説明

防曇/防眩組成物を含むフェースマスク

ぼやけおよびぎらつきを減じるための、フェースマスクに配合される被覆組成物を提供する。例えば、一態様において、該フェースマスクは、少なくとも一方の表面に適用された、本発明の被覆組成物を有する、透明な支持体で作られたシールドまたはバイザーを含む。本発明者等は、予想外のことに、1種またはそれ以上の、エチルヒドロキシエチルセルロース等の水溶性有機ポリマーが、簡単かつ効果的な様式で、ぼやけおよびぎらつきを減じるための該被覆組成物の主成分として私用できることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
保護用のフェースマスクの使用は、多くの健康管理およびその他の関連する活動にとって、標準的なものとなっている。このフェースマスクの主な目的は、吸入するおよび吐出される空気から有害な物質を濾過することである。しかし、医療用のフェースマスクは、また液体による攻撃から、その着用者を保護する目的でも使用される。それ故に、これらのマスクは、液体の跳返りから目を防御するために取付けられた、透明なプラスチック製のバイザーを含むことができる。あるいはまた、自立式透明フェースシールドを、フィルタマスクと共に着用することも可能である。
医療用途および工業的用途両者における、バイザー付きのフェースシールドまたは防御用フェースマスクに付随する、解決されずに残されている一つの問題は、該バイザーまたはシールドのぼやけである。着用者によって吐出される暖かい、湿り気を持った空気は、該ユーザーの鼻または口の極近傍にある、比較的温度の低い表面上で凝縮するであろう。凝縮物の液滴は、眼鏡、フェースマスクおよびその他の保護シールドを、内視鏡および顕微鏡等の科学的な装置の接眼レンズと共に、ぼやけさせ、もしくは曇らせてしまうであろう。このぼやけまたは曇りは、該保護マスク内に含まれている高濃度の水蒸気が、該フェースマスクまたはその回りを通過し、また該マスク近傍のより低温の単眼鏡上に凝縮した場合に生じる。このぼやけに関する問題を解決するために、様々な技術が報告されており、例えば米国特許第4,635,628号、同第4,419,993号、同第3,890,966号、および同第3,888,246号に記載されている。
【0002】
それにも拘らず、これら解決策の多くは、ぎらつきに関する問題を解決することができない。ぎらつきは、光が入射した表面からの、望ましからぬ光の正反射である。例えば、クリーンルームにおける職員の作業および長期に及ぶ、複雑な外科手術を行う医療従事者は、長期間に渡りフェースマスクを着用した後に、しばしばこのような反射およびぎらつきに起因する目の緊張および目の疲労を訴えている。ぎらつきに起因する目の疲労は、特に、フェースマスクまたは着用者の顔面を保護および/またはシールドするための、その他の保護装置を着用した状態で、精密科学装置、例えば顕微鏡および内視鏡を使用した場合に顕著である。透明なバイザーまたはシールドを製造するのに使用する多くの市販の透明フィルム(例えば、ポリエステル)は、薄い仕上げ剤で被覆されているが、光学的特性に及ぼす、この仕上げ剤の衝撃は、無視できるものである。
【0003】
このように、様々な技術が、フェースマスクにおけるぼやけまたは曇り両者を減じる目的で、提案されている。例えば、Baird等の米国特許第5,813,398号は、フィルタ本体を有するフェースマスクを記載しており、このフィルタ本体は、該フェースマスクの上方部分に設けられた流体不透過性のフィルムの層を備えており、この層は、着用者によって吐出される空気を、該フィルタ本体を介して、眼鏡および/または接眼レンズのぼやけから遮断する。好ましくは、不織り材料の層を、該流体不透過性のフィルムの層上に配置して、該流体不透過性のフィルム層からのあらゆるぎらつきを実質的に減じおよび/または排除する。更に、Scholz等の米国特許第5,585,186号、Scholz等の米国特許第5,723,175号、Scholz等の米国特許第5,753,373号、Scholz等の米国特許第5,873,931号、Scholz等の米国特許第5,997,621号およびScholz等の米国特許第6,040,053号は、一般に被覆組成物を開示しており、これら組成物は、反射防止特性を付与するための、多孔質無機金属酸化物の中実粒子による網状構造、およびぼやけ防止特性を付与するための、極めて特殊な界面活性剤を含む。不幸なことに、フェースマスクにおけるぼやけおよびぎらつきを減じるためのこのような技術は、依然として不十分である。例えば、反射防止用の一被覆成分(例えば、多孔質無機金属酸化物)およびぼやけ防止用のもう一つの成分(例えば、界面活性剤)の使用は、極めて複雑かつ高価である。界面活性剤/中実粒子分散物に関する他の問題は、時間の経過に伴う処方物の不安定性に関連し、これは該生成物の光学的な特性に負の影響を与える可能性がある。
現在、ぼやけの有害な影響を排除し、かつ同時にフェースマスクのぎらつきを減じるための改善された技術に対する需要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、フェースマスクが開示され、これは透明なポリエステル製のバイザーまたはシールド等の支持体を含む。この支持体の少なくとも一つの表面上には被覆があり、該被覆は主成分として1種またはそれ以上の有機ポリマーを含む。例えば、特定の一態様においては、この被覆は、エチルヒドロキシエチルセルロース等のアルキルヒドロキシアルキルセルロースを含むことができる。
本発明のもう一つの態様によれば、透明支持体を含むフェースマスクの製法が開示される。この方法は、該透明な支持体の少なくとも一つの表面に、水性組成物を適用する工程を含む。該水性組成物は、水と1種またはそれ以上の水溶性有機ポリマーとの混合物を含む。この水性組成物を乾燥して、該透明な支持体上に、被覆を形成する。ここでは、該水溶性有機ポリマーが、該被覆の主成分を構成する。
本発明の他の特徴並びに局面を、以下においてより一層詳細に論じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の最良の態様を含む、当業者に向けられた、本発明の完全なおよびその実施を可能とする開示は、添付図面参照して、本明細書の残りの部分において、より具体的に示される。明細書および図面において反復的に使用される参照番号、文字は、本発明の同一のまたは類似の特徴または部品を表すことを意味する。
