説明

防振連結ロッド

【課題】射出成形後の仕上げ加工が容易な防振連結ロッドを提供する。
【解決手段】長手方向Lの両端部の第1筒状部12及び第2筒状部14と、両者を連結する本体連結部22とからなり、樹脂材料により一体に成形されたロッド本体16と、第1筒状部内に設けられた第1防振ブッシュ18と、第2筒状部内に設けられた第2防振ブッシュ20と、を備えた防振連結ロッド10において、本体連結部22に、ロッド本体16を形成する樹脂材料を注入するためのゲート56が接続される台座部58が、本体連結部の表面22Aから隆起した凸状に設けられ、ゲート56によって台座部58上に突出した状態に成形されたゲート跡突起62が、台座部58上から切除されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンを車体に対して防振しながら連結するトルクロッド等として用いることのできる防振連結ロッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体と振動発生源であるエンジンとの間には、エンジンのロール方向の動きや振動を抑制するためにトルクロッドと称される防振連結ロッドが設けられている。かかる防振連結ロッドは、一般に、長手方向の両端部に筒状部を持つロッド本体と、内筒とゴム状弾性部を備えてロッド本体の各筒状部内に設けられた一対の防振ブッシュとを備えてなり、前記内筒を取付部材としてエンジンや車体に取り付けられる。
【0003】
近年、自動車の軽量化の要請が強く、その軽量化を図る手段として、上記ロッド本体を樹脂材料で形成することが提案されている(下記特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開平7−35127号公報
【特許文献2】特開平7−197927号公報
【特許文献3】特開2005−265123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような樹脂製の防振連結ロッドは、両端部の筒状部とこれらを連結する本体連結部とからなるロッド本体を、樹脂材料の射出成形により一体に成形される。その際、ロッド本体を成形するためのキャビティを備える成形型は、注入孔としてのゲートを備え、該ゲートからキャビティ内に樹脂材料を注入することで、ロッド本体が成形される。そのため、成形後のロッド本体には、上記ゲートによってロッド本体の表面から突出した状態にゲート跡突起が成形される。かかるゲート跡突起は、射出成形後にロッド本体から切除されるが、ロッド本体の製品表面にそのままゲートを接続した構成では、ゲート跡突起を切除する際に、その周りの製品表面を傷つけやすく、防振連結ロッドの仕上げ加工がしづらいという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、射出成形後の仕上げ加工が容易な防振連結ロッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防振連結ロッドは、長手方向の一端部に設けられた第1筒状部と、長手方向の他端部に設けられた第2筒状部と、前記第1筒状部と第2筒状部を連結する本体連結部とからなり、樹脂材料により一体に成形されたロッド本体と、第1内筒と第1ゴム状弾性部を備えて前記第1筒状部内に設けられた第1防振ブッシュと、第2内筒と第2ゴム状弾性部を備えて前記第2筒状部内に設けられた第2防振ブッシュと、を備えてなる防振連結ロッドにおいて、前記本体連結部に、前記ロッド本体を形成する樹脂材料を注入するためのゲートが接続される台座部が、前記本体連結部の表面から隆起した凸状に設けられ、前記ゲートによって前記台座部上に突出した状態に成形されたゲート跡突起が、前記台座部上から切除されたことを特徴とする。
【0007】
このようにロッド本体を成形するためのゲートを本体連結部の表面から凸状に隆起した台座部上に設定し、該台座部上に突設されたゲート跡突起を切除するようにしたので、ロッド本体の成形後にゲート跡突起を切除しやすく、製品表面が傷つくのを抑制することができ、また傷つけによる耐久性等の品質不良も回避することができる。
【0008】
