長期記憶を増強するための、PKC賦活薬の単独またはPKC阻害剤と組み合わせての使用
本発明は、長期記憶を固定または増強するのに十分なタンパク質の合成を刺激するために十分な様式で、プロテインキナーゼC(PKC)をPKC活性化因子と接触させる方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本願は、2005年7月29日に出願された米国特許仮出願番号60/703,501および2005年10月21日に出願された米国特許仮出願番号60/728,753について優先権を主張する。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、記憶の増強に対して有用であるプロテインキナーゼCを上方制御および下方制御する方法および細胞増殖性の疾患の治療に関する。
【発明の背景】
【0003】
認知に影響を及ぼす種々の障害および疾患が存在する。認知は、一般的に、少なくとも3つの異なる要素:注意、学習、および記憶を含むと述べられている。これらの各要素およびそれぞれのレベルは、患者の認知能力の全体的なレベルに影響を与える。例えば、アルツハイマー病の患者は、認知の全体的な喪失およびこれら特性のそれぞれの低下に苦しむが、前記疾患に最もよく付随するのは記憶の喪失である。他の疾患において、患者は、認知の異なる特性により優位に付随する認知障害に苦しむ。例えば、注意欠陥過活動障害(ADHD)は、注意の状態を維持する個人的な能力に焦点を合わせる。他の状態には、他の神経学的な疾患、老化、ならびに癌治療、脳卒中/虚血、および精神遅滞のような精神的な能力に有害な影響を引き起こし得る状態の治療に付随する一般的な痴呆が含まれる。
【0004】
長期記憶に対するタンパク質合成の必要性については、数十年間に渡って種々の記憶のパラダイムが示されてきた。Agranoff et al. (1967) Science 158: 1600-1601; Bergold et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87:3788-3791; Cavallaro et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. 99: 13279-16284; Crow et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87: 4490-4494; Crow et al. (1999) J. Neurophysiol. 82: 495-500; Epstein et al. (2003) Neurobiol. Learn. Mem. 79: 127-131; Ezzeddine et al. (2003) J. Neurosci. 23: 9585-9594; Farley et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. 88: 2016-2020; Flexner et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 55: 369-374; Hyden et al. (1970) Proc. Natl. Acad. Sci. 65: 898-904; Nelson et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87: 269-273; Quattrone et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. 98: 11668-11673; Zhao et al. (1999) J. Biol. Chem. 274: 34893-34902; Zhao et al. (2000) FASEB J. 14: 290-300。Flexnerは、トレーニングパラダイムに従った重要な時間間隔の間にタンパク質合成の薬剤誘発性の阻害が起こった場合(例えば、5-プロピルウラシルまたはアニソマイシン)、この阻害が長期記憶を遮断することを初めに示した。Flexner et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 55: 369-374。この重要な時間窓の前
またはこの窓の後の任意の時間にタンパク質合成が阻害された場合は、長期記憶における影響はない。記憶固定に不可欠なタンパク質の同一性、その調節のメカニズム、および長期記憶の固定におけるその役割は、謎のままである。
【0005】
多くの種において、長期連合記憶の形成は、プロテインキナーゼC(PKC)アイソザイムの神経細胞膜への転位およびそれによる活性化に依存することが示されている。カルシウムとジアシルグリセロールのようなコファクターの組み合わせにより活性化された場合、最初に、前記PKCアイソザイムは外部神経膜および小胞体のような内部オルガネラの膜の内側側面との安定な会合を達成する。PKC活性化は、軟体動物ウミウシの単一同定(single identified)B細胞において起こることが示されており(McPhie et al. (1993) J. Neurochem. 60: 646-651)、パブロフの条件付けに基づく種々の哺乳動物連合性の連合学習プロトコルには、ウサギ瞬膜条件付け(Bank et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 1988-1992; Olds et al. (1989) Science 245: 866-869)、ラット空間迷路学習(Olds et al. (1990) J. Neurosci. 10: 3707-3713)、およびラット嗅覚識別学習が含まれる。さらに、単一同定B細胞において、パブロフの条件づけに依存した様式で、カレクシチン(calexcitin)(Nelson et al. (1990) Science 247: 1479-1483)、すなわちPKCのαアイソザイムの高親和性の基質の量およびリン酸化が増加した(Kuzirian et al. (2001) J. Neurocytol. 30: 993-1008)。
【0006】
個々のPKCアイソザイムが異なる、時には逆の役割を生物学的過程において果たすという証拠が増加しており、薬理学的利用に対する2つの方向付けを提供する。1つは、PKCの特異的な(好ましくは、アイソザイム特異的な)阻害剤の設計である。このアプローチは、触媒的なドメインが主にPKCのアイソタイプ特異性の原因でないという事実により、複雑になる。他方のアプローチは、アイソザイム選択性の、調節性の部位特異的なPKC活性化因子を開発することである。これらは、逆の生物学的効果を有する他のシグナル伝達経路の効果を無効にする方法を提供し得る。あるいは、急性の活性化の後にPKCの下方制御を引き起こすことにより、PKC活性化因子は長期の拮抗作用を引き起こし得る。
【0007】
連合記憶プロトコルによると、特定の脳の領域におけるPKCと膜画分との会合の増大は何日も持続し得る(Olds et al. (1989) Science 245: 866-869)。これらの知見と一致して、潜在的なPKC活性化因子であるブリオスタチンの投与は、ラットの空間迷路学習を増強した(Sun et al. (2005) Eur. J. Pharmacol. 512: 45-51)。さらに、PKC活性化因子であるブリオスタチンを用いた臨床試験は、PKC活性化効果が薬物送達の間欠性のスケジュールにより増強され得ることを示した(Marshall et al. (2002) Cancer Biology & Therapy 1: 409-416)。PKC活性化因子の1つであるブリオスタチン、マクロライドラクトンは、nM以下の濃度でPKCを活性化する(Talk et al. (1999) Neurobiol. Learn. Mem. 72: 95-117)。ホルボールエステルおよび内因性の活性化因子DAGのように、ブリオスタチンはPKC内のClドメインに結合し、膜への転位を引き起こし、その後下方制御を引き起こす。
【0008】
非腫瘍形成性のPKC活性化因子であるブリオスタチンは、最初のPKC活性化を引き起こし、その後長期に下方制御することが既知の用量で(25μg/m2-120μg/m2)、癌の治療のために、ヒトにおいて大規模に試験された(Prevostel et al. (2000) Journal of Cell Science 113: 2575-2584; Lu et al. (1998) Mol. Biol. Cell 18: 839-845; Leontieva et al. (2004) J. Biol. Chem. 279:5788-5801)。PKCのブリオスタチン活性化は、最近、アミロイド前駆タンパク質(APP)を切断し、非毒性断片可溶性前駆タンパク質(sAPP)をヒト繊維芽細胞から産生するα-セクレターゼを活性化することが示されている(Etcheberrigaray et al. (2004) Proc. Natl. Acad. Sci. 101: 11141-11146)。ブリオスタチンは、ラット空間迷路課題(Sun et al. (2005) Eur. J. Pharmacol. 512: 45-51)、ウサギ瞬膜パラダイム(Schreurs and Alkon, unpublished)、および前に報告したウミウシ条件付け(Scioletti et al. (2004) Biol. Bull. 207: 159)の学習および記憶保持も増強する。従って、PKCの最適な活性化は、正常および罹患した状態における認知に影響を与える多くの分子メカニズムにとって重要である。
【0009】
PKCの上方制御は下方制御なしで達成することは難しく、逆もまた同じであるため、下方制御を最小にしながら上方制御する方法は、PKC活性化に付随して観察される認知の利点を増強する必要がある。本発明の方法および組成物は、これらの必要性を満たし、アルツハイマー病および他の神経変性疾患に対する臨床的な治療を大いに改善し、ならびに改善した認知の増強を予防的に提供する。前記方法および組成物は、α-セクレターゼの修飾を通して、認知の状態の治療および/または増強も提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、長期記憶を固定するのに十分なタンパク質の合成を刺激するために十分な様式で、PKC活性化因子をプロテインキナーゼCと接触させる方法に関する。
【0011】
1つの実施形態において、前記PKC活性化因子は大環状ラクトンである。1つの実施形態において、前記PKC活性化因子はベンゾラクタムである。1つの実施形態において、前記PKC活性化因子はピロリジノンである。好ましい実施形態において、前記大環状ラクトンはブリオスタチンである。さらに好ましい実施形態において、前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、または-18である。最も好ましい実施形態において、前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1である。
【0012】
1つの実施形態において、前記大環状ラクトンはネリスタチンである。好ましい実施形態において、前記ネリスタチンはネリスタチン-1である。
【0013】
1つの実施形態において、前記接触はPKCを活性化する。1つの実施形態において、前記接触はPKCの量を増大する。1つの実施形態において、前記接触はPKCの合成を増大させる。1つの実施形態において、前記接触はカレクシチンの量を増大する。1つの実施形態において、前記接触は結果としてPKCの引き続く調節解除を実質的に生じない。
【0014】
1つの実施形態において、前記接触は繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は規則的な間隔で繰り返される。もう1つの実施形態において、前記間隔は、1週間〜1ヶ月、1日〜1週間、または1時間未満〜24時間である。もう1つの実施形態において、前記間隔は1週間〜1ヶ月である。もう1つの実施形態において、前記間隔は1日〜1週間である。もう1つの実施形態において、前記間隔は1時間未満〜24時間である。
【0015】
1つの実施形態において、前記接触は固定された期間維持される。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は24時間未満である。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は12時間未満である。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は6時間未満である。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は4時間未満である。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は2時間未満である。好ましい実施形態において、前記固定された期間は約1〜12時間である。さらに好ましい実施形態において、前記固定された期間は約2〜6時間である。最も好ましい実施形態において、前記固定された期間は約4時間である。
【0016】
1つの実施形態において、前記接触は1日より長い期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1日〜1ヶ月の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1日〜1週間の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1週間〜1ヶ月の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1ヶ月〜6ヶ月の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1ヶ月の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1ヶ月より長い期間繰り返される。
【0017】
本発明は、PKCを下方制御するのに十分な様式で、PKC活性化因子をプロテインキナーゼCと接触させる方法に関する。
【0018】
1つの実施形態において、前記PKC活性化因子は大環状ラクトンである。1つの実施形態において、前記PKC活性化因子はベンゾラクタムである。1つの実施形態において、前記PKC活性化因子はピロリジノンである。好ましい実施形態において、前記大環状ラクトンはブリオスタチンである。より好ましい実施形態において、前記ブリオスタチンは、ブリオスタチン-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、または-18である。最も好ましい実施形態において、前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1である。
【0019】
1つの実施形態において、前記大環状ラクトンはネリスタチンである。好ましい実施形態において、前記ネリスタチンはネリスタチン-1である。
【0020】
1つの実施形態において、前記接触はPKCの合成を刺激しない。もう1つの実施形態において、前記接触はPKCの合成を実質的に刺激しない。もう1つの実施形態において、前記接触はPKCの量を減少させる。もう1つの実施形態において、前記接触はPKCの量を実質的に減少させる。もう1つの実施形態において、前記接触はカレクシチンの合成を刺激しない。
【0021】
1つの実施形態において、前記接触は持続した期間行われる。1つの実施形態において、前記持続した期間は1時間未満〜24時間である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1日〜1週間である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1週間〜1ヶ月である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1時間未満〜12時間である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1時間未満〜8時間である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1時間未満〜4時間である。好ましい実施形態において、前記持続した期間は約4時間である。
【0022】
1つの実施形態において、前記接触によりPKCの持続した下方制御を生じる。
【0023】
本発明は、長期記憶を固定するのに十分なタンパク質の合成を刺激するのに十分な様式で、PKC活性化因子をプロテインキナーゼCと接触させる方法であって、さらにPKCの分解を阻害する工程を含んでなる方法に関する。
【0024】
1つの実施形態において、前記分解はユビキチン結合を介する。もう1つの実施形態において、前記分解はラクタシステインにより阻害される。もう1つの実施形態において、PKCはヒトのものである。
【0025】
本発明は、長期記憶を固定するのに十分なタンパク質の合成を刺激するのに十分な様式で、PKC活性化因子をプロテインキナーゼCと接触させる方法に関し、前記PKC活性化因子は、PKC活性化因子および薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物の形態で提供される。
【0026】
1つの実施形態において、前記医薬組成物はさらにPKC阻害剤を含んでなる。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、末梢組織においてPKCを阻害する化合物である。ここで使用される場合、「末梢組織」は脳以外の組織を意味する。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、末梢組織においてPKCを優先的に阻害する化合物である。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、PKC活性化因子を必要とする患者への投与に伴う筋肉痛を減少させる化合物である。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、PKC活性化因子を用いて治療される患者において生じる筋肉痛を減少させる化合物である。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、PKC活性化因子の耐容量を増大させる化合物である。特に、PKC阻害剤には、例えば、限定するものではないが、ビタミンE、ビタミンE類似体、およびそれらの塩; カルフォスチンC; チアゾリジンジオン; ルボキシスタウリン(ruboxistaurin)、およびそれらの組み合わせが含まれる。ここで使用される場合、「ビタミンE」は、α-トコフェロール(5, 7, 8-トリメチルトコール); β-トコフェロール(5, 8-ジメチルトコール); δ-トコフェロール(8-メチルトコール(methyltocal)); およびγ-トコフェロール(7,8-ジメチルトコール)、ならびにそれらの塩および類似体を意味する。
【発明の詳細な説明】
【0027】
1.定義
ここで使用される場合、「上方制御する」または「上方制御」は、限定するものではないが、増大した転写、翻訳、および/または転写産物もしくはタンパク質産物の増大した安定性を含むいずれかのメカニズムを通して、PKCタンパク質または転写物のような薬剤の量または活性をベースラインの状態と比較して増大させることを意味する。
【0028】
ここで使用される場合、「下方制御する」または「下方制御」は、限定するものではないが、減少した転写、翻訳、および/または転写産物もしくはタンパク質産物の減少した安定性を含むいずれかのメカニズムを通して、PKCタンパク質または転写物のような薬剤の量または活性をベースラインの状態と比較して減少させることを意味する。
【0029】
ここで使用される場合、「薬学的に許容可能なキャリア」という用語は、化学的組成物、化合物、または活性成分が混合されてよい溶媒を意味し、混合後に患者に活性成分を投与するために使用されてよい。ここで使用される場合、「薬学的に許容可能なキャリア」には、限定するものではないが、以下に示す1以上が含まれる:賦形剤; 界面活性剤; 分散剤; 不活性な希釈剤; 顆粒化剤および崩壊剤; 結合剤; 滑沢剤; 保存剤; ゼラチンのように生理学的に分解可能な組成物; 水性媒体および溶媒; 油性媒体および溶媒; 懸濁剤; 分散もしくは湿潤剤; 乳化剤、粘滑剤;緩衝剤; 塩; 増粘剤; 充填剤; 酸化防止剤; 安定化剤; ならびに薬学的に許容可能な高分子または疎水性の物質および当該分野で既知の他の成分(例えば、Genaro, ed. (1985) Remington's Pharmaceutical Sciences Mack Publishing Co., Easton, Pa., に記載されており、本明細書の一部として援用される)。
【0030】
ここで述べられている医薬組成物の剤形は、薬理学の分野で既知または今後開発されるいずれかの方法により調製されてよい。一般的に、そのような調製方法には、キャリアまたは1以上の他の付属の成分に付随して活性成分を取り入れるステップが含まれ、その後、必要な場合または望ましい場合、生成物を望ましい単一用量単位または複数用量単位に形成または包装する。
【0031】
ここで提供される医薬組成物の記述は主にヒトに対する倫理的な投与に適した医薬組成物に向けられているが、そのような組成物は、一般的に、全ての種類の動物に対する投与に適しているということは当業者により理解されるであろう。種々の動物に対する投与に適した組成物を与えるために、ヒトに対する投与に適した医薬組成物を修飾することはよく理解されており、通常の獣医学の薬理学者は単に普通の実験によりそのような修飾を設計し、行うことができる。本発明の医薬組成物の投与が意図される対象には、限定するものではないが、ヒトおよび他の霊長類、および他の哺乳動物が含まれる。
【0032】
2.アルツハイマー病
アルツハイマー病は、最も一般的な症状である記憶喪失を伴う脳内における特定の神経細胞の亜集団の広範な損失と付随している。(Katzman (1986) New England Journal of Medicine 314: 964)。アルツハイマー病は、神経病理学的な変化に関してよく特徴付けられる。しかしながら、異常は末梢組織において報告されており、アルツハイマー病は、最も顕著である中枢神経系の病態を伴う系統的な障害である可能性を支持している。(Connolly (1998) Review, TiPS Col. 19: 171-77)。アルツハイマー病の議論については、遺伝子起源およびクロモソーム1、14、および21に関連する(St. George-Hyslop et al. (1987) Science 235: 885; Tanzi et al. Review, Neurobiology of Disease 3:159-168; Hardy (1996) Acta Neurol Scand: Supplement 165: 13-17を参照されたい)。