本発明の様々な態様を詳細に論及するが、その1またはそれ以上の実施例を以下に示す。各例は、本発明を説明するためのものであり、これを限定するものではない。実際に、当業者は、本発明の範囲並びに精神から逸脱すること無しに、本発明に対して、様々な改良並びに変更を行うことが可能であることを理解するであろう。例えば、一態様の一部として例示し、または説明した特長を、別の態様において利用して、更に別の態様を作ることができる。従って、本発明は、このような改良並びに変更をも、添付した特許請求の範囲およびその等価物に含まれるものとして、カバーするものである。
【0006】
一般に、本発明は、ぼやけおよびぎらつきを減じるための、被覆組成物を含む、フェースマスクを目的とする。例えば、一態様において、該フェースマスクは、フィルタ本体と共に使用するシールドまたはバイザーを含む。あるいはまた、このフェースマスクは、自立式のシールドまたはバイザーであり得る。該シールドまたはバイザーは、透明な材料で作ることができ、該透明材料は、本発明の被覆組成物を適用した少なくとも一つの表面を持つ。本発明の被覆組成物を適用した該透明材料は、様々な異なる材料で作ることができる。このような材料の例は、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;アリルジグリコールカーボネート;ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート;ポリスチレン;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;セルロースアセテートブチレート;ガラス;これらの組み合わせ等を含むが、これらに制限されない。特定の一態様において、該透明支持体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から作られる。この透明支持体は、材料のフィルム、シート、パネルまたはペーン(pane)等の形状であり得、また吹込み、注型、押出、射出成形等の任意の周知の方法により製造できる。
【0007】
本発明の被覆組成物は、1またはそれ以上の水溶性有機ポリマーを含む。本発明者等は、予想外のことに、このような水溶性有機ポリマーが、ぼやけおよびぎらつき両者を同時に減じるための、被覆組成物の主成分として使用できることを見出した。ぎらつきを最小化するために、該水溶性有機ポリマーは、該透明支持体の屈折率の二乗根に等しい公称屈折率を持つものとして選択できる。本発明の幾つかの態様において、該被覆の水溶性有機ポリマーは、1.0〜1.7なる範囲の、幾つかの態様では1.2〜1.4なる範囲、また幾つかの態様では1.25〜1.36なる範囲の平均の屈折率を持つことができる。これは、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリメチルメタクリレート支持体の屈折率の二乗根とほぼ等しい。屈折率1.7を有するポリエステルフィルム上に単一の被覆層を持つ場合、該被覆の理想的な屈折率は1.3であり、これはポリエステルフィルムの屈折率の比の二乗根に等しい。
所定の透明性、低下されたぼやけ、および低下されたぎらつきの達成を可能とする、様々な水溶性有機ポリマーの何れも、本発明において使用できる。例えば、本発明において適当であることが分かっている一群の水溶性有機ポリマーは、多糖類およびその誘導体である。多糖類は、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、および/または両性であり得る、繰返し炭水化物単位を含むポリマーである。一特定の態様において、例えば該多糖は、ノニオン性、カチオン性、アニオン性、および/または両性のセルロースエーテルである。
【0008】
ノニオン性のセルロースエーテルは、例えば当業者にとって公知の任意の方法、例えばアルカリセルロースとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとを反応させ、次いで塩化メチル、塩化エチル、および/または塩化プロピルと反応させることにより製造できる。ノニオン性のセルロースエーテルおよびこのようなエーテルの製法は、例えばLarsson等の米国特許第6,123,996号、Karlson等の米国特許第6,248,880号およびBostrom等の米国特許第6,639,066号に記載されている。これら特許の内容全体を、あらゆる目的に対して、本発明の参考としてここに組み入れる。ノニオン性セルロースエーテルの幾つかの適当な例は、水溶性アルキルセルロースエーテル、例えばメチルセルロースおよびエチルセルロース;ヒドロキシアルキルセルロースエーテル、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシブチルセルロースおよびヒドロキシエチルヒドロキシプロピルヒドロキシブチルセルロース;アルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテル、例えばメチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロースおよびメチルエチルヒドロキシプロピルセルロース等を含むが、これらに制限されない。本発明の被覆組成物において使用するための、好ましいノニオン性セルロースエーテルは、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースである。このような態様において、該ヒドロキシエチル基は、典型的に全ヒドロキシアルキル基数の、少なくとも30%を占め、またエチル置換基の数は、典型的に全アルキル置換基数の、少なくとも10%を占める。
【0009】
適当なノニオン性セルロースエーテルの一特定例は、0.8〜1.3なる範囲のエチル置換度(DS)および1.9〜2.9なる範囲のヒドロキシエチル基のモル置換度(MS)を有する、エチルヒドロキシエチルセルロースである。エチル置換度とは、反応している各アンヒドログルコース単位上に存在するヒドロキシル基の平均数を表し、これは0〜3なる範囲で変動し得る。モル置換度とは、各アンヒドログルコース単位と反応しているヒドロキシエチル基の平均数を表す。このようなエチルヒドロキシエチルセルロースは、約1.33なる屈折率を持ち、これは約140nmなる厚みで、ポリエチレンテレフタレート支持体(公称屈折率=1.64)に塗布された際に、ぎらつき防止表面を与えることができる。
