説明

鋼管鉄塔内面塗装装置

【課題】 適正かつ作業性よく鋼管鉄塔の主柱内面を塗装する。
【解決手段】 主柱との間で静電界を形成して、霧化した塗料を帯電させて静電塗装する塗装機本体2と、所定量の塗料を蓄え、塗装機本体2に対して塗料を供給する塗料タンク4と、伸縮自在で主柱の内面を押圧して、塗装機本体2を主柱内の軸心側に保持するアームセット7と、を備え、塗装機本体2と塗料タンク4とアームセット7とは、一体の塗装ユニット5として主柱内を移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼管鉄塔の主柱内面を塗装する鋼管鉄塔内面塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主柱が鋼管で構成された鋼管送電鉄塔の主柱内面は、外面と同様に溶融亜鉛メッキが施され、長期にわたって優れた耐腐食性・防食性が維持されるようになっている。しかしながら、経年に伴って亜鉛メッキが減耗し、主柱内面が腐食して所要の強度が確保できない場合が生じ得る。このような場合、鋼管の取り替えが必要となるが、鋼管送電鉄塔は、500kVや200kVなどの大電圧の大型鉄塔である場合が多く、その取り替えには、多大な時間と労力、費用を要する。
【0003】
このため、主柱外面と同様に、主柱内面についても、亜鉛メッキ厚さの管理や塗装処理が必要となる。しかしながら、鋼管送電鉄塔は、急峻な山地などに立地している場合が多く、現地への大型機材の搬入が極めて困難である。しかも、主柱内面を塗装するに際して、資機材の挿入部が、主柱の頂部や下部の水抜き穴などに限られているため、施工面での制約が多い。
【0004】
このような背景の下、鋼管内に作動部分を挿入して、鋼管内面を塗装する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、鋼管内への固定を可能にする固定手段と、固定手段の先端に取り付けられ塗料を吐出・噴霧する塗装手段と、を有する作動部分を鋼管内に挿入する。そして、この作動部分に、固定手段を作動させるための圧縮空気と塗料とを送りながら作動部分を移動させ、塗装手段から塗料を噴霧して鋼管内面を塗装するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−082051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、鋼管鉄塔の主柱は、複数の鋼管を接合して構成され、しかも、下方から上方に向かって径が小さい鋼管が接続されている。つまり、下位の鋼管と上位の鋼管との内径が異なり、鋼管と鋼管との接合部内面には、段差が生じている。このため、特許文献1のように塗装手段から塗料を噴霧するのみでは、段差部が適正に塗装されず、塗装不足(漏れ)や過塗料(ダマ)が生じる場合がある。
【0007】
さらに、特許文献1の方法では、外部から作動部分に圧縮空気や塗料を送るためのホースを要するが、主柱が数十mもある長尺であるため、ホースも長尺、大重量となり、その取り扱いが困難で、作業性が悪い。
【0008】
そこでこの発明は、適正かつ作業性よく鋼管鉄塔の主柱内面を塗装することが可能な鋼管鉄塔内面塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、主柱が鋼管で構成された鋼管鉄塔の前記主柱の内面を塗装する鋼管鉄塔内面塗装装置であって、前記主柱との間で静電界を形成して、霧化した塗料を帯電させて静電塗装する静電塗装手段と、前記静電塗装手段と連結され、所定量の塗料を蓄え、前記静電塗装手段に対して塗料を供給する塗料タンクと、前記静電塗装手段と連結され、伸縮自在で前記主柱の内面を押圧して、前記静電塗装手段を前記主柱内の軸心側に保持する保持手段と、を備え、前記静電塗装手段と塗料タンクと保持手段とは、一体の移動体として前記主柱内を移動可能となっている、ことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、例えば、アース・接地された主柱を陽極、静電塗装手段を陰極とし、静電塗装手段において負の電圧を付加して、主柱と静電塗装手段との間で静電界を形成する。そして、保持手段によって静電塗装手段が主柱内の軸心側に保持された状態で、塗料タンクから供給された塗料が、静電塗装手段によって帯電されて主柱の内面に静電塗装される。