説明

防振装置

【課題】プランジャ部材を開放位置側へ付勢するコイルスプリングのばね定数の誤差及び、コイルスプリングの予備圧縮量の誤差に対する許容範囲をそれぞれ十分に大きいものにする。
【解決手段】防振装置10では、液圧空間130を縮小する開放位置側へプランジャ部材78を付勢するコイルスプリング90が、圧縮量の増加に従ってばね定数が段階的に大きくなる非線形特性を有する。これにより、コイルスプリングとして線形特性を有するものを用いた場合と比較し、コイルスプリング90がプランジャ部材78に作用させるばね反力のバラツキに対する許容範囲を拡大できるので、コイルスプリング90のばね定数の誤差に対する許容範囲を大きくできると共に、開放位置にあるプランジャ部材78とオリフィス部材46との間に配置されるコイルスプリング90の予備圧縮量を大きなものとし、予備圧縮量の誤差に対する許容範囲を大きくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を発生する部材からの振動の伝達を防止する流体封入式の防振装置に係り、特に、自動車のエンジンマウントとして好適に用いられる防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、乗用車等の車両では、振動発生部となるエンジンと振動受け部となる車体との間にエンジンマウントとしての防振装置が配設されており、この防振装置がエンジンから発生する振動を吸収し、車体側に伝達されるのを阻止するような構造となっている。この種の防振装置としては、幅広い周波数の振動に対応すべく、主液室及び副液室と、これらの液室をそれぞれ連通する複数本のオリフィスが設けられ、入力振動の周波数に応じて、複数本のオリフィスのうち1本のオリフィスにより主液室と副液室とが連通するように、電磁ソレノイド等により駆動されるバルブ機構により複数本のオリフィスを選択的に開閉するものが知られている。
【0003】
つまり、この防振装置には、オリフィスの開閉状態を制御し、複数のオリフィス間で液体の通路を切り替える為の電気的な電磁ソレノイド等が必要なだけでなく、これら電磁ソレノイド等を入力振動の周波数等に基づいて動作させ、オリフィスを切り替えさせるコントローラが構造上、必要であった。しかし、これらの電磁ソレノイド及びコントローラは、比較的高価なものであり、またこれらの部品は防振装置の構造を著しく複雑化すると共に、車両への取付作業を煩雑なものにする要因となっていた。
【0004】
上記のような問題に鑑み、本出願の発明者等は、特許文献1において、主液室と副液室がシェイクオリフィス及びアイドルオリフィスによりそれぞれ連通されており、前記アイドルオリフィスの一部を形成すると共に副液室に連通したシリンダ空間内に配置されたプランジャ部材が、シェイク振動の入力時には主液室の液圧によりアイドルオリフィスを閉塞する閉塞位置へ移動し、アイドル振動時にはプランジャ部材をコイルスプリングの付勢力によりアイドルオリフィスを開放する開放位置へ移動させる防振装置を開示している。
【0005】
すなわち、特許文献1の防振装置では、外筒内の空間を主液室と副液室とに区画する仕切部材が設けられると共に、この仕切部材の内周側に形成されたシリンダ室内にプランジャ部材が軸方向へ移動可能に配置されており、振動入力時には、主液室内に液圧変化(液圧振幅)が生じることにより、この液圧変化に伴って主液室内の液体が逆止弁を通してシリンダ室内の主液室側の空間(液圧空間)に流入し、液圧空間内の液圧を主液室内の液圧振幅の最高圧と平衡するまで上昇させる。
【0006】
このとき、振幅が大きいシェイク振動が入力すると、主液室内の液圧振幅も相対的に大きなものになり、液圧空間内の液圧も相対的に高いものになるので、プランジャ部材が開放位置にある場合には、液圧空間内の液圧に生じる加圧力によりプランジャ部材がコイルスプリングの付勢力に抗して閉塞位置まで移動し、シェイク振動の入力中は閉塞位置に保持される。
【0007】
また振幅が小さいアイドル振動が入力すると、主液室内の液圧振幅が相対的に小さいものになり、液圧空間内の液圧も相対的に低いものになるので、プランジャ部材が開放位置にある場合には、コイルスプリングの付勢力によりプランジャ部材が液圧空間内の液圧に抗して開放位置に保持され、プランジャ部材が閉塞位置にある場合には、コイルスプリングの付勢力によりプランジャ部材が液圧空間内の液圧に抗して開放位置に移動する。
【0008】
従って、特許文献1に記載されたような防振装置では、プランジャ部材を入力振動の種類(振幅)に対応する適正な位置(開放位置又は閉塞位置)へ正常に移動させるためには、コイルスプリングがプランジャ部材に作用させる荷重(ばね反力)を、プランジャ部材の位置、アイドルオリフィスの開閉状態、入力振動の種類(シェイク振動又はアイドル振動)等に応じて精度良く適正値に設定する必要がある。
【特許文献1】国際公開WO2004/081408号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたような防振装置では、コイルスプリングとして圧縮荷重の増加にばね反力が実質的に比例して増加する線形特性を有するものを用いていたことから、コイルスプリングがプランジャ部材に作用させるばね反力の偏差(バラツキ)に対する許容範囲が極めて小さいものになる。このため、このような防振装置では、コイルスプリングのばね定数の誤差を非常に厳しく管理することが要求されると共に、開放位置にあるプランジャ部材とシリンダ室の内壁面との間に配置されるコイルスプリングの予備圧縮量の誤差に対する許容範囲も極めて小さいものなってしまう。
【0010】
この結果、特許文献1に記載されたような防振装置を量産しようとした場合には、装置の構成部品として使用可能なコイルスプリングの製造歩留まりが低くなることから、結果としてコイルスプリングの単価が高いものになり、またコイルスプリングを装置に組み付ける際の組付作業が非常に難しいものになることから、装置の生産性が低くなる、という問題が生じる。
【0011】
本発明の目的は、上記事実を考慮して、プランジャ部材を開放位置側へ付勢するコイルスプリングのばね定数の誤差及び、コイルスプリングの予備圧縮量の誤差に対する許容範囲をそれぞれ十分に大きいものにできる防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る防振装置は、振動発生部及び振動受け部の一方に連結される第1の取付部材と、振動発生部及び振動受け部の他方に連結される第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置された弾性体と、前記弾性体を隔壁の一部として液体が封入され、該弾性体の弾性変形に伴って内容積が変化する主液室と、液体が封入され内容積が拡縮可能とされた副液室と、前記主液室と前記副液室とを連通する第1の制限通路と、前記主液室と前記副液室とを連通し、前記第1の制限通路よりも液体の流通抵抗が小さい第2の制限通路と、前記主液室と前記副液室との間に設けられ、液体が充填されたシリンダ室と、前記シリンダ室内を、前記第2の制限通路の一部を構成すると共に前記副液室に連通したオリフィス空間及び前記第2の制限通路から隔離された液圧空間に区画すると共に、前記オリフィス空間及び前記液圧空間の拡縮方向に沿って所定の開放位置と閉塞位置との間で移動可能とされたプランジャ部材と、前記オリフィス空間内に面するように設けられると共に、前記第2の制限通路における前記オリフィス空間と他の部分とを連通させ、前記プランジャ部材が前記閉塞位置に移動すると、該プランジャ部材により閉塞され、前記プランジャ部材が前記開放位置に移動すると、該プランジャ部材により開放されるオリフィス開口と、前記プランジャ部材と前記シリンダ室の内壁面との間に圧縮状態となるように配置され、前記液圧空間を縮小する前記開放位置側へ前記プランジャ部材を付勢するコイルスプリングと、前記主液室と前記液圧空間との間に配置され、前記主液室内の液圧変化に伴って該主液室と前記液圧空間との間で一方向へのみ液体を流出させ得る逆止弁と、前記プランジャ部材が、前記コイルスプリングの付勢力により前記開放位置へ復帰する際に、前記液圧空間内の液体を前記オリフィス空間又は前記副液室内へ流出させる液圧解放路と、を有し、前記コイルスプリングとして、圧縮量の増加に従ってばね定数が段階的又は連続的に大きくなる非線形特性を有するものを用いたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項1に係る防振装置の作用を以下に説明する。