上記の如く、カチオン性セルロースエーテルも、本発明において使用するのに適したものであり得る。適当なカチオン性セルロースエーテルは、四級アンモニウム変性セルロースエーテル、例えばラウロジモニウム(laurdimonium)ヒドロキシエチルセルロース、ステアロジモニウム(steardimonium)ヒドロキシエチルセルロース、およびココジモニウム(cocodimoniumu)ヒドロキシエチルセルロース、を含むことができ、これらはNJ州、パーシパニー(Parsipany)のクロダ社(Croda Inc.)から、夫々クロダセル(Crodacel) QL、クロダセルQSおよびクロダセルQMとして市販されている。他の適当なカチオン性セルロースエーテルは、例えばAlbacarys等の米国特許第6,338,855号に記載されている。この特許の内容全体を、あらゆる目的に対して、本発明の参考としてここに組み入れる。
【0010】
上記のようなセルロースエーテル以外にも、同様に様々な他の多糖類が、本発明において、水溶性有機ポリマーとして使用するのに適したものであり得る。例えば、ポリグルコサミンおよびその誘導体は、本発明において使用することのできる適当なもう一つの多糖類群を構成する。ポリグルコサアミン多糖の骨格における、アミン官能性を持つグルコースモノマー単位である。ポリグルコサアミンの幾つかの例は、キチン、キトサン、およびポリグルコサミノグリカンを含むが、これらに制限されず、これらはN-アセチルグルコサミンと、様々なグリカン糖、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン、ヘパリン、ケラタン、およびデルマタンとのコポリマーである。キトサンは、キチンの脱アセチル化によって得られるポリグルコサミンであり、またより具体的にはβ-1,4-グルコサミンとN-アセチル-β-1,4-グルコサミンとのランダムコポリマーである。通常は水不溶性であるが、キトサンは、多くの有機および無機酸と水溶性の塩を生成し、これらは本発明の被覆組成物において特に有用である。このような水溶性キトサン誘導体の幾つかの例は、アシルキトサン、カルボキシアルキルキトサン、カルボキシアシルキトサン、デオキシグリシット-1-イルキトサン、ヒドロキシアルキルキトサン、またはこれらの塩を含むが、これらに制限されない。特別な例は、キトサンのピロリドンカルボン酸塩(キトサンPCA)、キトサンのグリコール酸塩(キトサングリコレート)、キトサンの乳酸塩(キトサンラクテート)、およびキトサンのモノサクシンアミド(キトサンモノサクシンアミドまたはキトサニド)を含む。
【0011】
上記のような水溶性有機ポリマーを含む溶液の粘度は、一般に該溶液中の該ポリマーおよび/または他の成分の濃度に応じて変えることができる。例えば、殆どの態様において、水溶性有機ポリマーを含む溶液の粘度は、12rpm、20℃にて、B-型粘度計を用いて測定した値として、約5〜約10,000cpなる範囲、および幾つかの例においては約10〜約7,000cpなる範囲にある。この被覆組成物の適用を簡単化するために、より低い粘度が、しばしば望ましく、例えば約50〜約1,000cpなる範囲、および幾つかの例においては約150〜約350cpなる範囲であり得る。時として、該水溶性有機ポリマーを架橋して、取扱い上の目的で、および可溶化速度をより良好に調節するために、遅延された水和特性を与えることも可能である。例えば、グリオキサール等の架橋剤を、乾燥ポリマーの100質量部を基準として、約0.05〜約2質量部なる範囲の量で使用することができる。
【0012】
従って、本発明によれば、水溶性有機ポリマーは、優れた光学的特性を持つ被覆組成物を製造するために用いることができる。本発明者等は、予想外のことに、このような優れた光学的特性が、該組成物の主成分として、水溶性有機ポリマーを使用することによって達成できることを見出した。即ち、水溶性有機ポリマーは、上記の透明支持体上に存在する該被覆の、少なくとも約50質量%を占め、幾つかの態様では少なくとも約75質量%を占め、および幾つかの態様では少なくとも約90質量%を占める。特定の態様において、例えばエチルヒドロキシエチルセルロース等のノニオン性セルロースエーテルが、該透明支持体上に存在する該被覆の、該主成分を構成する。結局、得られる被覆は、簡単な、しかも効果的な方法で製造することができる。
【0013】
水溶性有機ポリマーを、主成分として使用できるが、様々な別の理由から、本発明の被覆組成物において、更に他の成分を使用することができる。例えば、Scholz等の米国特許第5,585,186号、Scholz等の米国特許第5,723,175号、Scholz等の米国特許第5,753,373号、Scholz等の米国特許第5,873,931号、Scholz等の米国特許第5,997,621号およびScholz等の米国特許第6,040,053号に記載されている、様々なこの種の成分(例えば、界面活性剤)を、本発明の被覆組成物において使用できる。これら特許の内容全体を、あらゆる目的に対して、本発明の参考としてここに組み入れる。しかし、これらを使用する場合、通常は、最適な相溶性およびコスト対効果を確保するために、これら成分の量を最小化することが望ましい。従って、例えば界面活性剤(ノニオン性、アニオン性、カチオン性および/または両性)は、該透明支持体上に存在する被覆内において、該被覆の約10質量%未満、幾つかの態様では約5質量%未満、および幾つかの態様では約1質量%未満なる量で含まれることが、通常は望ましい。
【0014】
様々なフィルム-加工助剤を使用して、該被覆を生成することも可能である。このようなフィルム-加工助剤の例は、該被覆それ自体への「ブロッキング」即ち粘着を防止する粒子である。これらの粒子は、ばらばらの粒子として、あるいはその凝集塊として、該被覆の表面から突出することによって、ブロッキングを阻止することができる。これらブロッキング防止用粒子の形状および/またはサイズは、一般的に変えることができる。典型的には、これらブロッキング防止用粒子は、該透明支持体上に存在する被覆内に、該被覆の約10質量%未満、幾つかの態様では約5質量%未満、および幾つかの態様では約1質量%未満なる量で含まれる。該ブロッキング防止用粒子は、板、ロッド、円盤、棒、チューブ、球、不規則形状等の形状であり得る。更に、該ブロッキング防止用粒子の粒径(直径)は、約0.1nm〜約1,000μmなる範囲、幾つかの態様では約0.1nm〜約100μmなる範囲、幾つかの態様では約1nm〜約10μmなる範囲であり得る。例えば、約1〜約1,000μmなる範囲、幾つかの態様では約1〜約100μmなる範囲、および幾つかの態様では約1〜約10μmなる範囲の平均粒径を持つ「微粒子」を使用することができる。同様に、約0.1nm〜約100nmなる範囲、幾つかの態様では約0.1nm〜約50nmなる範囲、幾つかの態様では約10nm〜約20nmなる範囲の平均粒径を持つ「ナノ粒子」を使用することも可能である。
【0015】
