説明

開口部を備えた親水性成形フィルム

吸収性物品におけるトップシート又は移動層としての使用に特に適した開口部を備えた成形フィルムは、少なくとも1つの熱可塑性オレフィンポリマーとフィルムの親水性親和力を増大させるのに十分な量の脂肪アルコールを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使い捨ての吸収性製品、より具体的には、そのフィルムに液体への親水性親和力を付与する特性を有する真空成形又はハイドロフォーム成形された開口部を備えた三次元フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
開口部を備えたフィルムは、そのフィルム中に開口部又は孔が形成されるように加工されたプラスチックフィルムである。開口部を備えたフィルムは大きく2つの種類に分けられる、すなわち三次元フィルムと平面フィルムである。公称厚さ(nominal thickness)をもつという点ですべてのフィルムは三次元を有するが、本開示の関連での「三次元フィルム」(「成形フィルム」とも呼ばれており、本明細書でもそう称する)は、フィルム表面から延出し開口部で終わる表面構造又は突出部を有するフィルムである。これらの突出部は、フィルムの公称厚さより大きい厚さをフィルムに提供する。そうしたフィルムは、フィルムの基底面と、突出部の末端の開口部によって画定される第2の平面との間の距離として定義される厚さ又はロフト(loft)を特徴とする。その第2の平面は、フィルムの基底面から隔てられており、且つそれとほぼ平行になっている。複数平面の実施形態では、第2の平面の表面に追加の突出部を設けて、フィルムに第3の平面を形成させることができる。一般に、これらの突出部は、フィルムの変形限界を超えていない限り、圧力又は張力によって変形された後、その形状を回復しようとする記憶を有する。それに反して、開口部を備えた平面フィルムは孔をもつ単なるフィルムであり、「三次元フィルム」を特徴づける三次元記憶を有する表面構造が欠けている。
【0003】
開口部を備えたフィルムを作製するために当技術分野では複数の方法がある。平面フィルムは、フィルムに孔を加える任意の方法で作製することができる。一般に、これらは、前駆体フィルムに孔を作るためのピン又は他のエンボス加工を用いる機械的方法である。三次元フィルムのための最も一般的な2つの方法は、真空成形法とハイドロフォーム成形法(hydroforming)である。米国特許第3939135号及び同第4324246号などの文献に例示される真空成形法は、真空を用いて、フィルムの一方の側に負圧を発生させ、フィルムの他方の側に対応する正圧を発生させる。その圧力差により、フィルムは成形用スクリーン中の孔の中に引っ張り込まれ、開口部が作られる。ハイドロフォーム成形法では、文献米国特許第4609518号に例示されるように、フィルムに衝突させ成形用スクリーン中の孔にフィルムを押し込んで開口部をもたらす液流を発生するために、高圧水ジェットを使用する。
【0004】
ハイドロフォーム成形法においても真空成形法においても、フィルムは、成形用スクリーンとして、当技術分野で公知であり本明細書で参照する多孔性構造物上に支持されている。直接キャスト法では、ダイ(die)を通して溶融ポリマーを成形用スクリーン上に押し出し、次いで真空をかける。そうした方法は米国特許第4456570号(これを参照により本明細書に組み込む)に例示されている。再加熱法では、前駆体フィルムをフィルムの軟化点より高く、融点より低い温度に加熱し、次いで真空をかける。前駆体フィルムはキャストフィルムであってもインフレーションフィルムであってもよい。再加熱法は米国特許第4151240号(これを参照により本明細書に組み込む)に例示されている。
【0005】
開口部を備えた他の種類のフィルムには、これらに限定されないが、米国特許第4609518号、同第4629643号、同第4695422号、同第4772444号、同第4778644号、同第4839216号及び同第4637819号(これらのすべてを参照により本明細書に組み込む)に例示されているハイドロフォーム成形フィルムが含まれ得る。ハイドロフォーム成形法は、スクリーン中の開口部にフィルムを押し込み、それによって開口部を備えた突出部が形成されるように高圧水ジェットを使用すること以外は、再加熱法と同様である。水を取り出し、再循環させるのを助けるためにフィルムに真空を施すこともしばしばあるが、そのことは、突出部の形成には別に何の役割も果たさない。
【0006】