【0014】
請求項1の防振装置では、基本的に、第1及び第2の取付部材の何れか一方に振動が伝達されると、第1及び第2の取付部材間に配置された弾性体が弾性変形し、この弾性体の内部摩擦等に基づく吸振作用によって振動が吸収され、振動受け部側へ伝達される振動が低減される。
【0015】
また請求項1に係る防振装置では、開放位置にあったプランジャ部材が、逆止弁を通して主液室から液圧空間内へ供給される液圧により閉塞位置へ移動すると、弾性体の弾性変形に伴って第1の制限通路のみを通って主液室と副液室との間を液体が行き来し、また閉塞位置にあったプランジャ部材が、コイルスプリングの付勢力により開放位置へ復帰すると、第1の制限通路及び第2の制限通路の双方が開放された状態となるが、弾性体の弾性変形に伴って、液体の流通抵抗が相対的に小さい第2の制限通路を優先的に通って主液室と副液室との間を液体が行き来する。
【0016】
すなわち、請求項1に係る防振装置では、相対的に周波数が低く振幅が大きい振動(以下、「低周波域振動」という。)が入力した場合には、この低周波域振動によって弾性体が弾性変形し、主液室内に相対的に大きな液圧変化(液圧振幅)が生じると共に、主液室内の周期的な液圧変化時に逆止弁を通して主液室から液圧空間へ液体が流入し、又は液圧空間から主液室へ液体が流出して、液圧空間内の液圧が主液室内の液圧(最高値又は最低値)と略平衡する平衡圧に達する。
【0017】
このとき、コイルスプリングの付勢力(ばね反力)を液圧空間内の平衡圧に対応する値よりも小さく設定しておけば、プランジャ部材がコイルスプリングの付勢力に抗して開放位置から閉塞位置側へ間欠的に移動し、液圧空間内の液圧により閉塞位置へ保持される。
【0018】
従って、請求項1に係る防振装置では、第1の制限通路における液体の流通抵抗を低周波域振動の周波数及び振幅に対応するように設定(チューニング)しておけば、低周波域振動の入力時には、第1の制限通路を通って主液室と副液室との間を行き来する液体に共振現象(液柱共振)が生じるので、この液柱共振の作用によって低周波域振動を特に効果的に吸収できる。
【0019】
また請求項1に係る防振装置では、相対的に周波数が高く振幅が小さい振動(以下、「高周波域振動」という。)が入力した場合には、この高周波域振動によって弾性体が弾性変形すると共に、主液室内に相対的に小さな液圧変化が生じることから、この場合にも、主液室内の周期的な液圧変化時に逆止弁を通して主液室から液圧空間へ液体が流入し、又は液圧空間から主液室へ液体が流出して、液圧空間内の液圧も主液室内の液圧(最高値又は最低値)と略平衡する平衡圧に達する。
【0020】
このとき、コイルスプリングの付勢力を液圧空間内の平衡圧に対応する値よりも大きく設定しておけば、プランジャ部材が開放位置にあるときには、コイルスプリングの付勢力により開放位置に保持され、また閉塞位置にある場合には、コイルスプリングの付勢力により閉塞位置から開放位置へ移動(復帰)する。
【0021】
従って、請求項1に係る防振装置では、第2の制限通路における液体の流通抵抗を高周波域振動の周波数及び振幅に対応するように設定(チューニング)しておけば、第2の制限通路を通って主液室と副液室との間を行き来する液体に共振現象(液柱共振)が生じるので、この液柱共振の作用によって高周波域振動を特に効果的に吸収できる。
【0022】
また請求項1に係る防振装置では、プランジャ部材とシリンダ室の内壁面との間に圧縮状態となるように配置されたコイルスプリングが、液圧空間を縮小する前記開放位置側へプランジャ部材を付勢しており、このコイルスプリングとして、圧縮量の増加に従ってばね定数が段階的又は連続的に大きくなる非線形特性を有するものが用いられている。これにより、コイルスプリングとして圧縮量の増加にばね反力が実質的に比例して増加する線形特性を有するものを用いた場合と比較し、コイルスプリングがプランジャ部材に作用させるばね反力の偏差(バラツキ)に対する許容範囲を拡大できるので、コイルスプリングのばね定数の誤差に対する許容範囲を大きくできると共に、開放位置にあるプランジャ部材とシリンダ室の内壁面との間に配置されるコイルスプリングの圧縮量(予備圧縮量)を大きなものとし、この予備圧縮量の誤差に対する許容範囲も大きくできる。
【0023】
すなわち、請求項1に係る防振装置では、プランジャ部材を入力振動の種類(振幅)に対応する適正な位置(開放位置又は閉塞位置)へ正常に移動させ、適正な位置に保持するためには、コイルスプリングがプランジャ部材に作用させる荷重(ばね反力)を、プランジャ部材の拡縮方向に沿った位置及び、入力振動の種類、すなわち主液室に生じる液圧振幅の大きさに応じて適正値に設定する必要がある。
【0024】
また主液室と副液室とを連通する第1の制限通路及び第2の制限通路の一方から他方へ切り換える際の応答時間を短くするためには、開放位置と閉塞位置との距離をできるだけ短くすることが有効である。
【0025】
このため、請求項1に係る防振装置では、開放位置と閉塞位置との距離を短いものにすると、プランジャ部材が開放位置にある場合のコイルスプリングの圧縮量とプランジャ部材から閉塞位置にある場合のコイルスプリングの圧縮量との差も小さいものになるので、コイルスプリングとしてばね定数が大きいものを用いる必要がある。
【0026】
一方、プランジャ部材が開放位置にある場合のコイルスプリングの圧縮量(予備圧縮量)を大きくし、予備圧縮量の誤差に対する許容範囲を増加するためには、コイルスプリングとしてばね定数が小さいものを用いることが有利になる。
【0027】
従って、コイルスプリングとして線形特性を有するものを用いた場合には、コイルスプリングに対する互いに相反する要求を満たすために、コイルスプリングのばね定数に対する許容誤差及び、コイルスプリングの予備圧縮量に対する許容誤差が極めて小さいものになってしまうが、コイルスプリングとして非線形特性を有するものを用いることにより、コイルスプリングのばね定数の誤差に対する許容範囲及び、プランジャ部材とシリンダ室の内壁面との間に配置されるコイルスプリングの予備圧縮量の誤差に対する許容範囲をそれぞれ増加できる。
【0028】
また本発明の請求項2に係る防振装置は、請求項1記載の防振装置において、前記コイルスプリングとして、不等ピッチコイルスプリングを用いたことを特徴とする。
【0029】
また本発明の請求項3に係る防振装置は、請求項1又は2記載の防振装置において、前記コイルスプリングは、前記開放位置にある前記プランジャ部材と前記シリンダ室の内壁面との間に軸方向に沿って所定量圧縮された予圧縮状態で配置され、前記プランジャ部材が前記閉鎖位置へ移動するに従って圧縮量を増加させることを特徴とする。
【0030】
また本発明の請求項4に係る防振装置は、請求項1乃至3の何れか1項記載の防振装置において、前記コイルスプリングは、前記プランジャ部材が前記開放位置と前記閉塞位置との間における所定の中間位置に対して前記開放位置側に位置する小圧縮状態では、ばね定数が相対的に小さくなり、中間位置に対して前記閉塞位置側に位置する大圧縮状態では、ばね定数が相対的に大きくなることを特徴とする。
