説明

鋼板欠陥検査装置

【課題】本発明は、表面及び表層に発生する欠陥、内部に発生する欠陥、及び穴欠陥の種類を識別することが可能な鋼板欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】薄鋼板1の表面側から異なる距離で離間させて幅方向に備えられるアレイ型磁気センサ2aとアレイ型磁気センサ2bとから成る表面磁気センサ2と、表面磁気センサ2から所定の距離で離間させ、薄鋼板の裏面側から異なる距離で離間させて幅方向に備えられるアレイ型磁気センサ3aとアレイ型磁気センサ3bとから成る薄鋼板の裏面磁気センサ3と、アレイ型磁気センサ2a乃至3bからの出力信号を予め設定される判定レベルと比較して、欠陥の有無を判定する欠陥判定部4と、判定された欠陥信号の検出パターンを、欠陥種類判定アルゴリズムで判定する欠陥種類判定部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板欠陥検査装置に係り、特に、薄鋼板の欠陥部によって生じる漏洩磁束を検出するアレイ型磁気センサを用いた鋼板欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食缶の材料となるブリキ板等の薄鋼板(ストリップとも言う)の表層、及び内部に存在する微小欠陥の検出装置として、その欠陥部によって生じる漏洩磁束を検出して欠陥の有無を判定する磁気探傷装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この磁気探傷装置は、微小な欠陥を検出しようとするとストリップと漏洩磁束検出センサとの相対距離(リフトオフ)を短くする必要があるため、磁気探傷装置と薄鋼板との接触が避けられない問題があった。
【0004】
そこで、薄鋼板を走行方向に磁化し、この薄鋼板の内部及び表層部の欠陥部によって生ずる漏洩磁束を、薄鋼板の幅方向に漏洩磁気センサを複数並べて検出する磁気探傷装置においては、このアレイ型の漏洩磁気センサは、磁気探傷装置と薄鋼板との接触があっても、薄鋼板に疵を付けたり、磁気探傷装置を故障させたりすることが無いようにする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このアレイ型磁気探傷装置は、微小な欠陥部から漏洩される漏洩磁束を、薄鋼板に近接対面して検出する磁性素子と、一方の端面部を磁性素子の磁気感受面に密着させ、他方の端面部を薄鋼板の表面に近接対面させて設けられ、漏洩磁束を磁気感受面に集束させる軟質磁性特性を有する磁性繊維からなる磁性繊維集束体と、磁性素子の前記磁気感受面の後方に設けられる軟質磁性体板とを備える。
【0006】
ところで、薄鋼板の微小欠陥の発生形態には、表面及び表層に発生する欠陥、内部に発生する欠陥、及び穴欠陥などがあり、これらの欠陥を識別して検出し、薄鋼板の品質管理の向上を図りたいとする要求がある。
【0007】
しかしながら、上述したような従来の磁気探傷装置では、薄鋼板表面の漏洩磁束の変化を検出する方式なので、いずれの形態の欠陥であるかを識別することが出来ない問題がある。
【0008】
微小欠陥の種類の判定精度の向上を図る技術としては、薄鋼板に光を照射してその表面からの反射光に応じた信号を得る光学センサ、及び薄鋼板に磁場を印加してその漏洩磁束パターンを光学的に検出した信号を得る磁気光学センサを有するセンサ部と、該センサ部より得られる各信号を独立的に2次元に画像展開して疵の特徴量を抽出する画像処理部と、抽出した疵の特徴量から特定のアルゴリズムに従って欠陥の種別,等級を判定する疵判定部とを備えたことを特徴とする疵判定装置がある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2002−195984号公報(図1、第1頁)
【特許文献2】特願2006−150561号公報(図1、第1頁)
【特許文献3】特開平6−273349号公報(図1、第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に開示された磁気探傷装置は、リフトオフを小さくし、磁気探傷装置と薄鋼板との接触があっても、薄鋼板に疵を付けたり、磁気探傷装置を故障させたりすることが無いようにする技術は開示されている。
【0010】
しかしながら、検出される信号は漏洩磁束の大きさに比例するのみで、表面及び表層に発生する欠陥、内部に発生する欠陥、及び穴欠陥などの欠陥の発生形態を捉える検出要素が無いため、これらの種類を識別できない問題がある。
【0011】
