説明

長尺極薄材料搬送装置

【課題】搬送される長尺帯状ワークの種類や形態に応じて、ワーク挟持力を適正に調整して搬送でき、制御性や安定性、コスト性に優れた長尺極薄材料搬送装置を提供する。
【解決手段】ワーク加工装置にワークとなる長尺極薄材料Wを供給する装置本体と、装置本体に配設され長尺極薄材料Wの表面側に当接して走行される駆動ベルト部12と、駆動ベルト部12のベルト面に対向して配置され長尺極薄材料Wの裏面側を保持する従動ベルト部13と、駆動ベルト部12及び従動ベルト部13の各ベルト内面側を圧縮エアにより押圧してベルト面間に挟持力を発生させるエア圧機構とを備えるように長尺極薄材料搬送装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置にワークとなる銀箔、銅箔などの金属箔や、樹脂フィルムなどの長尺状の極薄材料を搬送するための長尺極薄材料搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状の帯状材料をプレス加工装置などに順次供給するための搬送装置が知られている。例えば、特許文献1(特開2008−156021号公報)には、相対するローラによって長尺帯状体をその両面側から狭持してローラを駆動させることにより、長尺帯状体をその長手方向に順次送り出す搬送装置が記載されている。
また、特許文献2(特開2003−104528号公報)には、下側平ベルト、上側平ベルトとで単板を挟持して搬送するとともに、単板の搬送方向下流側を検出器で検出して上側平ベルトをその駆動プーリから離隔させることによりベルト張力を減少させて制止部材に単板を当接させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−156021号公報
【特許文献2】特開2003−104528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の搬送装置は、搬送される長尺帯状ワークの種類や形態によって、その強度や剛性などの機械的特性が変動するが、これらの変化に対応してロールやベルトによるワーク挟持力の適正な調整が困難である。このため安定的な搬送ができずワーク破損などによる歩留まり低下の要因となることがあった。
すなわち、ロール間でワークを挟持するようにした搬送装置では、ワークに対するロール接触面積が小さくなるため、強度の弱い長尺状の極薄材料に適用すると、極薄材料を切断や損傷させたり、変形させたりするという問題点があった。
【0005】
また、ワーク加工装置としてプレス加工装置に適用した場合において、加工装置と搬送装置との距離が長くなると、駆動側ローラと従動側ローラとで長尺極薄材料を確実に狭持しつつ加工装置に供給することが困難になり、このため、搬送装置における駆動側ローラと従動側ローラとの狭持力を高めるよう制御することが考えられる。
しかし、この場合は長尺極薄材料の損傷や変形を防止する厳密な制御が必要とされ、構成が複雑化し且つ高精度が要求されることから製造コストが嵩んでしまうという問題もあった。
【0006】
特に特許文献1の長尺帯状体の搬送装置では、長尺帯状体が直線的に搬送されるようにローラの向きや傾斜を調節するのであるが、多種類の製品毎に、その幅寸法や厚さが異なる種々のワークを試験的に搬送して、ローラの調整作業を繰り返すことになるため、作業効率が悪いという問題があった。
【0007】
また、ベルト機構を用いる特許文献2の技術では、駆動プーリとローラ間を機械的に調整してワークへの挟持力を制御するので、剛性や強度に乏しい長尺極薄材料に適用した場合、長尺極薄材料への負荷が大きくなって搬送中にワークが破損する割合が大きくなるという課題があった。
【0008】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、搬送する長尺極薄材料(ワーク)の種類や形態に応じて、ワーク挟持力を適正に調整して搬送できる制御性や安定性と、簡単な装置構成によるコスト性や作業性に優れた長尺極薄材料搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の長尺極薄材料搬送装置は、ワーク加工装置にワークとなる長尺極薄材料を供給する装置本体と、前記装置本体に配設され前記長尺極薄材料の表面側に当接して走行される駆動ベルト部と、前記駆動ベルト部に対向して配置され前記長尺極薄材料の裏面側を保持する従動ベルト部と、前記駆動ベルト部及び前記従動ベルト部の各ベルト内面側を圧縮エアにより押圧してベルト面間に挟持力を発生させるエア圧機構とを備えたことを特徴とする。