長年かけて、界面活性剤を添加すると、吸収性デバイス用のトップシートとしての三次元フィルムの機能性が高められることが発見された。「界面活性剤」は、液体の表面張力を低下させる湿潤剤として作用し、液体の展延性(spreadability)を増大させる化学種である。ポリマーフィルム製品における一般的用法はくもり防止(anti−fog)及び帯電防止の用途である。フィルムは、熱可塑性ポリオレフィンなどの本来疎水性であるポリマーでできていたので、界面活性剤をフィルムに添加するとフィルムの湿潤性が改善され、これによりひいては流体がフィルム上に展延された。衛生用途では、これは、使用者にフィルムがより乾いて感じられるようにし、流体の開口部の中への流入を改善したので有益であった。周知のくもり防止剤は、アルキルフェノールエトキシレート、複合ポリオールモノエステル、オレイン酸のポリオキシエチレンエステル、オレイン酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル及び脂肪酸のソルビタンエステルである。
【0007】
当初は、界面活性剤を局所的にフィルムに塗布するのが一般的な実務であったが、最近の最良の実務は、界面活性剤を樹脂混合物中に混ぜ込んで液体に対する親水性親和力を有するフィルムを作製することである。そうした方法は、上記米国特許第4456570号に例示されている。衛生用途の成形フィルムにおいて有用な最近の界面活性剤は米国特許第5520875号に見出すことができ、それらには非イオン性界面活性剤、例えば:アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、カルボン酸エステル、グリセロールエステル、脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、アビエチン酸関連の脂肪族カルボン酸のポリオキシエチレンエステル、アンヒドロソルビトールエステル、エトキシ化アンヒドロソルビトールエステル、エトキシ化天然脂肪、油及びワックス、脂肪酸のグリコールエステル、カルボン酸アミド、ジエタノールアミン縮合物、モノアルカノールアミン縮合物、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーが含まれる。そうした界面活性剤は、フィルムが形成された後、フィルムの表面に移動する、すなわち「ブルーミング」を起こし、フィルムの表面への親水性親和力を付与する。米国特許第6353149号は、エトキシ化脂肪アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化モノ脂肪酸エステル、エトキシ化ジ脂肪酸エステル及びそれらの混合物からなる群から選択される界面活性剤が移動の加速を示すことを開示している。
【0008】
アルコールや他の可燃性溶媒の多い病院の手術室では、そうした溶媒を発火させる恐れのある静電スパークを完全に回避することが最も重要である。帯電防止剤は、静電気の蓄積を低減又は排除するために、材料又はその表面を処理するのに使用される化合物である。その役割は、空気中から水分を吸収してそれ自体が導電性になることによって、その表面又は材料自体を若干導電性にすることである。帯電防止剤の分子はしばしば親水性領域と疎水性領域の両方を有しており、その疎水性側は材料の表面と相互作用し、一方、親水性側は空気中の水分と相互作用し水分子を結合して水の薄いシートを形成する(くもり防止界面活性剤のように)。次いでこの水の薄いシートは静電荷をアースし、それによって静電スパークを放出するほど静電荷が増大しないようにする。多くの帯電防止剤は、長鎖脂肪族アミン(場合によりエトキシ化されている)、アミド、リン酸のエステル、ポリエチレングリコールエステル又はポリオールをベースとしている。
【0009】
従来技術における脂肪アルコール及び他の脂肪族物質は、界面活性剤として使用されるように「エトキシ化」されている。狭い範囲のエトキシレート(「NRE」)は、適切な触媒(焼成されている又は脂肪酸で疎水化されている層状化合物)の存在下で、脂肪アルコールにエチレンオキシドを付加することによって製造される公知の非イオン性界面活性剤である。これらの界面活性剤ケミストリーは当技術分野で周知である。
【0010】
未変化脂肪アルコールは従来技術の吸収性デバイスにおいて見出されるが、それらは、乾燥度を高める又は皮膚の健康を増進させるためのローション剤やコーティング剤用に用いられる混合物の成分である。従来技術の例には、米国特許第6426444号、同第6503526号及び米国特許出願公開第2008/0287896号が含まれる。これらを参照により本明細書に組み込む。
【0011】
植物又は動物の脂肪性物質から得られる多くの成分は、界面活性剤及びローション剤として、成形フィルムトップシートの従来技術において一般的であるが、脂肪アルコールは、本発明の技術以前では、押出樹脂ブレンドにおける移動界面活性剤としてこれまで使用されてこなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、本開示は、少なくとも1つの疎水性熱可塑性ポリマー及びフィルムに親水性を付与するのに十分な量の脂肪アルコールを含む三次元の開口部を備えたフィルムを提供する。
【0013】
他の実施形態では、本開示は、トップシート及び吸収性コアを含む吸収性物品であって、そのトップシートが、少なくとも1つの疎水性熱可塑性ポリマー及びフィルムに親水性を付与するのに十分な量の脂肪アルコールを含む開口部を備えた三次元フィルムを含む、吸収性物品を提供する。