また、特許文献3に開示された光学センサと磁気光学センサを組み合わせた疵判定装置においては、表面及び内部の信号を識別する信号成分は含まれているものの、異なるセンサの検出位置及び解像度を高精度で合わせることなど装置の構成が複雑で高価となる問題がある。
【0012】
さらに、実際の疵を検出して採取された疵画像の特徴と実際の疵とを対応付けて欠陥の種類を識別するため、大量のデータを採取して学習することも必要と成る。この学習に手間が掛かる問題がある。
【0013】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、アレイ型磁気センサを使用して、表面及び表層に発生する欠陥、内部に発生する欠陥、及び穴欠陥の種類を識別することが可能な鋼板欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明による鋼板欠陥検査装置は、薄鋼板を走行方向に磁化し、この薄鋼板の欠陥部によって生ずる漏洩磁束を、磁気検出素子を前記薄鋼板の幅方向に複数配列して成るアレイ型磁気センサで検出し、前記薄鋼板の欠陥の種類を判定する鋼板欠陥検査装置であって、前記薄鋼板の表面側から異なる距離で離間させて幅方向に備えられる第1のアレイ型磁気センサと第2のアレイ型磁気センサとから成る当該薄鋼板の表面側に設けられる表面磁気センサと、前記薄鋼板の移動方向において、前記表面磁気センサから所定の距離で離間させ、前記薄鋼板の裏面側から異なる距離で離間させて幅方向に備えられる第3のアレイ型磁気センサと第4のアレイ型磁気センサとから成る当該薄鋼板の裏面側に設けられる裏面磁気センサと、前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサからの出力信号を予め設定される判定レベルと比較して、欠陥の有無を判定する欠陥判定部と、前記欠陥判定部で検出された前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサの4つの欠陥信号の検出パターンを、予め設定された欠陥種類判定アルゴリズムで判定し、欠陥の種類を判定する欠陥種類判定部とを備え、前記欠陥判定部で検出された欠陥信号が前記薄鋼板の内部欠陥、表面欠陥、裏面欠陥、または穴欠陥のいずれかであることを判定するようにしたことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明による鋼板欠陥検査装置は、請求項1において、前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサは、幅方向で対応する夫々の前記磁気検出素子の位置が一致するように予め配置し、前記欠陥判定部の出力は、前記磁気検出素子の単位で出力させ、前記第1のアレイ型磁気センサと前記第3のアレイ型磁気センサとを前記薄鋼板の表面側及び裏面側に対して予め設定される第1の距離で離間させて設置し、前記2のアレイ型磁気検出センサと前記第4のアレイ型磁気検出センサとを前記第1の距離よりも長い、予め設定される第2の距離で離間させて設置し、前記薄鋼板の移動速度を検出する速度検出器と、前記薄鋼板の移動方向において、前記前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサの設置位置の相違による、夫々の欠陥信号の検出位置のずれを前記速度検出器の速度信号で補正する遅延回路部と、前記遅延回路部の出力信号を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記磁気検出素子毎の前記欠陥信号の検出パターンを、予め設定され、前記記憶部に記憶される欠陥種類判定アルゴリズムで判定する欠陥種類判定部とを備え、前記磁気検出素子毎の欠陥信号の検出パターンから欠陥の種類を判定するようにしたことを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明による鋼板欠陥検査装置は、請求項1において、前記欠陥判定部は、欠陥信号を大、小、無しの3種類に判定する判定レベルを具備する判定レベル設定部を備え、前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサからの欠陥信号を大、小、無しの3種類に識別して検出し、前記欠陥種類判定アルゴリズムは、3種類の前記判定レベルで欠陥の有無を判定し、判定された欠陥の検出パターンから欠陥の種類を判定するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、2つのアレイ型磁気センサを薄鋼板の表面から異なる距離で、薄鋼板の走行方向において表面側と裏面側とに設け、薄鋼板に発生する欠陥に対して、厚さ方向での発生位置の違いによって検出感度が異なるように配置し、表裏の複数のアレイ型磁気センサで漏洩磁束の検出パターンを判定して、欠陥の種類を識別するようにしたので、薄鋼板の表面及び表層に発生する欠陥、内部に発生する欠陥、及び穴欠陥の種類を識別することが可能な鋼板欠陥検査装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について、図1乃至図5を参照して説明する。図1は、本発明の鋼板欠陥検査装置の構成図で、且つ、薄鋼板1の矢印に示す走行方向の側面から見た配置図を示す。
