説明

防水型ケーブルハーネス、及びそれを用いた防水型電子機器

【課題】携帯電話やPDAなどの小型電子機器本体と液晶ディスプレイ間の信号伝送に使用される電気特性、機械特性、耐水性、耐溶剤に優れる防水型ケーブルハーネス、及びそれを用いた防水型電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係る防水型ケーブルハーネスは、複数の電線からなる電線群と、該電線群の周囲に配された保護層と、前記電線群の両端に設けられた接続端末と、前記保護層上に設けられた防水部材とを備えた防水型ケーブルハーネスであって、前記防水部材は、円筒形状のモールドと、該モールド上に配設された防水パッキンとから形成され、前記モールドの内面と前記保護層の間に熱融着部が形成され、前記モールドと前記保護層とが一体整形されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性能が優れ、耐屈曲性能が優れ且つ耐ノイズ特性が優れた機器の開閉・捻回を伴う狭い部分で使用される防水型ケーブルハーネス、及びそれを用いた防水型電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防水型携帯電話では、本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送用配線材にFPC(Flexible Printed Circuit、フレキシブルプリント回路)がよく使われている。これは、FPCはフィルム状であるので防水パッキン構造にしやすいためである。
【0003】
防水型携帯電話においては、従来の折りたたみ式に加えて、最近では折りたたみ開閉+捻回タイプも登場してきている。
【0004】
この折りたたみ開閉+捻回タイプの防水型携帯電話では、FPCを用いた防水方式では、携帯電話の高機能化が進められないという問題がある。これは、FPCを用いた防水構造の場合、フィルム状のFPCは丸めてヒンジに通すことが不可能であるため、ヒンジの周りにFPCを螺旋状に巻いた状態でパッケージングされるが、捻回の際には、防水部捻回部分での信号のインピーダンス不整合等により電気特性が不安定となり、またEMI特性が劣化するなどの問題が生じるためである。
【0005】
当該FPCを用いた防水方式の問題点を解消し、折りたたみ開閉+捻回タイプの携帯電話の高機能化を進めるための手段として、本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送に複数の電線から構成されるケーブルを用い、該ケーブルと本体との接続部、ならびに該ケーブルと液晶ディスプレイとの接続部に防水措置を施す方法が考えられる。
【0006】
例えば、特許文献1には、ケーブルにOリングを直接取り付け、該Oリングを押圧手段により変形させて防水性を得るケーブル導入口の防水装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−287347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の方法は、最近の防水型携帯電話のように、折りたたみ開閉と捻回との双方の動作がなされる機器の防水措置としては、以下の理由により不充分である。
【0009】
本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送に複数の電線から構成されるケーブルを用いる場合、電線が機器と直接接触して摺動運動によりダメージを受けるのを防止するため、電線の周囲に保護層を設ける必要がある。そして、当該ケーブルは、折りたたみ開閉と捻回との双方の動作が作用する、本体と液晶ディスプレイとの接続部で使用されるため、当該保護層は柔らかい材質で構成されなければならない。
【0010】
このようなケーブルに、特許文献1に記載の方法で防水措置を施した場合、柔らかい材質で構成される保護層に直接Oリングを取り付ける構成となる。しかし、保護層は柔らかい材質で構成されており、屈曲および捻回動作時に変形し易く、このような場合に保護層とOリングとの間に隙間が生じ、防水性が得られなくなってしまう。
【0011】
さらに、屈曲および捻回動作時の保護層の変形により、Oリングと保護層との間に隙間が発生することを防ぐため、Oリングと保護層とを接着剤等で接合する構成では、接着剤が経時劣化する恐れがあり、防水性の長期信頼性が問題となる。
【0012】
最近の防水型携帯電話のように、折りたたみ開閉と捻回との双方の動作がなされる機器の高機能化を進め、更に機器に充分な防水性能を付与するためには、FPCと比較して折りたたみ開閉と捻回により電気特性に影響が生じにくいケーブルに、折りたたみ開閉による屈曲動作および捻回動作に耐え得る防水措置を施す必要がある。
【0013】
