説明

閉塞性睡眠時無呼吸症を治療するための方法及び装置

閉塞性睡眠時無呼吸症の治療に使用するための咽頭リトラクタ装置及びその植え込み方法を提供する。本装置は、収縮要素(601)、及び収縮要素の周囲又はその表面上への組織の内部成長を促進する組織係合要素(600)を含む。本装置は、咽頭壁の形状を変化させるために咽頭壁の下側の組織空間内に植え込まれる。本装置は、口腔のみを通じて、あるいは咽頭壁を通じて装置を導入するためのトロカール(400)又は手持ち式導入システム(1000)を使用して植え込むことができる。あるいは、本装置は、患者の頸部の側部から開放的、直接的な視覚化アプローチによって植え込むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には閉塞性睡眠時無呼吸症の外科的治療法に関し、より詳細には咽頭壁の虚脱を防止することを目的とした、又は睡眠時に生じうる気道の閉塞を防止するために気道の形状を変化させることを目的としたインプラントの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症には幾つかの種類が特定されている。閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)は、通常は睡眠時に咽喉の軟部組織が虚脱して閉鎖する際に気道が閉塞されることによって引き起こされるものである。それほど一般的でない睡眠時無呼吸症の種類としては、気道は閉塞されないが脳が筋肉に呼吸を行うための指令を送れないことによる中枢性睡眠時無呼吸症(CSA)、及び、その名が示すとおりOSAとCSAとの混合型である混合性睡眠時無呼吸症がある。
【0003】
図1aに示されるように、患者101aの空気通路140aは患者が覚醒状態にある間は開いている。空気通路の軟口蓋130a及び咽頭壁132aを含む軟部組織要素が、下側の筋肉組織によって支持されることにより通路は開放状態に維持されている。図1bに示されるような閉塞性睡眠時無呼吸状態の発生時には、患者101bの空気通路140bは、支持筋肉組織が弛緩することによって虚脱して重力などの他の力によって睡眠中に変位した周囲の軟部組織130b、132bによって部分的又は完全に閉塞される。
【0004】
無呼吸状態が発生するたびに、脳は呼吸を再開させようとして眠っている患者を一時的に起こすが、結果的に睡眠は非常に断続的な質の低いものとなる。睡眠時無呼吸症は、治療を行わずにいると、高血圧、心臓血管疾患、記憶障害、体重増加、インポテンス、及び頭痛を引き起こす。更に、治療を行わない睡眠時無呼吸症は、仕事の効率低下、自動車事故、及び夫婦関係の不和の原因となりうる。
【0005】
アメリカ国立衛生研究所によると、睡眠時無呼吸症は成人の糖尿病と同じくらい一般的な病気であり、1200万人以上の米国人が罹患しているとしている。OSAのリスクを増大させる因子としては、男性であること、肥満、及び年齢が40代以上であることなどが挙げられるが、睡眠時無呼吸症は子供も含めたあらゆる年齢層の人に起きうる病気である。一般の人及び医療専門家による意識の低さのため、この深刻な疾患は重大な結果につながりかねないにも関わらず、大部分の患者では診断がつかないままであり、したがって治療も行われない。
【0006】
閉塞性睡眠時無呼吸症に対する有効な治療法を与えようとする諸々の試みは、不充分な結果に終わってきた。例えば、軟口蓋を電気的に刺激することによっていびき及び閉塞性睡眠時無呼吸症を治療することが提案されている。こうした教示は、Schwartz et al.,「Effects of electrical stimulation to the soft palate on snoring and obstructive sleep apnea,」J.Prosthetic Dentistry,pp.273〜281(1996)に見られる。電気的刺激を加えるための装置については、米国特許第5,284,161号、及び同第5,792,067号に述べられている。睡眠時無呼吸症の治療を目的とした電気的刺激については、Wiltfang et al.,「First results on daytime submandibular electrostimulation of suprahyoidal muscles to prevent night−time hypopharyngeal collapse in obstructive sleep apnea syndrome,」International Journal of Oral & Maxillofacial Surgery,pp.21〜25(1999)にも述べられている。こうした装置は、患者が所定の使用計画に厳密に従う必要があると同時に、患者が睡眠中に不快感を生じ、深い睡眠時に繰り返し起きてしまうような機器である。
【0007】
持続的気道陽圧法(CPAP)は、睡眠時無呼吸症を防止するための有用であるが煩雑な手段として近年採用されつつある。CPAPは、特別に設計された鼻マスク又はまくらを通じて気道に空気を供給するものである。こうしたマスクは患者のために呼吸するわけではなく、患者が息を吸う際に空気の流れによって気道を開放状態に維持するうえで充分な圧力を生じさせるものである。言うなれば、気道内に空気による補強材(pnenmatic splint)を形成するものである。CPAPは、いびき及び閉塞性睡眠時無呼吸症を緩和するうえで最も効果的な非外科的治療法であると考えられている。しかしながら、患者がマスク、ホースなどについて不快感を訴え、装置が保守を必要とすることから患者が定められた方法に従ってこの治療法を行う割合(コンプライアンス)は50%に留まっている。更に、患者によって膨満感、鼻の乾燥、及びドライアイなどについて不快感が訴えられている。
【0008】
外科的治療法も取り入れられている。こうした治療法の1つには、口蓋垂口蓋咽頭形成術(UPPP)がある。UPPPについては、例えば、Harries et al.,「The surgical treatment of snoring,」Journal of Laryngology and Otology,pp.1105〜1106(1996)に述べられており、最大で1.5cmの軟口蓋の切除を行う、とある。いびきの治療におけるUPPPの使用については、Cole et al.,「Snoring:A review and a Reassessment,」Journal of Otolaryngology,pp.303〜306(1995)において評価が行われている。この手術では、軟口蓋の後縁の約2cmの部分をメス、レーザー又は他の外科器具によって切除することによって、軟口蓋が舌と咽喉の咽頭壁との間で振動する傾向を低減させる。この手術はいびきを緩和するうえでしばしば効果的であるが、中度又は重度の無呼吸症ではその効果は限定されていることが示されている。この手術は苦痛をともない、しばしば望ましくない副作用をもたらす。特に、軟口蓋が小さくなることにより、嚥下及び会話を行う際に鼻道が軟口蓋によって密封されにくくなる。口蓋垂口蓋咽頭形成術を受けた患者の25%において、液体を飲みこむ際に口から鼻への液体の漏れが生じると推定されている。
【0009】
口蓋垂口蓋咽頭形成術(UPPP)では、不快感が残る場合がある。例えば、軟口蓋の瘢痕組織は、患者に持続的な刺激を与える場合がある。更に、UPPPは可逆的ではなく、手術の効果に見合わない副作用を誘発する場合がある。更に、UPPPは口蓋のみに起因する機能不全の矯正を目的としており、舌及び咽頭側壁の虚脱にともなう問題は解決されない。
【0010】
