説明

関節リウマチ治療薬のスクリーニング法

【課題】
本発明は関節リウマチの改善及び/又は治療に有用な物質のスクリーニング方法及び新たな作用機序に基づく関節リウマチ治療用医薬組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】
ヒトRA患者滑膜組織において発現量が亢進しているRA3の発現を特異的に抑制すると、その応答性の抑制が関節リウマチ治療標的であると知られているLPS、TNF-α、IL-1β及びCD40の応答性が抑制されることを見出した。これらの知見から、RA3の発現を抑制することにより関節リウマチ治療効果が得られることがわかった。加えて、RA3遺伝子プロモーターを取得し、RA3の発現を制御する物質(即ち関節リウマチ治療薬)をスクリーニングする方法を確立して提供した。RA3を抑制する物質を有効成分とする新たな関節リウマチ治療薬を提供し、本発明を完成させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチ治療薬のスクリーニング法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis, RA)は滑膜組織に病変の主座を持ち、関節の発赤、腫脹、熱感、疼痛、運動制限、および破壊をもたらす原因不明の慢性炎症性疾患である。RAの滑膜組織では、インターロイキン-1(interleukin-1、IL-1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-18(IL-18)、腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α、TNF-α)などの炎症性サイトカイン、一酸化窒素(nitric oxide、NO)、プロスタグランジン(prostaglandins、PGs)などの過剰産生が知られている(非特許文献1)。また、滑膜組織を構成する免疫担当細胞はCD40/CD40リガンド系、ICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)/ LFA-1(leukocyte adhesion molecule-1)系などの細胞表面分子を介して相互に活性化しあい、炎症反応の遷延に関与すると考えられている(非特許文献2)。近年、モノクローナル抗体、可溶性受容体などを用い、IL-1、IL-6やTNF-αを標的とした治療法が開発されその有効性が注目を集めている(非特許文献3)。また、滑膜組織を構成する滑膜線維芽様細胞やB細胞などの免疫担当細胞のIL-1、TNF-α、リポ多糖(Lipopolysaccharide, LPS)、CD40/CD40リガンド系に対する応答性を抑制することが治療標的と考えられている(非特許文献3)。しかし、従来の治療標的分子を機序とする治療法では完全寛解導入には至らない患者群が存在する(非特許文献4)。従って、既存の報告とは異なる新しい治療標的分子の同定が望まれている。
【0003】
【非特許文献1】「ザ・ジャーナル・オブ・エクスメンタル・メディシン(The Journal of Experimental Medicine)」、(米国)、1991年、第173巻、p.569-574
【非特許文献2】「ザ・ジャーナル・オブ・リューマトロジー(The Journal of Rheumatology)」、(カナダ)、2002年、第29巻、p.875-882
【非特許文献3】「カレント・ファーマシューティカル・バイオテクノロジー(Current Pharmaceutical Biotechnology)」、(米国)、2000年、第1巻、p.217-233
【非特許文献4】「ネイチャー・レビューズ・イムノロジー(Nature Reviews Immunology)」、(英国)、2002年、第2巻、p.364-371
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は関節リウマチの改善及び/又は治療に有用な物質のスクリーニング方法及び新たな作用機序に基づく関節リウマチ治療用医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
「配列番号3で表されるアミノ酸配列」からなるポリペプチドをRA3蛋白質、「配列番号3で表されるアミノ酸配列又は配列番号3で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列
を含み、かつ発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するポリペプチド」を「RA3機能的等価改変体」と称する。また、「配列番号3で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するポリペプチド」を「RA3相同ポリペプチド」と称する。RA3蛋白質、RA3機能的等価改変体及びRA3相同ポリペプチドを総称して「本明細書のポリペプチド」と称する。
本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、ヒトRA患者滑膜組織において発現量が亢進している遺伝子RA3の全長配列を決定した(参考例1、参考例4)。RA3の発現を特異的に抑制するsiRNAの作製に成功した(実施例1、実施例2)。更に、RA患者由来滑膜線維芽様細胞でRA3の発現を抑制すると、その応答性の抑制が関節リウマチ治療標的であると知られているLPS、TNF-α及びIL-1βの応答性が抑制されることを見出した(実施例3)。また、RA3遺伝子が免疫担当細胞であるB細胞及びB細胞株において特異的に発現していることを見出し(実施例4、実施例5)、B細胞株でRA3の発現を抑制するとその応答性の抑制が関節リウマチ治療標的であると知られているCD40の応答性が抑制されることを明らかにした(実施例6)。これらの知見から、RA3の発現を抑制することにより関節リウマチ治療効果が得られることがわかった。加えて、RA3遺伝子プロモーターを取得し、RA3の発現を制御する物質(即ち関節リウマチ治療薬)をスクリーニングする方法を確立して提供した(実施例7、実施例8)。RA3を抑制する物質を有効成分とする新たな関節リウマチ治療薬を提供し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1]試験物質が、(1)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、(2)配列番号3で表されるアミノ酸配列又は配列番号3で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつ発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するポリペプチド、又は(3)配列番号3で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するポリペプチド
を抑制するか否かを分析する工程を含む、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法、
[2]抑制が発現抑制である、[1]に記載のスクリーニング方法、
[3]配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞と試験物質とを接触させる工程、及び
プロモーター活性を検出する工程を含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載のスクリーニング方法、
[4]配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
[5](1)[1]に記載のポリペプチド、
(2)(i)[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は(ii)配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、あるいは
(3)(i)[1]に記載のポリペプチドを発現している細胞、又は(ii)配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞
からなる関節リウマチ治療薬スクリーニングツール、
[6](1)[1]に記載のポリペプチド、
(2)(i)[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は(ii)配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、あるいは
(3)(i)[1]に記載のポリペプチドを発現している細胞、又は(ii)配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ[1]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞
の関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用、
[7][1]に記載の分析工程、及び製剤化工程を含む、関節リウマチ治療用医薬組成物の製造方法、
[8][1]乃至[3]に記載のスクリーニング方法で得ることができる物質を有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物、
[9][1]に記載のポリペプチドを抑制する物質を有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物、
[10][1]に記載のポリペプチドを抑制する物質を投与することを含む、関節リウマチ治療方法、
[11][1]に記載のポリペプチドを抑制する物質の、関節リウマチ治療用医薬組成物製造のための使用、
[12]配列番号2に記載の塩基配列のNAに続く19〜21塩基からなる、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドに特異的な塩基配列に基づいて設計されるsiRNA、
[13]二重鎖RNA部分が、配列番号13で表される塩基配列、又はそのセンス鎖の3’末端が1若しくは2塩基欠失した塩基配列からなるsiRNA、
