説明

防振性組成物及び架橋体並びにその製造方法

【課題】幅広い温度で高い制振性を有する防振性組成物を提供する。
【解決手段】鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体からなるオレフィン系エラストマーと、このオレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ前記オレフィン系エラストマーと異なるガラス転移温度を有するオレフィン系樹脂とを含む組成物で防振性組成物を調製する。前記オレフィン系樹脂は、オレフィン系エラストマーよりもガラス転移温度が高い環状オレフィン系樹脂及び/又はオレフィン系エラストマーよりもガラス転移温度が低い鎖状オレフィン系樹脂であってもよい。前記オレフィン系エラストマーのガラス転移温度が30℃以下であり、オレフィン系樹脂のガラス転移温度との差が10℃以上であってもよい。前記オレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂との割合(重量比)は、前者/後者=98/2〜50/50程度であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い温度範囲で制振性及び防振性を示し、自動車、家電機器、工業製造プロセスなどの幅広い分野で利用できる防振性組成物及び架橋体並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、事務機器、家電機器などの分野で低振動性及び低騒音性が求められている。これらの分野において、振動を吸収する手段としては、バネや防振ゴムなどが用いられてきたが、部材の生産性が低く、小型化に対応し難い。そこで、薄型化や小型化に対応する目的で、ポリウレタンなどのエラストマーフィルムを用いた制振材が開発されており、スピーカーエッジなどに採用されている。しかし、ポリウレタンで形成された制振材でも制振性能は充分でなく、特に室温付近での防振性が低い。
【0003】
室温付近での制振性に優れる制振材として、特許第3150181号公報(特許文献1)には、環状オレフィンとα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体であって、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下で融点が90℃以下である環状オレフィン系共重合体により形成された制振材が開示されている。この文献には、高い柔軟性を有する物性の範囲内で、異なるTgを有する共重合体を含んでもよいことが記載され、実施例では、Tg3℃、−7℃、−8℃を有する環状オレフィン共重合体を、それぞれ単独で用いて制振材を製造している。
【0004】
しかし、この制振材では、室温付近での制振性能は優れているものの、低温や高温での制振性能が低く、制振性を発現できる温度域が小さかった。さらに、高温での制振性能や耐熱性が低く、例えば、自動車分野で求められる制振性は実現できなかった。
【0005】
これに対して、高温での使用を改良し、広い温度範囲での制振性と耐熱性とを有する発泡体として、特開平11−100454号公報(特許文献2)には、互いに異なるTgを有する2種以上の環状オレフィン系樹脂を含有する組成物からなる発泡体が開示されている。この文献には、Tgが20〜130℃の環状オレフィン系樹脂と、このTgよりも20℃以上高いTgを有する環状オレフィン系樹脂との組み合わせが記載され、実施例では、Tg80℃の環状オレフィン系樹脂とTg140℃の環状オレフィン系樹脂とを組み合わせた混合物、Tg95℃の環状オレフィン系樹脂とTg140℃の環状オレフィン系樹脂とを組み合わせた混合物が製造されている。
【0006】
しかし、この発泡体は、制振性が高温域に限定されるとともに、環状オレフィン系樹脂同士の溶融混合物であるため、相容系となる。このため、この文献に記載されている発泡体は広い温度範囲での制振性を発現できない。さらに、発泡体であるため、強度や成形性が低く、用途が制限される。このように、広い温度範囲で制振性を発現し、その制振性を発現する温度領域を単純な組成比で制御できる技術は存在しなかった。また、一般に、制振性を発現する樹脂はゴム弾性を有するが、ゴム弾性と耐熱性とはトレードオフの関係にあるため、耐熱性が低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3150181号公報(請求項1、段落[0024]、実施例)
【特許文献2】特開平11−100454号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、幅広い温度で高い制振性を発現できる防振性組成物及び架橋体並びにその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、適度な柔軟性と強度を有するとともに、成形性にも優れる性組成物及び架橋体並びにその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、耐熱性に優れ、高温でも弾性などの機械的特性を保持できる性組成物及び架橋体並びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体からなるオレフィン系エラストマーと、このオレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ前記オレフィン系エラストマーと異なるガラス転移温度を有するオレフィン系樹脂とを組み合わせることにより、幅広い温度で高い制振性を向上できることを見出し、本発明を完成した。