説明

防振連結ロッド

【課題】内部に水が溜まりにくく劣化しにくい防振連結ロッドを提供する。
【解決手段】第1筒部12と第2筒部14とを備えたロッド本体16と、第1内筒22と第1内筒22の外周部を覆う第1ゴム状弾性部とを備えて第1筒部12内に設けられた第1防振ブッシュ18と、第2筒部14内に設けられた第2防振ブッシュ20とを備え、ロッド本体16が、第1金属板34と、第1金属板34に重ね合わせられた第2金属板36とをかしめ固定してなる防振連結ロッド10において、第1ゴム状弾性部は、第1内筒22の外周面から径方向外方に突出する凸部を備え、ロッド本体16は、第1筒部12の内周面が径方向外方に陥没し凸部が嵌り込む収容部38と、第1金属板34と第2金属板36との間に収容部38と連通しロッド本体16の周縁に開口する連通路70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンを車体に対して防振しながら連結するトルクロッド等として用いることのできる防振連結ロッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体と振動発生源であるエンジンとの間には、エンジンのロール方向の動きや振動を抑制するためにトルクロッドと称される防振連結ロッドが設けられている。
【0003】
かかる防振連結ロッドとして、例えば、長手方向の一端部に設けられた第1筒部と、長手方向の他端部に設けられた第2筒部と、第1筒部と第2筒部とを連結するロッド本体と、第1内筒と第1ゴム状弾性部とを備えて第1筒部内に設けられた第1防振ブッシュと、第2内筒と第2ゴム状弾性部とを備えて第2筒部内に設けられた第2防振ブッシュとを備えたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
上記の防振連結ロッドでは、バネ特性の調整等を目的として、第1筒部と第1防振ブッシュとの間あるいは第2筒部と第2防振ブッシュとの間の少なくとも一方に隙間を設ける場合がある。このような隙間を設けた防振連結ロッドの場合、第1筒部あるいは第2筒部の軸方向を水平方向に配置した状態で第1内筒及び第2内筒を取付部材としてエンジンや車体に取り付けると、上記の隙間に水が溜まりやすく、ロッド本体に錆が生じる等といった防振連結ロッドの劣化が起こりやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−192240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を考慮してなされたものであり、第1筒部あるいは第2筒部の軸方向を水平方向に配置して取り付ける場合であっても、第1筒部と第1防振ブッシュとの間や第2筒部と第2防振ブッシュとの間に水が溜まりにくく、防振連結ロッドの劣化を抑えることができる防振連結ロッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る防振連結ロッドは、長手方向の一端部に設けられた第1筒部と、長手方向の他端部に設けられた第2筒部と、前記第1筒部と前記第2筒部とを連結するロッド本体と、第1内筒と前記第1内筒の外周部を覆う第1ゴム状弾性部とを備えて前記第1筒部内に設けられた第1防振ブッシュと、第2内筒と第2ゴム状弾性部とを備えて前記第2筒部内に設けられた第2防振ブッシュとを備え、前記ロッド本体が、第1金属板と、前記第1金属板に重ね合わせられた第2金属板とをかしめ固定してなる防振連結ロッドにおいて、前記第1ゴム状弾性部は、前記第1内筒の外周面から径方向外方に突出する凸部を備え、前記ロッド本体は、前記第1筒部の内周面に径方向外方へ陥没し前記凸部が嵌り込む収容部と、前記第1金属板と前記第2金属板との間に前記収容部と連通し前記ロッド本体の周縁に開口する連通路とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る防振連結ロッドでは、ロッド本体が、第1筒部の内周面に径方向外方へ陥没し凸部が嵌り込む収容部と、第1金属板と第2金属板との間に収容部と連通しロッド本体の周縁に開口する連通路とを備えるため、第1筒部の軸方向を水平方向に配置しても収容部に浸入した水が連通路よりロッド本体の外部へ排出され、防振連結ロッドの劣化を抑えることができる。