【0033】
アルツハイマー病を有する個人は、進行性の記憶障害、言語および視空間の能力の損失、ならびに行動の不足により特徴付けられる(McKhann et al. (1986) Neurology 34: 939-944)。アルツハイマー病を有する個人の認知障害は、大脳皮質、海馬、前脳基底核、および他の脳の領域に位置する神経細胞の変性の結果である。内視鏡で得られるアルツハイマー病の脳の組織学的分析は、変性しているニューロンの神経細胞体および軸索における神経原繊維変化(NFT)、細胞外神経突起(老年性)プラーク、ならびに影響された脳の領域の血管の中および周囲のアミロイドプラークの存在を示した。神経原繊維変化は、らせん状の様式で対になった繊維(直径約10nm)を含有する異常な糸状構造であり、それ故、対のらせん状フィラメントとも呼ばれる。神経突起のプラークは、変性している神経末端(軸索と樹状突起の両方)に位置し、アミロイドタンパク質繊維のコア化合物を含有する。要約すると、アルツハイマー病は、主に細胞骨格タンパク質で構成される細胞内神経原繊維変化、ならびに細胞外実質および脳血管アミロイドを含むある一定の神経病理学的な特徴により特徴付けられる。さらに、アルツハイマー病の患者、正常な老人、およびパーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ウェルニッケ-コルサコフ、または精神分裂病、さらに例えば米国特許第5,580,748号および米国特許第6,080,582号に記載されているような他の神経変性疾患に罹患している人々を区別する方法が現在当該分野には存在する。
【0034】
ニューロンの損失を導く細胞の変化および根底にある疾患の原因が治験において残っているが、APP代謝の重要性はよく確立されている。アルツハイマー病を有する患者の脳において、脳の生理学または病態生理学における役割を果たすことが最も確実に確認される2つのタンパク質はβ-アミロイドおよびタウである。(See Selkoe (2001) Physiological Reviews. 81:2)。β-アミロイドタンパク質代謝における欠損および異常なカルシウムホメオスタシスおよび/またはカルシウム活性化キナーゼについての議論。(Etcheberrigaray et al. Alzheimer’s Reports Vol. Nos. 3, 5 & 6 pp 305-312; Webb et al. (2000) British Journal of Pharmacology 130: 1433-52)。
【0035】
アルツハイマー病(AD)は、変化したタンパク質異化により特徴付けられる脳障害である。変化したタンパク質リン酸化は、アルツハイマー病において見られる細胞内の神経原繊維変化の形成に結び付けられる。アミロイド前駆タンパク質(APP)の加工は、後に凝集し、老年性またはADプラークとして既知のアルツハイマー病に特有のアミロイド沈着物を形成する断片の産生を決定する。アルツハイマー病の病態の中心的な特徴は、プラーク内におけるアミロイドタンパク質の沈着である。それ故、APP加工は、ADにおいて初期の且つ鍵となる病態生理学的なイベントである。
【0036】
3つの代替のAPP加工経路が同定されている。前に名付けた「正常な」加工には、Aβ配列内においてAPPを残基Lys16(またはLys16とLeu17との間;APP770命名法)で切断する酵素の関与が含まれ、結果として非アミロイド形成的な断片、大きなN末端外部ドメイン、および小さな9kDaの膜結合断片を生じる。この酵素は、まだ完全には同定されていないが、α-セクレターゼとして既知である。2つの付加的なセクレターゼは、APP加工に関与する。1つの代替の経路は、Aβドメインの外、Met671とAsp672との間におけるAPPの切断(β-セクレターゼによる)およびエンドソーム-リソソーム(lysomal)系の関与を含む。付加的な切断部位は、Aβペプチドのアミノ酸39の後、血漿膜内において、Aβ部分のカルボキシル末端で生じる。セクレターゼ(γ)作用は、全体のAβ配列および細胞に付随する6kDa以下の断片を含有する細胞外アミノ酸末端を産生する。それ故、完全なAβ配列を含有するため、βおよびγセクレターゼによる加工は、潜在的なアミロイド形成的断片を産生する。いくつかのラインの証拠は、全ての代替の経路が与えられた系において生じ、可溶性のAβが「正常な生成物」であってよいことを示す。しかしながら、CSFおよび血漿中における循環Aβの量は、「スウェーデン」突然変異を有する患者において増加するという証拠もある。さらに、前記突然変異またはAPP717突然変異がトランスフェクトされた培養細胞は、より多い量のAβを分泌する。さらに最近では、他のAPP突然変異ならびにPS1およびPS2突然変異のキャリアは、増大した量の特定の形態である長い(42〜43アミノ酸)Aβを分泌することが示されている。
【0037】
それ故、全ての代替経路が正常に生じ得るにもかかわらず、アミロイド形成的な加工に有利である不均衡が家族性およびおそらく散発性のADにおいて生じる。これらの増強されたアミロイド形成的な経路は、究極的に、AD患者の脳においてフィブリルおよびプラークを導く。それ故、非アミロイド形成的なα-セクレターゼ経路を支持するための発明は、APP加工のバランスを、潜在的に毒性のAβペプチドと比較してsAPPの相対的な量が増加するおそらく非病原性の工程の方へ効率的にシフトさせる。
【0038】
PKCアイソザイムは、生化学的、生物物理学的、および行動的な効果の特有な関係が示され、認知能力を改善するために患者に適用されることを通して、重要、特異的、且つ律速の分子標的を提供する。
【0039】
さらに、正常および異常な記憶に関して、K+チャネルおよびCa+チャネルの両方が記憶の保存および想起において鍵となる役割を果たすことが示されている。例えば、カリウムチャネルは、記憶の保存の間に変化することが見出されている。(Etcheberrigaray et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. 89: 7184; Sanchez-Andres et al. (1991) Journal of Neurobiology 65: 796; Collin et al. (1988) Biophysics Journal 55: 955; Alkon et al. (1985) Behavioral and Neural Biology 44: 278; Alkon (1984) Science 226: 1037)。この知見は、アルツハイマー患者における記憶喪失のほとんどの一般的な症状と組み合わせて、アルツハイマー病の病態の可能性のある部位としてカリウムチャネルの機能および認知におけるPKC修飾の効果の研究を導く。
【0040】
3.プロテインキナーゼCおよびアルツハイマー病
PKCは、非受容体セリン-スレオニンプロテインキナーゼの最も大きな遺伝子ファミリーの1つとして同定された。ニシヅカおよび共同研究者による80年代初めのPKCの発見(Kikkawa et al. (1982) J. Biol. Chem. 257: 13341)およびホルボールエステルの主要な受容体としてのその同定まで(Ashendel et al. (1983) Cancer Res., 43: 4333)、多くの生理的なシグナル伝達メカニズムはこの酵素が原因とされてきた。PKCにおける強い興味は、カルシウムおよびジアシルグリセロール(およびそのホルボールエステルミメティック)によりインビトロで活性化されるその特有の能力に由来し、その構造がリン脂質と結合しているエフェクターは、成長因子および分化因子の作用により代謝回転する。
【0041】
PKC遺伝子ファミリーは、現在11遺伝子からなり、4つの亜群に分けられる:1)古典的なPKCα、β1、β2(β1およびβ2は同じ遺伝子の二者択一にスプライスされた形態である)およびγ、2)新規のPKCδ、ε、ηおよびθ、3)非定型のPKCζ、λ、ηおよびι、ならびに4)PKCμ。PKCμは新規のPKCアイソフォームに似ているが、推定上の膜貫通ドメインを有する点において異なる(Blohe et al. (1994) Cancer Metast. Rev. 13: 411; Ilug et al. (1993) Biochem J. 291: 329; Kikkawa et al. (1989) Ann. Rev. Biochem. 58: 31に概説されている)。α、β1、β2およびγアイソフォームは、Ca2、リン脂質およびジアシルグリセロール依存であり、PKCの古典的なアイソフォームを意味する一方、他のアイソフォームはリン脂質およびジアシルグリセロールにより活性化されるが、Ca2には依存しない。全てのアイソフォームは5の可変領域(V1-V5)を含み、α、β、γアイソフォームは、高度に保存された4の構造的なドメイン(C1-C4)を含む。PKCα、β、およびγを除く全てのアイソフォームはC2ドメインを欠いており、λ、ηアイソフォームは、ジアシルグリセロールが結合するC1において9の2システインに富んだZnフィンガードメインも欠いている。C1ドメインは、全てのアイソフォームの中で高度に保存されている偽基質を含有し、基質-結合部位をブロックすることにより自動制御機能を果たし、酵素の不活性な高次構造を作り出す(House et al., (1987) Science 238: 1726)。
【0042】
これらの構造的な特徴のため、種々のPKCアイソフォームは、生理的刺激に応答したシグナル伝達(Nishizuka (1989) Cancer 10: 1892)、ならびに新生物の形質転換および分化において高度に特定化された役割を有すると思われる(Glazer (1994) Protein Kinase C. J.F. Kuo, ed., Oxford U. Press (1994) at pages 171-198)。既知のPKC修飾因子の議論については、PCT/US97/08141、米国特許第5,652,232号; 第6,043,270号; 第6,080,784号; 第5,891,906号; 第5,962,498号; 第5,955,501号; 第5,891,870号、および第5,962,504号を参照されたい。
【0043】
PKCがシグナル伝達において果たす中心的な役割の点から、PKCは、APP加工の修飾に対する刺激性の標的であることが示されている。PKCがAPP加工においてある一定の役割を果たすことはよく確立されている。例えば、ホルボールエステルは、PKC活性化を通して分泌される非アミロイド形成的な可溶性のAPP(sAPP)の相対的な量を有意に増大させることが示されている。しかしながら、ホルボールエステルによるPKCの活性化は、結果としてAPP分子の直接的なリン酸化を生じるようには見えない。作用の正確な部位に関係なく、ホルボール誘発性のPKC活性化は、増強され、または好ましいα-セクレターゼの非アミロイド形成的な経路を結果として生じる。それ故、PKC活性化は、有害でないsAPPの産生に影響を与え、有益なsAPPを産生し、同時にAβペプチドの相対的な量を減少させるための魅力的なアプローチである。しかしながら、ホルボールエステルは、その腫瘍促進活性により、最終的な薬剤開発に対して適切な化合物ではない。(Ibarreta et al. (1999) NeuroReport Vol. 10, No. 5&6, pp 1034-40)。
【0044】
本発明者は、プロテインキナーゼCの活性化がアルツハイマー病(AD)アミロイド前駆タンパク質(APP)のα-セクレターゼ加工を支持し、結果として非アミロイド形成的な可溶性APP(sAPP)を生じることも観察した。結果として、アミロイド形成的なA1-40およびA1-42(3)の相対的な分泌が減少する。APPおよびプレセニリンAD突然変異を発現する線維芽細胞および他の細胞は増大した量の全Aβおよび/または増大した割合のA1-42(3)/A1-40を分泌するため、特に関連する。興味深いことに、PKCの欠損はAD脳(αおよびβアイソフォーム)ならびにAD患者からの線維芽細胞(α-アイソフォーム)において見出されている。
【0045】
研究は、α、βおよびγアイソフォームに対して改善された選択性を有する他のPKC活性化因子(すなわちベンゾラクタム)が基礎レベルを超えてsAPP分泌を増強することを示した。ベンゾラクタム処理したAD細胞におけるsAPP分泌は、対照のベンゾラクタム処理した線維芽細胞と比較してわずかに高く、10μM BLで処理した後にsAPP分泌の有意な増大を示したのみである。スタウロスポリン(PKC阻害剤)は対照とAD線維芽細胞の両方においてベンゾラクタムの効果を除去するが、関連する化合物はPC12細胞において3倍以下のsAPP分泌を引き起こすことも報告された。本発明者は、非腫瘍促進であるため、非アミロイド形成的なAPP加工を支持するためにPKC活性化因子としてブリオスタチンを使用することは、特に治療的に価値があることを見出し、既にステージII臨床試験である。
【0046】
PKCにおける変化、同様にカルシウム制御およびカリウム(K+)チャネルにおける変化には、アルツハイマー病(AD)患者における線維芽細胞の変化が含まれる。PKC活性化は、TEA誘発性の[Ca2+]上昇により測定した場合、正常なK+チャネル機能を保存していることが示された。さらに、パッチクランプデータは、113psK+チャネル活性の回復におけるPKC活性化因子の影響を実証する。それ故、PKC活性化因子に基づくK+チャネルの回復は、AD病態生理学の研究に対するアプローチとして確立されており、AD治療に対する有用なモデルを提供する(その全体が本明細書中に援用される、出願中の米国特許出願第09/652,656号を参照されたい)。
【0047】
特に興味深いのは、PKCを刺激するように作用する大環状ラクトン(すなわち、ブリオスタチン類およびネリスタチン類)である。ブリオスタチン類の化合物であるブリオスタチン-1は、PKCを活性化することが示されており、腫瘍促進活性を欠くことが証明されている。ブリオスタチン-1の用量反応曲線は二相性のため、ブリオスタチン-1は、PKC活性化因子として特に有用である。加えて、ブリオスタチン-1は、PKCα、PKCδ、およびPKCεを含むPKCアイソザイムの特異な制御を示す。ブリオスタチン-1は、動物およびヒトにおいて毒性および安全性の試験を受け、抗癌剤として積極的に検討されている。研究におけるブリオスタチン-1の使用は、ヒトにおける主要な有害反応が筋肉痛であることを決定し、最大用量を40 mg/m2に制限した。本発明は、sAPP分泌の劇的な増大を引き起こすために、0.1nMのブリオスタチンの濃度で利用される。ブリオスタチン-1は、溶媒単独および他のPKC活性化因子であるベンゾラクタム(BL)を10,000倍濃度で使用したものと比較した。ブリオスタチンは、現在、抗癌剤として臨床試験中である。ブリオスタチンは、PKCの調節性のドメインに結合することおよび酵素を活性化することが既知である。ブリオスタチンは、PKCのアイソザイム選択性活性化因子の例である。ブリオスタチンを加えた化合物は、PKCを修飾することが見出されている(その全体が本明細書の一部として援用されるWO 97/43268を参照されたい)。
【0048】
大環状ラクトンおよび特にブリオスタチン-1は、米国特許第4,560,774号に記載されている(その全体が本明細書の一部として援用される)。大環状ラクトンおよびその誘導体は、他に、例えば、米国特許第6,187,568号、米国特許第6,043,270号、米国特許第5,393,897号、米国特許第5,072,004号、米国特許第5,196,447号、米国特許第4,833,257号、および米国特許第4,611,066号に記載されている(それぞれ全体が本明細書の一部として援用される)。上述した特許は、抗炎症剤または抗腫瘍剤としての使用を含む、大環状ラクトンについての種々の化合物および種々の使用について記載されている。ブリオスタチン類化合物についての他の議論は、Szallasi et al. (1994) Differential Regulation of Protein Kinase C Isozymes by Bryostatin 1 and Phorbol 12-Myristate 13-Acetate in NIH 3T3 Fibroblasts, Journal of Biological Chemistry 269(3): 2118-24; Zhang et al. (1996) Preclinical Pharmacology of the Natural Product Anticancer Agent Bryostatin 1, an Activator of Protein Kinase C, Cancer Research 56: 802-808; Hennings et al. (1987) Bryostatin 1, an activator of protein kinase C, inhibits tumor promotion by phorbol esters in SENCAR mouse skin, Carcinogenesis 8(9): 1343-46; Varterasian et al. (2000) Phase II Trial of Bryostatin 1 in Patients with Relapse Low-Grade Non-Hodgkin’s Lymphoma and Chronic Lymphocytic Leukemia, Clinical Cancer Research 6: 825-28; and Mutter et al. (2000) Review Article: Chemistry and Clinical Biology of the Bryostatins, Bioorganic & Medicinal Chemistry 8: 1841-1860において見られる(それぞれ全体が本明細書の一部として援用される)。
【0049】
筋肉痛は、PKC活性化因子の耐容量を制限する主要な副作用である。例えば、ブリオスタチン-1を使用する第II相臨床試験において、筋肉痛は治療される患者全体の10〜87%において報告された。(Clamp et al. (2002) Anti-Cancer Drugs 13: 673-683)。1週間に1回、20μg/m2の用量で3週間投与した場合、耐容性がよく、筋肉痛または他の副作用が付随しなかった。(Weitman et al. (1999) Clinical Cancer Research 5: 2344-2348)。もう1つの臨床試験において、25μg/m2のブリオスタチン-1を週に1回8週間投与した場合、最大の耐容量であった。(Jayson et al. (1995) British J. of Cancer 72(2): 461-468)。もう1つの研究は、50μg/m2(2週間に1回の1時間の静脈注入を6週間)が最大耐容量であると報告した。(Prendville et al. (1993) British J. of Cancer 68(2): 418-424)。報告された筋肉痛は、ブリオスタチン-1の繰り返しの治療により、および最初の注入後数日で累積された。Id。患者の生活の質における筋肉痛の有害な効果は、ブリオスタチン-1治療の中断の一因であった。Id。ブリオスタチン誘発性の筋肉痛の原因は、不明である。Id。
【0050】
国立がん研究所は、筋肉痛の分類に対する共通の毒性基準を確立した。特に、前記基準は、5つのカテゴリーまたはグレードに分けられる。グレード0は、筋肉痛なしである。グレード1の筋肉痛は、鎮痛薬を必要としない、軽い、短時間の痛みにより特徴付けられる。グレード1の筋肉痛において、患者は完全に歩行できる。グレード2の筋肉痛は、痛みまたは必要とされる鎮痛薬がいくつかの機能を妨げるが、日常生活における活動を妨げない、中程度の痛みにより特徴付けられる。グレード3の筋肉痛は、痛みまたは必要な鎮痛薬が日常生活における活動をひどく妨げる、激しい痛みを伴う。グレード4の筋肉痛は、手足の自由をきかなくする。
【0051】
本発明の組成物は、患者に投与されるPKC活性化因子の耐容量を増大させ、および/または末梢組織においてPKCの活性化を減弱することにより、PKC活性化に付随する副作用を改善する。特に、PKC阻害剤は、末梢組織においてPKCを阻害するか、または、末梢組織においてPKCを優先的に阻害する。例えば、ビタミンEは、糖尿病のラットの大動脈および上昇したグルコースレベルにさらされた培養されたラット平滑筋において、ジアシルグリセロール-プロテインキナーゼC活性化を正常化することを示した。(Kunisaki et al. (1994) Diabetes 43(11): 1372-1377)。中程度に進行したアルツハイマー病に罹患している患者におけるビタミンE(2000 IU/日)治療の二重盲検において、ビタミンE治療は死亡率および罹患率を低下させるが、認知能力を増強しないことが見出された。(Burke et al. (1999) Post Graduate Medicine 106(5): 85-96)。
【0052】
ブリオスタチン類を含む大環状ラクトンは、本来、フサコケムシ(Bigula neritina L)に由来する。大環状ラクトン、特にブリオスタチン類についての複数の使用が既知であるが、大環状ラクトンと認識力増強との間の関係は、これまで未知であった。
【0053】
本発明において使用され得る化合物の例には、大環状ラクトン(すなわち、ブリオスタチン類およびネリスタチン類の化合物)が含まれる。これらの化合物の特定の実施形態は実施例および詳細な説明に記載されているが、参考文献に記載されている化合物およびその誘導体も本発明の組成物および方法に対して使用され得ると解されるべきである。
【0054】
当業者により理解可能であるように、大環状ラクトン化合物およびその誘導体、特にブリオスタチン類は組み合わせの合成技術を適用することができ、それ故、前記化合物のライブラリを作ることができ、限定するものではないが、組成物の有効性および安全性が含まれる薬理学的パラメータを最適化することができる。加えて、前記ライブラリは、好ましくは、α-セクレターゼおよび/またはPKCを調節する要素を決定するために分析されてよい。
【0055】
ブリオスタチンの合成類似体も、本発明により意図される。特に、前記類似体は、ブリオスタチンとのNMR分光光学的な比較および種々の程度のPKC結合親和性により決定されるように、C1-、C19-、C26-酸素認識ドメインの胚行性を保持している。米国特許第6,624,189号(全体が本明細書の一部として援用される)に開示され、記載されているブリオスタチン類似体は、本発明の方法において使用されてもよい。特に、米国特許第6,624,189号の式Iの分類(カラム3、第35〜66行)および式II〜VIIの種、ならびに米国特許第6,624,189号の1998aおよび1998b(カラム8、第28〜60行)で述べられているブリオスタチン類似体は、本発明の方法における使用に適したPKC活性化因子である。
【0056】