上記課題に鑑み、本発明は、携帯電話やPDAなどの小型電子機器本体と液晶ディスプレイ間の信号伝送に使用される電気特性、機械特性、耐水性、耐溶剤に優れる防水型ケーブルハーネス、及びそれを用いた防水型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、
複数の電線からなる電線群と、該電線群の周囲に配された保護層と、
前記電線群の両端に設けられた接続端末と、前記保護層上に設けられた防水部材と、
を備えた防水型ケーブルハーネスであって、
前記防水部材は、円筒形状のモールドと、該モールド上に配設された防水パッキンとから形成され、
前記モールドの内面と前記保護層の間に熱融着部が形成され、前記モールドと前記保護層とが一体整形されていること
を特徴とする防水型ケーブルハーネスを提供する。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、
複数の電線からなる電線群と、該電線群の周囲に配された保護層と、
前記電線群の両端に設けられた接続端末と、前記保護層上に設けられた防水部材と、
を備えた防水型ケーブルハーネスであって、
前記防水部材は、円筒形状のモールドと、該モールド上に配設された防水パッキンとから形成され、
前記ケーブルが前記モールドに強制的に挿入されたことにより、該モールドが前記保護層に一体的に固設されていること
を特徴とする防水型ケーブルハーネスを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記保護層はポリエーテルタイプのポリウレタン樹脂であり、前記モールドはポリエチレン系ゴム又はエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする防水型ケーブルハーネスを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記防水型ケーブルハーネスを防水型電子機器の本体とディスプレイ間の信号伝送用ケーブルとして用いたことを特徴とする防水型電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、携帯電話やPDAなど小型電子機器本体と液晶ディスプレイ間の信号伝送に使用される電気特性、機械特性、耐水性、耐溶剤に優れる防水型ケーブルハーネス、及びそれを用いた防水型電子機器が得られる。
【0019】
これにより、携帯電話やPDAなどの小型電子機器の防水性能を維持しつつ、高機能化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る多芯線の横断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多芯ケーブルの横断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る防水型ケーブルハーネスを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る防水部材の構成を示す図である。
【図5】本発明で実施した屈曲試験の方法を示す図である。
【図6】本発明で実施した捻回試験の方法を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る同軸線の横断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る同軸ケーブルの横断面図である。
【図9】同軸ケーブルを用いた防水型ケーブルハーネスの構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る、横巻シールドを備えた同軸ケーブルの横断面図である。
【図11】横巻シールドを備えた同軸ケーブルを用いた防水型ケーブルハーネスの構成を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る防水部材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
[第1の実施の形態]
【0022】
本発明の実施の形態に係る電線である多芯線の横断面図を図1に示す。図1に示す多芯線1は、導線10と、フッ素樹脂スキン層13と、外部導体14と、ふっ素樹脂ジャケット15とから構成される。導線10は、銅合金線11の外周にふっ素樹脂12を被覆して構成される。銅合金線11は、複数の銅合金線が撚り合わされて構成される。
【0023】
多芯線1は4本の導線10が撚り合わされて、すなわち4心で構成される。このように4心で撚り合わされた導線10の外周にフッ素樹脂スキン層13が被覆され、フッ素樹脂スキン層13の外周に外部導体14が備えられ、外部導体14の外周にふっ素樹脂ジャケット15が被覆される。
【0024】