軟口蓋の高周波アブレーション、すなわちソムノプラスティー(Somnoplasty(サービスマーク))は、その概念においてレーザー支援型口蓋垂口蓋咽頭形成術(LAUP)と似ているが、異なるエネルギー源を使用し、組織表面を除去するうえでレーザーを使用する代わりに組織内部に熱損傷を生じさせるものである。このため、高周波アブレーションはLAUPに代わるものとして需要が高まりつつある。ソムノプラスティー(Somnoplasty(サービスマーク))装置は、米国食品医薬品局(FDA)により単純ないびきに対する口蓋組織の高周波アブレーション、及びOSAに対する舌根の高周波アブレーションにおける使用が承認されている。特定の場合では、軟口蓋及び舌根の高周波アブレーションはマルチレベルの術式として同時に行われる。現在までのところ、この治療法を単独又は組み合わせで行った場合の症状の緩和率は患者の50%を上回っていない。
【0011】
いびき又は閉塞性睡眠時無呼吸症の治療を目的とした別の装置として、舌又は口蓋垂の組織をより固くして咽頭壁に対してよりたわみにくくするために植え込まれる複数の編組されたPET製の円筒体から構成されるものがある。ミネソタ州セントポール所在のリストア・メディカル社(Restore Medical)より販売されるPillar(商標)Palatal Implant Systemは、FDA 510(k)手続きによって許可されたインプラント装置である。この装置は、軟口蓋の粘膜下に永久的に植え込まれる編組されたポリエステルフィラメントの円筒形状の切片である。この装置のラベル表示には、「Pillar(商標)Palatal Implant Systemは、軽度から中度のOSA(閉塞性睡眠時無呼吸症)の患者の気道閉塞の発生の低減を目的としている」とある。この装置は、押出し(extrusion)、感染、及び患者の不快感などの多くの副作用をともなう。
【0012】
ニューハンプシャー州コンコード所在のインフルエント・メディカル社(Influent Medical LLC)によって販売されるRepose(商標)装置は、口腔底の下顎骨の後面に挿入されるチタン製ネジを使用するものである。縫合糸のループを舌根に通し、下顎骨ネジに取り付ける。Repose(商標)法では、舌根を懸架すなわちハンモックのように吊り上げることにより、睡眠中に舌根が咽頭後壁に対して虚脱しにくくなる。このインプラントによって得られる効果の持続期間は1年未満であると報告されている。覚醒時の舌の活発な動きのため、この装置の縫合糸要素は場合によって舌に対して「チーズカッター」のように作用し、装置の故障を引き起こし、後で取り除く必要があることが示されている。
【0013】
閉塞性睡眠時無呼吸症を治療するためのインプラントとして磁石の使用も考慮されている。こうした装置は現在、臨床試験で評価が行われている。こうしたインプラントで生じうる深刻な合併症の1つとして、インプラントが移動したり磁石が裏返ることがあり、これにより急性の気道閉鎖が起こりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上をまとめると、気道内の筋肉組織の電気的刺激は、深い睡眠から患者を起こしてしまうことから効果的ではない。CPAPはOSAの管理に有効であるが、患者が定められた方法に従ってこの治療法を行う割合(コンプライアンス)が極めて低い(この治療法を続ける患者は50%未満)。外科的手技及びインプラントも評価が行われているが、充分かつ持続的な解決策を与えるには未だにいたっていない。複数の原因による閉塞性睡眠時無呼吸症の問題を1つの装置で治療することが可能な装置はないものと考えられる。したがって、長期的かつ効果的な結果をもたらす低侵襲的アプローチによって、閉塞性睡眠時無呼吸症を管理することの負担を軽減する方法及び装置が求められている。こうした治療装置は、必要に応じて調節可能及び取り外し可能であることが望ましい。本明細書で開示する発明は、OSAの長期的緩和を可能とするこうした治療法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸症を治療するためのシステム及び方法に関するものである。本発明の一実施形態は、閉塞性睡眠時無呼吸症を外科的に治療するための方法であって、咽頭壁の下側に位置する組織空間内に所定の装置を植え込むことによって咽頭壁の形状を変化させる工程を含む方法である。一実施形態では、装置は虚脱に抗するように収縮、すなわち咽頭壁の形状を変化させる。別の実施形態では、装置は、気道の形状を変化させることによって睡眠時の咽頭組織の完全な閉塞を防止する。
【0016】
装置は、睡眠時に咽頭壁の下側の軟部組織の位置を調節し、更に組織の内部成長を可能とする自己支持型の組織係合要素を有するリトラクタである。組織係合要素は、例えば生体適合性のメッシュ又は他の適当な多孔質の布地であってよい。組織係合要素は、繊維を編むこと、織ること、編組すること、不織布製造、フィルム型製品の延伸法(ePTFEなど)若しくは穿孔加工、メルトブロー、押出し成形、カーディング、又は射出成形を含むがこれらに限定されない一般的な加工手段によって製造することができる。リトラクタは、一般に「シート状」又は平面形状であり、リトラクタの幅、長さ、及び厚さの寸法は通常は等しくない。
【0017】
リトラクタは口から差し込み、咽頭壁を通じて咽頭壁の下側の組織内に植え込むことができる。あるいは、リトラクタは患者の頸部の側部から差し込むこともできる。リトラクタは、気道の患部領域の内腔の充分な収縮又は変化を生ずるうえで外科医が適当と考えるように、組織平面内に又は組織平面をまたぐようにして頸部の軟部組織内に配置される。
【0018】
本発明の一実施形態は、咽頭壁の下側の組織に植え込むことによって咽頭壁の形状を変化させるための装置である。装置は、拘束形態及び拘束形態とは異なる非拘束形態を有する収縮要素と、収縮要素に連結され、咽頭壁の下側の組織と係合するように構成された組織係合要素とを備える。収縮要素が拘束形態から非拘束形態に復帰する際に咽頭壁の形状が変化させられる。
【0019】
本発明の別の実施形態は、閉塞性睡眠時無呼吸症を外科的に治療するための方法である。本方法は、咽頭壁の下側に位置する組織内にインプラント装置を導入する工程と、咽頭壁の下側の組織とインプラント装置を係合させることによって咽頭壁の形状を変化させる工程とを含む。
【0020】
本発明は、咽頭壁の形状を変化させることによって閉塞性睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムによって更に実施される。本システムは、組織係合要素と収縮要素とを有するインプラント装置と、ハンドピースと、ハンドピースに動作可能に連結された作動レバーと、ハンドピースから遠位端方向に延びるシャフトと、少なくとも1つのインプラント装置を格納するためにシャフトの遠位端部に配置されたハウジングと、咽頭壁の形状を変化させるために咽頭壁の下側に位置する組織空間内に咽頭壁を通じてインプラント装置を展開するようにレバーによって作動可能な展開装置とを有する手持ち式導入システムと、を備える。
【0021】
本発明の別の実施形態は、咽頭壁を収縮させるための装置である。本装置は、咽頭壁と係合するための中央部分と、中央部分から延びる第1及び第2の収縮部分とを有する細長い繊維状部材を有し、第1及び第2の収縮部分のそれぞれは、頸部の組織と係合して中央部分に引張収縮力を作用させる特徴部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】患者の上気道の概略断面図。
【図1b】患者の上気道の概略断面図。
【図2】患者の上気道の概略断面図。
【図3a】咽頭壁の複数の状態を重ねて示す咽頭壁の断面図。
【図3b】本発明の一実施形態に基づいて植え込まれた2個の咽頭壁リトラクタを示す咽頭壁の断面図。
【図4】本発明の一実施形態に基づくトロカールの平面図。
【図5】本発明の別の実施形態に基づく咽頭リトラクタインプラントシステムの平面図。
