説明

間仕切壁及び音楽室

【課題】 吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる間仕切壁と、これを設置した音楽室を提供することにある。
【解決手段】 内部に吸音材2が配置され、略垂直に立設される間仕切壁1であって、音源Aに面する受音側に吸音材2の表面を遮蔽可能な遮蔽板3を備え、吸音材2の一部または全部が露出可能になるように前記遮蔽板3は移動自在に取り付けられている間仕切壁。及び、間仕切壁1で仕切りされ、該間仕切壁1は前記遮蔽板3を音源A側に向けて設置されている音楽室L。前記間仕切壁1は、該間仕切壁1の壁面に交差する方向に移動可能になされた可動間仕切壁である音楽室L。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる間仕切壁と、これを設置した音楽室に関する。尚、音楽室は音を楽しむための部屋であって、視聴覚室や住宅の居間等も含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、防音効果を向上させた防音スライド壁が、特許文献1に記載されて知られている。この防音スライド壁は、固定壁とこの固定壁に沿ってスライドする可動壁との相対向する面のどちらか一方にシール面を設けるとともに他方に該シール面に摺接するパッキンを固定し、かつ前記シール面に向かって開口する部屋を前記パッキンに隣接して設けたものである。このような構成によれば、パッキンに隣接して設けた部屋により消音効果が得られ、固定壁と可動壁との隙間の防音効果が向上する。
【特許文献1】実公平6−24552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1記載のような従来技術にあっては、防音効果は向上するが固定したものであるから、このような従来技術をオーディオ・ビジュアル機器を使うAVルームや音を発生させる音楽室に適用した場合、吸音特性や残響時間特性も固定され、これらを容易に調整することはできなかった。
【0004】
本発明の課題は、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる間仕切壁と、これを設置した音楽室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、内部に吸音材が配置され、略垂直に立設される間仕切壁であって、音源に面する受音側に吸音材の表面を遮蔽可能な遮蔽板を備え、吸音材の一部または全部が露出可能になるように前記遮蔽板は移動自在に取り付けられていることを特徴とする。
遮蔽板の取り付け方としては、例えば、複数の分割された遮蔽板により吸音材の表面を遮蔽し、該遮蔽板は垂直または水平方向にスライド自在に取り付けるものとしてもよい。又、複数の分割された遮蔽板により吸音材の表面を遮蔽し、該遮蔽板は一側縁辺部を回動自在に支持されて適宜の角度の開状態または閉状態のいずれかを選択自在に取り付けるものとしてもよい。この場合、開状態を任意の角度に選択できるものとしてもよい。
間仕切壁は、空間を音楽室と他の部屋との二つの部屋に仕切るものであってもよいし、外壁の裏面側に設けて音楽室とその外とを仕切る内壁であってもよい。又、部屋における位置を変更可能とする可動間仕切壁であってもよい。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の間仕切壁であって、部屋における位置を変更可能にする移動手段を備えたことを特徴とする。
移動手段としては、天井部または床部に敷設されたレールに沿って移動可能に係合する車輪等の係合部でよい。
移動の方向は、二つの部屋を仕切ったり開放したりできる間仕切壁の面に沿った方向でも良いし、音源からの距離を変更するために、音楽室の面積を可変にできるように、間仕切壁の壁面に交差する方向であってもよい。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の間仕切壁で仕切りされ、該間仕切壁は前記遮蔽板を音源側に向けて設置されていることを特徴とする音楽室である。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の音楽室であって、前記間仕切壁は、該間仕切壁の壁面に交差する方向に移動可能になされた可動間仕切壁であることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の音楽室おいて、前記可動間仕切壁の上部または下部が、天井部または床部に敷設されたレールに沿って移動可能に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、遮蔽板の位置を変えて、吸音材の露出割合を変えることによって、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる。
複数の分割された遮蔽板により吸音材の表面を遮蔽し、該遮蔽板を垂直または水平方向にスライド自在に取り付けるものとした場合は、遮蔽板をスライドさせることにより、遮蔽板の位置を変えて、吸音材の露出割合を変える。