[14][12]又は[13]に記載のsiRNAを有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物
に関する。
【0007】
本明細書において「発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制する」とは、検討対象ポリペプチドの発現を抑制した所定の細胞集団において、検討対象ポリペプチドの発現を抑制していない細胞集団に比べ、LPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βの刺激応答性が減少及び/又は抑制することを意味する。検討対象ポリペプチド発現抑制により前記刺激応答性が減少及び/又は抑制するか否かは次のようにして確認することができる。検討対象ポリペプチドの発現を抑制した細胞又は抑制していない細胞を、LPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βで未刺激又は刺激する。前記細胞の抽出液、又は、培養上清を調整し、LPS、TNF-α及び/若しくはIL-1β刺激応答性の反応(例えばIL-8発現量)を測定することにより検討対象ポリペプチドがその発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するか否かを確認することができる。刺激応答性の反応としてIL-8発現量を測定する場合は、リアルタイムPCRやELISA法など公知の方法によってその発現量を測定することができる。検討対象ポリペプチドの発現を抑制していない細胞をLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1β刺激した場合に誘導されるIL-8発現量に対し、検討対象ポリペプチドの発現を抑制した細胞をLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1β刺激した場合に誘導されるIL-8発現量が減少及び/又は抑制されている場合、検討対象ポリペプチドの発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性が抑制されたと判断することができる。好ましくは、実施例3に記載の方法で確認することができる。好ましくは、所定の細胞集団におけるLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1β刺激応答性の減少は、この集団におけるLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1β刺激の抑制が、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%、更に好ましくは少なくとも約50%である。
「本明細書のポリペプチドを抑制する物質」としては「本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質」と「本明細書のポリペプチドの機能を抑制する物質」を含むが、「本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質」がより好ましい。また、「関節リウマチ治療用医薬組成物」としては、「本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質」及び/又は「本明細書のポリペプチドの機能を抑制する物質」を有効成分とする関節リウマチ治療用医薬組成物が好ましく、「本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質」を有効成分とする関節リウマチ治療用医薬組成物がより好ましい。
本明細書において、「siRNA」とは、小分子量干渉RNA(small interfering RNA)を意味する。siRNAは、二重鎖のRNA部分と、好ましくはセンス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングとからなり、RNA干渉(RNAi;RNA interference)と呼ばれる配列特異的な遺伝子発現抑制を誘導する(Fire, A.等, Nature, 391, 806-811, 1998)。本発明のsiRNAとしては、配列番号18で表される塩基配列からなるセンス鎖と、配列番号19で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖とからなるsiRNAがより好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプロモーターは、本明細書のポリペプチドの発現を抑制する物質(即ち関節リウマチ治療薬)のスクリーニングに有用である。
本発明のスクリーニング方法によれば、関節リウマチの治療薬として有用な物質を得ることができる。本発明のスクリーニング方法で得られた物質は、本明細書のポリペプチドを抑制することによりIL-1β、TNF-α、LPS、及び/又はCD40応答性を抑制するという全く新たな作用機序に基づく関節リウマチ治療剤として有用である。
また、本発明のsiRNAは、本発明の関節リウマチ治療用医薬組成物の有効成分として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。本明細書における遺伝子操作技術は特に断りのない限り「Molecular Cloning」 Sambrook, Jら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年等の公知技術に従って実施可能であり、蛋白質操作技術は特に断りのない限り「タンパク実験プロトコール」(秀潤社、1997年)等の公知技術に従って実施可能である。
【0010】
<本発明のポリヌクレオチド>
本発明のポリヌクレオチドには、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが含まれる。本発明者らは、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、RA3遺伝子(配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)のプロモーター活性を示すことを見出した(実施例8)。
本発明者らは、RA3遺伝子の発現量がヒトRA患者滑膜組織において亢進していること(参考例4)、該遺伝子が免疫担当細胞であるB細胞及びB細胞株において特異的に発現していることを見出している(実施例4、実施例5)。更に、RA患者由来滑膜線維芽様細胞でRA3の発現を抑制すると、その応答性の抑制が治療標的であると知られているLPS、TNF-α及びIL-1βの応答性が抑制されること(実施例3)、RA3遺伝子が、B細胞株でRA3の発現を抑制するとその応答性の抑制が治療標的であると知られているCD40の応答性が抑制されることを明らかにしている(実施例6)。これらの知見から、RA3の発現を抑制することにより関節リウマチ治療効果が得られることを見出している。従って、RA3遺伝子プロモーター活性を示す本発明のポリヌクレオチドを用いることにより、RA3の発現を抑制する物質(即ち関節リウマチ治療薬)をスクリーニングする方法の構築が可能である。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明により開示された配列情報に基づいて一般的遺伝子工学的手法により容易に製造し取得することが出来る。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば次のように得ることができるが、この方法に限らず公知の操作「Molecular Cloning」[Sambrook, Jら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年、等]でも得ることができる。
例えば、(1)PCRを用いた方法、(2)常法の遺伝子工学的手法(すなわちcDNAライブラリーで形質転換した形質転換株から所望のアミノ酸を含む形質転換株を選択する方法)を用いる方法、又は(3)化学合成法などを挙げることができる。各製造方法については、WO01/34785に記載されているのと同様に実施できる。
PCRを用いた方法では、例えば、前記特許文献の「発明の実施の形態」1)蛋白質遺伝子の製造方法a)第1製造法に記載された手順により、本明細書記載のポリヌクレオチドを製造することができる。該記載において、「本発明の蛋白質を産生する能力を有するヒト細胞あるいは組織」とは、例えば、ヒト滑膜細胞、ヒトB細胞、又は、ヒトB細胞株を挙げることができる。ヒト滑膜細胞、ヒトB細胞、又は、ヒトB細胞株からmRNAを抽出する。次いで、このmRNAをランダムプライマーまたはオリゴdTプライマーの存在下で、逆転写酵素反応を行い、第一鎖cDNAを合成することが出来る。得られた第一鎖cDNAを用い、目的遺伝子の一部の領域をはさんだ2種類のプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、本発明のポリヌクレオチドまたはその一部を得ることができる。より具体的には、例えば参考例1に記載の方法により本発明のポリヌクレオチドを製造することが出来る。
常法の遺伝子工学的手法を用いる方法では、例えば、前記特許文献の「発明の実施の形態」1)蛋白質遺伝子の製造方法b)第2製造法に記載された手順により、本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。
化学合成法を用いた方法では、例えば、前記特許文献の「発明の実施の形態」1)蛋白質遺伝子の製造方法c)第3製造法、d)第4製造法に記載された方法によって、本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。
【0011】
<本発明のスクリーニングツール及びスクリーニングのための使用>
本発明には、
