説明

防曇フィルム

【課題】親水性ポリマーを表面グラフトしたフィルムであって、特に耐擦り性や施工性に優れた防曇フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】フィルム上に、エネルギー付与により重合開始能を発現する疎水性ポリマー層を下層とし、重合性基を有する親水性ポリマーを含有し重合開始能を有しない上層とが積層されており、総膜厚が5μmより大きく170μm以下である防曇フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の用途に応用し得る、高い親水性を有する防曇フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の窓ガラス、食品保冷ショーケースの窓ガラス、洗面所あるいは浴室に置かれた鏡のガラスなどに、ガラスの飛散防止と防曇性付与を目的に、防曇フィルムがガラス表面に貼り付けられて使用されている。このような防曇フィルムとしては、透明フィルム表面に親水性の有機高分子や界面活性剤を塗布して構成した防曇フィルムが知られている。
しかし、食品保冷ショーケースが梅雨時の室内のように高温高湿な環境に置かれて開閉される場合や、鏡が多大に水蒸気が発生する浴室や給湯洗面台上に置かれた場合、これら防曇フィルムでは、防曇効果の持続時間が十分でなく、短時間のうちに防曇効果が消失してしまう問題があった。この問題を解決するためにガラスを加熱したり防曇フィルム表面に風を吹きつけたりする操作が行われているが、電気エネルギーの使用、ちりやほこりの付着など二次的弊害発生の問題があった。
さらに、親水性の有機高分子や界面活性剤を塗布して構成した防曇フィルムは、塗布膜の耐水性が十分でないため、結露した水等によりフィルム表面から塗膜成分が流出しやすく、かかる観点からも防曇効果の持続性に問題があった。そしてさらに、乾いたタオルなどで拭くと表面が傷つきやすく耐擦傷性が十分でないという問題があった。
これまで表面を親水化する方法として、親水ポリマーを表面グラフトする方法が知られている。具体的な方法として、エネルギー付与により重合開始能を発現する基を側鎖に持たない疎水性ポリマーを塗布した後、重合性基を有するが重合開始能を有しない親水性ポリマーを積層してなることを特徴とする親水性部材前駆体について開示されている(特許文献1)が、総膜厚について記載がされていない。実施例中では総膜厚が188μm以上となり、基材に貼りつけて使用する際には施工上問題がある。一方、エネルギー付与により重合開始能を発現する基を側鎖に持つ疎水性ポリマーを塗布した後、重合性基を有するが重合開始能を有しない親水性ポリマーを積層してなることを特徴とする親水性部材前駆体について開示されている(特許文献2)。しかし、この方法では耐擦り性が十分でないという問題があった。
【特許文献1】特許第3798667号明細書
【特許文献2】特開平11−129404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は親水性ポリマーを表面グラフトしたフィルムであって、特に耐擦り性や施工性に優れた防曇フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1. フィルム上に、エネルギー付与により重合開始能を発現する疎水性ポリマー層を下層とし、重合性基を有する親水性ポリマーを含有し重合開始能を有しない上層とが積層されており、総膜厚が5μmより大きく170μm以下である防曇フィルム。
2. 前記疎水性ポリマー層の厚みが0.010μm〜50μmであり、上層の厚みが0.010μm〜100μmである上記1に記載の防曇フィルム。
3. 前記フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムである上記1または2に記載の防曇フィルム。
4. 下層にエネルギー付与により重合開始能を発現する2個以上の不飽和二重結合を有する単量体を重合させたポリマー層を含む上記1〜3のいずれかに記載の防曇フィルム。
5. エネルギー付与により重合開始能を発現する2個以上の不飽和二重結合を有する単量体が2個以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する単量体である上記4に記載の防曇フィルム。
6. エネルギーを付与する方法がUV照射又はEB照射による上記5に記載の防曇フィルム。
7. 上層に使用するポリマーは主鎖が炭化水素基のみからなるポリマーである上記6に記載の防曇フィルム。
8. 上記1〜7のいずれかに記載の防曇フィルムを貼りつけた窓ガラス。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、耐擦り性、耐曲げ性、密着性に優れた防曇フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の防曇フィルムは、フィルム上に、エネルギー付与により重合開始能を発現する疎水性ポリマー層を下層とし、重合性基を有する親水性ポリマーを含有し重合開始能を有しない上層とが積層されており、総膜厚が5μmより大きく170μm以下である。
【0007】
〔エネルギー付与により重合開始能を発現する疎水性ポリマー層〕
まず、エネルギー付与により重合開始能を発現する疎水性ポリマー層(以下、適宜、重合性下層と称する)について説明する。この層には、重合開始剤と重合性化合物とを含有することが好ましい。重合性下層は、必要な成分を、それらを溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基材(支持体)上に設け、加熱または光照射により硬膜することにより形成することができる。