【0019】
図1において、鋼板欠陥検査装置は、薄鋼板1の表面側に設けられる表面磁気センサ2と、薄鋼板1の裏面側に設けられる裏面磁気センサ3と、表面磁気センサ2及び裏面磁気センサ3で検出された信号から欠陥の有無を判定する欠陥判定部4と、欠陥判定部4の出力から欠陥の種類を判定する欠陥種類判定部5とからなる。
【0020】
鋼板欠陥検査装置の表面磁気センサ2と裏面磁気センサ3とは、薄鋼板1の走行方向で、所定の距離おいて設けられる非磁性ロール11a面上で、夫々薄鋼板1の上下動が無い状態の場所に設置される。
【0021】
表面磁気センサ2は、非磁性ロール11aに巻きつけられ矢印方向に走行する薄鋼板1を磁化するための磁化コイルが巻かれたC型の磁化ヨーク2cと、このC型の磁化ヨーク2cの両端面部の中央部に設けられるアレイ型磁気センサ2a及びアレイ型磁気センサ2bとから成る。
【0022】
同様に、裏面磁気センサ3は、大口径の非磁性ロール11aに巻きつけられ矢印方向に走行する薄鋼板1を磁化するための磁化コイルが巻かれたC型の磁化ヨーク3cと、このC型の磁化ヨーク3cの両端面部の中央部に設けられるアレイ型磁気センサ3a及びアレイ型磁気センサ3bとから成る。
【0023】
このC型の磁化ヨーク2cの両端面部は、薄鋼板1が所定の磁束密度以上で磁化される様に、薄鋼板1の走行方向に所定の距離で、また薄鋼板1の表面と所定の距離で近接して配置される。
【0024】
そして、磁化コイルに所定の直流電流を流すと、磁化ヨーク2cにより薄鋼板1が磁化され、該薄鋼板1の内部に介在物や表面疵があると、この部分に漏洩磁束が発生する。この漏洩磁束を磁気検出素子21からなる表面磁気センサ2と裏面磁気センサ3とで検出して、欠陥の有無を判定する。
【0025】
次ぎに、この表面磁気センサ2と裏面磁気センサ3の設定について、図2を参照して説明する。図2(a)は、表面磁気センサ2の外観斜視図で、夫々のアレイ型磁気センサ2a及びアレイ型磁気センサ2bは、同じ磁気検出素子21を複数幅方向に並べて形成される。
【0026】
また、アレイ型磁気センサ2a及びアレイ型磁気センサ2bは、図2(b)に示すように薄鋼板1から異なる距離ΔL1及びΔL2で設定される。
【0027】
同様に、裏面磁気センサ3は、アレイ型磁気センサ3a及びアレイ型磁気センサ3bから成り、図2(b)に示すように薄鋼板1から夫々異なる距離ΔL1及びΔL2で設定される。
【0028】
また、表面磁気センサ2と裏面磁気センサ3とは、磁化ヨーク2c及び磁化ヨーク3cが水平に設置される、薄鋼板1の移動方向に対して、直線距離Lで配置される。
【0029】
また、アレイ型磁気センサ2a乃至アレイ型磁気センサ3bは、幅方向で夫々の磁気検出素子21の検出位置が合う様に予め揃えて配置される。
【0030】
そして、薄鋼板1の表面からの距離ΔL1及び距離ΔL2とは、磁気検出素子21で検出する、薄鋼板1に発生する表面及び内部欠陥に対して、予めサンプル試験を行なって、厚さ方向で異なる位置発生する欠陥に対して検出感度が異なるように設定する。
【0031】
即ち、薄鋼板1の欠陥は、欠陥の大小や、鋼板の表面及び表層と鋼板の内部中央部に発生する欠陥とでは、漏洩磁束の空間分布が異なるので、漏洩磁束の大小を薄鋼板1からの異なる距離に磁気検出素子21を置いて判別するようにする。
【0032】
したがって、この距離の設定は、検出対象とする薄鋼板1の欠陥サンプルを増やして、予めサンプル試験で統計的に慎重に決める。
【0033】
次に、このように設定された表面磁気センサ2及び表面磁気センサ3からの検出信号から、欠陥の種類を判定する信号処理について、図3を参照して説明する。
【0034】
アレイ型磁気センサ2a(2b、3a、3b)は,n個の磁気検出素子21からなり、夫々の出力は欠陥判定部4で、予め設定される判定レベルと比較して欠陥の有無が判定される。
【0035】
ところで、欠陥判定部4で欠陥ありと検出された信号は、図2(b)に示したように、アレイ型磁気センサ2aとアレイ型磁気センサ2bとで、また、アレイ型磁気センサ3aとアレイ型磁気センサ3bとで、夫々、薄鋼板1の移動方向でΔL検出位置がずれている。また、表面磁気センサ2と裏面磁気センサとは距離Lずれている。