さらに、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体からなるオレフィン系エラストマーと、このオレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ融点を有するオレフィン系樹脂とを組み合わせることにより、幅広い温度で高い制振性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の防振性組成物は、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体からなるオレフィン系エラストマーと、このオレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ前記オレフィン系エラストマーと異なるガラス転移温度を有するオレフィン系樹脂とを含む組成物で構成されている。前記オレフィン系樹脂は、前記オレフィン系エラストマーよりも高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系樹脂及び/又は前記オレフィン系エラストマーよりも低いガラス転移温度を有する鎖状オレフィン系樹脂であってもよい。前記オレフィン系エラストマーのガラス転移温度が30℃以下であり、オレフィン系エラストマーのガラス転移温度とオレフィン系樹脂のガラス転移温度との差が10℃以上であってもよい。前記オレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂との割合(重量比)は、前者/後者=98/2〜50/50程度であってもよい。前記オレフィン系エラストマーは、α−鎖状C2−4オレフィンと多環式オレフィンとを重合成分とする共重合体であり、かつα−鎖状C2−4オレフィンと多環式オレフィンとのモル比が、α−鎖状C2−4オレフィン/多環式オレフィン=85/15〜97/3程度であってもよい。本発明の防振性組成物は、非発泡体で構成されていてもよい。
【0013】
本発明には、前記防振性組成物の架橋体も含まれる。この架橋体において、防振性組成物は電子線で架橋されていてもよい。
【0014】
本発明には、前記防振性組成物又はその架橋体を含む防振材も含まれる。
【0015】
本発明には、オレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂とを混合して組成物を調製する前記防振性組成物の製造方法も含まれる。この製造方法において、組成物をさらに架橋してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体からなるオレフィン系エラストマーと、このオレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ前記オレフィン系エラストマーと異なるガラス転移温度を有するオレフィン系樹脂とを組み合わせて組成物を調製しているため、幅広い温度域で高い制振性を発現できる。さらに、本発明の防振性組成物は、適度な柔軟性と強度を有するとともに、成形性にも優れている。さらに、耐熱性に優れ、高温でも弾性などの機械的特性を保持でき、組成物を架橋すると、その傾向はさらに増大する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、参考例3で得られた架橋前の試験片の温度に対する粘弾特性を示すグラフである。
【図2】図2は、参考例3で得られた架橋後の試験片の温度に対する粘弾特性を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例3で得られた架橋前の試験片の温度に対する粘弾特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[防振性組成物]
本発明の防振性組成物は、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体からなるオレフィン系エラストマーと、このオレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ前記オレフィン系エラストマーと異なるガラス転移温度を有するオレフィン系樹脂とを含む。
【0019】
(オレフィン系エラストマー)
本発明におけるオレフィン系エラストマーは、鎖状オレフィンと環状オレフィンとを重合成分として含み、かつ軟質な共重合体(軟質鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体)である。
【0020】
鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどの鎖状C2−10オレフィン類などが挙げられる。これらの鎖状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの鎖状オレフィンのうち、好ましくはα−鎖状C2−8オレフィン類であり、さらに好ましくはα−鎖状C2−4オレフィン類(特に、エチレン)である。
【0021】
環状オレフィンは、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンであればよく、単環式オレフィン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状C4−12シクロオレフィン類など)であってもよいが、多環式オレフィンが好ましい。
【0022】
代表的な多環式オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン(2−ノルボルネン)、置換基を有するノルボルネン、シクロペンタジエンの多量体、置換基を有するシクロペンタジエンの多量体などが例示できる。前記置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基、アミド基、ハロゲン原子などが例示できる。これらの置換基は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0023】