【0031】
また本発明の請求項5に係る防振装置は、請求項4記載の防振装置において、前記コイルスプリングの前記小圧縮状態におけるばね定数を、前記プランジャ部材が前記開放位置にあり、かつ入力振動としてアイドル振動が入力している時に前記主液室内に生じる液圧振幅及び、前記プランジャ部材が前記開放位置にあり、かつ入力振動としてシェイク振動が入力している時に前記主液室内に生じる液圧振幅に対応して設定し、前記コイルスプリングの前記大圧縮状態におけるばね定数を、前記プランジャ部材が前記閉鎖位置にあり、かつ入力振動としてアイドル振動が入力している時に前記主液室内に生じる液圧振幅及び、前記プランジャ部材が前記閉鎖位置にあり、かつ入力振動としてシェイク振動が入力している時に前記主液室内に生じる液圧振幅に対応して設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明に係る防振装置によれば、プランジャ部材を開放位置側へ付勢するコイルスプリングのばね定数の誤差及び、コイルスプリングの予備圧縮量の誤差に対する許容範囲をそれぞれ十分に大きいものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態に係る防振装置について図面を参照して説明する。なお、図中、符号Sは装置の軸心を表しており、この軸心Sに沿った方向を装置の軸方向として以下の説明を行う。
【0034】
(実施形態の構成)
図1及び図2には本発明の第1の実施形態に係る防振装置が示されている。図1に示されるように、防振装置10には、その外周側に薄肉円筒に形成された外筒金具12が設けられると共に、この外筒金具12の内周側に取付金具20が略同軸的に配置されている。外筒金具12には、その上端部に外周側へ延出する環状のフランジ部14が屈曲形成されると共に、下端部に装置の組立時に内周側へテーパ状に折り曲げられるかしめ部16が形成されており、これらのフランジ部14とかしめ部16との中間に内周側へ向かって断面V字状に屈曲された絞り部18が全周に亘って形成されている。防振装置10は、外筒金具12がカップ状のホルダ金具(図示省略)内へ嵌挿されることにより、このホルダ金具を介してして車両における車体側へ連結される。
【0035】
取付金具20は、その上端側が略一定の外径を有する円柱状に形成されると共に、下端側が下方へ向かってテーパ状に外径が縮径する略円錐台状に形成されており、この取付金具20には、その上端面から下端側へ向かって軸心Sに沿ってねじ穴22が穿設されている。防振装置10は、取付金具20のねじ穴22に捻じ込まれたボルト等の締結部材及びブラケットステーを介して車両におけるエンジン側に連結固定される。
【0036】
防振装置10には、外筒金具12と取付金具20との間に略肉厚リング状に形成されたゴム弾性体24が配置されている。ゴム弾性体24は、その外周面が外筒金具12の内周面における絞り部18の上側に加硫接着されると共に、内周面が取付金具20の外周面下端側に加硫接着されている。これにより、ゴム弾性体24は外筒金具12と取付金具20とを弾性的に連結する。
【0037】
ゴム弾性体24は、その断面が取付金具20から外筒金具12へ向かって下方へ傾斜する略ハ字状に形成されている。これにより、ゴム弾性体24の下面中央部には、下方から上方へ向かって内径が狭くなる略円錐台状の凹部26が形成される。ゴム弾性体24には、その上端外周部から外周側へ延出する断面矩形状のストッパ部28が一体的に形成されており、このストッパ部28は、外筒金具12のフランジ部14における周方向に沿った一部に加硫接着されている。このストッパ部28は、防振装置10が車両に取り付けられた状態で、軸方向に沿ってエンジン側に大きな相対変位が生じた場合に、ブラケットステー等へ当接してエンジン側の変位を制限すると共に衝突音の発生を防止する。
【0038】
ゴム弾性体24には、その下端内周部に取付金具20の下端部を覆うインナクッション部30が一体的に形成されると共に、外筒金具12の絞り部18の内周側に段差部32が一体的に形成されている。この段差部32は、その下面側が平面状に形成されており、絞り部18により外周側から軸方向への変形が制限されるように支持されている。またゴム弾性体24には、段差部32の下端外周部から下方へ延出する薄肉円筒状の被覆部34が一体的に形成されている。この被覆部34は、外筒金具12の内周面を覆うように下端部まで延出され、外筒金具12に加硫接着されている。
【0039】
防振装置10には、外筒金具12の内周側に全体として略肉厚円板状に形成された仕切金具36(図3参照)が嵌挿されている。仕切金具36は、その上面外周部を段差部32の下面側へ当接させると共に、外周面を被覆部34を介して外筒金具12の内周面へ圧接させている。また防振装置10には、外筒金具12の内周側における仕切金具36の下側に環状の支持筒38が嵌挿されている。支持筒38は、その上端側を仕切金具36の下面外周部へ当接させると共に、被覆部34を介して外周面を外筒金具12の内周面へ圧接させている。防振装置10では、外筒金具12内に仕切金具36及び支持筒38が嵌挿された状態で、外筒金具12のかしめ部16が上端側から下端側へ向かって内外径が縮径するようにテーパ状に折り曲げられる。これにより、外筒金具12内で仕切金具36及び支持筒38が段差部32(絞り部18)とかしめ部16との間に固定される。
【0040】
支持筒38には、その内周側にゴム材料により薄肉円板状に成形されたダイヤフラム40が配置されており、このダイヤフラム40は、その外周縁部が全周に亘って支持筒38の内周面に加硫接着されている。これにより、外筒金具12内には、その軸方向に沿った上端側がゴム弾性体24により閉塞されると共に、下端側がダイヤフラム40により閉塞された略円柱状の空間(液室空間)が形成され、この液室空間は仕切金具36によりゴム弾性体24を隔壁の一部とする主液室42及びダイヤフラム40を隔壁とする副液室44に区画される。これらの主液室42及び副液室44内には、それぞれ水、エチレングリコール等の液体が充填される。
【0041】
ここで、主液室42は、その内容積がゴム弾性体24の弾性変形に伴って変化(拡縮)し、またダイヤフラム40は、副液室44の内容積を拡縮する方向へ十分に小さい荷重(液圧)で変形可能とされている。
【0042】
図5(A)に示されるように、仕切金具36には、その下部側に合成樹脂やアルミニウム等の金属材料により形成されたオリフィス部材46が設けられると共に、このオリフィス部材46の上側に有底円筒状の蓋部材48が配置されている。オリフィス部材46は、下面側が底板部50により閉止された肉厚の有底円筒状に形成されており、底板部50には、周方向に沿った寸法が内周側から外周側へ向かって広がる略扇状に形成された複数個(例えば、4個)の流通開口52が穿設されると共に、図3に示されるように、流通開口52の内周側に肉厚円筒状のボス部54が一体的に形成されている。
【0043】
図3に示されるように、ボス部54は、その軸方向に沿った寸法が底板部50の厚さよりも大きくなっており、底板部50の上面部及び下面部からそれぞれ突出している。ボス部54には上面中央部に円形凹状の座受穴56が開口しており、この座受穴56には後述するコイルスプリング90の下端部が挿入される。またボス部54には、座受穴56の底面とボス部54の下面との間を貫通する逃げ穴58が穿設されている。この逃げ穴58の内径は座受穴56の内径よりも小径とされており、この逃げ穴58内には、後述するプランジャ部材78のガイド筒部82が挿脱可能に挿入される。
【0044】
図5(A)に示されるように、オリフィス部材46には、その外周面上端部に下端側よりも外径が小さい嵌挿部60が形成されている。またオリフィス部材46には、外周面における段差部62と下端部との間に周方向に対して所定角度傾いたスパイラル方向に沿って延在する凹状の溝部64が形成されている。