【0008】
(重合性化合物)
重合性下層に用いられる重合性化合物は、基板との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により上層に含まれる重合性基を有する親水性ポリマーが付加し得るものであれば特に制限はないが、なかでも、分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーが好ましい。このような疎水性ポリマーとしては、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリぺンタジエンなどのジエン系単独重合体、アリル(メタ)アクリレー卜、2−アリルオキシエチルメタクリレー卜などのアリル基含有モノマーの単独重合体;さらには、前記のポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンタジエンなどのジエン系単量体またはアリル基含有モノマーを構成単位として含む、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどとの二元または多元共重合体;不飽和ポリエステル、不飽和ポリエポキシド、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリル、高密度ポリエチレンなどの分子中に炭素−炭素二重結合を有する線状高分子または3次元高分子類;などが挙げられる。
さらに、エネルギー付与により重合開始能を発現する2個以上の不飽和二重結合を有する単量体を重合させたポリマーであっても良い。
エネルギー付与により重合開始能を発現する2個以上の不飽和二重結合を有する単量体としては、エネルギー付与により硬化する官能基を持つ単量体が挙げられる。具体的には、多官能性アクリレート化合物や、多官能性メタクリレート化合物、多官能性エポキシ化合物。分子内に複数個のアセチレン基を有する化合物などが挙げられる。
これらの化合物の具体例としては、「UV、EB硬化技術の現状と展望」(監修:市村國宏、シーエムシー出版P10〜38)中に記載されている化合物であったらいずれでもよく、その中でもDPHA,PETAが特に好ましい。
下層には架橋がより密になり、耐擦り性が向上するという観点からエネルギー付与により重合開始能を発現する2個以上の不飽和二重結合を有する単量体を使用するほうがより好ましい。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
【0009】
(重合開始剤)
本発明の下層にはエネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有することが好ましい。ここで用いられる重合開始剤は、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを目的に応じて、適宜選択して用いることができる。なかでも、熱重合よりも反応速度(重合速度)が高い光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。
本発明に用い得る光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、下層に含まれる重合性基を有する疎水性ポリマーと、上層に含まれる末端に重合性基を有する親水性ポリマーとを重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができる。
【0010】
そのような光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類、などが挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合性下層中、固形分で0.01〜20重量%の範囲が好ましく、0.1〜10重量%の範囲が特に好ましい。
【0011】
(下層組成物用溶媒)
重合性下層を塗布する際に用いる溶媒は、重合性化合物と重合開始剤の両方が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%が適当である。
【0012】
重合性下層の塗布量は、乾燥後の重量で、0.1〜20g/mが好ましく、さらに、1〜15g/mが好ましい。塗布量0.1g/m未満では十分な重合開始能を発現できず、親水性ポリマーのグラフト化が不十分となり、所望の親水性を得られない懸念があり、塗布量が20g/mを超えると膜性が低下する傾向になり、膜剥がれを起こしやすくなるため、いずれも好ましくない。
【0013】
上記のように、支持体基材上に上記の重合性下層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて下層を形成するが、このとき、加熱及び/又は光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、疎水性ポリマーのある程度の硬化が予め行なわれるので、親水性ポリマーのグラフト化を達成した後に下層である疎水性ポリマー層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。ここで、予備硬化に光照射を利用するのは、前記光重合開始剤の項で述べたのと同様の理由による。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が十分乾燥しうる条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
【0014】