本発明の実施の形態に係るケーブルである多芯ケーブルの横断面図を図2に示す。図2に示す多芯ケーブル2は、多芯線1と、PTFEテープ21と、保護層22とから構成される。
【0025】
多芯ケーブル2においては、多芯線1が複数本、PTFEテープ21により束ねられて電線群が構成され、該電線群の外周、すなわちPTFEテープ21の外周に保護層22が配され、屈曲運動部分において電線の断線を防止している。
【0026】
図2に示す多芯ケーブル2では、電線群は10本の多芯線1から構成されている。本発明の実施の形態としては、電線群を構成する多芯線1の数は、通常携帯電話に用いる極数を考慮して8本から18本とすることが望ましい。
【0027】
本実施の形態において、保護層22はポリウレタン樹脂から構成される。ここで、保護層22を構成するポリウレタン樹脂は、耐寒性、耐水性、耐溶剤、耐薬品性などを考慮し、構造上加水分解しないポリエーテルタイプが望ましい。
【0028】
また、ポリエーテルタイプのウレタン樹脂は、ゴム弾性と機械的性質、耐摩耗性に優れているため、携帯電話の折りたたみ式開閉部でのヒンジ部で30万回以上の繰り返し曲げと捻りにも傷がつきにくく、電線群にも外部からの衝撃や座屈などのダメージを与えない。
【0029】
また、ポリエーテルタイプのウレタン樹脂は、構造上加水分解を起こさないため、耐水性、耐溶剤(洗剤など)、耐薬品性に優れており、防水用途としては実用特性を満足する。
【0030】
更にポリエーテルタイプのウレタン樹脂は、耐寒性に優れており、−40℃の低温でも硬くならず、ゴム弾性を維持できるので、低温環境下においても電線群へ座屈などのダメージを与えない。
【0031】
本実施の形態における多芯ケーブル2の直径は、携帯電話の折りたたみ式開閉部でのヒンジ部に通すことを考慮すると3.5mm以下が望ましい。
【0032】
また、多芯ケーブル2に配される保護層22の厚さは、携帯電話の狭いヒンジ部を通さなければならないこと、繰り返し捻りを受けることなどから0.20〜0.35mmが望ましい。
【0033】
本発明の他の実施の形態として、保護層22には、シリコーン樹脂を用いることもできる。
【0034】
シリコーン樹脂は、耐寒性、耐水性、耐溶剤、耐薬品性に優れており、特に耐熱性に優れているため、80℃以上の高温でも保護層の物性は劣化しないという特徴がある。また、シリコーン樹脂は弾性に優れ、携帯電話のヒンジ部で30万回以上の繰り返し曲げと捻りに耐えることができる。
【0035】
シリコーン樹脂は擦れなどの傷に対して、ウレタン樹脂より弱いので、保護層22にシリコーン樹脂を用いる場合には少し厚くする必要がある。シリコーン樹脂を保護層22に用いる場合、その厚さは0.25〜0.35mmが望ましい。
【0036】
本発明の実施の形態に係る防水型ケーブルハーネスを図3に示す。図3に示す防水型ケーブルハーネス61は、多芯ケーブル2と、防水部材5、5と、接続端末であるコネクタ6、6とから構成される。
【0037】
防水型ケーブルハーネス61においては、防水部材5、5を備える保護層22の両端部において、多芯ケーブル2を構成する複数の多芯線1が各々所定の長さ分だけ露出し、分離される。該分離された多芯線1は、それぞれコネクタ6、6と電気的に接続される。
【0038】
本実施の形態に係る防水部材5の構成を図4に示す。本実施の形態における防水部材5は、モールド51と、防水パッキンであるOリング58とから構成される。モールド51は、ポリエチレンゴム系又はエンジニアリングプラスチック系の素材で構成される。
【0039】
図4に示す円筒形状のモールド51は、円筒部52と、円筒部52に外方開放されて形成される溝部53とから構成される。溝部53はOリング溝54を備え、Oリング溝54にはOリング58が挿入嵌合されて備えられる。
【0040】
本実施の形態において、溝部53は、円筒部52の外方端面部分に設けられるが、この位置に限定されるものではない。
【0041】
溝部53は、溝部53に設けられるOリング溝54の溝径が円筒部52の外径と同じとしても良く、溝部53の外径は、前記溝径で構成されるOリング溝54にOリング58が挿入嵌合された際、該Oリング58が変形して防水性が得られるような外径で構成される。そして、溝部53の外方端面は、角が除去され丸みを帯びたR形状とされる。
【0042】
しかし、本発明の実施の形態におけるモールド51の形状は、例えば図4(b)、(c)に示すように、本実施の形状に限定されるものではなく、本発明に係る防水型ケーブルハーネスが装着される防水型携帯電話等小型電子機器のケーブル挿着部の形状に合わせて適宜変更されるべきものである。
【0043】
本実施の形態において、モールド51は、以下の方法により多芯ケーブル2に取り付けられる。
【0044】