【0010】
(2)本発明の長尺極薄材料搬送装置は、前記(1)において、前記エア圧機構が、前記駆動ベルト部及び前記従動ベルト部の各基端ロール間を走行するベルト内面に対向して固定配置されたガイドプレートと、前記ガイドプレートに設けられ走行するベルト内面に向けて圧縮エアを噴出させる圧縮エア噴出部とを備えるように構成されている。
【0011】
(3)本発明の長尺極薄材料搬送装置は、前記(2)において、前記エア圧機構には、前記装置本体の出口側に設けられベルト走行状態を検知するセンサと、前記センサからの検知信号に基づいて前記ガイドプレートに設けられた圧縮エア噴出部の区分された噴射エリアにそれぞれ独立に所定圧力の圧縮エアを噴出させるベルト面圧制御部とが設けられている。
【0012】
(4)本発明の長尺極薄材料搬送装置は、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記駆動ベルト部に設けられたベルト支持用ローラ間の長さLaが前記従動ベルト部に設けられたベルト支持用ローラ間の長さLbより小さくなるように構成されている。
【0013】
(5)本発明の長尺極薄材料搬送装置は、前記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記従動ベルト部が上昇して前記駆動ベルト部との間で長尺極薄材料狭圧するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の長尺極薄材料搬送装置は、装置本体に配設され長尺極薄材料の表面側に当接して走行される駆動ベルト部と、前記長尺極薄材料の裏面側を保持する従動ベルト部との各ベルト内面側を圧縮エアにより押圧してベルト面間に挟持力を発生させるエア圧機構とを備えるので、搬送される長尺帯状ワークの種類や形態に応じて、ワーク挟持力を適正かつ柔軟に調整でき、ワークを破損することなしに長尺極薄材料を搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例の長尺極薄材料搬送装置を説明する斜視図である。
【図2】実施例の長尺極薄材料搬送装置の断面図である。
【図3】ワーク加工装置に実施例の長尺極薄材料搬送装置を配置した説明図である。
【図4】実施例の長尺極薄材料搬送装置における従動ベルト部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る長尺極薄材料搬送装置は、プレス加工装置などのワーク加工装置に金属箔や樹脂フィルムなどの長尺極薄材料を供給する装置本体と、前記装置本体に配設され前記長尺極薄材料の表面側に当接して走行される駆動ベルト部と、前記駆動ベルト部に対向して配置され前記長尺極薄材料の裏面側を保持する従動ベルト部と、前記駆動ベルト部及び前記従動ベルト部の各ベルト内面側を圧縮エアにより押圧してベルト面間に挟持力を発生させるエア圧機構とを備えて構成される。
これによって、駆動ベルト部と従動ベルト部のベルト間に挟持された長尺極薄材料への挟持力を、エア圧機構を用いて適正かつ柔軟に調整でき、ワークに損傷を与えることなく安定的に保持しながらワーク加工装置へ効率的に搬送することができる。すなわち、駆動ベルト部と従動ベルト部により挟持された長尺極薄材料を、駆動ベルト部に設けたベルト駆動用ローラを駆動させて搬送するとともに、圧縮エアにより駆動ベルト及び従動ベルト間の挟持力を調整させる構造とすることによって、長尺極薄材料を広い範囲にわたって均一かつ柔軟に狭持して搬送することを可能としている。
このように、搬送される長尺帯状ワークの種類や形態に応じて、ワーク挟持力を適正かつ柔軟に調整して、ワーク破損のない安定性と、簡単な装置構成によるコスト性、に優れた長尺極薄材料搬送装置とすることができる。
【0017】