これらのブロッキング防止用粒子は、一般に該被覆の所定の光学的諸特性に、実質的に悪影響を与えない材料から作られる。適当なブロッキング防止粒子の幾つかの例は、無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銅等);有機粒子(例えば、ポリスチレン、コーンスターチ等);鉱物粒子(例えば、タルク)、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに制限されない。例えば、アルミナのナノ粒子を、幾つかの態様において使用することができる。幾つかの適当なアルミナのナノ粒子は、Ando等の米国特許第5,407,600号に記載されている。この特許の内容全体を、あらゆる目的に対して、本発明の参考としてここに組み入れる。更に、市販品として入手できるアルミナナノ粒子の例は、アルミナゾル(Aluminasol) 100、アルミナゾル200、およびアルミナゾル520を含み、これらはニッサンケミカルインダストリーズ社(Nissan Chemical Industries Ltd.)から入手できる。あるいはまた、他の態様では、シリカナノ粒子を使用することができ、その例は、同様にニッサンケミカル社から入手できる、スノーテックス(Snowtex)-C、スノーテックス-O、スノーテックス-PS、およびスノーテックス-OXS等である。例えば、スノーテックス-OXS粒子は、4〜6nmなる範囲の粒径を有し、乾燥して、約509m2/gなる表面積を持つ粉末とすることができる。また、TX州、ヒューストンのニッサンケミカルアメリカ社(Nissan Chemical America)から入手できるスノーテックス-AKまたはメリーランド州、コロンビアのグレースデービッドソン(Grace Davidson)社から入手できる、ルドックス(Ludox) CL粒子等のアルミナ-被覆シリカ粒子を使用することも可能である。
【0016】
該透明支持体へのこの被覆組成物の適用を容易にし、かつ最適の透明性を確保するために、この被覆組成物は、典型的には水性溶液として作られる。例えば、1種またはそれ以上の上記成分を、水と混合して、該透明支持体に適用可能な溶液を製造する。この溶液は、例えば少なくとも約75質量%の水、幾つかの態様では少なくとも約90質量%の水、および幾つかの態様では少なくとも約96質量%の水を含むことができる。この溶液に添加される該成分の量は、所定の厚み、使用する適用法の水分の取込み、および/または使用する他の成分の量に応じて変えることができる。例えば、この水性溶液における水溶性有機ポリマーの量は、一般に約0.01〜約5質量%なる範囲、幾つかの態様では約0.1〜約1質量%なる範囲、および幾つかの態様では約0.2〜約0.75質量%なる範囲にある。更に、ブロッキング防止粒子は、該水性溶液の、約0.001〜約0.5質量%なる範囲、幾つかの態様では約0.01〜約0.1質量%なる範囲、および幾つかの態様では約0.02〜約0.08質量%なる範囲の量を占める。界面活性剤等の他の成分は、同様に、該水性溶液の、約0.001〜約0.5質量%なる範囲、幾つかの態様では約0.01〜約0.1質量%なる範囲、および幾つかの態様では約0.02〜約0.08質量%なる範囲の量を占める。
【0017】
この水性溶液は、バー、ロール、ナイフ、カーテン、印刷(例えば、グラビア印刷)、噴霧、スロットダイ、または浸漬被覆技術等の任意の公知の技術を使用して、該透明支持体に適用できる。多数の表面にこの被覆を適用する場合、各表面は、継続的にまたは同時に被覆することができる。該透明支持体の均一な被覆およびその湿潤を保証するために、該支持体を被覆する前に、コロナ放電、オゾン、プラズマ、または火炎処理法を利用して、酸化することができる。幾つかの態様において、該透明支持体を前処理に付して、該支持体への該被覆組成物の均一な適用を容易にすることができる。例えば、一態様においては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)またはポリ塩化ビニル(PVC)等のプライマーを、該透明支持体に適用する。典型的には、このプライマーは、該透明支持体の光学的諸特性に実質的な影響を与えない。
【0018】
得られる被覆の平均の厚みは、ぎらつきを最小化するように選択できる。具体的には、入射光の1/4波長に等しい厚みの、単一層の光学的被覆が、相互の面から180度ずれている、空気-被覆界面および被覆-支持体界面からの反射をもたらし、結果として破壊的な干渉を引き起こし、また全体としての反射率を低下することが知られている。このように、入射可視光の波長が、約200〜1000nmなる範囲にあるので、本発明の被覆の平均の厚みは、典型的に約50〜250nmなる範囲にある。更に、550nmなる波長が、ヒトの目が、ピークのフォトオプチック(photo-optic)応答を示す波長であるから、被覆の平均の厚みは、好ましくは約140nmである。しかし、本発明の被覆は、単一の層に制限されず、多層の被覆をも含むことができるものと理解すべきである。例えば、当業者は、2層を使用することができ、様々な波長を持つ光の反射を最小化し、光の広いスペクトル範囲に渡り、ぎらつき防止特性を更に高めるように、該層の各々を、屈折率および厚みにおいて最適化することができる。更に、この被覆の平均の厚みは、均一であることが望ましいが、実際の被覆の厚みは、該被覆の特定の一点と他の点とで、大幅に異なる可能性がある。視覚的に明白な領域について相関させた場合、このような厚みにおける変動は、該被覆の広帯域に渡る反射防止特性に寄与するために、実際上は有利であり得る。
【0019】
本発明の被覆組成物は、該支持体の透明な表面の一方または両者に適用することができる。フェースマスクにおいて使用した場合、該被覆は、一般に、少なくともその着用者に面する、該透明支持体の表面上に存在する。更に、この被覆は、該透明支持体の全表面を覆っていても良く、あるいは該表面の一部、例えば顔面シールドの目に最も近接する部分のみを覆うものであっても良い。この被覆した支持体を、乾燥して該被覆から水分を除去する。例えば、この被覆した支持体を、約20〜約150℃なる範囲、幾つかの態様では約50〜約120℃なる範囲、および幾つかの態様では約100〜約110℃なる範囲の温度の、オーブン内で乾燥することができる。乾燥後に、該水溶性有機ポリマーは、該被覆の少なくとも約50質量%、幾つかの態様では少なくとも約75質量%、および幾つかの態様では少なくとも約90質量%を占める。
【0020】