複数の分割された遮蔽板により吸音材の表面を遮蔽し、該遮蔽板は一側縁辺部を回動自在に支持されて適宜の角度の開状態または閉状態のいずれかを選択自在とした場合は、遮蔽板を開状態または閉状態と角度を変えて、吸音材の露出割合を変える。開状態であっても遮蔽板の角度を変えることができるときは、遮蔽板の角度により残響時間特性等を容易に調整できる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、間仕切壁が部屋における位置を変更可能にする移動手段を備えているので、間仕切壁の面に沿った方向に位置を変更可能な場合は、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できるだけでなく、二つの部屋を仕切ったり開放したりできるので、部屋の使い方の自由度が増す。又、間仕切壁の壁面に交差する方向に位置を変更可能な場合は、音源からの距離を変更できるので、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できるだけでなく、音楽室の面積を可変にでき、部屋の使い方の自由度が増す。
【0012】
請求項3記載の音楽室によると、請求項1または2記載の間仕切壁で仕切りされ、該間仕切壁は前記遮蔽板を音源側に向けて設置されているので、この音楽室は吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる。
【0013】
請求項4記載の発明によると、さらに、前記間仕切壁は、間仕切壁の壁面に交差する方向に移動可能になされた可動間仕切壁であるから、音楽室の面積を変えることによって音楽室の吸音特性や残響時間特性等をさらに調整できる。
【0014】
請求項5記載の発明によると、さらに、前記可動間仕切壁の上部または下部が、天井部または床部に敷設されたレールに沿って移動可能に支持されているので、音楽室の面積を簡単に変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態であって、図1(イ)は音楽室の縦断面図であり、(ロ)は音楽室を備えた建物の平面図である。図において、1は間仕切壁、2は吸音材、3は遮蔽板である。
【0016】
本実施の形態において、図1(イ)に示す建物Tは、ユニット方式の建物であって、4つの建物ユニットUを隣接配置して構築されている。建物Tにおいて、紙面上の上部に配置された浴室等のサニタリー設備室SとダイニングキッチンKに隣接して、間仕切壁1にて仕切られた音楽室L(AVルームとなる居間)が設けられている。
【0017】
本実施の形態の間仕切壁1は、内部に吸音材2が配置され、略垂直に立設される音楽室L用のものであって、音源(AV機器)Aに面する受音側の面が吸音材2の表面を遮蔽する2枚の分割された遮蔽板3,3で覆われている。吸音材2は、ガラスウールや布等の繊維状のものが使用される。遮蔽板3、3は、合板で形成され、いずれも垂直方向にスライド自在に取り付けられ、吸音材2の一部または全部を露出させたり、遮蔽したりできるようになっている。4は合板製の固定板であり、この固定板4は受音側の面の上下2箇所に取り付けられ、固定板4の上に遮蔽版3を重ね合わせてスライドできるようになっている。5は背面板であって、間仕切壁1の背面側を覆っている。
【0018】
本実施の形態の音楽室Lは、上記構成になされた間仕切壁1でダイニングキッチンK側と仕切りされている。間仕切壁1は前記遮蔽板2を音源側に向けて設置されている。
【0019】
上記音楽室Lにおいて、間仕切壁1は、間仕切壁の壁面に交差する方向に移動可能になされた可動間仕切壁であって、この可動間仕切壁1の上部は、天井部Cに間仕切壁の壁面に交差する方向に敷設されたレールRに沿って移動可能に支持されている。なお、レールRは間仕切壁1の左右両側を支持できるように2本設けられている。
【0020】
上記のように構成された本実施の形態の間仕切壁1と、これを設置して仕切られた音楽室Lによると、以下のような作用効果がある。
【0021】
(1)本実施の形態の間仕切壁1によると、この間仕切壁1の音源Aに面する受音側の面が吸音材2の表面を遮蔽する2枚の分割された遮蔽板3,3で覆われ、該遮蔽板3,3は垂直方向にスライド自在に取り付けられ、吸音材2の一部または全部が露出可能になされているので、吸音材2の露出割合を変えることによって、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる。実施例では、残響時間を0.3〜1.5秒まで調整可能であった。
【0022】
(2)本実施の形態の音楽室Lによると、上記の間仕切壁1で仕切りされ、該間仕切壁1は前記遮蔽板3を音源側に向けて設置されているので、この音楽室Lは、(1)と同じ理由により、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる。
【0023】
(3)本実施の形態の音楽室Lによると、さらに、前記間仕切壁1は、移動可能になされた可動間仕切壁であるから、音楽室Lの面積を変えることによって音楽室Lの吸音特性や残響時間特性等をさらに調整できる。
【0024】
(4)また、本実施の形態の音楽室Lによると、さらに、前記可動間仕切壁1の上部が、天井部Cに敷設されたレールRに沿って移動可能に支持されているので、音楽室Lの面積を簡単に変えることができる。
【0025】
図2は、本発明の別の実施の形態であって、間仕切壁が設置された音楽室の断面図である。本実施の形態において、前記実施の形態と同じものは同符号を付けて説明を省略し、異なるものは別符号を付けて説明する。図において、10は間仕切壁、20は吸音材、30は遮蔽板である。
