説明

防曇性樹脂シートおよびその二次成形品

【課題】シート外観に優れ、成形方法および金型形状によらず優れた高温防曇性および低温防曇性を有し、かつ、これを用いて量産した二次成形品の外観にも優れる防曇性樹脂シートおよびその二次成形品を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、ショ糖脂肪酸エステル(A)100質量部、サイクロデキストリンおよび/またはその誘導体(B)1〜50質量部、およびポリビニルアルコール(C)10〜300質量部を含有し、かつシリコーンオイル(D)の含有量が40質量部以下である溶液状の防曇剤を塗布し、溶媒を乾燥させることにより防曇層を設けたことを特徴とする防曇性樹脂シート。その二次成形品は、弁当容器、惣菜容器、寿司容器、刺身容器等の食品容器の防曇性透明蓋として、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装容器やその他各種容器等に用いられる防曇性樹脂シートおよびその二次成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の熱可塑性樹脂を用いて押出成膜された樹脂シートは、真空成形機、圧空真空成形機、熱板圧空成形機等を用いて加熱成形により二次成形され、これにより得られた二次成形品は、軽量食品包装容器やその他物品の包装に多く用いられている。これらの樹脂シートの中でも、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等に代表される透明性樹脂シートは、その透明性から弁当容器や惣菜容器等の蓋材として広く用いられている。しかし、この蓋材では、内容物から発生する水蒸気により蓋材の内面が曇る問題があった。
【0003】
また、この透明性樹脂シートを二次成形して蓋材等の二次成形品を製造する際、二次成形された樹脂シートを多数枚積み重ねて一括で打抜く工程があり、この打抜き時に二次成形品同士が密着し易く、この多数積み重ねられた二次成形品から1個ずつ剥離して取り出すのが困難である問題もあった。
【0004】
上記の問題を解決する方法として、例えば、防曇剤としてショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルアルコールおよびシリコーンエマルジョンを含む水溶液を樹脂シートの一方の面に付着させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、この曇りを防止する防曇性には、高温の内容物を包装した場合の水蒸気に対する防曇性(高温防曇性)の他に、水分を含む食品等の内容物を包装し、冷蔵保存した場合の結露に対する防曇性(低温防曇性)、さらに冷蔵後加熱される内容物に対しては、結露、水蒸気両方に対しての防曇性があり、これらの防曇性は包装直後から内容物が消費されるまでの間、持続する必要がある。
【0006】
これらの問題に対しては、例えば、防曇剤としてショ糖脂肪酸エステル、多糖類、およびシリコーンエマルジョンを含む表面処理剤を樹脂シートの一方の面に塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開昭56−166234号公報
【特許文献2】特開平5−287097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、該水溶液の付着面が白化し、樹脂シートの外観が不良になる問題があった。また、上記特許文献2に記載の表面処理剤を塗布した樹脂シートの二次成形品は、該表面処理剤の塗布面が白化し、二次成形品の外観が不良になる問題や高温および低温防曇性が不充分である問題があった。
【0008】
さらに、従来の表面処理剤を用いた防曇性樹脂シートの場合、特に熱板圧空成形により二次成形品を長時間生産し続けると、熱板の汚れが二次成形品に移って、二次成形品の外観が不良となる場合があった。
【0009】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート外観に優れ、成形方法および金型形状によらず優れた高温防曇性および低温防曇性を有し、かつ、これを用いて量産した二次成形品の外観にも優れる防曇性樹脂シートおよびこれを用いた二次成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、ショ糖脂肪酸エステル(A)、サイクロデキストリンまたはその誘導体(B)、およびポリビニルアルコール(C)を特定の比率で含有する防曇剤を塗布すると、シート外観に優れ、高温のみならず低温においても良好な防曇性を有する防曇性樹脂シートを見出し、かつ、その防曇性樹脂シートを用いて熱板圧空成形により二次成形品を量産した場合でも、二次成形品の外観に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、ショ糖脂肪酸エステル(A)100質量部、サイクロデキストリンおよび/またはその誘導体(B)1〜50質量部、およびポリビニルアルコール(C)10〜300質量部を含有し、かつシリコーンオイル(D)の含有量が40質量部以下である溶液状の防曇剤を塗布し、溶媒を乾燥させることにより防曇層を形成したことを特徴とする防曇性樹脂シートおよびその防曇性樹脂シートを二次成形することにより得られる二次成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防曇性樹脂シートは、ショ糖脂肪酸エステル(A)、サイクロデキストリンおよび/またはその誘導体(B)、およびポリビニルアルコール(C)を含有した防曇層を設けたので、シート外観に優れ、成形方法および金型形状によらず優れた高温防曇性および低温防曇性を有し、かつ熱板圧空成形時でも二次成形品の外観に優れる。