説明

防汚特性を有する医療装置

【課題】防汚特性を有する医療装置の提供。
【解決手段】本発明の態様によれば、(a)基体及び(b)防汚コポリマー、接着コポリマー、又はこれらの双方を含むコーティングを含む医療装置が提供される。本発明と共に用いられる防汚コポリマーは、(i)ポリマー骨格鎖に沿って複数のペンダントアルコキシ官能基を有する少なくとも一つの防汚ポリマーブロックと(ii)少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含有する。本発明と共に用いられる接着コポリマーは、(i)ポリマー骨格鎖に沿って複数のペンダント環ヒドロキシル置換芳香族基を有する少なくとも一つの接着ポリマーブロックと(ii)少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、医療装置、より詳しくは植込み可能な又は挿入可能な医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、細胞及び細菌の汚れに抵抗する医療装置の開発に著しい努力がなされてきた。主要な例は、タンパク質汚れが血栓症に関係していると見なされた血管ステントである。このようなステントは、バルーン血管形成術後に血管開存性を維持する診療の基準になっている。典型的には、これらの装置は、ポリマーコーティングで改良して、タンパク質汚れを減少させている。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレンオキシド(PEO)を有するポリマーを用いて、タンパク質汚れを減少させてきたが、これらのコーティングの成功は限られたものであった。例えば、M. Zhang et al. Biomaterials, 1998, 19, 953 and D.W. Branch et al. Biomaterials, 2001, 22, 1035を参照のこと。多くの場合には、接着性或いは完全性が不充分なことによるものであり、タンパク質抵抗性の低下が生じる。これらの作用を克服するために、例えば、装置表面のシラン結合層又は機械的加工を含む、いくつかの方策を用いて、接着性と膜完全性を増強してきたが、これらの方策の結果は、疑わしいものであった。更に、これらの方策は、いくつかの、しばしば難しい或いは費用のかかる製造工程を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの問題を考慮して、新規で確固たる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様によれば、(a)基体及び(b)防汚コポリマー、接着コポリマー、又はこれらの双方を含むコーティングを含む医療装置が提供される。本発明と共に用いられる防汚コポリマーは、(i)ポリマー骨格鎖に沿って複数のアルコキシ官能基を有する少なくとも一つの防汚ポリマーブロックと(ii)少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含有する。本発明と共に用いられる接着コポリマーは、(i)ポリマー骨格鎖に沿って複数の環ヒドロキシル置換芳香族基を有する少なくとも一つの接着ポリマーブロックと(ii)少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含有する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の利点は、医療装置がタンパク質汚れを減少させたポリマーコーティングを備えることができることである。
【0006】
本発明の他の利点は、医療装置が下にある基体に対する接着性が改善されたポリマーコーティングを備えることができることである。
【0007】
本発明のこれらの及び他の多くの態様、実施態様、及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を見れば当業者に直ちに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の態様による医療装置の概略部分断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の態様による医療装置の概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のより完全な理解は、本発明の多くの態様及び実施態様の以下の詳細な説明によって得られる。以下の本発明の詳細な説明は、本発明を具体的に説明するものであるが限定するものではない。
【0010】
本明細書に用いられる“防汚コポリマー”は、医療装置表面のポリマー層に含まれる場合に、防汚コポリマーの存在しないときに生じる汚れに相対してタンパク質汚れを減少させるコポリマーである。
【0011】
本明細書に用いられる“接着コポリマー”は、(a)一つ以上の他のポリマーと共にポリマー層に含まれる場合に、接着促進ポリマーがポリマー層に含まれないような接着に相対して隣接した基体に対するポリマー層の接着が改善されるコポリマー又は(b)基体と第二ポリマー層との間の第一ポリマー層に配置される場合に、第一ポリマー層が存在しないときのような接着に相対して基体に対する第二ポリマー層の接着が改善されるコポリマーである。
【0012】
本明細書に用いられる所定の材料の“層”は、厚さがその長さと幅に比べて小さいその材料の領域である。本発明による層は、用途によっては、下にある金属基体の全部又は一部だけを覆うことができる。層は、下にある基体の上に種々の位置に種々の形状で(例えば、一連の矩形、縞文様、又は他の任意の連続した又は連続しないパターンの形で)設けることができる。本明細書に用いられる層は、平面であることを必要とせず、例えば、下にある基体の輪郭に載せられる。
【0013】
接着性は、例えば、いわゆるテープ試験(ASTM D-3359)又は切削試験(ASTM D-2197)によって評価することができる。
【0014】
汚れは、例えば、タンパク質吸着を測定する石英結晶微量天秤の使用により評価することができる。例えば、Y. Zhang et al., Sensors and Actuators B 108 (2005) 933-942を参照のこと。
【0015】
本明細書に用いられる“金属基体”は、金属を、例えば、50wt%以下から75wt%まで90wt%まで95wt%まで97.5wt%まで99wt%以上の金属まで含有するものである。これには、特に、純粋な(不純物、未変性酸化物、変性酸化物等がない)金属基体、例えば、純粋な金属(例えば、Ti、Ta)から形成されたもの、鉄とクロムを含む純粋な金属合金(例えば、白金強化放射線不透過性ステンレス鋼を含むステンレス鋼)、ニッケルとチタンを含む(例えば、ニチノール)、ニオブ合金、チタン合金、コバルトとクロムと鉄を含む合金(例えば、エルギロイ合金)を含むコバルトとクロムを含む合金、ニッケルとコバルトとクロムを含む合金(例えば、MP 35N)、コバルトとクロムとタングステンとニッケルを含む合金(例えば、L605)、ニッケルとクロムを含む合金(例えば、インコーネル合金)が含まれる。
【0016】
本明細書に用いられる“金属酸化物基体”は、金属酸化物を、例えば、50wt%以下から75wt%まで90wt%まで95wt%まで97.5wt%まで99wt%以上の金属酸化物まで含有するものである。これには、特に、非遷移金属酸化物(例えば、周期表の13、14、15族の金属の酸化物、例えば、酸化アルミニウム)や遷移金属酸化物(例えば、周期表の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12族の金属の酸化物、例えば、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、イリジウム等の酸化物)が含まれる。
【0017】
本明細書に用いられる“ポリマー層”は、ポリマーを、例えば、50wt%以下から75wt%まで90wt%まで95wt%まで97.5wt%まで99wt%以上のポリマーまで含有する層である。
【0018】
本明細書に用いられる“ポリマー”は、一般にモノマーと呼ばれる一つ以上の構成単位の複数のコピー(例えば、2から5まで10まで25まで50まで100まで250まで500まで1000以上までのコピー)を含有する分子である。本明細書に用いられる用語“モノマー”は、遊離モノマーやポリマーに組み込まれるものを意味してもよく、違いは用語が用いられる状況から明らかである。
【0019】