加熱乾燥後に所望により行われる前記光照射は、後述するグラフトポリマーの生成に用いる光源を用いることができるが、引き続き行われる親水性ポリマー層の形成と、エネルギー付与により実施される下層の活性点とグラフト鎖との結合の形成を阻害しないという観点から、下層中に存在する重合性化合物が部分的にラジカル重合しても、完全にはラジカル重合しない程度に光照射することが好ましく、光照射時間については光源の強度により異なるが、一般的には30分以内であることが好ましい。このような予備硬化の目安としては、溶剤洗浄後の膜残存率が10%以上となり、且つ、予備硬化後の開始剤残存率が1%以上であることが、挙げられる。
【0015】
〔重合性基を含有する親水性ポリマーを含有する上層〕
本発明では、支持体上に形成された前記重合性下層上に、重合性基を含有する親水性ポリマーを含有し、重合開始能を有しない上層(以下、適宜、単に上層と称する)が配置されている。
上層に含まれる重合性基を含有する親水性ポリマーは、分子内にビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基を導入したラジカル重合性基含有親水性ポリマーを指し、このポリマーは、重合性基を主鎖末端、及び/又は側鎖に有しており、その双方に重合性基を有することが好ましい。
【0016】
このようなエチレン付加重合性不飽和基を導入したラジカル重合性基含有親水性ポリマーは以下のように合成できる。
合成方法としては、親水性モノマーとエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーを共重合する方法、親水性モノマーと二重結合前駆体を有するモノマーを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、親水性ポリマーの官能基とエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとを反応させる方法が挙げられる。特に好ましいのは、合成適性の観点から、親水性ポリマーの官能基とエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとを反応させる方法である。
【0017】
上記ラジカル重合性基を主鎖末端及び/又は側鎖に有する親水性ポリマーの合成に用いられる親水性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、イタコン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロバンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基もしくはそれらの塩、水酸基、アミド基およびエーテル基などの親水性基を有するモノマーが挙げられる。
【0018】
親水性ポリマーとしては、上記親水性モノマーから選ばれる少なくとも一種を用いて得られる親水性ホモポリマーもしくはコポリマーが挙げられる。
また、親水性モノマーと共重合するアリル基含有モノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜が挙げられる。
親水性ポリマー中のカルボキシル基、アミノ基もしくはそれらの塩、水酸基およびエポキシ基などの官能基との反応を利用して不飽和基を導入するために用いられる付加重合性不飽和基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルユーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
【0019】
末端或いは側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマーとしては、親水性マクロモノマーが挙げられる。本発明に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。本発明で用いられる親水性のマクロモノマーで特に有用なものとしては、アクリル酸、メタクリル酸などのカルホキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2‐アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルステレンスルホン酸、およびその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレー卜、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。
【0020】
これらのマクロモノマーのうち有用な分子量は250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
また、上層の形成にあたって、上記重合性基を有する親水性ポリマーに、さらに、親水性モノマーを添加しても良い。親水性モノマーを添加することにより重合率を上げることができる。
親水性モノマーの添加量は0〜60重量%が好ましい。60重量%以上では塗布性が悪く均一に塗布できないので不適である。
【0021】
(親水性モノマー)
末端及び/又は側鎖に重合性基を有する親水性ポリマーと併用するのに有用な、親水性モノマーとしては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマー、もしくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基を有するモノマーが挙げられるが、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性の基を有する親水性モノマーを用いることもできる。