【0009】
また、上記の防振連結ロッドにおいて、ロッド本体は、周縁部を除く位置に第1金属板と第2金属板とが間隔をあけて対向する空隙部を備えてもよく、このような場合において、連通路は、空隙部に比べて第1金属板と第2金属板との間隔が大きく設けられてもよい。これにより、ロッド本体を構成する第1金属板と第2金属板とが擦れ合いにくくなり、異音の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、第1筒部あるいは第2筒部の軸方向を水平方向に配置して取り付けられる場合であっても、第1筒部と第1防振ブッシュとの間や第2筒部と第2防振ブッシュとの間に水が溜まりにくく、ロッド本体に錆が生じる等の防振連結ロッドの劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る防振連結ロッドの平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る防振連結ロッドの側面図である。
【図4】図1のA−A断面図であって第1防振ブッシュ及び第2防振ブッシュを取り除いた状態を示す図である。
【図5】図1のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態の防振連結ロッド10は、自動車の車体と振動発生源であるエンジンとの間に組付けられて、エンジンのロール方向の動きや振動を抑制するトルクロッドである。
【0014】
この防振連結ロッド10は、図1に示すように、第1筒部12と第2筒部14とを備えたロッド本体16と、第1内部12に設けられた第1防振ブッシュ18と、第2筒部14内に設けられた第2防振ブッシュ20とからなる。
【0015】
第1防振ブッシュ18は、図2に示すように、第1筒部12内に軸平行に配された第1内筒22と、第1内筒22の外周面を覆い第1内筒22と第1筒部12の間に介設された第1ゴム状弾性部24とから構成される。
【0016】
第1内筒22は、鉄、鋼やアルミニウムなどの金属製の円筒状の部材であり、車体とエンジンのいずれか一方、例えば車体側に連結される。第1ゴム状弾性部24は、第1内筒22の外周面に一体に加硫接着されたもので、第1内筒22の外周面における互いに対向する位置から径方向外方に突出する一対の凸部26を備える。
【0017】
第2防振ブッシュ20は、円筒状に設けられた第2筒部14内に軸平行かつ同軸状に配された第2内筒28と、第2内筒28の外周面を覆い第2内筒28と第2筒部14の間に介設された第2ゴム状弾性部30とから構成される。
【0018】
第2内筒28は、第1内筒22と同様、鉄、鋼やアルミニウムなどの金属製の円筒状の部材であり、車体とエンジンのいずれか一方、例えばエンジン側に連結される。第2ゴム状弾性部30は、第2内筒28の外周面に一体に加硫接着されたもので、第2内筒28の軸方向の中央部に径方向外方へ膨出する環状の膨出部32を備える。
【0019】
ロッド本体16は、長手方向Lの一端部に第1防振ブッシュ18を保持する第1筒部12と、他端部に第2防振ブッシュ20を保持する第2筒部14と、第1筒部12及び第2筒部14を連結する連結部15とを備え、互いに同一形状をなした第1金属板34と第2金属板36とを重ね合わせることで形成されている。
【0020】
詳細には、第1筒部12は、開口部が角を丸めた矩形状をなした筒形状に設けられており、その内周面に外方へ陥没する一対の第1ゴム収容部38が設けられている。この一対の第1ゴム収容部38は、第1防振ブッシュ18の第1ゴム状弾性部24に設けられた凸部26が予圧縮された状態で嵌り込み第1防振ブッシュ18を保持する凹形状をなしており、第1筒部12に設けられた第1防振ブッシュ18の第1内筒22の軸心O1と、第2筒部14に設けられた第2防振ブッシュ20の第2内筒28の軸心O2とを結ぶ直線(以下、中心線という)Cを対称軸とする線対称位置、言い換えれば、中心線C及び第1筒部12の軸方向に対して垂直な方向(以下、防振連結ロッド10の幅方向という)Wに対向配置されている。
【0021】