長尺極薄材料は、銅箔、銀箔、アルミ箔などの金属薄肉材料や、ポリエステルなどの樹脂フィルムなどが該当し、例えば、その厚みが約0.05〜1mm、幅が約100〜300mmのものが該当する。このような長尺極薄材料は、プレス打ち抜き加工などのワーク加工装置に、本実施形態の長尺極薄材料搬送装置を介して供給され、ワーク加工装置において所定の加工処理が行われる。
【0018】
長尺極薄材料搬送装置は、駆動ベルト部と従動ベルト部と各ベルト間で長尺極薄材料を挟持しながら搬送するベルト搬送型装置であって、ワーク加工装置に近接して配置される。長尺極薄材料搬送装置はプレス加工の動きに連動させたり、ワーク搬送位置を検出するセンサなどを介してその搬送速度や動作状態を制御することも可能としている。
【0019】
駆動ベルト部は、基端側にそれぞれ配置したローラ間に無端状ベルトが渡設されており、ベルトを走行させるための駆動用となるローラの回転を制御することによって、ワーク加工装置に向けて搬送されるワークの搬送速度が設定される。
なお、両端ローラ間には駆動用となるローラや、複数の中間ローラなどを必要に応じて配置することもできる。
従動ベルト部は、駆動ベルト部のベルト面に対向して配置され、走行自在の無端状ベルトが両端の自由回転するローラ間に渡設されており、ワーク下面をそのベルト面で支持するとともに、その他のベルト面が駆動ベルト部のベルト面と当接して摩擦抵抗により従動するようになっている。
【0020】
エア圧機構は、長尺極薄材料を挟持する駆動ベルト部と従動ベルト部における各ベルト間で長尺極薄材料に狭持力を発生させるための装置であって、各ベルトの内側からベルト表面側に圧縮エアを噴出するようにされており、この噴出する圧縮エアにより各ベルトの内面側から圧縮エアを加えることによって、ベルト面の広い範囲にわたって均一に長尺極薄材料を狭持することができる。
このエア圧機構としては、例えば、駆動ベルト部及び従動ベルト部の各ベルト内面側に当接するように配置された略平面状のガイドプレート、このガイドプレートのベルト当接面に溝状や多孔状に穿設された圧縮エア噴出部、圧縮エア噴出部に所定量の圧縮エアを供給するエアポンプ、エアポンプの制御装置などによって構成することができる。
【0021】
本実施形態の長尺極薄材料搬送装置は、前記エア圧機構が、前記駆動ベルト部及び前記従動ベルト部の各基端ロール間を走行するベルト内面に対向して固定配置されたガイドプレートと、前記ガイドプレートの面上に穿設され走行するベルト内面に向けて圧縮エアを噴出させる圧縮エア噴出部とを備えるように構成されている。これによって、ガイドプレートから噴出される圧縮エアによりベルト内面側から圧力を加えることでベルト面の広い範囲にわたって挟持力を均一に保持させることができる。
このように、長尺極薄材料に過度の負荷を掛けることなく狭持して搬送することが可能になる。
【0022】
ガイドプレートは、駆動ベルト部と従動ベルト部のベルト内面側に固定配置され、ガイドプレートのベルト当接面側には、長手方向がベルト走行方向と一致する、幅約0.1〜0.2mmの溝や孔を多数設けてあり、それらの溝や孔からエアポンプなどを介して所定圧力の圧縮エアを噴出するようになっている。
【0023】
本実施形態に係る長尺極薄材料搬送装置は、前記エア圧機構には、前記装置本体の出口側に設けられベルト走行状態を検知するセンサと、前記センサからの検知信号に基づいて前記ガイドプレートに設けられた圧縮エア噴出部のベルト両側端側及びベルト中央側とにそれぞれ独立に所定圧力の圧縮エアを噴出させるベルト面圧制御部とを設けることもできる。これによって、駆動ベルト部と従動ベルト部により挟持された長尺極薄材料の送り方向をガイドプレートの各部位から噴出される圧縮エアを制御することにより補正して、長尺極薄材料の蛇行を防止して一定の方向に安定して搬送することができる。
【0024】
一般に長尺材料を搬送する際、材料の位置がずれ進行方向が安定しないため、それらを制御する機構が必要で、従来はガイドによってその進行方向を拘束するなどの方法がとられてきたが、本実施形態の場合、ワーク自体が薄肉材料であるため、ガイドなどを用いた進行方向の調整方法をとると材料が破損する恐れがあった。
これに対し、本実施形態では圧縮エアを噴出するガイドプレートを、ベルトの進行方向に対し、左、右及び中央に分割して配置した。これにより、左、右、中央に分割配置したガイドプレートから噴出する圧縮エアの圧力を同等にし、均等な狭持力によって安定してワークを搬送することができる。