【0014】
他の実施形態では、本開示は、トップシート、吸収性コア及びそのトップシートとコアの間に位置する移動層を含む吸収性物品であって、そのトップシート及び移動層の少なくとも1つが少なくとも1つの疎水性熱可塑性ポリマー及びフィルムに親水性を付与するのに十分な量の脂肪アルコールを含む開口部を備えた三次元フィルムを含む、吸収性物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の上記及び他の態様は、図面及び添付した特許請求の範囲を参照して本明細書をさらに読めば明らかになるであろう。
【0016】
脂肪アルコール(fatty alcohol)は、主に植物に由来する天然脂肪及び油から誘導される脂肪族アルコール(aliphatic alcohol)である。脂肪アルコールは通常偶数の炭素原子を有する。脂肪酸から製造すると直鎖アルコール、すなわちアルコール基(−OH)が末端炭素と結合しているものが得られる。他の方法で、アルコール基が炭素鎖の内部の炭素と結合しているイソアルコールを得ることができる。以下の表は、その対応する炭素原子数を有する一連の脂肪アルコールを示す。
【表1】

【0017】
炭素原子数が減少するにしたがって、脂肪アルコールの融点も低下する。例えば、14個の炭素原子を有する脂肪アルコールは約100℃で融解し、12個の炭素原子を有する脂肪アルコールは約24℃(室温)で融解する。特定の用途の吸収性物品のための開口部を備えた成形フィルムを設計する際、設計者にはその用途の温度限界は明らかであろう。融解するにしたがって、フィルム中に浮遊している(suspended)脂肪アルコールの粘度が低くなり過ぎると、フィルム中での浮遊を必要な程度に維持できなくなる。炭素原子数が増大すると、押出法での加工のためには粘度が高くなり過ぎてくる。脂肪アルコールの炭素原子の好ましい範囲は8〜24個、より好ましくは12〜20個、最も好ましくは16〜18個である。
【0018】
多くの開口部形状及び開口部の配列パターンは、開口部を備えた成形フィルムの技術分野で周知である。それらは、流体の透過性を高め、またフィルムに美的及び触覚的特性を付与する目的で設計される。例えば、米国特許第4324426号は、開口部の水力等価直径(Equivalent Hydraulic Diameter)が液体透過性にいかに影響を及ぼし得るかを教示しており、米国特許第4342314号は、独特の繊維様美観をいかに実現するかを教示しており、米国特許第4463045号は、布様の触覚的印象を付与するための小さな表面の逸脱(aberration)の使用を教示している。これらの文献の形状及び配列パターンや当技術分野で公知の他の形状及び配列パターンのすべてを、本発明の実施形態の関連で用いることができる。
【0019】
例示のためだけに過ぎないが、開口部が狭い繊維様のエレメントで隔てられるように、並んでネスト(nest)させた五角形の開口部を有するフィルムを作製した。このフィルムは、1平方センチメートル当たりおおよそ90個の開口部を含み、約20〜25%の開口面積と約500〜650ミクロンのロフトとを有した。ロフトは、開口部の高さと任意の表面アベレーションを含む成形フィルムの合計厚さである。フィルムは21.7g/mの基本重量を有し、ランダムつや消し仕上げされた。フィルムを、直接キャスト真空成形法を用いて作製した。フィルムは、ポリオレフィンブレンド、特に通常疎水性であるポリエチレンを用いて製造した。1つのフィルムにおいて、ブレンドはおおよそ17,500ppm〜20,000ppmのセチルアルコールを含有した。
【0020】
これらのフィルムのランオフ値(run off value)を、米国特許第4456570号に記載されている手順を用いて測定した。試験流体は、上記特許の第6段、10〜16行目に開示されている蒸留水、塩化ナトリウム及びTriton X−100(Dow Chemical Companyからの非イオン性界面活性剤)の混合物であった。ランオフ値は0%〜2.5%の範囲であった。セチルアルコールの濃度をより高くすると一貫した0%ランオフを確実にする。10,000ppmの濃度では10〜15%のランオフ値になり、これはおむつ用トップシートのためには下限であると考えるべきである。様々な液粘度及び表面張力を有する他の用途のための吸収性デバイスを設計する場合、透過し、吸収される液体の種類によっては、脂肪アルコールはわずか約500ppmの量加えれば十分であり得る。
【0021】
驚くべきことに、ステアリルアルコールを用いて試験を繰り返しても同様の結果は得られなかった。界面活性剤添加物を含まない疎水性ポリオレフィン(ポリエチレン)ブレンドでできた対照フィルムは、80%を超えるランオフ値を有する。ステアリルアルコールだけを最大で約20,000ppmの量でブレンドに加えても、78%未満のランオフ値は得られなかった。しかし、セチルアルコールとの50%対50%の混合物を20,000ppmの合計濃度で加えると0%ランオフ値が得られた。セチルアルコールがより効果的な成分であるので、50%対50%の比から外れるブレンドは、混合物において過半を占める脂肪アルコールとして、セチルアルコールが好都合のはずである。