そして、この防曇性樹脂シートを用いた二次成形品は、弁当容器、惣菜容器、寿司容器、刺身容器等の食品容器の防曇性透明蓋として、特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の防曇性樹脂シートは、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、ショ糖脂肪酸エステル(A)、サイクロデキストリンおよび/またはその誘導体(B)、およびポリビニルアルコール(C)を特定の比率で含有した防曇層を設けたことを特徴とする。そのショ糖脂肪酸エステル(A)としては、ショ糖と、脂肪酸メチルエステル等の脂肪酸の低級アルコールエステルとをエステル交換して得られるものが挙げられ、具体的には、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等が挙げられる。これらのショ糖脂肪酸エステルは、単一物として用いることもでき、二種以上の混合物として用いることもできる。また、ショ糖脂肪酸エステルには、モノエステル、ジエステルおよびトリエステルが存在するが、より良好なシート外観、防曇効果を得るためには、ショ糖脂肪酸モノエステルの含有率が50モル%以上であるものが好ましく、HLB値(親水性−親油性バランス)が13〜17であるものが好ましい。すなわち、HLB値を13以上にすることで水溶性が高いためにシートに均一に被覆することが可能になり、より良好なシート外観が得られ、HLB値を17未満にすることで、より良好な防曇性が得られる。
【0014】
本発明の防曇性樹脂シートの防曇層が含有するサイクロデキストリンとしては、例えば、D−グルコースが6単位結合したα−サイクロデキストリン、7単位結合したβ−サイクロデキストリン、8単位結合したγ−サイクロデキストリン等が挙げられる。
【0015】
尚、本発明に用いるサイクロデキストリンとしては、水溶性と防曇性の観点から、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリンおよびγ−サイクロデキストリンの群からから選ばれることが好ましく、これらのサイクロデキストリンは、単一物であっても良いが、これらのサイクロデキストリンの群から選ばれる二種または三種の混合物であることがより好ましい。
【0016】
前記サイクロデキストリンの誘導体としては、例えば、ジメチルサイクロデキストリン、トリメチルサイクロデキストリン、ジエチルサイクロデキストリン、トリエチルサイクロデキストリン、トリプロピルサイクロデキストリン、トリブチルサイクロデキストリン等のアルキル化サイクロデキストリン、トリアセチルサイクロデキストリン、トリプロピオニルサイクロデキストリン、トリブタノイルサイクロデキストリン等のアシル化サイクロデキストリン、ヒドロキシプロピルサイクロデキストリン等のヒドロキシアルキル化サイクロデキストリン、マルトースを分岐鎖として導入したマルトシルサイクロデキストリン等が挙げられる。
【0017】
本発明の防曇性樹脂シートの防曇層中のサイクロデキストリンおよび/またはその誘導体(B)の組成比率は、ショ糖脂肪酸エステル100質量部に対して1〜50質量部であり、好ましくは3〜46質量部である。1質量部以上であると防曇性、熱板圧空成形したときの熱板汚れ防止性に効果があり、50質量部以下にすることで防曇性試験において低温防曇性が良好となり、かつ二次成形品の深絞り部が曇り易くなる現象を防止できる。水溶液からなる防曇剤の配合比率を上記の好ましい組成比率に調整することにより、防曇層中のサイクロデキストリンまたはその誘導体(B)の組成比率を調整することができる。
【0018】
本発明の防曇性樹脂シートの防曇層が含有するポリビニルアルコール(C)としては、ポリビニルアセテートの部分ケン化反応生成物が好ましく、特にケン化度が60〜80モル%のものが好ましく、より好ましくはケン化度が65〜75モル%のものである。好ましいケン化度とは、防曇性改良効果が有意に得られかつ防曇性樹脂シートの外観を悪化させない観点から決定される領域であり、ケン化度を60モル%以上にすることで水溶性を向上させ、防曇剤被膜を水溶液の塗布で形成させる場合、被膜中のポリビニルアルコールの分散均一性を向上させる。また、ケン化度を80モル%以下にすることで、防曇性が良好となる。
【0019】
また、ポリビニルアルコール(C)の4質量%水溶液の20℃での粘度は、4〜9mPa・sであることが好ましく、より好ましくは4〜8mPa・sである。好ましいポリビニルアルコールの粘度は、防曇性改良効果が得られかつ防曇性樹脂シートのベトツキを防ぐ観点から決定される領域であり、粘度が4mPa・s以上のポリビニルアルコールを選定することで防曇性樹脂シートのベトツキを防ぐ事ができる。さらに、粘度が9mPa・s以下のポリビニルアルコールを使用することにより、防曇性改良効果が得られる。
【0020】
本発明の防曇性樹脂シートの防曇層中のポリビニルアルコール(C)の組成比率は、ショ糖脂肪酸エステル100質量部に対し、10〜300質量部であり、好ましくは30〜250質量部である。すなわち、10質量部以上にすることで良好な防曇性が得られ、300質量部以下とすることで低温防曇性が良好となり、シート、二次成形品の外観悪化や防曇性樹脂シートをリサイクルする際の着色を抑制することができる。水溶液からなる防曇剤の配合比率を上記の好ましい組成比率に調整することにより、防曇層中のポリビニルアルコール(C)の組成比率を調整することができる。
【0021】
本発明の防曇性樹脂シートに用いる防曇剤には、ショ糖脂肪酸エステル(A)以外の非イオン系界面活性剤を本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。