【図6a】本発明の異なる実施形態に基づく複数の咽頭リトラクタの図。
【図6b】本発明の異なる実施形態に基づく複数の咽頭リトラクタの図。
【図6c】本発明の異なる実施形態に基づく複数の咽頭リトラクタの図。
【図6d】本発明の異なる実施形態に基づく複数の咽頭リトラクタの図。
【図6e】本発明の異なる実施形態に基づく複数の咽頭リトラクタの図。
【図6f】本発明の異なる実施形態に基づく複数の咽頭リトラクタの図。
【図7】本発明の一実施形態に基づいて植え込まれた咽頭リトラクタを示す患者の上気道の概略図。
【図8】本発明の一実施形態に基づいて植え込まれた咽頭リトラクタを示す患者の上気道の概略図。
【図9】本発明の一実施形態を示す、側頭骨茎状突起よりも下の所定の高さにおける患者の頭部の概略横断面図。
【図10】本発明の一実施形態に基づく咽頭リトラクタの植え込み方法を示す患者の頭部の概略図。
【図11a】本発明の一実施形態に基づく植え込みプロセスの間の2個の咽頭リトラクタを示す患者の上気道の概略断面図。
【図11b】植え込み後の図11aの2個の咽頭リトラクタを示す患者の上気道の概略断面図。
【図12a】本発明の別の実施形態に基づく植え込みプロセスの間の2個の咽頭リトラクタを示す患者の上気道の概略断面図。
【図12b】植え込み後の図12aの2個の咽頭リトラクタを示す患者の上気道の概略断面図。
【図13】本発明の別の実施形態に基づく咽頭リトラクタを示す患者の上気道の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸症を治療する目的で使用することができるインプラント装置及び方法に関するものである。本装置は、本明細書で述べる複数の植え込み法によって咽頭壁の下側の組織に植え込むことが可能である。「咽頭壁の下側」という用語は、自然には存在しないが植え込み工程において形成される咽頭壁の下側の空間のことを指す。新たに形成された空間によって、装置を咽頭壁の裏側(気道に面していない側)に隣接させ、かつ椎前筋膜及び頭長筋などの筋肉組織に接触するようにして植え込むことが可能となる。本装置(本明細書ではリトラクタ又は単に「装置」と呼ぶ)は、組織係合要素に取り付けられた可撓性裏材又はアーチ形状の収縮要素を含みうる。本装置を使用して咽頭壁の特性を変えることができる。例えば、本装置は咽頭側壁上に更なる収縮手段を与えたり、気道の変形した形状を維持することができる。本発明の装置は、咽頭壁を収縮させるか又は支持することによって、咽頭壁が虚脱した場合に顕在化しうるあらゆる閉塞部位を空気が通過して流れることを可能とするものである。本装置を使用することによって咽頭の気道の形状を変化させることもできる。
【0024】
図2は、副鼻腔(N)、硬口蓋(HP)の骨(B)、軟口蓋(SP)、口腔(M)、舌(T)、気管(TR)の喉頭蓋(EP)、食道(EP)、及び咽頭後壁(PPW)などの解剖学的構造を有する患者の頭部の断面図を示したものである。咽頭側壁(この図では示されていない)はその名が示すとおり、咽頭後壁の側方に位置する。Schwab et al.,「Upper airway and soft tissue changes induced by CPAP in normal subjects,」Am.J.Respir.Crit.Care Med.,Vol 154,No.4,Oct 1996,1106〜1116に述べられるCPAP使用者を対象としたイメージングの研究によれば、咽頭側壁は軟口蓋及び舌よりもより「たわみ性」が高い。これらの研究は、咽頭側壁が上気道の内径を左右する重要な役割を担っていることの根拠を与えるものである。特定の開示される実施形態では、本明細書で述べるインプラント装置の目的は、咽頭壁を横方向に収縮させることにある。この横方向への収縮は、これらの軟部組織構造が虚脱することを防止し、特に息を吸ったときに横隔膜が下がり、咽頭壁を虚脱させるように作用しうる過剰な陰圧を生じる場合に患者の気道を維持する機能を有する。特定の他の開示される実施形態では、インプラント装置の目的は、息を吸い込む際に互いに閉じ合わされる組織同士、より詳細には舌根と咽頭後壁及び/又は咽頭側壁との形状が一致しないことにより閉塞できないような気道の変形した形状を与えることにある。
【0025】
図3aは、咽頭後壁(PPW)及び咽頭側壁(LPW)を含む中咽頭の高さの咽頭の断面図を示したものである。中咽頭は、拡張(収縮)した状態が実線で示されており、通常の弛緩した状態及び部分的に虚脱した状態が点線で示されている。図3bに示されるように、本発明に基づく1対のインプラント装置301a、301bにより咽頭の左側壁(LLPW)及び右側壁(RLPW)は、横隔膜が下がることによって発生する陰圧に抗して気道を開放状態に維持する。後に組織がインプラント装置と係合し、装置内へと組織が内部成長302することにより、メッシュ細片が固定され、これにより収縮状態が安定化される。
【0026】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのトロカールに解放可能に取り付けられるインプラント装置である。図4は、遠位端部401及び近位端部上のハンドル402を有するトロカール400を示す。インプラント装置が取り付けられた遠位端部401は、咽頭壁を貫通して咽頭壁の下側の組織内部へと通される。次いでインプラント装置は、咽頭壁の下側に形成された空間内に配置される。
【0027】
場合によりトロカール400は、標的組織の近くに位置するあらゆる動脈構造中の血流を検出できるドップラープローブ(図に示されていない)を有してもよい。プローブは遠位端部401の内部に埋め込むことで、特に頸部の患部領域内の複数の組織面を貫通してインプラント装置を設置するような所定の方法が用いられる場合に、組織内を案内して血管を損傷しないようにすることができる。
【0028】
トロカールを使用した低侵襲的アプローチ以外に、本装置は患者の頸部の側部から咽頭壁に開放的かつ直接的にアプローチすることによって咽頭壁の下側に配置することもできる。1個の装置又は1個よりも多い装置を用いて患者を治療することができる。
【0029】
図5は、トロカール400へのメッシュ装置500の取り付け方の一例を示したものである。メッシュ装置500は、トロカールの遠位端部を覆うプラスチック製のトロカールスリーブ502の近位端部に固定される。プラスチック製のトロカールスリーブの端部へのメッシュの固定は、巻きつけ、溶接、接着剤による接着、結びつけ、クリップ、又は他の適当な手段の使用によって行うことができる。一実施形態では、装置500はポリプロピレン又は組織係合性に基づいて選択された別の多孔質の生体適合性材料から形成される。
【0030】
図に示される実施形態では、インプラント装置500は保護シース501によって覆われている。延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PVDF、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン又はポリウレタンなどのポリマーを保護シースの構造中に用いることができる。保護シースの材料及び構成法は、シースと周囲の組織との摩擦及び引っかかりを最小に抑えるように選択される。保護シース501の目的は、挿入時のインプラント装置に対する組織の抵抗を最小に抑え、装置を配置する際に非標的組織のいかなる剥離又は刺激を防止することである。
【0031】