上記防振連結ロッドにおいては、前記第1筒状部が前記第2筒状部よりも大径であり、前記本体連結部には、前記本体連結部の長手方向に延びるリブが当該本体連結部の表面から隆起して設けられ、前記リブの頂部は、前記第2筒状部側から前記第1筒状部側に向けて漸次高くなるように傾斜して前記第1筒状部の軸方向端面に連なっており、前記リブの長手方向における前記第1筒状部の近傍位置に前記台座部が設けられ、前記台座部の高さが前記第1筒状部の前記軸方向端面に対して同等以下に設定されるとともに、前記台座部と前記軸方向端面との間に位置する前記リブの頂部が当該リブの側面視で凹状に形成されてもよい。
【0009】
このように台座部を本体連結部の長手方向に延びるリブ上に設けることで補強効果を高めることができるとともに、ゲートから流入する樹脂材料の流れ性を良好にすることができる。また、台座部の高さを第1筒状部の軸方向端面に対して同等以下に設定することで、台座部が製品表面から大きく突出することを防止することができ、しかも、該台座部と第1筒状部の軸方向端面との間のリブ部分に凹部を設けたことで、ゲート跡突起の切除時に上記リブ部分を含む台座部の第1筒状部側の製品表面を傷つけにくく、仕上げ加工性を向上することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、射出成形後の仕上げ加工が容易な防振連結ロッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜4は、実施形態に係る防振連結ロッドであるトルクロッド10を示したものである。トルクロッド10は、自動車の車体と振動発生源であるエンジンとの間に組付けられて、エンジンのロール方向の動きや振動を抑制するものである。
【0013】
トルクロッド10は、大径の第1筒状部12と小径の第2筒状部14とを長手方向Lの両端部に各別に備えたロッド本体16と、第1筒状部12内に設けられた第1防振ブッシュ18と、第2筒状部14内に設けられた第2防振ブッシュ20とからなる。
【0014】
ロッド本体16は、上記第1筒状部12と、第2筒状部14と、両筒状部12,14を連結する長手方向Lに延びる本体連結部22とからなり、これらがポリアミドなどの樹脂材料により一体に成形されている。第1筒状部12と第2筒状部14は、両者の軸O1及びO2が互いに平行で、かつ、ロッド本体16の長手方向Lに垂直に設けられた円筒状部であり、第1筒状部12の方が大径に形成されている。
【0015】
本体連結部22は、上記長手方向Lと第1及び第2筒状部12,14の軸方向Xとに垂直な方向を幅方向Mとして、一端部において第1筒状部12の外形と同じ幅寸法を有し、かつ、他端部において第2筒状部14の外形と同じ幅寸法を有する幅広状に形成されている。そして、該幅方向Mの両端部及び中央部のそれぞれに長手方向Lに延びるリブ24,26を有しており、それらリブ24,26の間に薄肉部28を有する。図5に示すように、薄肉部28は、軸方向Xの一方側に偏らせて設けられている。これにより、車両搭載時(図5における上方が下方に向くように車両に搭載される。)、断面凹状の本体連結部22が下向きに開口するようにして、該凹状部に水が溜まらないように構成している。
【0016】
第1防振ブッシュ18は、第1筒状部12内に軸平行かつ同軸状に配された第1内筒30と、該第1内筒30と第1筒状部12の間に介設されたゴム弾性体からなる第1ゴム状弾性部32とよりなる。第1内筒30は、車体とエンジンのいずれか一方、例えば車体側に連結される剛性部材である。
【0017】
第1ゴム状弾性部32は、この例では、第1内筒30の外周面と第1筒状部12の内周面とに接着固定されており、また、長手方向Lにおける第1内筒30を挟んだ両側には軸方向Xに貫通する一対のすぐり部34,34が設けられ、更に、各すぐり部34にはストッパゴム部36が設けられている。
【0018】
第2防振ブッシュ20は、第2筒状部14内に軸平行かつ同軸状に配された第2内筒38と、該第2内筒38と第2筒状部14の間に介設されたゴム弾性体からなる第2ゴム状弾性部40とよりなる。第2内筒38は、車体のエンジンのいずれか他方、例えばエンジン側に連結される剛性部材である。
【0019】
第2ゴム状弾性部40は、この例では、第2内筒38の外周面と第2筒状部14の内周面とに接着固定されており、両者の間を全周にわたって連結する筒状に形成されている。すなわち、軸方向Xに貫通するすぐり部を持たないゴム部である。
【0020】