【0022】
本発明において、熱可塑性樹脂シートの防曇層を設けた面の他方の面に、剥離剤としてシリコーンオイル(D)を塗布することができる。このシリコーンオイル(D)は、安全性、経済性の観点より、25℃における粘度が100〜50万mm/sの範囲のジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0023】
また、前記シリコーンオイル(D)を熱可塑性樹脂シートの表面に塗布する際には、シリコーンエマルジョンの形態で用いる。なお、シリコーンエマルジョン中のシリコーンオイル(D)の平均粒子径は、1μm以下であることが好ましい。すなわち、平均粒子径が1μmを超えると均一に塗ることが困難であり、防曇性樹脂シートの外観が低下する。
【0024】
また、本発明に用いるシリコーンオイル(D)は、シート、二次成形品の外観が良好となることから、防曇剤を被覆した面の他方の面に塗ることが好ましい。すなわち、防曇剤中にシリコーンオイル(D)を混合して塗布した場合は、シート、二次成形品の外観が悪化する問題があり、防曇剤中に含まれるショ糖脂肪酸エステル(A)100質量部に対して、シリコーンオイル(D)の配合量は、40質量部以下にする必要がある。さらには、20質量部以下とすることが好ましく、防曇剤中にシリコーンオイルを含まないことが特に好ましい。
【0025】
さらに、本発明に用いるシリコーンオイル(D)を含むシリコーンエマルジョンの液中には、帯電防止効果のある界面活性剤や滑剤等を添加することも可能である。
【0026】
本発明の防曇性樹脂シートの基材となる熱可塑性樹脂シートの樹脂種としては、特に限定されるものではないが、透明であることが好ましく、例えば、ポリスチレン、結晶性ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、透明性スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等のスチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン6に代表されるポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂等が好ましい。
【0027】
また、本発明の防曇性樹脂シートの透明性を阻害しない範囲で、これらの樹脂を二種類以上混合して使用しても良い。さらに、これらの熱可塑性樹脂シートは、これらの樹脂を一種類以上使用した二層以上の多層化シートであっても良い。さらにまた、これらの熱可塑性樹脂シートに一軸または二軸方向の延伸処理が施してあっても良い。
【0028】
さらに、二軸延伸ポリスチレン系樹脂シートは、熱板圧空成形機で加熱成形する場合が多く、この場合、従来の防曇剤を用いた場合では加熱成形時の成形体の防曇性低下が著しい傾向にある。しかし、本発明の防曇性樹脂シートにおいては、基材として二軸延伸ポリスチレン系樹脂シートを用いた場合においても優れた防曇性を有する二次成形品が得られる。汎用の熱板圧空成形機との適合性の観点から、本発明の防曇性樹脂シート用基材として二軸延伸ポリスチレン系樹脂シートが最も好適である。
【0029】
これらの熱可塑性樹脂シートの厚みは、特に限定されるものではないが、防曇性樹脂シートを二次成形する場合の二次成形品の剛性や強度の観点より0.05〜1.0mmが好ましい。
【0030】
これらの熱可塑性樹脂シートに使用される樹脂中には、防曇性樹脂シートのブロッキング防止を目的として、樹脂シート表面に突起を生じさせるための各種の微粒子を樹脂シートの透明性を損なわない範囲で添加することができる。前記微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂架橋ビーズ、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂架橋ビーズ、ポリウレタン系樹脂架橋ビーズ等の樹脂架橋ビーズ、シリカ、疎水化処理シリカ、球状シリカ、軟質炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等の無機微粒子、ゴム微粒子などが挙げられる。前記ゴム微粒子としては、ゴム含有樹脂を併用する方法が挙げられ、ここで用いるゴム含有樹脂としては、防曇性樹脂シートの基材となる熱可塑性樹脂と異なるものであって、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(MBS)、耐衝撃性(メタ)アクリル酸エステル(HI−PMMA)等のゴム含有樹脂が挙げられる。
【0031】
本発明の防曇性樹脂シートの製造方法は、熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、ショ糖脂肪酸エステル(A)と、サイクロデキストリンおよび/またはその誘導体(B)と、ポリビニルアルコール(C)とを含有する溶液状の防曇剤を塗布し、その溶媒を乾燥させることにより防曇層とするものである。
【0032】
本発明の防曇性樹脂シートの製造方法としては、特に制限されないが、前記の熱可塑性樹脂を公知の方法で成膜することで得た熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、水溶液からなる防曇剤を塗布することが好ましく、具体的には、熱可塑性樹脂シートの一方の面に親水化処理を施した後、該防曇剤をこの処理面に塗布し、溶媒を乾燥させることにより防曇層とする方法が挙げられる。
【0033】