【0025】
さらに、走行する長尺極薄材料の進行位置をセンサによって把握し、長尺極薄材料が進行方向の左右どちらかにずれたことを検知した揚合は、左右のガイドプレートから噴出する圧縮エアのバランスを調整して、ベルトの左右の狭持力を変化させることによりワークの進行方向を変化させ、所定の進行方向に修正することができる。
【0026】
本実施形態の長尺極薄材料搬送装置は、駆動ベルト部に設けられたベルト支持用ローラ間の長さLaが従動ベルト部に設けられたベルト支持用ローラ間の長さLbより小さくなるように構成し、従動ベルト部に設けられたベルト支持用ローラ間に駆動ベルト部に設けられた両ベルト支持用ローラを配置することもできる。これによって、対向配置される駆動ベルト部と従動ベルト部の各両端側のローラが互いに接触して当接することがないため、ローラ間の過度の噛み込みや加圧負荷による長尺極薄材料の損傷や変形、歪の発生を最小限度に抑制することができ、搬送工程におけるワークの歩留まりを向上させることができる。
【0027】
本実施形態の長尺極薄材料搬送装置においては、従動ベルト部に設けられたベルト支持用ローラを、ローラ上下駆動装置によって上下動させることもできる。これによって、対向配置される駆動ベルト部に向かって従動ベルト部を上昇又は下降させることができ、また、長尺極薄材料の搬送開始前において、従動ベルト部を下降させた状態で、駆動ベルト部及び従動ベルト部間に長尺極薄材料の搬入を容易に行うことができ、搬送開始時において、従動ベルト部を上昇させた状態で、駆動ベルト部及び従動ベルト部間で長尺極薄材料を狭持して搬送することができる。
なお、従動ベルト部を昇降させる代わりに、ローラ上下駆動装置を駆動ベルト部に取り付けることによって駆動ベルト部を昇降させることもできる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながらさらに具体的に説明する。本発明はこれら具体的構成のもの限定されるものではない。
図1〜図4に示すように、本実施例に係る長尺極薄材料搬送装置10を、ワーク加工装置Dの搬入側及び搬出側に、ワーク幅が約200mmで、厚みが、0.05mmの銅箔(帯状ワークW)を搬送するように配置した。
長尺極薄材料搬送装置10は、帯状ワークWを供給する装置本体11と、帯状ワークWの表面側に当接してそのベルト12aが走行される駆動ベルト部12と、そのベルト12aのベルト面に対向して配置され帯状ワークWの裏面側をベルト13aで保持する従動ベルト部13と、駆動ベルト12部及び従動ベルト部13の各ベルト内面側を圧縮エアにより押圧してベルト12a、13aの面間に挟持力を発生させるための圧縮エア圧機構と、を有している。
【0029】
長尺極薄材料搬送装置10における駆動ベルト部12は、帯状ワークWの上面側に当接されるゴム材などからなるベルト12aと、この無端状ベルトを走行させるための駆動用ローラ12b、ベルト支持用ローラ12c、12c間で走行するベルト面を支持するとともに、図示しないモータ駆動部、ベルト面に向けて圧縮エアを噴射するガイドプレート12dなどを備えた圧縮エア圧機構により構成されている。
【0030】
駆動ベルト部12の駆動用ローラ12bは、その駆動手段となる図示しない電動モータなどに連結されて回転駆動し得るものであり、ベルト12aを介して帯状ワークWを搬送している。
このようにして、電動モータの回転力が他方のベルト支持用ローラ12c、12cに伝達され、一対のベルト支持用ローラが共に回転し得るようになっている。
かかる従動ベルト部13のベルト13aの上面は、駆動ベルト部12のベルト12aの下面より下方に、ローラ上下駆動装置13eによって上下動自在に配置されている。
【0031】
ベルト駆動手段となる電動モータは、ワーク加工装置Dと連結された連動部の動作タイミングに応じて駆動用ローラ12bを一方向に回転駆動させるもので、ワンウェイクラッチ(図示しない)を有してなる。
【0032】
従動ベルト部13は駆動ベルト部12のベルト面に対向してその下方に配置されるユニットであり、帯状ワークWの下面側に当接されるベルト13aと、無端状に形成されたベルト13aの両端側でベルトを支持する左右のベルト支持用ローラ13b、13cと、このベルト13aに向けてベルト内側から圧縮エアを噴射するためのガイドプレート13dなどで構成されている。