(1)(i)本明細書のポリペプチド、即ちRA3、RA3機能的等価改変体(配列番号3で表されるアミノ酸配列あるいは配列番号3で表されるアミノ酸配列において、1〜10個(好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつ発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するポリペプチド)並びに/又はRA3相同ポリペプチド(配列番号3で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上)であるアミノ酸配列からなり、かつ発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するポリペプチド)
(以下、本発明のポリペプチド型スクリーニングツールと称する)、
(ii)本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は
配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチド型スクリーニングツールと称する)、あるいは
(iii)本明細書のポリペプチドを発現している細胞、又は
配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞(以下、本発明の細胞型スクリーニングツールと称する)
からなる関節リウマチ治療薬スクリーニングツール、
(2)(i)本発明のポリペプチド型スクリーニングツール、
(ii)本発明のポリヌクレオチド型スクリーニングツール、又は
(iii)本発明の細胞型スクリーニングツール
の関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用
が含まれる。
本明細書において、「スクリーニングツール」とは、スクリーニングの為に用いる物(具体的には、スクリーニングの為に用いるポリペプチド、ポリヌクレオチド又は細胞)をいう。「関節リウマチ治療薬スクリーニングツール」とは、関節リウマチ治療薬をスクリーニングするために、本発明のスクリーニング方法において、試験化合物を接触させる対象となる細胞、ポリヌクレオチド又はポリペプチドである。当該ポリペプチド、ポリヌクレオチド又は細胞の、関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用も本発明に含まれる。
RA3機能的等価改変体及びRA3相同ポリペプチドの起源はヒトに限定されない。例えば、配列番号3で表されるアミノ酸配列のヒトにおける変異体が含まれるだけでなく、前述の(i)本発明のポリペプチド型スクリーニングツールのいずれかに該当する限り、ヒト以外の他の脊椎動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヒツジ、イヌ、サル、ネコ、クマ、ブタ、ニワトリなど)由来のものも含まれる。更には、前述の(i)本発明のポリペプチド型スクリーニングツールのいずれかに該当する限り、天然ポリペプチドに限定されず、配列番号3で表されるアミノ酸配列を元にして遺伝子工学的に人為的に改変したポリペプチドも含まれる。
なお、本明細書における前記「相同性」とは、BLASTパッケージ[sgi32bit版,バージョン2.0.12;National Center for Biotechnology Information(NCBI)より入手]のbl2seqプログラム(Tatiana A.Tatusova,Thomas L.Madden,FEMS Microbiol.Lett.,174,247-250,1999)を用いて得られた値を意味する。なお、パラメーターでは、ペアワイズアラインメントパラメーターとして、
「プログラム名」として「blastp」を、
「Gap挿入Cost値」を「0」で、
「Gap伸長Cost値」を「0」で、
「Matrix」として「BLOSUM62」を、
それぞれ使用する。
本発明の細胞型スクリーニングツールである本明細書のポリペプチドを発現している細胞は、本明細書のポリペプチドを天然に発現している細胞及び本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞を含むが、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換され本明細書のポリペプチドを発現している細胞がより好ましい。
本発明のポリペプチド型スクリーニングツールとしてはRA3、本発明のポリヌクレオチド型スクリーニングツールとしてはRA3をコードするポリヌクレオチド及び/又は本発明のポリヌクレオチド、本発明の細胞型スクリーニングツールとしてはRA3を発現している細胞及び/又は本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換されRA3遺伝子のプロモーター活性を示す細胞がより好ましい。
【0012】
<本発明のスクリーニング方法>
本発明のスクリーニング方法は、本明細書のポリペプチドを抑制するか否かを分析(すなわち、検出又は測定)する工程を含む、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法である。本明細書のポリペプチドの「抑制」には、本明細書のポリペプチドの「発現抑制」及び「機能抑制」の両方が含まれるが、「発現抑制」がより好ましい。
【0013】
(1)本明細書のポリペプチドの発現を抑制するか否かを分析する方法
本明細書のポリペプチドをコードするmRNA、又は、本明細書のポリペプチドの発現を抑制するか否かを分析することにより、関節リウマチ治療薬のスクリーニングが可能である。具体的には、組織、細胞における本明細書のポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、RA3又はRA3コードするポリヌクレオチド)の発現量の変化を分析することによってスクリーニングすることができる。
本明細書のポリペプチドをコードするmRNA、又は、本明細書のポリペプチドが、特定の細胞において産生されるか否かを決定するために、多様な核酸技術及び免疫学的技術を使用することができる。
例えば、本明細書のポリペプチドを発現している任意のヒト細胞を用い、試験物質の存在下若しくは非存在下で培養した後、細胞の抽出物を調製し、次いで、抽出物を分析することにより、前記試験物質が本明細書のポリペプチドのmRNA又は蛋白質の発現を減少若しくは抑制するか否かを分析することができる。すなわち、本明細書のポリペプチドを減少若しくは抑制する試験物質は、前記試験物質を含むサンプルに存在する本明細書のポリペプチド(例えばRA3)のmRNA並びに蛋白質の量を減少させるので、公知の分析方法、例えば、ノーザンブロット又はELISA法[例えば、本明細書のポリペプチド(例えばRA3)を認識する抗体をプレート等の固相に吸着させた後、そこに試験物質を含むサンプルを加え、次いで、先の抗体とは抗原エピトープが異なる本明細書のポリペプチドを認識する抗体を加えて、後者の抗体の固相への結合度合いを分析する(Methods in Enzymology, 118, 742-766, 1986)]等で同定することができる。より具体的には、実施例2に記載した方法で、本明細書のポリペプチドの発現抑制を分析することができる。
本発明のスクリーニング方法は、例えば、本明細書のポリペプチド(例えばRA3)を発現している細胞(好ましくはヒト細胞)を、試験物質の存在下若しくは非存在下で培養する工程、並びに、試験物質存在下で培養した前記細胞における本明細書のポリペプチド(例えばRA3)のmRNA又は蛋白質の量が、試験物質非存在下で培養した前記細胞における量と比較して減少したか否かを分析する工程を含む。
別の方法としては、プロモーター活性の阻害は下流の遺伝子の転写の抑制を生じる一般的事象に基づき、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えばRA3遺伝子)のプロモーター領域を、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子)上流に連結した作動可能なベクターを作製し、外因的に導入した宿主細胞を利用し、試験物質の存在下若しくは非存在下におけるレポーター活性(例えば、ルシフェラーゼ活性)を分析することにより、前記試験物質がレポーター遺伝子の発現を減少又は抑制するか否かを分析することができる。
前記ベクターとしては、例えば、RA3の開始コドンATGの上流域をレポーター遺伝子上流に連結した組み換えDNAであって、しかも、一過的な複製、あるいは、宿主染色体への挿入を可能とするベクターを用いることができる。こうして外因的に得られた宿主細胞を試験物質の存在下又は非存在下で培養した後、細胞の抽出物を調製し、次いで、抽出物を分析することにより、前記試験物質が本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えばRA3遺伝子)のプロモーター活性を減少又は抑制するか否かを決定することができる。本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えばRA3遺伝子)のプロモーター活性を減少又は抑制する試験物質は、前記試験物質を含むサンプルに存在するレポーター活性の量を減少させるので、それを指標として同定することができる。
より具体的には、実施例8に記載した方法で、本明細書のポリペプチド(例えばRA3)の発現抑制を分析することができる。
本発明のスクリーニング方法は、例えば、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えばRA3遺伝子)のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子を連結したベクターで形質転換した細胞を、試験物質の存在下又は非存在下で培養する工程、並びに、試験物質存在下で培養した前記細胞におけるレポーター活性が、試験物質非存在下で培養した前記細胞と比較して減少したか否かを分析する工程を含む。