本発明の防曇性樹脂シートの製造方法で使用される防曇剤の塗布方法としては、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、ローターダンプニングコーター、アプリケーター方式等公知の方法が挙げられ、特に制限はない。
【0034】
本発明の防曇性樹脂シートの防曇剤塗布量は、防曇効果の向上と塗布ムラによる外観不良を防ぐために、所定の量に調整することが好ましい。具体的には、乾燥後の固形分塗布量、すなわち、防曇性樹脂シートの単位面積あたりの防曇層の質量で5〜1000mg/mであることが好ましく、5〜150mg/mであることが特に好ましい。
【0035】
防曇剤の塗布量の定量分析は、フーリエ変換式赤外分光光度計による分析法(多重内部反射法)〔FTIR分析法(ATR法)〕によって行うことが可能である。
【0036】
また、熱可塑性樹脂シートの表面の親水化処理の方法としては、酸処理、火炎処理、コロナ処理等公知の方法が挙げられる。これらの親水化処理を施した熱可塑性樹脂シートの表面のぬれ張力は、38mN/m以上であることが好ましく、該防曇剤を均一に塗布し、充分な防曇効果を得るためには45〜60mN/mの範囲内であることがより好ましい。ここで、ぬれ張力は、JIS K6768−1999に記載された方法により測定される値である。
【0037】
本発明の防曇性樹脂シートを、真空成形、圧空真空成形、熱板圧空成形などの手段で二次成形することにより、弁当容器、惣菜容器、寿司容器、刺身容器等の食品容器に好適な二次成形品を作製することができる。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例と比較例を挙げて、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)10質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)29質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(1)を得た。
【0040】
次いで、表面にコーティング処理を施していない厚さ0.21mmの二軸延伸ポリスチレン系樹脂シート(サンディック株式会社製「サンディックシート510」)の片面に、ぬれ張力50mN/mのコロナ処理を施し、ロールコーター方式を用いて、そのコロナ処理面に防曇剤の固形分塗布量が50mg/mとなるように、防曇剤(1)を適宜水で希釈して塗布し、ドライヤーで乾燥して防曇層とした。
【0041】
さらに、前記シートの防曇層を設けた面とは反対の面に、シリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社製「KM893」、シリコーンオイル分35質量%)を2.5質量%の水溶液とし、ロールコーター方式にて塗布し、ドライヤーで乾燥した後、ロール状に巻き取り、防曇性樹脂シート(1)を得た。
【0042】
なお、防曇剤およびシリコーンオイルの塗布量は、フーリエ変換式赤外分光光度計(FTIR)を用いて多重内部反射法(ATR法)によりシート表面の赤外吸収スペクトルを測定し、塗布量が既知の標準サンプルより作成した検量線を基に定量分析を行うことにより求めた。
【0043】
得られた防曇性樹脂シート(1)を、熱板温度125℃の熱板圧空成形機を用いて、下記に示す金型を用いて成形し二次成形品(1)を得た。
金型:94mm(縦)×94mm(横)×30mm(深さ)、角部:2R
【0044】
(実施例2)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)14質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)40質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(2)を得た。次いで、得られた防曇剤(2)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(2)と二次成形品(2)を得た。
【0045】
(実施例3)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)20質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)58質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(3)を得た。次いで、得られた防曇剤(3)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(3)と二次成形品(3)を得た。
【0046】
(実施例4)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)5質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)95質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(4)を得た。次いで、得られた防曇剤(4)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(4)と二次成形品(4)を得た。
【0047】
(実施例5)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)30質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)10質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(5)を得た。次いで、得られた防曇剤(5)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(5)と二次成形品(5)を得た。