【0022】
脂肪アルコールはそのまま押出ブレンドに加えることも、また、目的とする製品のベースブレンド中にミッシブ(missive)であることが公知の任意のポリマー中に含めた(let down)化合物として押出ブレンドに加えることもできる。この種の配合はフィルム押出産業では一般的なことである。適合する任意の熱可塑性のフィルム形成ポリマーを有利に使用することができる。ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレンは、特に衛生及びパーソナルケア用途を目的としたフィルムに好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱可塑性オレフィンポリマーと脂肪アルコールとのブレンドを含む、吸収性デバイス中の液体透過層として有用な開口部を備えた、親水性押出成形フィルム。
【請求項2】
前記脂肪アルコールが少なくとも約500ppmの量で存在する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記脂肪アルコールがセチルアルコールを含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記脂肪アルコールが10,000〜20,000ppmの量で存在する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記脂肪アルコールがセチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記混合物が少なくとも50%のセチルアルコールを含む、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記脂肪アルコールが少なくとも約20,000ppmの量で存在する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項8】
トップシート及び吸収性コアを含む吸収性物品であって、該トップシートが少なくとも1つの熱可塑性オレフィンポリマーと脂肪アルコールとのブレンドを含む開口部を備えた親水性押出成形フィルムを含む、上記吸収性物品。
【請求項9】
前記脂肪アルコールがセチルアルコールを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記脂肪アルコールが10,000〜20,000ppmの量で存在する、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
前記脂肪アルコールがセチルアルコールとステアリルアルコールの混合物である、請求項8に記載の物品。
【請求項12】
混合物が少なくとも50%のセチルアルコールを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記脂肪アルコールが少なくとも約20,000ppmの量で存在する、請求項8に記載の物品。
【請求項14】
トップシート、吸収性コア、及び該トップシートと該コアの間に位置する移動層を含む吸収性物品であって、該移動層が、少なくとも1つの熱可塑性オレフィンポリマーと脂肪アルコールとのブレンドを含む開口部を備えた親水性押出成形フィルムを含む、上記吸収性物品。
【請求項15】
前記脂肪アルコールがセチルアルコールを含む、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記脂肪アルコールが10,000〜20,000ppmの量で存在する、請求項14に記載の物品。
【請求項17】
前記脂肪アルコールがセチルアルコールとステアリルアルコールの混合物である、請求項14に記載の物品。
【請求項18】
混合物が少なくとも50%のセチルアルコールを含む、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記脂肪アルコールが少なくとも約20,000ppmの量で存在する、請求項14に記載の物品。

【公表番号】特表2012−519213(P2012−519213A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551228(P2011−551228)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/024644
【国際公開番号】WO2010/096601
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(501217020)トレドガー フィルム プロダクツ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】