認知能力または一般的な認識力の特異的な特性を通して、全体的な認知の改善のための治療方法の発達に対する必要性がまだ存在している。特定の病態または認知障害に関係するかどうかに関わらず、認識力の増強を改善するための方法の発達に対する必要性もまだ存在する。本発明の方法および組成物はこれらの必要性を満たし、アルツハイマー病および他の神経変性疾患に対する臨床的な治療を大いに改善し、ならびに改善された認知の増強を提供する。前記方法および組成物は、α-セクレターゼの調節を通して、認知の状態の治療および/または増強も提供する。
【実施例】
【0057】
例1:行動薬理学
ブリオスタチン曝露−実験を開始する前に、ウミウシ(Hermissenda Crassicornis)の検体を、穿孔処理した50mlの円錐形の遠心チューブ内において15℃の人工海水(ASW)中に3日間維持した。海の苔虫類であるフサコケムシ(Bugula neritina)から精製されたブリオスタチンをEtOH中に溶解し、ASW中において最終濃度まで希釈した。動物をASW中のブリオスタチンを用いて4時間インキュベートし、通常のASWを用いてすすいだ。選択された実験のために、ラクタシステイン(10μM)またはアニソマイシンをASWに加えた。
【0058】
ウミウシの行動および生化学におけるブリオスタチンの効果は、各個々の動物を入れた長さ8cm、直径1cmの試験管内における水浴培地(bathing medium)に薬剤を加えることにより作られた。
【0059】
例2:免疫染色法
実験的な処理および試験の後、動物は迅速に断頭され、中枢神経系(CNS)を除去し、それを20 mM Tris緩衝(pH 8)天然海水(NSW; 0.2μm ミクロポアろ過)中の4%パラホルムアルデヒド中に固定した。CNSをその後ポリエステルワックス(20)中に包埋し、分割し(6μm)、アビジン結合ミクロペルオキシダーゼに結合したビオチン標識した二次抗体を用いて免疫染色し(ABC法, ベクター)、アミノエチルカルバゾール(AEC)を色素原として使用した。一次ポリクローナル抗体(設計された25U2)が、イカの視葉から抽出された全長のカレクシチンタンパク質からウサギ中で産生された。グレースケール強度法は、B-光受容体の外接した細胞質領域−同じバックグラウンドの領域(非染色ニューロパイル)におけるデジタル顕微鏡写真から行った。
【0060】
例3:プロテインキナーゼCアッセイ
1 mM EGTA、1 mM PMSF、および50 mM NaFを含有する100μlの10 mM Tris-HCL pH 7.4において、超音波処理(5 sec, 25W)により細胞を均質化した。ホモジネートをポリアロマー遠心チューブに移し、100,000×gで10分間、4℃で遠心分離した。上清を除去し、すぐにドライアイスで凍結した。粒子の画分を100μlの同じ緩衝液中で超音波処理することにより再懸濁し、−80℃で保管した。PKCを測定するために、10μlの細胞質ゾルまたは粒子の画分を、10μM ヒストン、4.89 mM CaCI2、1.2μg/μl ホスファチジル-L-セリン、0.18μg/μl 1.2-ジオクタノイル-sn-グリセロール、10 mM MgCl2、20 mM HEPES(pH 7.4)、0〜8 mM EDTA、4 mM EGTA、4% グリセロール、8μg/ml アプロチニン、8μg/ml ロイペプチン、および2 mM ベンズアミジンの存在下、37℃で15分間インキュベートした。0.5μCi [γ32-P]ATPを加え、32P-リンタンパク質形成は、以前に述べたように(25)、ホスホセルロース上における吸収により測定された。この試験は、ウミウシ神経系ホモジネートまたは培養された哺乳動物ニューロンホモジネートに対するわずかな調整を伴って使用された。
【0061】
例4:細胞培養
ラット海馬のH19-7/IGF-IR細胞(ATCC)をポリ-L-リジンコートしたプレート上に蒔き、約50%の被覆が得られるまで、DMEM/10% FCS中、数日間、35℃で培養した。その後、培地を10 ng/ml 塩基性フィブロブラスト成長因子を含有する5mlのN2倍地で置き換えることにより細胞をニューロンの表現型への分化を誘導し、T-25フラスコ中、39℃で培養した(26)。種々の濃度のブリオスタチン(0.01〜1.0 nM)を10μlの水溶液中に加えた。規定の期間の後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、優しく削ることにより除去し、1000rpmで5分間遠心分離することにより回収した。
【0062】
例5:行動の条件付け
ウミウシのパブロフの条件付けは、中性刺激の繰り返されるペアリング、無条件刺激を伴う光、眼窩の振とうに関与する。(Lederhendler et al. (24)およびEpstein et al. (6)を参照されたい)。回転/振とう刺激は、平衡胞有毛細胞を興奮させ、それ故、無条件の反応を誘発する:足部を支持する表面に対する付着性または「密着性(clinging)」を伴う、足部と呼ばれる筋肉裏側の活発な収縮。条件付けの前に、光は、足部を長くすることを伴う弱い陽性の走光性を誘発する。十分な光回転ペアリングの後、光はもはや走光性を誘発しないが、代わりに新しい反応を誘発する(24):無条件刺激のみにより以前に誘発された「密着性」および足部の短縮化(図1)。それ故、無条件刺激、回転、または眼窩振とうの測定は、条件刺激に移行され、光誘発性の足部の収縮−足部の長さの負の変化により明らかにされる。この光に対する条件反応は、数週間持続し、ランダム化された光および回転によっては生じず、刺激特異性であり、哺乳動物のパブロフの条件付けの他の限定的な特徴を占める。
【0063】
例6:ブリオスタチン誘発性の連合記憶の延長
ウミウシのパブロフの条件付けは、学習した条件反応の進行性により長く続く保持を生じる、よく定義されたトレーニングパラメータを有する。対の光および眼窩振とうの2のトレーニング事象(2TE)(「方法」を参照されたい)は、例えば、薬物治療なしで約7分間持続する学習された条件反応(光誘発性の足部の収縮または短縮化)を引き起こす。4〜6トレーニング事象(4〜6TE)は、数時間持続する条件反応を引き起こすが、トレーニングの約1日後までに消失する。9TEは、何日も持続する長期連合記憶を生じ、しばしば2週間に及ぶ。
【0064】
動物は、トレーニングの前の暗順応の間(10分間)にブリオスタチン(0.25 ng/ml)を加え、4時間残存させ、4-および6-の対のCS/USトレーニング事象(TE)の最適以下の措置により訓練されるか、またはBryoなし(NSW対照)、陽性対照として役立つ9-の対のTEおよびNSWである。全ての動物は、4時間にCS単独で試験され、その後、24時間間隔をおいた。最適以下で訓練されたがブリオスタチンで治療された動物は全て、長期の保持を示した(n = 8-16 動物/条件/実験; ANOVA, p<0.01)。
【0065】
2TE+ブリオスタチンは、数時間続く記憶保持を生じ(対して、ブリオスタチンなしの場合は数分間)、4TE+ブリオスタチンは、24時間を超えて保持を伸ばし(図1)、6TE+ブリオスタチンは1週間以上続く保持を生じた。
【0066】
ブリオスタチンなしの場合(NSW)、ランダム、および対のCS/USトレーニング事象(TE)は、LTMを生じず、または4時間で試験した場合にCRを誘発しなかった。ブリオスタチン(NSW中0.25 ng/ml)を6-TE条件付けの前(10分間の暗順応の間)に適用した場合、その後4時間、陽性CRを生じ(足部の収縮; 長さにおける負の変化)、それ故LTMが確立されたことを示す。(暗順応の間)予めのトレーニングが適用された場合、アンタゴニストRo-32は、6TE+ブリオスタチンの効果をブロックし、すなわち、正常な走光性により動物は伸長した(正の長さ変化)(n=4-8 動物/条件/実験; ANOVA 差, p<0.01)。光および回転のランダム化された提示は、ブリオスタチンがあってもなくても、条件反応、すなわち光誘発性の足部収縮を生じなかった(図2)。それ故、トレーニングの間および直後のブリオスタチンは、最適以下のトレーニング実験で記憶保持を延長した。
【0067】
例7:トレーニングが記憶獲得を増強する前におけるブリオスタチンへの予めの曝露
以前の測定(15,17)は、学習誘発性のPKCの神経細胞膜との会合(すなわち転位)が維持され得ることを示した。ウサギ瞬膜の条件付け、ラット空間迷路学習、迷路学習、およびラット嗅覚識別学習は、トレーニングの後数日間続くPKC転位を伴うことが全て見出された。ウミウシ条件付けは、単一の同定可能なB細胞に局在化し得るPKC転位により、トレーニングの後少なくとも1日は観察された(15)。
【0068】
既に述べたように、トレーニングの間および後の4時間のブリオスタチンへの曝露は、6〜8分から数時間、2TEにより生じる記憶保持を増強する。しかしながら、トレーニングより前の日ならびに2TEの日にブリオスタチンに4時間曝露した場合、トレーニングの後1日よりも長く記憶保持を延長した。2の対のCS/USトレーニング事象と組み合わせた動物の連続する2日の4時間のブリオスタチン曝露(0.25ng/ml)は、CS単独で試験した場合、CR(体長収縮)により示される少なくとも6日の長期保持を生じた(n=16 動物/条件; ANOVA, p<0.01)(図3)。
【0069】
4時間のブリオスタチン曝露(0.25ng/ml)を3日連続で与えられた後、1日後に2TEを与えられた動物は、トレーニング後96時間にわたって測定された長期保持(LTR)を示した。曝露されない動物は(図3と同じ)、いずれの行動的な修飾も示さなかった(CS試験に対するCRなし)。3日間ブリオスタチン治療を受けた動物に対して、トレーニング後アニソマイシン(ANI)(1μg/ml)が即時に投与され、4時間そのままにした場合、長期保持を妨げなかった。それ故、トレーニング後に加えられた場合ANIにより通常妨げられるLTRの生成に必要なタンパク質合成に対する要求は、3日間のブリオスタチン治療により得られた(n=16 動物/条件; ANOVA, p<0.01)。4時間のブリオスタチンへの曝露の3日目、同様に増強されたパブロフの条件付けがされた反応の保持を生じた(図4)。前述の結果は、ブリオスタチンへの2の連続した期間の曝露がPKC活性化およびおそらく長期記憶に対して重要なタンパク質合成を引き起こし、同時または引き続くPKC下方制御の最小化を伴うという見解を支持する。この見解は、より延長された時間、すなわち8〜20時間のブリオスタチン曝露に続く2TE(図5)が、連続する前の日に2回の4時間の曝露を伴う場合と均等な記憶保持を生じるのにそれ自体十分でないという知見によるさらなる支持も与えられた。これらの実験において、トレーニングにおける20時間のブリオスタチン(0.25ng/ml)曝露の効果が観察された。最適以下の2の対のTE条件付けのプログラムにより、保持は48時間以内に消えた。20時間の予めのブリオスタチンへの曝露を伴う4の対のTE条件付けの保持は、持続した(n=8 動物/条件; ANOVA 48時間において, p<0.01)。十分に延長されたブリオスタチン曝露(例えば、8〜12時間)は、他の細胞系において、PKC活性化を停止し、PKC合成を増大させ得る延長されたPKC下方制御を引き起こす。
【0070】
同様に、十分に増大した濃度のブリオスタチンは、おそらくPKC下方制御のため、最終的に記憶保持をブロックした(図6)。ブリオスタチン濃度<0.50ng/mlは、最適以下の(4TE)トレーニング条件で習得および記憶保持を増大する。これらの濃度では、9の対のTEを用いた保持成績において明確な効果がなかった。しかしながら、試験された全てのトレーニング条件において、濃度≧1.0ng/mlは、おそらくPKC下方制御を介して習得および行動性の保持を阻害した(n=16 動物/条件)。
【0071】
例8:トレーニングの間のタンパク質合成に対する要求を不要にするブリオスタチンへの予めの曝露
動物は2の対のトレーニング事象(TE)を受け、4時間後に保持について試験された。ブリオスタチン(0.25ng/ml)は、10分間の予め暗順応の訓練をする期間に、NSW中において動物に適用され、4時間後に、行動性の条件付けの保持を実証した(足部の収縮(CR)および体長の短縮)。NSW対照動物およびトレーニングの前にブリオスタチン、トレーニングの後すぐにアニソマイシン(1.0μg/ml)で処理された動物は、CRを示さず、正常な陽性の走光性において足部の伸長を伴った(n=12 動物/条件/実験, 二方向のANOVA 統計, p<0.01)。2TEと共に単一の4時間のブリオスタチンへの曝露を行うことにより、数時間持続する長期記憶の保持を生じ、アニソマイシンがブリオスタチンと共に存在する場合には、皆無にされた(図7)。同様のアニソマイシンのブロック効果は、6TE+ブリオスタチンにおいても観察される。しかしながら、繰り返されるブリオスタチンへの短時間の曝露は、PKC、カレクシチン、および他の記憶タンパク質の純合成を増大させ、それ故、PKC下方制御が十分に最小化された場合、パブロフの条件付けの間および後で新しい合成に対する要求を排除する。タンパク質合成は、直前の3日それぞれにおいてまず4時間ブリオスタチンに曝された動物の2TEの後すぐに、アニソマイシンを用いて4時間ブロックされた。この場合、タンパク質合成のアニソマイシン誘発性の遮断は、数日間持続した記憶保持を妨げなかった(図4)。対照的に、同じ4時間のアニソマイシン治療は、9TE、通常1〜2週間の記憶保持が後に続くトレーニングプログラムは、全ての記憶保持を排除した(27)。最後に、各回アニソマイシンを伴ってブリオスタチンに3日連続で4時間曝露された1日後に2TEが与えられた場合、長期記憶は除去された。
【0072】
例9:記憶においてブリオスタチン効果を増強するプロテアソーム阻害への予めの曝露
PKCおよび他の記憶関連タンパク質の新規合成を増強および延長するもう1つの方法は、タンパク質分解に関連する遮断経路により提供される。これらの1つは、ユビキチン-プロテアソーム経路(28〜30)であり、PKCのα-アイソザイムの分解に対する主要な経路であることが既知である。PKC-αの分解は、20μM〜50μMのプロテアソーム阻害剤であるラクタシステインによりほとんど妨げられることが以前に示されている。
【0073】
動物をブリオスタチン(0.25 ng/ml)およびラクタシステイン(10μ/M)と共に同時に4時間インキュベートし、その24時間後、2の対のCS/USトレーニング事象(TE)で条件付けした。動物は、トレーニング後4時間でCS単独で試験され、24時間おいた。条件付けられた行動の保持は、組み合わされたブリオスタチン/ラクタシステイン処理により続けられ;行動性の保持は、24時間後、ブリオスタチンのみで処理された動物において喪失した。ラクタシステインのみで処理された動物は、行動性のトレーニングの習得または保持を示さなかった(データはグラフ化していない)。(n=28 動物, 併用されたブリオスタチン/ラクタシステイン; n=20, ブリオスタチン単独; n=16, ラクタシステイン単独)。この場合、ラクタシステインは、単一のブリオスタチン曝露(その後2TE)により生じた短期記憶を数日間継続する長期記憶に転換した(図8)。
【0074】
例10:PKC活性化によるカレクシチン免疫染色
最近、我々は、ウミウシの条件付けの習得および保持の間に、単一の同定されたB細胞内でカレクシチンの免疫染色標識が増大することを示した(20)。多くの従前の知見によると、低分子量カルシウムおよびGTP結合タンパク質、カレクシチンはウミウシの条件付けの間のPKCアイソザイムに対する基質として意味付けられている(19)。カレクシチンは、現在、いくつかの動物種において完全に配列決定されており、他の種における同様のタンパク質とかなり相同性があることが示されており(31)、ウミウシのパブロフの条件付けの間および後でリン酸化の変化を起こす。それは、PKCのα-アイソザイムに対する高親和性の基質でもあり、βおよびγに対する低親和性の基質でもある(19)。
【0075】
顕微鏡写真(A、B)は、カレクシチンポリクローナル抗体である25U2で免疫標識されたウミウシの目に由来する典型的な組織切片を示す。陽性のカレクシチン免疫染色は、予めのブリオスタチンの投与を伴うかまたは伴わない、対のCS/UCS連合の条件付けを経験した動物のB細胞光受容体(*B細胞)において生じた(B)。2つの刺激(トレーニング事象, TE)のランダム提示は、行動性の修飾も正常なバックグラウンドレベルを超えるカレクシチンの上昇も生じず(A);基底膜およびレンズ染色は、脊椎動物ポリクローナル抗体を用いた場合に付随する人為的結果である。染色強度における違いが測定され、グレースケール強度として記録された(0-256; B細胞細胞質−組織バックグラウンド)。グラフ(C)は、9のランダムTEで条件付けられたウミウシ(左の棒)および連続する日にPKCアゴニストであるブリオスタチン(0.25ng/ml)に対して2回曝露され、その後2の対のTEで連合性に条件付けられた動物についての強度測定を示す。2TEと組み合わせたブリオスタチンへの2回の曝露に由来するPKC活性化は、カレクシチンを、9の対のTEに付随するレベルに有意に増加させ、(長期)記憶を固定した(n=4-8 動物/条件/複製; t-検定比較,p<0.01)。
【0076】
カレクシチン免疫染色は、光前庭神経突起のシナプス領域内で膿胞を分析するのに十分感受性がある(D)。矢印は、介在ニューロン(a)、反対側のニューロンに由来する軸索(b)、および推定上の光受容体に由来する神経突起の末端膿胞(c)の間の分枝野を示す。スケールバー=10μm;CPG,脳側神経節(図9、10)。
【0077】
免疫染色抗体はタンパク質のリン酸化形態および非リン酸化形態の両方と反応するため、この条件付け誘発性のカレクシチン標識の増加は、タンパク質の実際の量の増加を意味する。PKCは、同じ個々のB細胞内で転位することが以前に示され、特異的なPKCブロッカーであるRo-32は、B細胞内で学習および学習特異的なカレクシチン増加を妨げるため、カレクシチン標識における条件付け誘発性の増加を見かけ上引き起こした(上記参照)。未処置のおよび/またはランダム化された対照トレーニングプロトコルは、トレーニング誘発性のカレクシチン(CE)免疫染色の小さな画分を生じた(図9)。
【0078】
ブリオスタチンなしのランダムトレーニング(4TE)は、バックグラウンドよりわずかに高い強度測定値を生じた。ブリオスタチン投与は、両方のトレーニングプログラムに対してカレクシチンレベルを増大させた。ランダムトレーニングにおいて、CSおよびUSの時々の重なり(ペアリング)がある場合、CEにおいていくらかの上昇が生じることは予想外ではない(2.0の増加)。しかしながら、対のトレーニングの場合、カレクシチンレベルは4.3倍以上増大した(平均値±SE,N=5 動物/治療)。4RTE=ランダムコントロール、ランダムな光および回転を用いて4回試験; 6PTE=対の試験、対の光および回転を用いて6回試験。6PTE-0Bry vs. 6PTE-0.25Bry: p<0.001; 4RTE-0.25Bry vs. 6PTE-0.25Bry; p<0.001 (t-検定)。最適以下のトレーニング事象(4-6 TE)が使用された場合、CE免疫染色(図10A)は中間レベルの上昇に及んだ。これらの最適以下の措置は、24時間より長く維持される記憶保持を生じるのに不十分であった。上述したように、6TEを用いたトレーニングの間に投与されるブリオスタチンは、長期記憶保持を誘発した(>1週間)。さらに、ブリオスタチン+6TEは、9TEの後で観察された場合に匹敵するCE免疫染色を引き起こした。
【0079】
低い用量のブリオスタチン(0.1〜0.25ng/ml)は、2、4、または6のトレーニング試験の後で記憶を著しく増強した。6TEによるパブロフの条件付けは、ブリオスタチンを用いて何日も維持される記憶を作ったが、ブリオスタチンがない場合は数時間しか維持されなかった。この記憶の増強は、アニソマイシンまたはPKC阻害剤であるRo-32により遮断された。記憶がその後1週間以上持続したにもかかわらず、CE免疫染色は9TEの後24時間で大いに低下したことに注目することが重要である。しかしながら、より持続性のCE免疫染色は、最小のトレーニング(2TE)の直前の数日間繰り返しブリオスタチンを曝露した結果として得られた。
【0080】
ブリオスタチンを単独で(付随する条件付けなし)、1、2、および3日のそれぞれに4時間投与した場合、ブリオスタチン曝露の各期間の24時間後に測定すると、ウミウシのB-光受容体におけるカレクシチンのレベルが次第に増大した。1回目の4時間のブリオスタチン曝露の24時間後、CE免疫染色は上昇しなかった(図10B)。2回目のブリオスタチン曝露の24時間後、連続する2日のそれぞれの1は、より残留性のCE免疫染色を示した。3回目のブリオスタチン曝露の後、2の対のトレーニング事象(対の光および眼窩振とう)が行われた場合のカレクシチンレベルは、連合性の条件付け誘発性の行動的な修飾に対する保持日数における有意な長さを伴って、より高いレベルに上昇した(n=16 動物/条件: ANOVA, p<0.01)。これらの3回の曝露後に続く日に2TEを行った場合、24時間後のCE免疫染色は、これまでに9TEの後すぐに観察されたレベルに到達した(図10B)。それ故、これらの3日間の4時間のブリオスタチン曝露の後最小のトレーニング(2TE)をした後のCE免疫染色は、トレーニング試験単独の場合よりもより持続することを示した。新たに合成されたカレクシチンのこの持続性は、ブリオスタチンにより引き起こされるタンパク質合成の増大を示す生化学的な知見と一致する。
【0081】
2日連続でブリオスタチンへの曝露を4時間行い、24時間後に2-トレーニング事象(2TE)を行うことは、固定された長期記憶に対応する量にカレクシチンレベルを上昇させるために必要とされる。典型的に、2回のブリオスタチン曝露を伴う2TEにより、1週間より長く持続する保持を生じる(n=16 動物/条件; t-検定, p<0.01)。3日以上連続してブリオスタチンへの4時間の曝露により準備刺激することは、記憶の固定に必要なカレクシチンレベルを誘導し得る。2の対のトレーニング事象後すぐに加えられたアニソマイシンは、このカレクシチンレベルを低下させず、何日もの間固定された記憶を維持する(N=8 動物/条件; t-検定, p>0.05, ns)。(図11 A, B)。
【0082】
ブリオスタチン+トレーニングの直後のPKCのRo-32阻害が長期記憶誘導を妨げない一方で、トレーニング+ブリオスタチンの間の前記阻害が記憶固定を妨げることは注目すべきである。対照的に、ブリオスタチンがある場合とない場合のトレーニングの間のアニソマイシンは長期記憶を妨げない一方で、ブリオスタチンがある場合とない場合のトレーニングの後のアニソマイシンは記憶形成を完全に遮断した。それ故、トレーニングの間のPKC活性化は、長期記憶のために必要とされるタンパク質合成により支持される。それ故、一度PKC活性化が十分なレベルまで引き起こされると、必要なタンパク質合成は不可避の結果である。一貫して、トレーニング前のブリオスタチン誘導性のPKC活性化は、最小のトレーニング試験の場合でも十分に長期記憶を引き起こす。さらに、この後者の長期記憶は、トレーニング(およびその前のPKC活性化)の後にタンパク質合成を必要としない。さらに、先のPKC活性化は、引き続く長期記憶の形成に必要なタンパク質合成を生じさせるのに十分であった。免疫染色標識化により示されたように、合成がブリオスタチン誘導性のPKC活性化ならびに条件付け試験により誘導されるタンパク質の1つは、カレクシチンである。他のタンパク質は、PKC自体である。