使用時には、トロカールの遠位端部401(図4)を咽頭壁の側部又は後部において、又はその近くで咽頭壁に貫通させる。必要に応じて、植え込み工程の直前に形成した切開部を利用することによってトロカールの挿入を助けることもできる。切開の部位及び装置の向きは外科医によって決定され、個々の患者の解剖学的構造及び咽頭虚脱の部位によって決まる。あるいは、トロカール400は遠位端部401に咽頭壁の粘膜表面を貫通するための鋭いエッジを有してもよい。次いでトロカールを使用して咽頭壁にメッシュ装置500を通し、装置を咽頭壁の下側の組織中に留置する。一実施形態では、咽頭壁を貫通し、咽頭壁の下側の組織に通した後、トロカールの先端部を咽頭壁の下側を通して気道内部へと第2の位置において再び咽頭壁に貫通させる。次いで、保護シースがメッシュを包囲して組織を保護した状態でプラスチック製のトロカールスリーブを用いてメッシュを組織から引き抜く。次いで、プラスチック製のトロカールスリーブ及び保護シースを引き抜く。咽頭リトラクタが必要な長さよりも長い場合には、リトラクタをわずかに引っ張りながら所定の長さにトリミングして咽頭壁内に残る長さを短くする。次いで咽頭壁の切開部を縫合糸、クリップ、又は生体適合性の組織接着剤によって閉じる。
【0032】
図6aは、本発明に基づくインプラント装置の一実施形態を示したものである。装置は、一定の長さのメッシュ600の部分として図6aに示される組織係合要素を含む。図6aの実施形態では、メッシュには他の材料は付着しておらず、付属もしていない。組織係合要素は、咽頭壁の下側の空間に植え込み可能である。この要素は、植え込まれた際に周辺組織に対して摩擦を生ずる、又は係合することによって組織内に配置された後の動きに抗するように構成されている。
【0033】
生体適合性の組織係合要素600は、治癒する際にメッシュに入り込んでメッシュと一体化する瘢痕組織としての組織の内部成長を更に受容することができる。この瘢痕組織は、組織係合要素が植え込まれた組織の全体の容積を強化する。要素は周辺組織の構造的内部成長を促し、更に組織の細胞内部成長をも促しうるものである。
【0034】
多くの医療用の繊維設計が、ヘルニア修復用のメッシュ、布地、不織布などの製造分野の当業者には知られている。医療用の繊維製品は布地に基づいたものであり、こうした布地には織布、編布、編組布、及び不織布の4種類がある。これらのうちの最初の3つのものは撚糸から製造されるが、4番目のものは繊維から直接製造するか、あるいはGore−Tex(登録商標)ベースの製品又はポリウレタンから静電紡糸された材料などのポリマーから製造することもできる。したがって階層構造が存在し、最終的な繊維製品の性能は、その構造が2〜4段階の異なる組織化のレベルで改変されるポリマーの性質に影響される。
【0035】
多くの異なる種類のポリマーのうち、有用な繊維を製造することができるものは数種類にすぎない。これは、繊維製品に首尾よくかつ効率的に転換されるのに先だって、ポリマーが特定の必要条件を満たさなければならないことによる。例えば、ポリマー鎖は、直鎖、長鎖、かつ可撓性である必要がある。ポリマーの側鎖は、単純なものか、小さいものか、又は極性を有するものでなければならない。ポリマーは、押出しを行うために溶解可能又は溶融可能なものでなければならない。ポリマー鎖は、配向及び結晶化させることができるものでなければならない。
【0036】
一般的な繊維形成用ポリマーとしては、セルロース系(リネン、綿、レーヨン、アセテート)、タンパク質(羊毛、絹)、ポリアミド、ポリエステル(PET)、オレフィン、ビニル、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アラミド(Kevlar、Nomex)、及びポリウレタン(Lycra、Pellethane、Biomer)などがある。これらの材料はいずれも、化学構造及び潜在的な性質において独特のものである。例えば、ポリウレタンのなかには、エラスチン組織繊維とほぼ性質が一致する、高い伸長率及び弾性回復率を有するエラストマー材料がある。この材料は、繊維状、小繊維状、又は布地状に押し出された場合に、結晶質の硬質単位と非結晶質の軟質単位とが交互に繰り返すパターンからその高い伸長率及び弾性が誘導される。
【0037】
上記に述べた材料のうちの幾つかのものは、従来の繊維用途以外にも医療用途で用いられているが、様々なポリマー材料(吸収性と非吸収性の両方)が医療品における使用を目的として特に開発されている。
【0038】
繊維状構造と接触した場合の組織の反応性は材料によって異なり、化学的特性と物理的特性の両方によって決定される。吸収性材料は、吸収プロセス自体の性質により、一般的により強い組織反応を引き起こす。利用可能な材料のうち、あるものはより速やかに吸収され(例えば、ポリグリコール酸、ポリグラクチン酸)、あるものはゆっくりと吸収される(例えば、ポリクリコネート)。綿及び絹などの半吸収性の材料は、一般にそれほど強い反応は引き起こさないものの、組織反応は長期にわたって持続する場合がある。非吸収性材料(例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン)は不活性であり、反応はほとんど引き起こさない傾向がある。組織反応を最小限に抑えるため、触媒及び添加剤の使用は医療グレードの製品では慎重に管理される。
【0039】
上記で述べたように、多くのポリマーの種類のうち、医療用の繊維製品に転換することができる有用な繊維を製造することが可能なものは数種類に過ぎない。繊維を製造するには、ポリマーを湿式、乾式、又は溶融紡糸によって押出しした後、加工して所望のテクスチャ、形状、及びサイズを得る。形態を慎重に制御することにより、幅広い機械的性質を有する繊維を製造することができる。引張り強度は、2〜6g/d(グラム/デニール)の繊維における値(衣料品などの一般的な繊維製品において必要とされる値)から、6〜10g/dの工業用の値(タイヤコード及びベルトなどの工業製品に一般的な値)まで変化しうる。防弾チョッキ又は構造用複合材料などの高性能用途では、新規な紡糸技術によって強度が30g/dに達する繊維を製造することができる。同様に、破断伸長率も繊維用途における10〜40%から工業用途における1〜15%及びエラストマー繊維における100〜500%と幅広い範囲で変化しうる。
【0040】
繊維又はフィラメントは、強度、耐摩耗性、及び取り扱い性を向上させる撚糸加工又はエンタングル加工によって撚糸に転換される。撚糸の性質は、繊維又はフィラメントの性質及び撚りの角度によって決まる。撚糸は、織り加工、編み加工、及び編組加工などの様々な機械加工によって布地に織り上げることができる。医療用インプラント又は縫合糸で広く使用されている繊維構造には次の3つのものがある。すなわち、2組の撚糸が直角に織り合わされた織布、撚糸のループが相互に編み合わされた編物、及び3本以上の撚糸が斜めのパターンに互いに交差する編組物である。編まれた布地は横糸又は縦糸の編物であってよく、編組された製品は芯を有するか又は有さない管状構造及びリボンを含みうる。
【0041】
ニードルフェルト化、水流交絡、又は熱、化学、若しくは接着プロセスによって結合された繊維から直接製造される不織布(拭き取り布、スポンジ、包帯、ガウン)にも多くの医療用途がある。不織布は、ポリマーから直接製造することもできる。縫合糸及び動脈グラフトのような延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製品、並びに管状構造として使用される静電紡糸ポリウレタンは、ポリマーから直接製造された不織布の医療用途の例である。
【0042】
布地の性質は、布地を構成する撚糸又は繊維の特性及び形成された構造の幾何形状によって決まる。布地が織布、編物、編組物、又は不織布のいずれであるかはその挙動に影響する。織布は通常、寸法安定性に優れているが、他の構造と比較して伸展性は低く、より多孔質である。織布の短所の1つは、植え込みのために直角又は斜めに切断する際に縁がほころびる傾向があることである。しかしながら、2本の縦糸を1本の横糸の周りに絡みつけるレノ織りとして知られる縫い合わせ技術により、こうしたほつれ又はほころびを実質的に緩和することができる。
