説明

閉ループ処理における文書の真偽判定

【課題】文書の改ざんを検出する。
【解決手段】文書認証方法は、印刷文書において、印刷後に文書に加えられた検出可能な改ざんに付加された透かしを用いる。まず、ドットパターン形式の可視的な透かしが、元のデジタル画像に重ね合わされる。透かしが付加された画像は、第1解像度において中間調画像として印刷される。印刷文書中の透かしは、薄灰色の影として表われる。その後、印刷文書は、上記第1解像度よりも高い解像度において、グレースケールスキャンを用いて読み戻される。読み取られた画像において、改ざんされた領域が平坦に(強度輝度変化を欠いて)表される。ここにおいて、改ざんされていない領域は、透かしドットと、上記画像が低解像度で中間調印刷方式において印刷されたという事実とに基づき、比較的大きな強度輝度変化を有する。平坦ブロック検出と多重閾値法とを用いて画像内における平坦領域を識別することで、改ざんが検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書管理に関し、特に、閉ループ処理において印刷後に読み取られたデジタル文書の真偽判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
閉ループ処理とは、元のデジタル文書(テキスト、グラフィック、イメージ等を含んでもよい)を印刷したり、その印刷されたデジタル文書(印刷文書)のハードコピーを配布したりコピーしたりして利用した後、該印刷文書のハードコピーを読み取ってデジタル形式に戻すことをいう。読み取られたデジタル文書を認証するとは、該読み取られた文書が元のデジタル文書の真正なコピーか否か、すなわち、元のデジタル文書がハードコピー形式の状態において改ざんされたか否かを見つけ出すことをいう。読み取られた文書を認証するために提案されている一の方法によれば、読み取られた文書と元のデジタル文書との画像比較が行われる。このような比較は、印刷処理と読取処理との間に、元のデジタル文書に様々な歪みが生じることから、十分な精度を実現することが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、背景技術の限界や不都合に起因する一以上の問題を実質的に取り除くことが可能な、文書認証方法を対象とする。
【0004】
本発明の一つの目的は、閉ループ処理、すなわち、文書が印刷されて読み取られた後において、文書の改ざんを検出することである。
【0005】
本発明の実施形態に係る文書認証方法によれば、画像の真正さを検出する際に元のデジタル画像と読み取られた画像とを比較する上記方法のみに依存することが解消される。
【0006】
本発明のさらなる特徴及び利点は、後述の説明において説明され、その説明からある程度は明らかになり、或いは、本発明を実施することによって分かるかもしれないであろう。本発明の対象及びその他の利点は、添付の図面のみならず、特に、詳細な説明と特許請求の範囲とに示す構成によって実現及び達成されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの及び/又はその他の目的を達成するため、具体的かつ広範に記載されているように、本発明によって、デジタル文書画像を取得する工程と、前記デジタル文書画像に、各ドットが第1空間解像度により規定される個々の1×1画素以上の大きさのドットパターンの透かしを付加する工程と、前記透かしを有するデジタル文書を、前記第1空間解像度において中間調印刷方式により印刷する工程と、前記中間調印刷方式により印刷された印刷文書を、前記第1空間解像度以上の高さの第2空間解像度で読み取って読取画像を取得する工程と、前記読取画像内において画素強度輝度変化の度合いが小さい領域を識別することで、前記読取画像における任意の改ざんを検出する工程と、を有する印刷文書認証方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、中間調印刷方式を用いることによりデジタル画像から第1空間解像度で印刷される印刷文書の認証方法であって、前記デジタル画像は元のデジタル文書画像に付加された透かしを含み、前記透かしはドットパターンを含み、各ドットは前記第1空間解像度により規定される個々の1×1画素以上の大きさである、印刷文書認証方法において、前記印刷文書を前記第1空間解像度以上の高さの第2空間解像度で読み取って読取画像を取得する工程と、前記読取画像内において画素強度輝度変化の度合いが小さい領域を識別することで、前記読取画像における任意の改ざんを検出する工程と、を有する印刷文書認証方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、データ処理装置に