上記の如く、本発明の被覆組成物は、本発明において示したような方法で、透明な支持体に適用した場合に、ぼやけおよびぎらつきを減じる。このぼやけ防止特性は、該被覆の、透明性を大幅に低下するであろう、水滴の生成に対して抵抗する傾向によって、説明される。例えば、ヒトの呼吸に起因する水蒸気は、水滴というよりも寧ろ、薄い均一な厚みを持つ水のフィルムとして、該被覆された支持体上に凝縮する傾向がある。このような均一なフィルムは、該支持体の明澄性または透明性を、大幅に低下することは無い。同様に、ぎらつきにおける減少は、該被覆された支持体の光透過および曇りを通して認識できる。被覆された支持体の光透過は、光の入射角およびその波長に依存し、また「透明プラスチックの曇りおよび視感透過率(Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)」と題する、ASTM D1003を用いて測定される。この文献の内容全体を、あらゆる目的に対して、本発明の参考としてここに組み入れる。光透過における増加は、ぎらつきの対応する減少を明らかにする。本発明の殆どの態様において、該被覆された支持体は、550nmなる波長において、未被覆の支持体と比較した場合に、約3%を越える、幾つかの態様では約5%を越える、および幾つかの態様では約8%を越える垂直な入射光の透過率における増加を示す。
【0021】
更に、曇りは、ある物質内の、光の広角散乱の測定値である。曇りは、「透明プラスチックの曇りおよび視感透過率(Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)」と題する、ASTM D1003-61の手順Aを用いて、BYKガードナー(Gardner)「ヘイズガードプラス(Haze Gard Plus)」装置(MD州、コロンビアのBYK-ガードナー(BYK-Gardner) USA)を使用して測定することができる。この文献の内容全体を、あらゆる目的に対して、本発明の参考としてここに組み入れる。曇りは、検体を透過する際に、平均25度を越えて、該入射ビームからずれる、透過光の割合(%)として定義される。曇りは、一般に検体の「乳濁」、あるいは逆にその損失量を意味する。該被覆支持体および未被覆の支持体に関する曇りの割合における差として表される、曇りの差に関する負の値は、曇りの減少を表す。本発明の殆どの態様において、曇りの差は、0%未満、幾つかの態様では約-1%〜約-0.001%なる範囲、および幾つかの態様では約-0.5%〜約-0.01%なる範囲にある。
【0022】
上記のように、本発明の被覆した透明な支持体は、フェースマスクにおいて特に有用である。この点に関連して、該被覆した透明な支持体を含むことのできるフェースマスクの様々な態様を、以下により詳細に説明する。例えば、図1を参照すると、このようなフェースマスク20の一態様が図示されており、これはフィルタ本体32に取付けられた、バイザー30を含む。このバイザー30は、液体の噴霧または跳返りから、着用者22の目および顔面の他の部分を保護するように設計されている。一対のイアーループ(ear loop) 36(図1にはその一つだけを示した)が、着用者22の鼻および口上に該フェースマスク20を固定して使用するために、フィルタ本体32の各対向する端部40に取付けられている。所望により、外科用のタイまたはヘッドバンドで、該イアーループ36を置き換えることもできる。
【0023】
一態様において、バイザー30は、上記したもの等の透明支持体から作られ、また該フィルタ本体32の幅全体に渡り、また着用者22の両目に広がるような寸法に合わせて作られている。該バイザー30の厚みは、つぶれを防止するのに十分な剛性を持ち、屈曲可能とするのに十分可撓性であるように、変えることができる。幾つかの態様では、該バイザー30の厚みは、約0.001〜約1mmなる範囲、幾つかの態様では約0.01〜約0.5mmなる範囲、および幾つかの態様では約0.1〜約0.2mmなる範囲にある。特定の一態様において、該バイザー30は、ポリエチレンテレフタレート(PET)から作られ、また約0.114mmなる厚みを持つ。所望により、該フェースマスク20に本発明の被覆組成物を配合する前におよび/またはその後に、該被覆組成物を、該バイザー30の1またはそれ以上の表面に適用することができる。該バイザー30に適用した場合に、得られた被覆は、着用者22によって吐出される空気による、該バイザー30のぼやけを防止することができる。この被覆は、また着用者22に対して目の緊張および疲労をもたらす恐れのある、該バイザー30由来のぎらつきを最小化することができる。多くの外科的手順およびクリーンルームでの技術に対して、フェースマスクからのぎらつきは、接眼レンズ(図示せず)を備えた科学的装置、例えば顕微鏡および内視鏡、または精密装置のレーザー視野(laser sight)による作業を妨害する恐れがある。
【0024】
上記のように、該フェースマスク20は、また該バイザー30に取付けられたフィルタ本体32を含む。このフィルタ本体32は、着用者22の鼻および口への液体の流れを遅延するように設計されている。該フィルタ本体32は、当業者には公知の任意の方法で作ることができる。例えば、図1に示した態様では、該フィルタ本体32は、部分的に上部端部24、対向する2つの端部40(図1にはその一つだけを示した)および下端部44によって画成された、一般的に矩形の形状を持つ。該フィルタ本体32は、また多数のプリーツ34を有し、これにより着用者22の鼻および口が効果的に覆われる。該フィルタ本体32は、外側表面46および内側表面(図示せず)を含む。該プリーツ34は、該フィルタ本体32が、外に向かってフイゴ状に膨らむことを可能とし、また該本体が着用者22の一般的な輪郭と容易に一致するようになっている。該プリーツ34は、該フィルタ本体32の周辺と着用者22の顔面の隣接部分との間に形成される流体封止を弱めること無しに、相互に協働して、該フィルタ本体32が、着用者22の呼吸動作中に、膨張収縮することを可能としている。有害な細菌および化学物質との高い関連性により、フェースマスクの着用者は、特にフェースマスクの周辺と着用者の顔面の隣接部分との間の、あらゆる流体接続を阻止することに関心がある。
【0025】
当業者は理解するであろうが、該フィルタ本体32は、様々な異なる材料の何れから作ることもでき、また任意の数の所定の層を含むことができる。例えば、一態様において、該フィルタ本体32は、4つの別々の層を含む。例えば、該フィルタ本体32の外側表面46を画成する最外層は、セルロース繊維を含むカバーストック(cover stock)層であり得る。このカバーストック層を、例えば液状の忌避剤により化学的に被覆または処理して、該カバーストック層を耐液体性とすることができる。このカバーストック層に隣接して、フィルタ層を配置することができる。このフィルタ層は、例えば不織りウエブまたは積層体を含むことができる。該フィルタ層は、何れの方向に対しても、空気搬送性の細菌の通過を阻害する。