【0036】
したがって、速度検出器7から所定の補正分解能となる単位距離(Δd)信号を生成し、欠陥判定部4で検出した欠陥信号は、遅延回路部6a乃至遅延回路部6cで、下記の単位距離の数(n)分、遅延させ検出位置がアレイ型磁気センサ3bの検出位置で揃うように検出位置を補正する。
【0037】
夫々の単位距離の補正の数は、遅延回路部6aでは、
アレイ型磁気センサ2aでの遅延:n2a=(L+ΔL)/Δd、
遅延回路部6bでは、
アレイ型磁気センサ2bでの遅延:n2b=(L+ΔL)、
遅延回路部6cでは、
アレイ型磁気センサ3aでの遅延:n3a=ΔL/Δd
となる。
【0038】
遅延回路部6a(6b、6c)及びアレイ型磁気センサ3bの出力は、検出位置が補正され、欠陥種類判定部5の記憶部5aに記憶される。そして記憶部5aに記憶された欠陥信号は、薄鋼板1の表面側及び裏面側に異なる距離で設置された磁気検出素子21からの検出パターンを、予め図示しない記憶部5に記憶される欠陥種類判定アルゴリズムを読み出し、演算部5bで欠陥種類判定アルゴリズムに基づく演算を行なって欠陥の種類が判定される。
【0039】
この欠陥種類判定アルゴリズムは、判定レベルの組み合わせだけでなく、検出した信号を画像化し、異なる距離での検出パターンでなく、検出された2次元的な画像による判定を行なうようにすることも出来る。
【0040】
次ぎに、このように構成された鋼板欠陥検査装置の動作について、例えば、図4に示すモデル化された欠陥の検出の場合で説明する。
【0041】
図4は、厚さ方向から見た欠陥の発生位置と、その漏洩磁束のモデル図である。この鋼板欠陥検出装置が対象とする薄鋼板1の内部欠陥、表面欠陥、穴欠陥の大きさは、大きいもので200μφ、小さなものでは20μφ程度の微小な欠陥を対象としている。欠陥部からの漏洩磁束の空間的な広がりの状態を破線で示した。
【0042】
漏洩磁束は、内部欠陥D1と表面欠陥D2(D3)とでは、内部の方が漏洩磁束は小さく成るので、薄鋼板1の磁化強度及び磁気検出素子21の検出感度は、微小な内部欠陥D1bが検出可能なように設定される。
【0043】
この設定は、例えば、厚さ1mmの薄鋼板1に対しては、2テスラ以上の磁束密度が得られるような磁化電流とし、磁気検出素子21をホール素子で構成した場合、薄鋼板1と磁気検出素子21との相対距離(リフトオフ)は1mm乃至2mm程度で必要な検出感度が得られることがシミュレーションで得られた。
【0044】
図5は、図4に示すような大きな内部欠陥D1a、小さな内部欠陥D1b、大きな表面欠陥D2a(D3a)、小さな表面欠陥D2b(D3b)及び穴欠陥D4のモデルに対する、薄鋼板1から異なる距離で設けられたアレイ型磁気センサ2a乃至アレイ型磁気センサ3bからの、個々の磁気検出素子21の欠陥判定部4での検出パターンを示したものである。
【0045】
ここで、3つの判定レベルの高い方で検出されたものを◎印、2つの判定レベルの低い方で検出されたものを〇印、また、いずれでも検出されないものを×印で示した。
【0046】
例えば、内部欠陥小D1bは、アレイ型磁気検出センサ2a及びアレイ型磁気検出センサ2bの低い方の判定レベルでいずれでも検出され、表面欠陥小D2b及び表面欠陥小D3bは、夫々その発生表面に近いアレイ型検出素子2a、2b及びアレイ型検出素子3a、3bで検出されることを示す。
【0047】
漏洩磁束は同じサイズの欠陥であれば、内部より表面の方が大きくなるため、表面欠陥の場合、欠陥の発生した側のアレイ型磁気センサのいずれからでも検出されたことを示す。
【0048】
このように、欠陥の厚さ方向での発生位置の相違により垂直方向の漏洩磁束の状態が変化するので、異なる距離で設置したアレイ型磁気センサからの検出パターンで、欠陥が内部欠陥か表面欠陥か、またその位置が表面側か裏面側かを識別することで欠陥の種類を判定することが可能となる。
【0049】
しかしながら、実際の欠陥は、薄鋼板1の材質及び欠陥の形状などが多様に変化するので、上記のモデルのように一義的に対応付けて定義されないが、磁気検出素子21のリフトオフを予め選定して設定することで、内部欠陥か表面欠陥かの判定制度を向上させることが可能である。
【0050】
尚、本発明は上述したような実施例に何ら限定されるものでなく、欠陥の判定レベルを3レベルでなく多値化処理することや、欠陥の識別制度を向上するために他の光学式欠陥検出装置と組み合わせて欠陥の厚さ方向での発生位置の識別することなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の鋼板欠陥検査装置の構成図。
【図2】本発明のアレイ型磁気センサの配置図。
【図3】本発明の鋼板欠陥検査装置の信号処理系統図。
