説明

鎮静効果を与える香り成分含有マイクロカプセル製剤

【課題】本発明の課題は、鎮静効果を与える香り成分を含有するマイクロカプセル製剤を提供することである。
【解決手段】本発明は、植物の青葉由来精油成分である(3Z)−ヘキセノール、(3Z)−ヘキセナール、(3E)-ヘキセノール、(3E)-ヘキセナール、(2E)-ヘキセノール、(2E)−ヘキセナール、n- ヘキサノール、n-ヘキサナールから選ばれる少なくとも一種の香気成分を含有するマイクロカプセル製剤を提供する。この製剤は、その含有香気成分の作用として、鎮静効果、体温上昇の抑制、ストレスの緩和、癒しなどの効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鎮静効果を与える香り成分含有新規マイクロカプセル製剤に関する。特に、本発明は、香気成分として植物の青葉由来精油成分を含むことにより、鎮静効果、例えば癒し効果をもたらす新規マイクロカプセル製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の情報化社会においては、日常生活でストレス、精神不安、不眠症などに悩む人が多いことは避けられない現実である。このため、ストレスの緩和、精神的安らぎなどを得るべく、人の意識水準を高めたり、鎮静させる効果を持つ香料の機能に期待が寄せられている。 このような香りがもつ機能は、古くから伝承的に関心をもたれてきたものであり、日本では香道といった香り文化の一種として馴染んできたものである。また日常生活においても、花そのものとして、又は精油として各種の飲み物や入浴剤に入れたり、或いは寝室に置いて安眠を誘うハーブとして利用されてきた。
【0003】
しかし、動植物、特に植物を主体とするこれら香り成分は、官能的に強弱があり、また人によっては、かえって嫌悪感を抱かせることがあることも知られている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、一部の昆虫類にも見出されているが、主としてクローバー、ブナ、栗、樫の木などの生葉、茶の葉、タラの芽、アカシアの新芽、或いはキュウリやトマトなどの野菜類に含まれ、通常植物の青葉由来香気成分として知られる精油成分が不快な感覚を伴わず又香料成分としては香りが弱いながら鎮静効果を示すとの新規知見にもとづき、その匂いを嗅ぐことによってストレス、精神的不安、不眠症などを和らげ、癒し効果をもたらす新規マイクロカプセル製剤を完成するに至ったものである。即ち、本発明によれば、
1)植物の青葉由来精油成分である(3Z)−ヘキセノール、(3Z)−ヘキセナール、(3E)-ヘキセノール、(3E)-ヘキセナール、(2E)-ヘキセノール、(2E)−ヘキセナール、n- ヘキサノール、n-ヘキサナールから選ばれる少なくとも一種の香気成分を含有することを特徴とする鎮静効果を与える香り成分含有マイクロカプセル製剤
2)植物の青葉由来精油成分が(3Z)-ヘキセノールおよび(2E)−ヘキセナールである上記1)のマイクロカプセル製剤
3)植物の青葉由来精油成分が(3Z)-ヘキセノールおよび(2E)−ヘキセナールの実質的に等量混合物である上記1)のマイクロカプセル製剤
が提供される。
【0005】
本発明における上記8種の青葉由来精油成分としては、植物の青葉からの抽出物および合成品のいずれも好適に使用することが出来る。またマイクロカプセル化に際しては、これら芯物質の主成分は、安定剤、希釈剤、賦形剤、着色剤などと配合して用いることができ、或いは、他の香料成分と配合して用いることもできる。当該青葉由来精油成分とともに配合して用いる香料成分としては、例えば、梅、ラベンダー、ローズマリー、カモミール、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、メロン、ヒノキを挙げることができる。
【0006】
これら青葉由来精油成分を芯物質とするマイクロカプセル製剤の製造に際し、膜成分としては、慣用のマイクロカプセル化基材、例えばゼラチン、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレア樹脂などを用いることができる。 また、その使用目的に応じて、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂、およびエチルセルロース、ポリメタクリレートなどの非水溶性樹脂なども用いることができる。
【0007】
また芯物質である当該精油成分のマイクロカプセル化は、感圧複写紙やノンカーボン紙用インクのマイクロカプセル化に利用される技術、或いは医薬品や食品のマイクロカプセル化に利用される技術を用いて、適宜、実施することができる。 例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーのいずれか一方を芯物質に添加し、液体分散媒中に分散して、分散粒子を得た上で、分散媒中に他の一方のモノマーを加えて攪拌し、界面上でポリマー壁を完成させる界面重合法によって好適に実施することができ、或いは水性・疎水性のいずれか一方のモノマーを芯物質側、分散媒側のいずれか一方に供給し、界面で両モノマーを反応させて重合体を析出させるin situ重合法によっても実施することができる。
【0008】
或いはまた、必要に応じて、コアセルベーシヨン・相分離法によってもマイクロカプセルを調製することができる。 この場合、マイクロカプセルは、例えば、(1)分散媒連続相、芯物質、壁膜物質溶液相の3相を設け、(2)芯物質の周囲に壁膜ポリマーの濃厚液滴を吸着させ、合一させて初期壁膜を作り、次いで(3)初期壁膜から脱溶媒を行って、硬膜化させることによって調製することができる。この後者の場合、ポリマー溶液から壁膜固相を形成させる手段としては、ポリマー溶液の温度を変える;無機塩を添加する;非溶媒を添加する;他の不親和性ポリマーを添加する;温度を変化させる;pHを変える;または反応電荷で相互作用する他のポリマー溶液を加える、などのコアセルベーシヨン・相分離現象をいずれも適宜利用することができる。より具体的には、相分離法によるゼラチン膜マイクロカプセルの調製は、例えば、ゼラチンを乳化分散した分散相に芯物質を滴状で分散させ、この乳化分散液を攪拌しながらカプセル膜を形成させ、次いで硬化剤などを加えてカプセル膜を安定させることによって行うことができる。