本発明において、親水性ポリマーとの併用に、特に有用な親水性モノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることが出来る。
【0022】
例えば、(メタ)アクリル酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、イタコン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン酸塩、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、ビニルスチレンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3―スルホプロピレン(メタ)アクリレー卜もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロバンスルホン酸もしくはそのアルカリ金属塩およびアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキンエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩等の、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸、アミノ基もしくはそれらの塩、2−トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはそのハロゲン化水素酸塩等の、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸、アミノ基もしくはそれらの塩、などを使用することができる。また2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N―ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、アリルアミンもしくはそのハロゲン化水素酸塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−メタクリロイルオキシエナルカルバミン酸アスパラギン酸の如き分子中にアミノ酸骨格を有するモノマー、グリコキシエチルメタクリレートの如き分子中に糖骨格を有するモノマーなども有用である。
【0023】
上層に使われるポリマー中の不飽和炭化水素基の量としては、親水性基1molに対して0.01mol%から100mol%が好ましく、より好ましくは0.1mol%から80mol%である。0.01mol%より少ないと十分な密着性を得ることができず、100mol%より多いと充分な親水性を発揮することができない。
【0024】
(上層組成物用溶媒)
本発明において上層形成用の組成物に使用する塗布溶剤は、上層の主成分である前記親水性マクロモノマーや親水性モノマーなどが溶解可能ならば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤にさらに界面活性剤を添加したものなどが好ましい。
水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和しうる溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトンの如きケトン系溶剤、ホルムアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0025】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
このように、上層塗布液は、上層の主成分である前記親水性マクロモノマーや親水性モノマー、塗布溶媒、及び、所望により併用される界面活性剤を含み、重合開始剤の如き重合開始能を発現しうる化合物を含まない。
上層の塗布量は固形分換算で0.1〜10g/mが好ましく、特に1〜5g/mが好ましい。0.lg/m未満では十分な表面親水性を得ることができず、また10g/mを超えると均一な塗布膜が得にくいため、いずれも好ましくない。
【0026】
本発明の防曇フィルムに用いられる支持体基材としては、防曇フィルムの用途に適したものを選択すればよい。
基材としては、親水性部材に防曇効果を期待する場合には透明な基材を選択すればよく、その材質はプラスチックが好適に利用できる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムである。
防曇効果を有する部材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
【0027】
また、本発明の前駆体より得られる親水性部材に表面清浄化効果を期待する場合には、その基材は、例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。表面正常化効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
【0028】
本発明の前駆体より得られる親水性部材に帯電防止効果を期待する場合には、その材質は、例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体が好適に利用できる。
適用可能な用途としては、ブラウン管、磁気記録メディア、光記録メディア、光磁気記録メディア、オーディオテープ、ビデオテープ、アナログレコード、家庭用電気製品のハウジングや部品や外装及び塗装、OA機器製品のハウジングや部品や外装及び塗装、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
【0029】