上記方法を実現させるコンピュータプログラム生成物が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、印刷文書を読み取って読取画像を生成する読取手段と、前記読取画像内において画素強度輝度変化の度合いが小さい領域を識別することで、前記読取画像における任意の改ざんを検出するように処理する処理手段と、を有し、前記印刷文書は、中間調印刷方式を用いることによりデジタル画像から第1空間解像度で印刷され、前記デジタル画像は、元のデジタル文書画像に付加された透かしを有し、前記透かしは、各ドットが前記第1空間解像度により規定される個々の1×1画素以上の大きさのドットパターンを有し、前記読取手段は、前記第1空間解像度以上の高さの第2空間解像度で前記印刷文書を読み取るデータ処理システムが提供される。
【0011】
当然のことながら、前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明は、いずれも例示及び説明であって、特許請求の範囲に記載された発明のさらなる説明を提供することを意図するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る文書認証方法は、印刷文書における改ざんを検出するために、プリンタ中間調情報に加えて、デジタル画像に付加された透かしを用いる。図1A及び図1Bに、該認証方法の処理全体を示す。まず、元のデジタル文書が取得される(ステップS11)。本開示において、特に明記しない限り、デジタル文書とは、例えば、テキストベース文書に対応するものであるデジタル画像のことをいう。ステップS11は、印刷文書を読み取ったり、コンピュータプログラムを用いてデジタルデータからデジタル文書を生成したり、他の電子的情報源からデジタル文書を受信すること等によって行われてもよい。上記デジタル文書は、未だ画像の操作が可能なフォーマットに変換されていない場合、画像の操作が可能なフォーマットに変換される。印刷文書から文書が読み取られると、当該読み取られたデジタル文書がグレースケールであることから、白黒スキャンに対応するものとしてグレースケールスキャンが用いられる。そして、上記文書のほぼ全領域を覆うように規則的に配置されるドットパターンの形式で、可視的な透かしが元のデジタル文書に重ねられ、元のデジタル文書の透かし画像が生成される(ステップS12)。上記ドットの大きさは1×1画素(ピクセル)以上であり、例えば300dpiのような第1空間解像度によって規定される。或いは、上記透かしにおけるドットは、十分に高密度である限り、分析用の各画像ブロック(後に詳述する)が十分な数のドットを含むように、不規則に配置されてもよい。さらに、上記透かしは、当該透かしを含む部分のみが後に改ざんされる場合にあっては、上記文書の一部のみを覆っていてもよい。
【0013】
以下の説明において、特に明記しない限り、0(ゼロ)が黒色であることを表す8ビットのグレースケール領域が種々の例において用いられる。当業者であれば、上記方法を異なるグレースケール領域に適用することが可能であろう。
【0014】
元のデジタル文書に透かしを付加すると、重なった領域(すなわち、透かしのドットが存在する領域)が暗く又は明るくなって混合色を示す。好ましくは、重なった領域の元の画素値が、ある強度輝度閾値と同値又はそれよりも明るいとき(すなわち、重なった領域が、元の画像のうち比較的明るい彩色が施された領域、又は、空白の領域に位置するとき)、第1の透かし強度輝度値と呼ばれる値の分だけ暗くされる。また、重なった領域の元の画素値が、ある強度輝度閾値よりも暗いとき(すなわち、重なった領域が、元の画像のうち比較的暗いコンテンツを有する領域に位置するとき)、第2の透かし強度輝度値として規定される値の分だけ明るくなる。上記第1及び第2の透かし強度輝度値は、等しくてもよいし異なっていてもよい。一の典型例において、上記強度輝度閾値が255(即ち、白色)であり、上記第1及び第2の透かし強度輝度値が51である。別の実施例において、重なった全ての領域の画素は、元の画素値によらずに暗くされる(可能な限り最も暗い画素値(0)を超えて得られた画素値が、最も暗い画素値として設定される)。より一般的には、元の画素値に加えられる、又は、元の画素値から減じられる透かし強度輝度値は、全画像領域(もともと暗い領域及びもともと明るい領域の両方)に可視的な透かしドットの画像を形成する上での一般的な目標を視野に入れ、元の画素値に適した関数としてもよい。さらに、上記透かしドットの大きさは、元の画素値に応じて異なってもよい。例えば、非常に暗い領域に配置される透かし(非常に暗い領域に配置される明トーンのドット)は、白色領域に配置されるグレートーンの透かしドットより大きくてもよい。