本明細書に記載される防汚コポリマーと接着コポリマーを含むポリマーは、多くの構造を取ってもよく、例えば、特に、環状、直鎖、分枝鎖の構造より選ばれてもよい。分枝鎖構造としては、星型構造(例えば、三連鎖以上が単一の枝分かれ部位から放射する構造)、櫛型構造(例えば、主鎖と複数の側鎖を有する構造、“グラフト”構造とも呼ばれる)、樹枝状構造(例えば、樹枝状ポリマーや高分岐ポリマー)等が挙げられる。
【0020】
本明細書に用いられる“ホモポリマー”は、単一構成単位の複数のコピーを含有するポリマーである。“コポリマー”は、少なくとも2つの異なる構成単位の複数のコピーを含有するポリマーであり、例としては、ランダムコポリマー、統計コポリマー、周期コポリマー(例えば、交互ポリマー)及びブロックコポリマーが挙げられる。
【0021】
本明細書に用いられる“ブロックコポリマー”は、例えば、構成単位(即ち、モノマー)が一方のポリマーブロックに見られもう一方のポリマーブロックに見られないことから、組成が異なる二つ以上のポリマーブロックを含有するコポリマーである。本明細書に用いられる“ポリマーブロック”又は“ブロック”は、構成単位(例えば、5から10まで25まで50まで100まで250まで500まで1000以上までの単位)のグループ化のことである。ブロックは、非分枝鎖又は分枝鎖であり得る。ブロックは、単一タイプの構成単位(本明細書では“ホモポリマーブロック”とも呼ぶ)又は複数タイプの構成単位(本明細書では“コポリマーブロック”とも呼ぶ)を含有することができ、例えば、ランダム、統計、勾配、又は周期(例えば、交互)の分布で存在してもよい。
本明細書に用いられる“連鎖”は、直鎖ポリマー又はその一部、例えば、直鎖ブロックである。
【0022】
本発明の医療装置は、広く異なる。例としては、植込み可能な又は挿入可能な医療装置、例えば、ステント(冠状動脈血管ステント、末梢血管ステント、大脳ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管ステント、胃腸ステント、食道ステントを含む)、ステント被覆、ステント移植片、血管移植片、カテーテル(例えば、バルーンカテーテルや種々の中心静脈カテーテルのような泌尿器科的カテーテル又は血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、滴下防御装置用の大静脈フィルタやメッシュフィルタ)、腹部大動脈瘤(AAA)装置(例えば、AAAステント、AAA移植片等)、血管アクセスポート、透析ポート、脳動脈瘤フィラーコイル(Guglilmi着脱可能コイルや金属コイルを含む)を含む塞栓装置、中隔欠損閉鎖装置、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー、ペースメーカーリード、除細動リード又はコイル用コーティングを含むリードコーティング、左心補助心臓・ポンプを含む補助人工心臓、完全人工心臓、シャント、心臓弁や血管バルブを含むバルブ、吻合クリップ、吻合リング、人工内耳、また、体内に植込まれるか又は挿入され他の任意の被覆基体(本来は、例えば、金属、金属酸化物又はポリマーであってもよい)が挙げられる。
【0023】
患者は、脊椎動物の患者、より典型的には、ヒト患者、ペット、家畜を含む哺乳動物患者である。
【0024】
本発明の態様によれば、(a)基体及び(b)防汚コポリマー、接着コポリマー、又はこれらの双方を含むコーティングを含む医療装置が提供される。
【0025】
本発明と共に用いられる防汚コポリマーは、(i)ポリマー骨格鎖に沿って複数のアルコキシ官能基を有する少なくとも一つの防汚ポリマーブロックと(ii)少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含有する。アルコキシ官能基の例としては、C1-C5-アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ官能基の例としては、更に、アルコキシアルキル基、例えば、C1-C5-アルコキシ-C1-C5-アルキル基が挙げられ、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基等が含まれる。
【0026】
一部の実施態様において、アルコキシ基は、ポリアミド骨格鎖を含む防汚ポリマーブロックに沿って配置され、例えば、防汚ポリマーブロックは、ポリ(アミノ酸)鎖又はペプトイド鎖を含んでもよい。“ペプトイド”は、ポリ(N-置換アミド)である。ペプトイド鎖は、例えば、下記式を有するものである、

(式中、nは、防汚コポリマーに防汚特性を与えるのに充分なブロック長さを示す整数であり、R1及びR2は、例えば、独立して、H、C1-C6アルキル、C1-C6アルケン又はC6-C10芳香族より選ばれるか又はN、O、又はSのような一つ以上のヘテロ原子と組み合わせたC1-C6アルキル、C1-C6アルケン又はC6-C10芳香族より選ばれる有機基であり、R3は、C1-C6アルキルである)。個々の実施態様において、R1は、水素であり、R2及びR3は、C1-C6アルキルであり、この場合の鎖は、ポリ(N-アルコキシアルキルグリシン)鎖である。個々の実施態様において、nは、10〜40、より典型的には、15〜25、より典型的には約20であり、R1は、水素であり、R2は、-CH2-CH2-であり、R3は、-CH3であり、この場合の鎖は、ポリ(N-メトキシエチルグリシン)鎖である。変形例として、更に、ペプトイドブロックは、L又はDキラル配置又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
効果的な一般的タンパク質抵抗性のために、他のものも示すように、残基は一般的原理に基づいて設計されなければならない。例えば、E. Ostuni et al., Langmuir, 2001, 17, 5605-5620を参照のこと。特に、セグメントは、以下の特性の一つ以上をもたなければならない: (a)セグメントは、水素結合供与体を含有してはならず、水素結合受容体を含有しなければならない、(b)セグメントは、中性電荷でなければならない、及び(c)セグメントは、ある程度の水適合性(親水性)をもたなければならない。
【0028】
ペプトイド合成は、一般に“サブモノマー”方法に基づき、(1)ブロモ酢酸によるアミノ末端樹脂結合種のアシル化(縮合)、続いて(2)アミンによるBr基の求核置換を必要とする。このプロセスは、所望の長さのペプトイドが合成されるまで繰り返される。ペプチド配列についての制御を可能にすることから、典型的には、固相化学が用いられる。更に詳細は、例えば、A.R. Statz et al. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 7972-7973, T. Horn et al., Bioconjug. Chem. 15: 428-435 (2004)及びその中に開示される文献に見い出すことができる。
【0029】
本発明と共に用いられる接着コポリマーは、(i)ポリマー骨格鎖に沿って複数の環ヒドロキシル置換芳香族基を有する少なくとも一つの接着ポリマーブロックと(ii)少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含有する。環ヒドロキシル置換芳香族基は、例えば、環ヒドロキシル置換C6-C12芳香族基であってもよく、特に、ヒドロキシフェニル基やジヒドロキシフェニル基が含まれる。より具体的な例としては、特に、3,4-ジヒドロキシフェニル基や3,4-ジヒドロキシフェニルアルキル基、例えば、3,4-ジヒドロキシフェニル-C1-C6-アルキル基、例えば、3,4-ジヒドロキシベンジル基が挙げられる。
【0030】
一部の実施態様において、接着ポリマーブロックは、更に、環ヒドロキシル置換芳香族基に加えて、ポリマー骨格鎖に沿って複数のアミノアルキル基、例えば、アミノ-C1-C10-アルキル基を含んでいる。より具体的な例としては、アミノ-C2-C6-アルキル基(例えば、2-アミノエチル基、3-アミノ-n-プロピル基、4-アミノ-n-ブチル基等)が挙げられる。ある種の実施形態において、環ヒドロキシル置換芳香族基とアミノアルキル基がポリマー骨格鎖に沿って交互になる。
【0031】
一部の実施態様において、環ヒドロキシル置換芳香族基は、ポリアミド骨格鎖を含む接着ポリマーブロックに沿って配置され、例えば、接着ポリマーブロックは、ポリ(アミノ酸)鎖又はペプトイド鎖を含んでもよい。より具体的な例において、接着ポリマーブロックは、複数の(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)(ドーパ)単位を含むポリ(アミノ酸)鎖を含み、この鎖は、更に、例えば、交互配列で、ドーパ単位に隣接したリジン単位を含んでもよい。この鎖は、更に、ドーパとリジン以外のアミノ酸を含有してもしなくてもよい。変形例として、更に、ペプトイドブロックは、L又はDキラル配置又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0032】