【0033】
従動ベルト部13は、帯状ワークWの搬送方向に形成された自由走行可能なベルトユニットからなるものであり、駆動ベルト部12のベルト12aと従動ベルト部13のベルト13aとの間で帯状ワークWを狭持しつつ走行させることにより、帯状ワークWをその長手方向に順次搬送し、ワーク加工装置D内に供給し得るよう構成されている。
【0034】
駆動ベルト部12は、駆動用ローラ12bと、ベルト支持用ローラ12c、12c及びこれらローラ間に渡設されるベルト12aとで構成され、図示しない電動モータを介して駆動用ローラ12bに回転力が付与されている。
また、この電動モータはコンピュータやICチップなどからなる図示しないベルト面圧制御部によりその駆動状態を制御することもできる。
このベルト面圧制御部には圧力センサ14及び、ガイドプレート12d、13dなどからなるエア圧機構に接続することができ、ベルト幅方向に配列された複数の圧力センサ14からの検知信号に基づいてガイドプレート12d、13dにおける圧縮エア噴出部の各噴射エリアX〜Zからそれぞれ所定エア圧の圧縮エアを噴射することができる。
このように、ガイドプレートから噴出される圧縮エアによりベルト内面側から圧力を加えることで、ベルト面の広い範囲にわたって挟持力を均一に保持させることで帯状ワークWに損傷を与えることなく安定的に搬送することが可能となる。
【0035】
なお、駆動ベルト部12における左右一対のベルト支持用ローラ12c、12c間の長さLaは、従動ベルト部12のベルト支持用ローラ13b、13c間の長さLbより小さく設定されている。
これによって、上下のベルト支持用ローラ同士が直接接触することがなく、ベルト搬送される帯状ワークWに過剰な挟持力が付加されることによる箔材の損傷を回避することができる。
このようにして、駆動ベルト部12のベルト面を帯状ワークWの上面と当接させつつ、一方、ローラ上下駆動装置13eによって従動ベルト部13を上昇させて、従動ベルト部13側のベルト面を帯状ワークWの下面と当接させ、上下方向から帯状ワークWを狭持した状態で駆動ベルト部12の駆動用ローラ12bを回転駆動させることにより帯状ワークWを順次送り出し可能としているのである。
【0036】
また、長尺極薄材料搬送装置10からワーク加工装置Dへ帯状ワークWを受け渡す際、搬送される帯状ワークWがベルト面に過度に密着して帯状ワークWの離脱に支障を生じることがある。
このため、この無端状のベルト12aとベルト13aの各面に直径約1mm程度の小径の貫通孔を多数設け、貫通孔を通して圧縮エアを噴射することで搬送終了時にベルト面から帯状ワークWの離脱を容易にすることができる。なお、貫通孔は、圧縮エアがベルトを通過する形態のものであれば楕円状など、他の形状のものであってもよい。
【0037】
エア圧機構は、溝状又は多孔状に形成された圧縮エア噴出部をそのプレート面に備えたガイドプレート12d、13dと、この圧縮エア噴出部に所定圧力の圧縮エアを供給するための図示しないエア圧ユニット、このエア圧ユニットを制御するための制御部などにより構成される。こうして、ガイドプレート12d、13dの圧縮エア噴出部からベルト12a、13aの当接面に向けて所定圧力の圧縮エアを噴射することによって、このベルト面間に所定の挟持力、摩擦力を付加することを可能にしている。
【0038】
長尺極薄材料搬送装置10の使用例としては、図3に示すように、帯状ワークWが搬送されるワーク加工装置Dの搬入側及び搬出側に配置して、帯状ワークWのワーク加工装置Dへの搬入処理や加工後の搬出処理を行い、その後、巻き取り装置で加工が終了した帯状ワークWを、図示しない巻き取り装置で巻き取るようにする。
なお、長尺極薄材料搬送装置10の駆動ベルト部12の駆動を、ワーク加工装置Dの加工(プレス打ち抜き加工など)タイミングに合わせて、例えば間欠的に帯状ワークWの搬入及び搬出をさせるようにすることもできる。
【0039】