【0015】
この透かし画像は、上記第1空間解像度(例えば、300dpi)において中間調画像として印刷される(ステップS13)。そして、該印刷文書が使用される(例えば、配布される等)。上記印刷文書は、薄い灰色の影状の可視的な透かしを有する。
【0016】
その後、印刷文書(透かしを有する)が印刷以降改ざんされたか否かを判別するため、図1Bに示す検出処理が実行される。まず、上記印刷文書が、上記第1空間解像度よりも高い第2空間解像度において、グレースケールスキャンを用いて読み戻される(ステップS14)。例えば、上記第1空間解像度が300dpiであるとき、上記第2空間解像度は600dpiであってもよい。上記印刷処理において(ステップS13において)グレースケール画像が中間調(二値)画像に変換されると、黒色ドットパターンとして灰色(中間調ドット)が印刷され、その大きさ(AM:Amplitude Modulated)や空間周波数(FM:Frequency Modulated)は、上記グレースケール値をシミュレートするのに対応して変化する。上記印刷された中間調画像が、印刷時(ステップS14)における解像度よりも高い解像度で読み戻しされると、上記中間調ドットは、図2に示すように、上記読取画像において可視的となる。ステップS14において生成された読取画像領域の拡大図である図2に示すように、上記画像の白色領域内に中間調ドットのクラスターが見られる。各クラスター(例えば、図2に符号22で示す)は、上記透かしにおける灰色のドットに対応している。ここで、上記透かしドットの効果は、上記読取画像(例えば、テキストが存在する領域)の“黒色”領域においても見られることに留意。
【0017】
図2はまた、本実施例において、印刷処理(ステップS13)と読取処理(ステップS14)との間に、本具体例では濃いペンで“ALTER”(改ざん)という文字列を付加することによって、上記印刷文書が改ざんされた領域24を示している。読み戻された画像において、上記改ざんされた領域(改ざんされた文字列の一画一画)が比較的“平坦”、つまり、改ざんされた領域内の画素強度輝度が、比較的少量だけ異なっていることを読み取ることができる。一方、改ざんされていない領域においては、白色領域(透かしを付加する前における元の文書画像の白色領域に相当する)と、灰色又は黒色領域(例えば、文字列又はその他の画像要素が存在する領域)との両方において、比較的大きな強度輝度変化が存在する。この比較的大きな強度輝度変化は、上記画像に透かしドットが付加されたという事実と、上記画像が低解像度において中間調印刷方式により印刷されたという事実とに基づくものである。改ざん検出工程(ステップS15)は、上記画像内において平坦領域(すなわち、強度輝度変化が低い領域)を識別することによって改ざんを検出する。改ざんを着実に検出するため、平坦ブロック検出と、付加的な多重閾値法との組合せとが用いられる。ステップS15では、改ざんを検出及び識別してこれらを文書から分離することができる。図5にステップS15における検出結果の一例を示す。ここにおいて、改ざんが元の文書から分離されている(図5は、図2に示す画像のごく一部であることに留意)。
【0018】
図3に示すフローチャートを参照して、ステップS15において用いられる改ざん検出アルゴリズムを以下に説明する。上記検出アルゴリズムは、まず、処理する画像のブロックを選択する(ステップS301)。該ブロックは、上記画像をそれぞれ所定の大きさ(例えば、図示例においては16×16画素)を有する複数のタイルに分割することで選択されてもよい。各ブロックにおいて、当該ブロック中の画素強度輝度に基づき“平坦度”の度合いが算出される(ステップS302)。上記平坦度合いは、当該ブロック中における最大画素強度輝度と最低画素強度輝度との差異によって規定されることが好ましい。他の平坦度合いの代替として、例えば標準偏差や分散等が用いられてもよい。平坦度合いが、所定の第1閾値以下のとき(ステップS303:Yes)、ブロック全体に改ざん有りのマークが付され(ステップS304)、次のブロックに処理が移行する。なお、好適な実施形態においては、上記所定の第1閾値は1であることが好ましい。上記ブロックが平坦でないとき(ステップS303:No)、当該ブロックは、その一部が平坦であるか否かを判別するために、さらにステップS305〜S314において処理される。そして、平坦な領域は改ざんされた領域であると判断される。
【0019】
