na2O‐SiO2‐CaO系又はNa2O‐CaO‐SiO2‐B2O3系のプリメルト原料を多く使用し、シリカ原料や炭酸塩の原料配合をバインダーや膨張黒鉛の配合に合わせて適正化することによって実現した。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の鋼の連続鋳造用モールドフラックスについて説明する。
通常、鋼の連続鋳造用モールドフラックスは、CaO及びSiO2を主体とし、粘度や凝固点、さらには溶融速度の調整のために、Al2O3、MgO、Na2O、B2O3、Fなどを含有させた粉末状である。また、鋳型内の溶鋼表面に投入された際に焼結して保温性を劣化させないように、微粒カーボンが0.5〜5質量%添加されている。
【0022】
前記成分組成の粉末状のモールドフラックスを顆粒状に成形すれば、粉塵の発生を大きく抑制することができる。しかしながら、モールドフラックスを顆粒状とした場合、モールドフラックスの溶融速度及び鋳型内の溶鋼表面の保温性が劣る傾向になる。
【0023】
そこで、発明者等は、顆粒状のモールドフラックスに膨張黒鉛を配合することで、モールドフラックスの熱崩壊を促進して崩壊後の嵩比重を小さくし、溶融性及び鋳型内溶鋼表面の保温性に優れたモールドフラックスとすることを考えた。
【0024】
また、モールドフラックスに含有されるFは、凝固点及び粘度の調整を容易にする重要な元素である。さらには、モールドフラックスの凝固時に結晶(cuspidine:3CaO・2SiO2・CaF2)を容易に晶出又は析出し、いわゆる緩冷却効果を発揮する元素である。
【0025】
そこで、発明者等は、モールドフラックスの基本成分として、Na2O‐SiO2‐CaO系に着目した。そして、モールドフラックスにFを含有させない場合も、粘度はわずかに高くなるものの、操業可能な凝固点及び粘度が得られる組成を見出した。
【0026】
さらに、発明者等は、Na2O‐SiO2‐CaO系の中でも、純物質の融点が1300℃以下である結晶Na2O・2CaO・3SiO2を中心とした周辺の組成には、X(Na2O,Li2O,K2Oのいずれか1つまたは複数)‐SiO2‐CaO系の結晶が多数存在し、モールドフラックスの凝固時に、容易に結晶が晶出又は析出することを見出した。
【0027】
発明者等は、これらの知見により、Fを含む従来の結晶に頼らずとも十分な緩冷却効果を有するモールドフラックスを開発する目処を得た。
【0028】
しかしながら、顆粒状でかつFをほとんど含有しないモールドフラックスは、溶融速度が遅く、また、溶融後の組成が不均一になりやすい。
【0029】
そこで、発明者等は、前記基材原料にプリメルト原料を多く使用し、かつ、シリカ原料や炭酸塩の原料配合をバインダーや膨張黒鉛の配合に合わせて適正化することで、前記問題を解決できると考えた。また、B2O3を微量に添加することで、凝固点及び粘度を低下させて鋳造中の潤滑性を向上させることにより、安定した操業が可能になると考えた。
【0030】
本発明の鋼の連続鋳造用モールドフラックスは、上記の知見及び考え方に基づいてなされたものであり、
Na2O‐SiO2‐CaO系又はNa2O‐CaO‐SiO2‐B2O3系のプリメルト原料を40〜95質量%、シリカ原料を0〜30質量%、フッ素原料を0〜5質量%、炭酸塩を1〜15質量%、バインダーを0.5〜5質量%、膨張黒鉛を0.5〜5質量%含有し、顆粒状に成形したことを特徴とするモールドフラックスである。
【0031】
上記構成の本発明のモールドフラックスは、顆粒状であるので粉塵の発生を大きく抑制でき、かつ、膨張黒鉛を配合しているので溶融性及び鋳型内溶鋼表面の保温性に優れている。
【0032】
また、Fの含有量が0若しくは少量であるので連続鋳造機の腐食を抑制でき、かつ、Fの含有量が0若しくは少量でも、溶融後の凝固時にNa2O‐SiO2‐CaO系の結晶が晶出又は析出するので、緩冷却効果を発揮する。
【0033】
本発明において、使用するプリメルト原料をNa2O‐SiO2‐CaO系又はNa2O‐CaO‐SiO2‐B2O3系としたのは、緩冷却効果を発揮すべく、凝固時、Na2O・2CaO・3SiO2の結晶が容易に晶出又は析出するようにするためである。
【0034】
このプリメルト原料として、さらにNa2O、 Li2O、 K2Oの内、1つないしは複数を合わせて13〜28質量%含有したものを使用し、塩基度(CaO/SiO2)が0.4〜0.8となるようにした場合は、溶融後に凝固した際に、主としてX(Na2O,Li2O,K2Oのいずれか1つまたは複数)‐SiO2‐CaO系の結晶が容易に晶出又は析出することになるので望ましい。