【0026】
バリア層を、このフィルタ層と隣接して配置することができる。このようなバリア材料の一例は、低密度ポリエチレンである。このバリア層は、比較的高い表面張力を持つ液体の通過を阻止するが、依然として低い表面張力を持つガスおよび蒸気の通過を可能とする。このバリア層は、何れの方向にもガスが自由に流通でき、一方で液体の通過は一方向のみに制限するように設計されている。この多孔質のバリアは、悪臭を放つ蒸気を吸収し、あるいはこれと反応して、蒸気の透過に対して幾分かの制限を課する、化合物を含むことができる。このカバーストックおよびフィルタ層は、該フィルタ本体32において跳返り、噴霧され、または噴射されたあらゆる液体を、遅延させることによって、該バリア層の機能を援助する。該液体は、該バリア材料34に到達する前に、これら2つの外側層を通過する必要があるために、より低い圧を有し、そのため該バリア材料34は、該液体の通過をより一層良好に阻止できるであろう。着用者22の顔面近傍の最内層は、軽量かつ高い多孔率の不織布で作ることができる。この最内層は、望ましからぬ材料、例えば顔面の毛、ばらばらの繊維、汗の玉等の他の層との接触を阻止するように設計されており、該フィルタ本体32を介して液体を弾くことができる。この最内層は、また該着用者の顔面と接触するための、快適な表面をも与える。
【0027】
以上、様々な構成を説明してきたが、本発明は、如何なる特定のフェースマスクまたはバイザー構成に限定されるものと考えるべきではない。例えば、一態様において、該フェースマスクは、完全に透明な物質から作ることができ(しばしば、自立式の「顔面シールド」と呼ばれる)、その少なくとも一部には、本発明の被覆組成物が適用されている。フェースマスクを製造するのに使用する様々な他の構成および材料(そこで使用されるバイザーおよびフィルタ本体を含む)は、Elsbergの米国特許第6,664,314号、Blackstock等の同第6,427,693号、Bowenの同第6,257,235号、Reese等の同第6,213,125号、Brunson等の同第6,055,982号、Reader等の同第5,883,026号、Baird等の同第5,813,398号、Brunsonの同第5,765,556号、Brunson等の同第5,724,964号、Hubbard等の同第5,704,349号、Reese等の同第5,699,792号、Carlson, IIの同第5,561,863号、Hubbard等の同第5,150,703号、Hubbard等の同第5,020,533号、Hubbard等の同第4,969,457号、Grier-Idrisの同第4,662,005号、Singerの同第4,589,408号、およびHubbard等のD327,141号に記載されている。これら特許の内容全体を、あらゆる目的に対して、本発明の参考としてここに組み入れる。
【実施例】
【0028】
以下の実施例を参照することにより、本発明を、より一層良く理解することができるであろう。
テスト法
これらの実施例においては、以下のテスト法を利用する。
被覆厚み:被覆の厚みは原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した。この顕微鏡は、本質的に極めて高い空間解像度を持つ、機械的プロフィール測定(mechanical profilometry)技術である。該被覆表面を、針または他の鋭敏な尖った表面によって、極めて軽度に掻取る。この掻取りは、硬質のポリマーまたはガラス支持体の、下部表面に損傷を与えること無しに、比較的軟質の脆い被覆を取出す。次いで該AFMを使用して、該掻取り部分端部のプロフィールを決定し、該被覆表面と該支持体表面との間の高さにおける差を、測定することができる。あるいはまた、この測定は、一貫性の無い高さに関するデータのヒストグラムから、行うことができ、この方法は、両表面における構造上の変動を平均化できるという利点を持つ。高アスペクト比のチップ(例えば、パークインスツルメンツウルトラレバー(Park Instruments Ultralever))を、「接触」イメージモードにおいて使用する。この原子間力技術は、最大約10μm乃至1nm未満までの、高さにおける変動の測定を可能とする。測定点は、取り付けた光学顕微鏡において観測された光学的な干渉によって選択することができる。干渉色はニュートン系列に従い、この被覆の最も薄い領域および最も厚い領域を局在化し、任意の単一のサンプルにおける被覆厚みの、全範囲および変動性を評価するのに使用できる。
【0029】
ぼやけ:ぼやけは、口から約2.54cm(1インチ)の位置に保持されたフィルムに、直接呼気を吹き付けることにより評価した。ぼやけは、本来的に、(i) 該フィルムのぼやけが観測されない場合には「優良」、(ii) ぼやけが観測されるが、2秒以内に散逸する場合には「良」、(iii) ぼやけが2秒を越えて持続する場合には「不可」と判定した。優良または良である場合、該被覆は、「ぼやけ防止」特性を持つものとした。
ぎらつき:ぎらつきは、該支持体を透過する光の割合(%)を測定することによって評価する。光透過の割合(%)は、光の入射角およびその波長に依存する。光の透過率は、可視光のほぼ中央に位置する、波長500nmの光を用いて測定し、また「透明プラスチックの曇りおよび視感透過率(Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)」と題する、ASTM D1003-92を用いて、BYKガードナー(Gardner)「ヘイズガードプラス(Haze Gard Plus)」装置(MD州、コロンビアのBYK-ガードナー(BYK-Gardner) USA)を使用して測定する。より高い光透過率値が、より低いぎらつき度に相当する。
曇り:曇りは、ある材料内の広角散乱光の測定値である。この曇りは、「透明プラスチックの曇りおよび視感透過率(Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics)」と題する、ASTM D1003-61の手順Aを用いて、BYKガードナー(Gardner)「ヘイズガードプラス(Haze Gard Plus)」装置(MD州、コロンビアのBYK-ガードナー(BYK-Gardner) USA)を使用して測定した。
【0030】
実施例1