モールド51は、ケーブル挿入孔55に多芯ケーブル2が挿入され、多芯ケーブル2上の所定の位置に配される。所定の位置に配されたモールド51は、ケーブル挿入孔55に多芯ケーブル2が挿入された状態で熱を加えられ、成型がなされる。このモールド51の成型時の熱により、多芯ケーブル2を構成する保護層22と、ケーブル挿入孔55の内周面とが熱により融着し、熱融着部56が形成される。この熱融着部56の面積が大きい程、下記に示すケーブル挿入孔55における防水信頼性を高めることができる。
【0045】
このように、本実施の形態においては、モールド51の成型時の熱により、ケーブル挿入孔55の内周面と、多芯ケーブル2を構成する保護層22との間に、熱融着部56が形成され、モールド51と、多芯ケーブル2とが一体整形される。これにより、ケーブル挿入孔55から小型電子機器内部への侵水を防止することができる。
【0046】
Oリング58は、モールド51と多芯ケーブル2とが熱融着により一体整形された後、モールド51に設けられたOリング溝54に挿入嵌合されてモールド51に備えられる。これにより、小型電子機器とモールド51との接続面からの侵水を防止することができる。
【0047】
本実施の形態における防水部材の作用効果を以下に説明する。
【0048】
本実施の形態におけるモールド51は、図示しない携帯電話等小型電子機器の本体側および液晶側に取り付けられる。モールド51にはOリング58が備えられており、Oリング58のパッキン作用により、及び熱融着部56の密着性による防水作用により、携帯電話等小型電子機器の本体側および液晶側に防水性が付与される。
【0049】
本実施の形態においては、このように、多芯ケーブル2と一体整形されたモールド51にOリングが備えられ、該Oリングの作用により防水性が付与される作用が得られる。このため、本体と液晶ディスプレイとの接続部において、折りたたみ開閉による屈曲動作および捻回動作時に保護層22が変形しても、保護層22とモールド51との間、およびモールド51とOリング58との間に隙間が生じることが無く、防水性を確保することが可能となる。
【0050】
更に、本実施の形態で用いられる多芯ケーブルは、FPCと異なり、捻回動作時において、信号のインピーダンス不整合等による電気特性の不安定、またEMI特性の劣化等の問題が生じない。このため、最近の防水型携帯電話のように、折りたたみ開閉と捻回との双方の動作がなされる小型電子機器に充分な防水性能を付与しつつ、更に機器の高機能化を進めることが可能となる。
【0051】
なお、本発明の実施の形態として、モールド51と多芯ケーブル2(保護層22)とを接着する構成は好ましくない。接着は、接着剤が経時劣化する恐れがあり、防水性の長期信頼性が問題となる恐れがあるためである。また、接着剤が他の電子部品上に落下して、機器の絶縁などの不具合を生じる可能性があるためである。
(機械特性評価)
【0052】
本実施の形態に係る電線である、多芯線の機械特性の評価として、屈曲試験と捻回試験を実施した。屈曲試験方法を図5に、捻回試験方法を図6に示す。
【0053】
図5に示す屈曲試験には、評価試料として、多芯線を40本束ね、ウレタン樹脂で構成されるチューブに通したものを使用した。当該評価試料は垂直に保持され、下端に200(g)の荷重が取り付けられる。この状態の評価試料に曲げ冶具をあてがい、曲げ冶具の上部を折り曲げることで試験を行う。屈曲角度は、左右に90度とした。屈曲回数は、図5に示すように、評価試料を垂直に保持した状態から、図示左方向に90度折り曲げた状態で1回、再度垂直に保持した状態に戻して2回、次いで1回目とは逆方向に、図示右方向に90度折り曲げて3回、再度垂直に保持した状態に戻して4回、・・・と計数した。試験速度は、上述の計数方法で、1分間に30回の屈曲とした。
【0054】
図6に示す捻回試験においても、多芯線を40本束ね、ウレタン樹脂で構成されるチューブに通したものを評価試料として使用した。当該評価試料は垂直に保持され、下端に50(g)の荷重が取り付けられる。この状態の評価試料に、捻回用のチャック部と、固定用のチャック部との2つのチャック部が取り付けられる。捻回用チャック部と固定用チャック部との間隔は15mmである。試験は、固定用チャック部が評価試料を保持したまま、捻回用チャック部を回転させ、前記2つのチャック部に挟まれた評価試料の部位を回転させることにより行った。捻回角度は左右に180度とした。捻回回数は、図6に示すように、評価試料を垂直に保持した状態から、図示左方向に180度捻回した状態で1回、捻回を解除した状態に戻して2回、次いで1回目とは逆方向に、図示右方向に180度捻回して3回、再度捻回を解除した状態に戻して4回、・・・と計数した。試験速度は、上述の計数方法で、1分間に30回の捻回とした。
【0055】
機械特性の評価結果は以下の通りである。
【0056】
1)屈曲試験においては、30万回以上の屈曲でも電線の断線はなく、保護層には割れ傷がなかった。
【0057】
2)捻回試験においては、30万回以上の捻回でも電線の断線はなく、保護層には割れ傷がなかった。
【0058】