【0043】
織布と比較して横糸を使って編まれた構造は伸展性が高いものの、更なる撚糸を使うことによってループを絡み止め、弾性回復性を高める一方で伸展性を低下させないかぎりは寸法安定性は低い。縦糸を使って編まれた構造は汎用性が非常に高く、織布の機械的性質と一致する様々な機械的性質を有するように加工することができる。編まれた材料の主たる長所は、その柔軟性及び切断時にほころびにくい固有の性質である。編まれた布地の潜在的な制約はその高い多孔度であり、その多孔度は織布の多孔度と異なり、構造によって決定される特定の値以下には低下させることができない。その結果、極めて低い多孔度を必要とする用途では、織布材料を通常使用する。
【0044】
編組構造は通常、コード及び縫合糸に使用されており、芯を有するかあるいは有さない複数の異なるパターンを用いて設計することができる。撚糸が互いに交錯しているため、編組材料は通常は多孔質であり、撚糸又はフィラメント間の間隙内に液体を吸収することができる。毛管効果を低下させるため、編組材料はしばしば生分解性(ポリ乳酸)又は非生分解性(テフロン(Teflon)(登録商標))コーティングで処理される。こうしたコーティングは更に、身体が動く際のがたつき又は雑音を低減させ、手触り又は触感をよくし、患者の体外から創口自体まで外科医の指からの圧力によって送り込まなければならない縫合糸の結び目の位置決めを助ける機能も有する。
【0045】
不織布の性質は、不織布を構成するポリマー又は繊維の性質によって、また、結合プロセスによって決まる。例えば、延伸PTFE製品は、異なる多孔度の条件を満たすように形成することができる。これらの材料は、その微小構造が延伸されていることから圧縮してから引き伸ばすことが容易にできるため(例えば縫合糸を引き伸ばして組織に形成された針穴を埋めることができる)、動脈及びパッチグラフトといった用途で組織の内部成長が可能となる。ポリウレタンベースの不織布からは、構造的と機械的性質の両方において、特にコンプライアンス(単位圧力又は応力当たりの延伸率)においてコラーゲン様物質に似た製品が製造される。PTFEとポリウレタンのいずれから誘導された不織布の多孔度も、製造プロセスを制御することによって効果的に調節することができる。
【0046】
本発明の一実施形態では、インプラント装置に用いられる組織係合要素は、直径が約76.2〜152.4マイクロメートル(3〜6ミル)の単一フィラメントのポリプロピレン撚糸を縦編みすることによって製造される。例示的な一実施形態では、撚糸は直径88.9マイクロメートル(3.5ミル)である。この実施形態では、編まれたメッシュは、好ましくは1cm当たり15〜31横列(1インチ当たり40〜80横列)及び1cm当たり2〜4縦列(1インチ当たり7〜11縦列)を有する。他の医療用繊維製品の設計を用いることも可能である。
【0047】
上記に述べたポリマー繊維以外に、非ポリマー繊維を本発明で用いる織布、編組物、編物、及び不織布を構成する目的で使用することができる。例えば、ニチノール又はステンレス鋼繊維を単独又はポリマー繊維などの他の繊維と組み合わせて使用することによって収縮性が変化した組織係合要素を構成することができる。
【0048】
また、穿孔したフィルム状製品(図には示されていない)を用いて組織係合要素を製造することもできる。そのような実施形態では、ポリマーフィルムに、組織と係合して組織の内部成長を可能とするような多数の孔を穿孔する。孔のサイズ及び間隔は、これらの機能に合わせて最適化することができる。更に、孔のサイズ及び間隔をフィルム上で変化させることによってフィルム上の特定の位置において組織のよりしっかりとした係合を促すことができる。
【0049】
組織係合要素は、他の種類の組織係合特徴部を単独で又は穿孔と組み合わせて有するフィルムを含んでもよい。例えば、フィルムは波状形成部、ディンプル、刻み目、又は組織係合要素に対して押しつけられる組織と係合する他のエンボス加工、型成形、若しくは機械加工された浮き彫り状パターンを含んでもよい。穿孔部の全体又は一部が、周辺組織と係合する隆起した縁部を含んでもよい。
【0050】
図6bに示される可撓性の裏材又はアーチ601のような収縮要素を使用することができる。収縮要素601は、ステンレス鋼、ニチノール、シリコーン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリプロピレンなどの生体適合性材料から製造される。収縮要素は、嚥下及び会話などにおけるように咽頭壁が毎回動く度にひずみサイクルを経るため、好ましくは疲労破壊をおこさずに多数回の曲げサイクルに耐えうるものであることが好ましい。収縮要素601は、下記により詳細に述べるように、展開時に咽頭壁の1又は2以上の特性を変化させるような特定方向の力を作用させるように所定の3次元形状で製造することができる。
【0051】
別の実施形態では、収縮要素は実質的に非可撓性であってもよい。非可撓性の収縮要素は、チタン、ステンレス鋼、又はセラミックから製造することができる。非可撓性の収縮要素を含むインプラント装置を使用することによって咽頭壁の形状を維持して虚脱を防止することができる。
【0052】
本発明の別の実施形態では、図6cに示されるように、収縮要素601を組織係合要素600に取り付けることができる。この取り付けは、接着剤、縫合糸、クリップ、ホチキス、ネジ、又は超音波溶接などの他の締結手段によって行うことができる。上記に述べたように、組織係合要素は、植え込み後に周辺組織と係合して組織の内部成長を促し、周辺組織と永久的に一体化される。その結果、収縮要素601は咽頭壁の下側の定位置に永久的に固定され、移動することはない。これにより、咽頭壁が睡眠時に虚脱して呼吸を閉塞する可能性が低減される。
【0053】
本発明の別の実施形態では、組織係合要素、収縮要素、又はその両方を、ポリラクチド、ポリグラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、又はこれらのコポリマーなどの再吸収性合成ポリマーから少なくとも部分的に製造することができる。軟部組織の長期的な形状は、インプラントの吸収性成分が再吸収されるに従って組織係合要素の周囲又は組織係合要素の内部を通じて形成される組織の存在によって与えられる。
【0054】
図6d〜6fは、メッシュ状の組織係合要素とアーチ形の収縮要素の両方を有する本発明のインプラント装置の幾つかの実施形態の断面図を示したものである。図6dは、図6cの装置の断面図であり、組織係合要素601の一方の側面が収縮要素601に取り付けられている。組織係合要素601は、シアノアクリレート、シリコーン、及びホットメルトポリマーなどの接着剤を使用して取り付けることができる。接着剤は、吸収性又は非吸収性のものであってよい。あるいは、組織係合要素は、縫合糸及びクリップのような機械的固定手段を使用して取り付けることもできる。
【0055】
あるいは、図6eに示されるように、収縮要素は小さな幅を有するものを製造し、これをメッシュ要素に通すか織り込んでもよい。図は、可撓性アーチが、組織係合要素を含むスリーブ603の内部に収納されている実施形態を示している。あるいは、収縮要素は孔、溝、又は収縮要素を組織係合要素の布地内に織り込むことを可能とする他の特徴部(図には示されていない)を含んでもよい。
【0056】
図6fに示される実施形態では、メッシュ600は、メッシュ要素の両側に1個ずつ配された2個の収縮要素601a及び601bに取り付けられている。図に示された実施形態はいずれも咽頭壁の持続的収縮又は形状変化を与えるうえで使用することができる。
【0057】