【0083】
例11:PKC活性におけるブリオスタチンの効果
ブリオスタチンは、細胞膜画分に付随するPKCを増大させることにより、一過性にPKCを活性化することが既知である。種々の連合性の記憶パラダイムは、神経細胞膜に付随するPKCの増大を引き起こすことも示されている。それ故我々は、ウミウシをブリオスタチンに繰り返し曝露することにより(すなわち、トレーニングプロトコルに正確に沿って4時間曝露)、延長されたPKC活性化をひき起こす可能性を試験した。
【0084】
無処置のウミウシは、記載された条件下で連続する日に、4時間、ブリオスタチン(0.28nM)に曝露された(「行動薬理学」)。単離された食道環神経系におけるヒストンリン酸化(「方法」を参照)は、細胞質ゾル画分において測定された。2回のブリオスタチン曝露の2回目の10分および24時間後の両方に測定されたPKC活性化は、ベースラインレベルを超えて有意に増大された(N=6、各測定について)(図12、13)。それ故、両方の画分においてPKCの量は明らかに増大したが、細胞質ゾル画分中に対する膜中のPKCの割合は増大しなかった。これらの結果は、ブリオスタチンの予めの曝露はPKCに学習自体とは異なる何らかの効果を引き起こすことを示す。初期の活性化(転位を介する)の後、このブリオスタチンの効果は、PKCの合成の増大によるものと考えられ、ブリオスタチンにより誘導されるカレクシチンの増大したレベルと一致するが、繰り返されるブリオスタチン曝露とは直接的に相関がない。
【0085】
図12、13と同じであるが、アニソマイシン(1.0ng/ml)を各ブリオスタチン(0.25ng/ml)曝露と共に加えた。アニソマイシンは、3日連続でブリオスタチンに曝露した後、ウミウシの食道環神経系に由来する細胞質ゲルおよび膜の画分の両方で、PKC活性を著しく低下させたことに注目すべきである(N=3, 各測定について, p<.0l)(図14)。
【0086】
ブリオスタチンへの繰り返しの曝露の生化学的な結果をさらに試験するために、温度感受性tsA5CSV40ラージT抗原のレトロウイルス形質導入により不死化した後、ラット海馬ニューロンを試験した(25)。これらは、N2倍地(26)中において塩基性フィブロブラスト成長因子により誘導された場合には神経細胞の表現型を有し、PKCを含む神経細胞タンパク質の正常な補体を発現するように分化する。
【0087】
培養された海馬ニューロンを単一の活性化用量のブリオスタチン(0.28nM)に30分間曝露することにより、PKCの細胞質ゾルから特定の画分への簡単な転位を生じ(約60%)、続いて延長された下方制御を生じた(図15)。初期のPKC活性化およびそれに続く下方制御は共に前に述べられており、膜および細胞質ゾルにおけるPKC活性化の測定により確認された。培養された海馬ニューロンを30分間ブリオスタチンに曝露し、続いて30分〜8時間の間隔を開けて2回目の30分間の曝露をした場合、膜結合性のPKCをより早く再結合させた。それ故、2〜4時間遅らせた2回目の曝露は、単回のブリオスタチン曝露により生じる有意な下方制御を除去した(図16)。細胞質画分において、ブリオスタチン曝露後最初の4時間以内にPKC活性の有意な変化は検出されなかった。対照的に、細胞を2時間以内に2回ブリオスタチンに曝露した場合、2回目の曝露に対する反応においてPKC活性の有意な減少があった。しかしながら、2回目の曝露が1回目の4時間後まで遅れた場合、2時間後以内に第2の曝露を行った場合と比較して有意に増大した程度まで活性はベースラインより上に増大した(図16)。
【0088】
これらの結果は、最初のPKCのブリオスタチン活性化およびそれに続く下方制御(28〜30)がPKCアイソザイム(ならびに上述したカレクシチン)の合成(新規のタンパク質合成を介して)を増大させるという解釈と一致する。実際に、我々は、0.28nMブリオスタチンへの単回の30分間の曝露は、ニューロンを回収する前の最後の1/2時間に35S-メチオニンを組み入れて測定した場合、タンパク質合成を全体として増大させ(図17)、ブリオスタチン曝露後24時間以内に20%、79時間までに60%まで増大することを見出した。ブリオスタチンにより誘導されるタンパク質合成の延長および著明な増大は、PKC阻害剤Ro-32が存在する場合に部分的に遮断された(図17)。
【0089】
豊富な知見は、十分なブリオスタチン誘発性のPKC活性化は、必然的に、進行性のPKC不活化およびそれに続く下方制御を引き起こすことを示す。十分な用量のブリオスタチン(1.0ng/ml以上)は、実際に、パブロフの条件付けを阻害した。これは、高いブリオスタチンの濃度の結果として生じる行動性の結果を特徴付けるPKC下方制御によると考えられる。ブリオスタチンに誘導されるPKC活性化は、2つの異なる経路により下方制御されることが示されている。ホルボールエステルにより誘導されるものは、プロテアソーム経路によるユビキチン結合およびそれに続くタンパク分解性の分解に関与する。第2のメカニズムの下方制御は、ホルボールエステルにより誘導されず、カベオラコンパートメントを介した移動ならびにホスファターゼPPIおよびPP2Aにより媒介される分解に関与する。PKC活性化因子の十分な濃度および/または持続について、PKC分解経路はPKCの新規合成を刺激するPKCの欠乏を作り出し、PKC合成は不活化および下方制御を代償することができず、それ故、利用可能なPKCの95%以上の欠乏が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、最適以下で訓練された動物であるが、ブリオスタチンで処理すると全てが長期記憶を獲得したことを示す。
【図2】図2は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、ランダム化された光および回転の提示は、ブリオスタチンの有無に関わらず、条件付けられた反応を生じなかったことを示す。
【図3】図3は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、2日連続で4時間ブリオスタチンに曝露され、3日目に2のトレーニング事象(2TE)を受けた動物が、少なくとも6日の長期記憶を獲得したことを示す。
【図4】図4は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、3日連続で4時間ブリオスタチンに曝露され、4日目に2TEを受けた動物が、少なくとも96時間の長期記憶を獲得したことを示す。
【図5】図5は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、8〜20時間のブリオスタチン曝露の後、2TEを行った場合、4時間のブリオスタチンへの曝露後に達成されるのと同等の記憶を獲得するのに十分ではなかったことを示す。
【図6】図6は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、1.0ng/mlより多いブリオスタチンへの曝露が長期国の獲得を阻害することを示す。
【図7】図7は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンおよびアニソマイシンの効果を示し、2TEと共に単回の4時間のブリオスタチンへの曝露を行った場合、数時間持続する長期記憶を生じ、ブリオスタチン曝露の間にアニソマイシンが存在した場合、完全に除去されたことを示す。
【図8】図8は、ブリオスタチンおよびラクタシステインの効果を示し、ラクタシステインが、単回のブリオスタチン曝露(それに続く2TE)により生じた短期記憶を数日間持続する長期記憶に変換したことを示す。
【図9】図9は、カレクシチンにおけるPKC活性の効果を示す。
【図10a】図10aは、カレクシチン免疫染色におけるブリオスタチンおよびトレーニング事象の効果を示す。図は、トレーニング事象の数に伴い、B細胞内でカレクシチンが増大したことを示す。
【図10b】図10bは、免疫染色により示された場合の、ブリオスタチン単独のカレクシチンに対する効果を示す。
【図11a】図11aは、2日連続で4時間ブリオスタチンに曝露し、24時間後に2のトレーニング事象を行った場合の、カレクシチンの強度における影響を示す。図は、カレクシチンレベルを固定された長期記憶に付随する量まで上昇させるために、2日連続で4時間ブリオスタチンに曝露し、24時間後に2TEを行うことが必要であることを示す。
【図11b】図11bは、ブリオスタチン曝露後にアニソマイシンを加えた場合の、カレクシチンにおける効果を示す。図は、2TE+3日間、4時間のブリオスタチン曝露の後のアニソマイシンが、カレクシチン免疫染色を低下させなかったことを示す。
【図12】図12は、細胞質ゾル画分におけるヒストンリン酸化により測定した場合の、繰り返される4時間のブリオスタチン曝露のPKC活性における影響を示す。図は、2日連続のブリオスタチン曝露により、対照またはベースラインレベルを有意に超えるPKC活性を生じることを示す。
【図13】図13は、膜画分におけるヒストンリン酸化により測定した場合の、繰り返される4時間のブリオスタチン曝露のPKC活性化における影響を示す。図は、2日連続のブリオスタチン曝露により、対照またはベースラインレベルを有意に超えるPKC活性を生じることを示す。
【図14】図14は、PKC活性におけるアニソマイシンの効果を示す。図は、3日連続のブリオスタチン曝露のそれぞれの間にアニソマイシンが存在する場合、細胞質ゾルおよび膜の画分の両方においてPKC活性を低下させたことを示す。
【図15】図15は、海馬ニューロンにおける膜結合性PKCに対するブリオスタチンの影響を示す。図は、培養された海馬ニューロンを単一の活性化量のブリオスタチン(0.28nM)に30分間曝露することにより、PKCの細胞質ゾルから粒子画分への短時間の転位(約60%)が生じ、続いて持続性の下方制御を生じたことを示す。1回目の曝露から4時間以内の2回目の曝露は、単回のブリオスタチン曝露の4時間後に見られた下方制御を有意に減弱した。
【図16】図16は、PKC活性における繰り返しのブリオスタチン曝露の効果を示す。図は、2〜4時間遅らせた後で2回目の曝露を行うことにより、単回の30分間のブリオスタチン曝露により生じた有意な下方制御が除去され、2回目の曝露が1回目から4時間後以内に行われた場合、活性は、2回目の曝露が2時間後以内に与えられた場合と比較して有意に高い程度までベースラインを超えて増大したことを示す。
【図17】図17は、タンパク質合成におけるブリオスタチンの効果を示す。ラットIGF-IR細胞は、0.28nMブリオスタチンと共に30分間インキュベートされ、インキュベーション時間は1〜79時間の範囲であった。[35S]メチオニン(9.1μCi)をその後培地に加え、放射標識の分析を行った。0.28nMブリオスタチンへの単回の30分の曝露は、ニューロンを回収する30分前に[35S]メチオニンを組み入れることにより測定した場合、24時間以内に20%全体的なタンパク質合成が増大し、ブリオスタチン曝露後79時間以内に60%増大したが、PKC阻害剤であるRo-32-0432の存在下においては増大が有意に少なかった。
【優先権】
【0001】
本願は、2005年7月29日に出願された米国特許仮出願番号60/703,501および2005年10月21日に出願された米国特許仮出願番号60/728,753について優先権を主張する。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、記憶の増強に対して有用であるプロテインキナーゼCを上方制御および下方制御する方法および細胞増殖性の疾患の治療に関する。
【発明の背景】
【0003】
認知に影響を及ぼす種々の障害および疾患が存在する。認知は、一般的に、少なくとも3つの異なる要素:注意、学習、および記憶を含むと述べられている。これらの各要素およびそれぞれのレベルは、患者の認知能力の全体的なレベルに影響を与える。例えば、アルツハイマー病の患者は、認知の全体的な喪失およびこれら特性のそれぞれの低下に苦しむが、前記疾患に最もよく付随するのは記憶の喪失である。他の疾患において、患者は、認知の異なる特性により優位に付随する認知障害に苦しむ。例えば、注意欠陥過活動障害(ADHD)は、注意の状態を維持する個人的な能力に焦点を合わせる。他の状態には、他の神経学的な疾患、老化、ならびに癌治療、脳卒中/虚血、および精神遅滞のような精神的な能力に有害な影響を引き起こし得る状態の治療に付随する一般的な痴呆が含まれる。
【0004】
長期記憶に対するタンパク質合成の必要性については、数十年間に渡って種々の記憶のパラダイムが示されてきた。Agranoff et al. (1967) Science 158: 1600-1601; Bergold et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87:3788-3791; Cavallaro et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. 99: 13279-16284; Crow et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87: 4490-4494; Crow et al. (1999) J. Neurophysiol. 82: 495-500; Epstein et al. (2003) Neurobiol. Learn. Mem. 79: 127-131; Ezzeddine et al. (2003) J. Neurosci. 23: 9585-9594; Farley et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. 88: 2016-2020; Flexner et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 55: 369-374; Hyden et al. (1970) Proc. Natl. Acad. Sci. 65: 898-904; Nelson et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87: 269-273; Quattrone et al. (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. 98: 11668-11673; Zhao et al. (1999) J. Biol. Chem. 274: 34893-34902; Zhao et al. (2000) FASEB J. 14: 290-300。Flexnerは、トレーニングパラダイムに従った重要な時間間隔の間にタンパク質合成の薬剤誘発性の阻害が起こった場合(例えば、5-プロピルウラシルまたはアニソマイシン)、この阻害が長期記憶を遮断することを初めに示した。Flexner et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 55: 369-374。この重要な時間窓の前
またはこの窓の後の任意の時間にタンパク質合成が阻害された場合は、長期記憶における影響はない。記憶固定に不可欠なタンパク質の同一性、その調節のメカニズム、および長期記憶の固定におけるその役割は、謎のままである。
【0005】
多くの種において、長期連合記憶の形成は、プロテインキナーゼC(PKC)アイソザイムの神経細胞膜への転位およびそれによる活性化に依存することが示されている。カルシウムとジアシルグリセロールのようなコファクターの組み合わせにより活性化された場合、最初に、前記PKCアイソザイムは外部神経膜および小胞体のような内部オルガネラの膜の内側側面との安定な会合を達成する。PKC活性化は、軟体動物ウミウシの単一同定(single identified)B細胞において起こることが示されており(McPhie et al. (1993) J. Neurochem. 60: 646-651)、パブロフの条件付けに基づく種々の哺乳動物連合性の連合学習プロトコルには、ウサギ瞬膜条件付け(Bank et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 1988-1992; Olds et al. (1989) Science 245: 866-869)、ラット空間迷路学習(Olds et al. (1990) J. Neurosci. 10: 3707-3713)、およびラット嗅覚識別学習が含まれる。さらに、単一同定B細胞において、パブロフの条件づけに依存した様式で、カレクシチン(calexcitin)(Nelson et al. (1990) Science 247: 1479-1483)、すなわちPKCのαアイソザイムの高親和性の基質の量およびリン酸化が増加した(Kuzirian et al. (2001) J. Neurocytol. 30: 993-1008)。
【0006】
個々のPKCアイソザイムが異なる、時には逆の役割を生物学的過程において果たすという証拠が増加しており、薬理学的利用に対する2つの方向付けを提供する。1つは、PKCの特異的な(好ましくは、アイソザイム特異的な)阻害剤の設計である。このアプローチは、触媒的なドメインが主にPKCのアイソタイプ特異性の原因でないという事実により、複雑になる。他方のアプローチは、アイソザイム選択性の、調節性の部位特異的なPKC活性化因子を開発することである。これらは、逆の生物学的効果を有する他のシグナル伝達経路の効果を無効にする方法を提供し得る。あるいは、急性の活性化の後にPKCの下方制御を引き起こすことにより、PKC活性化因子は長期の拮抗作用を引き起こし得る。
【0007】
連合記憶プロトコルによると、特定の脳の領域におけるPKCと膜画分との会合の増大は何日も持続し得る(Olds et al. (1989) Science 245: 866-869)。これらの知見と一致して、潜在的なPKC活性化因子であるブリオスタチンの投与は、ラットの空間迷路学習を増強した(Sun et al. (2005) Eur. J. Pharmacol. 512: 45-51)。さらに、PKC活性化因子であるブリオスタチンを用いた臨床試験は、PKC活性化効果が薬物送達の間欠性のスケジュールにより増強され得ることを示した(Marshall et al. (2002) Cancer Biology & Therapy 1: 409-416)。PKC活性化因子の1つであるブリオスタチン、マクロライドラクトンは、nM以下の濃度でPKCを活性化する(Talk et al. (1999) Neurobiol. Learn. Mem. 72: 95-117)。ホルボールエステルおよび内因性の活性化因子DAGのように、ブリオスタチンはPKC内のClドメインに結合し、膜への転位を引き起こし、その後下方制御を引き起こす。
【0008】
非腫瘍形成性のPKC活性化因子であるブリオスタチンは、最初のPKC活性化を引き起こし、その後長期に下方制御することが既知の用量で(25μg/m2-120μg/m2)、癌の治療のために、ヒトにおいて大規模に試験された(Prevostel et al. (2000) Journal of Cell Science 113: 2575-2584; Lu et al. (1998) Mol. Biol. Cell 18: 839-845; Leontieva et al. (2004) J. Biol. Chem. 279:5788-5801)。PKCのブリオスタチン活性化は、最近、アミロイド前駆タンパク質(APP)を切断し、非毒性断片可溶性前駆タンパク質(sAPP)をヒト繊維芽細胞から産生するα-セクレターゼを活性化することが示されている(Etcheberrigaray et al. (2004) Proc. Natl. Acad. Sci. 101: 11141-11146)。ブリオスタチンは、ラット空間迷路課題(Sun et al. (2005) Eur. J. Pharmacol. 512: 45-51)、ウサギ瞬膜パラダイム(Schreurs and Alkon, unpublished)、および前に報告したウミウシ条件付け(Scioletti et al. (2004) Biol. Bull. 207: 159)の学習および記憶保持も増強する。従って、PKCの最適な活性化は、正常および罹患した状態における認知に影響を与える多くの分子メカニズムにとって重要である。
【0009】
PKCの上方制御は下方制御なしで達成することは難しく、逆もまた同じであるため、下方制御を最小にしながら上方制御する方法は、PKC活性化に付随して観察される認知の利点を増強する必要がある。本発明の方法および組成物は、これらの必要性を満たし、アルツハイマー病および他の神経変性疾患に対する臨床的な治療を大いに改善し、ならびに改善した認知の増強を予防的に提供する。前記方法および組成物は、α-セクレターゼの修飾を通して、認知の状態の治療および/または増強も提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、長期記憶を固定するのに十分なタンパク質の合成を刺激するために十分な様式で、PKC活性化因子をプロテインキナーゼCと接触させる方法に関する。
【0011】
1つの実施形態において、前記PKC活性化因子は大環状ラクトンである。1つの実施形態において、前記PKC活性化因子はベンゾラクタムである。1つの実施形態において、前記PKC活性化因子はピロリジノンである。好ましい実施形態において、前記大環状ラクトンはブリオスタチンである。さらに好ましい実施形態において、前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、または-18である。最も好ましい実施形態において、前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1である。
【0012】
1つの実施形態において、前記大環状ラクトンはネリスタチンである。好ましい実施形態において、前記ネリスタチンはネリスタチン-1である。
【0013】
1つの実施形態において、前記接触はPKCを活性化する。1つの実施形態において、前記接触はPKCの量を増大する。1つの実施形態において、前記接触はPKCの合成を増大させる。1つの実施形態において、前記接触はカレクシチンの量を増大する。1つの実施形態において、前記接触は結果としてPKCの引き続く調節解除を実質的に生じない。
【0014】
1つの実施形態において、前記接触は繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は規則的な間隔で繰り返される。もう1つの実施形態において、前記間隔は、1週間〜1ヶ月、1日〜1週間、または1時間未満〜24時間である。もう1つの実施形態において、前記間隔は1週間〜1ヶ月である。もう1つの実施形態において、前記間隔は1日〜1週間である。もう1つの実施形態において、前記間隔は1時間未満〜24時間である。
【0015】