具体的に、多環式オレフィンとしては、例えば、2−ノルボルネン;5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネンなどのアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデン−2−ノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基を有するノルボルネン類;5−シアノ−2−ノルボルネンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネンなどのアリール基を有するノルボルネン類;ジシクロペンタジエン;2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノシクロペンタジエノナフタレン、メタノオクタヒドロシクロペンタジエノナフタレンなどの誘導体;6−エチル−オクタヒドロナフタレンなどの置換基を有する誘導体;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、シクロペンタジエンの3〜4量体などが例示できる。
【0024】
これらの環状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、ノルボルネン類などの多環式オレフィンが好ましい。
【0025】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体において、透明性と柔軟性とを両立する点から、鎖状オレフィン(特に、エチレンなどのα−鎖状C2−4オレフィン)と環状オレフィン(特に、ノルボルネンなどの多環式オレフィン)との割合(モル比)は、例えば、鎖状オレフィン/環状オレフィン=80/20〜99/1程度の範囲から選択でき、例えば、85/15〜97/3、好ましくは88/12〜95/5、さらに好ましくは90/10〜95/5(特に91/9〜94/6)程度である。
【0026】
他の共重合性単量体としては、例えば、ビニルエステル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);ジエン系単量体(例えば、ブタジエン、イソプレンなど);(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、又はこれらの誘導体((メタ)アクリル酸エステルなど)など]などが例示できる。これらの他の共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの他の共重合性単量体の含有量は、共重合体に対して、例えば、5モル%以下、好ましくは1モル%以下である。
【0027】
オレフィン系エラストマーは、付加重合により得られた樹脂であってもよく、開環重合(開環メタセシス重合など)により得られた樹脂であってもよい。また、開環メタセシス重合により得られた重合体は、水素添加された水添樹脂であってもよい。鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の重合方法は、慣用の方法、例えば、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合、チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタロセン系触媒を用いた付加重合(通常、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合)などを利用できる。
【0028】
オレフィン系エラストマーの結晶化度は20%以下程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜20%、好ましくは1〜18%、さらに好ましくは2〜15%(特に3〜10%)程度である。
【0029】
オレフィン系エラストマーのガラス転移温度(Tg)は30℃以下(例えば、−50℃〜30℃程度)の範囲から選択でき、例えば、−25℃〜30℃、好ましくは−20℃〜20℃、さらに好ましくは−15℃〜10℃(特に−10℃〜5℃)程度である。
【0030】
オレフィン系エラストマーは、融点(mp)(又は融解温度)を有するポリマー、すなわち無定形(非晶)領域だけではなく、結晶領域(微結晶)を有するポリマーである。オレフィン系エラストマーの融点は示差熱分析により求めることができ、場合により複屈折の変化で測定してもよい。例えば、JIS K7121:1987に準拠した方法で測定できる。
【0031】
オレフィン系エラストマーの融点(mp)は、制振性が要求される温度に応じて、50〜300℃程度の範囲から選択でき、例えば、50〜200℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃(特に75〜110℃)程度である。さらに耐熱性などが要求される用途などでは、100〜250℃(特に110〜200℃)程度であってもよい。
【0032】
高分子化合物の場合、融点とガラス転移温度との間には、ケルビン温度表示において、Tg=0.9×mpという経験則があるが、本発明では、オレフィン系エラストマーの選択の基準は、制振性を求める温度領域に合わせてガラス転移温度によって選択でき、融点はそのガラス転移点により決めることができる。本発明では、オレフィン系エラストマーが融点を有し、結晶領域を有するため、融点を有さず、結晶領域を有さない環状オレフィン系樹脂と溶融混合することにより、容易に非相容な溶融混合体を形成できる。すなわち、オレフィン系エラストマーと環状オレフィン系樹脂とは基本骨格が同一である場合でも、非相容系となり、幅広い温度域で制振性を発現する。一方、鎖状オレフィン系樹脂も、オレフィン系エラストマーとは非相容系であり、容易に非相容な溶融混合体を形成できる。
【0033】