本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター領域としては、RA3遺伝子上流配列のうちRA3プロモーター活性を示す塩基配列からなるポリヌクレオチドを用いることができ、好ましくは配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、更に好ましくは配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド(すなわち本発明のポリヌクレオチド)を用いることができる。
【0014】
(2)本明細書のポリペプチドの機能を抑制するか否かを分析する方法
本発明のスクリーニング方法には、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及びNF-κB応答性のレポーター遺伝子(例えばNF-κB応答性ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子)により形質転換された細胞を試験物質の存在下又は非存在下で培養する工程、並びに、試験物質存在下で培養した前記細胞におけるレポーター活性が、試験物質非存在下で培養した前記細胞と比較して減少したか否かを分析する工程を含むことを特徴とするスクリーニング方法が含まれる。
本発明者らは、RA3を過剰発現することによりNF-κBレポーター活性が誘導されることを見出した(実施例9)。従って、本明細書のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド及びNF-κB応答性のレポーター遺伝子により形質転換された細胞を用い、NF-κBレポーター活性をRA3の機能の指標として、RA3の機能を抑制する物質(即ち関節リウマチ治療薬)をスクリーニングすることができる。例えば、実施例9に記載の方法に試験物質を添加して試験することにより、試験物質が本明細書のポリペプチドの機能を抑制するか否かを分析することができ、、RA3の機能を抑制する物質(即ち関節リウマチ治療薬)をスクリーニングすることができる。
【0015】
前記項目(1)の本明細書のポリペプチドの発現を抑制するか否かを分析する方法、又は、前記項目(2)の本明細書のポリペプチドの機能を抑制するか否かを分析する方法を用いる本発明のスクリーニング方法でスクリーニングすることのできる試験物質は、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Tetrahedron, 51, 8135-8137, 1995)によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法(J. Mol. Biol., 222, 301-310, 1991)などを応用して作製されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更には、本発明のスクリーニング方法により選択された化合物(ペプチドを含む)を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
【0016】
<本発明の関節リウマチ治療用医薬組成物、及びその製造法>
<本発明のスクリーニング方法>に記載の方法による分析工程、及び製剤化工程を含む、関節リウマチ治療用医薬組成物の製造方法も本発明に含まれる。
本発明の医薬組成物の有効成分は、本明細書のポリペプチドを抑制する物質である限り、特に限定されるものではない。これらは、例えば、本発明のスクリーニング方法と同様の工程で、本明細書のポリペプチドを抑制する物質を選択することにより得ることができる。
本発明の医薬組成物の有効成分として、例えば、siRNAを用いることができる。siRNAは、二重鎖のRNA部分と、好ましくはセンス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端のオーバーハングとからなり、RNAiを誘導する。RNAiは進化的に保存された現象で、RNaseIIIエンドヌクレアーゼによって生じる21〜23塩基のsiRNAを介して起こる(Genes Dev. 15, 485-490, 2001)。その21〜23塩基のsiRNA間には、効果に差はあるもののいずれもRNAi効果を示す。また、3’側のオーバーハングはそれぞれ1又は2塩基の任意の核酸(リボ核酸又はデオキシリボ核酸)であるが、2塩基が好ましく、標的に相補した塩基が好ましいが、相補していないものでも充分なRNAi効果が認められる(EMBO. J., 20, 6877-7888, 2001; Genes Dev., 15, 188-200, 2001)。また、オーバーハングがないsiRNAもRNAi効果を示す。
なお、前記塩基数(21〜23塩基)は、オーバーハングを含むセンス鎖又はアンチセンス鎖の各々の塩基数である。また、センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ塩基数であることもできるし、異なる塩基数であることもできるが、同じ塩基数であることが好ましい。
siRNAの3’側オーバーハングを構成するリボ核酸としては、例えば、U(ウリジン)、A(アデノシン)、G(グアノシン)、又はC(シチジン)を用いることができ、3’側のオーバーハングを構成するデオキシリボ核酸としては、例えば、dT(チミジン)、dA(デオキシアデノシン)、dG(デオキシグアノシン)、又はdC(デオキシシチジン)を用いることができる。
本発明の医薬組成物の有効成分として用いることのできる、本発明のsiRNAには、本明細書のポリペプチドの発現を特異的に抑制することのできるsiRNA(以下、本明細書のポリペプチド特異的なsiRNAと称する)が含まれる。
本明細書のポリペプチド特異的なsiRNAは、本明細書のポリペプチドの一つであるRA3に特異的なDNA塩基配列(好ましくは21塩基〜23塩基からなる塩基配列)に基づいて設計され、本明細書のポリペプチドの発現を特異的に抑制することのできるsiRNAである限り、特に限定されるものではなく、常法(例えば、J. Am. Chem. Soc., 120, 11820-11821, 1998; 及びMethods, 23, 206-217, 2001)により製造することができる。より具体的には、本明細書のポリペプチドに特異的なDNA塩基配列は、例えば、以下の手順により選択することができる。すなわち、RA3の開始コドンから50塩基以上下流の最初のNAを見つける(転写因子の結合部位を避けるため)。NAに続く19〜21の塩基配列を記録し、NAを含む21〜23塩基のGCコンテントを計算し、50%前後であることを確認する。GCコンテントが30%以下や70%以上である場合、あるいは、50%前後であっても複数の候補が必要な場合には、更に下流のNAを選択し、同様にしてGCコンテントを計算する。得られた塩基配列候補について、データベース検索を実施し、本明細書のポリペプチドに特異的であることを確認する。Nは、A、T、G、又はCの何れであってもよく、実施例1で作製したsiRNAの場合のようにCであることが好ましい。
なお、本明細書のポリペプチドに特異的であるか否かは、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のBLAST(Basic local alignment search tool; J. Mol. Biol., 215, 403-410, 1990)サーチで本明細書のポリペプチドとは完全に一致するが、他には完全に一致する配列が存在しないことにより確認することができる。
siRNAを設計するためのDNA塩基配列が得られると、その配列に基づいてsiRNAを設計することができる。例えば、二重鎖RNA部分が、得られたDNA塩基配列をそのままRNA配列に変換したRNA塩基配列からなる、siRNAを設計することができる。なお、本明細書において、DNA塩基配列をRNA塩基配列に変換するとは、DNA塩基配列におけるdTをUに変換し、それ以外の塩基、すなわち、dA、dG、及びdCを、それぞれ、A、G、及びCに変換することを意味する。
RA3特異的な塩基配列としては、例えば、配列番号12を挙げることができる。
配列番号12で表される塩基配列に基づいて設計される、本発明のRA3特異的なsiRNAとしては、例えば、二重鎖RNA部分が、配列番号13で表される塩基配列、又はそのセンス鎖の3’末端が1若しくは2塩基欠失した塩基配列からなるsiRNAを挙げることができる。
これらの本発明のRA3特異的なsiRNAには、例えば、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端に、それぞれ独立して、1又は2塩基の任意の核酸[例えば、リボ核酸(U、A、G、若しくはC等)又はデオキシリボ核酸(dT、dA、dG、若しくはdC等)]が付加されたオーバーハングを有するsiRNA、並びにオーバーハングを有しないsiRNAが含まれる。なお、センス鎖及びアンチセンス鎖(オーバーハングを有する場合には、それを含む)は、同じ塩基数であることもできるし、異なる塩基数であることもできるが、同じ塩基数であることが好ましい。
前記オーバーハングとしては、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端に、それぞれ独立して、1又は2塩基の任意の核酸が付加されたオーバーハングが好ましい。
本発明のRA3特異的なsiRNAとしては、配列番号18で表される塩基配列からなるセンス鎖と、配列番号19で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖とからなるsiRNAが特に好ましい。配列番号18で表される塩基配列からなるセンス鎖及び配列番号19で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖は、それぞれ、第1番目〜第19番目の塩基からなる二重鎖を形成し、第20番目及び第21番目の塩基が3’側オーバーハングを形成する。
【0017】
本発明の医薬組成物の有効成分としては、siRNAの他にも、例えば、アンチセンスポリヌクレオチド(DNA及びRNAを含む)を用いることができる。
アンチセンスポリヌクレオチドを設計及び作製する方法は、周知であり(J. Am. Chem. Soc., 103: 3185-3191, 1981)、まず、例えば、NCBIのBLASTサーチで本明細書のポリペプチド特異的な配列(例えば、配列番号12で表される塩基配列)を選択し、それに対するアンチセンスポリヌクレオチドを、本発明の医薬組成物の有効成分として用いることができる。