1つの実施形態において、前記接触は固定された期間維持される。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は24時間未満である。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は12時間未満である。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は6時間未満である。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は4時間未満である。もう1つの実施形態において、前記固定された期間は2時間未満である。好ましい実施形態において、前記固定された期間は約1〜12時間である。さらに好ましい実施形態において、前記固定された期間は約2〜6時間である。最も好ましい実施形態において、前記固定された期間は約4時間である。
【0016】
1つの実施形態において、前記接触は1日より長い期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1日〜1ヶ月の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1日〜1週間の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1週間〜1ヶ月の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1ヶ月〜6ヶ月の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1ヶ月の期間繰り返される。もう1つの実施形態において、前記接触は1ヶ月より長い期間繰り返される。
【0017】
本発明は、PKCを下方制御するのに十分な様式で、PKC活性化因子をプロテインキナーゼCと接触させる方法に関する。
【0018】
1つの実施形態において、前記PKC活性化因子は大環状ラクトンである。1つの実施形態において、前記PKC活性化因子はベンゾラクタムである。1つの実施形態において、前記PKC活性化因子はピロリジノンである。好ましい実施形態において、前記大環状ラクトンはブリオスタチンである。より好ましい実施形態において、前記ブリオスタチンは、ブリオスタチン-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、または-18である。最も好ましい実施形態において、前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1である。
【0019】
1つの実施形態において、前記大環状ラクトンはネリスタチンである。好ましい実施形態において、前記ネリスタチンはネリスタチン-1である。
【0020】
1つの実施形態において、前記接触はPKCの合成を刺激しない。もう1つの実施形態において、前記接触はPKCの合成を実質的に刺激しない。もう1つの実施形態において、前記接触はPKCの量を減少させる。もう1つの実施形態において、前記接触はPKCの量を実質的に減少させる。もう1つの実施形態において、前記接触はカレクシチンの合成を刺激しない。
【0021】
1つの実施形態において、前記接触は持続した期間行われる。1つの実施形態において、前記持続した期間は1時間未満〜24時間である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1日〜1週間である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1週間〜1ヶ月である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1時間未満〜12時間である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1時間未満〜8時間である。もう1つの実施形態において、前記持続した期間は1時間未満〜4時間である。好ましい実施形態において、前記持続した期間は約4時間である。
【0022】
1つの実施形態において、前記接触によりPKCの持続した下方制御を生じる。
【0023】
本発明は、長期記憶を固定するのに十分なタンパク質の合成を刺激するのに十分な様式で、PKC活性化因子をプロテインキナーゼCと接触させる方法であって、さらにPKCの分解を阻害する工程を含んでなる方法に関する。
【0024】
1つの実施形態において、前記分解はユビキチン結合を介する。もう1つの実施形態において、前記分解はラクタシステインにより阻害される。もう1つの実施形態において、PKCはヒトのものである。
【0025】
本発明は、長期記憶を固定するのに十分なタンパク質の合成を刺激するのに十分な様式で、PKC活性化因子をプロテインキナーゼCと接触させる方法に関し、前記PKC活性化因子は、PKC活性化因子および薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物の形態で提供される。
【0026】
1つの実施形態において、前記医薬組成物はさらにPKC阻害剤を含んでなる。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、末梢組織においてPKCを阻害する化合物である。ここで使用される場合、「末梢組織」は脳以外の組織を意味する。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、末梢組織においてPKCを優先的に阻害する化合物である。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、PKC活性化因子を必要とする患者への投与に伴う筋肉痛を減少させる化合物である。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、PKC活性化因子を用いて治療される患者において生じる筋肉痛を減少させる化合物である。もう1つの実施形態において、前記PKC阻害剤は、PKC活性化因子の耐容量を増大させる化合物である。特に、PKC阻害剤には、例えば、限定するものではないが、ビタミンE、ビタミンE類似体、およびそれらの塩; カルフォスチンC; チアゾリジンジオン; ルボキシスタウリン(ruboxistaurin)、およびそれらの組み合わせが含まれる。ここで使用される場合、「ビタミンE」は、α-トコフェロール(5, 7, 8-トリメチルトコール); β-トコフェロール(5, 8-ジメチルトコール); δ-トコフェロール(8-メチルトコール(methyltocal)); およびγ-トコフェロール(7,8-ジメチルトコール)、ならびにそれらの塩および類似体を意味する。
【発明の詳細な説明】
【0027】
1.定義
ここで使用される場合、「上方制御する」または「上方制御」は、限定するものではないが、増大した転写、翻訳、および/または転写産物もしくはタンパク質産物の増大した安定性を含むいずれかのメカニズムを通して、PKCタンパク質または転写物のような薬剤の量または活性をベースラインの状態と比較して増大させることを意味する。
【0028】
ここで使用される場合、「下方制御する」または「下方制御」は、限定するものではないが、減少した転写、翻訳、および/または転写産物もしくはタンパク質産物の減少した安定性を含むいずれかのメカニズムを通して、PKCタンパク質または転写物のような薬剤の量または活性をベースラインの状態と比較して減少させることを意味する。
【0029】
ここで使用される場合、「薬学的に許容可能なキャリア」という用語は、化学的組成物、化合物、または活性成分が混合されてよい溶媒を意味し、混合後に患者に活性成分を投与するために使用されてよい。ここで使用される場合、「薬学的に許容可能なキャリア」には、限定するものではないが、以下に示す1以上が含まれる:賦形剤; 界面活性剤; 分散剤; 不活性な希釈剤; 顆粒化剤および崩壊剤; 結合剤; 滑沢剤; 保存剤; ゼラチンのように生理学的に分解可能な組成物; 水性媒体および溶媒; 油性媒体および溶媒; 懸濁剤; 分散もしくは湿潤剤; 乳化剤、粘滑剤;緩衝剤; 塩; 増粘剤; 充填剤; 酸化防止剤; 安定化剤; ならびに薬学的に許容可能な高分子または疎水性の物質および当該分野で既知の他の成分(例えば、Genaro, ed. (1985) Remington's Pharmaceutical Sciences Mack Publishing Co., Easton, Pa., に記載されており、本明細書の一部として援用される)。
【0030】
ここで述べられている医薬組成物の剤形は、薬理学の分野で既知または今後開発されるいずれかの方法により調製されてよい。一般的に、そのような調製方法には、キャリアまたは1以上の他の付属の成分に付随して活性成分を取り入れるステップが含まれ、その後、必要な場合または望ましい場合、生成物を望ましい単一用量単位または複数用量単位に形成または包装する。
【0031】
ここで提供される医薬組成物の記述は主にヒトに対する倫理的な投与に適した医薬組成物に向けられているが、そのような組成物は、一般的に、全ての種類の動物に対する投与に適しているということは当業者により理解されるであろう。種々の動物に対する投与に適した組成物を与えるために、ヒトに対する投与に適した医薬組成物を修飾することはよく理解されており、通常の獣医学の薬理学者は単に普通の実験によりそのような修飾を設計し、行うことができる。本発明の医薬組成物の投与が意図される対象には、限定するものではないが、ヒトおよび他の霊長類、および他の哺乳動物が含まれる。
【0032】
2.アルツハイマー病
アルツハイマー病は、最も一般的な症状である記憶喪失を伴う脳内における特定の神経細胞の亜集団の広範な損失と付随している。(Katzman (1986) New England Journal of Medicine 314: 964)。アルツハイマー病は、神経病理学的な変化に関してよく特徴付けられる。しかしながら、異常は末梢組織において報告されており、アルツハイマー病は、最も顕著である中枢神経系の病態を伴う系統的な障害である可能性を支持している。(Connolly (1998) Review, TiPS Col. 19: 171-77)。アルツハイマー病の議論については、遺伝子起源およびクロモソーム1、14、および21に関連する(St. George-Hyslop et al. (1987) Science 235: 885; Tanzi et al. Review, Neurobiology of Disease 3:159-168; Hardy (1996) Acta Neurol Scand: Supplement 165: 13-17を参照されたい)。
【0033】
アルツハイマー病を有する個人は、進行性の記憶障害、言語および視空間の能力の損失、ならびに行動の不足により特徴付けられる(McKhann et al. (1986) Neurology 34: 939-944)。アルツハイマー病を有する個人の認知障害は、大脳皮質、海馬、前脳基底核、および他の脳の領域に位置する神経細胞の変性の結果である。内視鏡で得られるアルツハイマー病の脳の組織学的分析は、変性しているニューロンの神経細胞体および軸索における神経原繊維変化(NFT)、細胞外神経突起(老年性)プラーク、ならびに影響された脳の領域の血管の中および周囲のアミロイドプラークの存在を示した。神経原繊維変化は、らせん状の様式で対になった繊維(直径約10nm)を含有する異常な糸状構造であり、それ故、対のらせん状フィラメントとも呼ばれる。神経突起のプラークは、変性している神経末端(軸索と樹状突起の両方)に位置し、アミロイドタンパク質繊維のコア化合物を含有する。要約すると、アルツハイマー病は、主に細胞骨格タンパク質で構成される細胞内神経原繊維変化、ならびに細胞外実質および脳血管アミロイドを含むある一定の神経病理学的な特徴により特徴付けられる。さらに、アルツハイマー病の患者、正常な老人、およびパーキンソン病、ハンチントン舞踏病、ウェルニッケ-コルサコフ、または精神分裂病、さらに例えば米国特許第5,580,748号および米国特許第6,080,582号に記載されているような他の神経変性疾患に罹患している人々を区別する方法が現在当該分野には存在する。
【0034】
ニューロンの損失を導く細胞の変化および根底にある疾患の原因が治験において残っているが、APP代謝の重要性はよく確立されている。アルツハイマー病を有する患者の脳において、脳の生理学または病態生理学における役割を果たすことが最も確実に確認される2つのタンパク質はβ-アミロイドおよびタウである。(See Selkoe (2001) Physiological Reviews. 81:2)。β-アミロイドタンパク質代謝における欠損および異常なカルシウムホメオスタシスおよび/またはカルシウム活性化キナーゼについての議論。(Etcheberrigaray et al. Alzheimer’s Reports Vol. Nos. 3, 5 & 6 pp 305-312; Webb et al. (2000) British Journal of Pharmacology 130: 1433-52)。
【0035】
アルツハイマー病(AD)は、変化したタンパク質異化により特徴付けられる脳障害である。変化したタンパク質リン酸化は、アルツハイマー病において見られる細胞内の神経原繊維変化の形成に結び付けられる。アミロイド前駆タンパク質(APP)の加工は、後に凝集し、老年性またはADプラークとして既知のアルツハイマー病に特有のアミロイド沈着物を形成する断片の産生を決定する。アルツハイマー病の病態の中心的な特徴は、プラーク内におけるアミロイドタンパク質の沈着である。それ故、APP加工は、ADにおいて初期の且つ鍵となる病態生理学的なイベントである。
【0036】
3つの代替のAPP加工経路が同定されている。前に名付けた「正常な」加工には、Aβ配列内においてAPPを残基Lys16(またはLys16とLeu17との間;APP770命名法)で切断する酵素の関与が含まれ、結果として非アミロイド形成的な断片、大きなN末端外部ドメイン、および小さな9kDaの膜結合断片を生じる。この酵素は、まだ完全には同定されていないが、α-セクレターゼとして既知である。2つの付加的なセクレターゼは、APP加工に関与する。1つの代替の経路は、Aβドメインの外、Met671とAsp672との間におけるAPPの切断(β-セクレターゼによる)およびエンドソーム-リソソーム(lysomal)系の関与を含む。付加的な切断部位は、Aβペプチドのアミノ酸39の後、血漿膜内において、Aβ部分のカルボキシル末端で生じる。セクレターゼ(γ)作用は、全体のAβ配列および細胞に付随する6kDa以下の断片を含有する細胞外アミノ酸末端を産生する。それ故、完全なAβ配列を含有するため、βおよびγセクレターゼによる加工は、潜在的なアミロイド形成的断片を産生する。いくつかのラインの証拠は、全ての代替の経路が与えられた系において生じ、可溶性のAβが「正常な生成物」であってよいことを示す。しかしながら、CSFおよび血漿中における循環Aβの量は、「スウェーデン」突然変異を有する患者において増加するという証拠もある。さらに、前記突然変異またはAPP717突然変異がトランスフェクトされた培養細胞は、より多い量のAβを分泌する。さらに最近では、他のAPP突然変異ならびにPS1およびPS2突然変異のキャリアは、増大した量の特定の形態である長い(42〜43アミノ酸)Aβを分泌することが示されている。
【0037】
それ故、全ての代替経路が正常に生じ得るにもかかわらず、アミロイド形成的な加工に有利である不均衡が家族性およびおそらく散発性のADにおいて生じる。これらの増強されたアミロイド形成的な経路は、究極的に、AD患者の脳においてフィブリルおよびプラークを導く。それ故、非アミロイド形成的なα-セクレターゼ経路を支持するための発明は、APP加工のバランスを、潜在的に毒性のAβペプチドと比較してsAPPの相対的な量が増加するおそらく非病原性の工程の方へ効率的にシフトさせる。
【0038】
PKCアイソザイムは、生化学的、生物物理学的、および行動的な効果の特有な関係が示され、認知能力を改善するために患者に適用されることを通して、重要、特異的、且つ律速の分子標的を提供する。
【0039】
さらに、正常および異常な記憶に関して、K+チャネルおよびCa+チャネルの両方が記憶の保存および想起において鍵となる役割を果たすことが示されている。例えば、カリウムチャネルは、記憶の保存の間に変化することが見出されている。(Etcheberrigaray et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. 89: 7184; Sanchez-Andres et al. (1991) Journal of Neurobiology 65: 796; Collin et al. (1988) Biophysics Journal 55: 955; Alkon et al. (1985) Behavioral and Neural Biology 44: 278; Alkon (1984) Science 226: 1037)。この知見は、アルツハイマー患者における記憶喪失のほとんどの一般的な症状と組み合わせて、アルツハイマー病の病態の可能性のある部位としてカリウムチャネルの機能および認知におけるPKC修飾の効果の研究を導く。
【0040】
3.プロテインキナーゼCおよびアルツハイマー病
PKCは、非受容体セリン-スレオニンプロテインキナーゼの最も大きな遺伝子ファミリーの1つとして同定された。ニシヅカおよび共同研究者による80年代初めのPKCの発見(Kikkawa et al. (1982) J. Biol. Chem. 257: 13341)およびホルボールエステルの主要な受容体としてのその同定まで(Ashendel et al. (1983) Cancer Res., 43: 4333)、多くの生理的なシグナル伝達メカニズムはこの酵素が原因とされてきた。PKCにおける強い興味は、カルシウムおよびジアシルグリセロール(およびそのホルボールエステルミメティック)によりインビトロで活性化されるその特有の能力に由来し、その構造がリン脂質と結合しているエフェクターは、成長因子および分化因子の作用により代謝回転する。
【0041】
PKC遺伝子ファミリーは、現在11遺伝子からなり、4つの亜群に分けられる:1)古典的なPKCα、β1、β2(β1およびβ2は同じ遺伝子の二者択一にスプライスされた形態である)およびγ、2)新規のPKCδ、ε、ηおよびθ、3)非定型のPKCζ、λ、ηおよびι、ならびに4)PKCμ。PKCμは新規のPKCアイソフォームに似ているが、推定上の膜貫通ドメインを有する点において異なる(Blohe et al. (1994) Cancer Metast. Rev. 13: 411; Ilug et al. (1993) Biochem J. 291: 329; Kikkawa et al. (1989) Ann. Rev. Biochem. 58: 31に概説されている)。α、β1、β2およびγアイソフォームは、Ca2、リン脂質およびジアシルグリセロール依存であり、PKCの古典的なアイソフォームを意味する一方、他のアイソフォームはリン脂質およびジアシルグリセロールにより活性化されるが、Ca2には依存しない。全てのアイソフォームは5の可変領域(V1-V5)を含み、α、β、γアイソフォームは、高度に保存された4の構造的なドメイン(C1-C4)を含む。PKCα、β、およびγを除く全てのアイソフォームはC2ドメインを欠いており、λ、ηアイソフォームは、ジアシルグリセロールが結合するC1において9の2システインに富んだZnフィンガードメインも欠いている。C1ドメインは、全てのアイソフォームの中で高度に保存されている偽基質を含有し、基質-結合部位をブロックすることにより自動制御機能を果たし、酵素の不活性な高次構造を作り出す(House et al., (1987) Science 238: 1726)。
【0042】
これらの構造的な特徴のため、種々のPKCアイソフォームは、生理的刺激に応答したシグナル伝達(Nishizuka (1989) Cancer 10: 1892)、ならびに新生物の形質転換および分化において高度に特定化された役割を有すると思われる(Glazer (1994) Protein Kinase C. J.F. Kuo, ed., Oxford U. Press (1994) at pages 171-198)。既知のPKC修飾因子の議論については、PCT/US97/08141、米国特許第5,652,232号; 第6,043,270号; 第6,080,784号; 第5,891,906号; 第5,962,498号; 第5,955,501号; 第5,891,870号、および第5,962,504号を参照されたい。
【0043】
PKCがシグナル伝達において果たす中心的な役割の点から、PKCは、APP加工の修飾に対する刺激性の標的であることが示されている。PKCがAPP加工においてある一定の役割を果たすことはよく確立されている。例えば、ホルボールエステルは、PKC活性化を通して分泌される非アミロイド形成的な可溶性のAPP(sAPP)の相対的な量を有意に増大させることが示されている。しかしながら、ホルボールエステルによるPKCの活性化は、結果としてAPP分子の直接的なリン酸化を生じるようには見えない。作用の正確な部位に関係なく、ホルボール誘発性のPKC活性化は、増強され、または好ましいα-セクレターゼの非アミロイド形成的な経路を結果として生じる。それ故、PKC活性化は、有害でないsAPPの産生に影響を与え、有益なsAPPを産生し、同時にAβペプチドの相対的な量を減少させるための魅力的なアプローチである。しかしながら、ホルボールエステルは、その腫瘍促進活性により、最終的な薬剤開発に対して適切な化合物ではない。(Ibarreta et al. (1999) NeuroReport Vol. 10, No. 5&6, pp 1034-40)。
【0044】
本発明者は、プロテインキナーゼCの活性化がアルツハイマー病(AD)アミロイド前駆タンパク質(APP)のα-セクレターゼ加工を支持し、結果として非アミロイド形成的な可溶性APP(sAPP)を生じることも観察した。結果として、アミロイド形成的なA1-40およびA1-42(3)の相対的な分泌が減少する。APPおよびプレセニリンAD突然変異を発現する線維芽細胞および他の細胞は増大した量の全Aβおよび/または増大した割合のA1-42(3)/A1-40を分泌するため、特に関連する。興味深いことに、PKCの欠損はAD脳(αおよびβアイソフォーム)ならびにAD患者からの線維芽細胞(α-アイソフォーム)において見出されている。
【0045】
研究は、α、βおよびγアイソフォームに対して改善された選択性を有する他のPKC活性化因子(すなわちベンゾラクタム)が基礎レベルを超えてsAPP分泌を増強することを示した。ベンゾラクタム処理したAD細胞におけるsAPP分泌は、対照のベンゾラクタム処理した線維芽細胞と比較してわずかに高く、10μM BLで処理した後にsAPP分泌の有意な増大を示したのみである。スタウロスポリン(PKC阻害剤)は対照とAD線維芽細胞の両方においてベンゾラクタムの効果を除去するが、関連する化合物はPC12細胞において3倍以下のsAPP分泌を引き起こすことも報告された。本発明者は、非腫瘍促進であるため、非アミロイド形成的なAPP加工を支持するためにPKC活性化因子としてブリオスタチンを使用することは、特に治療的に価値があることを見出し、既にステージII臨床試験である。