このような静電塗装を行いながら、静電塗装手段と塗料タンクと保持手段とを移動体として、主柱内を移動させることで、主柱の内面が順次塗装される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の鋼管鉄塔内面塗装装置において、前記塗料タンクは、1本の前記主柱の内面を塗装するのに要する塗料を蓄えられる容積を有する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の鋼管鉄塔内面塗装装置において、前記塗料タンクが変形自在となっている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼管鉄塔内面塗装装置において、2つの前記保持手段を備え、前記保持手段と保持手段との間に前記塗料タンクが配設され、一方の前記保持手段側に前記静電塗装手段が配設されている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼管鉄塔内面塗装装置において、前記静電塗装手段を駆動する電源ケーブルが前記静電塗装手段に接続され、前記電源ケーブルを進退動させることで、前記移動体が前記主柱内を移動可能となっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、静電塗装によって主柱の内面を塗装するため、塗料と主柱との間で引力が生じて、滑らかな面のみならず、段差部や隠れた部分に対しても、塗料が漏れなくかつ均等に付着し、主柱の全内面を適正・良好に塗装することが可能となる。また、保持手段によって静電塗装手段が主柱内の軸心側に保持されるため、主柱の内周面に対して静電塗装が均等に行われ、より適正・良好に塗装することが可能となる。しかも、塗料タンクに所定量の塗料が蓄えられ、また、保持手段が主柱の内面を押圧するため、外部から塗料や圧縮空気を送る必要がない。このため、長尺で大重量なホースが不要となり、作業性が向上する。
【0016】
請求項2の発明によれば、1本の主柱を塗装するのに必要な量の塗料が塗料タンクに蓄えられるため、1本の主柱に対して塗装を行うのに、塗料タンクに塗料を追加する必要がない。このため、鋼管鉄塔の全主柱に対して、容易かつ短時間に塗装することが可能となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、塗料タンクが変形自在となっているため、主柱が曲がっている場合であっても、主柱に沿って塗料タンクが変形し、主柱内での移動が可能となる。この結果、主柱の全内面を適正・良好に塗装することが可能となる。
【0018】
請求項4の発明によれば、2つの保持手段と保持手段との間に塗料タンクが配設されているため、塗料タンクの容積が大きく長い場合であっても、塗料タンクの支持、保持が安定化する。この結果、静電塗装手段と塗料タンクと保持手段とが移動体として移動しても、静電塗装手段が主柱内の軸心側に安定して保持され、適正・良好な塗装を維持することが可能となる。
【0019】
請求項5の発明によれば、電源ケーブルを進退動させることで移動体が主柱内を移動可能なため、移動体を主柱内で移動させるのに別途部材を設ける必要がなく、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1に係る鋼管鉄塔内面塗装装置を示す概正面図である。
【図2】図1の塗装装置の塗装機本体の概正面図である。
【図3】図1の塗装装置の保持ユニットの概正面図である。
【図4】図1の塗装装置の塗料タンクの概正面図である。
【図5】図1の塗装装置による段差部の塗装状況を示す模式図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る鋼管鉄塔内面塗装装置を示す概正面図である。
【図7】この発明における他の塗料タンクを示す正面図である。
【図8】この発明における他の保持手段を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る鋼管鉄塔内面塗装装置1を示す概正面図である。この鋼管鉄塔内面塗装装置1は、主柱が鋼管で構成された鋼管送電鉄塔の主柱の内面を塗装する装置であり、主として、塗装機本体(静電塗装手段)2と、保持ユニット(保持手段)3と、塗料タンク4とを備えている。ここで、塗装機本体2と保持ユニット3と塗料タンク4とを、一体の塗装ユニット(移動体)5とし、この塗装ユニット5は、主柱内に挿入可能な大きさに設定されている。
【0023】
塗装機本体2は、主柱との間で静電界を形成して、霧化した塗料を帯電させて静電塗装するものであり、図2に示すような円筒状の本体ケース21内に、このような静電塗装を行う機能部(図示せず)が収容されている。そして、アース・接地された主柱を陽極とし、機能部を陰極とし、機能部において負の高電圧を付加して、主柱と機能部との間で静電界を形成し、スプレーノズル22から霧化した塗料粒子を負に帯電させる。これにより、正極(反対極)である主柱に塗料を吸着させるものである。
【0024】
また、この塗装機本体2は、エアレススプレー方式で、圧縮空気の吹き付けによらないで、塗料自体に圧力をかけてスプレーノズル22から塗料粒子を霧状に噴き出すもの(静電霧化方式)である。このため、外部からの圧縮空気の供給が不要で、エアーホースが必要なく、小型、軽量化されている。