【0048】
(実施例6)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)20質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)100質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(6)を得た。次いで、得られた防曇剤(6)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(6)と二次成形品(6)を得た。
【0049】
(実施例7)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)3質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)58質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(7)を得た。次いで、得られた防曇剤(7)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(7)と二次成形品(7)を得た。
【0050】
(実施例8)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)40質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)58質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(8)を得た。次いで、得られた防曇剤(8)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(8)と二次成形品(8)を得た。
【0051】
(実施例9)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「イソエリートP」、サイクロデキストリン純度80%以上、内マルトシルサイクロデキストリン50%以上)25質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)125質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(9)を得た。次いで、得られた防曇剤(9)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(9)と二次成形品(9)を得た。
【0052】
(実施例10)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)33質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールKP−08R」ケン化度73モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度6.6mPa・s)170質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(10)を得た。次いで、得られた防曇剤(10)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(10)と二次成形品(10)を得た。
【0053】
(実施例11)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)46質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)234質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(11)を得た。次いで、得られた防曇剤(11)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(11)と二次成形品(11)を得た。
【0054】
(実施例12)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)10質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「GL−05」、ケン化度87モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度5.3mPa・s)29質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(12)を得た。次いで、得られた防曇剤(12)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(12)と二次成形品(12)を得た。
【0055】
(実施例13)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)20質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「GL−05」、ケン化度87モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度5.3mPa・s)58質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(13)を得た。次いで、得られた防曇剤(13)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(13)と二次成形品(13)を得た。