本発明の被覆組成物による、ぼやけおよびぎらつきの阻害作用を明らかにした。被覆組成物は、様々な異なる水溶性の有機ポリマーから製造した。このような水溶性有機ポリマーの一つは、ベルモコル(Bermocoll) E230FQであったが、これはコネチカット州スタンフォードのアクゾノーベル(Akzo Nobel)社から市販品として入手できる、エチルヒドロキシエチルセルロースである。もう一つの水溶性有機ポリマーは、ハイダゲン(Hydagen) CMFであったが、これはペンシルバニア州アンブラー(Ambler)のコグニス社(Cognis Corporation)から市販品として入手できるキトサングリコレートである。もう一つの水溶性有機ポリマーは、クロダセル(Crodacel) QMであったが、これはNJ州パーシパニーのクロダ社(Croda, Inc.)から入手できるPG-ヒドロキシエチルセルロースココジモニウム、四級アンモニウムセルロース塩である。最後に、他の水溶性有機ポリマーは、クルセル(Klucel) EFであったが、これはデラウエア州ウイルミントンのハーキュルス社(Hercules, Inc.)から市販品として入手できるヒドロキシプロピルセルロースである。
各被覆組成物中の成分の活性の割合(%)を、以下の表1に示す。
【0031】
(表1)サンプル1〜23の活性割合(Wt%)

【0032】
水溶性有機ポリマー以外に、上記サンプルの幾つかは、他の成分をも含んでいた。例えば、サンプル10、13-16、18、20、および22-23は、1種以上の界面活性剤を含んでいた。具体的には、サンプル10は、0.20質量%のグルコポン(Glucopon) 220UPを含んでいたが、これはコグニス社から入手できるアルキルポリグリコシドである。サンプル13は、0.46質量%のナトリウムココイルグルタメート(ハンプシャーケミカルズ(Hampshire Chemicals)社から入手できるアニオン性界面活性剤)を使用した。サンプル14は、0.46質量%のナトリウムココイルグルタメート(ハンプシャーケミカルズ社製)および0.44質量%のラウリルエチレンジアミントリアセテートのナトリウム塩(NaLED3A)(ハンプシャーケミカルズ社から入手できるキレート生成界面活性剤)を使用した。サンプル15は、0.43質量%のナトリウムココイルグルタメート(ハンプシャーケミカルズ社製)を使用した。サンプル16は、0.47質量%のナトリウムココイルグルタメート(ハンプシャーケミカルズ社製)を使用した。サンプル18は、0.30質量%のトリエタノールアミンココイルグルタメート(ハンプシャーケミカルズ社から入手できるアニオン性界面活性剤)および0.41質量%のNaLED3A(ハンプシャーケミカルズ社製)を使用した。サンプル20は、0.29質量%のシュガカット(Sugaquat) S-1210を含んでいたが、これはテネシー州サウスピッツバーグのコロニアルケミカル社(Colonial Chemical, Inc.)から市販品として入手できるC18四級アンモニウム基ジ置換されたC18ポリグリコシドである。最後に、サンプル22-23は、各々0.06質量%のシュガカットS-1210(コロニアルケミカル社製)を含んでいた。
【0033】
更に、サンプル3-4、6、11、19、および23は、スノーテックス-AK粒子を含んでいたが、これはTX州、ヒューストンのニッサンケミカル工業社から市販品として入手できるコロイド状アルミナ-被覆シリカ粒子である。同様にサンプル15は、ナルコ(Nalco) 2326粒子を含んでいたが、これはイリノイ州ナパービルのオンデオナルコ社(Ondeo Nalco Co.)から市販品として入手できるコロイド状シリカ粒子である。更に、サンプル11は、ゼラチン、即ちブタ皮膚由来のタイプAゼラチンを含んでいたが、これはウイスコンシン州ミルウォーキーのシグマ-アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Co.)から市販品として入手できる。また、サンプル3および6は、イソプロピルアルコール溶媒を含んでいたが、これはシグマ-アルドリッチ社から市販品として入手できる。最後に、サンプル17は、AEM 5772を含んでいたが、これはオルガノシランカット、即ち3-(トリメトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、およびメタノールを含む抗菌活性物質であり、またミシガン州ミッドランドのエジスエンバイロンメンツ社(Aegis Environments Co.) から市販品として入手できる。
【0034】
これらの被覆組成物を、「メリネックス(MelinexTM) 516」なる名称の下に、デラウエア、ウイルミントンのデュポン(DuPont)社から得られる透明ポリエステルフィルムに適用した。このポリエステルフィルムの一方の表面のみに、および該ポリエステルフィルムの両方の表面に、該被覆組成物を適用したサンプルを製造した。該被覆を適用するために、各組成物の成分を、先ず脱イオン水中に分散させた。得られた分散液を、45℃未満の温度(または周囲温度)にて、十分に混合した。この混合は、透明な溶液が得られるまで行った。該ポリエステルフィルムの被覆は、メイヤー(Mayer)ロッドで該フィルム上に、該溶液を展開することによって行った。この被覆の厚みは、該メイヤーロッドの溝の大きさにより調節した。被覆の厚みは、乾燥した塗布フィルムが、青/紫の色相を生じるように設定した。乾燥は、熱風対流式オーブン内で、110℃にて約1分間行った。被覆は、継続的に即ち一度に一方の側に適用した。
一旦被覆した後、得られた各サンプルについて、ぼやけ特性、光透過率、および曇り度における差を測定した。幾つかの例においては、単一の組成について、複数のサンプルをテストし、該サンプルに関する平均を報告した。複数の未被覆のサンプル(コントロール)をも、比較の目的でテストした。得られた結果を、以下の表2および3に示すが、そこで表2は、一方の側のみに被覆を有するサンプルに関する結果を示し、また表3は、各側面を被覆したサンプルに関する結果を与える。








【0035】
(表2)一方の側を被覆したサンプルの特性

【0036】
(表3)2側面を被覆したサンプルの特性

【0037】
コントロールサンプルの何れも、ぼやけ防止特性をもつものとは決定されなかった。更に、該コントロールサンプルの光透過率は、一般に本発明に従って製造したサンプルの光透過率よりも低かった。従って、上記のように、本発明の被覆組成物は、該コントロールサンプルと比較して、低いぼやけ性およびぎらつき性を達成した。