ペプチドは、通常は、“Fmoc”合成技術によって製造され、N-保護アミノ酸のカルボキシル基が活性化され、樹脂結合アミノ酸/ペプチドの末端第一アミノ基と反応させ、アミド結合が形成される。ペプチド配列についての制御を可能にすることから、典型的には、固相化学が用いられる。更に詳細については、例えば、Lee Ayres, From structural proteins to synthetic polymers, Doctoral Thesis, Radboud Universiteit Nijmegen, 2005, ISBN 9090198075, Chapter 1及びその中に引用された文献を参照のこと。
【0033】
上述したように、本発明と共に用いられる防汚コポリマーは、少なくとも一つの防汚ポリマーブロックに加えて、一つ以上のポリマーブロックを含有する。同様に、本発明と共に用いられる接着コポリマーは、少なくとも一つの接着ポリマーブロックに加えて一つ以上のポリマーブロックを含有する。
【0034】
一つ以上の追加のポリマーブロックは、広く異なってもよく、生体安定性ポリマーブロック、生分解性ポリマーブロック、又はこれらの組み合わせが含まれる。一つ以上の追加のポリマーブロックは、例えば、他の多くの中でも、以下より選ばれてもよい: ポリアクリル酸ブロック、ポリメタクリル酸ブロック、エチレンメタクリル酸コポリマーブロック、エチレンアクリル酸コポリマーブロックを含み、ここで、酸基の一部は中和され得る、ポリカルボン酸ホモポリマー及びコポリマーブロック; アクリレート及びメタクリレートホモポリマー及びコポリマーブロック(例えば、n-ブチルメタクリレートブロック); セルロースアセテート、セルロースエーテル、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースを含む、セルロースホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリオキシメチレンホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリイミドホモポリマー及びコポリマーブロック、例えば、ポリエーテルブロックイミド、ポリアミドイミドブロック、ポリエステルイミドブロック、ポリエーテルイミドブロック; ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホンを含むポリスルホンホモポリマー及びコポリマーブロック; ナイロン6,6、ナイロン12、ポリカプロラクタム、ポリアクリルアミド、ポリエーテルブロックアミドを含むポリアミドホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリカーボネートブロック; ポリアクリロニトリルブロック; ポリビニルピロリドンブロック; ポリビニルアルコール、ポリビニルハライド、例えば、ポリ塩化ビニル 、エチレン酢酸ビニルコポリマーブロック(EVA)、ポリ塩化ビニリデンブロック、ポリビニルエーテルブロック、例えば、ポリビニルメチルエーテル、ポリスチレンブロック、スチレン無水マレイン酸コポリマーブロック、ビニル芳香族アルキレンコポリマーブロック、例えば、スチレンブタジエンコポリマーブロック、スチレンエチレンブチレンコポリマーブロック、スチレンイソプレンコポリマーブロック、アクリロニトリルスチレンコポリマーブロック、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマーブロック、スチレンブタジエンコポリマーブロック又はスチレンイソブチレンコポリマーブロックを含むビニルモノマーのホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリホスホネートホモポリマー及びコポリマーブロック;
【0035】
ポリスルホネートホモポリマー及びコポリマーブロック、例えば、スルホン化ビニル芳香族ホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリビニルケトンブロック、ポリビニルカルバゾールブロック、及びポリビニルエステルブロック、例えば、ポリ酢酸ビニル; ポリベンズイミダゾールブロック; ポリエチレンオキシドブロックを含むポリアルキルオキシドホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリエチレンテレフタレート及び脂肪族ポリエステルを含むポリエステルホモポリマー及びコポリマーブロック、例えば、ラクチド(乳酸、d-ラクチド、l-ラクチドメゾラクチド)、ε-カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含む)、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、p-ジオキサノン、トリメチレンカーボネート(又はそのアルキル誘導体)、1,4-ジオキセパン-2-オン、1,5-ジオキセパン-2-オン、及び6,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2-オンを含むホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリアリールエーテル、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンを含むポリエーテルホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリフェニレンスルフィドブロック; ポリイソシアネートブロック; ポリアルキレン、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン(例えば、ポリブタ-1-エン、ポリイソブチレン)、ポリ-4-メチルペン-1-エン、エチレンα-オレフィンコポリマーブロック、エチレンメチルメタクリレートコポリマーブロック、エチレン酢酸ビニルコポリマーを含むポリオレフィンホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロペン)(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ブロックを含むフッ素化ホモポリマー及びコポリマーブロック; シリコーンホモポリマー及びコポリマーブロック; ポリウレタンブロック; p-キシリレンポリマーブロック; ポリイミノカーボネートブロック; コポリ(エーテル-エステル)ブロック、例えば、ポリ(エチレンオキシド-乳酸)コポリマーブロック; ポリホスファジンブロック; ポリアルキレンオキサレートブロック; ポリオキサアミド及びポリオキサエステルブロック; ポリオルトエステルブロック; ポリアミン及びポリイミンホモポリマー及びコポリマーブロック; バイオポリマー、例えば、ポリペプチドブロック、ポリサッカリドブロック、グリコサミノグリカンブロック。
【0036】
必ずしも上に挙げたものだけでない本発明に用いられる生分解性ポリマーの例は、他の多くの中でも、以下の適切な種類より選ばれてもよい: (a)ポリエステルホモポリマー及びコポリマー、例えば、特に、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、ポリ-D,L-ラクチドを含むポリ-D-ラクチド(PLA)、ポリ(β-ヒドロキシブチレート)、ポリ-D-グルコネート、ポリ-L-グルコネート、ポリ-D,L-グルコネート、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(ラクチド-コ-δ-バレロラクトン)、ポリ(ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-コ-β-リンゴ酸)、ポリ(ラクチド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリ(グリコリド-コ-トリメチレンカーボネート)、ポリ(β-ヒドロキシブチレート-コ-β-ヒドロキシバレラート)、ポリ[1,3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-コ-セバシン酸]、ポリ(セバシン酸-コ-フマル酸)ブロック、(b)ポリ(オルトエステル)、例えば、特に、種々のジケテンアセタールとジオールの共重合により合成されるもの、(c)ポリ酸無水物ブロック、例えば、特に、ポリ(アジピン酸無水物)、ポリ(スベリン酸無水物)、ポリ(セバシン酸無水物)、ポリ(ドデカンジオ酸無水物)、ポリ(マレイン酸無水物)、ポリ[1,3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)メタン無水物]、ポリ[α,ω-ビス(p-カルボキシフェノシキ)アルカン無水物]ブロック、例えば、ポリ[1,3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン無水物]、ポリ[1,3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)ヘキサン無水物]ブロック; 