オレフィン系エラストマーの数平均分子量は、例えば、15000〜200000、好ましくは20000〜120000、さらに好ましくは30000〜100000(特に40000〜90000)程度である。
【0034】
なお、ガラス転移温度及び融点は、単量体の割合、単量体の置換基、重合体の分子量などを調整して制御することができる。
【0035】
オレフィン系エラストマーは、JIS K7127に準拠した引張試験(厚み100μmのフィルム)において、破断伸度が500%以上程度であってもよく、例えば、500〜2500%、好ましくは600〜2000%、さらに好ましくは800〜1800%(特に1000〜1500%)程度であってもよい。
【0036】
(オレフィン系樹脂)
本発明の防振性組成物は、前記オレフィン系エラストマーに加えて、幅広い温度域で制振性を発現させるために、前記オレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ前記オレフィン系エラストマーと異なるガラス転移温度を有するオレフィン系樹脂を含む。
【0037】
防振材に要求される制振性の指標となる損失正接(tanδ)は、制振材料のガラス転移温度(Tg)近傍で最大となるが、本発明では、前記オレフィン系樹脂を前記オレフィン系エラストマーと組み合わせることにより、幅広い温度域で制振性を発現できる。なお、構造が類似のポリマー同士は一般的に相容性が高いため、均質なアロイ樹脂を形成し易く、特に、基本構造が同一であるポリマー同士の組み合わせは、通常、相容であり、混合すると均質なアロイとなり、単一のガラス転移温度を有する。そのため、このようなアロイでは、ガラス転移温度付近のみで制振性を発現し、幅広い温度で制振性を発現できない。これに対して、本発明では、共通するオレフィン骨格及び環状オレフィン骨格を有するにも拘わらず、オレフィン系エラストマーのポリオレフィン鎖の結晶性によって微結晶構造を形成しているためか、前記オレフィン系エラストマーと鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体とを混合しても非相容な状態を保持できる。そのため、混合物は、複数のガラス転移温度を示し、幅広い温度域で制振性を発現できる。
【0038】
オレフィン系樹脂は、前記オレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ前記オレフィン系エラストマーと異なるガラス転移温度を有する限り、特に限定されず、鎖状オレフィン系樹脂であってもよく、環状オレフィン系樹脂であってもよい。
【0039】
鎖状オレフィン系樹脂としては、前記オレフィン系エラストマーの項で例示された鎖状オレフィン、特に、エチレンやプロピレンなどのα−鎖状C2−4オレフィン(特にエチレン)を含む重合体が挙げられる。鎖状オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂[例えば、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体など]、ポリプロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体などのプロピレン含有80重量%以上のプロピレン−α−オレフィン共重合体など)、ポリ(メチルペンテン−1)樹脂などが挙げられる。これらの鎖状オレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの鎖状オレフィン系樹脂のうち、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0040】
環状オレフィン系樹脂は、前記オレフィン系エラストマーの項で例示された環状オレフィン、特に、ノルボルネンなどの多環式オレフィンを含む重合体であってもよく、エラストマー特性を有さない割合で、さらにエチレンなどのα−鎖状C2−4オレフィンを含む鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体(硬質鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体)であってもよい。環状オレフィン系重合体において、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの割合(モル比)は、鎖状オレフィンの割合が80モル%未満の範囲から選択でき、例えば、前者/後者=100/0〜25/75、好ましくは90/10〜30/70、さらに好ましくは80/20〜35/65(特に70/30〜35/65)程度である。これらの環状オレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィン系樹脂のうち、ノルボルネンとエチレンとの割合が前記範囲であるノルボルネン−エチレン共重合体などが好ましい。
【0041】
オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、制振性が要求される温度に応じて、−150℃〜200℃程度の範囲から選択でき、例えば、オレフィン系エラストマーのTgでの制振性に加えて、より高温域での制振性が必要な場合、オレフィン系エラストマーよりもTgが高いオレフィン系樹脂(例えば、環状オレフィン系重合体)であってもよく、一方、オレフィン系エラストマーのTgでの制振性に加えて、より低温域での制振性が必要な場合、オレフィン系エラストマーよりもTgが低いオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂などの鎖状オレフィン系重合体)であってもよい。さらに、オレフィン系エラストマーよりもTgが低いオレフィン系樹脂と高いオレフィン系樹脂の双方と組み合わせて、より広い温度域で制振性を示す防振材を調製してもよい。例えば、環状オレフィン系樹脂と鎖状オレフィン系樹脂とを組み合わせる場合、両者の割合(重量比)は、前者/後者=10/1〜1/10、好ましくは5/1〜1/5、さらに好ましくは2/1〜1/2程度である。