【0046】
PKCにおける変化、同様にカルシウム制御およびカリウム(K+)チャネルにおける変化には、アルツハイマー病(AD)患者における線維芽細胞の変化が含まれる。PKC活性化は、TEA誘発性の[Ca2+]上昇により測定した場合、正常なK+チャネル機能を保存していることが示された。さらに、パッチクランプデータは、113psK+チャネル活性の回復におけるPKC活性化因子の影響を実証する。それ故、PKC活性化因子に基づくK+チャネルの回復は、AD病態生理学の研究に対するアプローチとして確立されており、AD治療に対する有用なモデルを提供する(その全体が本明細書中に援用される、出願中の米国特許出願第09/652,656号を参照されたい)。
【0047】
特に興味深いのは、PKCを刺激するように作用する大環状ラクトン(すなわち、ブリオスタチン類およびネリスタチン類)である。ブリオスタチン類の化合物であるブリオスタチン-1は、PKCを活性化することが示されており、腫瘍促進活性を欠くことが証明されている。ブリオスタチン-1の用量反応曲線は二相性のため、ブリオスタチン-1は、PKC活性化因子として特に有用である。加えて、ブリオスタチン-1は、PKCα、PKCδ、およびPKCεを含むPKCアイソザイムの特異な制御を示す。ブリオスタチン-1は、動物およびヒトにおいて毒性および安全性の試験を受け、抗癌剤として積極的に検討されている。研究におけるブリオスタチン-1の使用は、ヒトにおける主要な有害反応が筋肉痛であることを決定し、最大用量を40 mg/m2に制限した。本発明は、sAPP分泌の劇的な増大を引き起こすために、0.1nMのブリオスタチンの濃度で利用される。ブリオスタチン-1は、溶媒単独および他のPKC活性化因子であるベンゾラクタム(BL)を10,000倍濃度で使用したものと比較した。ブリオスタチンは、現在、抗癌剤として臨床試験中である。ブリオスタチンは、PKCの調節性のドメインに結合することおよび酵素を活性化することが既知である。ブリオスタチンは、PKCのアイソザイム選択性活性化因子の例である。ブリオスタチンを加えた化合物は、PKCを修飾することが見出されている(その全体が本明細書の一部として援用されるWO 97/43268を参照されたい)。
【0048】
大環状ラクトンおよび特にブリオスタチン-1は、米国特許第4,560,774号に記載されている(その全体が本明細書の一部として援用される)。大環状ラクトンおよびその誘導体は、他に、例えば、米国特許第6,187,568号、米国特許第6,043,270号、米国特許第5,393,897号、米国特許第5,072,004号、米国特許第5,196,447号、米国特許第4,833,257号、および米国特許第4,611,066号に記載されている(それぞれ全体が本明細書の一部として援用される)。上述した特許は、抗炎症剤または抗腫瘍剤としての使用を含む、大環状ラクトンについての種々の化合物および種々の使用について記載されている。ブリオスタチン類化合物についての他の議論は、Szallasi et al. (1994) Differential Regulation of Protein Kinase C Isozymes by Bryostatin 1 and Phorbol 12-Myristate 13-Acetate in NIH 3T3 Fibroblasts, Journal of Biological Chemistry 269(3): 2118-24; Zhang et al. (1996) Preclinical Pharmacology of the Natural Product Anticancer Agent Bryostatin 1, an Activator of Protein Kinase C, Cancer Research 56: 802-808; Hennings et al. (1987) Bryostatin 1, an activator of protein kinase C, inhibits tumor promotion by phorbol esters in SENCAR mouse skin, Carcinogenesis 8(9): 1343-46; Varterasian et al. (2000) Phase II Trial of Bryostatin 1 in Patients with Relapse Low-Grade Non-Hodgkin’s Lymphoma and Chronic Lymphocytic Leukemia, Clinical Cancer Research 6: 825-28; and Mutter et al. (2000) Review Article: Chemistry and Clinical Biology of the Bryostatins, Bioorganic & Medicinal Chemistry 8: 1841-1860において見られる(それぞれ全体が本明細書の一部として援用される)。
【0049】
筋肉痛は、PKC活性化因子の耐容量を制限する主要な副作用である。例えば、ブリオスタチン-1を使用する第II相臨床試験において、筋肉痛は治療される患者全体の10〜87%において報告された。(Clamp et al. (2002) Anti-Cancer Drugs 13: 673-683)。1週間に1回、20μg/m2の用量で3週間投与した場合、耐容性がよく、筋肉痛または他の副作用が付随しなかった。(Weitman et al. (1999) Clinical Cancer Research 5: 2344-2348)。もう1つの臨床試験において、25μg/m2のブリオスタチン-1を週に1回8週間投与した場合、最大の耐容量であった。(Jayson et al. (1995) British J. of Cancer 72(2): 461-468)。もう1つの研究は、50μg/m2(2週間に1回の1時間の静脈注入を6週間)が最大耐容量であると報告した。(Prendville et al. (1993) British J. of Cancer 68(2): 418-424)。報告された筋肉痛は、ブリオスタチン-1の繰り返しの治療により、および最初の注入後数日で累積された。Id。患者の生活の質における筋肉痛の有害な効果は、ブリオスタチン-1治療の中断の一因であった。Id。ブリオスタチン誘発性の筋肉痛の原因は、不明である。Id。
【0050】
国立がん研究所は、筋肉痛の分類に対する共通の毒性基準を確立した。特に、前記基準は、5つのカテゴリーまたはグレードに分けられる。グレード0は、筋肉痛なしである。グレード1の筋肉痛は、鎮痛薬を必要としない、軽い、短時間の痛みにより特徴付けられる。グレード1の筋肉痛において、患者は完全に歩行できる。グレード2の筋肉痛は、痛みまたは必要とされる鎮痛薬がいくつかの機能を妨げるが、日常生活における活動を妨げない、中程度の痛みにより特徴付けられる。グレード3の筋肉痛は、痛みまたは必要な鎮痛薬が日常生活における活動をひどく妨げる、激しい痛みを伴う。グレード4の筋肉痛は、手足の自由をきかなくする。
【0051】
本発明の組成物は、患者に投与されるPKC活性化因子の耐容量を増大させ、および/または末梢組織においてPKCの活性化を減弱することにより、PKC活性化に付随する副作用を改善する。特に、PKC阻害剤は、末梢組織においてPKCを阻害するか、または、末梢組織においてPKCを優先的に阻害する。例えば、ビタミンEは、糖尿病のラットの大動脈および上昇したグルコースレベルにさらされた培養されたラット平滑筋において、ジアシルグリセロール-プロテインキナーゼC活性化を正常化することを示した。(Kunisaki et al. (1994) Diabetes 43(11): 1372-1377)。中程度に進行したアルツハイマー病に罹患している患者におけるビタミンE(2000 IU/日)治療の二重盲検において、ビタミンE治療は死亡率および罹患率を低下させるが、認知能力を増強しないことが見出された。(Burke et al. (1999) Post Graduate Medicine 106(5): 85-96)。
【0052】
ブリオスタチン類を含む大環状ラクトンは、本来、フサコケムシ(Bigula neritina L)に由来する。大環状ラクトン、特にブリオスタチン類についての複数の使用が既知であるが、大環状ラクトンと認識力増強との間の関係は、これまで未知であった。
【0053】
本発明において使用され得る化合物の例には、大環状ラクトン(すなわち、ブリオスタチン類およびネリスタチン類の化合物)が含まれる。これらの化合物の特定の実施形態は実施例および詳細な説明に記載されているが、参考文献に記載されている化合物およびその誘導体も本発明の組成物および方法に対して使用され得ると解されるべきである。
【0054】
当業者により理解可能であるように、大環状ラクトン化合物およびその誘導体、特にブリオスタチン類は組み合わせの合成技術を適用することができ、それ故、前記化合物のライブラリを作ることができ、限定するものではないが、組成物の有効性および安全性が含まれる薬理学的パラメータを最適化することができる。加えて、前記ライブラリは、好ましくは、α-セクレターゼおよび/またはPKCを調節する要素を決定するために分析されてよい。
【0055】
ブリオスタチンの合成類似体も、本発明により意図される。特に、前記類似体は、ブリオスタチンとのNMR分光光学的な比較および種々の程度のPKC結合親和性により決定されるように、C1-、C19-、C26-酸素認識ドメインの胚行性を保持している。米国特許第6,624,189号(全体が本明細書の一部として援用される)に開示され、記載されているブリオスタチン類似体は、本発明の方法において使用されてもよい。特に、米国特許第6,624,189号の式Iの分類(カラム3、第35〜66行)および式II〜VIIの種、ならびに米国特許第6,624,189号の1998aおよび1998b(カラム8、第28〜60行)で述べられているブリオスタチン類似体は、本発明の方法における使用に適したPKC活性化因子である。
【0056】
認知能力または一般的な認識力の特異的な特性を通して、全体的な認知の改善のための治療方法の発達に対する必要性がまだ存在している。特定の病態または認知障害に関係するかどうかに関わらず、認識力の増強を改善するための方法の発達に対する必要性もまだ存在する。本発明の方法および組成物はこれらの必要性を満たし、アルツハイマー病および他の神経変性疾患に対する臨床的な治療を大いに改善し、ならびに改善された認知の増強を提供する。前記方法および組成物は、α-セクレターゼの調節を通して、認知の状態の治療および/または増強も提供する。
【実施例】
【0057】
例1:行動薬理学
ブリオスタチン曝露−実験を開始する前に、ウミウシ(Hermissenda Crassicornis)の検体を、穿孔処理した50mlの円錐形の遠心チューブ内において15℃の人工海水(ASW)中に3日間維持した。海の苔虫類であるフサコケムシ(Bugula neritina)から精製されたブリオスタチンをEtOH中に溶解し、ASW中において最終濃度まで希釈した。動物をASW中のブリオスタチンを用いて4時間インキュベートし、通常のASWを用いてすすいだ。選択された実験のために、ラクタシステイン(10μM)またはアニソマイシンをASWに加えた。
【0058】
ウミウシの行動および生化学におけるブリオスタチンの効果は、各個々の動物を入れた長さ8cm、直径1cmの試験管内における水浴培地(bathing medium)に薬剤を加えることにより作られた。
【0059】
例2:免疫染色法
実験的な処理および試験の後、動物は迅速に断頭され、中枢神経系(CNS)を除去し、それを20 mM Tris緩衝(pH 8)天然海水(NSW; 0.2μm ミクロポアろ過)中の4%パラホルムアルデヒド中に固定した。CNSをその後ポリエステルワックス(20)中に包埋し、分割し(6μm)、アビジン結合ミクロペルオキシダーゼに結合したビオチン標識した二次抗体を用いて免疫染色し(ABC法, ベクター)、アミノエチルカルバゾール(AEC)を色素原として使用した。一次ポリクローナル抗体(設計された25U2)が、イカの視葉から抽出された全長のカレクシチンタンパク質からウサギ中で産生された。グレースケール強度法は、B-光受容体の外接した細胞質領域−同じバックグラウンドの領域(非染色ニューロパイル)におけるデジタル顕微鏡写真から行った。
【0060】
例3:プロテインキナーゼCアッセイ
1 mM EGTA、1 mM PMSF、および50 mM NaFを含有する100μlの10 mM Tris-HCL pH 7.4において、超音波処理(5 sec, 25W)により細胞を均質化した。ホモジネートをポリアロマー遠心チューブに移し、100,000×gで10分間、4℃で遠心分離した。上清を除去し、すぐにドライアイスで凍結した。粒子の画分を100μlの同じ緩衝液中で超音波処理することにより再懸濁し、−80℃で保管した。PKCを測定するために、10μlの細胞質ゾルまたは粒子の画分を、10μM ヒストン、4.89 mM CaCI2、1.2μg/μl ホスファチジル-L-セリン、0.18μg/μl 1.2-ジオクタノイル-sn-グリセロール、10 mM MgCl2、20 mM HEPES(pH 7.4)、0〜8 mM EDTA、4 mM EGTA、4% グリセロール、8μg/ml アプロチニン、8μg/ml ロイペプチン、および2 mM ベンズアミジンの存在下、37℃で15分間インキュベートした。0.5μCi [γ32-P]ATPを加え、32P-リンタンパク質形成は、以前に述べたように(25)、ホスホセルロース上における吸収により測定された。この試験は、ウミウシ神経系ホモジネートまたは培養された哺乳動物ニューロンホモジネートに対するわずかな調整を伴って使用された。
【0061】
例4:細胞培養
ラット海馬のH19-7/IGF-IR細胞(ATCC)をポリ-L-リジンコートしたプレート上に蒔き、約50%の被覆が得られるまで、DMEM/10% FCS中、数日間、35℃で培養した。その後、培地を10 ng/ml 塩基性フィブロブラスト成長因子を含有する5mlのN2倍地で置き換えることにより細胞をニューロンの表現型への分化を誘導し、T-25フラスコ中、39℃で培養した(26)。種々の濃度のブリオスタチン(0.01〜1.0 nM)を10μlの水溶液中に加えた。規定の期間の後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、優しく削ることにより除去し、1000rpmで5分間遠心分離することにより回収した。
【0062】
例5:行動の条件付け
ウミウシのパブロフの条件付けは、中性刺激の繰り返されるペアリング、無条件刺激を伴う光、眼窩の振とうに関与する。(Lederhendler et al. (24)およびEpstein et al. (6)を参照されたい)。回転/振とう刺激は、平衡胞有毛細胞を興奮させ、それ故、無条件の反応を誘発する:足部を支持する表面に対する付着性または「密着性(clinging)」を伴う、足部と呼ばれる筋肉裏側の活発な収縮。条件付けの前に、光は、足部を長くすることを伴う弱い陽性の走光性を誘発する。十分な光回転ペアリングの後、光はもはや走光性を誘発しないが、代わりに新しい反応を誘発する(24):無条件刺激のみにより以前に誘発された「密着性」および足部の短縮化(図1)。それ故、無条件刺激、回転、または眼窩振とうの測定は、条件刺激に移行され、光誘発性の足部の収縮−足部の長さの負の変化により明らかにされる。この光に対する条件反応は、数週間持続し、ランダム化された光および回転によっては生じず、刺激特異性であり、哺乳動物のパブロフの条件付けの他の限定的な特徴を占める。
【0063】
例6:ブリオスタチン誘発性の連合記憶の延長
ウミウシのパブロフの条件付けは、学習した条件反応の進行性により長く続く保持を生じる、よく定義されたトレーニングパラメータを有する。対の光および眼窩振とうの2のトレーニング事象(2TE)(「方法」を参照されたい)は、例えば、薬物治療なしで約7分間持続する学習された条件反応(光誘発性の足部の収縮または短縮化)を引き起こす。4〜6トレーニング事象(4〜6TE)は、数時間持続する条件反応を引き起こすが、トレーニングの約1日後までに消失する。9TEは、何日も持続する長期連合記憶を生じ、しばしば2週間に及ぶ。
【0064】
動物は、トレーニングの前の暗順応の間(10分間)にブリオスタチン(0.25 ng/ml)を加え、4時間残存させ、4-および6-の対のCS/USトレーニング事象(TE)の最適以下の措置により訓練されるか、またはBryoなし(NSW対照)、陽性対照として役立つ9-の対のTEおよびNSWである。全ての動物は、4時間にCS単独で試験され、その後、24時間間隔をおいた。最適以下で訓練されたがブリオスタチンで治療された動物は全て、長期の保持を示した(n = 8-16 動物/条件/実験; ANOVA, p<0.01)。
【0065】
2TE+ブリオスタチンは、数時間続く記憶保持を生じ(対して、ブリオスタチンなしの場合は数分間)、4TE+ブリオスタチンは、24時間を超えて保持を伸ばし(図1)、6TE+ブリオスタチンは1週間以上続く保持を生じた。
【0066】
ブリオスタチンなしの場合(NSW)、ランダム、および対のCS/USトレーニング事象(TE)は、LTMを生じず、または4時間で試験した場合にCRを誘発しなかった。ブリオスタチン(NSW中0.25 ng/ml)を6-TE条件付けの前(10分間の暗順応の間)に適用した場合、その後4時間、陽性CRを生じ(足部の収縮; 長さにおける負の変化)、それ故LTMが確立されたことを示す。(暗順応の間)予めのトレーニングが適用された場合、アンタゴニストRo-32は、6TE+ブリオスタチンの効果をブロックし、すなわち、正常な走光性により動物は伸長した(正の長さ変化)(n=4-8 動物/条件/実験; ANOVA 差, p<0.01)。光および回転のランダム化された提示は、ブリオスタチンがあってもなくても、条件反応、すなわち光誘発性の足部収縮を生じなかった(図2)。それ故、トレーニングの間および直後のブリオスタチンは、最適以下のトレーニング実験で記憶保持を延長した。
【0067】
例7:トレーニングが記憶獲得を増強する前におけるブリオスタチンへの予めの曝露
以前の測定(15,17)は、学習誘発性のPKCの神経細胞膜との会合(すなわち転位)が維持され得ることを示した。ウサギ瞬膜の条件付け、ラット空間迷路学習、迷路学習、およびラット嗅覚識別学習は、トレーニングの後数日間続くPKC転位を伴うことが全て見出された。ウミウシ条件付けは、単一の同定可能なB細胞に局在化し得るPKC転位により、トレーニングの後少なくとも1日は観察された(15)。
【0068】
既に述べたように、トレーニングの間および後の4時間のブリオスタチンへの曝露は、6〜8分から数時間、2TEにより生じる記憶保持を増強する。しかしながら、トレーニングより前の日ならびに2TEの日にブリオスタチンに4時間曝露した場合、トレーニングの後1日よりも長く記憶保持を延長した。2の対のCS/USトレーニング事象と組み合わせた動物の連続する2日の4時間のブリオスタチン曝露(0.25ng/ml)は、CS単独で試験した場合、CR(体長収縮)により示される少なくとも6日の長期保持を生じた(n=16 動物/条件; ANOVA, p<0.01)(図3)。
【0069】
4時間のブリオスタチン曝露(0.25ng/ml)を3日連続で与えられた後、1日後に2TEを与えられた動物は、トレーニング後96時間にわたって測定された長期保持(LTR)を示した。曝露されない動物は(図3と同じ)、いずれの行動的な修飾も示さなかった(CS試験に対するCRなし)。3日間ブリオスタチン治療を受けた動物に対して、トレーニング後アニソマイシン(ANI)(1μg/ml)が即時に投与され、4時間そのままにした場合、長期保持を妨げなかった。それ故、トレーニング後に加えられた場合ANIにより通常妨げられるLTRの生成に必要なタンパク質合成に対する要求は、3日間のブリオスタチン治療により得られた(n=16 動物/条件; ANOVA, p<0.01)。4時間のブリオスタチンへの曝露の3日目、同様に増強されたパブロフの条件付けがされた反応の保持を生じた(図4)。前述の結果は、ブリオスタチンへの2の連続した期間の曝露がPKC活性化およびおそらく長期記憶に対して重要なタンパク質合成を引き起こし、同時または引き続くPKC下方制御の最小化を伴うという見解を支持する。この見解は、より延長された時間、すなわち8〜20時間のブリオスタチン曝露に続く2TE(図5)が、連続する前の日に2回の4時間の曝露を伴う場合と均等な記憶保持を生じるのにそれ自体十分でないという知見によるさらなる支持も与えられた。これらの実験において、トレーニングにおける20時間のブリオスタチン(0.25ng/ml)曝露の効果が観察された。最適以下の2の対のTE条件付けのプログラムにより、保持は48時間以内に消えた。20時間の予めのブリオスタチンへの曝露を伴う4の対のTE条件付けの保持は、持続した(n=8 動物/条件; ANOVA 48時間において, p<0.01)。十分に延長されたブリオスタチン曝露(例えば、8〜12時間)は、他の細胞系において、PKC活性化を停止し、PKC合成を増大させ得る延長されたPKC下方制御を引き起こす。
【0070】
同様に、十分に増大した濃度のブリオスタチンは、おそらくPKC下方制御のため、最終的に記憶保持をブロックした(図6)。ブリオスタチン濃度<0.50ng/mlは、最適以下の(4TE)トレーニング条件で習得および記憶保持を増大する。これらの濃度では、9の対のTEを用いた保持成績において明確な効果がなかった。しかしながら、試験された全てのトレーニング条件において、濃度≧1.0ng/mlは、おそらくPKC下方制御を介して習得および行動性の保持を阻害した(n=16 動物/条件)。
【0071】
例8:トレーニングの間のタンパク質合成に対する要求を不要にするブリオスタチンへの予めの曝露
動物は2の対のトレーニング事象(TE)を受け、4時間後に保持について試験された。ブリオスタチン(0.25ng/ml)は、10分間の予め暗順応の訓練をする期間に、NSW中において動物に適用され、4時間後に、行動性の条件付けの保持を実証した(足部の収縮(CR)および体長の短縮)。NSW対照動物およびトレーニングの前にブリオスタチン、トレーニングの後すぐにアニソマイシン(1.0μg/ml)で処理された動物は、CRを示さず、正常な陽性の走光性において足部の伸長を伴った(n=12 動物/条件/実験, 二方向のANOVA 統計, p<0.01)。2TEと共に単一の4時間のブリオスタチンへの曝露を行うことにより、数時間持続する長期記憶の保持を生じ、アニソマイシンがブリオスタチンと共に存在する場合には、皆無にされた(図7)。同様のアニソマイシンのブロック効果は、6TE+ブリオスタチンにおいても観察される。しかしながら、繰り返されるブリオスタチンへの短時間の曝露は、PKC、カレクシチン、および他の記憶タンパク質の純合成を増大させ、それ故、PKC下方制御が十分に最小化された場合、パブロフの条件付けの間および後で新しい合成に対する要求を排除する。タンパク質合成は、直前の3日それぞれにおいてまず4時間ブリオスタチンに曝された動物の2TEの後すぐに、アニソマイシンを用いて4時間ブロックされた。この場合、タンパク質合成のアニソマイシン誘発性の遮断は、数日間持続した記憶保持を妨げなかった(図4)。対照的に、同じ4時間のアニソマイシン治療は、9TE、通常1〜2週間の記憶保持が後に続くトレーニングプログラムは、全ての記憶保持を排除した(27)。最後に、各回アニソマイシンを伴ってブリオスタチンに3日連続で4時間曝露された1日後に2TEが与えられた場合、長期記憶は除去された。