場合に応じて、放射線不透過性又は超音波感受性材料などの画像強調物質を咽頭リトラクタの任意の表面上に積層することによって展開時又は展開後の装置のイメージングを補助することができる。別の実施形態では、トリクロサン若しくは抗生物質などの抗微生物剤又は疼痛管理薬を、展開に先だって咽頭リトラクタを構成する各要素の1又は2以上の表面に塗布又はコーティングする。あるいは、押出し、混合、キャスティング、溶媒混合、又は他の一般的なポリマー加工手段によって製造プロセスの間に薬剤をポリマーに含有させることもできる。吸収性成分に薬剤を含有させることによって創口が治癒する間に物質の放出を制御又はプロファイルすることができる。
【0058】
患者の体内のインプラント装置の向きは、特定の患者の解剖学的構造に応じて選択することができる。例えば、細長い装置は、図7に示されるように、装置の両端部が咽頭と同じ平面内、又は咽頭軸(PAX)に平行な平面内となるように、すなわち装置の長軸が咽頭軸と平行となるように配置することができる。あるいは、メッシュストリップは図8に示される装置800によって示されるように咽頭軸(PAX)に垂直に配置してもよい。その場合、メッシュストリップの長手軸は咽頭軸と直交する。いずれの場合も、インプラント装置(収縮要素を有するか又は有さない)は、吸気時の虚脱が防止されるよう、咽頭壁の形状を変化させるように外科医によって配置される。
【0059】
低侵襲的アプローチとしてトロカールを使用してインプラント装置を配置する以外にも、本発明の装置は、患者の頸部の側部から咽頭に到達する開放的かつ直接的な視覚化アプローチによって咽頭壁の下側に配置することもできる。咽頭壁の下側の組織空間への同様なアプローチは、頸部椎間板置換術を行うために用いられている。本発明ではこのアプローチを例えば通院治療又は一泊入院で用いることができる。
【0060】
本発明のインプラント装置は、組織係合特徴部910を有する繊維状要素905として製造されるか又は繊維状要素905を含むリトラクタ900であってよい(図9)。組織係合特徴部は、図に示されるような逆棘のような方向性を有する摩擦特徴部であってもよく、織物の摩擦特徴部のような方向性を有さない摩擦特徴部であってもよい。繊維状要素905は、逆棘状の単一フィラメントとして、編組体に摩擦要素が収容された編組織物構造として、逆棘/編組構造の組み合わせとして、あるいは粗面化若しくは高摩擦表面を有する織物又はフィラメントとして製造することができる。
【0061】
図9は、舌T、下顎M、皮膚S、咽頭後壁PPW、及び咽頭気道PAを示す患者の頸部の断面である。各繊維状要素905は、要素905の両端部が咽頭壁の外側面の内側に位置する1個の孔に入るようにして口腔内部から咽頭壁に通過させられている。この配置では、リトラクタ900は前/後の向きで通過させてよく、頸部の皮膚から突き出ている。図5に示されるシース501と似た保護シースを、繊維状要素905を配置する際、特に組織係合要素が方向性を有さない摩擦特徴部である場合に組織を保護する目的で使用することができる。配置後、リトラクタの中央部分930が咽頭壁の下側の組織と係合する。繊維状要素905には針920を取り付けて配置を助けることができる。
【0062】
繊維状要素905は、咽頭側壁の下側の組織に張力を生ずるか、あるいは各要素が通過時にわずかに後方/側方及び前方/側方の角度で配置される場合には、側壁のテント効果を生ずることによって咽頭壁を収縮させるように付勢される。充分な張力が作用し、側壁が懸吊された時点で、繊維状要素905の両端部を皮膚Sの表面と面一となるようにトリミングし、わずかに収縮させて皮下の定位置に維持する。あるいは、リトラクタ要素を患者の頸部の側部組織から突き出るように直接側方に通過させて咽頭壁を直接側方に懸吊することもできる。
【0063】
別の植え込み方法では、上記に述べたような咽頭リトラクタを口腔経路を通じて植え込む。その最も単純な実施形態では、装置の植え込み方法は、口から直接咽頭壁を見ながらメス、ピンセットなどの従来の外科器具を使用する。あるいは、装置は手持ち式の導入システムを用いて植え込むこともできる。図10は、上記で図6a〜6fに示したような咽頭リトラクタの1つを導入するのに用いられるアプローチを示したものである。手持ち式導入システム1000は、ハンドピース1090、ハンドピース1090から延びるシャフト1091、及びシャフト1091の遠位端部1093のハウジング1092を含む。ハウジングは、咽頭リトラクタ1094の少なくとも1つを保持することができる。咽頭リトラクタは、拘束形態でハウジングに収容されている。
【0064】
咽頭リトラクタは、ハンドピース1090のレバー1097によって作動される展開手段によって導入システムから進められる。咽頭リトラクタはハウジングから進められると、咽頭後壁又は咽頭側壁のいずれかに予め形成された切開口を通じて展開される。あるいは、導入システムの最遠位端の部分がリトラクタ1094の展開時に咽頭壁の貫通を容易にする鋭いエッジを有してもよい。次いで、リトラクタを咽頭壁の下側に設置することによって気道を常に収縮状態とすることができる。
【0065】
図11a及び11bは、本発明の装置を2個植え込むことによって咽頭の気道の形状を変化させる効果を示したものである。咽頭左側面と右側面との間の距離は距離Aによって表される。リトラクタ1120は図11aでは拘束形態で示されており、各リトラクタの両端部の間の距離Bは、非拘束状態のリトラクタの両端部の間の距離よりも大きくなっている。リトラクタは、導入カニューレ又は中空のスタイラスの内部で先端部1121a、1121bが開いた拘束状態に維持されている。インプラント装置は、カニューレ又は中空のスタイラスの予め規定された円弧内で咽頭壁の下側の組織内に通過させられる。
【0066】
スタイラスを進め終えた後、カニューレ/スタイラスが咽頭壁の下側の貫通された組織から引き抜かれる間にインプラント装置を固定位置に維持するプッシャーによって、インプラント装置はカニューレ又はスタイラスから排出される。インプラント装置が動かずに、スタイラスがインプラント装置の周囲から引き抜かれると効果的である。展開後、インプラント装置は非拘束形態に復帰し、リトラクタ1120’の先端部1121a’、1121b’は、図11bに示されるように距離Bよりも小さいB’として表わされる距離にまで収縮する。
【0067】
インプラント装置が咽頭壁1030の下側の定位置に配置されると、装置の先端部1121a,1121bが咽頭壁と係合することにより、先端部間の距離Bが変化して咽頭壁の形状が変化する。例えば、各先端部は咽頭壁の一部を先端部間に挟み込むことによって咽頭壁と係合する。別の例では、先端部1121a,1121bは、逆棘、フック、粗面加工、又は先端部の咽頭壁との係合状態を維持して咽頭壁に力を作用させるための別の組織係合特徴部を有してよい。
【0068】
2個の装置の展開後、咽頭側壁間の距離はA’まで大きくなり、気道の形状が変化して咽頭壁1130に気道の軸と平行な曲率半径の小さな2本の不規則な小溝1140、1141が形成される。溝の形状は、患者が睡眠状態にあって舌の筋肉組織が弛緩している間に、弛緩した舌がこれらの位置に沿って咽頭壁とシールを形成することが防止されるように充分に小さい。舌は咽頭後壁とシールを形成しうるが、外側面は開放溝1140、1141として維持されるため、空気が閉塞部を通過して効果的に流れることが可能である。
【0069】
図12a及び12bに示される本発明の別の実施形態では、2個のインプラント装置1220を使用して咽頭の気道の前後方向の収縮を生じさせて気道の形状を変化させる。咽頭前壁表面と咽頭後壁表面との間の距離が、図12aにおいて距離Bとして示されている。図11で述べた実施形態と同様、インプラント装置が展開カニューレ又は中空のスタイラスを使用して展開される状態が図12に示されている。カニューレ又は中空のスタイラスは、自由状態のインプラント装置の半径よりも小さい半径を有するアーチ形の湾曲した内部空間を有している。装置は、基本的にはカニューレ又はスタイラス内部に拘束形態で収容され、展開時に放出される。この場合もやはり、中空のカニューレ又はスタイラスの内部からの装置の排出は、カニューレが収縮される際に装置を固定位置に維持するプッシャーを使用することによって行われる。