【0042】
さらに、防振材における制振性の温度域を拡げるためには、オレフィン系エラストマーのTgとオレフィン系樹脂のTgとの差は、10℃以上であるのが好ましく、例えば、10〜100℃、好ましくは15〜80℃、さらに好ましくは20〜60℃(特に25〜50℃)程度である。特に、両者のTgの差が、60℃以下(例えば、20〜50℃)程度の場合は、ガラス転移温度の谷間における制振性能の低下が抑制され、広い温度範囲に亘って制振性を発現できる。
【0043】
オレフィン系樹脂のTgは、具体的には、低温域での制振性が必要な場合、例えば、−110〜0℃、好ましくは−80〜−5℃、さらに好ましくは−50〜−10℃程度であってもよい。一方、高温域での制振性が必要な場合、例えば、オレフィン系樹脂のTgは、例えば、31〜150℃、好ましくは32〜120℃、さらに好ましくは35〜100℃(特に40〜80℃)程度である。
【0044】
オレフィン系樹脂の数平均分子量は、例えば、5000〜300000、好ましくは10000〜200000、さらに好ましくは15000〜150000程度である。
【0045】
オレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂との割合(重量比)は、オレフィン系エラストマー/オレフィン系樹脂=99/1〜10/90程度の範囲から選択でき、例えば、98/2〜50/50、好ましくは97/3〜60/40、さらに好ましくは96/4〜80/20(特に96/4〜90/10)程度であってもよい。
【0046】
本発明の防振性組成物は、機械的特性や成形性などの点から、非発泡体であるのが好ましい。
【0047】
本発明の防振性組成物は、慣用の添加剤、例えば、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤、安定化剤(酸化防止剤、熱安定剤、光安定材、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
本発明の防振性組成物は、後述する架橋体である場合、架橋性基(例えば、エチレン性不飽和結合を有する基など)を有する樹脂を実質的に含んでいなくてもよい。さらに、放射線(特に電子線)で架橋される場合、架橋剤、架橋促進剤、架橋助剤を実質的に含んでいなくてもよい。
【0049】
(架橋体)
本発明の防振性組成物は、前記オレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂とを含む組成物(混合物又はブレンド物)であることを特徴とするが、前記組成物は架橋体であってもよい。
【0050】
架橋体は、前記組成物を架橋することにより得られ、エラストマーの柔軟性を損なうことなく、高い耐熱性も有している。通常、エラストマーは、ガラス転移温度が低く、柔軟ではあるものの、耐熱性が充分でない。すなわち、樹脂やエラストマーにおいて、柔軟性と耐熱性とはトレードオフの関係にあり、両者を同時に成立するのは極めて困難であった。これに対して、本発明では、前記オレフィン系エラストマー及び前記オレフィン系樹脂を架橋することにより、前記オレフィン系エラストマーの構造や微結晶性が影響するためか、柔軟性と耐熱性とを両立できる。
【0051】
さらに、架橋体は、架橋後もガラス転移温度の上昇が少なく、各ガラス転移温度において、架橋前のガラス転移温度との温度差(絶対値)は、例えば、50℃以下、好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下(例えば、0〜30℃程度)であり、架橋後も高い柔軟性を保持している。
【0052】
架橋体は、耐熱性と柔軟性とを両立させるために、適度に架橋されている。架橋体における架橋の度合いは、トルエンを用いて3時間還流させる方法で測定したゲル分率で示すことができる。架橋体のゲル分率は、例えば、5重量%以上であってもよく、例えば、5〜90重量%(例えば、5〜70重量%)、好ましくは7〜80重量%、さらに好ましくは10〜70重量%(特に10〜60重量%)程度であってもよい。詳細には、ゲル分率は、実施例で記載の測定方法で測定できる。
【0053】
(防振材)
本発明の防振材は、前記防振性組成物又はその架橋体で構成されており、前述のように、オレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂とが非相容であるため、オレフィン系エラストマーに由来する前記ガラス転移温度と、オレフィン系樹脂に由来する前記ガラス転移温度を有する。そのため、幅広い温度で高い制振性を示し、例えば、昇温速度5℃/分及び周波数1Hzの条件で測定した動的粘弾性試験において、損失正接(tanδ)が0.1以上となる温度範囲を、オレフィン系樹脂の種類によって、−110〜200℃(例えば、−50〜150℃)程度の範囲から適宜選択できる。例えば、オレフィン系樹脂として環状オレフィン系樹脂を用いることにより、tanδが0.1以上となる温度範囲を0〜150℃(特に0〜100℃)程度に調整してもよい。また、オレフィン系樹脂として鎖状オレフィン系樹脂を用いることにより、tanδが0.1以上となる温度範囲を−30〜30℃程度に調整してもよい。さらに、オレフィン系樹脂として環状オレフィン系樹脂と鎖状オレフィン系樹脂との組み合わせを用いることにより、tanδが0.1以上となる温度範囲を−30〜150℃(特に−30〜100℃)程度に調整してもよい。
【0054】
本発明の防振材は、広い温度範囲で制振性を示すだけでなく、制振性能自体も高い。すなわち、JIS G0602法に準拠した片持ち梁法で測定した損失係数(23℃)は、共振周波数500〜520Hzにおける損失係数が0.01以上、好ましくは0.013〜1、さらに好ましくは0.015〜0.5(特に0.016〜0.3)程度である。