基材は高分子樹脂からなる表面を有する基材が好ましく、樹脂自体、表面に樹脂が被覆されている基材、表面層が樹脂層からなる複合材のいずれをもを含む。樹脂自体としては、飛散防止フィルム、意匠性フィルム、耐蝕性フィルム等のフィルム基材;看板、高速道路の防音壁等の樹脂基材などが代表例として挙げられる。表面に樹脂が被覆されている基材としては、自動車筐体、塗装建材等の塗装板、表面に樹脂フィルムが貼着された積層板、プライマー処理した基材、ハードコート処理した基材などが代表例として挙げられる。
表面層が樹脂層からなる複合材としては、裏面に接着剤層が設けられた樹脂シール材、反射ミラー、などが代表例として挙げられる。
【0030】
このようにして得られた親水性部材前駆体にエネルギーを付与することにより、重合開始能を有する重合性下層と、上層に含まれる重合性基を有する親水性ポリマーを結合させ、強固で耐久性に優れ、高い親水性を有する防曇フィルムを得ることができる。
このエネルギー付与による表面グラフトの形成について説明する。
本発明においては、親水性表面の形成は、表面グラフト法により行われる。表面グラフトとは、下層を構成する重合開始能を有する高分子層の表面上に光、電子線、熱などの従来公知の方法にてエネルギーを付与することにより、重合性化合物がグラフトされた表面を示す。
【0031】
通常は、基材を構成するPETなどの高分子表面を直接、プラズマ、もしくは電子線にて処理し、表面にラジカルを発生させて重合開始能を発現させ、その後、その活性表面と親水性官能基を有するモノマーとを反応させることによりグラフトポリマー表面層、即ち、親水性基を有する表面層を得ることができる。本発明においては、基材表面に予め重合開始能を有する下層を形成するため、このような活性点の形成が低エネルギーで容易に行うことができ、且つ、生成する活性点も多いため、簡易な方法により、より高い親水性を有する表面を形成することができる。
【0032】
しかしながら、光照射などによりグラフト重合を生じさせる方法自体は、公知の方法を適用することができる。光グラフト重合法の具体的方法としては特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を本発明においても使用することができる。具体的には、基材上に光開始剤と重合性化合物からなる重合成組成物をあらかじめ下塗りしておき、その上に重合性化合物を接触させ光照射する方法である。
表面グラフトを作成する方法のなかでも、エネルギー付与を光照射により行う光グラフト法をとることが好ましい。
【0033】
(エネルギー付与)
本発明にかかる親水性部材前駆体より親水性部材を製造する場合のエネルギー付与方法には特に制限はなく、重合性の下層中に含まれる重合開始剤を活性化させ、重合性化合物、及び上層に含まれる重合性基を有する親水性ポリマーとを結合し得るエネルギーを付与できる方法であれば、例えば、サーマルヘッドによる加熱、露光等の活性光線照射により書き込みなど、いずれも使用できるが、コスト、装置の簡易性の観点からは活性光線を照射する方法が好ましい。特に好ましくはUV照射またはEB照射である。活性光線の主たる波長が250nm以上800nm以下であることが好ましい。
光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステン白熱ランプ、太陽光などがあげられる。
UV照射方法に関しては、硬化時間は好ましくは0.5〜10分、より好ましくは2〜5分である。時間が短いと耐擦り性が悪くなり、時間が長いと作業効率の低下を招く。
EB硬化方法に関しては、電子線の照射量は0.05〜2000kGrayが好ましい。特に好ましくは0.05〜1000kGrayである。少ないと膜強度の低下を招き、耐擦り性が悪くなる。多すぎるとPETフィルムが破壊される。
【0034】
このようにエネルギー付与を行うことで、下層に発生した活性点と、重合性基を有する親水性ポリマーとが重合して、運動性の高い親水性グラフト鎖を有する表面が形成される。また、好ましい態様として、側鎖に重合性基を有する親水性ポリマーを添加することで、下層と結合したグラフト鎖の側鎖の重合性基にさらに、親水性グラフト鎖が結合することで、枝分かれ構造を有するグラフト鎖が形成され、運動性が高い親水性グラフトの形成密度、運動性ともに飛躍的に向上するため、さらなる高い親水性が発現するものである。
【0035】
本発明における優れた親水性とは、水との接触角に換算して20゜以下の水濡れ性を呈する状態をいう。接触角の測定方法は、公知の方法が適用でき、例えば、協和界面科学(株)製、CA−Zなどの市販の装置を用いて接触角(空中水滴)を測定する方法などを適用することができる。この方法で、接触角に換算して20゜以下であれば、本発明の好ましい親水性が達成されていると判断することができる。
【0036】
本発明の防曇フィルムの総膜厚は5μmより大きく170μm以下である。5μm以下のものは強度が弱く、フィルムとして使用する際に破断してしまうなど施工性が悪い。170μより厚いものは耐曲げ性が悪く、且つフィルムとして貼り付ける際に空気を抱き込んだりするため施工性が悪い。
総膜厚は耐擦り性、耐曲げ性の観点から5μmより大きく150μm以下が好ましく、より好ましく10μmより大きく100μm以下である。
下層の厚みが0.001μm〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.010〜50μm、さらに好ましくは0.010〜30μmである。下層が0.001μmより薄い場合は上層と基材の密着性が低下し、100μmより厚い場合は総厚が大きくなり耐曲げ性が低下することがある。