図3及び図4に示すように第1ゴム収容部38の底部(防振連結ロッド10の幅方向Wに対して垂直な平面部)39には、ロッド本体16の周縁に開口する連通路70が設けられており第1ゴム収容部38とロッド本体16の外部とを連通している。連通路70は、第1金属板34と第2金属板36とが所定の間隔(例えば、2〜4mm)をあけて対向することで形成されている。
【0022】
このような第1筒部12は、中心線Cの延びる方向において第1防振ブッシュ18の第1ゴム状弾性部24と第1筒部12の内周面との間に間隙13を設けつつ、一対の第1ゴム収容部38で第1防振ブッシュ18を保持する。
【0023】
第2筒部14は、円筒状に設けられており、その内周面に外方へ陥没する環状の第2ゴム収容部40が設けられている。第2ゴム収容部40は、第2防振ブッシュ20の第2ゴム状弾性部30に設けられた環状の膨出部32が嵌り込み、第2防振ブッシュ20を保持する。
【0024】
第1筒部12と第2筒部14とを連結する連結部15には、第1金属板34及び第2金属板36を貫通する貫通孔60が複数(本実施形態では2つ)設けられている(図1お、図5参照)。2つの貫通孔60は、中心線Cを対称軸とする線対称位置に、つまり、2つの貫通孔60を結ぶ直線が中心線Cに直交し、かつ、中心線Cまでの距離が等しい位置に設けられている。
【0025】
ロッド本体16を構成する第1金属板34は、図1、図4及び図5に示すように、金属板を所定形状にプレス成形したものであり、その長手方向Lの一端部に角を丸めた矩形状の第1矩形孔部42が、他端部に円形状の第1円孔部46がそれぞれ穿設されるとともに、第1矩形孔部42と第1円孔部46との間に2つの貫通孔60aが穿設されている。
【0026】
第1矩形孔部42の周縁部にはロッド本体16の外方(つまり、第1金属板34に重ね合わせた第2金属板36から離れる方向)へ立ち上がる第1筒部分12aが形成されている。第1筒部分12aには、第1筒部分12aの外方に陥没するとともに第2金属板36との合わせ面へ開口する第1ゴム収容部分38aが設けられている。
【0027】
第1円孔部46の周縁部には、ロッド本体16の外方へ立ち上がる第2筒部分14aが形成されている。第2筒部分14aには、第1円孔部46の周縁部から先端側に行くほど径方向内方に傾斜するテーパ状の第2ゴム収容部分40aが設けられている。
【0028】
また、第2金属板36は、金属板を第1金属板34と同一形状にプレス成形したものであり、具体的には、その長手方向Lの一端部に角を丸めた矩形状の第2矩形孔部44が、他端部に円形状の第2円孔部48がそれぞれ穿設されるとともに、第2矩形孔部44と第2円孔部48との間に2つの貫通孔60bが穿設されている。
【0029】
第2矩形孔部44の周縁部にはロッド本体16の外方(つまり、第2金属板36に重ね合わせた第1金属板34から離れる方向)へ立ち上がる第1筒部分12bが形成されている。第1筒部分12bには、第1筒部分12aの外方に陥没するとともに第1金属板34との合わせ面へ開口する第1ゴム収容部分38bが設けられている。
【0030】
第2円孔部48の周縁部には、ロッド本体16の外方へ立ち上がる第2筒部分14bが形成されている。第2筒部分14bには、第2円孔部48の周縁部から先端側に行くほど径方向内方に傾斜するテーパ状の第2ゴム収容部分40bが設けられている。
【0031】
そして、第1金属板34と、第1金属板34に対して中心線Cを回転対称軸として表裏反転させて配置した第2金属板36とを重ね合わせることで、第1ゴム収容部分38aと第1ゴム収容部分38bを連結してなる第1ゴム収容部38を備えた第1筒部12が第1筒部分12a及び第1筒部分12bから形成されるとともに、第2ゴム収容部分40aと第2ゴム収容部分40bを連結してなる第2ゴム収容部40を備えた第2筒部14が第2筒部分14a及び第2筒部分14bから形成される。このように重ね合わせた2枚の金属板34,36は、第1金属板34に設けられた複数(本実施形態では4つ)の第1かしめ部50と、第2金属板36に設けられた複数(本実施形態では4つ)の第2かしめ部52によってかしめ固定され、ロッド本体16を形成する。
【0032】
以上のように第1金属板34と第2金属板36とを重ね合わせて形成されたロッド本体16には、図1、図3〜図5に示すように、少なくともロッド本体16の周縁部を除く位置において、好ましくは、第1金属板34及び第2金属板36をかしめ固定する第1かしめ部50及び第2かしめ部52を除く位置において第1金属板34と第2金属板36とが所定の間隔(例えば2〜4mm)をあけて対向する空隙部72が形成されている。