【0070】
排出時には、インプラント装置の半径が大きくなり、装置の先端部間の距離が大きくなる。非拘束状態の装置1220’の両端部間の距離は、拘束状態の装置の両端部間の距離よりも大きいため、咽頭の気道の前後方向の寸法BはB’へと大きくなり、これにより図12bに示されるように咽頭壁の曲率半径が大きくなることにより気道の形状が変化する。この実施形態では、インプラント装置の使用によって形状が変化させられた咽頭壁の側部の部位に当接する舌縁部から舌根もまた部分的に収縮している。
【0071】
図11及び12に示されるインプラント装置は、それぞれの咽頭側壁位置の下側の空間に示されているが、図13に示されるように1個の装置1320を咽頭後壁(PPW)の下側に咽頭軸(PA)と同心状に配置することもできる。この位置では、装置は両方の咽頭側壁(LLPW及びRLPW)の形状を変化させることによって気道の断面積を増大させる。睡眠時の咽頭壁の虚脱の重篤度に応じて異なる長さの装置が可能である。覚醒状態における咽頭壁の虚脱の場合では、インプラント装置は、図12に示されるリトラクタと同様に挿入された際に拡張して覚醒状態における更なる収縮を与えるように製造することもできる。
【0072】
上記に述べた装置、システム、及び外科的方法は、通院治療で行うことが潜在的に可能な単純な低侵襲処置を提供するものである。こうした処置の結果は即時的かつ長期的である。この植え込まれた装置は舌骨又は軟口蓋と衝突しないため、嚥下や会話に影響を及ぼしにくい。本発明は更に、生体適合性を長期的に持続する材料を使用する。
【0073】
以上の詳細な説明及びそれに付属する図面は、すべての点において説明的かつ例示的なものであって限定的ではないものとして理解されるべきであり、本明細書に開示される発明の範囲は発明の詳細な説明において決定されるものではなく、特許法によって認められる完全な範囲に従って解釈される特許請求の範囲において決定されるものである。本明細書で図示及び説明した実施形態はあくまで本発明の原理を説明するためのものに過ぎず、当業者によれば発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な改変を実施することが可能である点は理解されるべきである。
【0074】
〔実施の態様〕
(1) 咽頭壁の下側の組織に植え込むことによって前記咽頭壁の形状を変化させるための装置であって、
拘束形態及び前記拘束形態とは異なる非拘束形態を有する収縮要素と、
前記収縮要素に連結され、前記咽頭壁の下側の前記組織と係合するように構成された組織係合要素と、を備え、
前記収縮要素が前記拘束形態から前記非拘束形態に復帰する際に前記咽頭壁の形状が変化させられる、装置。
(2) 前記収縮要素及び前記組織係合要素の少なくとも一方に取り付けられ、前記収縮要素及び前記組織係合要素を前記咽頭壁の下側の前記組織内に配置するための形状を有するトロカールを更に備える、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記トロカールの遠位端部を包囲するプラスチックスリーブを更に備え、前記装置が前記プラスチックスリーブの近位端部に取り付けられる、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記装置が植え込まれる際に非標的組織を保護するために前記組織係合要素の少なくとも一部を覆うシースを更に備える、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記組織係合要素が、医療用織物及び穿孔されたシートからなる群から選択される材料を含む、実施態様1に記載の装置。
(6) 前記組織係合要素が、逆棘、突起、ベロア、及びフック要素からなる群から選択される組織係合特徴部を含む、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記収縮要素が、ニチノール、ステンレス鋼、タンタル、及びチタンからなる群から選択される金属から構成される、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記収縮要素が可撓性アーチを含む、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記収縮要素及び前記組織係合要素が、接着剤、縫合糸、クリップ、リベット、織り込み、及び封入からなる群から選択される取付け手段を使用して取り付けられる、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記装置に塗布される画像強調物質であって、放射性不透過性物質及び音波発生物質からなる群から選択される、物質を更に含む、実施態様1に記載の装置。
【0075】
(11) 前記装置に塗布される薬剤であって、抗微生物剤、鎮痛剤、抗生物質、抗炎症剤、痛み止め薬からなる群から選択される、薬剤を更に含む、実施態様1に記載の装置。
(12) 閉塞性睡眠時無呼吸症を外科的に治療するための方法であって、
咽頭壁の下側に位置する組織内にインプラント装置を導入する工程と、
前記咽頭壁の下側の前記組織と前記インプラント装置を係合させることによって前記咽頭壁の形状を変化させる工程と、を含む、方法。
(13) 前記咽頭壁に1又は2以上の切開口を形成する工程を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記咽頭壁の一部の曲率半径を変化させる工程を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記インプラント装置内への組織の内部成長を誘導する工程を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(16) 前記導入する工程が、前記インプラント装置を口から前記咽頭壁を通じて前記咽頭壁の下側の前記組織内に差し込む工程を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(17) 前記導入する工程が、
前記咽頭壁にトロカールを貫通させる工程と、
前記トロカールを操作して前記装置を前記咽頭壁の下側の前記組織内に導入する工程と、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(18) 前記導入する工程が、
拘束状態の少なくとも1つのインプラント装置を収納した手持ち式導入システムの遠位端部を前記咽頭壁に隣接して配置する工程と、
前記手持ち式導入システムのレバーを作動させて前記インプラント装置を前記咽頭壁の下側の前記組織内に展開する工程であって、前記インプラント装置が、前記拘束状態とは異なる形状を有する非拘束状態をとる、工程と、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(19) 前記インプラント装置が前記装置の少なくとも一部を包囲する保護シースを含み、前記方法が、
前記シースを取り外すことによって前記インプラント装置を前記咽頭壁の下側の前記組織と係合させる工程を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(20) 咽頭壁の形状を変化させることによって閉塞性睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムであって、
組織係合要素と収縮要素とを含むインプラント装置と、