及び(d)アミノ酸ベースのポリマーブロック、例えば、チロシンベースのポリアリーレート(例えば、エステル結合によって結合したジフェノールと二酸のコポリマー、ジフェノールは、例えば、デスアミノトロシルチロシンのエチルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、ベンジルエステルより選ばれ、二酸は、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸より選ばれる)、チロシンベースのポリカーボネートブロック(例えば、ホスゲンと、例えば、デスアミノチロシルチロシンのエチルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、ベンジルエステルより選ばれるジフェノールの縮重合により形成されるコポリマーブロック)、及びチロシンベース、ロイシンベース、リジンベースのポリエステルアミドブロックより選ばれる; チロシンベースのポリマーの具体例としては、デスアミノチロシルチロシンヘキシルエステル、デスアミノチロシルチロシンと種々の二酸、例えば、コハク酸やアジピン酸の組み合わせから構成されるポリマーが挙げられる。
【0037】
一部の実施態様において、一つ以上の追加のポリマーブロックは、ガラス転移温度に基づいて選ばれてもよい。例えば、“低Tgポリマーブロック”とも呼ばれる“軟質ポリマーブロック”は、体温未満、より典型的には、35℃から20℃まで0℃まで-25℃まで-50℃以下までのTgを示すものである。低Tgモノマーは、ホモポリマーに形成される場合に体温未満であるTgを示すものである。逆に、本明細書に用いられる"高Tgポリマーブロックとも呼ばれる“硬質ポリマーブロック”は、体温を超える、より典型的には、40℃から50℃まで75℃まで100℃以上までのTgを示すものである。高Tgモノマーは、ホモポリマーに形成される場合に体温を超えるTgを示すものである。Tgは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定され得る。
【0038】
低Tgポリマーブロックの具体例としては、以下の低Tgモノマーの一つ以上を含有するホモポリマー及びコポリマーブロックが挙げられる(これらのホモポリマーについて発表されたTgと共に記載する): (1)エチレン、プロピレン(Tg -8〜13℃)、イソブチレン(Tg -73℃)、1-ブテン(Tg -24℃)、4-メチルペンテン(Tg 29℃)、1-オクテン(Tg -63℃)、他のα-オレフィン、ジエン、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチルl-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、塩化ビニリデン(Tg -18℃)、フッ化ビニリデン(Tg -40℃)、シスクロロブタジエン(Tg -20℃)、トランスクロロブタジエン、(Tg -40℃)を含むハロゲン化アルケンモノマーを含む無置換及び置換のアルケンモノマー; (2)(a)アルキルアクリレート、例えば、メチルアクリレート(Tg 10℃)、エチルアクリレート(Tg -24℃)、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート(Tg -11℃、アイソタクチック)、n-ブチルアクリレート(Tg -54℃)、sec-ブチルアクリレート(Tg -26℃)、イソブチルアクリレート(Tg -24℃)、シクロヘキシルアクリレート(Tg 19℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(Tg -50℃)、ドデシルアクリレート(Tg -3℃)、ヘキサデシルアクリレート(Tg 35℃)、(b)アリールアルキルアクリレート、例えば、ベンジルアクリレート (Tg 6℃)、(c)アルコキシアルキルアクリレート、例えば、2-エトキシエチルアクリレート(Tg -50℃)、2-メトキシエチルアクリレート(Tg -50℃)、(d)ハロアルキルアクリレート、例えば、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(Tg -10℃)、(e)シアノアルキルアクリレート、例えば、2-シアノエチルアクリレート(Tg 4℃)を含むアクリルモノマー; (3)(a)アルキルメタクリレート、例えば、ブチルメタクリレート(Tg 20℃)、ヘキシルメタクリレート(Tg -5℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(Tg -10℃)、オクチルメタクリレート(Tg -20℃)、ドデシルメタクリレート(Tg -65℃)、ヘキサデシルメタクリレート(Tg 15℃)、オクタデシルメタクリレート(Tg -100℃)、(b)アミノアルキルメタクリレート、例えば、ジエチルアミノエチルメタクリレート(Tg 20℃)、2-tert-ブチルアミノエチルメタクリレート(Tg 33℃)を含むメタクリルモノマー; (4)(a)アルキルビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル(Tg -31℃)、エチルビニルエーテル(Tg -43℃)、プロピルビニルエーテル(Tg -49℃)、ブチルビニルエーテル(Tg -55℃)、イソブチルビニルエーテル(Tg -19℃)、2-エチルヘキシルビニルエーテル(Tg -66℃)、ドデシルビニルエーテル(Tg -62℃)を含むビニルエーテルモノマー; (5)テトラヒドロフラン(Tg -84℃)、トリメチレンオキシド(Tg -78℃)、エチレンオキシド(Tg -66℃)、プロピレンオキシド(Tg -75℃)、メチルグリシジルエーテル(Tg -62℃)、ブチルグリシジルエーテル(Tg -79℃)、アリルグリシジルエーテル(Tg -78℃)、エピブロモヒドリン(Tg -14℃)、エピクロロヒドリン(Tg -22℃)、1,2-エポキシブタン(Tg -70℃)、1,2-エポキシオクタン(Tg -67℃)、1,2-エポキシデカン(Tg -70℃)を含む環状エーテルモノマー; (6)エチレンマロネート(Tg -29℃)、酢酸ビニル(Tg 30℃)、ビニルプロピオネート(Tg 10℃)を含むエステルモノマー(上記のアクリレートやメタクリレート以外); 及び(7)ジメチルシロキサン(Tg -127℃)、ジエチルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン(Tg -86℃)、ジフェニルシロキサンを含むシロキサンモノマー。
【0039】