【0018】
本発明の医薬組成物は、非経口経路(例えば、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、又は頬内経路)を介して投与することができる。あるいは、または同時に、経口経路によって投与することもできる。投薬量は、レシピエントの年齢、健常度、及び体重、同時処置される種類(もしあれば)、処置の頻度、並びに所望される効果の性質に依存する。各成分の有効な量の至適な範囲の決定は、当業者の範囲内である。典型的な投薬量は0.1〜100μg/kg体重であり、好ましい投薬量は、0.1〜10μg/kg体重であり、最も好ましい投薬量は、0.1〜1μg/kg体重である。薬理学的に活性な薬剤に加えて、本発明の組成物は、薬学的に受容可能な適切なキャリアーを含むことができ、これには、作用の部位に到達するために薬学的に使用可能な、調製物への活性な化合物のプロセシングを容易にする賦形剤及び/又は補助剤を含む。
非経口投与のために適切な処方物は、水溶性形態の活性化合物(例えば、水溶性の塩)の水溶液を含む。更に、適切な油性の注入懸濁液としての活性化化合物の懸濁液が投与可能である。適切な親油性溶媒又はベヒクルは、脂肪油又は合成の脂肪酸エステルを含む。水溶性注入懸濁液は、懸濁液の粘度を増加する物質を含むことができる。必要に応じて懸濁液は安定剤を含むことができる。リポソームも、細胞への送達のために、薬剤をカプセル化するために使用することができる。本発明に従う全身投与についての薬学的組成物は、腸投与、非経口投与、又は局所投与について処方することができる。実際、処方物の全ての3つのタイプは、有効成分の全身性投与を達成するために同時に使用することができる。
経口投与のための適切な処方物は、堅質又は軟質ゼラチンカプセル、丸剤、錠剤、エリキシル、懸濁液、シロップ、又は吸入薬、及びそれらの制御された放出形態を含む。本発明の医薬組成物は、単独で、又は組み合わせで、あるいは、他の治療剤又は診断剤と組み合わせて使用することができる。特に好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、一般的に受容されている医療の実施に従って、これらの状態について典型的に処方される他の化合物とともに投与することができる。
【0019】
<遺伝子治療>
関節リウマチの治療において、RA3発現の調節因子をコードする遺伝子発現単位(例えば、配列番号12で表される塩基配列に対するアンチセンス分子又はsiRNA分子)を、処置される被験体に導入することにより、遺伝子治療をすることができる。このような調節因子は、細胞又は特定の標的細胞で、構成的に継続的に産生させることもできるし、あるいは、誘導性とすることもできる。
具体的には、前記アンチセンス分子、又はsiRNA分子(例えば、配列番号18で表される塩基配列からなるセンス鎖と配列番号19で表される塩基配列からなるアンチセンス鎖とからなるsiRNA)を作製するための方法は、当該分野において周知である(J. Am. Chem. Soc., 103: 3185-3191, 1981)。
配列番号12で表される塩基配列に対するアンチセンス分子を含む組み換えDNAを作製する方法は、当該分野において周知であり(「Molecular Cloning A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1989等)、好ましい組み換えDNAにおいて、配列番号12で表される塩基配列は、発現制御配列及び/又はベクター配列に作動可能に連結することができる。前記ベクターは、配列番号12で表される塩基配列を含む組み換えDNAの複製、あるいは、宿主染色体への挿入を少なくとも可能とし、遺伝子治療に用いることができる。
更に、本発明では、配列番号12で表される塩基配列に対するアンチセンスを含む組み換えDNAを外因的に導入した宿主細胞を提供し、これも遺伝子治療に用いることができる。宿主細胞は、任意のヒト細胞に限る。本発明の組み換えDNAでの適切な宿主細胞の形質転換は、周知の方法によって達成される。
【0020】
以下、実施例により本発明を詳述するが,本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法(例えば、「Molecular Cloning A Laboratory Manual」 Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1989等の遺伝子操作実験マニュアル)や試薬等に添付の指示書に従った。
【0021】
(参考例1)全長オープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)のクローニングと蛋白質発現プラスミドの構築
配列番号4及び配列番号5、ヒト脾臓由来cDNA(Human spleen 5'-stretch plus cDNA ;インビトロジェン社)、及びDNAポリメラーゼ(Pyrobest(商標) DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、94℃2分の後、98℃10秒、60℃30秒、72℃1分30秒のサイクルを20回、続いて72℃3分のPCR反応を行った。このPCR産物をフェノールクロロホルム処理し、エタノール沈殿処理し、精製水に溶解した。これらのDNAをHindIII-XhoIで二重切断した。発現ベクターpcDNA3.1-CFLのHindIII-XhoI部位に挿入し、CFL-RA3と名付けた。pcDNA3.1-CFLは、pcDNA3.1(+)(インビトロジェン社)のXhoI-XbaI部位に配列番号6及び配列番号7からなる2重鎖オリゴDNAを挿入したプラスミドであり、本プラスミドにより、目的蛋白質にFLAGタグが付加されて発現される。前記各プラスミドの配列をジデオキシターミネーター法により、ABI3700 DNA シークエンサー(アプライドバイオシステムズ社)を用いて解読したところ、配列番号2で表される配列が得られ、全長ORF配列を決定した。該遺伝子をRA3と名付けた。推定アミノ酸配列を配列番号3に示した。配列番号2で表されるRA3のORFは101アミノ酸からなる新規蛋白質をコードしていた。
【0022】
(参考例2)動物細胞株での発現
参考例1において作製した発現プラスミドを、トランスフェクション試薬(リポフェクトアミン;ギブコ社)を用いて、添付指示書に従い293T細胞(インビトロジェン社)に導入した。プラスミド導入後12-16時間で培地を無血清に置換した後、さらに48-60時間培養を継続し、細胞を回収した。回収した細胞に50mM Tris pH7.5, 0.25M NaCl, 10% Glycerol, 1% Triton X-100, 1mM EDTA, 1mM EGTA, 1mM PMSF(シグマ社)から成る溶液を加えて溶解し、エッペンドルフチューブ遠心機(トミー精工社)にて15000回転15分遠心後の上清を回収した。この導入細胞ライゼート中に目的蛋白が存在することをC末端に付加したFLAGタグに対する抗体(マウス抗FLAGモノクローナル抗体M2;シグマ社)を用いたウエスタンブロッティングで確認した。すなわち、上記ライゼートをSDS/4%〜20% アクリルアミドゲル(第一化学薬品社)に電気泳動(還元条件)後、ブロッティング装置を用いてPVDF膜(ミリポア社)に転写した。転写後のPVDF膜にブロックエース(大日本製薬社)を添加してブロッキングした後、ビオチン化マウス抗FLAGモノクローナル抗体、西洋わさびパーオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(アマシャムファルマシア社)を順次反応させた。反応後、ECLウエスタンブロッティング検出システム(アマシャムファルマシア社)を用いて目的蛋白の発現を確認した。RA3はプロリン残基の含有率が高いため、電気泳動上の移動度が低く予想分子量(11.0kDa)よりも大きな分子量で観察された(図1)。
【0023】
(参考例3)滑膜組織サンプル、滑膜線維芽様細胞サンプルの取得
ヒトRA患者、ヒトOA患者から滑膜生検により滑膜組織、滑膜線維芽様細胞を得た。滑膜組織の調製はHarigai Mらの文献(J Rheumatol. 1999 May;26(5):1035-43)に、滑膜線維芽様細胞の調製はZhang HGらの文献(Arthritis Rheum. 2000 May;43(5):1094-105)に従った。G1、G6はヒトRA患者各2名の滑膜組織を混合したサンプルであり、各種病理所見スコアーは、表層細胞重層化についてはG1:1.5、G6:0、リンパ濾胞形成についてはG1:2.5、G6:0、血管新生についてはG1:2.0、G6:0.5であった。G7はヒトOA患者2名の滑膜組織を混合したサンプルである。病理所見スコアーはHarigai Mら,Clin Immunol Immunopathol. 1993 Oct;69(1):83-91.に基づくものであり、滑膜組織の炎症の程度を反映している。病理所見スコアーが高いG1は炎症の程度がG6よりも大きいサンプルである。
滑膜線維芽様細胞サンプルは、ヒトRA患者2名からの滑膜線維芽様細胞を混合したサンプルである。
【0024】
(参考例4)RA滑膜組織におけるRA3遺伝子の発現上昇
ABI PRISM 7900HT Sequence Detection System(PE バイオシステムズ社)(以降Prism7900とする)によるリアルタイムPCRをPCR検出定量試薬キットSYBR Green PCR Master Mix(PEバイオシステムズ社)を用いてキット添付の指示書に従って行い、滑膜組織におけるRA3遺伝子の発現量を定量的に測定した。以下に詳細を述べる。ABI7900による測定に用いたプライマーは、配列番号2に表した配列情報からPrimer Express(PEバイオシステムズ社)により設計した。RA3遺伝子のプライマーは配列番号8および配列番号9、補正用内部標準とするG3PDH遺伝子のプライマーは配列番号10および配列番号11である。