ハンドピースと、前記ハンドピースに動作可能に連結された作動レバーと、前記ハンドピースから遠位方向に延びるシャフトと、少なくとも1つのインプラント装置を格納するために前記シャフトの遠位端部に配置されたハウジングと、前記咽頭壁の形状を変化させるために、前記咽頭壁の下側に位置する組織空間内に前記咽頭壁を通じて前記インプラント装置を展開するように前記レバーによって作動可能な展開装置と、を含む手持ち式導入システムと、を備える、システム。
【0076】
(21) 前記インプラント装置が拘束状態と、前記拘束状態とは異なる形状を有する非拘束状態とを有し、
前記シャフトの前記遠位端部に配置された前記ハウジングが、前記拘束状態の前記少なくとも1つのインプラント装置を格納するためのものである、実施態様20に記載のシステム。
(22) 前記インプラント装置が2個の端部を有するアーチ形部材を含み、前記端部間の距離が、前記インプラント装置が前記拘束状態から前記非拘束状態に変化する際に変化する、実施態様21に記載のシステム。
(23) 前記手持ち式導入システムの前記遠位端部が、
内部を通じて前記インプラント装置を展開する切開口を前記咽頭壁に形成するための鋭いエッジを更に含む、実施態様20に記載のシステム。
(24) 咽頭壁を収縮させるための装置であって、
前記咽頭壁の下側の組織と係合するための中央部分と、前記中央部分から延びる第1及び第2の収縮部分とを有する細長い繊維状部材を含み、前記第1及び第2の収縮部分のそれぞれが、頸部の組織と係合して前記中央部分に引張収縮力を作用させる特徴部を有する、装置。
(25) 前記細長い繊維状部材が単一フィラメントを含み、前記頸部の組織と係合して前記中央部分に引張収縮力を作用させる前記特徴部が逆棘を含む、実施態様24に記載の装置。
(26) 前記収縮部分の少なくとも一方の遠位端部に取り付けられて前記頸部の前記組織にその収縮部分を通過させる針を更に含む、実施態様24に記載の装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
咽頭壁の下側の組織に植え込むことによって前記咽頭壁の形状を変化させるための装置であって、
拘束形態及び前記拘束形態とは異なる非拘束形態を有する収縮要素と、
前記収縮要素に連結され、前記咽頭壁の下側の前記組織と係合するように構成された組織係合要素と、を備え、
前記収縮要素が前記拘束形態から前記非拘束形態に復帰する際に前記咽頭壁の形状が変化させられる、装置。
【請求項2】
前記収縮要素及び前記組織係合要素の少なくとも一方に取り付けられ、前記収縮要素及び前記組織係合要素を前記咽頭壁の下側の前記組織内に配置するための形状を有するトロカールを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記トロカールの遠位端部を包囲するプラスチックスリーブを更に備え、前記装置が前記プラスチックスリーブの近位端部に取り付けられる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が植え込まれる際に非標的組織を保護するために前記組織係合要素の少なくとも一部を覆うシースを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記組織係合要素が、医療用織物及び穿孔されたシートからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記組織係合要素が、逆棘、突起、ベロア、及びフック要素からなる群から選択される組織係合特徴部を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記収縮要素が、ニチノール、ステンレス鋼、タンタル、及びチタンからなる群から選択される金属から構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記収縮要素が可撓性アーチを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記収縮要素及び前記組織係合要素が、接着剤、縫合糸、クリップ、リベット、織り込み、及び封入からなる群から選択される取付け手段を使用して取り付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置に塗布される画像強調物質であって、放射性不透過性物質及び音波発生物質からなる群から選択される、物質を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記装置に塗布される薬剤であって、抗微生物剤、鎮痛剤、抗生物質、抗炎症剤、痛み止め薬からなる群から選択される、薬剤を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
咽頭壁の形状を変化させることによって閉塞性睡眠時無呼吸症を治療するためのシステムであって、
組織係合要素と収縮要素とを含むインプラント装置と、
ハンドピースと、前記ハンドピースに動作可能に連結された作動レバーと、前記ハンドピースから遠位方向に延びるシャフトと、少なくとも1つのインプラント装置を格納するために前記シャフトの遠位端部に配置されたハウジングと、前記咽頭壁の形状を変化させるために、前記咽頭壁の下側に位置する組織空間内に前記咽頭壁を通じて前記インプラント装置を展開するように前記レバーによって作動可能な展開装置と、を含む手持ち式導入システムと、を備える、システム。
【請求項13】
前記インプラント装置が拘束状態と、前記拘束状態とは異なる形状を有する非拘束状態とを有し、
前記シャフトの前記遠位端部に配置された前記ハウジングが、前記拘束状態の前記少なくとも1つのインプラント装置を格納するためのものである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記インプラント装置が2個の端部を有するアーチ形部材を含み、前記端部間の距離が、前記インプラント装置が前記拘束状態から前記非拘束状態に変化する際に変化する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記手持ち式導入システムの前記遠位端部が、
内部を通じて前記インプラント装置を展開する切開口を前記咽頭壁に形成するための鋭いエッジを更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
咽頭壁を収縮させるための装置であって、
前記咽頭壁の下側の組織と係合するための中央部分と、前記中央部分から延びる第1及び第2の収縮部分とを有する細長い繊維状部材を含み、前記第1及び第2の収縮部分のそれぞれが、頸部の組織と係合して前記中央部分に引張収縮力を作用させる特徴部を有する、装置。
【請求項17】
前記細長い繊維状部材が単一フィラメントを含み、前記頸部の組織と係合して前記中央部分に引張収縮力を作用させる前記特徴部が逆棘を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記収縮部分の少なくとも一方の遠位端部に取り付けられて前記頸部の前記組織にその収縮部分を通過させる針を更に含む、請求項16に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−530385(P2011−530385A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523034(P2011−523034)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/051921
【国際公開番号】WO2010/019376
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】