高Tgポリマーブロックの具体例としては、以下の高Tgモノマーの一つ以上を含有するホモポリマー及びコポリマーブロックが挙げられる: (1)(a)無置換ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン(Tg 100℃)、2-ビニルナフタレン(Tg 151℃)、(b)ビニル置換芳香族化合物、例えば、α-メチルスチレ、(c)環アルキル化ビニル芳香族化合物、例えば、3-メチルスチレン(Tg 97℃)、4-メチルスチレン(Tg 97℃)、2,4-ジメチルスチレン(Tg 112℃)、2,5-ジメチルスチレン(Tg 143℃)、3,5-ジメチルスチレン(Tg 104℃)、2,4,6-トリメチルスチレン(Tg 162℃)、4-tert-ブチルスチレン(Tg 127℃)、環アルコキシル化ビニル芳香族化合物、例えば、4-メトキシスチレン(Tg 113℃)や4-エトキシスチレン(Tg 86℃)、環ハロゲン化ビニル芳香族化合物、例えば、2-クロロスチレン(Tg 119℃)、3-クロロスチレン(Tg 90℃)、4-クロロスチレン(Tg 110℃)、2,6-ジクロロスチレン(Tg 167℃)、4-ブロモスチレン(Tg 118℃)、4-フルオロスチレン(Tg 95℃)、環エステル置換ビニル芳香族化合物、例えば、4-アセトキシスチレン(Tg 116℃)、環ヒドロキシル化ビニル芳香族、例えば、4-ヒドロキシスチレン(Tg 174℃)、4-アミノスチレンを含む環アミノ置換ビニル芳香族化合物、環シリル置換スチレン、例えば、p-ジメチルエトキシシロキシスチレン、無置換及び置換ビニルピリジン、例えば、2-ビニルピリジン(Tg 104℃)、4-ビニルピリジン(Tg 142℃)、他のビニル芳香族モノマー、例えば、ビニルカルバゾール(Tg 227℃)、ビニルフェロセン(Tg 189℃)を含む環-置換ビニル芳香族化合物を含むビニル芳香族モノマー; (2)(a)ビニルエステル、例えば、ビニルベンゾエート(Tg 71℃)、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート(Tg 101℃)、ビニルシクロヘキサノエート(Tg 76℃)、ビニルピバレート(Tg 86℃)、ビニルトリフルオロアセテート(Tg 46℃)、ビニルブチラール(Tg 49℃)、(b)ビニルアミン、(c)ビニルハロゲン化物、例えば、塩化ビニル(Tg 81℃)、フッ化ビニル(Tg 40℃)、(d)アルキルビニルエーテル、例えば、tert-ブチルビニルエーテル(Tg 88℃)、シクロヘキシルビニルエーテル(Tg 81℃)、(e)他のビニル化合物、例えば、ビニルピロリドンを含む他のビニルモノマー; (3)アセナフタレン(Tg 214℃)、インデン(Tg 85℃)を含む他の芳香族モノマー; (4)(a)メタアクリル酸無水物(Tg 159℃)、(b)(i)アルキルメタクリレート、例えば、メチルメタクリレート(Tg 105-120℃)、エチルメタクリレート(Tg 65℃)、イソプロピルメタクリレート(Tg 81℃)、イソブチルメタクリレート(Tg 53℃)、t-ブチルメタクリレート(Tg 118℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg 92℃)、(ii)芳香族メタクリレート、例えば、フェニルメタクリレート)(Tg 110℃)及び芳香族アルキルメタクリレート、例えば、ベンジルメタクリレート(Tg 54℃)、(iii)ヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg 57℃)、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(Tg 76℃)、(iv)イソボルニルメタクリレートやトリメチルシリルメタクリレート(Tg 68℃)を含む追加のメタクリレート(Tg 110℃)を含むメタクリル酸エステル(メタクリレート)、(c)メタクリロニトリル(Tg 120℃)を含む他のメタアクリル酸誘導体を含むメタクリルモノマー; (5)(a)ある種のアクリル酸エステル、例えば、tert-ブチルアクリレート(Tg 43-107℃)、ヘキシルアクリレート(Tg 57℃)、イソボルニルアクリレート(Tg 94℃); (b)アクリロニトリルを含む他のアクリル酸誘導体(Tg 125℃)を含むアクリルモノマー。
【0040】
本明細書に用いられるポリ(ビニル芳香族)ブロックは、一つ以上の種類のビニル芳香族モノマーの複数のコピーを含有するポリマーブロックであり、ポリアルケンブロックは、一つ以上の種類のアルケンモノマーの複数のコピーを含有するブロックであり、ポリアクリレートブロックは、一つ以上の種類のアクリレートモノマーの複数のコピーを含有するブロックであり、ポリメタクリレートブロックは、一つ以上の種類のメタクリレートモノマーの複数のコピーを含有するブロックであり、ポリシロキサンブロックは、一つ以上の種類のシロキサンモノマーの複数のコピーを含有するブロック等である。
【0041】
当業者が理解できるように、上記のようなポリマーブロックは、カチオン重合法、アニオン重合法、及びラジカル重合法、特に制御/“リビング”カチオン重合、アニオン重合及びラジカル重合を含む既知の方法に従って合成することができる。
【0042】
上記ポリマーブロックの多くは、フリーラジカル重合プロセス、例えば、ニトロキシド仲介プロセス(NMP)を含む、金属触媒原子移動ラジカル重合(ATRP)、安定なフリーラジカル重合(SFRP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)プロセスを含む退化的連鎖移動、又は他の制御ラジカル重合プロセスを用いて形成することができる。これらの方法は、文献に充分に詳述され、例えば、Pyun and Matyjaszewski,“Synthesis of Nanocomposite Organic/Inorganic Hybrid Materials Using Controlled/“Living”Radical Polymerization,”Chem. Mater., 13:3436-3448 (2001); B. Reeves,“Recent Advances in Living Free Radical Polymerization,”November 20, 2001. University of Florida, T. Kowalewski et al.,“Complex nanostructured materials from segmented copolymers prepared by ATRP,”Eur. Phys. J. E, 10, 5-16 (2003)に関する論文に記載されている。
【0043】
種々の官能基(例えば、特に、アルコール基、アミン基、スルホネート基)が耐性であるように、ATRPは魅力的なフリーラジカル重合技術であるので、多くのモノマーの重合を可能にする。ATRPによるモノマー重合において、ラジカルは、一般に、有機ハロゲン化物開始剤と遷移金属錯体を用いて生成される。有機ハロゲン化物開始剤の一部の典型的な例としては、ハロゲン化アルキル、ハロエステル(例えば、メチル2-ブロモプロピオネート、エチル2-ブロモイソブチレート等)及びハロゲン化ベンジル(例えば、臭化1-フェニルエチル、臭化ベンジル等)が挙げられる。種々のRu、Cu、Os及びFeベース系を含む広範囲の遷移金属錯体が使われてもよい。ATRP重合反応に用いることができるモノマーの例としては、種々の不飽和モノマー、例えば、特に、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ビニルエステル、ビニル芳香族モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、4-ビニルピリジンが挙げられる。ATRPにおいて、重合の終わりに、ポリマー鎖は、他の官能基、例えば、他の多くの中でも、アミノ基を与えるSN1、SN2又はラジカル化学によって容易に変換され得るハロゲン原子でキャップされる。官能性は、また、他の方法によって、例えば、ラジカル重合プロセスに関与しない官能基を含有する開始剤を使うことによってポリマーに導入され得る。例としては、特に、エポキシド基、アジド基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、アリル基を有する開始剤が挙げられる。更に、官能基がモノマー自体に存在してもよい。
【0044】
所定のブロックコポリマーにおけるすべてのモノマーが同じ技術(例えば、ATRP)によって重合可能である場合、このようなポリマーは、例えば、連続モノマー添加によって形成されてもよい。
【0045】
異なる技術によって重合可能であるモノマーからブロックコポリマーを形成するのに種々の方策も利用可能である。例えば、このようなポリマーは、特に、以下の技術によって形成することができる: (a)既存のポリマーの一つ以上の末端基を、続いての重合工程における開始剤として用いることができる(又は用いることができるように変換することができる)(即ち、いわゆる“マクロ開始剤”)、(b)既存のポリマーの一つ以上の側鎖基を、続いての重合工程における開始剤として用いることができる(又は用いることができるように変換することができる)、(c)重合性基(例えば、ビニル基、環状エーテル、環状エステル等の基)を既存のポリマーの末端に結合し、続いてこれを単独重合又は共重合反応工程に用いることができる(即ち、いわゆる“マクロモノマー”として)、及び(d)二つ以上の異なるポリマーを、他のスキームの中でも、適切なカップリング化学を用いて相互に結合することができる。カップリング技術の一例は、逐次クリックカップリングであり、これを原子移動ラジカル重合と共に用いることができる。例えば、N.V. Tsarevsky et al Macromolecules, 2005, 38, 3558)を参照のこと。