【0045】
オリフィス部材46には、図6(B)に示されるように、嵌挿部60の一部を軸方向へ凹状に切り欠いて、溝部64の長手方向に沿った主液室42側の一端部をオリフィス部材46の上面部まで連通させる連通路66が形成されている。またオリフィス部材46には、図6(C)に示されるように、その下端部の一部を軸方向へ矩形状に切り欠いて、溝部64の長手方向に沿った他端部をオリフィス部材46の下面まで連通させる連通路68が形成されている。
【0046】
溝部64には、主液室42側の一端から長手方向(スパイラル方向)中間部までの区間に共用オリフィス部70が設けられると共に、この共用オリフィス部70に対して副液室44側に専用オリフィス部72が設けられている。ここで、共用オリフィス部70及び専用オリフィス部72は、その径方向に沿った深さは同じになっているが、共用オリフィス部70は、その軸方向に沿った幅が専用オリフィス部72の軸方向に沿った幅よりも所定長だけ長くなっている。これにより、共用オリフィス部70は、その断面積が専用オリフィス部72の断面積よりも大きくなり、この共用オリフィス部70の断面積は、車両のアイドリング運転時に発生するアイドル振動の周波数(例えば、18〜30Hz)及び振幅に対応するように設定されている。また共用オリフィス部70の路長は、溝部64全体の長手方向に沿った寸法(路長)の1/2以下となるように設定されている。
【0047】
オリフィス部材46には、図6(A)に示されるように、溝部64における共用オリフィス部70と専用オリフィス部72との境界部付近に、溝部64(共用オリフィス部70)の内周側の底面部からオリフィス部材46の内周面まで貫通するオリフィス開口74が穿設されている。このオリフィス開口74は周方向へ細長いスロット状に形成されている。ここで、オリフィス開口74の開口面積は、共用オリフィス部70の断面積以上になっている。
【0048】
またオリフィス開口74は、その内周端に沿った両端部の形状が略半円形とされており、この両端部付近での液体の流通抵抗の増加が抑制されている。またオリフィス開口74の内周縁部(エッジ部)における液体の流通方向に沿った断面形状を凸の半円状や楔状として、エッジ部での液体の流通抵抗の増加を抑制するようにして良い。
【0049】
図6(C)に示されるように、オリフィス部材46の内周側には円柱状の空間が形成され、この円柱状の空間は、後述するプランジャ部材78が収納されるシリンダ室76とされる。プランジャ部材78は、図5(A)に示されるように、肉厚円板状に形成されており、シリンダ室76を軸方向に沿って主液室42側の小空間である液圧空間130(図3参照)と副液室44側の小空間であるオリフィス空間132(図4参照)とに区画している。またプランジャ部材78は、その外周面下端側のエッジ部79がオリフィス開口74の長手方向と平行に延在している。
【0050】
図3に示されるように、プランジャ部材78には、その下面側における周縁部と中央部との間には周方向へ延在する環状凹部80が形成されている。またプランジャ部材78には、その下面中央部から下方へ突出する肉厚円筒状のガイド筒部82が一体的に形成されると共に、このガイド筒部82の中央部を軸方向へ貫通する軸受穴84が穿設されている。プランジャ部材78には、ガイド筒部82の基端部にガイド筒部82よりも大径とされた円柱状の座受部86が同軸的に形成されている。またプランジャ部材78には、その上面中央部に円形凹状の逃げ部88が形成されている。
【0051】
プランジャ部材78は、図3に示されるように、オリフィス部材46のシリンダ室76内へ挿入され、シリンダ室76の内周面に沿って軸方向に移動可能(スライド可能)となる。このとき、プランジャ部材78は、ガイド筒部82の先端側をオリフィス部材46の座受穴56及び逃げ穴58内にも同軸的に挿入するが、ガイド筒部82の外径は、座受穴56及び逃げ穴58の内径よりも小径であることから、プランジャ部材78は、オリフィス部材46の底板部50へ接することなく、軸方向に沿って所定の範囲(後述する閉塞位置と開放位置との間)で移動可能になる。また仕切金具36には、オリフィス部材46の底板部50とプランジャ部材78との間にコイルスプリング90が配置されている。
【0052】
コイルスプリング90は、その上端部をプランジャ部材78の座受部86の外周側に外嵌すると共に、その下端部をオリフィス部材46の座受穴56内へ挿入している。この状態で、コイルスプリング90は、その上端面(上側座面)をプランジャ部材78における座受部86の周縁部へ圧接させると共に、下端面(下側座面)を座受穴56の底面部へ圧接させ、プランジャ部材78及び底板部50により常に圧縮状態に保持されている。これにより、コイルスプリング90はプランジャ部材78を常に上方(主液室42側)へ付勢する。
【0053】
図3に示されるように、仕切金具36では、蓋部材48がオリフィス部材46における嵌挿部60の外周側に嵌挿固定されている。これにより、オリフィス部材46のシリンダ室76の上端側が蓋部材48の頂板部92により閉止される。蓋部材48には、図5(A)に示されるように、頂板部92の中央部に円形の嵌挿穴94が穿設されると共に、この嵌挿穴94の外周側に扇状に形成された複数個(本実施形態では、4個)の弁座開口96が形成されている。これら弁座開口96は、軸心Sを中心として対称的な位置関係(点対称)となるように配置されている。また蓋部材48には、図5(A)に示されるように、その外周部にオリフィス部材46の上端側の連通路66(図6(B)参照)に面するように切欠部98が形成されている。共用オリフィス部70は、蓋部材48の切欠部98及び連通路66を介して副液室44内へ連通している。
【0054】
図5(A)に示されるように、仕切金具36には、蓋部材48とプランジャ部材78との間に略円板状のホルダ部材100が配置されると共に、このホルダ部材100と蓋部材48との間に略円板状の弁体102が介装されている。ホルダ部材100には、図3に示されるように、その中央側に底の浅い有底円筒状とされた弁体ホルダ104が形成されると共に、この弁体ホルダ104の上端部から外周側へ延出する環状のフランジ部106が形成されている。またホルダ部材100には、弁体ホルダ104の底板部105の外周部にそれぞれ扇状に形成された複数個の連通開口108が穿設されている。
【0055】
図3に示されるように、ホルダ部材100には、底板部105の中央部に肉厚円板状のボス部110が一体的に形成されると共に、このボス部110の下面中央部から軸心Sに沿って下方へ突出する丸棒状のガイドロッド120が一体的に形成されている。またボス部110の上面側には、円形凹状の嵌挿穴112が形成されている。ここで、蓋部材48の頂板部92とホルダ部材100の底板部105との間には、嵌挿穴112の外周側に軸方向に沿った厚さ一定の円板状の空間である弁体収納室114が形成され、この弁体収納室114内には弁体102が収納される。
【0056】
弁体102は、NR、NBR等のゴム組成物により成形されており、その上面側が平面状とされると共に、下面側が内周側から外周側へ向って上方へ僅かに傾斜するスロープ状に形成されており、軸方向に沿った肉厚が内周側から外周側へ向って徐々に薄くなっている。また弁体102には、上面中央部に円形凸状の突起部116が形成されると共に、下面中央部にも円形凸状の突起部118が形成されている。弁体102は、その上面側の突起部116を蓋部材48の嵌挿穴94内へ嵌挿すると共に、下面側の突起部118をホルダ部材100の嵌挿穴112内へ嵌挿している。これにより、弁体102は、ホルダ部材100及び蓋部材48と同軸的に位置決めされると共に、径方向への移動が拘束される。
【0057】