【0025】
本体ケース21の一端からは、スプレーノズル22が突出し、他端からは、上記の機能部と接続された電源管23が延びている。この電源管23には、機能部に電源・電力を供給して駆動させる電源線が収容され、電源管23の他端部(反本体ケース21側の端部)に、電源ケーブル6が着脱自在に接続されている。
【0026】
この電源ケーブル6は、電源管23と同様に、機能部に電源を供給する電源線が収容され、装置1全体を支えることができる強度を備えている。すなわち、後述するようにして電源ケーブル6を進退動(巻き上げ、巻き下げ)させることで、塗装ユニット5が主柱内を移動できるように、電源ケーブル6自体の強度や電源管23と電源ケーブル6との接続強度などが設定されている。一方、電源ケーブル6の他端部には、電源装置が接続されている。
【0027】
また、本体ケース21には、アームセット(保持手段)7が取り付けられており、このアームセット7は、後述する保持ユニット3のアームセット7と同じ構成のため、ここでは、その説明を省略する。
【0028】
保持ユニット3は、図3に示すように、保持ケース31とアームセット7とを備えている。保持ケース31は、円筒状で、その内径が後述する塗料タンク4の外径よりもやや大きく、塗料タンク4の端部外周に装着、固定できるようになっている。アームセット7は、2つのアームリンク71を備え、各アームリンク71は、2本のリンク棒711、712がその中央部で回動自在に連結されている。各第1のリンク棒711の一端部は、保持ケース31の一端部に固定され、各第2のリンク棒712の一端部は、可動リング32に固定されている。
【0029】
この可動リング32は、保持ケース31の他端部外周に装着され、保持ケース31の軸方向にスライド自在となっている。さらに、リンク棒711、712の連結部(中央部)にはバネ(押圧手段、図示せず)が配設され、リンク棒711、712の自由端部が保持ケース31から離れる方向(図中、可動リング32が右側にスライドする方向)に常に押圧力が働くようになっている。これにより、保持ユニット3を主柱に挿入した際に、主柱の内径の大きさに応じてリンク棒711、712が矢印D1方向に伸縮し、これに伴って可動リング32が矢印D2方向にスライドするものである。
【0030】
このようなアームリンク71が、保持ケース31の軸心に対して線対照に2つ配設され、かつ、上記のように可動リング32で連結、連動されている。そして、このような保持ユニット3を後述するようにして塗装ユニット5として主柱内に挿入した際に、各アームリンク71が主柱の内径の大きさに応じて伸縮して主柱の内面を常に押圧し、塗装ユニット5つまり塗装機本体2が常に主柱内の軸心側に保持されるものである。
【0031】
また、各リンク棒711、712の自由端部には、回転ローラ713が回転自在に取り付けられ、塗装ユニット5が主柱内を移動する際に、主柱の内面をスムーズに接触移動(摺動)できるようになっている。
【0032】
ここで、この実施の形態では、2つのアームリンク71を配設しているが、保持の安定性を向上させるために3つのアームリンク71を配設してもよい。また、リンク棒711、712の連結部にバネを配設しているが、可動リング32を常に図3中右側に押圧するバネや空気圧などの押圧手段を設けるようにしてもよい。
【0033】
塗料タンク4は、所定量の塗料を蓄え、塗装機本体2に対して塗料を供給するタンクである。この塗料タンク4は、図4に示すような略円筒体で両端部が閉じ、軸心を貫通するように、電源管23を挿入する挿入孔(図示せず)が形成されている。また、塗装機本体2側の端部には、塗料を塗装機本体2に供給するための供給孔が形成されている。
【0034】
さらに、この塗料タンク4の容量、長さは、1本の主柱の内面を塗装するのに要する塗料を十分蓄えられるように、設定されている。つまり、塗料タンク4に一度塗料を充填すれば、塗料の追加を行うことなく、1本の主柱を塗装できるように塗料タンク4の容量、長さが設定されている。
【0035】
このような塗装機本体2と保持ユニット3と塗料タンク4とは、次のようにして組み付けられている。すなわち、電源ケーブル6を電源管23から外した状態で、塗料タンク4の挿入孔に電源管23を挿入して、塗料タンク4を塗装機本体2に連結する。次に、保持ユニット3の保持ケース31を塗料タンク4の他端部(反塗装機本体2側の端部)に装着、固定して、保持ユニット3を連結する。
【0036】
これにより、塗装機本体2と保持ユニット3と塗料タンク4とが、一体の塗装ユニット5として組み付けられ、その後、電源管23に電源ケーブル6を接続するものである。このような状態では、塗装機本体2のアームセット7と保持ユニット3のアームセット7との間に塗料タンク4が配設され、一方のアームセット7側に塗装機本体2が配設されている。そして、塗装ユニット5は、両端部のアームセット7の各アームリンク71が伸縮しながら、主柱の内面を接触移動することで、主柱内を移動できるようになっている。