【0033】
なお、本実施形態では、空隙部72における第1金属板34と第2金属板36との間隔と、連通路70における第1金属板34と第2金属板36との間隔とを等しい大きさに設けたが、空隙部72に比べて連通路70における第1金属板34と第2金属板36との間隔を大きく設けてもよく、一例を挙げると、空隙部72における間隔が1〜2mmに対して、連通路70における間隔を3〜4mmに設けてもよい。
【0034】
以上のように本実施形態の防振連結ロッド10では、第1筒部12の内周面から径方向外方へ陥没する第1ゴム収容部38の底部39にロッド本体16の外部へ連通する連通路70が設けられているため、軸心O1方向を水平方向に向けて第1内筒22を車体あるいはエンジンに連結し第1筒部12の軸心O1方向を水平方向に配置しても、第1防振ブッシュ18の第1ゴム状弾性部24と第1筒部12の内周面との間に形成された間隙13から第1筒部12の内周面へ浸入した水が、第1筒部12の内部で滞留することなく第1ゴム収容部38の底部39から連通路70を通ってロッド本体16の外部へ排出される。そのため、第1筒部12を構成する2枚の金属板34,36や第1筒部12に設けられた第1防振ブッシュ18の第1ゴム状弾性部24が長期間水に浸漬されることなく防振連結ロッド10の劣化を抑えることができる。
【0035】
また、本実施形態の防振連結ロッド10では、ロッド本体16の周縁部を除く位置に第1金属板34と第2金属板36とが所定の間隔をあけて対向する空隙部72が形成されているため、エンジンからの振動が入力されても第1金属板と第2金属板とが擦れ合いにくくなり、異音の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0036】
10…防振連結ロッド
12…第1筒部
14…第2筒部
15…連結部
16…ロッド本体
18…第1防振ブッシュ
20…第2防振ブッシュ
22…第1内筒
24…第1ゴム状弾性部
26…凸部
28…第2内筒
30…第2ゴム状弾性部
32…膨出部
34…第1金属板
36…第2金属板
38…第1ゴム収容部
40…第2ゴム収容部
50…第1かしめ部
52…第2かしめ部
70…連通路
72…空隙部
C…中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端部に設けられた第1筒部と、長手方向の他端部に設けられた第2筒部と、前記第1筒部と前記第2筒部とを連結するロッド本体と、第1内筒と前記第1内筒の外周部を覆う第1ゴム状弾性部とを備えて前記第1筒部内に設けられた第1防振ブッシュと、第2内筒と第2ゴム状弾性部とを備えて前記第2筒部内に設けられた第2防振ブッシュとを備え、前記ロッド本体が、第1金属板と、前記第1金属板に重ね合わせられた第2金属板とをかしめ固定してなる防振連結ロッドにおいて、
前記第1ゴム状弾性部は、前記第1内筒の外周面から径方向外方に突出する凸部を備え、
前記ロッド本体は、前記第1筒部の内周面が径方向外方に陥没し前記凸部が嵌り込む収容部と、前記第1金属板と前記第2金属板との間に前記収容部と連通し前記ロッド本体の周縁に開口する連通路とを備えることを特徴とする防振連結ロッド。
【請求項2】
前記ロッド本体は、周縁部を除く位置に前記第1金属板と前記第2金属板とが間隔をあけて対向する空隙部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の防振連結ロッド。
【請求項3】
前記連通路は、前記空隙部に比べて前記第1金属板と前記第2金属板との間隔が大きく設けられたことを特徴とする請求項2に記載の防振連結ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−189143(P2012−189143A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53185(P2011−53185)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】