上層の厚みは0.005μm〜150μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.01μm〜100μmである。上層の厚みが0.005μmより薄い場合は耐擦り性が低下し、100μmより厚い場合は総厚が大きくなり耐曲げ性が低下することがある。
(下層の厚み)/(上層の厚み)は特に限定されない。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
(下層の形成)
膜厚0.050mmのPETフィルム(東洋紡(株)A4100)の上に、下記の下層塗布液1(光重合性組成物)をロッドバー17番を用いて塗布し、80℃で2分間乾燥させた。
次に、この塗布されたフィルムを400W高圧水銀灯(UVL−400P,理工科学産業(株)製)を使用し、4分間照射して硬膜させ、重合性下層を形成した。
(重合性下層塗布液1)
・DPHA 4g
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・メタノール 16g
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):Aldrich社製
【0039】
(上層の形成)
重合性下層塗布液1を形成した支持体上に、以下の上層形成用塗布液組成物1をロッドバー6番を用いて塗布し、80℃で2分乾燥後した。前記塗布液組成物1の塗布面状は均一であった。
(上層形成用塗布液組成物1)
・側鎖に重合性基を有する親水性ポリマー(P−1) 2g
・水 18g
【0040】
(P−1の合成方法)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18g、を1−メチル−2−ピロリドン(NMP)300gに溶解し、ハイドロキノン0.41g、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4g、とジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。1N水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルに加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄し側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー18.4g(P−1)を得た。
このようにして得られた親水性部材前駆体表面に以下のようにエネルギーを付与し、親水性部材を作製した。エネルギー付与は、アルゴン雰囲気下で400W高圧水銀灯(UVL−400P,理工科学産業(株)製)を使用し、4分間光照射することにより実施した。光照射後、得られたフィルムをイオン交換水でよく洗浄することによりハイパーブランチ構造の親水性グラフト鎖を持つ親水性フィルム1を得た。
【0041】
(P−2の合成方法)
アクリルアミド60g、3−メルカプトプロピオン酸7.6gを1−メトキシー2−プロパノール100gに溶解後、窒素雰囲気下80℃に昇温し、ジメチルー2、2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)を200mg加えて6時間反応した。反応後白色沈殿を濾過しメタノールで十分洗浄し61.6gの重合物を得た(分子量1万5千)。これを60gとジメチルスルホキシド186gに溶解し、グリシジルメタクリレート20g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)1.5g、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.2gを加え、窒素雰囲気下140℃で7時間反応した。反応溶液をヘキサンーアセトン1:1溶液に加え、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄してP−2を67.2g(分子量1万7千)得た。
P−1およびP−2を下記に示す。
【0042】
【化1】

【0043】
得られた親水性フィルムを下記方法で評価した。
評価法
水接触角:協和界面化学(株)製 接触角計DropMaster500を用いて超純水を用いて親水性塗布膜表面の接触角を求めた。接触角は水滴下後10秒の値を採用した。
耐擦り性:防曇フィルムの表面をスポンジ(マキロン(株)社製)を用いて荷重11.7(g/cm)で50往復擦った際の、防曇フィルム表面の傷の発生程度を目視で観察し、且つ20℃、相対湿度50%の恒温室内で膜に息を吹きかけて、曇りの状態を目視によって判定した。その結果、傷が20本以上見られ全面が曇った場合は「×」、傷が5本以上見られ曇りが見られる場合は「△」、傷が2本未満であり且つやや曇りが見られる場合は「○」、傷が2本未満で全く曇らない場合は「◎」として判定した。
【0044】
密着性:表面処理を施した基材の表面にJIS K−5400に従ってカッターで傷を入れて1mm角の碁盤目を100個作り、セロハン接着テープ(積水化学製、#252、25mm幅、SP粘着力:750gf/25mm幅)を付着させた。このテープの一端を基材の表面に直角に保ち、瞬間的に剥離して残った基盤目の数を表す。100個の基盤目全てが剥離した状態が0、全て剥離しない状態が100である
【0045】
耐曲げ性:得られたフィルムを3cm×20cmに切断し、180°折曲げて折り曲げの前後で膜の状態を調べた。その結果、容易に折り曲げが可能で且つ折り曲げ後の膜に変化がなかったものを「◎」、折り曲げ後に膜に変化がなかったものを「○」、傷がついたものを「×」として判定した。
【0046】
実施例2〜15
基材として用いたフィルムの種類と厚み、下塗り厚と上層厚を下記表のように変更した以外は実施例1と同様に行った。