図4A〜図4Lに示す例を参照して、ステップS305からステップS314の処理について説明する。図4Aは、各画素がグレースケール値を有する解像度16×16画素のブロック41を示している。まず、各画素について、所定の第2閾値を用いてグレースケールからの2値化が行われる(ステップS305)。好適な実施形態においては、上記所定の第2閾値は250であることが好ましい。図4Bは、二進値に変換されたブロックを示す。そして、同じ値を有する互いに隣接する画素同士を連結成分として分類する連結成分分析が行われる(ステップS306)。図4Cに、ステップS306において識別される複数の連結成分42a、42b、42c等を示す。所定の第3閾値よりも少ない画素数を有する連結成分は廃棄される(ステップS307)。一方、上記所定の第3閾値以上の画素数を有する各連結成分は、改ざん見込み候補として分類され、その重心が決定される(ステップS308)。好適な実施形態においては、上記所定の第3閾値は81であることが好ましい。図4Dは、改ざん見込み候補42aを示しており、図4Cに示した小さな連結成分42b、42c等が廃棄されている。
【0020】
各改ざん見込み候補について、上記決定された重心が中心をなす拡大対象ブロックが選択される(ステップS309)。好適な実施形態においては、上記拡大対象ブロックは、32×32画素であることが好ましい。図4Eは、拡大対象ブロック43を示しており、その中心は、図4Dに示す改ざん見込み候補42aの重心となっている。この拡大対象ブロック43は、改ざん検出結果を示す2値マップを取得するために処理される。第1の2値マップは、閾値分割によって取得される(ステップS310)。ここにおいて、所定の輝度範囲内の強度輝度低下を示した画素に1又は“on”のマークが付される。好適な実施形態においては、上記所定の輝度範囲は、最大画素強度輝度に全強度輝度範囲の所定の割合を加えた値と、上記最大画素強度輝度から上記全強度輝度範囲の所定の割合を減じた値との間の範囲であることが好ましい。上記全強度輝度範囲は、上記拡大対象ブロック43内における最大画素強度輝度と最小画素強度輝度との差異として規定される。好適な実施形態においては、上記所定の割合は、1/5であることが好ましい。図4Fは、上記第1の2値マップを示し、“on”マークが付された画素が黒で示されている。第2の2値マップは、種画素からの領域成長によって取得される(ステップS311)。ここにおいて、隣接する各画素が現在の領域の平均値と比較され、該平均値との差異が許容誤差閾値(所定の第4閾値)の範囲内であるとき、上記領域に加えられる。好適な実施形態においては、上記所定の第4閾値は、上記平均値の25%であることが好ましい。選択された上記種画素44は、上記領域成長前における当該ブロック(すなわち、上記16×16画素のブロック)において現在注目されている連結成分(すなわち、改ざん見込み候補42a)のうち、最小の値を有する画素(即ち、最も暗い画素)である。上記領域成長処理においては、背景の白色領域への領域成長を防ぐために、画素値が250よりも大きな画素は考慮されない。図4Gは種画素44を示している。図4Hは、上記種画素からの領域成長の結果である第2の2値マップを示しており、当該領域が黒色で表示されている。これら2つの各2値マップは、その後、隣接する8つ全ての画素と連結されていない画素が除去されることで侵食される(ステップS312)。図4Iは、第2の侵食2値マップ、すなわち、上記第2の2値マップについての領域侵食の結果を示している。次に、上記2つの侵食2値マップに対して連結成分分析が行われ、所定の第5閾値よりも少ない画素数を有する連結成分が除去される(ステップS313)。好適な実施形態においては、上記所定の第5閾値は、81画素であることが好ましい。ステップS313により、上記第1及び第2の侵食2値マップが第1及び第2の改ざん検出済2値マップとなる。図4K及び図4Jは、それぞれ上記第1及び第2の改ざん検出済2値マップを示す。“on”又は1の画素が改ざんされた画素を示す改ざん検出済最終2値マップを得るために、上記第1及び第2の改ざん検出済2値マップに対してビットごとにOR演算が行われる(ステップS314)。図4Lは、上記改ざん検出済最終2値マップを示す。ステップS302〜S314は、画像全体が処理されるまで各ブロックに対して繰り返し実行される。そして、上記印刷文書における改ざんを含む改ざん画像(図5参照)を生成するために、ステップS304において改ざん有りのマークが付された全てのブロックと、ステップS314において取得された全ての改ざん2値マップとが最終的に合成される(ステップS315)。
【0021】