【図4】欠陥の種類と漏洩磁束のモデル図。
【図5】欠陥の種類に対応するアレイ型磁気センサの欠陥判定出力の例。
【符号の説明】
【0052】
1 薄鋼板(ストリップ)
2 表面磁気センサ
2a アレイ型磁気センサ
2b アレイ型磁気センサ
2c 磁化ヨーク
3 表面磁気センサ
3a アレイ型磁気センサ
3b アレイ型磁気センサ
3c 磁化ヨーク
4 欠陥判定部
5 欠陥種類判定部
5a 記憶部
5b 演算部
6a、6b、6c、6d 遅延回路部
7 速度検出器
11a、11b 非磁性ロール
12 アレイ型磁気センサ
12c 磁化ヨーク
21 磁気検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄鋼板を走行方向に磁化し、この薄鋼板の欠陥部によって生ずる漏洩磁束を、磁気検出素子を前記薄鋼板の幅方向に複数配列して成るアレイ型磁気センサで検出し、前記薄鋼板の欠陥の種類を判定する鋼板欠陥検査装置であって、
前記薄鋼板の表面側から異なる距離で離間させて幅方向に備えられる第1のアレイ型磁気センサと第2のアレイ型磁気センサとから成る当該薄鋼板の表面側に設けられる表面磁気センサと、
前記薄鋼板の移動方向において、前記表面磁気センサから所定の距離で離間させ、前記薄鋼板の裏面側から異なる距離で離間させて幅方向に備えられる第3のアレイ型磁気センサと第4のアレイ型磁気センサとから成る当該薄鋼板の裏面側に設けられる裏面磁気センサと、
前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサからの出力信号を予め設定される判定レベルと比較して、欠陥の有無を判定する欠陥判定部と、
前記欠陥判定部で検出された前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサの4つの欠陥信号の検出パターンを、予め設定された欠陥種類判定アルゴリズムで判定し、欠陥の種類を判定する欠陥種類判定部と
を備え、
前記欠陥判定部で検出された欠陥信号が前記薄鋼板の内部欠陥、表面欠陥、裏面欠陥、または穴欠陥のいずれかであることを判定するようにしたことを特徴とする鋼板欠陥検査装置。
【請求項2】
前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサは、幅方向で対応する夫々の前記磁気検出素子の位置が一致するように予め配置し、
前記欠陥判定部の出力は、前記磁気検出素子の単位で出力させ、
前記第1のアレイ型磁気センサと前記第3のアレイ型磁気センサとを前記薄鋼板の表面側及び裏面側に対して予め設定される第1の距離で離間させて設置し、
前記2のアレイ型磁気検出センサと前記第4のアレイ型磁気検出センサとを前記第1の距離よりも長い、予め設定される第2の距離で離間させて設置し、
前記薄鋼板の移動速度を検出する速度検出器と、
前記薄鋼板の移動方向において、前記前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサの設置位置の相違による、夫々の欠陥信号の検出位置のずれを前記速度検出器の速度信号で補正する遅延回路部と、
前記遅延回路部の出力信号を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記磁気検出素子毎の前記欠陥信号の検出パターンを、予め設定され、前記記憶部に記憶される欠陥種類判定アルゴリズムで判定する欠陥種類判定部と
を備え、
前記磁気検出素子毎の欠陥信号の検出パターンから欠陥の種類を判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の鋼板欠陥検査装置。
【請求項3】
前記欠陥判定部は、欠陥信号を大、小、無しの3種類に判定する判定レベルを具備する判定レベル設定部を備え、前記第1のアレイ型磁気センサ乃至前記第4のアレイ型磁気センサからの欠陥信号を大、小、無しの3種類に識別して検出し、
前記欠陥種類判定アルゴリズムは、3種類の前記判定レベルで欠陥の有無を判定し、判定された欠陥の検出パターンから欠陥の種類を判定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の鋼板欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−151744(P2008−151744A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342557(P2006−342557)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】