以上本発明を、特定の態様に関連して詳細に記載してきたが、当業者が以上のことを理解するに際して、これら態様に関する変更、別法、および等価なものを容易に思い付くことができるものと理解されよう。従って、本発明の範囲は添付した特許請求の範囲およびそのあらゆる等価なものであると評価されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一態様に従って製造できる、フェースマスクを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0039】
20・・・フェースマスク
22・・・着用者
24・・・上部端部
30・・・バイザー
32・・・フィルタ本体
34・・・プリーツ
36・・・イアーループ
40・・・フィルタ本体の各対向する端部
44・・・下端部
46・・・外側表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体を含むフェースマスクであって、該支持体の少なくとも一つの表面上に、主成分として、1種またはそれ以上の有機ポリマーを含む被覆が存在することを特徴とする、上記フェースマスク。
【請求項2】
該支持体が透明である、請求項1記載のフェースマスク。
【請求項3】
透明な支持体を含むフェースマスクの製法であって、
該透明な支持体の少なくとも一つの表面に水性組成物を適用する工程、ここで該水性組成物は、水と1種またはそれ以上の水溶性有機ポリマーとの混合物を含み;
該水性組成物を乾燥して、該透明な支持体上に被覆を形成する工程を含み、該1種またはそれ以上の水溶性有機ポリマーが、該被覆の主成分を構成していることを特徴とする、上記方法。
【請求項4】
該1種またはそれ以上の有機ポリマーが、該被覆の少なくとも約50質量%を占め、好ましくは該被覆の少なくとも約75質量%を占め、および好ましくは該被覆の少なくとも約90質量%を占める、請求項1〜3のいずれか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項5】
該被覆が、約50〜約250nmなる範囲の厚みを持つ、請求項1〜4の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項6】
該1種またはそれ以上の有機ポリマーが、多糖またはその誘導体を含む、請求項1〜5の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項7】
該1種またはそれ以上の有機ポリマーが、ポリグルコサミンまたはその誘導体を含む、請求項1〜6の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項8】
該1種またはそれ以上の有機ポリマーが、キトサンまたはキトサン誘導体を含む、請求項1〜7の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項9】
該1種またはそれ以上の有機ポリマーが、セルロースエーテルを含む、請求項1〜8の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項10】
該セルロースエーテルが、ノニオン性である、請求項9記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項11】
該ノニオン性セルロースエーテルが、アルキルセルロースエーテル、ヒドロキシアルキルセルロースエーテル、アルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテル、およびこれらの組合わせからなる群から選択される、請求項10記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項12】
該ノニオン性セルロースエーテルが、アルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテルを含む、請求項11記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項13】
該ノニオン性セルロースエーテルが、エチルヒドロキシエチルセルロースを含む、請求項12記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項14】
該セルロースエーテルがカチオン性である、請求項9記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項15】
該セルロースエーテルが、四級アンモニウム基で変性されている、請求項14記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項16】
該被覆が、1.0〜1.7なる範囲、好ましくは1.2〜1.4なる範囲、および好ましくは1.25〜1.36なる範囲の屈折率をもつ、少なくとも1種の有機ポリマーを含む、請求項1〜15の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項17】
該被覆が、約10質量%未満の界面活性剤、および好ましくは約1質量%未満の界面活性剤を含む、請求項1〜16の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項18】
該被覆された支持体が、未被覆の支持体と比較して、約3%を越える、好ましくは約5%を超える、および好ましくは約8%を越える、垂直な入射光の透過率を示す、請求項1〜17の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項19】
未被覆の支持体の曇り度を差引いた、該被覆された支持体の曇り度が、0%未満である、請求項1〜18の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。
【請求項20】
該被覆された支持体が、該フェースマスクのバイザーまたはシールドを形成する、請求項1〜19の何れか1項記載のフェースマスクまたは方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−522350(P2007−522350A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545316(P2006−545316)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018876
【国際公開番号】WO2005/067753
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】