RA滑膜組織(G1及びG6サンプル)、OA滑膜組織(G7サンプル)からRNA抽出用試薬ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いて全RNA(total RNA)抽出を行った。抽出は、試薬添付のプロトコールに従った。抽出方法の詳細を以下に記載する。100mg の凍結組織に対し、1ml のISOGEN を加え、ホモジナイズ゛後、5分静置した。0.2ml のクロロホルム(関東化学社) を加え、攪拌後3分静置した。12000×g で4℃にて15分の遠心分離を行った。上清を回収し、0.5ml の2-イソプロパノール(関東化学社) を加え、10分静置した。12000×g で4℃にて10分の遠心分離を行った。上清を除いた後、70%エタノールを1ml加えた。7500×g で4℃にて5分の遠心分離を行った。風乾後、50μl水に溶解した。
抽出した全RNA は、DNase処理キット(RNeasy Mini kit、RNase-Free DNase Set;共にキアゲン社)を用い、カラム上でDNase処理を行った。キット添付のプロトコールに従って処理を行った。詳細を以下に記載する。全RNA 溶液に水を加え、100μl とした。次に、350μl のキットに含まれるバッファーRLT を加え攪拌した。次に250μl のエタノールを加え攪拌後、キットに含まれるカラム(RNeasy mini spin column)に加えた。8000×gにて15秒遠心した。350μl のキットに含まれるバッファーRW1 を加え、8000×gにて15秒遠心した。さらに、10μl のDNaseIストック溶液および70μlのキットに含まれるバッファーRDDを加え、室温で15分静置した。350μl のバッファーRW1 を加え、8000×gにて15秒遠心した。350μl のバッファー RW1 を加え、8000×gにて15秒遠心した。500μl のキットに含まれるバッファーRPE を加え、8000×gにて15秒遠心した。500μl のバッファーRPE を加え、15000×gにて1分遠心した。30μl水を加え、8000×gにて1分遠心し、全RNA 溶液を得た。
全RNA を鋳型とした逆転写反応により、cDNA を作成した。全RNA (1μg) を10μlのランダムヘキサマー(100ng/μl) (アマシャムファルマシアバイオテク社)と混合し、最終量が48μlとなるように水を加えた。70℃で10分処理後、氷上に置いた。次に32μl のRT反応混合液を加えた。混合液の組成を以下に示す。5×First-Strand Buffer(250mM Tris-HCl pH8.3, 375mM KCl, 15mM MgCl2 ),10mM DTT, 0.5mM dNTP, Superscript II RNase H- reverse transcriptase(800 units)(以上全てGIBCO BRL社)。混合後、25℃15分、42℃50分、70℃15分の処理を行った。
作成したcDNAを鋳型として、以下の実験を進めた。目的遺伝子の各測定サンプル間での相対的発現量を算出するための標準曲線を作成する鋳型として、human genomic DNA (クロンテック社)の希釈系列、あるいは各測定サンプルの混合液の希釈系列を用いた。また、サンプル中のcDNA濃度の差を補正するため、補正用内部標準としてG3PDH遺伝子について同様の定量解析を行い、G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、RA3遺伝子の発現量を算出した。リアルタイムPCRは95℃10分の後、95℃15秒、59℃1分のサイクルを45回実施した。
RA滑膜組織サンプルG1及びG6では、OA滑膜組織サンプルG7に比して、RA3遺伝子の発現量が有意に亢進していることが明らかとなった。また、RA滑膜組織のうち炎症程度の大きいG1サンプルは炎症程度の小さいG6サンプルに比して、RA3遺伝子の発現量が有意に亢進しており、RAの病理所見スコアーに連動してRA3遺伝子の発現量が亢進していること、すなわちRAの炎症症状の重篤性とRA3遺伝子の発現量の亢進が相関することを見出した(図2)。
【0025】
(実施例1)RA3特異的なsiRNAの作製
RA3をコードする配列番号2で表される塩基配列の内、配列番号12で表される塩基配列からなるDNAに対応するsiRNAとして、二重鎖RNA部分が配列番号13で表されるRA3特異的なsiRNAを作製し(ダーマコンリサーチ社)、使用した。
NCBIのBLASTサーチ(BLAST パッケージ[Tru64 64bit版,バージョン 2.2.2;National Center for Biotechnology Information (NCBI) より入手]のblastallプログラム(Reference: Altschul, Stephen F., Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaffer,Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman (1997),「Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search
programs」, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402.)の結果、配列番号12は、配列番号2に特異的な配列であることが示された。
非特異的なsiRNAの影響を検討する対照実験のために、哺乳類細胞に存在しない二本鎖RNAのコントロールsiRNA(Luciferase GL2 Duplex; ダーマコンリサーチ社)を入手した。
【0026】
(実施例2)RA3特異的なsiRNAのRA患者由来滑膜線維芽様細胞への導入によるRA3特異的な発現抑制
参考例3で調製したRA患者由来滑膜線維芽様細胞を10%熱不活化胎児ウシ血清(FBS; JRHバイオサイエンス社)を添加したRPMI-1640培地(インビトロジェン社)で培養して維持した。
トランスフェクション実験は、以下の手順で実施した。
トランスフェクションの前日に、細胞培養用12穴プレート(イワキ)に、RA患者由来滑膜線維芽様細胞を1穴当たり15000細胞播いた。トランスフェクション当日に、血清無添加培地OPTI-MEM(インビトロジェン社)で細胞を洗浄した後、OPTI-MEM 400μLを加えた。実施例1で作製した各siRNAを、トランスフェクション試薬(オリゴフェクタミン;インビトロジェン社)を用いて、添付指示書に従い、導入した。導入したsiRNAは、コントロールsiRNA(Luciferase GL2 Duplex)、またはRA3特異的なsiRNAであった。
導入から4時間経過後に、細胞培養液上清を取り除き、10%熱不活化胎児ウシ血清(FBS; JRHバイオサイエンス社)を添加したRPMI-1640培地(インビトロジェン社)を新たに加えた。トランスフェクションは、各サンプルに対して独立に3穴を用いて行なった。
前記各siRNAを導入してから48時間経過後に細胞を回収し、RNeasy Micro Kit(QUIAGEN, #74004)を使用しRNAを単離した。上記参考例4で示したように、全RNA を鋳型とした逆転写反応により、cDNA を作製後、上記参考例4で示したリアルタイムPCRの条件にて測定し、G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、RA3遺伝子の発現量を算出した。コントロールsiRNAを導入したサンプルのRA3遺伝子の発現量を100とした場合、RA3特異的なsiRNAを導入したサンプルのRA3遺伝子の発現量は20以下であったことから、実施例1で作製したRA3特異的なsiRNAがRA3遺伝子発現を抑制することを確認した(図3)。
【0027】
(実施例3)RA患者由来滑膜線維芽様細胞でのRA3発現抑制によるLPS、TNF-α、IL-1β応答性の抑制
RA患者由来滑膜線維芽様細胞においてLPS、TNF-α、又はIL-1βによって発現亢進することが知られているIL-8遺伝子をLPS、TNF-α、IL-1β応答性の指標として用いた(Koch A.E. et al J.Immunol. (1991) 147 :2187-2195)。ABI7900による測定に用いたIL-8遺伝子のプライマーは配列番号14および配列番号15である。
実施例2で行ったsiRNA導入実験において、導入から48時間後に、それぞれ、独立の3穴の細胞に対して、未刺激(none)、最終濃度1μg/ml LPS(シグマ社)、最終濃度10ng/ml ヒト組み換え体TNF-α(R&Dシステム社)、又は最終濃度10ng/ml ヒト組み換え体IL-1β(R&Dシステム社)を加えて6時間後に、細胞を回収し、RNeasy Micro Kit(キアゲン社 #74004)を使用しRNAを単離した。上記参考例4と同様に、全RNA を鋳型とした逆転写反応によりcDNA を作製後、上記参考例4で示したリアルタイムPCRの条件にて測定し、G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、IL-8遺伝子の発現量を算出した(図4)。コントロールsiRNAを導入したサンプルの未刺激(none)のIL-8遺伝子の発現量を100とした場合、コントロールsiRNAを導入したサンプルのLPS、TNF-α又はIL-1β刺激したサンプルではいずれも1000以上の亢進が認められた。一方、RA3特異的なsiRNAを導入したサンプルではLPS、TNF-α、又はIL-1β刺激したサンプルでのIL-8遺伝子の発現量は、コントロールsiRNAを導入したサンプルのLPS、TNF-α又はIL-1β刺激したサンプルでのIL-8遺伝子の発現量の各20%以下に抑制されていた。この知見により、RA患者由来滑膜線維芽様細胞でのRA3特異的な発現抑制は、LPS及びTNF-α及びIL-1βの応答性を抑制することがわかった。すなわち、RA病変の主座である滑膜組織を構成する線維芽様細胞におけるLPS、TNF-α、又は、IL-1βの応答性はそれぞれ単独でも治療標的と考えられているが(Curr Pharm Biotechnol. 2000 1:217-233)、LPS及びTNF-α及びIL-1βの応答性を同時に抑制することができるRA3発現抑制の機序は新規な治療標的であることを明らかにした。