【0056】
(比較例1)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)10質量部、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)29質量部、およびシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社製「KM893」、シリコーンオイル分35質量%)142質量部(シリコーンオイル分として49.7質量部)を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(14)を得た。
【0057】
次いで、表面にコーティング処理を施していない厚さ0.21mmの二軸延伸ポリスチレン系樹脂シート(サンディック株式会社製「サンディックシート510」)の片面に、濡れ係数50mN/mのコロナ処理を施し、ロールコーター方式を用いて、そのコロナ処理面に防曇剤の固形分塗布量が50mg/mとなるように、防曇剤(14)を適宜水で希釈して塗布し、ドライヤーで乾燥した後巻き取り、ロール状の防曇性樹脂シート(14)を得た。次いで、得られた防曇性樹脂シート(14)を用いた以外は実施例1と同様にして二次成形品(14)を得た。
【0058】
(比較例2)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)20質量部、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)58質量部、およびシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社製「KM893」、シリコーンオイル分35質量%)142質量部(シリコーンオイル分として49.7質量部)を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(15)を得た。次いで、得られた防曇剤(15)を用いた以外は比較例1と同様にして防曇性樹脂シート(15)と二次成形品(15)を得た。
【0059】
(比較例3)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、溶性澱粉(和光純薬工業株式会社製)100質量部、およびシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社製「KM893」、シリコーンオイル分35質量%)150質量部(シリコーンオイル分として52.5質量部)を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(16)を得た。次いで、得られた防曇剤(16)を用いた以外は比較例1と同様にして防曇性樹脂シート(16)と二次成形品(16)を得た。
【0060】
(比較例4)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、アラビアゴム(和光純薬工業株式会社製)50質量部、およびシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社製「KM893」、固形分35質量%)150質量部(シリコーンオイル分として52.5質量部)を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(17)を得た。次いで、得られた防曇剤(17)を用いた以外は比較例1と同様にして防曇性樹脂シート(17)と二次成形品(17)を得た。
【0061】
(比較例5)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールKP−08R」ケン化度73モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度6.6mPa・s)100質量部、およびシリコーンエマルジョン(信越化学工業株式会社製「KM893」、シリコーンオイル分35質量%)150質量部(シリコーンオイル分として52.5質量部)を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(18)を得た。次いで、得られた防曇剤(18)を用いた以外は比較例1と同様にして防曇性樹脂シート(18)と二次成形品(18)を得た。
【0062】
(比較例6)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、およびサイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「イソエリートP」、サイクロデキストリン純度80%以上、内マルトシルサイクロデキストリン50%以上)30質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(19)を得た。次いで、得られた防曇剤(19)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(19)と二次成形品(19)を得た。
【0063】
(比較例7)
サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)40質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)100質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(20)を得た。次いで、得られた防曇剤(20)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(20)と二次成形品(20)を得た。