【0035】
「主としてX(Na2O,Li2O,K2Oのいずれか1つまたは複数)‐SiO2‐CaO系の結晶が容易に晶出又は析出する」の「主として」とは、1400℃で溶融させた後、2℃/minの冷却速度で凝固させ、そのまま室温まで冷却したスラグをX線回折分析した際に、ピーク高さが最も大きい結晶であることをいう。
【0036】
この際、さらに含有するNa2O, Li2O, K2Oの内、1つないしは複数の含有量を合わせて13〜28質量%とするのは、13質量%未満ではX(Na2O,Li2O,K2Oのいずれか1つまたは複数)‐SiO2‐CaO系の結晶が晶出又は析出しない、または、晶出又は析出しても少量であるためだからである。反対に28質量%を超える場合は鋳造中にこれらの成分の蒸発が多くなるので、上記範囲が望ましい。
【0037】
また、発明者らが今回提案したFを含有しないか、若しくは低F含有パウダーにおいて、潤滑性の確保と操業安定性から、塩基度(CaO/SiO2)は、0.4以上、0.8以下が望ましい。
【0038】
前記プリメルト原料の含有量を40〜95質量%としたのは、40質量%未満の場合はモールドフラックスの溶融速度が低下するからである。溶融速度が低下すると、十分な溶融層が形成されず、鋳型と凝固殻との間へのモールドフラックスの流入量が低下して良好な潤滑が得られない。反対に、95質量%を超えると、バインダー、膨張黒鉛や微粒カーボン等の添加量が少なくなって、(1) 顆粒に成形するのが困難になる、(2) 鋳型内溶鋼表面に投入された際の膨張性に欠ける、(3) 溶融速度が速くなりすぎる、などの問題が生じるからである。さらに適した範囲は、50〜95質量%である。
【0039】
また、シリカ原料の配合量を0〜30質量%としたのは、30質量%を超えると、モールドフラックスの溶融速度が低下するからである。さらに適した範囲は、0〜25質量%である。シリカ原料は、成分濃度の調整に用いるので、0質量%(不可避不純分のみ)であっても問題とならない。使用可能なシリカ原料としては、珪砂、珪藻土、ガラス粉などがある。
【0040】
また、フッ素原料の配合量を0〜5質量%としたのは、5質量%を超えると、連続鋳造機の腐食に影響を及ぼすからである。さらに適した範囲は、0〜2質量%、最も好ましい範囲は0質量%(不可避不純分のみ)である。使用可能なフッ素原料としては、蛍石、フッ化ソーダなどがある。
【0041】
また、炭酸塩の配合量を1〜15質量%としたのは、15質量%を超えると、顆粒とする際の成形性が悪化するからである。また、1質量%未満の場合は、モールドフラックスの溶融速度が低下するからである。さらに適した範囲は、3〜10質量%である。使用可能な炭酸塩としては、炭酸ソーダ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどがある。
【0042】
また、バインダーの配合量を0.5〜5質量%としたのは、5質量%を超えると、顆粒成形前のスラリーの粘度が高くなりすぎて成形性が悪化するからである。反対に0.5質量%未満の場合は、顆粒状に成形することが困難となるからである。さらに適した範囲は、1.0〜4質量%である。なお、使用可能なバインダーとしては、例えば一般的に使用されるCMC(カルボキシル・メチル・セルロース)などがある。
【0043】
また、膨張黒鉛の配合量を0.5〜5質量%としたのは、5質量%を超えると、モールドフラックスの溶融速度が低下するからである。反対に、0.5質量%未満の場合は、膨張による良好な崩壊性が得られず、鋳型内の溶鋼表面の保温性が悪化し、最悪の場合、溶鋼表面が皮張りして操業を停止しなければならなくなるからである。さらに適した範囲は、0.5〜4質量%である。なお、使用する膨張黒鉛は、膨張温度は300〜600℃、平均粒度は0.05〜0.2mm程度のものが望ましい。
【0044】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験結果について説明する。
実施例を下記表1に、比較例を下記表2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1に示した10種類の実施例は、いずれも鋼の連続鋳造に適用することが可能な凝固点および粘度を有しており、また、溶融後の凝固時にNa2O・2CaO・3SiO2を主とする結晶が晶出又は析出した。