【0028】
(実施例4)B細胞でのRA3遺伝子の発現
Human Blood Fractions MTC Panel(クローンテック社)付属のcDNA(単球、単核細胞、活性化単核細胞、非活性化CD4+、活性化CD4+、非活性化CD8+、活性化CD8+、非活性化CD19+、活性化CD19+由来cDNA)を使用し、上記参考例4で示したリアルタイムPCRの条件にて測定し、G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、RA3遺伝子の発現量を算出した。RA3遺伝子の発現は各種血球細胞種の中で、CD19+であるB細胞での発現が顕著であることが明らかとなった(図5)。CD19+であるB細胞は、RA病変の主座である滑膜組織を構成する免疫担当細胞であるので(He K. et al J.Rheumatol (2001) 28: 2168-2175)、RA3はRAに関与することがわかった。
【0029】
(実施例5)B細胞株でのRA3遺伝子の発現
前立腺癌由来PC-3細胞株、Tリンパ腫Jurkat細胞株、Bリンパ腫SKW6.4細胞株、Bリンパ腫NAMALWA細胞株(すべてアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)より入手)は、10%熱不活化胎児ウシ血清(FBS; JRHバイオサイエンス社)を添加したRPMI-1640培地に培養して維持した。細胞回収後、RNeasy Micro Kit(QUIAGEN, #74004)を使用しRNAを単離した。上記参考例4と同様に、全RNA を鋳型とした逆転写反応により、cDNA を作成後、上記参考例4で示したリアルタイムPCRの条件にて測定し、G3PDH遺伝子の発現量を基に補正して、RA3遺伝子の発現量を算出した。RA3遺伝子はPC-3細胞株では発現が認められなかったが、B細胞株SKW6.4およびB細胞株NAMALWAでの発現が顕著であることが明らかとなった(図6)。
【0030】
(実施例6)B細胞株SKW6.4でのRA3発現抑制によるCD40応答性の抑制
SKW6.4細胞は、10%熱不活化胎児ウシ血清(FBS; JRHバイオサイエンス社)を添加したRPMI-1640培地(インビトロジェン社)で培養して維持した。
トランスフェクション実験は、以下の手順で実施した。
siRNA導入はNucleofector(Amaxa Biosystems)を用いて電気気孔法により行った。トランスフェクション当日に、2000000個のSKW6.4細胞を100μLのCell Line Nucleofector Kit V試薬(和光純薬)に懸濁した。(1)実施例1で作製したコントロールsiRNA又はRA3特異的なsiRNA、(2)NF-κB応答性ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子pNF-kappaB-Luc Vector(BDバイオサイエンス社)、及び(3)内部標準用ウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子phRL-TK Vector(プロメガ社)と前記細胞懸濁液とを混合後、添付指示書に従いプログラムT-23を使用して導入した。トランスフェクション後、1mLの培地(10%熱不活化胎児ウシ血清(FBS; JRHバイオサイエンス社)を添加したRPMI-1640培地(インビトロジェン社))を加えてCO2インキュベーターにて静置した。トランスフェクションの48時間後、細胞に終濃度1μg/mlの抗CD40ポリクローナル抗体(R&D Systems, #AF632)を未添加又は添加し、更に24時間保温後、細胞を回収しルシフェラーゼ活性を測定した。
ルシフェラーゼ活性の測定は、Dual-Luciferase Reporter Assay System(Promega, #E1960)を使用して測定した。回収した細胞を添付の細胞溶解液100μLにて抽出し、その抽出液20μLをCulturPlate-96 (Packard)に移し、ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を添付の試薬を用いて順次測定した。検出はMICROLITE LUMINOMETER(DYNATECH LABORATORIES, ML3000)にて行った。NF-κB応答性ホタルルシフェラーゼレポーター活性値はウミシイタケルシフェラーゼ活性値で除して標準化した。
コントロールsiRNAを導入し、抗CD40ポリクローナル抗体未添加のサンプルのNF-κB応答性ホタルルシフェラーゼレポーター活性値を1とした場合、抗CD40ポリクローナル抗体添加によって、NF-κB応答性ホタルルシフェラーゼレポーター活性値は3以上のCD40応答性を示すが、RA3特異的なsiRNAを導入したサンプルでは、抗CD40ポリクローナル抗体添加によるNF-κB応答性ホタルルシフェラーゼレポーター活性値は約1.5で、CD40応答性が抑制されることがわかった(図7)。NF-κBの活性化が指標となるCD40応答性は、RA病変の主座である滑膜組織を構成する免疫担当細胞であるB細胞の機能に必須であることから(Kyburz D. et al J.Immunol. 1999 163:3116-3122)、B細胞でのRA3発現抑制の機序はRAの新規な治療標的であることを明らかにした。
【0031】
(実施例7)RA3遺伝子プロモーターのクローニングとルシフェラーゼレポータープラスミドの作製
以下のようにしてRA3遺伝子上流配列を取得した。配列番号16及び配列番号17、ヒトゲノムDNA(Human genomic DNA ;クロンテック社)、並びにDNAポリメラーゼ(Pyrobest(商標) DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、94℃2分の後、98℃10秒、60℃30秒、72℃3分のサイクルを35回、続いて72℃6分のPCR反応を行った。このPCR産物をフェノールクロロホルム処理後、エタノール沈殿処理し、精製水に溶解した。これらのDNAを、pGL3-Basicホタルルシフェラーゼレポーターベクター(プロメガ社)をSmaI(宝酒造社)で消化した部位に挿入した。挿入された配列を、ジデオキシターミネーター法により、ABI3700 DNA シークエンサー(アプライドバイオシステムズ社)を用いて解読したところ、配列番号1で表される配列であることが確認され、pGL3B/RA3 1.8Kと名付けた。
【0032】
(実施例8)RA3遺伝子の内在性発現程度と相関するRA3遺伝子プロモーターの活性
実施例2で示したように、RA3を内在的に発現していない細胞として、ヒト前立腺癌由来細胞株PC-3、RA3を内在的に発現している細胞としてヒトBリンパ腫細胞株NAMALWAを、10%熱不活化胎児ウシ血清(FBS; JRHバイオサイエンス社)を添加したRPMI-1640培地に培養して維持した。
トランスフェクション実験は、以下の手順で実施した。
PC-3細胞への遺伝子導入はFuGENE 6 Transfection Reagent(ロシュダイアグノスティックス社)を用いて行った。トランスフェクション前日に、PC-3細胞を1穴あたり5000細胞になるようCulturPlate-96(パッカード社)に撒いた。トランスフェクション当日に、(1)コントロールホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子pGL3-Basic又はpGL3B/RA3 1.8kbホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子、及び(2)内部標準用ウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子(phRL-TK Vector、プロメガ社)を混合し、添付指示書に従って、FuGENE 6 Transfection Reagentと混合した後、PC-3細胞培養上清に添加し、48時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
NAMALWA細胞への遺伝子導入はNucleofector(Amaxa Biosystems)を用いて電気気孔法により行った。トランスフェクション当日に200000個のNAMALWA細胞を100μLのCell Line Nucleofector Kit V試薬(和光純薬)に懸濁後、(1)コントロールホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子pGL3-Basic又はpGL3B/RA3 1.8kbホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子、及び(2)内部標準用ウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子phRL-TK Vector(プロメガ社)を混合し、添付指示書に従って、プログラムG-16を使用して遺伝子導入を行った。導入後、1mLの培地(10%熱不活化胎児ウシ血清(FBS; JRHバイオサイエンス社)を添加したRPMI-1640培地(インビトロジェン社))を加えて37℃、5% CO2インキュベーターにて静置した。48時間後、細胞を回収しルシフェラーゼ活性を測定した。
ルシフェラーゼ活性の測定は、Dual-Luciferase Reporter Assay System(Promega, #E1960)を使用して測定した。回収した細胞を添付の細胞溶解液100μLにて抽出し、その抽出液20μLをCulturPlate-96 (パッカード社)に移し、ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を添付の試薬を用いて順次測定した。検出はMICROLITE LUMINOMETER(DYNATECH LABORATORIES, ML3000)にて行った。ホタルルシフェラーゼレポーター活性値はウミシイタケルシフェラーゼ活性値で除して標準化した。