ロッド本体16において、大径側の第1筒状部12における本体連結部22とは反対側の周方向部分12Aには、第1筒状部12の軸方向Xに陥没した複数(ここでは4つ)の穴部42が周方向Cに並んで設けられている。このように複数の穴部42を設けたことにより、第1筒状部12の上記周方向部分12Aは、複数の穴部42の内周側で平面視円弧状をなす内側壁部44と、複数の穴部42の外周側で平面視円弧状をなす外側壁部46と、隣接する穴部42,42同士の間で内側壁部44と外側壁部46を連結支持する複数の支持壁部48とで構成されている。これにより、樹脂材料の成形時の収縮によるボイドの発生を抑制しつつ、優れた強度及び耐久性を確保することができる。
【0021】
これら複数の穴部42は、図2に示すように、第1筒状部12における本体連結部22から最も離れたセンターラインN上の周方向位置に、3つの支持壁部のうち周方向Cの中央の支持壁部48Aが配設されるように設定されている。また、図6に示すように、これらの穴部42は、第1筒状部12の上記周方向部分12Aにおいて、軸方向Xの一方面12A1と他方面12A2の双方から凹設されて、内側壁部44と外側壁部46とが軸方向Xの中央部で壁連結部50により連結されている。これらによって、第1筒状部12の強度を更に高くすることができる。
【0022】
なお、図1,4,7に示すように、ロッド本体16の外周側面には、長手方向Lに沿って延びる2本の外周リブ52,52が軸方向Xに間隔をおいて設けられている。また、図3,7に示すように、小径側の第2筒状部14の外周面には、上記2本の外周リブ52,52を連結する軸方向Xに延びる縦リブ54が設けられ、強度アップが図られている。
【0023】
以上よりなる構成において、ロッド本体16には、図1,2,4に示すように、本体連結部22に、ロッド本体16を形成する樹脂材料を注入するためのゲート56が接続される台座部58が、本体連結部22の上面22Aから隆起した凸状に設けられている。
【0024】
詳細には、本体連結部22において上方に偏らせて設けられた薄肉部28には、その上面にも上記3本のリブ24,24,26が隆起して設けられており、その中央のリブ26に上記台座部58が設けられている。
【0025】
該中央のリブ26は、その頂部26Aが、第2筒状部14側から第1筒状部12側に向けて漸次高くなるように緩やかに傾斜して第1筒状部12の軸方向端面12Bに連なっている(図4参照)。台座部58は、この中央のリブ26の長手方向Lにおける第1筒状部12の近傍位置に設けられている。すなわち、台座部58は、リブ26の長手方向Lの中央よりも第1筒状部12側に偏らせて設けられている。これにより、ゲート56から注入された樹脂材料がその長手方向Lの両側にバランスよく流れるように設定されている。
【0026】
図8に示すように、本体連結部22の上面22Aに対する台座部58の高さH1は、第1筒状部12の軸方向端面12Bの高さH2に対して同等以下に設定されており、かつ、リブ26の頂部26Aから隆起するように台座部58を設けた位置におけるリブ26の高さよりも高く設定されている。また、台座部58と第1筒状部12との間に位置するリブ26の頂部26Aは、図4に示す側面視で下方に陥没した凹状に形成され、これにより、台座部58と第1筒状部12の軸方向端面12Bとの間には、当該軸方向端面12Bに対して落ち込んだ凹部60が設けられている(図8参照)。
【0027】
本実施形態のトルクロッド10は、次のようにして製造される。すなわち、まず、第1内筒30の外周面に第1ゴム状弾性部32を加硫成形するとともに、第2内筒38の外周面に第2ゴム状弾性部40を加硫成形する。次いで、上記第1ゴム状弾性部32と第2ゴム状弾性部40の各外周面に接着剤を塗布した後、これらの加硫成形体を、成形型内にセットして、樹脂材料をゲート56(図1参照)から成形型のキャビティ内に注入することにより、ロッド本体16を一体に射出成形する。
【0028】
ここにおいて、ロッド本体16を成形するための成形型においては、ゲート56は、図1に示すように、台座部58の上面に対して垂直に連結されている。そのため、射出成形後のロッド本体16には、上記ゲート56によって台座部58上に垂直に突出した状態に円柱状のゲート跡突起62が成形される(図4参照)。このゲート跡突起62は、糸鋸(例えばバンドソー)などの切断手段を用いて、台座部58上から切除される。その際、ゲート跡突起62は、図1に示すように、台座部58の上面から完全に切除してもよいが、図4,8に示すように、わずかな切除跡62Aが残るように切断してもよい。
【0029】