【0046】
例えば、ペプチド又はペプトイドブロックとフリーラジカル重合したブロックを含むブロックコポリマーは、種々の既知の技術を用いて形成することができ、この多くは上で引用したAyresの文献に述べられている。数例としては、以下のものが挙げられる: (1)フリーラジカル開始剤としてペプチド又はペプトイドを用いてペプチド又はペプトイドの一方又は双方の末端基からポリマーを合成することができる。例えば、ペプチドを官能基化して、樹脂上にNMP開始剤を形成する(t-ブチルアクリレートを重合し、続いてスチレン重合する)、ペプチドを官能基化して、樹脂上にATRP開始剤を形成する(2-ヒドロキシエチルメタクリレートを重合する)、ペプチドを官能基化して、樹脂から剥離した後にATRP開始剤を形成する(例えば、2-ブロモイソ酪酸で官能基化することによって、n-ブチルアクリレートやメチルメタクリレートのようなモノマーをATRPによって重合する)、及びペプチドを官能基化して、剥離した後にATRP開始剤を形成し、その後、RAFT開始剤に切り替えた(更に、n-ブチルアクリレートを重合した)。(2)開始剤としてペプチド又はペプトイドを用いてペプチド又はペプトイドの一つ又は複数の側鎖基からポリマーを合成することができる。例えば、セリンペプチドのアルコール基をα-ブロモエステルで官能基化して、得られた物質をメタクリル酸メチルのATRPに用いる。(3)ペプチド又はペプトイドからモノマーを形成し(例えば、ビニル基を結合することによって)、続いてフリーラジカル重合反応に用いることができる。例えば、メタクリルアミド官能基化ペプチドを、フリーラジカル重合によってN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドとて反応させ、ペプチドの末端-COOH基とヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させることによってペプチドモノマーを形成し、続いて二官能性開始剤を用いたATRPによって重合させ、次にメタクリル酸メチルによるATRPを続けて、トリブロックコポリマーを形成し、2-イソシアナトエチルメタクリレートメタクリレートを用いて形成したペプチドモノマーを二官能性PEG系開始剤を用いたATRPによって重合させ、これを2-ブロモイソ酪酸で官能基化して、トリブロックコポリマーを形成し、ノルボネン官能基化ペプチドをROMPによって単独重合及び共重合する。(4)予備成形されたポリマーを、標準ペプチド化学を用いて予備形成されたペプチドの末端基に(例えば、第一アミノ基に)カップリングすることができ、又は予備成形されたペプチドの側鎖基に(例えば、システイン基に)カップリングすることができ、これらの反応はペプトイドにも適用できる。(5)予備成形されたペプチド又はペプトイドを、予備成形されたポリマーの側鎖基にカップリングすることができる(例えば、RAFTによって重合される活性化エステル基を有するアクリレート)。
【0047】
上述したように、本発明のポリマー装置は、必要により、少なくとも一つの治療剤を含有してもよい。“治療剤”、“薬剤”、“医薬的に活性な物質”、“医薬的に活性な材料”、及び他の関係した用語は、本明細書に同じ意味で用いることができる。様々な疾患や病気の治療(即ち、疾患又は病気の予防、疾患又は病気と関連している症状の減少又は排除、又は疾患又は病気の実質的な又は完全な排除)に用いられるものを含む様々な治療剤を本発明と共に使うことができる。多くの治療剤を以下に記載する。
本発明のポリマー層から治療剤の放出速度は、例えば、層の中の治療剤の種類、層の中のブロックコポリマーの種類(例えば、分子量、構造、モノマー組成)、層の中の補助ポリマーを含む、他のあらゆる選択できる補助物質の種類に左右される。例えば、治療剤の性質(例えば、親水性/疎水性)及びブロックコポリマーの中のポリマーブロックの性質(例えば、親水性/疎水性/膨潤性)は、薬剤の放出時に重要な作用を有する(例えば、ポリマー領域の湿潤性、水拡散性、治療剤拡散性等に影響する)。ポリマー層の性質は、必要により、補助的な疎水性ポリマー及び/又は親水性ポリマーを層に添加することによって変化させてもよい。
【0048】
本発明と共に用いられる例示的な治療剤としては、以下のものが挙げられる: (a)抗血栓剤、例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレル、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン); (b)抗炎症剤、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミン; (c)抗新生物剤/抗増殖剤/抗有糸分裂剤、例えば、パクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を遮断できるモノクローナル抗体、チミジンキナーゼ阻害剤; (d)麻酔剤物質、例えば、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン; (e)抗凝固剤、例えば、D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、ダニ抗血小板物質ペプチド; (f)血管細胞増殖促進剤、例えば、成長因子、転写活性化因子、翻訳促進剤; (g)血管細胞増殖阻害剤、例えば、成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサ、翻訳リプレッサ、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対向する抗体、成長因子と細胞毒素からなる二官能性分子、抗体と細胞毒からなる二官能性分子; (h)タンパク質キナーゼ阻害剤及びチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、チルホスチン、ゲニステイン、キノキサリン); (i)プロスタサイクリン類似体; (j)コレステロール低下剤; (k)アンギオポイエチン; (l)抗菌剤、例えば、トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントイン; (m)細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤、細胞増殖影響因子; (n)血管拡張剤; (o)内在性血管作用機序を妨害する薬剤; (p)白血球動員阻害剤、例えば、モノクローナル抗体; (q)サイトカイン; (r)ホルモン; (s)HSP 90タンパク質阻害剤(即ち、熱ショックタンパク、これは分子シャペロン又はハウスキーピングタンパクであり、細胞の増殖及び生存の原因である他のクライアントタンパク質/シグナル伝達タンパク質の安定性と機能に必要である)、ゲルダナマイシンを含む; (t)α受容体拮抗薬(例えば、ドキサゾシン、タムスロシン)、β受容体作動薬(例えば、ドブタミン、サルメテロール)、β受容体拮抗薬(例えば、アテノロール、メタプロロール、ブトキサミン)、アンギオテンシンII受容体拮抗薬(例えば、ロサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン)、及び鎮痙薬(例えば、塩化オキシブチニン、フラボキサート、トルテロジン、硫酸ヒオスシアミン、ジサイクロミン)、(u) bARKct阻害剤、(v)ホスホランバン阻害剤、(w) Serca 2遺伝子/タンパク質、(x)免疫応答調節物質、アミノキゾリン、例えば、レシキモドやイミキモドのようなイミダゾキノリンを含む、及び(y)ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI、AII、AIII、AIV、AV等)。
【0049】