RA3を内在的に発現していないPC-3細胞では、コントロールpGL3-Basicのホタルルシフェラーゼ活性値を1とした場合、pGL3-B/RA3 1.8Kのホタルルシフェラーゼ活性値は約0.1と強い遺伝子プロモーター活性が認められないのに対して、RA3を内在的に発現しているNAMALWA細胞でのpGL3-B/RA3 1.8Kのホタルルシフェラーゼ活性値は、コントロールpGL3-Basicの値を1とした場合の約4倍の値を示し、強い遺伝子プロモータ活性を示した(図8)。RA3遺伝子上流配列である配列番号1で示した塩基配列は、RA3の発現を調節するプロモーター活性を有しており、配列番号1で表される塩基配列を用いることにより、RA3の発現を抑制する物質をスクリーニングできることがわかった。
【0033】
<実施例9>RA3過剰発現によるNF-κB活性化の誘導
ヒト前立腺癌由来細胞株PC-3を、10%熱不活化胎児ウシ血清(FBS; JRHバイオサイエンス社)を添加したRPMI-1640培地に培養して維持した。
PC-3細胞への遺伝子導入はFuGENE 6 Transfection Reagent(ロシュダイアグノスティックス社)を用いて行った。トランスフェクション前日に、PC-3細胞を1穴あたり5000細胞になるようCulturPlate-96(Packard)に撒いた。トランスフェクション当日に、実施例1で示したコントロールベクターpcDNA3.1-CFL、又は、CFL-RA3発現ベクターと、NF-kB応答性ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子pNF-kappaB-Luc Vector( BD Biosciences)、及び内部標準用ウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子phRL-TK Vector(プロメガ社)を混合後、添付指示書に従って、FuGENE 6 Transfection Reagentと混合した後、PC-3細胞培養上清に添加し、24時間後のルシフェラーゼ活性を測定した。
ルシフェラーゼ活性の測定は、Dual-Luciferase Reporter Assay System(Promega, #E1960)を使用して測定した。回収した細胞を添付の細胞溶解液100μLにて抽出し、その抽出液20μLをCulturPlate-96 (パッカード社)に移し、ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を添付の試薬を用いて順次測定した。検出はMICROLITE LUMINOMETER(DYNATECH LABORATORIES, ML3000)にて行った。ホタルルシフェラーゼレポーター活性値はウミシイタケルシフェラーゼ活性値で除して標準化した。
RA3過剰発現によってNF-κB応答性のレポーター活性が誘導されることを見出した(図9)。
種々の炎症性サイトカイン、炎症メディエーターの産生を亢進するNF-κBは、RAの滑膜組織での炎症反応の機序と考えられている(Kumar S. et al Curr Opin Pharmacol 2001 1:307-313)。RA3をコードするポリヌクレオチド及びNF-κB応答性のレポーター遺伝子により形質転換された細胞を用いる本実施例の方法により、RA3の機能を抑制する物質(即ち関節リウマチ治療薬)をスクリーニングできることがわかった。
【配列表フリーテキスト】
【0034】
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号18の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したsiRNAのセンス鎖であり、第1〜19番はRNAであり、第20〜21番はDNAである。プライマー配列である。配列表の配列番号19の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したsiRNAのアンチセンス鎖であり、第1〜19番はRNAであり、第20〜21番はDNAである。配列番号4〜7、16〜17の配列で表される塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】293T細胞でのRA3蛋白質発現を示した図である。
【図2】RA滑膜組織サンプル、OA滑膜組織サンプルにおけるRA3遺伝子の発現を比較した図である。図の縦軸は、RA3遺伝子転写の相対的度合いを示す。
【図3】各種siRNAを導入したRA患者由来滑膜繊維芽様細胞でのRA3遺伝子の相対的な発現度を示した図である。図の縦軸はRA遺伝子転写の相対度(%)を示す。
【図4】各種siRNAを導入したRA患者由来滑膜繊維芽様細胞での、LPSあるいはTNF-αあるいはIL-1βで発現誘導されるIL-8遺伝子の相対的な発現度を示した図である。
【図5】各種血球細胞種でのRA3遺伝子の発現を比較した図である。
【図6】前立腺癌細胞株PC-3, Tリンパ腫細胞株Jurkat, Bリンパ腫細胞株SKW6.4, NAMALWAでのRA3遺伝子の発現を比較した図である。縦軸はRA3遺伝子転写の相対度を示す。
【図7】各種siRNAを同導入したSKW6.4細胞での抗CD40抗体刺激時のNF-κBレポーターの応答性を示した図である。図の縦軸はNF-κBレポーター活性相対度を示す。
【図8】(A)RA3を内在的に発現していないPC-3細胞株、または(B)RA3を内在的に発現しているNAMALWA細胞株でのRA3遺伝子プロモーター活性を示した図である。(A)及び(B)の縦軸はルシフェラーゼ活性を示している。
【図9】RA3過剰発現によるNF-κB応答性レポーター活性を示した図である。図の縦軸はNF-κBレポーター活性相対度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験物質が、(1)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、(2)配列番号3で表されるアミノ酸配列又は配列番号3で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつ発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するポリペプチド、又は(3)配列番号3で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ発現抑制によりLPS、TNF-α及び/若しくはIL-1βに対する応答性を抑制するポリペプチド
を抑制するか否かを分析する工程を含む、関節リウマチ治療薬のスクリーニング方法。
【請求項2】
抑制が発現抑制である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞と試験物質とを接触させる工程、及び
プロモーター活性を検出する工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項5】
(1)請求項1に記載のポリペプチド、
(2)(i)請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は(ii)配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、あるいは
(3)(i)請求項1に記載のポリペプチドを発現している細胞、又は(ii)配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞
からなる関節リウマチ治療薬スクリーニングツール。
【請求項6】
(1)請求項1に記載のポリペプチド、
(2)(i)請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は(ii)配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、あるいは
(3)(i)請求項1に記載のポリペプチドを発現している細胞、又は(ii)配列番号1で表される塩基配列若しくは配列番号1で表される塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、及び/若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換された細胞
の関節リウマチ治療薬スクリーニングのための使用。
【請求項7】
請求項1に記載の分析工程、及び製剤化工程を含む、関節リウマチ治療用医薬組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項3に記載のスクリーニング方法で得ることができる物質を有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチドを抑制する物質を有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のポリペプチドを抑制する物質を投与することを含む、関節リウマチ治療方法。
【請求項11】
請求項1に記載のポリペプチドを抑制する物質の、関節リウマチ治療用医薬組成物製造のための使用。
【請求項12】
配列番号2に記載の塩基配列のNAに続く19〜21塩基からなる、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドに特異的な塩基配列に基づいて設計されるsiRNA。
【請求項13】
二重鎖RNA部分が、配列番号13で表される塩基配列、又はそのセンス鎖の3’末端が1若しくは2塩基欠失した塩基配列からなるsiRNA。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載のsiRNAを有効成分とする、関節リウマチ治療用医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−104901(P2007−104901A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−9860(P2004−9860)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【出願人】(504021507)
【Fターム(参考)】