【0064】
(比較例8)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)20質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)5質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(21)を得た。次いで、得られた防曇剤(21)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(21)と二次成形品(21)を得た。
【0065】
(比較例9)
ショ糖ラウリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製「リケマールA」、モノエステル72モル%、HLB15、固形分40質量%)250質量部(固形分として100質量部)、サイクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製「デキシーパールK−100」、サイクロデキストリン純度97%以上、内α−サイクロデキストリン70%以上)93質量部、およびポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製「ゴーセノールNK−05R」、ケン化度74モル%、4質量%水溶液の20℃での粘度4.7mPa・s)473質量部を、水10000質量部に混合、溶解させ、防曇剤(22)を得た。次いで、得られた防曇剤(22)を用いた以外は実施例1と同様にして防曇性樹脂シート(22)と二次成形品(22)を得た。
【0066】
上記で得られた防曇性樹脂シート(1)〜(22)の外観、並びに、その二次成形品(1)〜(22)の外観、高温防曇性、低温防曇性および剥離性を下記の方法にしたがい評価した。
【0067】
(防曇性樹脂シートの外観の評価)
得られた防曇性樹脂シートの外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:白化無し。
×:白化有り。
【0068】
(二次成形品の外観の評価)
得られた二次成形品の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:白化無し。
×:白化あり。
【0069】
(二次成形品の高温防曇性の評価)
高温食品用容器に用いて外部から内容物を透視観察する場合を想定した防曇性を評価する目的で、二次成形品の高温防曇性の評価を次の要領で実施した。すなわち、二次成形品と同型状の底材(熱可塑性樹脂シートを二次成形して得られたもの)を準備し、15mm角の碁盤模様を印刷した紙をしいた後、底材中に90℃の湯を100ml入れ、その上部を上記実施例および比較例で得られた二次成形品で蓋をして、23℃にて5分放置し、その二次成形品を通して見える碁盤模様のゆがみ、並びに、その天面および四隅の内側に付着した水滴の程度を目視で観察した。結果を表1に示す。
[評価基準]
◎:二次成形品に曇りがなく、かつ二次成形品の95%以上の面積にわたって碁盤模様がゆがみなく見える。
○:二次成形品に曇りがなく、かつ二次成形品の85%以上95%未満の面積で碁盤模様がゆがみなく見える。
△:二次成形品に曇りはないが、二次成形品の15%より広い面積で碁盤模様がゆがんで見える。
×:二次成形品の天面または四隅に小さな水滴が付着して曇る。
【0070】
(二次成形品の低温防曇性の評価)
冷蔵食品用容器に用いて外部から内容物を透視観察する場合を想定した防曇性を評価する目的で、二次成形品の低温防曇性の評価を次の要領で実施した。すなわち、二次成形品と同型状の底材(熱可塑性樹脂シートを二次成形して得られたもの)を準備し、15mm角の碁盤模様を印刷した紙をしいた後、底材中に23℃の水を100ml入れ、その上部を上記実施例および比較例で得られた二次成形品で蓋をして、5℃にて30分放置し、その二次成形品を通して見える碁盤模様のゆがみ、並びに、その天面および四隅の内側に付着した水滴の程度を目視で観察した。結果を表1に示す。
[評価基準]
◎:二次成形品に曇りがなく、かつ二次成形品の95%以上の面積にわたって碁盤模様がゆがみなく見える。
○:二次成形品に曇りがなく、かつ二次成形品の85%以上95%未満の面積で碁盤模様がゆがみなく見える。
△:二次成形品に曇りはないが、二次成形品の15%より広い面積で碁盤模様がゆがんで見える。
×:二次成形品の天面または四隅に小さな水滴が付着して曇る。
【0071】
(剥離性の評価)
得られた二次成形品を積み重ね、上下から手で押し付けて二次成形品を相互に密着させた。積み重ねられた二次成形品を、手で1個ずつ取り出す際の剥離性を調べた。
○:円滑に剥離できる。
×:剥離しにくい。
【0072】
実施例1〜13の評価結果を表1に、比較例1〜9の評価結果を表2に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1に示した結果より、実施例1〜13で得られた防曇性樹脂シートは、ショ糖脂肪酸エステル、サイクロデキストリン、およびポリビニルアルコールを含有した防曇層を設けたので、防曇性樹脂シートが白化せず、量産した二次成形品においても白化が見られず、良好な外観を有していた。また、高温防曇性も低温防曇性もともに良好であった。さらに、透明性樹脂シートの他方の面に、剥離剤としてシリコーンオイルが塗布されているので、剥離性にも優れていた。またさらに、実施例1で量産した二次成形品から、樹脂を回収して、再度、防曇性樹脂シートを作製したところ、着色もなく良好なリサイクル性があることを確認した。
【0076】