【0055】
本発明の防振材は、JIS K7127に準拠した引張試験(厚み100μmのフィルム)において、破断伸度が50%以上程度であってもよく、例えば、100〜3000%、好ましくは200〜2500%(例えば300〜2000%)、さらに好ましくは500〜1800%(特に600〜1500%)程度であってもよい。さらに、本発明の防振材は、弾性変形性を示すため、前記引張試験において、降伏点を示さないのが好ましい。
【0056】
本発明の防振材は、耐熱性にも優れ、昇温速度5℃/分及び周波数1Hzの条件で測定したとき、50℃における損失弾性率は0.1MPa以上、好ましくは0.1〜100MPa、さらに好ましくは0.5〜50MPa(特に1〜30MPa)程度である。さらに、50℃における損失正接(tanδ)は0.01以上であり、例えば、0.01〜1、好ましくは0.02〜0.5、さらに好ましくは0.025〜0.3程度である。
【0057】
特に、架橋体で構成された防振材は、耐熱性にも優れており、150℃における損失弾性率が10kPa以上(例えば、10〜5000kPa)、好ましくは30〜4000kPa、さらに好ましくは50〜1000kPa(特に100〜500kPa)程度である。架橋体は、150℃の高温でも融解することなく、高い損失弾性率を示しており、優れた耐熱性を保持している。
【0058】
すなわち、架橋体で構成された防振材は、架橋前の成形体と同様のガラス転移温度を有し、かつ耐熱性に優れるため、前述の損失係数を−110〜300℃(例えば、−50〜200℃)程度の範囲においても保持している。
【0059】
[防振材の製造方法]
本発明の防振性組成物は、前記オレフィン系エラストマー及びオレフィン系樹脂を混合することにより調製できる。得られた組成物は、慣用の成形方法、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、真空成形法、異型成形法、インジェクションプレス法、プレス成形法、ガス注入成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法などにより、用途に応じた形状(フィルム又はシート状、各種三次元形状など)に成形してもよい。シート状成形体を製造する場合、本発明の防振材は、通常、押出成形機などを用いてオレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂とを溶融混練して成形できる。
【0060】
架橋体は、得られた成形体を架橋することより得られる。架橋の方法としては、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂を架橋するための慣用の方法を利用でき、例えば、化学架橋法(ラジカル発生剤、例えば、ジクミルパーオキシドなどの有機過酸化物を用いて加熱処理する方法など)、放射線架橋法(α線、β線、γ線、X線、電子線などの放射線を照射する方法など)などを利用できる。
【0061】
これらのうち、架橋剤や架橋促進剤(助剤)が不要であり、安定性の高い架橋体を効率良く製造できる点から、高エネルギー放射線を照射して架橋する方法が好ましく、電子線を照射して架橋する方法が特に好ましい。
【0062】
電子線の照射方法として、例えば、電子線照射装置などの露光源によって、電子線を照射する方法が利用できる。照射量(線量)は、オレフィン系エラストマーの厚みにより異なるが、例えば、10〜500kGy(グレイ)(例えば、100〜400kGy)程度の範囲から選択でき、架橋密度を高めて耐熱性を向上させる点から、120kGy以上であってもよく、例えば、120〜300kGy、好ましくは130〜200kGy、さらに好ましくは140〜180kGy(特に140〜160kGy)程度であってもよい。
【0063】
加速電圧は、10〜1000kV(例えば、100〜500kV)程度の範囲から選択でき、耐熱性を向上させる点から、120kV以上であってもよく、例えば、120〜400kV、好ましくは130〜300kV、さらに好ましくは140〜200kV程度であってもよい。
【0064】
なお、電子線の照射は、空気中で行ってもよく、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で得られた防振材や試験片の特性は、以下の方法で測定した。
【0066】
(ガラス転移温度及び融点)
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製「DSC6200」)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定を行った。
【0067】
(結晶化度)
得られたエラストマーについて、X線回折装置(XRD、(株)リガク製「RINT1500」)を用いて広角X線測定を行った。詳しくは、CuKαを用いて2θ=0°〜60°の範囲で回折ピーク測定を行った。なお、Topas Advanced Polymers GmbH社製「TOPAS5013」の熱プレス品を結晶性ゼロの対照サンプルとして用いた。この対照サンプルから得られる非晶ハローと、前記エラストマーから得られるスペクトルの差から結晶化度を算出した。
【0068】
(ゲル分率)
500mgの試験片を秤り取って冷却管を備えた100mlのナス型フラスコに入れ、さらにトルエン50mlを加えて、還流温度にて3時間攪拌した。その後、混合液を濾過し、濾過残渣を減圧乾燥後、計量してゲル分率を求めた。
【0069】
(動的粘弾性)
得られた試験片について、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、RSA−III)を用い、昇温速度5℃/分及び周波数1Hzの条件で、貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)を測定し、損失正接(tanδ)を求めた。さらに、前記損失正接が0.1を超える有効な制振性を示す温度域(制振発現温度)とした。