【0072】
例9:記憶においてブリオスタチン効果を増強するプロテアソーム阻害への予めの曝露
PKCおよび他の記憶関連タンパク質の新規合成を増強および延長するもう1つの方法は、タンパク質分解に関連する遮断経路により提供される。これらの1つは、ユビキチン-プロテアソーム経路(28〜30)であり、PKCのα-アイソザイムの分解に対する主要な経路であることが既知である。PKC-αの分解は、20μM〜50μMのプロテアソーム阻害剤であるラクタシステインによりほとんど妨げられることが以前に示されている。
【0073】
動物をブリオスタチン(0.25 ng/ml)およびラクタシステイン(10μ/M)と共に同時に4時間インキュベートし、その24時間後、2の対のCS/USトレーニング事象(TE)で条件付けした。動物は、トレーニング後4時間でCS単独で試験され、24時間おいた。条件付けられた行動の保持は、組み合わされたブリオスタチン/ラクタシステイン処理により続けられ;行動性の保持は、24時間後、ブリオスタチンのみで処理された動物において喪失した。ラクタシステインのみで処理された動物は、行動性のトレーニングの習得または保持を示さなかった(データはグラフ化していない)。(n=28 動物, 併用されたブリオスタチン/ラクタシステイン; n=20, ブリオスタチン単独; n=16, ラクタシステイン単独)。この場合、ラクタシステインは、単一のブリオスタチン曝露(その後2TE)により生じた短期記憶を数日間継続する長期記憶に転換した(図8)。
【0074】
例10:PKC活性化によるカレクシチン免疫染色
最近、我々は、ウミウシの条件付けの習得および保持の間に、単一の同定されたB細胞内でカレクシチンの免疫染色標識が増大することを示した(20)。多くの従前の知見によると、低分子量カルシウムおよびGTP結合タンパク質、カレクシチンはウミウシの条件付けの間のPKCアイソザイムに対する基質として意味付けられている(19)。カレクシチンは、現在、いくつかの動物種において完全に配列決定されており、他の種における同様のタンパク質とかなり相同性があることが示されており(31)、ウミウシのパブロフの条件付けの間および後でリン酸化の変化を起こす。それは、PKCのα-アイソザイムに対する高親和性の基質でもあり、βおよびγに対する低親和性の基質でもある(19)。
【0075】
顕微鏡写真(A、B)は、カレクシチンポリクローナル抗体である25U2で免疫標識されたウミウシの目に由来する典型的な組織切片を示す。陽性のカレクシチン免疫染色は、予めのブリオスタチンの投与を伴うかまたは伴わない、対のCS/UCS連合の条件付けを経験した動物のB細胞光受容体(*B細胞)において生じた(B)。2つの刺激(トレーニング事象, TE)のランダム提示は、行動性の修飾も正常なバックグラウンドレベルを超えるカレクシチンの上昇も生じず(A);基底膜およびレンズ染色は、脊椎動物ポリクローナル抗体を用いた場合に付随する人為的結果である。染色強度における違いが測定され、グレースケール強度として記録された(0-256; B細胞細胞質−組織バックグラウンド)。グラフ(C)は、9のランダムTEで条件付けられたウミウシ(左の棒)および連続する日にPKCアゴニストであるブリオスタチン(0.25ng/ml)に対して2回曝露され、その後2の対のTEで連合性に条件付けられた動物についての強度測定を示す。2TEと組み合わせたブリオスタチンへの2回の曝露に由来するPKC活性化は、カレクシチンを、9の対のTEに付随するレベルに有意に増加させ、(長期)記憶を固定した(n=4-8 動物/条件/複製; t-検定比較,p<0.01)。
【0076】
カレクシチン免疫染色は、光前庭神経突起のシナプス領域内で膿胞を分析するのに十分感受性がある(D)。矢印は、介在ニューロン(a)、反対側のニューロンに由来する軸索(b)、および推定上の光受容体に由来する神経突起の末端膿胞(c)の間の分枝野を示す。スケールバー=10μm;CPG,脳側神経節(図9、10)。
【0077】
免疫染色抗体はタンパク質のリン酸化形態および非リン酸化形態の両方と反応するため、この条件付け誘発性のカレクシチン標識の増加は、タンパク質の実際の量の増加を意味する。PKCは、同じ個々のB細胞内で転位することが以前に示され、特異的なPKCブロッカーであるRo-32は、B細胞内で学習および学習特異的なカレクシチン増加を妨げるため、カレクシチン標識における条件付け誘発性の増加を見かけ上引き起こした(上記参照)。未処置のおよび/またはランダム化された対照トレーニングプロトコルは、トレーニング誘発性のカレクシチン(CE)免疫染色の小さな画分を生じた(図9)。
【0078】
ブリオスタチンなしのランダムトレーニング(4TE)は、バックグラウンドよりわずかに高い強度測定値を生じた。ブリオスタチン投与は、両方のトレーニングプログラムに対してカレクシチンレベルを増大させた。ランダムトレーニングにおいて、CSおよびUSの時々の重なり(ペアリング)がある場合、CEにおいていくらかの上昇が生じることは予想外ではない(2.0の増加)。しかしながら、対のトレーニングの場合、カレクシチンレベルは4.3倍以上増大した(平均値±SE,N=5 動物/治療)。4RTE=ランダムコントロール、ランダムな光および回転を用いて4回試験; 6PTE=対の試験、対の光および回転を用いて6回試験。6PTE-0Bry vs. 6PTE-0.25Bry: p<0.001; 4RTE-0.25Bry vs. 6PTE-0.25Bry; p<0.001 (t-検定)。最適以下のトレーニング事象(4-6 TE)が使用された場合、CE免疫染色(図10A)は中間レベルの上昇に及んだ。これらの最適以下の措置は、24時間より長く維持される記憶保持を生じるのに不十分であった。上述したように、6TEを用いたトレーニングの間に投与されるブリオスタチンは、長期記憶保持を誘発した(>1週間)。さらに、ブリオスタチン+6TEは、9TEの後で観察された場合に匹敵するCE免疫染色を引き起こした。
【0079】
低い用量のブリオスタチン(0.1〜0.25ng/ml)は、2、4、または6のトレーニング試験の後で記憶を著しく増強した。6TEによるパブロフの条件付けは、ブリオスタチンを用いて何日も維持される記憶を作ったが、ブリオスタチンがない場合は数時間しか維持されなかった。この記憶の増強は、アニソマイシンまたはPKC阻害剤であるRo-32により遮断された。記憶がその後1週間以上持続したにもかかわらず、CE免疫染色は9TEの後24時間で大いに低下したことに注目することが重要である。しかしながら、より持続性のCE免疫染色は、最小のトレーニング(2TE)の直前の数日間繰り返しブリオスタチンを曝露した結果として得られた。
【0080】
ブリオスタチンを単独で(付随する条件付けなし)、1、2、および3日のそれぞれに4時間投与した場合、ブリオスタチン曝露の各期間の24時間後に測定すると、ウミウシのB-光受容体におけるカレクシチンのレベルが次第に増大した。1回目の4時間のブリオスタチン曝露の24時間後、CE免疫染色は上昇しなかった(図10B)。2回目のブリオスタチン曝露の24時間後、連続する2日のそれぞれの1は、より残留性のCE免疫染色を示した。3回目のブリオスタチン曝露の後、2の対のトレーニング事象(対の光および眼窩振とう)が行われた場合のカレクシチンレベルは、連合性の条件付け誘発性の行動的な修飾に対する保持日数における有意な長さを伴って、より高いレベルに上昇した(n=16 動物/条件: ANOVA, p<0.01)。これらの3回の曝露後に続く日に2TEを行った場合、24時間後のCE免疫染色は、これまでに9TEの後すぐに観察されたレベルに到達した(図10B)。それ故、これらの3日間の4時間のブリオスタチン曝露の後最小のトレーニング(2TE)をした後のCE免疫染色は、トレーニング試験単独の場合よりもより持続することを示した。新たに合成されたカレクシチンのこの持続性は、ブリオスタチンにより引き起こされるタンパク質合成の増大を示す生化学的な知見と一致する。
【0081】
2日連続でブリオスタチンへの曝露を4時間行い、24時間後に2-トレーニング事象(2TE)を行うことは、固定された長期記憶に対応する量にカレクシチンレベルを上昇させるために必要とされる。典型的に、2回のブリオスタチン曝露を伴う2TEにより、1週間より長く持続する保持を生じる(n=16 動物/条件; t-検定, p<0.01)。3日以上連続してブリオスタチンへの4時間の曝露により準備刺激することは、記憶の固定に必要なカレクシチンレベルを誘導し得る。2の対のトレーニング事象後すぐに加えられたアニソマイシンは、このカレクシチンレベルを低下させず、何日もの間固定された記憶を維持する(N=8 動物/条件; t-検定, p>0.05, ns)。(図11 A, B)。
【0082】
ブリオスタチン+トレーニングの直後のPKCのRo-32阻害が長期記憶誘導を妨げない一方で、トレーニング+ブリオスタチンの間の前記阻害が記憶固定を妨げることは注目すべきである。対照的に、ブリオスタチンがある場合とない場合のトレーニングの間のアニソマイシンは長期記憶を妨げない一方で、ブリオスタチンがある場合とない場合のトレーニングの後のアニソマイシンは記憶形成を完全に遮断した。それ故、トレーニングの間のPKC活性化は、長期記憶のために必要とされるタンパク質合成により支持される。それ故、一度PKC活性化が十分なレベルまで引き起こされると、必要なタンパク質合成は不可避の結果である。一貫して、トレーニング前のブリオスタチン誘導性のPKC活性化は、最小のトレーニング試験の場合でも十分に長期記憶を引き起こす。さらに、この後者の長期記憶は、トレーニング(およびその前のPKC活性化)の後にタンパク質合成を必要としない。さらに、先のPKC活性化は、引き続く長期記憶の形成に必要なタンパク質合成を生じさせるのに十分であった。免疫染色標識化により示されたように、合成がブリオスタチン誘導性のPKC活性化ならびに条件付け試験により誘導されるタンパク質の1つは、カレクシチンである。他のタンパク質は、PKC自体である。
【0083】
例11:PKC活性におけるブリオスタチンの効果
ブリオスタチンは、細胞膜画分に付随するPKCを増大させることにより、一過性にPKCを活性化することが既知である。種々の連合性の記憶パラダイムは、神経細胞膜に付随するPKCの増大を引き起こすことも示されている。それ故我々は、ウミウシをブリオスタチンに繰り返し曝露することにより(すなわち、トレーニングプロトコルに正確に沿って4時間曝露)、延長されたPKC活性化をひき起こす可能性を試験した。
【0084】
無処置のウミウシは、記載された条件下で連続する日に、4時間、ブリオスタチン(0.28nM)に曝露された(「行動薬理学」)。単離された食道環神経系におけるヒストンリン酸化(「方法」を参照)は、細胞質ゾル画分において測定された。2回のブリオスタチン曝露の2回目の10分および24時間後の両方に測定されたPKC活性化は、ベースラインレベルを超えて有意に増大された(N=6、各測定について)(図12、13)。それ故、両方の画分においてPKCの量は明らかに増大したが、細胞質ゾル画分中に対する膜中のPKCの割合は増大しなかった。これらの結果は、ブリオスタチンの予めの曝露はPKCに学習自体とは異なる何らかの効果を引き起こすことを示す。初期の活性化(転位を介する)の後、このブリオスタチンの効果は、PKCの合成の増大によるものと考えられ、ブリオスタチンにより誘導されるカレクシチンの増大したレベルと一致するが、繰り返されるブリオスタチン曝露とは直接的に相関がない。
【0085】
図12、13と同じであるが、アニソマイシン(1.0ng/ml)を各ブリオスタチン(0.25ng/ml)曝露と共に加えた。アニソマイシンは、3日連続でブリオスタチンに曝露した後、ウミウシの食道環神経系に由来する細胞質ゲルおよび膜の画分の両方で、PKC活性を著しく低下させたことに注目すべきである(N=3, 各測定について, p<.0l)(図14)。
【0086】
ブリオスタチンへの繰り返しの曝露の生化学的な結果をさらに試験するために、温度感受性tsA5CSV40ラージT抗原のレトロウイルス形質導入により不死化した後、ラット海馬ニューロンを試験した(25)。これらは、N2倍地(26)中において塩基性フィブロブラスト成長因子により誘導された場合には神経細胞の表現型を有し、PKCを含む神経細胞タンパク質の正常な補体を発現するように分化する。
【0087】
培養された海馬ニューロンを単一の活性化用量のブリオスタチン(0.28nM)に30分間曝露することにより、PKCの細胞質ゾルから特定の画分への簡単な転位を生じ(約60%)、続いて延長された下方制御を生じた(図15)。初期のPKC活性化およびそれに続く下方制御は共に前に述べられており、膜および細胞質ゾルにおけるPKC活性化の測定により確認された。培養された海馬ニューロンを30分間ブリオスタチンに曝露し、続いて30分〜8時間の間隔を開けて2回目の30分間の曝露をした場合、膜結合性のPKCをより早く再結合させた。それ故、2〜4時間遅らせた2回目の曝露は、単回のブリオスタチン曝露により生じる有意な下方制御を除去した(図16)。細胞質画分において、ブリオスタチン曝露後最初の4時間以内にPKC活性の有意な変化は検出されなかった。対照的に、細胞を2時間以内に2回ブリオスタチンに曝露した場合、2回目の曝露に対する反応においてPKC活性の有意な減少があった。しかしながら、2回目の曝露が1回目の4時間後まで遅れた場合、2時間後以内に第2の曝露を行った場合と比較して有意に増大した程度まで活性はベースラインより上に増大した(図16)。
【0088】
これらの結果は、最初のPKCのブリオスタチン活性化およびそれに続く下方制御(28〜30)がPKCアイソザイム(ならびに上述したカレクシチン)の合成(新規のタンパク質合成を介して)を増大させるという解釈と一致する。実際に、我々は、0.28nMブリオスタチンへの単回の30分間の曝露は、ニューロンを回収する前の最後の1/2時間に35S-メチオニンを組み入れて測定した場合、タンパク質合成を全体として増大させ(図17)、ブリオスタチン曝露後24時間以内に20%、79時間までに60%まで増大することを見出した。ブリオスタチンにより誘導されるタンパク質合成の延長および著明な増大は、PKC阻害剤Ro-32が存在する場合に部分的に遮断された(図17)。
【0089】
豊富な知見は、十分なブリオスタチン誘発性のPKC活性化は、必然的に、進行性のPKC不活化およびそれに続く下方制御を引き起こすことを示す。十分な用量のブリオスタチン(1.0ng/ml以上)は、実際に、パブロフの条件付けを阻害した。これは、高いブリオスタチンの濃度の結果として生じる行動性の結果を特徴付けるPKC下方制御によると考えられる。ブリオスタチンに誘導されるPKC活性化は、2つの異なる経路により下方制御されることが示されている。ホルボールエステルにより誘導されるものは、プロテアソーム経路によるユビキチン結合およびそれに続くタンパク分解性の分解に関与する。第2のメカニズムの下方制御は、ホルボールエステルにより誘導されず、カベオラコンパートメントを介した移動ならびにホスファターゼPPIおよびPP2Aにより媒介される分解に関与する。PKC活性化因子の十分な濃度および/または持続について、PKC分解経路はPKCの新規合成を刺激するPKCの欠乏を作り出し、PKC合成は不活化および下方制御を代償することができず、それ故、利用可能なPKCの95%以上の欠乏が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、最適以下で訓練された動物であるが、ブリオスタチンで処理すると全てが長期記憶を獲得したことを示す。
【図2】図2は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、ランダム化された光および回転の提示は、ブリオスタチンの有無に関わらず、条件付けられた反応を生じなかったことを示す。
【図3】図3は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、2日連続で4時間ブリオスタチンに曝露され、3日目に2のトレーニング事象(2TE)を受けた動物が、少なくとも6日の長期記憶を獲得したことを示す。
【図4】図4は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、3日連続で4時間ブリオスタチンに曝露され、4日目に2TEを受けた動物が、少なくとも96時間の長期記憶を獲得したことを示す。
【図5】図5は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、8〜20時間のブリオスタチン曝露の後、2TEを行った場合、4時間のブリオスタチンへの曝露後に達成されるのと同等の記憶を獲得するのに十分ではなかったことを示す。
【図6】図6は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンの効果を示し、1.0ng/mlより多いブリオスタチンへの曝露が長期国の獲得を阻害することを示す。
【図7】図7は、長期記憶獲得におけるブリオスタチンおよびアニソマイシンの効果を示し、2TEと共に単回の4時間のブリオスタチンへの曝露を行った場合、数時間持続する長期記憶を生じ、ブリオスタチン曝露の間にアニソマイシンが存在した場合、完全に除去されたことを示す。
【図8】図8は、ブリオスタチンおよびラクタシステインの効果を示し、ラクタシステインが、単回のブリオスタチン曝露(それに続く2TE)により生じた短期記憶を数日間持続する長期記憶に変換したことを示す。
【図9】図9は、カレクシチンにおけるPKC活性の効果を示す。
【図10a】図10aは、カレクシチン免疫染色におけるブリオスタチンおよびトレーニング事象の効果を示す。図は、トレーニング事象の数に伴い、B細胞内でカレクシチンが増大したことを示す。
【図10b】図10bは、免疫染色により示された場合の、ブリオスタチン単独のカレクシチンに対する効果を示す。
【図11a】図11aは、2日連続で4時間ブリオスタチンに曝露し、24時間後に2のトレーニング事象を行った場合の、カレクシチンの強度における影響を示す。図は、カレクシチンレベルを固定された長期記憶に付随する量まで上昇させるために、2日連続で4時間ブリオスタチンに曝露し、24時間後に2TEを行うことが必要であることを示す。
【図11b】図11bは、ブリオスタチン曝露後にアニソマイシンを加えた場合の、カレクシチンにおける効果を示す。図は、2TE+3日間、4時間のブリオスタチン曝露の後のアニソマイシンが、カレクシチン免疫染色を低下させなかったことを示す。
【図12】図12は、細胞質ゾル画分におけるヒストンリン酸化により測定した場合の、繰り返される4時間のブリオスタチン曝露のPKC活性における影響を示す。図は、2日連続のブリオスタチン曝露により、対照またはベースラインレベルを有意に超えるPKC活性を生じることを示す。
【図13】図13は、膜画分におけるヒストンリン酸化により測定した場合の、繰り返される4時間のブリオスタチン曝露のPKC活性化における影響を示す。図は、2日連続のブリオスタチン曝露により、対照またはベースラインレベルを有意に超えるPKC活性を生じることを示す。
【図14】図14は、PKC活性におけるアニソマイシンの効果を示す。図は、3日連続のブリオスタチン曝露のそれぞれの間にアニソマイシンが存在する場合、細胞質ゾルおよび膜の画分の両方においてPKC活性を低下させたことを示す。
【図15】図15は、海馬ニューロンにおける膜結合性PKCに対するブリオスタチンの影響を示す。図は、培養された海馬ニューロンを単一の活性化量のブリオスタチン(0.28nM)に30分間曝露することにより、PKCの細胞質ゾルから粒子画分への短時間の転位(約60%)が生じ、続いて持続性の下方制御を生じたことを示す。1回目の曝露から4時間以内の2回目の曝露は、単回のブリオスタチン曝露の4時間後に見られた下方制御を有意に減弱した。
【図16】図16は、PKC活性における繰り返しのブリオスタチン曝露の効果を示す。図は、2〜4時間遅らせた後で2回目の曝露を行うことにより、単回の30分間のブリオスタチン曝露により生じた有意な下方制御が除去され、2回目の曝露が1回目から4時間後以内に行われた場合、活性は、2回目の曝露が2時間後以内に与えられた場合と比較して有意に高い程度までベースラインを超えて増大したことを示す。
【図17】図17は、タンパク質合成におけるブリオスタチンの効果を示す。ラットIGF-IR細胞は、0.28nMブリオスタチンと共に30分間インキュベートされ、インキュベーション時間は1〜79時間の範囲であった。[35S]メチオニン(9.1μCi)をその後培地に加え、放射標識の分析を行った。0.28nMブリオスタチンへの単回の30分の曝露は、ニューロンを回収する30分前に[35S]メチオニンを組み入れることにより測定した場合、24時間以内に20%全体的なタンパク質合成が増大し、ブリオスタチン曝露後79時間以内に60%増大したが、PKC阻害剤であるRo-32-0432の存在下においては増大が有意に少なかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PKC活性化因子をプロテインキナーゼC(PKC)と接触させ、長期記憶を固定するのに十分なタンパク質の合成を刺激する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