図1A及び図1Bに戻り、透かしを有する印刷文書を生成するための工程(すなわち、ステップS11〜S13)と、透かしを有する印刷文書内の改ざんを検出する工程(すなわち、ステップS14及びS15)とは、必ずしも同一人物によって、或いは、同一の場所において行われる必要はない。換言すれば、一人の人間は、上記印刷文書に透かしが適切に付加されている限りにおいて、上記改ざん検出工程を実行するか否か、又は、上記改ざん検出工程をどのようにして行うかを考慮することなく、ある人物が上記印刷工程を実行することができる。また、もう一人の人間は、上記印刷文書に適切な透かしが付加されるとともに、該印刷文書の読み取りが印刷時よりも高い空間解像度で実行されている限りにおいて、上記印刷文書の発生源を考慮することなく、別の人物が上記改ざん検出工程を実行することができる。透かしを付加する工程(ステップS12)は、コンピュータやプリンタの他、印刷機能、読取機能及びコピー機能等を組み合わせたオールインワン(AIO)装置などのような、適切な処理能力を有するどのようなデータ処理装置によって行われてもよい。同様に、上記改ざん検出工程(ステップS15)は、コンピュータ、スキャナ及びAIO等、適切な処理能力を有するどのようなデータ処理装置によって行われてもよい。改ざん検出工程の結果(例えば、図5に示すような、改ざんを示す画像形式であってもよい)は、ユーザに対して表示してもよく、記憶されてもよく、他のデータ処理装置に送信されてもよく、ユーザによって使用されてもよい(図1BにおけるステップS16)。
【0022】
図6Aに、本発明の実施形態に係る認証方法が組み込まれたデータ処理システムを模式的に示す。上記データ処理システムは、コンピュータ606に接続されたプリンタ602と、コンピュータ608に接続されたスキャナ604とを備えている。上記プリンタ602及びスキャナ604は、それぞれ関連する技術分野における当業者によく知られている一般的なハードウェア及びソフトウェアを有しているが、その説明はここでは省略する。透かし付加処理(図1AにおけるステップS12)は、コンピュータ606又はプリンタ602内のプロセッサによって実行されてもよい。改ざん検出処理(図1BにおけるステップS15)は、コンピュータ608又はスキャナ604内のプロセッサによって実行されてもよい。図6Bに、本発明の実施形態に係る認証方法が組み込まれたオールインワン装置(AIO)を模式的に示す。このAIO610(複合機とも称する)は、プリンタ部614と読取部616との両方を含み、印刷機能、読取機能及びコピー機能を実行可能な装置である。透かし付加処理及び/又は改ざん検出処理は、AIOのプロセッサ612又は該AIOに接続されたコンピュータ(図示せず)によって実行されてもよい。
【0023】
上記透かしが付加された文書の読み戻し時における解像度は、当該透かしが付加された文書の印刷時における解像度よりも高いことが望ましい。代替的に、上記読取解像度は、上記印刷解像度と同じであってもよいが、この場合は元のデジタル画像強度を軽くするか、元の画像解像度を低下させる必要がある。このようにすれば、上記透かしが付加された文書の印刷時よりも高い解像度で読み取らなくても、中間調ドットを可視的なまま維持することができる。しかしながら、このような手段は印刷文書の画像品質を低下させる傾向があるため、好ましくない。
【0024】
以上説明した改ざん検出方法は、コピーの際に上記印刷文書における中間調の性質が保持される限りにおいて、或いは、それ自体が、上記プリンタによって生成された中間調画像である限りにおいて、上記印刷文書が改ざんされる前にコピーされた場合であっても適用することができる。上記印刷文書が改ざん後にコピーされた場合、上記改ざん検出方法の適用性は、コピーの際におけるコピー者の画像操作の仕方に依存する。
【0025】
本発明による、印刷文書における改ざん検出方法において、本発明の趣旨又は範囲を逸脱しない限り、種々の改良や変形が可能であることは当業者にとって自明であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で生じる改良や変形を包含することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】本発明の実施形態における文書真偽処理全体を示すフローチャートである。
【図1B】本発明の実施形態における文書真偽処理全体を示すフローチャートである。
【図2】透かし文書を読み取ることで生成された読取画像領域の拡大図である。
【図3】本発明の実施形態において、印刷文書における改ざん検出方法を示すフローチャートである。