図4に示すように、ガイドプレート13dのプレート面に溝状又は多孔状に穿設された圧縮エア噴出部は、本実施形態では、ベルト13aの中央側の噴射エリアXとその両側端側の噴射エリアY、Zとにベルト幅方向に3区分に分割され、それぞれの噴射エリアから所定量の圧縮エアが噴出できるように設定されている。また、ベル13aの下流側にはベルト内面に向けて規定量の圧縮エアを噴射するノズルが設けられ、装置本体11に固定されたノズルに付加される反力をセンサ信号として取得することのできる圧力センサ14がベルト幅方向に複数設けられている。この圧力センサ14からの検知信号に基づいてガイドプレート13dに設けられた圧縮エア噴出部の噴射エリアX〜Z毎に所定圧力の圧縮エアを噴出させることでベルト走行状態を適正に制御するようにしている。
なお、ここでは従動ベルト部13のガイドプレート13d周辺の構成を説明したが、駆動ベルト部12についてもその構成部分の上下が反転した状態で略同様に配置されている。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の長尺極薄材料搬送装置は、長尺極薄材料の表面側に当接して走行される駆動ベルト部と、その裏面側を保持する従動ベルト部のベルト面間に圧縮エアによる挟持力を発生させることを要旨としたものである。
したがって、搬送される長尺帯状ワークの種類や形態に応じてワーク挟持力を柔軟に調整でき、銀箔や銅箔などの金属材や、プラスチック材などを加工する加工装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 実施例の長尺極薄材料搬送装置
11 装置本体
12 駆動ベルト部
12a ベルト
12b 駆動用ローラ
12c ベルト支持用ローラ
12d ガイドプレート
13 従動ベルト部
13a ベルト
13b ベルト支持用ローラ
13c ベルト支持用ローラ
13d ガイドプレート
13e ローラ上下駆動装置
14 圧力センサ
X〜Z ガイドプレート面の噴射エリア(圧縮エア噴出部)
W 帯状ワーク
D ワーク加工用装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク加工装置にワークとなる長尺極薄材料を供給する装置本体と、前記装置本体に配設され前記長尺極薄材料の表面側に当接して走行される駆動ベルト部と、前記駆動ベルト部のベルト面に対向して配置され前記長尺極薄材料の裏面側を保持する従動ベルト部と、前記駆動ベルト部及び前記従動ベルト部の各ベルト内面側を圧縮エアにより押圧してベルト面間に挟持力を発生させるエア圧機構とを備えたことを特徴とする長尺極薄材料搬送装置。
【請求項2】
前記エア圧機構が、前記駆動ベルト部及び前記従動ベルト部の各基端ロール間を走行するベルト内面に対向して固定配置されたガイドプレートと、前記ガイドプレートに設けられ走行するベルト内面に向けて圧縮エアを噴出させる圧縮エア噴出部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の長尺極薄材料搬送装置。
【請求項3】
前記エア圧機構には、前記装置本体の出口側に設けられベルト走行状態を検知するセンサと、前記センサからの検知信号に基づいて前記ガイドプレートに設けられた圧縮エア噴出部の区分された噴射エリアにそれぞれ独立に所定圧力の圧縮エアを噴出させるベルト面圧制御部とが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の長尺極薄材料搬送装置。
【請求項4】
前記駆動ベルト部に設けられたベルト支持用ローラ間の長さLaが前記従動ベルト部に設けられたベルト支持用ローラ間の長さLbより小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の長尺極薄材料搬送装置。
【請求項5】
前記従動ベルト部が上昇して前記駆動ベルト部との間で長尺極薄材料狭圧するように構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の長尺薄材料搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−82048(P2012−82048A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229240(P2010−229240)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(309031570)株式会社南部製作所 (4)
【Fターム(参考)】