以上の評価結果より、本実施の形態に係る電線である、多芯線は、折りたたみ開閉による屈曲動作および捻回動作が作用する、本体と液晶ディスプレイとの接続部での使用に耐えうる強度を備えていることがわかる。
【0059】
なお、本発明の実施の形態に係る電線としては、図7に示す同軸線を用いてもよい。図7に示す同軸線3は、銅合金線31と、絶縁体32と、シールド層である外部導体33と、樹脂ジャケット34とから構成される。
【0060】
同軸線3において、銅合金線31が複数本(図7では7本)撚り合わされて内部導体が構成される。このように構成された内部導体の外周に絶縁体32が備えられる。絶縁体32の外周には、シールド層である外部導体33が配され、その外周に樹脂ジャケット34が配される。
【0061】
同軸線を用いた本実施の形態に係るケーブルとしては、図8に示す同軸ケーブル4、または図10に示す同軸ケーブル4aを用いることができる。
【0062】
図8に示す同軸ケーブル4は、同軸線3と、PTFEテープ21と、保護層22とから構成される。同軸ケーブル4においては、同軸線3が複数本、PTFEテープ21により束ねられて電線群が構成され、該電線群の外周、すなわちPTFEテープ21の外周に保護層22が配される。
【0063】
図8に示す同軸ケーブル4は、30本の同軸線3から電線群が構成されている。本発明の実施の形態として同軸線を用いる場合、電線群を構成する同軸線3の数は、通常携帯電話に用いる極数を考慮して30本から70本とすることが望ましい。
【0064】
図8に示す同軸ケーブル4において、保護層22には、図2に示す第1の実施の形態と同様にポリウレタン樹脂、またはシリコーン樹脂が用いられる。従って、ここでは説明を省略する。
【0065】
同軸ケーブル4を用いて構成される防水型ケーブルハーネスを図9に示す。図9に示す防水型ケーブルハーネス71は、同軸ケーブル4と、防水部材5、5と、接続端末であるコネクタ6、6とから構成される。防水部材5、5は、同軸ケーブル4の両端に配設される。
【0066】
防水型ケーブルハーネス71においては、屈曲運動部において同軸ケーブル4を保護できる程度の長さにわたって保護層22が形成され、この保護層22の両端部において防水部材5、5が形成される。さらに、この保護層22の両端から所定の長さにわたって同軸ケーブル4を構成する複数の同軸線3が各々露出し、分離される。該分離された同軸線3は、それぞれコネクタ6、6と電気的に接続される。
【0067】
防水型ケーブルハーネス71に設けられる防水部材5の構成は、図4に示す本発明の第1の実施の形態と同様であるためここでは説明を省略する。
【0068】
図10に示す同軸ケーブル4aは、同軸線3と、PTFEテープ21と、横巻シールド43と、保護層22とから構成される。同軸ケーブル4aにおいては、同軸線3が複数本、PTFEテープ21により束ねられて電線群が構成されるのは、図8に示す同軸ケーブル4と同様であるが、該電線群の外周に、横巻シールド43が配される点が異なる。
【0069】
横巻シールド43は錫めっき銅箔糸から構成される。同軸ケーブル4aにおいては、電線群の外周に該横巻シールド43が網目状に巻き付けられて配され、その外周に、図2に示す多芯ケーブル2あるいは図8に示す同軸ケーブル4と同様に、ポリウレタン樹脂やシリコーン樹脂から構成される保護層22が配される。
【0070】
同軸ケーブル4aを用いた防水型ケーブルハーネスを図11に示す。図11に示す防水型ケーブルハーネス81は、同軸ケーブル4aと、防水部材5、5と、接続端末であるコネクタ6、6とから構成される。
【0071】
防水型ケーブルハーネス81においては、防水部材5、5の構成、及び同軸線3とコネクタ6、6との接続の構成は図9に示す防水型ケーブルハーネス71と同様であるが、横巻シールド43の構成が異なる。
【0072】
すなわち、防水型ケーブルハーネス81においては、屈曲運動部において、同軸ケーブル4aを保護できる程度の長さにわたって保護層22が形成され、この保護層22の両端部において防水部材5、5が形成される。この保護層22の両端から横巻シールド43が露出されて取り出される。該取り出された横巻シールド43は、携帯電話等の小型電子機器のグランドに電気的に接続される。
【0073】
このように、本発明においては、同軸線を用いたケーブルであっても、最近の防水型携帯電話のように、折りたたみ開閉と捻回との双方の動作がなされる小型電子機器に充分な防水性能を付与しつつ、更に機器の高機能化を進めることが可能となる防水型ケーブルハーネスを得ることができる。
【0074】
更に、横巻シールド43を備える同軸ケーブル4aを用いて防水型ケーブルハーネスを構成することにより、横巻シールド43を機器のグランドに接続することで、最近の防水型携帯電話のように、折りたたみ開閉と捻回との双方の動作がなされる小型電子機器に充分な防水性能(JIS CO920 IPX7準拠)を付与しつつ、電気特性をより安定化させ、機器の高機能化を進めることが可能となる防水型ケーブルハーネスを得ることができる。