【図4A】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4B】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4C】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4D】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4E】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4F】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4G】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4H】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4I】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4J】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4K】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図4L】図3の改ざん検出方法における種々の工程例を示す図である。
【図5】改ざん検出結果の一例を示す図である。
【図6A】データ処理システムを示す図である。
【図6B】データ処理システムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル文書画像を取得する工程と、
前記デジタル文書画像に、各ドットが第1空間解像度で規定される個々の1×1画素以上の大きさであるドットパターンを含む透かしを付加する工程と、
前記透かしを有するデジタル文書を、前記第1空間解像度において中間調印刷方式により印刷する工程と、
前記中間調印刷方式により印刷された印刷文書を、前記第1空間解像度以上の高さの第2空間解像度で読み取って読取画像を取得する工程と、
前記読取画像内において画素輝度強度変化の度合いが小さい領域を識別することにより、前記読取画像における任意の改ざんを検出する工程と、を有する印刷文書認証方法。
【請求項2】
前記検出する工程は、
(a)前記読取画像を、各々が複数の画素を有する複数のブロックに分割する工程と、
各ブロックについて、
(b)前記ブロックの平坦度合いを算出する工程と、
(c)前記平坦度合いが所定の第1閾値以下であるとき、前記ブロックに改ざん有りのマークを付する工程と、
改ざん有りのマークが付されていない各ブロックについて、
(d)所定の第2閾値を用いることで、前記ブロック内の各画素に対してグレースケールを2値化する変換を施す工程と、
(e)第1連結成分分析を行って一以上の連結成分を取得する工程と、
(f)所定の第3閾値以上の画素数を有する個々の連結成分について、当該個々の連結成分の重心をそれぞれ中心とする拡大対象ブロックを選択し、前記印刷文書内での改ざんを示す改ざん2値マップを前記拡大対象ブロック内に生成する工程と、
(g)前記工程(c)において改ざん有りのマークが付された全てのブロック及び前記工程(f)において生成された全ての改ざん2値マップを合成して改ざん画像を生成する工程と、
を有する請求項1に記載の印刷文書認証方法。
【請求項3】
前記工程(f)は、
(f1)所定の輝度範囲内の強度輝度低下を示した画素にONマークを付する閾値分割により第1の2値マップを生成する工程と、
(f2)前記拡大対象ブロックのうち最も暗い画素である種画素から、隣接する各画素を現在の領域の平均値と比較し、その差が第4閾値以内であるときに前記隣接する各画素を前記領域に加えて領域成長させることにより第2の2値マップを生成する工程と、
(f3)隣接する8つ全ての画素と連結されていない画素を除去することで、前記第1及び第2の2値マップを侵食して第1及び第2の侵食2値マップをそれぞれ生成する工程と、
(f4)前記第1及び第2の侵食2値マップについて第2連結成分分析を行い、所定の第5閾値より少ない画素数の連結成分を除去して第1及び第2の改ざん検出済2値マップを取得する工程と、
(f5)前記第1及び第2の改ざん検出済2値マップをビットごとにOR演算して改ざん2値マップを取得する工程と、
を有する請求項2に記載の印刷文書認証方法。
【請求項4】
前記透かしを付加する工程は、
前記透かしのドット内における各画素について、前記元の画素値に応じた前記デジタル文書画像の元の画素値に第1の透かし強度輝度値を加える工程、又は、前記元の画素値に応じた前記デジタル文書画像の元の画素値から第2の透かし強度輝度値を減じる工程、を含む請求項1に記載の印刷文書認証方法。
【請求項5】
中間調印刷方式を用いることによりデジタル画像から第1空間解像度で印刷される印刷文書の認証方法であって、前記デジタル画像は元のデジタル文書画像に付加された透かしを含み、前記透かしはドットパターンを含み、各ドットは前記第1空間解像度により規定される個々の1×1画素以上の大きさである、印刷文書認証方法において、