【0048】
さらに、実施例A,B,E,F,G,H,I,Jはモールドフラックスにフッ素原料を使用していない。また、実施例の全てのモールドフラックスは顆粒状であり、鋳型内に投入した際にほとんど粉塵は発生しない。
【0049】
加えて、実施例AはNa2O・2CaO・3SiO2の純組成に近く、安定してNa2O・2CaO・3SiO2が晶出又は析出した。
【0050】
また、実施例Bは実施例Aと比べて、塩基度(CaO/SiO2)をわずかに低下させると共に、Al2O3+MgO及びNa2O+Li2O+K2Oをわずかに多く添加し、粘度を低下させることで結晶の晶出又は析出が起こりやすく調整している。
【0051】
また、実施例C及びDではFを、実施例EではB2O3やTiO2を数質量%含有させることで粘度をさらに低下させて結晶化を促進させることが可能な条件を作り出している。従って、緩冷却化による表面品質向上に繋がる。
【0052】
ところで、モールドフラックスの原料であるソーダ灰、炭酸塩は、顆粒に成形する際に使用する水に溶解するので、多量に使用すると顆粒に成形できなくなる。フッ化ソーダ以外のNa2O源は通常ソーダ灰であるが、上記の理由からソーダ灰を多量に使用することができない。
【0053】
そこで、溶融速度を促進する炭酸塩を除き、溶融後の組成に近くなるように、実施例A,B,C,D,F,G,H,I,J及び比較例EではNa2O‐CaO‐SiO2系のプリメルト原料を、実施例EではNa2O‐CaO‐SiO2‐B2O3系のプリメルト原料を、それぞれ主原料として使用している。
【0054】
比較例A,B,C,Dはプリメルト原料を使用していないか、若しくは、プリメルト原料の使用量を本発明で規定する量よりも少なくしているので、顆粒に成形することができない。また、比較例Eは顆粒であるが、膨張黒鉛の添加量が本発明で規定する量よりも少なく良好な熱崩壊性が得られないので、モールドフラックスとして用いることができない。
【0055】
実施例Bと比較例Cをそれぞれ用いて、下記表3に示す条件で鋼の連続鋳造を行った。得られた鋳片表面の縦割れ発生指数を下記表4に示す。縦割れ発生指数は、実施例B及び比較例Cをそれぞれ使用して連続鋳造した同じ長さの各鋳片に発生した縦割れの総長さを測定し、比較例Cを使用して連続鋳造した場合の鋳片に発生した縦割れの総長さを1.0とした時の比率で表したものである。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
表4より、実施例Bによる鋳片表面の縦割れ発生指数は比較例Cと同程度であることが分かる。従って、実施例Bでは、表面品質を維持しつつ、粉塵の発生を抑制し、かつ、連続鋳造機の腐食の原因となるFの含有量を不可避分または低く抑えた鋼の連続鋳造用モールドフラックスであることが確認できた。
【0059】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Na2O‐SiO2‐CaO系又はNa2O‐CaO‐SiO2‐B2O3系のプリメルト原料を40〜95質量%、シリカ原料を0〜30質量%、フッ素原料を0〜5質量%、炭酸塩を1〜15質量%、バインダーを0.5〜5質量%、膨張黒鉛を0.5〜5質量%含有し、顆粒状に成形したことを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドフラックス。
【請求項2】
塩基度(CaO/SiO2)が0.4〜0.8であることを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造用モールドフラックス。
【請求項3】
Na2O,Li2O,K2Oの内、1つないしは複数を合わせて13〜28質量%含有し、溶融後に凝固した際に、X(Na2O,Li2O,K2Oのいずれか1つまたは複数)‐SiO2‐CaOから成る結晶を主として晶出又は析出させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼の連続鋳造用モールドフラックス。

【公開番号】特開2011−245503(P2011−245503A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119575(P2010−119575)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】