以上よりなる本実施形態であると、本体連結部22の上面22Aから隆起した台座部58上にゲート56を設定し、射出成形後に該台座部58上に突設されたゲート跡突起62を切除するようにしている。すなわち、ゲート跡突起62が凸状に隆起した台座部58上に設けられているので、ゲート跡突起62を切除しやすく、製品表面が傷つくのを抑制することができ、また傷つけによる耐久性等の品質不良も回避することができる。
【0030】
特に、台座部58を本体連結部22の長手方向Lに延びるリブ26上に設けたことで補強効果を高めつつ、しかもゲート56から流入する樹脂材料の流れ性を良好にすることができる。また、台座部58の高さを低く抑えつつ、しかも、台座部58と第1筒状部12の軸方向端面12Bとの間のリブ26に凹部60を設けたことで、ゲート跡突起62の切除時に台座部58よりも第1筒状部12側の製品表面を傷つけにくく、仕上げ加工性を向上することができる。
【0031】
なお、上記の実施形態では、第1防振ブッシュ18と第2防振ブッシュ20をともに、ロッド本体16の射出成形時に、当該ロッド本体16と一体に接着させる構成としたが、ロッド本体16の射出成形後に、上記第1防振ブッシュ18と第2防振ブッシュ20を圧入して保持させてもよい。更には、第1防振ブッシュ18と第2防振ブッシュ20ともに、剛体からなる外筒のない構成としたが、ゴム状弾性部の外周に予め外筒を加硫成形しておいて、該外筒を第1筒状部12や第2筒状部14に圧入保持させるように構成してもよい。また、トルクロッド以外にも、スタビリンクロッド、サスペンションロッドなど、種々の防振連結ロッドとして適用可能である。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る防振連結ロッドの斜視図
【図2】同防振連結ロッドの平面図
【図3】同防振連結ロッドの底面図
【図4】同防振連結ロッドの側面図
【図5】図3のV−V線断面図
【図6】図3のVI−VI線断面図
【図7】図3のVII方向から見た側面図
【図8】図2のVIII−VIII線断面図
【符号の説明】
【0033】
10…トルクロッド(防振連結ロッド)
12…第1筒状部、12B…軸方向端面
14…第2筒状部
16…ロッド本体
18…第1防振ブッシュ
20…第2防振ブッシュ
22…本体連結部、22A…上面(表面)
26…リブ、26A…頂部
30…第1内筒、32…第1ゴム状弾性部
38…第2内筒、40…第2ゴム状弾性部
56…ゲート
58…台座部
60…凹部
62…ゲート跡突起
L…長手方向
H1…台座部の高さ
H2…第1筒状部の軸方向端面の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端部に設けられた第1筒状部と、長手方向の他端部に設けられた第2筒状部と、前記第1筒状部と第2筒状部を連結する本体連結部とからなり、樹脂材料により一体に成形されたロッド本体と、
第1内筒と第1ゴム状弾性部を備えて前記第1筒状部内に設けられた第1防振ブッシュと、
第2内筒と第2ゴム状弾性部を備えて前記第2筒状部内に設けられた第2防振ブッシュと、
を備えてなる防振連結ロッドにおいて、
前記本体連結部に、前記ロッド本体を形成する樹脂材料を注入するためのゲートが接続される台座部が、前記本体連結部の表面から隆起した凸状に設けられ、前記ゲートによって前記台座部上に突出した状態に成形されたゲート跡突起が、前記台座部上から切除されたことを特徴とする防振連結ロッド。
【請求項2】
前記第1筒状部が前記第2筒状部よりも大径であり、前記本体連結部には、前記本体連結部の長手方向に延びるリブが当該本体連結部の表面から隆起して設けられ、前記リブの頂部は、前記第2筒状部側から前記第1筒状部側に向けて漸次高くなるように傾斜して前記第1筒状部の軸方向端面に連なっており、前記リブの長手方向における前記第1筒状部の近傍位置に前記台座部が設けられ、前記台座部の高さが前記第1筒状部の前記軸方向端面に対して同等以下に設定されるとともに、前記台座部と前記軸方向端面との間に位置する前記リブの頂部が当該リブの側面視で凹状に形成された、請求項1記載の防振連結ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−115108(P2009−115108A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285208(P2007−285208)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】