【0009】
鎮静効果の賦与を目的とした本発明のマイクロカプセルは、その粒径に制限はないが、通常数ミクロンから数十ミクロン、例えば、下限については3〜4ミクロン、上限については20〜30ミクロンの粒径のものとして調製するのが好ましい。また芯物質と膜成分との配合比も、通常、幅広い範囲で任意に設定することができるが、一般的には芯物質の配合比がマイクロカプセル全体の60〜95重量%、好ましくは75〜95重量%、より好ましくは80〜90重量%とするのが適切である。
【0010】
また本発明で用いる植物の青葉由来精油成分、即ち(3Z)−ヘキセノール、(3Z)−ヘキセナール、(3E)-ヘキセノール、(3E)-ヘキセナール、(2E)-ヘキセノール、(2E)−ヘキセナール、n- ヘキサノール、n-ヘキサナールは、この群から選ばれる任意の一成分を芯物質として使用しても良く、或いはこれらの群から選ばれる2成分以上を適宜組み合わせて用いることもできる。鎮静効果や癒しの効果を達成するうえでは、これら8成分の内、(3Z)−ヘキセノールと(2E)−ヘキセナールとの組み合わせを用いるのが好ましく、またこれら2成分は1:1の配合比(重量比)で用いるのがとりわけ好ましい。
【発明の効果】
【0011】
一般に、香料として用いられる天然精油には鎮静効果を示すもの、覚醒効果を示すもの、また人が嫌悪感を示すものなど、種々の成分が知られているが、本発明で用いる植物の青葉由来精油成分、即ち(3Z)−ヘキセノール、(3Z)−ヘキセナール、(3E)-ヘキセノール、(3E)-ヘキセナール、(2E)-ヘキセノール、(2E)−ヘキセナール、n- ヘキサノール及びn-ヘキサナールは、優れた鎮静効果又は体温上昇抑制効果を長時間にわたって示し、ストレスの緩和や癒しの効果を効果的に発揮する。とりわけ、その香気成分として(3Z)−ヘキセノールと(2E)−ヘキセナールとを1:1の比(重量比)で配合した組成物を用いる場合には、これら成分が香料として認識されない程度の低濃度、例えば溶液濃度としては0.03重量%程度の低い濃度、で優れた鎮静、体温上昇抑制効果を示すという特徴を有する。
【0012】
このため、このような香気成分を含有する本発明のマイクロカプセル製剤は、僅かな摩擦によって内容物或いは芯物質を放出させる目的で使用される各種マイクロカプセル製剤と同様、広範囲の用途に用いることができる。
【0013】
例えば、当該マイクロカプセル製剤をインク基材に混ぜて印刷することにより、印刷面を爪で擦ってカプセル成分を放出させる香料印刷物、具体的にはシール、カード、葉書、絵本、匂いの本、テレホンカード、パンフレットなど、として用いることができる。
【0014】
また本発明のマイクロカプセル製剤は、低濃度で長期間優れた癒し効果を示すため、布地の染色時などに布地をこのマイクロカプセル製剤含有溶液に浸して布地に当該製剤を付着させておけば、鎮静効果や癒しの効果を発揮する繊維製品として用いることができる。
【0015】
さらには、界面活性剤溶液に安定な状態で分散させることにより、各種液体化粧品、例えば、シャンプー、ローシヨン、リンス、コロン、入浴剤などとして用いることができる。 当然のこととして、本発明のマイクロカプセル製剤は、それ自体で、カプセル化乃至固形化された香料乃至香料成分として利用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施態様を具体的に説明する。但し、本発明の態様は、いかなる意味においても、この具体的実施態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
芯物質として(3Z)-ヘキセノールおよび(2E)-ヘキセナールを1:1に混合した3容量%液を200倍に希釈した溶液を用い、壁物質としてゼラチンを使用して、コアセルベーシヨン法によってマイクロカプセル化を行った。
【0018】
即ち、ゼラチンを乳化分散した分散相に上記芯物質を滴状で分散させ、この乳化分散液を攪拌しながらカプセル膜を形成させた。その工程は、温度を40〜50℃、時間を10〜30分、pH5.0付近で行った。次に、硬化剤を加えて膜を安定させて、マイクロカプセルを製造した。
【0019】
このマイクロカプセルの粒径は20〜30ミクロンであり、芯物質量は85〜90重量%、また壁物質であるゼラチンの量は10〜15重量%であった。
【0020】
このマイクロカプセルは、インキに混合して、カード、フィルムなどに印刷して仕上げることが出来る。またこのカードなどは、表面を擦ることによって、マイクロカプセルから芯物質を揮散させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の青葉由来精油成分である(3Z)−ヘキセノール、(3Z)−ヘキセナール、(3E)-ヘキセノール、(3E)-ヘキセナール、(2E)-ヘキセノール、(2E)−ヘキセナール、n- ヘキサノール、n-ヘキサナールから選ばれる少なくとも一種の香気成分を含有することを特徴とする鎮静効果を与える香り成分含有マイクロカプセル製剤。
【請求項2】
植物の青葉由来精油成分が(3Z)-ヘキセノールおよび(2E)−ヘキセナールである請求項1記載のマイクロカプセル製剤。
【請求項3】
植物の青葉由来精油成分が(3Z)-ヘキセノールおよび(2E)−ヘキセナールの実質的に等量混合物である請求項1記載のマイクロカプセル製剤。

【公開番号】特開2006−63168(P2006−63168A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246314(P2004−246314)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(596026936)株式会社ダイショウー (2)
【出願人】(504232446)
【Fターム(参考)】