必ずしも上で挙げたものだけでない多くの治療剤は、血管治療法のための候補物質として、例えば、再狭窄を標的にする薬剤として確認されている。このような薬剤は、本発明の実施に有効であり、以下の一つ以上を含んでいる: (a)ジルチアゼムやクレンチアゼムのようなベンゾチアゼピン、ニフェジピン、アムロジピン、ニカルダピンのようなジヒドロピリジン、ベラパミルのようなフェニルアルキルアミンが含まれるCa-チャンネル遮断薬、(b)ケタンセリンやナフチドロフリルのような5-HT拮抗薬、フルオキセチンのような5-HT取り込み阻害剤が含まれるセロトニン経路モジュレーター、(c)シロスタゾールやジピリダモールのようなホスホジエステラーゼ阻害剤、フォルスコリンのようなアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ賦活薬、アデノシン類似体が含まれる環状ヌクレオチド経路薬、(d)プラゾシンやブナゾシンのようなα-拮抗薬、プロプラノロールのようなβ-拮抗薬及びラベタロールやカルベジロールのようなα/β-拮抗薬を含むカテコールアミンモジュレーター、(e)エンドセリン受容体拮抗薬、(f)ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、亜硝酸アミルのような有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウムのような無機ニトロソ化合物、モルシドミンやリンシドミンのようなシドノンイミン、ジアゼニウムジオラートやアルカンジアミンのNO付加物のようなノノエート、低分子量化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン、N-アセチルペニシラミンのS-ニトロソ誘導体)や高分子量化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖類、多糖類、合成ポリマー/オリゴマー、天然ポリマー/オリゴマーのS-ニトロソ誘導体)を含むS-ニトロソ化合物、C-ニトロソ化合物、O-ニトロソ化合物、N-ニトロソ化合物、L-アルギニンが含まれる一酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル、エナラプリルのようなACE阻害薬、(h)サララシンやロサルチンのようなATII-受容体拮抗薬、(i)アルブミンやポリエチレンオキシドのような血小板接着阻害剤、(j)シロスタゾール、アスピリン、チエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバンのようなGP IIb/IIIa阻害剤が含まれる血小板凝集阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストラン、β-シクロデキストリンテトラデカスルフェートのようなヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D-phe-L-プロピル-L-arg-クロロメチルケトン)、アルガトロバンのようなトロンビン阻害剤、アンチスタチンやTAP(ダニ抗凝固ペプチドのようなFXa阻害剤、ワルファリンのようなビタミンK阻害剤、活性化プロテインCが含まれる凝固経路モジュレーター、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、スルフィンピラゾンのようなシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、
【0050】
(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロンヒドロコルチゾンのような天然コルチコステロイドや合成コルチコステロイド、(n)ノルジヒドログアヤレト酸、カフェ酸のようなリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E-セレクチンとP-セレクチンの拮抗薬、(q)VCAM-1とICAM-1の相互作用の阻害剤、(r)PGE1やPGI2のようなプロスタグランジン、シプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、ベラプロストのようなプロスタサイクリン類似体が含まれるプロスタグランジンやその類似体、(s)ビスホスホネートが含まれるマクロファージ活性化予防剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、フラバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチンのようなHMG-CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油及びω-3脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンC、ビタミンE、エブセレン、トランスレチノイン酸、SODミミックスのようなフリーラジカルスカベンジャー/抗酸化剤、(w) bFGF抗体やキメラ融合タンパク質のようなFGF経路薬、トラピジルのようなPDGF受容体拮抗薬、アンギオペプチンやオクレオチドのようなソマトスタチン類似体を含むIGF経路薬、ポリアニオン性薬剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、TGF-β抗体のようなTGF-β経路物質、EGF抗体、受容体拮抗薬、キメラ融合タンパク質のようなEGF経路薬、サリドマイドやその類似体のようなTNF-α経路薬、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン、リドグレルのようなトロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレーター、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン誘導体のようなタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤が含まれる種々の成長因子に影響する薬剤、(x)マリマスタット、イロマスタット、メタスタットのようなMMP経路阻害剤、(y)サイトカラシンBのような細胞運動阻害剤、(z)プリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である、6-メルカプトプリン又はクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビン、5-フルオロウラシル)、メトトレキセートのような代謝拮抗薬、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響する薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタキセル、エポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、スクアラミン)、ラパマイシン(シロリムス)やその類似体(例えば、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス等)、セリバスタチン、フラボピリドール及びスラミンが含まれる抗増殖剤/抗新生物剤、(aa)ハロフギノン又は他のキナゾリノン誘導体、トラニラストのようなマトリックス沈着/組織化経路阻害剤、(bb)VEGFやRGDペプチドのような内皮化促進剤、(cc)ペントキシフィリンのような血液レオロジーモジュレーター。
【0051】
いくつかの好適治療剤としては、特に、パクリタキセル(その微粒子形態、例えば、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子のようなタンパク結合パクリタキセル粒子、例えば、ABRAXANEを含む)のようなタキサン、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT-578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、レステン-NG、Ap-17、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、β遮断薬、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、Serca 2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI-AV)、成長因子(例えば、VEGF-2)、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0052】
本発明の医療装置と共に広範囲の治療剤装填を用いることができる。典型的な装填は、例えば、ポリマー領域の1wt%以下から2wt%まで5wt%まで10wt%まで25wt%以上までの範囲にある。
【0053】
前に示したように、一態様において、本発明は、(a)基体及び(b)防汚コポリマー、接着コポリマー、又はこれらの双方を含むコーティングを含む医療装置を提供する。防汚コポリマーは、少なくとも一つの防汚ポリマーブロックと少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含有する。同様に、接着コポリマーは、少なくとも一つの接着ポリマーブロックと少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含有する。
