説明

防曇性光学物品

【課題】全く曇らない防曇光学物品の提供。
【解決手段】プラスチック又はガラス基板(2)を真空チャンバー(1)に入れ、基板温度を約20℃〜80℃に保ち、薄膜材料として天然の水晶(3)を使用し、適宜加熱蒸発手段(4)により約1,600℃〜1,700℃に熱し、前記基板上に防曇被膜を形成させた防曇性光学物品の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇処理を施された物品、特に光学物品、例えば、眼鏡用レンズ、鏡、時計用ガラス、カメラレンズ、表示用のパネル、ヘルメットの保護カバー、窓ガラス、車のウィンドー等関し、更にその製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学物品には色んな防曇処理が施されて使用されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、表面が全く曇らないということは無く、曇ってからその曇りが晴れるまである程度時間が掛かっていた。例えば、防曇処理が施された眼鏡用のレンズに於いて、使用中における急激な温度や湿度の変化によりレンズ表面が真っ白に曇り、前が見えなくなる場面に誰でも一回は遭遇した事は有ると思われる。これが車の運転中であれば重大な事故に繋がる事等も考えられる。それ故、急激な温度や湿度の変化でも全く曇らない光学物品が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明に於いては、上記課題を解決するべく、試行錯誤の結果、偶然にも天然水晶を試しに薄膜材料として使用したところ、全く曇らない光学物品を得た。よって、基板の最上層に、天然水晶薄を薄膜材料として、適宜な加熱蒸発手段を用い蒸着させた事を特徴とする防曇性光学物品を提供することにより上記課題の解決を図った。更にその製造方法もまた開示される。すなわち、プラスチック又はガラス基板を真空チャンバーに入れ、基板温度を約10℃〜80℃に保ち、薄膜材料として天然の水晶を使用し、適宜加熱蒸発手段により約1,600℃〜1,700℃に熱し、前記基板上に防曇被膜を形成させたことを特徴とする、防曇性光学物品の製造方法を採用する事により上記課題の解決を図った。
【発明の効果】
【0005】
上記方法により得られた光学物品は、摂氏5℃の状態に30分以上放置した後、沸騰して蒸気を発生しているお湯の蒸気上に表面をさらしても全く曇る事が無かった。これは、特に光学物品、例えば、眼鏡用レンズ、鏡、時計用ガラス、カメラレンズ、表示用のパネル、ヘルメットの保護カバー、窓ガラス、車のウィンドー等に関し、非常に幅広く使用可能であり、その利用範囲は限りなく大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
プラスチック又はガラス基板を真空チャンバーに入れ、基板温度を約10℃〜80℃に保ち、薄膜材料として天然の水晶を使用し、適宜な加熱蒸発手段により約1,600℃〜1,700℃に熱し、前記基板上に防曇被膜を形成させた防曇性光学物品、及びその製造方法。以下図を交えて、詳しく説明するが、勿論これは一実施例であってこの例に拘るものではない。
【実施例】
【0007】
先ず、図1の様に、真空チャンバー1に基板として通常の洗浄をしたアクリル板2を入れ、この場合はアクリル板を約15℃〜60℃の温度に保ち、そして薄膜材料としては、ブラジル産の天然水晶3を有る程度細かく砕いて入れた。そして、約10−1Pa〜10−5Paの真空圧下で電子ビーム4により、前記天然水晶の表面を約1,600℃〜1,700℃の温度で熱した。その結果、約500nm〜1,500nmの厚さの透明な薄膜5を基板表面に得た。
【0008】
前記薄膜を蒸着されたアクリル板は、上記した様に、摂氏5℃の状態に30分以上放置した後、沸騰して蒸気を発生しているお湯の蒸気上に表面をさらしても全く曇る事が無く、超防曇効果を有し、今まで見た事のない効果を呈示した。
【0009】
勿論、上記アクリル板の代わりに、他のプラスチック材料でも良く、又、ガラス材料であっても良い。
【0010】
上記薄膜材料として天然水晶の代わりに、同じ条件で人工水晶を薄膜材料として使用してみたが、天然水晶を使用したときのような顕著な防曇効果は得られなかった。
【0011】
又、加熱蒸発手段としては、上記電子ビームの他に、抵抗加熱、高周波加熱、レーザーアブレーション、イオンビーム等が有効であろうと思われる。
【0012】
又、図2や図3のように、基板2に直接蒸着膜5を形成しても良く、他のコーティング膜6上の最上層に蒸着膜5を形成しても良い。勿論、最上層であることは必須である。
【0013】
図4は本発明の方法により得られた実施例の眼鏡レンズLの断面図であり、表面と裏面に蒸着膜5aを形成する事により、車の運転の際の、急激な温度、湿度、気圧の変化による、急激な曇りによる前方の視界不良を防ぐことが可能となった。
【0014】
又、ゴーグルやヘルメットを装着してスキーをする場合等に於ける急激な温度、湿度の変化や、自身の汗による蒸発物や息による曇りを全く心配することなく活動可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の説明用模式図
【図2】本発明の光学物品の要部断面図
【図3】本発明の光学物品の要部断面図
【図4】本発明の光学物品の一例であるレンズの断面図
【符号の説明】
1 真空チャンバー
2 基板
3 薄膜材料
4 加熱蒸発手段
5 薄膜
6 他のコーティング膜
L レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の最上層に、天然水晶を薄膜材料として使用し、適宜な加熱蒸発手段を用い防曇被膜を蒸着させた事を特徴とする、防曇性光学物品。
【請求項2】
前記基板が、プラスチック又はガラスである事を特徴とする、請求項1に記載の防曇性光学物品。
【請求項3】
プラスチック又はガラス基板を真空チャンバーに入れ、基板温度を約10℃〜80℃に保ち、薄膜材料として天然の水晶を使用し、適宜な加熱蒸発手段により約1,600℃〜1,700℃に熱し、前記基板上に防曇被膜を形成させたことを特徴とする、防曇性光学物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−209045(P2006−209045A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51938(P2005−51938)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(595161784)株式会社加藤八 (6)
【Fターム(参考)】