【0070】
(制振性)
1×10×250mmの冷間圧延鋼板の片面に、2×10×220mmの評価用サンプルを両面テープで貼り付けた。制振性評価システム(B&K社製)を用いてJIS G0602に準拠して、片持ち梁法により、23℃の共振周波数及び損失係数を測定した。
【0071】
(引張試験)
実施例で得られた試験片について、流れ(MD)方向にJIS2号ダンベル片(幅6mm)を打ち抜き、23℃/50%RH、引張速度500mm/分で引張試験を行った。
【0072】
製造例1(オレフィン系エラストマーA)
窒素雰囲気下、室温において30リットルのオートクレーブに、トルエン15リットル、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)15ミリモル、四塩化ジルコニウム0.75ミリモル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウム0.75ミリモルをこの順番に投入し、続いてノルボルネンを70重量%含有するトルエン溶液1.8リットルを加えた。50℃に昇温した後、エチレン分圧が5kgf/cmになるように、連続的にエチレンを導入しつつ、60分間の反応を行った。反応終了後ポリマー溶液を15リットルのメタノール中に投入し、ポリマーを析出させた。このポリマーを濾別、乾燥し、オレフィン系エラストマーA(エチレン−ノルボルネン共重合体エラストマーA)を得た。収量は3.12kg、重合活性は46kg/gZr(ジルコニウム1g当りの収量)であった。
【0073】
13C−NMRにおいて、エチレン単位にもとづくピークとノルボルネン単位の5及び6位のメチレンにもとづくピークの和(30ppm付近)と、ノルボルネン単位の7位メチレン基にもとづくピーク(32.5ppm付近)との比から求めたノルボルネン含量は8.6モル%であった。ガラス転移温度は−1℃、融点は80℃、結晶化度は10%であった。
【0074】
製造例2(オレフィン系エラストマーB)
製造例1において、ノルボルネン70重量%含有するトルエン溶液の量を1.3リットルに変えた以外は、製造例1と同様にエチレンとノルボルネンとの共重合を行った。その結果、収量は3.77kg、得られたオレフィン系エラストマーB(エチレン−ノルボルネン共重合体エラストマーB)のノルボルネン含量は6.2モル%、ガラス転移温度は7.5℃、融点は95℃、結晶化度は12%であった。
【0075】
参考例1
製造例1で得られたオレフィン系エラストマーAを、小型押出機((株)プラスチック工学研究所製、20mmφ、L/D=25)に巾150mmのTダイを取り付け、引取速度を調整し、厚み100μmのフィルム状試験片を作製した。得られた試験片に、窒素雰囲気中、常温で、EB照射装置(岩崎電気(株)製「TYPE;CB250/15/180L)を用いて、加速電圧150kV、線量150kGyで電子線を照射して架橋した。得られた試験片(未架橋体及び架橋体)の特性を評価した結果を表1に示す。さらに、未架橋体について制振発現温度及び制振性を評価した結果も表1に示す。
【0076】
参考例2
加速電圧100kV、線量100kGyの条件で電子線を照射する以外は、参考例1と同様にして、フィルム状試験片を作製し、各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
参考例3
原料として、オレフィン系エラストマーBを用いる以外は参考例1と同様にして、フィルム状試験片を作製し、各種特性を評価した。結果を表1に示す。さらに、架橋前の試験片における温度と動的粘弾性との関係を図1に示し、架橋後の試験片における温度と動的粘弾性との関係を図2に示す。図1及び図2の比較から明らかなように、未架橋体及び架橋体のいずれも低温域では、制振性や弾性を示しているが、50℃を超える高温域では、いずれの特性も低下した。
【0078】
実施例1
原料として、オレフィン系エラストマーA90重量部及び環状オレフィン系重合体(表中の略号:COC−A、Topas Advanced Polymers GmbH社製、商品名「TOPAS9903」、数平均分子量Mn69000、ガラス転移温度Tg33℃)10重量部の混合物を用いる以外は参考例1と同様にして、フィルム状試験片を作製し、各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0079】
実施例2
オレフィン系エラストマーA90重量部及び環状オレフィン系重合体(表中の略号:COC−B、Topas Advanced Polymers GmbH社製、商品名「TOPAS9506」、Mn66000、Tg70℃)10重量部の混合物を用い、小型押出機((株)プラスチック工学研究所製、20mmφ、L/D=25)に巾150mmのTダイを取り付け、引取速度を調整し、厚み100μmのフィルム状試験片を作製した。得られた試験片(未架橋体)の各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
実施例3
原料として、オレフィン系エラストマーA80重量部及び環状オレフィン系重合体(Topas Advanced Polymers GmbH社製、商品名「TOPAS9506」、Mn66000、Tg70℃)20重量部の混合物を用いる以外は実施例2と同様にして、フィルム状試験片を作製した。得られた試験片(未架橋体)の各種特性を評価した。結果を表1に示す。さらに、架橋前の試験片における温度と動的粘弾性との関係を図3に示す。試験片は−40〜100℃の広い温度域において高い制振性及び弾性を示した。
【0081】
実施例4