前記印刷文書を前記第1空間解像度以上の高さの第2空間解像度で読み取って読取画像を取得する工程と、
前記読取画像内において画素強度輝度変化の度合いが小さい領域を識別することで、前記読取画像における任意の改ざんを検出する工程と、を有する印刷文書認証方法。
【請求項6】
前記検出する工程は、
(a)前記読取画像を、各々が複数の画素を有する複数のブロックに分割する工程と、
各ブロックについて、
(b)前記ブロックの平坦度合いを算出する工程と、
(c)前記平坦度合いが所定の第1閾値以下であるとき、前記ブロックに改ざん有りのマークを付する工程と、
改ざん有りのマークが付されていない各ブロックについて、
(d)所定の第2閾値を用いることで、前記ブロック内の各画素に対してグレースケールを2値化する変換を施す工程と、
(e)第1連結成分分析を行って一以上の連結成分を取得する工程と、
(f)所定の第3閾値以上の画素数を有する個々の連結成分について、当該個々の連結成分の重心をそれぞれ中心とする拡大対象ブロックを選択し、前記印刷文書内での改ざんを示す改ざん2値マップを前記拡大対象ブロック内に生成する工程と、
(g)前記工程(c)において改ざん有りのマークが付された全てのブロック及び前記工程(f)において生成された全ての改ざん2値マップを合成して改ざん画像を生成する工程と、
を有する請求項5に記載の印刷文書認証方法。
【請求項7】
前記工程(f)は、
(f1)所定の輝度範囲内の強度輝度低下を示した画素にONマークを付する閾値分割により第1の2値マップを生成する工程と、
(f2)前記拡大対象ブロックのうち最も暗い画素である種画素から、隣接する各画素を現在の領域の平均値と比較し、その差が第4閾値以内であるときに前記隣接する各画素を前記領域に加えて領域成長させることにより第2の2値マップを生成する工程と、
(f3)隣接する8つ全ての画素と連結されていない画素を除去することで、前記第1及び第2の2値マップを侵食して第1及び第2の侵食2値マップをそれぞれ生成する工程と、
(f4)前記第1及び第2の侵食2値マップについて第2連結成分分析を行い、所定の第5閾値より少ない画素数の連結成分を除去して第1及び第2の改ざん検出済2値マップを取得する工程と、
(f5)前記第1及び第2の改ざん検出済2値マップをビットごとにOR演算して改ざん2値マップを取得する工程と、を有する請求項6に記載の認証方法。
【請求項8】
データ処理装置を制御するためのコンピュータ読み取り可能なプログラムコードが組み込まれたコンピュータ利用可能なメディアを有し、
前記プログラムコードは、前記データ処理装置に、印刷文書を読み取ることで取得された読取画像を認証する処理を実行させ得るように構成され、
前記印刷文書は、第1空間解像度において中間調印刷方式を用いることによりデジタル画像から印刷され、
前記デジタル画像は、元のデジタル文書画像に付加された透かしを有し、
前記透かしは、各ドットが前記第1空間解像度により規定される個々の1×1画素以上の大きさのドットパターンを有し、
前記読み取りは、前記第1空間解像度以上の高さの第2空間解像度で行われ、
前記処理は、
(a)前記読取画像を、各々が複数の画素を有する複数のブロックに分割する工程と、
各ブロックについて、
(b)前記ブロックの平坦度合いを算出する工程と、
(c)前記平坦度合いが所定の第1閾値以下であるとき、前記ブロックに改ざん有りのマークを付する工程と、
改ざん有りのマークが付されていない各ブロックについて、
(d)所定の第2閾値を用いることで、前記ブロック内の各画素に対してグレースケールを2値化する変換を施す工程と、
(e)第1連結成分分析を行って一以上の連結成分を取得する工程と、
(f)所定の第3閾値以上の画素数を有する個々の連結成分について、当該個々の連結成分の重心をそれぞれ中心とする拡大対象ブロックを選択し、前記印刷文書内での改ざんを示す改ざん2値マップを前記拡大対象ブロック内に生成する工程と、
(g)前記工程(c)において改ざん有りのマークが付された全てのブロック及び前記工程(f)において生成された全ての改ざん2値マップを合成して改ざん画像を生成する工程と、
を有するコンピュータプログラム生成物。
【請求項9】
前記工程(f)は、
(f1)所定の輝度範囲内の強度輝度低下を示した画素にONマークを付する閾値分割により第1の2値マップを生成する工程と、
(f2)前記拡大対象ブロックのうち最も暗い画素である種画素から、隣接する各画素を現在の領域の平均値と比較し、その差が第4閾値以内であるときに前記隣接する各画素を前記領域に加えて領域成長させることにより第2の2値マップを生成する工程と、
(f3)隣接する8つ全ての画素と連結されていない画素を除去することで、前記第1及び第2の2値マップを侵食して第1及び第2の侵食2値マップをそれぞれ生成する工程と、