弁体102は、突起部116,118の周縁部付近が蓋部材48の頂板部92とホルダ部材100の底板部105との間で軸方向に沿って圧縮されている。これにより、弁体102は、その上面部を所定の加圧力(予圧力)で蓋部材48の頂板部92の下面側へ圧接させると共に、蓋部材48とホルダ部材100との間で軸方向への移動が拘束される。弁体102は、圧縮状態となった部分の外周側の部分が下方へ向って撓み変形可能となっている。
【0058】
図3に示されるように、弁体102は、その外周端を径方向に沿って蓋部材48における弁座開口96の外周端よりも外周側に位置させ、かつホルダ部材100の連通開口108の外周端よりも内周側に位置させている。これにより、弁体102は、その上面部を頂板部92に圧接させた状態(閉状態)で弁座開口96を閉塞し、また、図3の2点鎖線で示されるように、外周側が下方へ撓み変形して頂板部92から離間した状態(開状態)になると、弁座開口96が弁体収納室114を介して連通開口108に連通した状態となり、主液室42が弁体収納室114を通して仕切金具36内のシリンダ室76へ連通する。すなわち、弁体収納室114内に収納された弁体102、蓋部材48及びホルダ部材100は、主液室42とシリンダ室76との間で逆止弁128を構成しており、この逆止弁128は、主液室42からシリンダ室76(液圧空間130)内へのみ液体の流入を許容するが、液圧空間130から主液室42内への液体の流出を阻止する。
【0059】
ホルダ部材100のガイドロッド120は、プランジャ部材78の軸受穴84内へ軸方向に沿って相対的に摺動可能となるように挿入されている。ここで、軸受穴84が穿設されたガイド筒部82及びガイドロッド120の一方が金属により形成されている場合には、他方を樹脂等のヤング率が所定値以上異なり、摩擦抵抗が小さい素材により形成することが好ましい。また軸受穴84の内周面及びガイドロッド120の外周面の一方又は双方に潤滑性を有し、かつ耐摩耗性が高い物質をコーティングしてスライド時の摩擦抵抗を抑制するようにしても良い。またガイドロッド120は、その先端側をオリフィス部材46の座受部86及び逃げ穴58内を通ってオリフィス部材46の下方まで突出させている。
【0060】
シリンダ室76のオリフィス空間132は、オリフィス部材46の複数の流通開口52と座受部86及び逃げ穴58を通して常に副液室44と連通している。また防振装置10では、図1に示されるように、オリフィス部材46における溝部64の外周側が被覆部34を介して外筒金具12の内周面により閉塞される。これにより、溝部64内には、スパイラル方向に沿って細長い空間であるシェイクオリフィス122が第1の制限通路として形成され、このシェイクオリフィス122は、その一端部がオリフィス部材46の連通路66及び蓋部材48の切欠部98を介して主液室42に接続されると共に、他端部がオリフィス部材46の連通路68を介して副液室44に接続される。
【0061】
ここで、シェイクオリフィス122は、互いに断面積が異なる共用オリフィス部70及び専用オリフィス部72からなる溝部64全体と連通路66,68とにより構成されている。このシェイクオリフィス122は、入力振動のうち相対的に低周波域の振動であるシェイク振動(例えば、9〜15Hz)に対応するように、その路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗が設定(チューニング)されている。
【0062】
溝部64における共用オリフィス部70は、シェイク振動に対して相対的に高周波域の振動であるアイドル振動(例えば、18〜30Hz)に対応するアイドルオリフィス124の一部を形成している。第2の制限通路であるアイドルオリフィス124は、共用オリフィス部70、オリフィス開口74及びオリフィス部材46内のオリフィス空間132により構成されており、その路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗がアイドル振動に対応するように設定(チューニング)されている。ここで、アイドルオリフィス124におけり液体の流通抵抗は、シェイクオリフィス122における液体の流通抵抗よりも小さくなっている。
【0063】
防振装置10では、図4に示されるように、プランジャ部材78が閉塞位置へ移動(下降)すると、オリフィス部材46のオリフィス開口74がプランジャ部材78の外周面により閉塞され、共用オリフィス部70がオリフィス空間132と非連通状態となる。これにより、主液室42と副液室44とは、シェイクオリフィス122のみを通して互いに連通する。
【0064】
このとき、プランジャ部材78の外周面における下端側の領域であるオーバラップ領域APを、軸方向に沿ってシリンダ室76の内周面におけるオリフィス開口74の下側の領域であるオーバラップ領域AWの内周側に位置(オーバラップ)させる。このとき、オーバラップ領域APとオーバラップ領域AWとの軸方向に沿った長さであるオーバラップ量は、例えば、2.5〜3.0mm程度に設定される。このようにプランジャ部材78が閉塞位置にある状態で、プランジャ部材78のオーバラップ領域APとシリンダ室76のオーバラップ領域AWとをオーバラップさせることにより、後述するように、主液室42内の液圧変化に伴ってプランジャ部材78が軸方向に沿って微小振幅で振動しても、プランジャ部材78によりオリフィス開口74を確実に閉塞状態に維持できる。
【0065】
また防振装置10では、図3に示されるように、プランジャ部材78が開放位置へ移動(上昇)すると、プランジャ部材78がオリフィス開口74から離れてオリフィス開口74が開放され、共用オリフィス部70がオリフィス空間132と連通状態となる。これにより、主液室42と副液室44とは、シェイクオリフィス122及びアイドルオリフィス124の双方を通して互いに連通するが、主液室42内の液圧が変化した際には、主液室42内から共用オリフィス部70内へ流入した液体は、専用オリフィス部72との境界部付近に達すると、専用オリフィス部72よりも液体の流通抵抗が小さいオリフィス開口74を通ってオリフィス空間132内へ優先的に流入し、またオリフィス開口74を通って共用オリフィス部70内へ流入した液体も、専用オリフィス部72よりも液体の流通抵抗が小さい共用オリフィス部70を優先的に通って主液室42内へ抜ける。これにより、防振装置10では、プランジャ部材78が開放位置にある場合、実質的にアイドルオリフィス124のみを通って主液室42と副液室44との間で液体が流通する。
【0066】
プランジャ部材78には、図3に示されるように、その径方向中間部に軸方向へ貫通する複数本(本実施形態では、2本)の液圧解放路126が形成されている。これらの液圧解放路126は、コイルスプリング90の付勢力により閉塞位置にあるプランジャ部材78が開放位置側へ移動する際に、外部から閉じられた液圧空間130内の液体をオリフィス空間132内へ流出させ、液圧空間130の液圧上昇を防止してプランジャ部材78を開放位置側へ移動可能にする。
【0067】
防振装置10では、プランジャ部材78における座受部86とオリフィス部材46における座受穴56の底面部との間にコイルスプリング90が常に圧縮状態となるように配置されている。これにより、コイルスプリング90はプランジャ部材78を常に開放位置側へ付勢する。すなわち、コイルスプリング90は、プランジャ部材78が開放位置(図3参照)にあるときに、自由長に対して所定の予備圧縮量だけ軸方向に沿って圧縮された予備圧縮状態となっている。
【0068】
ここで、コイルスプリング90としては、圧縮量の増加に従ってばね定数が段階的大きくなる非線形特性を有するものが用いられている。具体的には、本実施形態に係るコイルスプリング90としては、図5(B)に示されるように、不等ピッチコイルスプリングが用いられている。このコイルスプリング90は、軸方向に沿って上端側の巻線部分SUにおける素線間のピッチPUと下端側の巻線部分SLにおける素線間のピッチPLとが互いに異なる長さとされており、ピッチPUがピッチPLに対して長いもの(2段ピッチコイルスプリング)になっている。