【0037】
次に、このような構成の鋼管鉄塔内面塗装装置1の作用などについて説明する。
【0038】
ここで、塗装対象である鋼管送電鉄塔は、上下方向に延びる鋼管製の主柱が複数配設され、各主柱の上端には上蓋が設けられ、また、鉄塔・主柱は、予めアース・接地されている。さらに、各主柱は、複数の鋼管を接合して構成され、下方から上方に向かって径が小さい鋼管が接続されている。すなわち、図5に示すように、下位の鋼管P1と上位の鋼管P2との内径が異なり、鋼管P1と鋼管P2との接合部内面には、段差部Cが形成されている。
【0039】
このような主柱の内面を塗装するには、まず、上蓋を開けて、主柱の上端から塗装ユニット5を挿入していく。このとき、主柱の上端部に滑車を設けて、この滑車に電源ケーブル6を掛け、塗装機本体2側を下方に向けて電源ケーブル6を巻き下げて(進動させて)、塗装ユニット5を主柱の下端部まで下げる。
【0040】
次に、電源ケーブル6に接続されている電源装置を稼働させるとともに、電源ケーブル6を一定の速度で巻き上げる(退動させる)。これにより、塗装機本体2が作動し、上記のようにして主柱の内面に対して静電塗装が行われ、塗装ユニット5の上方移動に伴って静電塗装が主柱の軸方向に順次行われていく。このとき、上記のように、各アームセット7のアームリンク71によって塗装機本体2(塗装ユニット5)が主柱内の軸心側に保持され、しかも、主柱の内径が変わっても、各アームリンク71が伸縮して塗装機本体2が常に軸心側に保持される。
【0041】
このような静電塗装を主柱の上端部まで行った後に、電源装置を停止させて、塗装ユニット5を主柱から抜き取る。そして、電源ケーブル6を電源管23から外して、塗装ユニット5や電源ケーブル6を搬出するものである。
【0042】
以上のように、この鋼管鉄塔内面塗装装置1によれば、静電塗装によって主柱の内面を塗装するため、塗料と主柱との間で引力が生じて塗料の付着効率が向上し、滑らかな面のみならず、段差部や隠れた部分に対しても、塗料が漏れなくかつ均等・均質に付着し、主柱の全内面を適正・良好に塗装することが可能となる。すなわち、図5に示すように、正極としての鋼管P1、P2(主柱)に対して、塗料粒子が負極となるため、塗料粒子が鋼管P1、P2に吸引され、段差部Cなどに対しても、塗料粒子が漏れなくかつ均等に付着するものである。
【0043】
また、主柱の内径に係らず、アームセット7によって塗装機本体2が常に主柱内の軸心側に保持されるため、主柱の内周面に対して静電塗装が均等に行われ、より適正・良好に塗装することが可能となる。しかも、2つのアームセット7の間に塗料タンク4が配設されているため、塗料タンク4の容積が大きく長い場合であっても、塗料タンク4の支持、保持が安定化する。この結果、塗装ユニット5として移動しても、塗装機本体2が主柱内の軸心側に安定して保持され、適正・良好な塗装を維持することが可能となる。
【0044】
さらに、塗料タンク4に所定量の塗料が蓄えられ、また、アームセット7がバネ力によって独自・単独で主柱の内面を押圧するため、外部から塗料や圧縮空気を送る必要がない。このため、長尺で大重量なホースが不要となり、作業性・施工性が向上する。しかも、1本の主柱を塗装するのに必要な量の塗料が塗料タンク4に蓄えられているため、1本の主柱に対して塗装を行うのに、塗料タンク4に塗料を追加する必要がない。このため、途中で塗料がなくって未塗装な部分が発生することがなく、また、途中から塗装をやり直す必要がなく、鋼管鉄塔の全主柱に対して、容易かつ短時間に塗装することが可能となる。また、塗装機本体2を駆動するのに必要な電源ケーブル6を巻き上げ巻き下げするだけで、塗装ユニット5を主柱内で移動させられるため、塗装ユニット5を移動させるのに別途部材を設ける必要がなく、作業性が向上する。さらには、塗装ユニット5が塗装機本体2と保持ユニット3と塗料タンク4とに分割可能なため、運搬や清掃、修理、保管などの取り扱いが容易となる。
【0045】
(実施の形態2)
図6は、この実施の形態2に係る鋼管鉄塔内面塗装装置10を示す概正面図である。この実施の形態では、塗料タンク40が実施の形態1と異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0046】
塗料タンク40は、蛇腹状の略円筒体で、変形自在となっている。また、塗装機本体2の電源管23も変形自在で、塗料タンク40の変形に伴って電源管23も変形するようになっている。これにより、主柱が曲がっている場合であっても、主柱に沿って塗料タンク40や電源管23が変形・屈曲し、塗装ユニット5が主柱内で移動するが可能となる。この結果、主柱の内面を全長にわたって適正・良好に塗装することが可能となるものである。