原料として、オレフィン系エラストマーA90重量部及び環状オレフィン系重合体(表中の略号:COC−C、Topas Advanced Polymers GmbH社製、商品名「TOPAS8007」、Mn51000、Tg80℃)10重量部の混合物を用いる以外は実施例2と同様にして、フィルム状試験片を作製した。得られた試験片(未架橋体)の各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0082】
実施例5
原料として、オレフィン系エラストマーA95重量部及び環状オレフィン系重合体(TOPAS9903)5重量部の混合物を用いる以外は実施例2と同様にして、フィルム状試験片を作製した。得られた試験片(未架橋体)の各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0083】
実施例6
原料として、オレフィン系エラストマーA95重量部及びポリエチレン(HDPE、日本ポリエチレン(株)製「ノバテックHY540」、Tg−20℃)5重量部を用いる以外は参考例1と同様にして、フィルム状試験片を作製し、各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0084】
参考例4
原料として、ポリエチレン(LLDPE、プライムポリマー(株)製「エボリューSP0510」)を単独で用いる以外は実施例2と同様にして、フィルム状試験片を作製し、各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0085】
比較例1
原料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製「ウルトラセン751」)を単独で用いる以外は実施例2と同様にして、フィルム状試験片を作製し、各種特性を評価した。結果を表1に示す。
【0086】
比較例2
防振材を貼付せずに、鋼板単独の精神性を評価した結果を表1に示す。
【0087】
参考例5
環状オレフィン系重合体(TOPAS9903)の制振発現温度を評価した結果を表1に示す。
【0088】
参考例6
環状オレフィン系重合体(TOPAS9506)の制振発現温度を評価した結果を表1に示す。
【0089】
比較例3
ウレタンエラストマー(日本ポリウレタン工業(株)製「ミラクトンXN−2004」)の制振発現温度を評価した結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1の結果から明らかなように、本発明の防振材は、制振性及び機械的特性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の防振性組成物及び架橋体は、広い温度域で制振性を有するとともに、適度な柔軟性と強度を有し、成形性にも優れるため、各種分野における防振材や制振材として利用できる。例えば、振動や騒音が発生する各種機器(事務機器、家電機器、空調機器など)、輸送機械(自動車、車両、航空機など)、建造物又は構造物、道路、日用品、スポーツ用品などに利用でき、半導体製造プロセス粘着フィルム、スピーカーエッジなどの音響機器、高温で使用される自動車用部品、スポーツ用品などに特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体からなるオレフィン系エラストマーと、このオレフィン系エラストマーと非相容であり、かつ前記オレフィン系エラストマーと異なるガラス転移温度を有するオレフィン系樹脂とを含む防振性組成物。
【請求項2】
オレフィン系樹脂が、オレフィン系エラストマーよりも高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系樹脂及び/又はオレフィン系エラストマーよりも低いガラス転移温度を有する鎖状オレフィン系樹脂である請求項1記載の防振性組成物。
【請求項3】
オレフィン系エラストマーのガラス転移温度が30℃以下であり、オレフィン系エラストマーのガラス転移温度とオレフィン系樹脂のガラス転移温度との差が10℃以上である請求項1又は2記載の防振性組成物。
【請求項4】
オレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂との割合(重量比)が、前者/後者=98/2〜50/50である請求項1〜3のいずれかに記載の防振性組成物。
【請求項5】
オレフィン系エラストマーが、α−鎖状C2−4オレフィンと多環式オレフィンとを重合成分とする共重合体であり、かつα−鎖状C2−4オレフィンと多環式オレフィンとのモル比が、α−鎖状C2−4オレフィン/多環式オレフィン=85/15〜97/3である請求項1〜4のいずれかに記載の防振性組成物。
【請求項6】
非発泡体で構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の防振性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の防振性組成物の架橋体。
【請求項8】
組成物が電子線で架橋されている請求項7記載の架橋体。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の防振性組成物を含む防振材。
【請求項10】
請求項7又は8記載の架橋体を含む防振材。
【請求項11】
オレフィン系エラストマーとオレフィン系樹脂とを混合して組成物を調製する請求項1記載の防振性組成物の製造方法。
【請求項12】
防振性組成物を架橋する請求項7記載の架橋体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−162668(P2012−162668A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24766(P2011−24766)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】