【0069】
図7には、上記のように構成されたコイルスプリング90の軸方向に沿った圧縮量と圧縮荷重(ばね反力)との関係が実線L1により示されている。ここで、コイルスプリング90のばね定数は実線L1の傾きの大きさにより表される。コイルスプリング90はばね定数の変異点PVを有しており、軸方向へ圧縮量が変異点PV未満のときのばね定数CLが、圧縮量がPV以上のときのばね定数CHよりも小さくなっている。
【0070】
図3には、所定の予備圧縮量PC(本実施形態では、5mmに設定)だけ圧縮されたコイルスプリング90が示されており、この予備圧縮量は変異点PVよりも短いものになっている。コイルスプリング90は、予備圧縮状態から圧縮されると、上側の巻線部分SU(図5(B)参照)のピッチ及び下側の巻線部分SL(図5(B)参照)のピッチをそれぞれ狭くするように弾性変形しつつ、圧縮量及びばね定数CLにより決まるばね反力を発生させる。コイルスプリング90が更に圧縮されて圧縮量が変異点PVに達すると、図4に示されるように、巻線部分SUを形成する素線同士が接した状態になる。これにより、コイルスプリング90では、巻線部分SLのみが実質的に軸方向へ変形可能なることから、軸方向に沿った剛性(変形抵抗)が増大し、変異点PVに達する前のばね定数CLに対してばね定数CHが大きくなる。
【0071】
(実施形態の作用)
次に、本発明の実施形態に係る防振装置10の動作及び作用を説明する。
【0072】
防振装置10では、例えば、車両におけるエンジンが作動すると、エンジンが発生した振動が取付金具20を介してゴム弾性体24に伝達され、ゴム弾性体24が弾性変形する。このとき、ゴム弾性体24は吸振主体として作用し、ゴム弾性体24の内部摩擦等に基づく吸振作用によって振動が吸収され、外筒金具12を介して車体側へ伝達される振動が低減される。また自動車等の車両では、アイドリング運転時にエンジンが相対的に高周波域の振動であるアイドル振動を発生し、また所定速度以上での走行時にはエンジンが相対的に低周波域の振動であるシェイク振動を発生する。
【0073】
防振装置10では、シェイクオリフィス122の主液室42側の一部が、アイドルオリフィス124の一部を形成する共用オリフィス部70とされ、この共用オリフィス部70とシェイクオリフィス122における副液室44側の一部である専用オリフィス部72との間にシリンダ室76のオリフィス空間132に連通するオリフィス開口74が形成されていることから、主液室42と副液室44とが共用オリフィス部70及び専用オリフィス部72を含むシェイクオリフィス122により互いに連通すると共に、共用オリフィス部70及びオリフィス空間132を含むアイドルオリフィス124によっても互いに連通する。
【0074】
更に、防振装置10では、プランジャ部材78が、シリンダ室76の液圧空間130内の液圧によりコイルスプリング90の付勢力に抗して開放位置から閉塞位置に移動すると、プランジャ部材78がオリフィス開口74を閉塞し、コイルスプリング90の付勢力により閉塞位置から開放位置へ復帰すると、プランジャ部材78がオリフィス開口74を開放することから、開放位置にあったプランジャ部材78が、逆止弁128を通して主液室42から液圧空間130内へ供給される液圧により閉塞位置へ移動すると、ゴム弾性体24の弾性変形に伴って、シェイクオリフィス122のみを通って主液室42と副液室44との間を液体が行き来する。
【0075】
また防振装置10では、閉塞位置にあったプランジャ部材78が、コイルスプリング90の付勢力により開放位置へ復帰すると、シェイクオリフィス122及びアイドルオリフィス124の双方が開放された状態となるが、ゴム弾性体の弾性変形に伴って、液体の流通抵抗が相対的に小さいアイドルオリフィス124を優先的に通って主液室42と副液室44との間を液体が行き来する。
【0076】
すなわち、防振装置10では、相対的に周波数が低く振幅が大きいシェイク振動が入力した場合には、このシェイク振動によってゴム弾性体24が弾性変形し、主液室42内に相対的に大きな液圧変化(液圧振幅)が生じると共に、主液室42内の周期的な液圧上昇時に逆止弁128を通して主液室42から液圧空間130へ液体が流入して、液圧空間130内の液圧が主液室42内の上昇時の液圧(最高値)と略平衡する平衡圧まで上昇する。
【0077】
防振装置10では、コイルスプリング90の付勢力(ばね反力)がシェイク振動の入力時における液圧空間130内の液圧(平衡圧)に対応する値よりも小さく設定されており、これにより、シェイク振動の入力時には、プランジャ部材78がコイルスプリングの付勢力に抗して開放位置から閉塞位置側へ間欠的に移動し、液圧空間130内の液圧により閉塞位置へ保持される。
【0078】
従って、防振装置10では、シェイク振動の入力時には、ゴム弾性体24の弾性変形に伴って、シェイクオリフィス122のみを通して主液室42と副液室44の間を液体が行き来する。このとき、シェイクオリフィス122における液体の流通抵抗がシェイク振動の周波数及び振幅に対応するように設定(チューニング)されていることから、シェイクオリフィス122を通って主液室42と副液室44との間を行き来する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、この液柱共振の作用によってシェイク振動を特に効果的に吸収できる。
【0079】
また防振装置10では、相対的に周波数が高く振幅が小さいアイドル振動が入力した場合には、アイドル振動によってゴム弾性体24が弾性変形すると共に、主液室42内に相対的に小さな液圧変化(液圧振幅)が生じることから、この場合にも、主液室42内の周期的な液圧上昇時に逆止弁128を通して主液室42から液圧空間へ液体が流入して、液圧空間130内の液圧が上昇して主液室42内の上昇時の液圧(最高値)と略平衡する平衡圧まで達する。
【0080】
但し、防振装置10では、コイルスプリング90の付勢力(ばね反力)がアイドル振動の入力時における液圧空間130内の平衡圧に対応する値よりも大きく設定されており、これにより、アイドル振動の入力時に、プランジャ部材78が開放位置にあるときには、コイルスプリング90の付勢力により開放位置に保持され、また閉塞位置にある場合には、コイルスプリング90の付勢力により閉塞位置から開放位置へ移動(復帰)する。
【0081】
なお、コイルスプリング90の付勢力により閉塞位置にあるプランジャ部材78が開放位置側へ移動する際には、プランジャ部材78に形成された液圧解放路126が、外部から閉じられた液圧空間130内の液体をオリフィス空間132内へ流出させることから、液圧空間130の液圧上昇を防止してプランジャ部材78を開放位置側へ円滑に、かつ低い移動抵抗で移動可能にする。
【0082】
従って、防振装置10では、アイドル振動の入力時には、ゴム弾性体24の弾性変形に伴って、シェイクオリフィス122に対して液体の流通抵抗が小さいアイドルオリフィス124を優先的に通って主液室42と副液室44との間を液体が行き来する。このとき、アイドルオリフィス124における液体の流通抵抗がアイドル振動の周波数及び振幅に対応するように設定(チューニング)されていることから、アイドルオリフィス124を通って主液室42と副液室44との間を行き来する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、この液柱共振の作用によってアイドル振動を特に効果的に吸収できる。
【0083】