比較例1は、防曇層が形成された面とは反対の面にシリコーンオイルを塗布せず、ショ糖脂肪酸エステル、サイクロデキストリン、およびシリコーンオイルを配合した防曇剤を用いて防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例1は、樹脂シートの外観が不良であった。
【0077】
比較例2は、防曇層が形成された面とは反対の面にシリコーンオイルを塗布せず、ショ糖脂肪酸エステル、サイクロデキストリン、およびシリコーンオイルを配合した防曇剤を用いて防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例2は、樹脂シートの外観が不良であった。
【0078】
比較例3は、防曇層が形成された面とは反対の面にシリコーンオイルを塗布せず、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーンオイルおよび溶性澱粉を配合した防曇剤を用いて防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例3では、この防曇性樹脂シートを二次成形した二次成形品が白化する問題があり、高温防曇性が不良であった。
【0079】
比較例4は、防曇層が形成された面とは反対の面にシリコーンオイルを塗布せず、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーンオイルおよびアラビアゴムを配合した防曇剤を用いて防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例4では、この防曇性樹脂シートを二次成形した二次成形品が白化する問題があり、高温防曇性が不良であった。
【0080】
比較例5は、防曇層が形成された面とは反対の面にシリコーンオイルを塗布せず、ショ糖脂肪酸エステル、ポリビニルアルコールおよびシリコーンオイルを配合した防曇剤を用いて防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例5では、この防曇性樹脂シートが白化し、防曇性樹脂シートの外観が不良であった。
【0081】
比較例6は、ポリビニルアルコールを配合しない防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例6では、低温防曇性がやや不良であった。
【0082】
比較例7は、ショ糖脂肪酸エステルを配合しない防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例7では、高温防曇性がやや不良で、低温防曇性が不良であった。
【0083】
比較例8は、ショ糖脂肪酸エステル100質量に対して、ポリビニルアルコールの配合量を10質量部未満である5質量部とした防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例8では、高温防曇性、低温防曇性ともにやや不良であった。
【0084】
比較例9は、ショ糖脂肪酸エステル100質量に対して、サイクロデキストリンの配合量を50質量部を超える93質量部とし、ポリビニルアルコールの配合量を300質量部を超える473質量部とした防曇層を設けた防曇性樹脂シートの例である。比較例9では、低温防曇性がやや不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の面に、ショ糖脂肪酸エステル(A)100質量部、サイクロデキストリンおよび/またはその誘導体(B)1〜50質量部、およびポリビニルアルコール(C)10〜300質量部を含有し、かつシリコーンオイル(D)の含有量が40質量部以下である溶液状の防曇剤を塗布し、溶媒を乾燥させることにより防曇層を設けたことを特徴とする防曇性樹脂シート。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール(C)の含有量が、30〜250質量部である請求項1記載の防曇性樹脂シート。
【請求項3】
前記サイクロデキストリンが、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリンおよびγ−サイクロデキストリンからなる群から選ばれる一種の単一物または二種以上の混合物である請求項1または2記載の防曇性樹脂シート。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコール(C)のケン化度が、60〜80モル%である請求項1〜3のいずれか1項記載の防曇性樹脂シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の防曇性樹脂シートの防曇層を設けた面の他方の面にシリコーンオイル(D)が塗布された請求項1〜4のいずれか1項記載の防曇性樹脂シート。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂シートが、スチレン系樹脂シートである請求項1〜5のいずれか1項記載の防曇性樹脂シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の防曇性樹脂シートを二次成形することにより得られる二次成形品。

【公開番号】特開2007−185951(P2007−185951A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331916(P2006−331916)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(505056122)サンディック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】