【0026】
本実施の形態において、建物は前記実施の形態に示したユニット方式の建物Tと同じであるが、前記実施の形態では間仕切壁1にて仕切られた音楽室L(AVルーム)が設けられたものであったが、本実施の形態では、間仕切壁10にて仕切られた音楽室L(AVルーム)が設けられている。
【0027】
本実施の形態の間仕切壁10は、図2に示すように、内部に吸音材20が配置され、床部Fから略垂直に立設される音楽室L用の間仕切壁であって、音源(AV機器) Aに面する受音側の面が吸音材20の表面を遮蔽する4枚の分割された遮蔽板30で覆われているものである。遮蔽板30は、一側縁辺部(上辺部)を横枠材40に回動自在に支持して適宜の角度の開状態または閉状態のいずれかを選択自在に取り付けられ、吸音材20の一部または全部が露出可能になされている。吸音材20は、ガラスウールや布等の繊維状のものが使用される。遮蔽板30は、合板で形成され、5は背面板であって、間仕切壁1の背面側を覆っている。
【0028】
本実施の形態の音楽室Lは、上記間仕切壁10で仕切りされ、該間仕切壁10の遮蔽板30を音源側に向けて設置されている。
【0029】
本実施の形態の音楽室Lにおいて、前記間仕切壁10は、移動可能になされた可動間仕切壁であって、この可動間仕切壁10の上部は、天井部Cに敷設されたレールRに沿って移動可能に支持されている。
【0030】
上記に示した本実施の形態の間仕切壁10と、これを設置して仕切られた音楽室Lによると、以下の作用効果がある。
(1)本実施の形態の間仕切壁10によると、音源Aに面する受音側の面が吸音材20の表面を遮蔽する4枚の分割された遮蔽板30で覆われ、該遮蔽板30は上辺部を回動自在に支持して適宜の角度の開状態または閉状態のいずれかを選択自在に取り付けられ、吸音材20の一部または全部が露出可能になされているので、吸音材20の露出割合を変えることによって、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる。この際、残響時間特性は遮蔽板30の開角度の調整によっていっそう容易に調整できる。実施例では、残響時間を0.3〜1.5秒まで調整可能であった。
【0031】
(2)本実施の形態の音楽室Lによると、上記の間仕切壁10で仕切りされ、該間仕切壁10は前記遮蔽板30を音源側に向けて設置されているので、この音楽室Lは、吸音特性や残響時間特性等を容易に調整できる。
【0032】
(3)本実施の形態の音楽室Lによると、さらに、前記間仕切壁10は、移動可能になされた可動間仕切壁であるから、音楽室Lの面積を変えることによって音楽室Lの吸音特性や残響時間特性等をさらに調整できる。
【0033】
(4)本実施の形態の音楽室Lによると、さらに、前記可動間仕切壁10の上部が、天井部Cに敷設されたレールRに沿って移動可能に支持されているので、音楽室Lの面積を簡単に変えることができる。
【0034】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の間仕切壁と、これを設置した音楽室は、吸音特性や残響時間特性を容易に調整できるので、音響特性にすぐれたオーディオルームや、マニアの好みに合わせたオーディオルーム等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態であって、(イ)は音楽室の縦断面図であり、(ロ)は音楽室を備えた建物の平面図である。
【図2】本発明の別の実施の形態であって、音楽室の縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1,10 間仕切壁
2,20 吸音材
3,30 遮蔽版
L 音楽室
C 天井部
R レール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に吸音材が配置され、略垂直に立設される間仕切壁であって、音源に面する受音側に吸音材の表面を遮蔽可能な遮蔽板を備え、吸音材の一部または全部が露出可能になるように前記遮蔽板は移動自在に取り付けられていることを特徴とする間仕切壁。
【請求項2】
部屋における位置を変更可能にする移動手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の間仕切壁。
【請求項3】
請求項1または2記載の間仕切壁で仕切りされ、該間仕切壁は前記遮蔽板を音源側に向けて設置されていることを特徴とする音楽室。
【請求項4】
前記間仕切壁は、該間仕切壁の壁面に交差する方向に移動可能になされた可動間仕切壁であることを特徴とする請求項3記載の音楽室。
【請求項5】
前記可動間仕切壁の上部または下部が、天井部または床部に敷設されたレールに沿って移動可能に支持されていることを特徴とする請求項4記載の音楽室。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−138078(P2006−138078A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326757(P2004−326757)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】