この結果、防振装置10によれば、電磁ソレノイドや空圧ソレノイド等の外部からの制御及び動力供給を受けて作動するバルブ機構を用いることなく、主液室42と副液室44とを連通するオリフィスを、入力振動の周波数に応じて、シェイクオリフィス122及びアイドルオリフィス124の何れか一方に、主液室42内の液圧変化を駆動力として用い切り換えることができる。
【0084】
また防振装置10では、プランジャ部材78とオリフィス部材46との間に圧縮状態となるように配置されたコイルスプリング90が、液圧空間130を縮小する開放位置側へプランジャ部材78を付勢しており、このコイルスプリング90として、圧縮量の増加に従ってばね定数が段階的に大きくなる非線形特性を有する2段ピッチコイルスプリングが用いられている。これにより、コイルスプリングとして圧縮量の増加にばね反力が実質的に比例して増加する線形特性を有するものを用いた場合と比較し、コイルスプリング90がプランジャ部材78に作用させるばね反力の偏差(バラツキ)に対する許容範囲を拡大できるので、コイルスプリング90のばね定数の誤差に対する許容範囲を大きくできると共に、開放位置にあるプランジャ部材78とオリフィス部材46との間に配置されるコイルスプリング90の予備圧縮量を大きなものとし、予備圧縮量の誤差(絶対値)に対する許容範囲を大きくできる。
【0085】
すなわち、本実施形態に係る防振装置10では、プランジャ部材78を入力振動(シェイク振動又はアイドル振動)の振幅に対応する適正な位置(閉塞位置又は開放位置)へ正常に移動させ、かつ適正な位置に保持するためには、コイルスプリングがプランジャ部材に作用させる荷重(ばね反力)を、プランジャ部材の拡縮方向に沿った位置及び、入力振動の種類、すなわち主液室42内に生じる液圧振幅の大きさに応じて適正値に設定する必要がある。この点を図7に基づいて具体的に説明する。
【0086】
但し、図7における実線L1で示されるコイルスプリング90の特性及び各設定値は、本実施形態に係る防振装置10における設計値の一例にすぎず、防振装置10の仕様等に応じて適宜変更されることは言うまでもない。
【0087】
図7に示されるように、プランジャ部材78が開放位置にあるときのコイルスプリング90の圧縮量である予備圧縮量PCは5mmに設定され、プランジャ部材78が閉塞位置にあるときのコイルスプリング90の圧縮量である限界圧縮量LCは8mmに設定されている。またコイルスプリング90のばね定数の変異点PVとなる圧縮量は6.5mmに設定されている。
【0088】
先ず、開放位置にあるプランジャ部材78に作用する外力について説明する。開放位置にあるプランジャ部材78には、予備圧縮状態にあるコイルスプリング90のばね反力が開放位置側への付勢力として作用する。このばね反力は、コイルスプリング90の圧縮量(5mm)及びばね定数CLにより決まり、本実施形態では2.5Nになっている。
【0089】
また開放位置にあるプランジャ部材78には、液圧空間130内の液圧に対応する液体加圧力が閉塞位置側への付勢力として作用する。この液体加圧力は、液圧空間130の液圧及び、プランジャ部材78における液圧空間130へ面した部分の投影面積である受圧面積との積により演算される。液圧空間130の液圧は、前述したように防振装置10の入力振動の振幅に応じて変化し、振幅が小さいアイドル振動が入力している時の液圧は相対的に小さく、振幅が大きいシェイク振動が入力している時の液圧は相対的に大きいものになる。ここで、アイドル振動の入力時にプランジャ部材78に作用する液体加圧力をFLI、シェイク振動の入力時にプランジャ部材78に作用する液体加圧力をFLSとする。
【0090】
またプランジャ部材78が開放位置にある場合には、主液室42と副液室44とが液体の流通抵抗が小さいアイドルオリフィス124により連通していることから、プランジャ部材78が閉塞位置にある場合と比較し、アイドル振動及びシェイク振動の入力時における主液室42内の液圧振幅がそれぞれ小さくなり、これに伴って液圧空間130内の液圧も低いものになる。
【0091】
コイルスプリング90が開放位置にあるプランジャ部材78に作用させるばね反力は、アイドル振動入力時の液体加圧力によりプランジャ部材78が閉塞位置側へ移動することを防止するため、液体加圧力FLIよりも大きくする必要があり、かつ入力振動からアイドル振動からシェイク振動に変化した時にプランジャ部材78をばね反力により開放位置から閉塞位置側へ移動開始させるため、液体加圧力FLSよりも小さくする必要がある。
【0092】
次に、閉塞位置にあるプランジャ部材78に作用する外力について説明する。開放位置にあるプランジャ部材78には、圧縮量が限界圧縮量となったコイルスプリング90のばね反力が開放位置側への付勢力として作用する。このばね反力は、コイルスプリング90の圧縮量(8mm)及びばね定数CHにより決まり、本実施形態では12.5Nになっている。
【0093】
また閉塞位置にあるプランジャ部材78には、液圧空間130内の液圧に対応する液体加圧力が閉塞位置側への付勢力として作用する。この液体加圧力は、プランジャ部材78が開放位置にある場合と同様に、液圧空間130の液圧及び、プランジャ部材78における受圧面積との積により演算される。液圧空間130の液圧は、振幅が小さいアイドル振動が入力している時の液圧は相対的に小さく、振幅が大きいシェイク振動が入力している時の液圧は相対的に大きいものになる。ここで、アイドル振動の入力時にプランジャ部材78に作用する液体加圧力をFHI、シェイク振動の入力時にプランジャ部材78に作用する液体加圧力をFHSとする。
【0094】
またプランジャ部材78が閉塞位置にある場合には、主液室42と副液室44とが液体の流通抵抗が大きいシェイクオリフィス122のみにより連通していることから、プランジャ部材78が開放位置にある場合と比較し、アイドル振動及びシェイク振動の入力時における主液室42内の液圧振幅がそれぞれ高くなり、これに伴って液圧空間内の液圧も高いものになる。
【0095】
コイルスプリング90が閉塞位置にあるプランジャ部材78に作用させるばね反力は、入力振動からシェイク振動からアイドル振動に変化した時にプランジャ部材78を閉塞位置から開放位置側へ移動開始させるため、液体加圧力FHIよりも大きくする必要があり、かつシェイク振動入力時に液体加圧力によりプランジャ部材78が開放位置側へ移動することを防止するため、液体加圧力HSよりも小さくする必要がある。
【0096】
また防振装置10では、主液室42と副液室44とを連通するシェイクオリフィス122及びアイドルオリフィス124を一方から他方へ切り換える際の応答時間を短くするために、開放位置と閉塞位置との間の距離が3mmと非常に短いものになっている。このため、例えば、コイルスプリングとして線形特性を有するものを用いた場合、上記のような条件を充足するようにばね反力を得るためには、コイルスプリングに要求されるばね特性が、図7の2点鎖線L2で示されるような傾き(ばね定数)を有するものとなる。
【0097】
2点鎖線L2で示されるように、線形特性のコイルスプリングを用いた場合には、プランジャ部材78が開放位置にあるときの予備圧縮量が1mm程度になり、非線形特性を有するコイルスプリング90を用いた場合と比較し、予備圧縮量が非常に小さいものとなる。またプランジャ部材78が閉塞位置にあるときのばね反力が10N程度になり、非線形特性を有するコイルスプリング90を用いた場合と比較し、液体加圧力FHIとの差が小さいものとなる。
【0098】
それに対し、防振装置10では、変異点PV未満の圧縮量におけるコイルスプリング90のばね定数CLを、線形特性を有するコイルスプリングのばね定数よりも小さくできるので、プランジャ部材78が開放位置にある場合のコイルスプリング90の予備圧縮量を大きくできる。また防振装置10では、変異点PV以上の圧縮量におけるコイルスプリング90のばね定数CHを、線形特性を有するコイルスプリングのばね定数よりも大きくできるので、プランジャ部材78が閉塞位置にある場合のコイルスプリング90のばね反力SHと液体加圧力FHIとの差を大きくできる。