【0047】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、塗装ユニット5を一定の速度で移動させているが、主柱の内径(塗装面積)に応じて移動速度を変えるようにしてもよい。すなわち、主柱の内径が大きい場合には低速で移動させ、内径が小さい場合には高速で移動させることで、全内面に対してより均等・均質に塗装が行えるようにしてもよい。
【0048】
また、実施の形態2では、塗料タンク40を蛇腹状にすることで変形自在となっているが、図7に示すように、複数の短い小タンク41を変形自在なチューブ42で接続し、チューブ42が変形・屈曲することで、塗料タンク43全体が変形できるようにしてもよい。さらに、上記の実施の形態では、保持ユニット3が塗料タンク4、40に装着され、保持ユニット3のアームセット7が塗料タンク4、40の端部上に位置しているが、塗料タンク4、40の長さなどに応じて、塗料タンク4、40の端部外側にアームセット7を配設してもよい。さらには、塗料タンク4、40が短い場合などには、アームセット7をひとつのみとし、塗料タンク4、40が長い場合などには、アームセット7を3つ以上設けてもよい。また、塗料タンク4内の塗料がなくなったことや、スプレーノズル22からの未噴出を検出するセンサを設け、塗料がなくなったことが検出された場合などに、外部に通報するようにしてもよい。これにより、未塗装を防止することが可能となる。
【0049】
一方、保持手段は、上記のアームセット7に限らず、他の構造・構成であってもよい。例えば、図8に示すように、中央部で回動自在に連結された2本の保持バー81、82を、本体ケース80に配設し、第1の保持バー81と第2の保持バー82とを離隔させる方向に押圧するバネ83を、第1の保持バー81と第2の保持バー82との間に設ける。また、各保持バー81、82の両端部に回転ローラ84を配設する。これにより、主柱Pの内径の大きさに応じて保持バー81、82が均等に伸縮し、スプレーノズル85が常に主柱P内の軸心側に保持されるものである。
【符号の説明】
【0050】
1、10 鋼管鉄塔内面塗装装置
2 塗装機本体(静電塗装手段)
22 スプレーノズル
23 電源管
3 保持ユニット(保持手段)
31 保持ケース
32 可動リング
4 塗料タンク
5 塗装ユニット(移動体)
6 電源ケーブル
7 アームセット(保持手段)
71 アームリンク
711 第1のリンク棒
712 第2のリンク棒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主柱が鋼管で構成された鋼管鉄塔の前記主柱の内面を塗装する鋼管鉄塔内面塗装装置であって、
前記主柱との間で静電界を形成して、霧化した塗料を帯電させて静電塗装する静電塗装手段と、
前記静電塗装手段と連結され、所定量の塗料を蓄え、前記静電塗装手段に対して塗料を供給する塗料タンクと、
前記静電塗装手段と連結され、伸縮自在で前記主柱の内面を押圧して、前記静電塗装手段を前記主柱内の軸心側に保持する保持手段と、を備え、
前記静電塗装手段と塗料タンクと保持手段とは、一体の移動体として前記主柱内を移動可能となっている、
ことを特徴とする鋼管鉄塔内面塗装装置。
【請求項2】
前記塗料タンクは、1本の前記主柱の内面を塗装するのに要する塗料を蓄えられる容積を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の鋼管鉄塔内面塗装装置。
【請求項3】
前記塗料タンクが変形自在となっている、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の鋼管鉄塔内面塗装装置。
【請求項4】
2つの前記保持手段を備え、前記保持手段と保持手段との間に前記塗料タンクが配設され、一方の前記保持手段側に前記静電塗装手段が配設されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼管鉄塔内面塗装装置。
【請求項5】
前記静電塗装手段を駆動する電源ケーブルが前記静電塗装手段に接続され、前記電源ケーブルを進退動させることで、前記移動体が前記主柱内を移動可能となっている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼管鉄塔内面塗装装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46448(P2013−46448A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181125(P2011−181125)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591124167)中電工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】