(f4)前記第1及び第2の侵食2値マップについて第2連結成分分析を行い、所定の第5閾値より少ない画素数の連結成分を除去して第1及び第2の改ざん検出済2値マップを取得する工程と、
(f5)前記第1及び第2の改ざん検出済2値マップをビットごとにOR演算して改ざん2値マップを取得する工程と、
を有する請求項8に記載のコンピュータプログラム生成物。
【請求項10】
印刷文書を読み取って読取画像を生成する読取手段と、
前記読取画像内において画素強度輝度変化の度合いが小さい領域を識別することで、前記読取画像における任意の改ざんを検出するように処理する処理手段と、を有し、
前記印刷文書は、中間調印刷方式を用いることによりデジタル画像から第1空間解像度で印刷され、
前記デジタル画像は、元のデジタル文書画像に付加された透かしを有し、
前記透かしは、各ドットが前記第1空間解像度により規定される個々の1×1画素以上の大きさのドットパターンを有し、
前記読取手段は、前記第1空間解像度以上の高さの第2空間解像度で前記印刷文書を読み取るデータ処理システム。
【請求項11】
前記処理手段は、
(a)前記読取画像を、各々が複数の画素を有する複数のブロックに分割する工程と、
各ブロックについて、
(b)前記ブロックの平坦度合いを算出する工程と、
(c)前記平坦度合いが所定の第1閾値以下であるとき、前記ブロックに改ざん有りのマークを付する工程と、
改ざん有りのマークが付されていない各ブロックについて、
(d)所定の第2閾値を用いることで、前記ブロック内の各画素に対してグレースケールを2値化する変換を施す工程と、
(e)第1連結成分分析を行って一以上の連結成分を取得する工程と、
(f)所定の第3閾値以上の画素数を有する個々の連結成分について、当該個々の連結成分の重心をそれぞれ中心とする拡大対象ブロックを選択し、前記印刷文書内での改ざんを示す改ざん2値マップを前記拡大対象ブロック内に生成する工程と、
(g)前記工程(c)において改ざん有りのマークが付された全てのブロック及び前記工程(f)において生成された全ての改ざん2値マップを合成して改ざん画像を生成する工程と、
を有する修正検出処理を実行する請求項10に記載のデータ処理システム。
【請求項12】
前記工程(f)は、
(f1)所定の輝度範囲内の強度輝度低下を示した画素にONマークを付する閾値分割により第1の2値マップを生成する工程と、
(f2)前記拡大対象ブロックのうち最も暗い画素である種画素から、隣接する各画素を現在の領域の平均値と比較し、その差が第4閾値以内であるときに前記隣接する各画素を前記領域に加えて領域成長させることにより第2の2値マップを生成する工程と、
(f3)隣接する8つ全ての画素と連結されていない画素を除去することで、前記第1及び第2の2値マップを侵食して第1及び第2の侵食2値マップをそれぞれ生成する工程と、
(f4)前記第1及び第2の侵食2値マップについて第2連結成分分析を行い、所定の第5閾値より少ない画素数の連結成分を除去して第1及び第2の改ざん検出済2値マップを取得する工程と、
(f5)前記第1及び第2の改ざん検出済2値マップをビットごとにOR演算して改ざん2値マップを取得する工程と、
を有する請求項11に記載のデータ処理システム。
【請求項13】
前記処理手段は、デジタル文書画像に透かしを付加することで透かし画像を生成し、
前記透かしは、各ドットが第1空間解像度により規定される個々の1×1画素以上の大きさのドットパターンを有し、
前記透かし画像を印刷する印刷手段をさらに有する請求項10に記載のデータ処理システム。
【請求項14】
前記処理手段は、
前記透かしのドット内における各画素について、前記元の画素値に応じた前記デジタル文書画像の元の画素値に第1透かし強度輝度値を加え、又は、前記元の画素値に応じた前記デジタル文書画像の元の画素値から第2の透かし強度輝度値を減じる請求項13に記載のデータ処理システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図4K】
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【図4L】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2009−111980(P2009−111980A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−227018(P2008−227018)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(507031918)コニカ ミノルタ システムズ ラボラトリー, インコーポレイテッド (157)
【Fターム(参考)】