【0099】
なお、本実施形態に係る防振装置10では、コイルスプリング90としてばね定数が段階的に増加する2段ピッチコイルスプリングを用いたが、コイルスプリング90としては、圧縮量の増加に従ってばね定数が増加する非線形特性を有するものであるならば、2段ピッチピッチコイルスプリング以外の各種のものも用いることができ、例えば、ピッチが3段階以上に亘って段階的又は連続的に変化する不等ピッチコイルスプリング、素線の巻径が一定ではないテーパスプリングや樽型スプリング、素線径が一定ではない不等線径スプリング等も用いることができる。
【0100】
また本実施形態に係る防振装置10では、主液室42内の液圧上昇時に逆止弁128を通して液体を主液室42から液圧空間130内へ供給し、この液圧空間130内の液圧を主液室42の液圧上限値に対応する平衡圧に上昇させ、シェイク振動の入力時に、液圧空間130の液圧(正圧)によりプランジャ部材78を開放位置から閉塞位置へ移動させていたが、これとは逆に、逆止弁を液圧空間130から主液室42へのみ液体が流出させ得るように構成し、主液室42内の液圧低下時に、この逆止弁を通して液体を液圧空間130から主液室42内へ流出させることにより、液圧空間130内の液圧を主液室42の液圧下限値に対応する平衡圧まで低下させ、シェイク振動の入力時に、液圧空間130の液圧(負圧)によりプランジャ部材78を開放位置から閉塞位置へ移動させるようにして良い。この場合には、コイルスプリングは、プランジャ部材78とホルダ部材100との間に圧縮状態で配置されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係る防振装置の構成を示す軸方向に沿った断面図であり、プランジャ部材が開放位置にある状態を示している。
【図2】図1に示される防振装置の構成を示す軸方向に沿った断面図であり、プランジャ本体が閉塞位置にある状態を示している。
【図3】図1に示される防振装置における仕切金具及びプランジャ部材の構成を示す断面図であり、プランジャ部材が開放位置にある状態を示している。
【図4】図1に示される防振装置における仕切金具及びプランジャ部材の構成を示す断面図であり、プランジャ部材が閉塞位置にある状態を示している。
【図5】(A)は図1に示される防振装置における仕切金具及びプランジャ部材の構成を示す分解斜視図、(B)はプランジャ部材と仕切金具におけるオリフィス部材との間に配置されるコイルスプリングを示す斜視図である。
【図6】図1に示される防振装置におけるオリフィス部材の構成を示す斜視図である。
【図7】図1に示される防振装置におけるコイルスプリングの軸方向に沿った圧縮量とばね反力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0102】
10 防振装置
12 外筒金具(第1の取付部材)
20 取付金具(第2の取付部材)
24 ゴム弾性体(弾性体)
36 仕切金具
42 主液室
44 副液室
74 オリフィス開口
78 プランジャ部材
90 コイルスプリング
122 シェイクオリフィス(第1の制限通路)
124 アイドルオリフィス(第2の制限通路)
126 液圧解放路
128 逆止弁
130 液圧空間
132 オリフィス空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部及び振動受け部の一方に連結される第1の取付部材と、
振動発生部及び振動受け部の他方に連結される第2の取付部材と、
前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置された弾性体と、
前記弾性体を隔壁の一部として液体が封入され、該弾性体の弾性変形に伴って内容積が変化する主液室と、
液体が封入され内容積が拡縮可能とされた副液室と、
前記主液室と前記副液室とを連通する第1の制限通路と、
前記主液室と前記副液室とを連通し、前記第1の制限通路よりも液体の流通抵抗が小さい第2の制限通路と、
前記主液室と前記副液室との間に設けられ、液体が充填されたシリンダ室と、
前記シリンダ室内を、前記第2の制限通路の一部を構成すると共に前記副液室に連通したオリフィス空間及び前記第2の制限通路から隔離された液圧空間に区画すると共に、前記オリフィス空間及び前記液圧空間の拡縮方向に沿って所定の開放位置と閉塞位置との間で移動可能とされたプランジャ部材と、
前記オリフィス空間内に面するように設けられると共に、前記第2の制限通路における前記オリフィス空間と他の部分とを連通させ、前記プランジャ部材が前記閉塞位置に移動すると、該プランジャ部材により閉塞され、前記プランジャ部材が前記開放位置に移動すると、該プランジャ部材により開放されるオリフィス開口と、
前記プランジャ部材と前記シリンダ室の内壁面との間に圧縮状態となるように配置され、前記液圧空間を縮小する前記開放位置側へ前記プランジャ部材を付勢するコイルスプリングと、
前記主液室と前記液圧空間との間に配置され、前記主液室内の液圧変化に伴って該主液室と前記液圧空間との間で一方向へのみ液体を流出させ得る逆止弁と、
前記プランジャ部材が、前記コイルスプリングの付勢力により前記開放位置へ復帰する際に、前記液圧空間内の液体を前記オリフィス空間又は前記副液室内へ流出させる液圧解放路と、を有し、
前記コイルスプリングとして、圧縮量の増加に従ってばね定数が段階的又は連続的に大きくなる非線形特性を有するものを用いたことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記コイルスプリングとして、不等ピッチコイルスプリングを用いたことを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記コイルスプリングは、前記開放位置にある前記プランジャ部材と前記シリンダ室の内壁面との間に軸方向に沿って所定量圧縮された予圧縮状態で配置され、前記プランジャ部材が前記閉鎖位置へ移動するに従って圧縮量を増加させることを特徴とする請求項1又は2記載の防振装置。
【請求項4】
前記コイルスプリングは、前記プランジャ部材が前記開放位置と前記閉塞位置との間における所定の中間位置に対して前記開放位置側に位置する小圧縮状態では、ばね定数が相対的に小さくなり、中間位置に対して前記閉塞位置側に位置する大圧縮状態では、ばね定数が相対的に大きくなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の防振装置。
【請求項5】
前記コイルスプリングの前記小圧縮状態におけるばね定数を、前記プランジャ部材が前記開放位置にあり、かつ入力振動としてアイドル振動が入力している時に前記主液室内に生じる液圧振幅及び、前記プランジャ部材が前記開放位置にあり、かつ入力振動としてシェイク振動が入力している時に前記主液室内に生じる液圧振幅に対応して設定し、
前記コイルスプリングの前記大圧縮状態におけるばね定数を、前記プランジャ部材が前記閉鎖位置にあり、かつ入力振動としてアイドル振動が入力している時に前記主液室内に生じる液圧振幅及び、前記プランジャ部材が前記閉鎖位置にあり、かつ入力振動としてシェイク振動が入力している時に前記主液室内に生じる液圧振幅に対応して設定したことを特徴とする請求項4記載の防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−247660(P2007−247660A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67652(P2006−67652)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】