前記PKC活性化因子は大環状ラクトンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PKC活性化因子はベンゾラクタムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PKC活性化因子はピロリジノンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記大環状ラクトンはブリオスタチンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ブリオスタチンは、ブリオスタチン-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、または-18である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記大環状ラクトンはネリスタチンである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ネリスタチンはネリスタチン-1である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記接触がPKCを活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記接触がPKCの量を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記接触がPKCの合成を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記接触がカレクシチンの量を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記接触が続いて実質的なPKCの下方制御を生じさせない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記PKC活性化因子のPKCとの接触が繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記PKC活性化因子のPKCとの接触が規則的な間隔で繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記間隔は1週間〜1ヶ月、1日〜1週間、または1時間未満〜24時間である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記間隔は1週間〜1ヶ月である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記間隔は1日〜1週間である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記間隔は1時間未満〜24時間である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記PKC活性化因子のPKCとの接触は固定された期間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記固定された期間は24時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記固定された期間は12時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記固定された期間は6時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記固定された期間は4時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記固定された期間は2時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記固定された期間は約2〜約6時間である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記固定された期間は約4時間である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記接触の期間は約1〜約12時間である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記接触は1日より長い間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
前記接触は1日〜1ヶ月の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
前記接触は1日〜1週間の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項33】
前記接触は1週間〜1ヶ月の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項34】
前記接触は1ヶ月〜6ヶ月の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項35】
前記接触は1ヶ月の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
前記接触は1ヶ月より長い期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項37】
PKC活性化因子をプロテインキナーゼC(PKC)と接触させてPKCを下方制御する工程を含んでなる方法。
【請求項38】
前記PKC活性化因子は大環状ラクトンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記PKC活性化因子はベンゾラクタムである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記PKC活性化因子はピロリジノンである、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記大環状ラクトンはブリオスタチンである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記ブリオスタチンは、ブリオスタチン-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、または-18である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記大環状ラクトンはネリスタチンである、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記ネリスタチンはネリスタチン-1である、請求項38に記載の組成物。
【請求項46】
前記接触によりPKCの下方制御を生じる、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記接触により実質的なPKCの下方制御を生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記接触はPKCの合成を刺激しない、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記接触はPKCの合成を実質的に刺激しない、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記接触はPKCの量を減少させる、請求項37に記載の方法。
【請求項51】
前記接触はPKCの量を実質的に減少させる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記接触はカレクシチンの合成を刺激しない、請求項37に記載の方法。
【請求項53】
前記接触はカレクシチンの合成を刺激しない、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記PKC活性化因子のPKCとの接触は持続した期間である、請求項37に記載の方法。
【請求項55】
前記持続した期間は1時間未満〜24時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記持続した期間は1日〜1週間である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記持続した期間は1週間〜1ヶ月である、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記持続した期間は1時間未満〜12時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記持続した期間は1時間未満〜8時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記持続した時間は1時間未満〜4時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記持続した時間は約4時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記接触によりPKCの持続した下方制御を生じる、請求項37に記載の方法。
【請求項63】
プロテインキナーゼC(PKC)の分解を阻害する工程をさらに含んでなる、請求項37に記載の方法。
【請求項64】
前記分解はユビキチン結合を介する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記分解はラクタシステインにより阻害される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記PKCはヒトのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記PKC活性化因子は、PKC活性化因子および薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物の形態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項68】
前記医薬組成物はさらにPKC阻害剤を含んでなる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記PKC阻害剤は末梢組織においてPKCを阻害する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記PKC阻害剤は末梢組織においてPKCを選択的に阻害する、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記PKC阻害剤は、患者に対するPKCの投与に付随する筋肉痛を減少させる化合物である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記PKC阻害剤はPKC活性化因子の耐容量を増大させる化合物である、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記PKC阻害剤は、ビタミンE、ビタミンE類似体、ビタミンE塩、カルフォスチンC、チアゾリジンジオン、ルボキシスタウリン、またはそれらの組み合わせである、請求項68に記載の方法。
【請求項1】
PKC活性化因子をプロテインキナーゼC(PKC)と接触させ、長期記憶を固定するのに十分なタンパク質の合成を刺激する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
前記PKC活性化因子は大環状ラクトンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PKC活性化因子はベンゾラクタムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PKC活性化因子はピロリジノンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記大環状ラクトンはブリオスタチンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ブリオスタチンは、ブリオスタチン-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、または-18である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記大環状ラクトンはネリスタチンである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ネリスタチンはネリスタチン-1である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記接触がPKCを活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記接触がPKCの量を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記接触がPKCの合成を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記接触がカレクシチンの量を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記接触が続いて実質的なPKCの下方制御を生じさせない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記PKC活性化因子のPKCとの接触が繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記PKC活性化因子のPKCとの接触が規則的な間隔で繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記間隔は1週間〜1ヶ月、1日〜1週間、または1時間未満〜24時間である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記間隔は1週間〜1ヶ月である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記間隔は1日〜1週間である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記間隔は1時間未満〜24時間である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記PKC活性化因子のPKCとの接触は固定された期間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記固定された期間は24時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記固定された期間は12時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記固定された期間は6時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記固定された期間は4時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記固定された期間は2時間未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記固定された期間は約2〜約6時間である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記固定された期間は約4時間である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記接触の期間は約1〜約12時間である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記接触は1日より長い間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
前記接触は1日〜1ヶ月の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
前記接触は1日〜1週間の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項33】
前記接触は1週間〜1ヶ月の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項34】
前記接触は1ヶ月〜6ヶ月の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項35】
前記接触は1ヶ月の期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
前記接触は1ヶ月より長い期間繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項37】
PKC活性化因子をプロテインキナーゼC(PKC)と接触させてPKCを下方制御する工程を含んでなる方法。
【請求項38】
前記PKC活性化因子は大環状ラクトンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記PKC活性化因子はベンゾラクタムである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記PKC活性化因子はピロリジノンである、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記大環状ラクトンはブリオスタチンである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記ブリオスタチンは、ブリオスタチン-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、または-18である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ブリオスタチンはブリオスタチン-1である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記大環状ラクトンはネリスタチンである、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記ネリスタチンはネリスタチン-1である、請求項38に記載の組成物。
【請求項46】
前記接触によりPKCの下方制御を生じる、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記接触により実質的なPKCの下方制御を生じる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記接触はPKCの合成を刺激しない、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記接触はPKCの合成を実質的に刺激しない、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記接触はPKCの量を減少させる、請求項37に記載の方法。
【請求項51】
前記接触はPKCの量を実質的に減少させる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記接触はカレクシチンの合成を刺激しない、請求項37に記載の方法。
【請求項53】
前記接触はカレクシチンの合成を刺激しない、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記PKC活性化因子のPKCとの接触は持続した期間である、請求項37に記載の方法。
【請求項55】
前記持続した期間は1時間未満〜24時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記持続した期間は1日〜1週間である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記持続した期間は1週間〜1ヶ月である、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記持続した期間は1時間未満〜12時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記持続した期間は1時間未満〜8時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
前記持続した時間は1時間未満〜4時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記持続した時間は約4時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記接触によりPKCの持続した下方制御を生じる、請求項37に記載の方法。
【請求項63】
プロテインキナーゼC(PKC)の分解を阻害する工程をさらに含んでなる、請求項37に記載の方法。
【請求項64】
前記分解はユビキチン結合を介する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記分解はラクタシステインにより阻害される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記PKCはヒトのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記PKC活性化因子は、PKC活性化因子および薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物の形態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項68】
前記医薬組成物はさらにPKC阻害剤を含んでなる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記PKC阻害剤は末梢組織においてPKCを阻害する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記PKC阻害剤は末梢組織においてPKCを選択的に阻害する、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記PKC阻害剤は、患者に対するPKCの投与に付随する筋肉痛を減少させる化合物である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記PKC阻害剤はPKC活性化因子の耐容量を増大させる化合物である、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記PKC阻害剤は、ビタミンE、ビタミンE類似体、ビタミンE塩、カルフォスチンC、チアゾリジンジオン、ルボキシスタウリン、またはそれらの組み合わせである、請求項68に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2009−502944(P2009−502944A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524130(P2008−524130)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/029110
【国際公開番号】WO2007/016202
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(503310224)ブランシェット・ロックフェラー・ニューロサイエンスィズ・インスティテュート (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/029110
【国際公開番号】WO2007/016202
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(503310224)ブランシェット・ロックフェラー・ニューロサイエンスィズ・インスティテュート (25)
【Fターム(参考)】
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