実施例16
上層でP−1に代わりP−2を使用した以外は実施例1と同様に行った。
実施例17
下層に重合性塗布液2から形成される膜を使用した以外は実施例1と同様に行った。
【0047】
(重合性下層塗布液2)
塗布液の中身を下記のように変更した以外は実施例1と同様に調整した。
・PETA 4g
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・メタノール 16g
PETA(ペンタエリスリトールテトラアクリレート):Aldrich社製
【0048】
実施例18
下層に重合性塗布液3から形成される膜を使用した以外は実施例1と同様に行った。
(重合性下層塗布液3の調整)
重合性塗布液1の調整で、塗布液の中身を下記のように変更した以外は実施例1と同様に調整した。
・TMPTA 4g
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・メタノール 16g
TMPTA(トリアクリル酸トリメチロールプロパン):和光純薬社製
【0049】
実施例19
下層に重合性塗布液4から形成される膜を使用した以外は実施例1と同様に調整した
(重合性下層塗布液4の調整)
重合性塗布液1の調整で、塗布液の中身を下記のように変更した以外は実施例1と同様に調整した。
・EGA 4g
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・メタノール 16g
EGA(エチレングリコールジアクリレート):Aldrich社製
【0050】
実施例20
下層でDPHAに加えてPVA(4g)を添加した以外は実施例1と同様に行った。
実施例21
下層でDPHAに変えて下記のように変更した以外は実施例1と同様に行った。
アリルメタクリレート/メタクリル酸重合体(モル比率85/15、分子量7万) 4g
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
【0051】
実施例22
基材をPETからTAC(厚み80μm)に変更した以外は実施例1と同様に行った。
実施例23
実施例1で合成したフィルムを特開2002−52676号公報記載の方法に準じて粘着剤層を設け、ソーダ石灰ガラスに貼りつけた。貼り付け時の施工性、密着性、防曇性は良好であった。
【0052】
比較例1:基材を厚み125μmのPETに変更した以外は実施例1と同様に行った。
比較例2:基材を厚み3.0μmのPETに変更した以外は実施例12と同様に行った。
比較例3:PETフィルム上に特開平11−129404号公報の実施例1に従い親水処理をしたPET膜を作成した。
比較例4:特開2005−213516の実施例1に従い親水処理をしたPET膜を作成した。
比較例5:上層塗布液組成物1を下のように変更した以外は実施例1と同様に行った。
【0053】
(上層形成用塗布液組成物2)
・PVA(東京化成工業(株)製、分子量2,000、けん化度80%)
2g
・水 18g
【0054】
比較例6:上層塗布液組成物1を下のように変更した以外は実施例1と同様に行った。
・ポリアクリル酸ナトリウム塩(Aldrich社製、分子量15,000、35wt%水溶液) 2g
・水 18g
比較例7:実施例1に対して、下塗り塗布液調整時に1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンを添加しない事以外は実施例1と同様にして調液、塗布した。
比較例8:基材をPETからTACに変更した以外は比較例1と同様に行った。
比較例9:基材をPETからTACに変更した以外は比較例2と同様に行った。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム上に、エネルギー付与により重合開始能を発現する疎水性ポリマー層を下層とし、重合性基を有する親水性ポリマーを含有し重合開始能を有しない上層とが積層されており、総膜厚が5μmより大きく170μm以下である防曇フィルム。
【請求項2】
前記疎水性ポリマー層の厚みが0.010μm〜50μmであり、上層の厚みが0.010μm〜100μmである請求項1に記載の防曇フィルム。
【請求項3】
前記フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはトリアセチルセルロース(TAC)フィルムである請求項1または2に記載の防曇フィルム。
【請求項4】
下層にエネルギー付与により重合開始能を発現する2個以上の不飽和二重結合を有する単量体を重合させたポリマー層を含む請求項1〜3のいずれかに記載の防曇フィルム。
【請求項5】
エネルギー付与により重合開始能を発現する2個以上の不飽和二重結合を有する単量体が2個以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する単量体である請求項4に記載の防曇フィルム
【請求項6】
エネルギーを付与する方法がUV照射又はEB照射による請求項5に記載の防曇フィルム。
【請求項7】
上層に使用するポリマーは主鎖が炭化水素基のみからなるポリマーである請求項6に記載の防曇フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の防曇フィルムを貼りつけた窓ガラス。

【公開番号】特開2009−226729(P2009−226729A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74724(P2008−74724)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】