[第2の実施の形態]
【0075】
本発明の第2の実施の形態は、防水部材5aの構成が本発明の第1の実施の形態と異なる。本発明の第2の実施の形態に係る防水部材5aを図12に示す。
【0076】
本実施の形態における防水部材5aは、モールド51aと、防水パッキンであるOリング58とから構成される。
【0077】
図12に示すモールド51aは、基本的な構成態様は図4に示す本発明の第1の実施の形態に係るモールド51と同様であるが、モールド51aが備えるケーブル挿入孔55の構成態様が異なる。
【0078】
すなわち、モールド51aにおいては、モールド51aに設けられるケーブル挿入孔55の内径dが、多芯ケーブル2の外径Dと同じか、僅かに小さく構成されている。
【0079】
当該構成により、モールド51aの多芯ケーブル2への取り付けは、ケーブル挿入孔55に多芯ケーブル2を強制的に挿入することでなされる。内径dであるケーブル挿入孔55に、d=Dまたはd<Dである外径Dの多芯ケーブル2を強制的に挿入することで、モールド51aが取り付けられている範囲では保護層22が圧縮される。本実施の形態においては、モールド51aが取り付けられている範囲で圧縮された保護層22が固設部57を構成し、多芯ケーブル2を構成する保護層22にモールド51aが一体的に固設される。
【0080】
本実施の形態によっても、本体と液晶ディスプレイとの接続部における、折りたたみ開閉による屈曲動作および捻回動作時の保護層22の変形に際し、保護層22とモールド51aとの間、およびモールド51aとOリング58との間に隙間が生じることが無く、防水性を確保することが可能となる。
【0081】
なお、本実施の形態は、図12において多芯ケーブル2を用いて説明したが、本実施の形態は他のケーブル、すなわち同軸ケーブル4あるいは同軸ケーブル4aにも適用できるものである。また、第1の実施の形態と同様に、モールド51aと保護層22との間に熱融着部を形成することにより、更に防水性を高めるようにしても良い。
【符号の説明】
【0082】
1…多芯線、2…多芯ケーブル、3…同軸線、4,4a…同軸ケーブル、5,5a…防水部材、6…コネクタ、10…導線、11,31…銅合金線,12…ふっ素樹脂、13…フッ素樹脂スキン層、14,33…外部導体、15…ふっ素樹脂ジャケット,21…PTFEテープ、22…保護層、32…絶縁体、34…樹脂ジャケット、43…横巻きシールド、51,51a…モールド、52…円筒部、53…溝部、54…Oリング溝、55…ケーブル挿入孔、56…融着部、57…固設部、58…Oリング、61,71,81…防水型ケーブルハーネス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線からなる電線群と、該電線群の周囲に配された保護層と、
前記電線群の両端に設けられた接続端末と、前記保護層上に設けられた防水部材と、
を備えた防水型ケーブルハーネスであって、
前記防水部材は、円筒形状のモールドと、該モールド上に配設された防水パッキンとから形成され、
前記モールドの内面と前記保護層の間に熱融着部が形成され、前記モールドと前記保護層とが一体整形されていること
を特徴とする防水型ケーブルハーネス。
【請求項2】
複数の電線からなる電線群と、該電線群の周囲に配された保護層と、
前記電線群の両端に設けられた接続端末と、前記保護層上に設けられた防水部材と、
を備えた防水型ケーブルハーネスであって、
前記防水部材は、円筒形状のモールドと、該モールド上に配設された防水パッキンとから形成され、
前記ケーブルが前記モールドに強制的に挿入されたことにより、該モールドが前記保護層に一体的に固設されていること
を特徴とする防水型ケーブルハーネス。
【請求項3】
請求項1または2において、前記保護層はポリエーテルタイプのポリウレタン樹脂であり、前記モールドはポリエチレン系ゴム又はエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする防水型ケーブルハーネス。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の防水型ケーブルハーネスを防水型電子機器の本体とディスプレイ間の信号伝送用ケーブルとして用いたことを特徴とする防水型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−282774(P2010−282774A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133745(P2009−133745)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】