【0054】
ここで、本発明のこの態様のいくつかの具体例を図面によって述べる。
【0055】
本発明の実施態様によれば、図1は、一部の医療装置100の概略断面図である。図示した医療装置100は、表面が、例えば、金属酸化物化学種を含んでもよい基体部分110を含む。例えば、基体は、(a)金属酸化物、例えば、特に、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウム又は(b)未変性酸化物表面、例えば、特に、ステンレス鋼、ニチノール、又はチタンを有する金属から形成されてもよい。基体の上には、基体110の上にそれと接触して配置される接着コポリマーを含む第一コーティング層120aと、第一コーティング層120aの上にそれと接触して配置される、接着コポリマーと適合するポリマーを含む第2コーティング層120bを含む、コーティング120が設けられている。第一層120aにおける接着コポリマーは、例えば、その基が金属酸化物に良好な接着を与えることが知られる、複数の環ヒドロキシル置換芳香族基を骨格鎖に沿って有する少なくとも一つの接着ポリマーブロックと、少なくとも一つの追加のブロックを含んでもよい。治療剤は、必要により、コーティング120の中に準備されてもよく、例えば、第一層120a、第二層120b、又はこれらの双方の中に配置されてもよい。
【0056】
第二層102bにおけるポリマーは、例えば、タンパク質汚れを減少させることが知られる複数のアルコキシ官能基を骨格鎖に沿って有する少なくとも一つの防汚ポリマーブロックと、少なくとも一つの追加のポリマーブロックを含む、防汚コポリマーであってもよい。防汚コポリマーの少なくとも一つの追加のブロックは、接着コポリマーの少なくとも一つの追加のブロックと適合し、それによって、第一層120aと第二層120bとの間の接着を促進させる。例えば、防汚コポリマーの少なくとも一つの追加のポリマーブロックは、接着コポリマーの少なくとも一つの追加のポリマーブロックと少なくとも部分的に混和性であってもよい。例えば、防汚コポリマーの少なくとも一つの追加のブロックのモノマー含量を接着コポリマーの少なくとも一つの追加のブロックのモノマー含量と同じにすることによって適合性を達成することができる。
【0057】
他の例において、第二層120bは、接着コポリマーの少なくとも一つのブロックと適合する少なくとも一つのブロックを有する生体適合性ブロックコポリマーを含んでもよい。例えば、生体適合性ポリマーの少なくとも一つのブロックは、接着コポリマーの少なくとも一つのブロックと少なくとも部分的に混和性であり得る。上記のように、例えば、モノマー含量で相互に異なるが、相互に混和性であるポリマーブロックを選ぶことによって、又は生体適合性コポリマーの少なくとも1のモノマー含量を接着コポリマーの少なくとも一つの追加のブロックのモノマー含量と同じにすることによって、適合性を達成することができる。
【0058】
図2は、本発明の他の実施態様の医療装置100の一部の概略断面図である。図示した医療装置は、基体部分110と単一層コーティング120を含んでいる。
【0059】
一実施態様において、コーティング120は、例えば、防汚コポリマー、接着コポリマー及び選択できる治療剤を含んでいてもよい。接着コポリマーは、例えば、骨格鎖に沿って複数の環ヒドロキシル置換芳香族基を有する少なくとも一つの接着ポリマーブロックを含み、それによって、コーティング120と下にある基体110との間の接着が良好になる。防汚コポリマーは、例えば、骨格鎖に沿って複数のアルコキシ官能基を有する少なくとも一つの防汚ポリマーブロックを含み、それによって、タンパク質汚れが減少することになる。更に、防汚コポリマーの少なくとも一つの追加のブロックが接着コポリマーの少なくとも一つの追加のブロックと適合することを確実にすることによって、コーティング120の機械的完全性が増強されることになる。
【0060】
他の実施態様において、コーティング120は、上記の接着ポリマーを含まないが、防汚コポリマーを含んでいてもよい。本実施態様において、防汚コポリマーは、タンパク質汚れを減少させることが知られる複数のアルコキシ官能基を骨格鎖に沿って有する少なくとも一つの防汚ポリマーブロックと、少なくとも一つの追加のポリマーブロック、例えば、生分解性ポリマーブロック(例えば、ポリエステルブロック、ポリ(オルトエステル)ブロック、ポリ酸無水物ブロック、チロシンベースのポリマーブロック等の生分解性ホモポリマー及びコポリマー)又は生体安定性ポリ(不飽和モノマー)ブロック、例えば、ポリアルケンブロック(例えば、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、sec-ブチレン、イソブチレン、tert-ブチレン等から形成される)、ポリアクリレートブロック(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート等から形成される)、ポリメタクリレートブロック(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート等から形成される)、ポリビニル芳香族ブロック(例えば、スチレン、α-メチルスチレン等)等を含んでいてもよい。
【0061】
他の実施態様において、コーティング120は、上記のような防汚ポリマーを含まないが、接着コポリマーを含んでいてもよい。この実施態様において、接着コポリマーは、骨格鎖に沿って複数の環ヒドロキシル置換芳香族官能基を有する少なくとも一つの接着ポリマーブロックと、少なくとも一つの追加のポリマーブロック、例えば、特に、上記のような生分解性ポリマーブロック又は生体安定性ポリ(不飽和モノマー)ブロックを含んでいてもよい。
【0062】
更に他の実施態様において、コーティング120は、骨格鎖に沿って複数の環ヒドロキシル置換芳香族基を有する少なくとも一つの接着ポリマーブロック、骨格鎖に沿って複数のアルコキシ官能基の基を有する少なくとも一つの防汚ポリマーブロック、及び少なくとも一つの追加のポリマーブロック、例えば、特に、上記のような生分解性ブロック又はポリ(不飽和モノマー)ブロックを含むコポリマーを含んでいてもよい。
【0063】
本発明に従って層を形成するのに多くの技術が利用可能である。
【0064】
例えば、層が熱可塑性特性を有する一つ以上のポリマーから形成される場合、種々の標準熱可塑性処理技術を用いることができる。これらの技術を用いて、例えば、(a)最初に一つ又は複数のポリマーと他の任意の選択できる物質、例えば、一つ又は複数の治療剤や任意の補助物質を含有する溶融物を準備し、(b)続いて溶融物を冷却することにより、層を形成することができる。
【0065】
溶媒ベースの技術を含む、熱可塑性処理技術のほかに他の処理技術を用いて、層を形成してもよい。これらの技術を用いて、例えば、(a)最初に一つ又は複数のポリマーと一つ又は複数の治療剤や任意の選択できる非ポリマー補助剤を含有する溶液又は分散液を準備し、(b)続いて溶媒を除去することにより、ポリマー層を形成し得る。最終的に選ばれる溶媒は、一つ以上の溶媒種を含有し、通常は、乾燥速度、表面張力等を含む他の要因に加えて、層を形成する種々の物質(例えば、ポリマー、選択できる治療剤等)を溶解又は分散する能力に基づいて選ばれる。
【0066】
好ましい熱可塑性溶媒ベースの技術としては、例えば、噴霧技術、浸漬技術、スピンコーティング技術、ウェブコーティング技術、空気サスペンション、インクジェット技術、静電技術を含む機械式サスペンションによるコーティングを含む技術、これらのプロセスの組み合わせが挙げられる。
【0067】
実施例
以下の実施例は、下記式を有するペプチド模倣ポリマー(PMP)、又はその一部を用いる:


PMPは、金属表面に強く付着するとともに非常に良好な長期防汚特性をもつことがわかった。例えば、A.R. Statz et al. J.Am.Chem.Soc. 2005, 127, 7972-7973)を参照のこと。金属表面に対するPMPの表面接着は、アミノ酸のポリマーブロックから得られる。良好な接着は、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(ドーパ)残基が金属酸化物電荷移動錯体形成によって達成されると考えられる。リジン残基もまた、接着の強度に重要な役割を果たすと考えられ、カチオンリジン残基がドーパ仲介表面結合を補足する長期静電相互作用に関与することができると仮定された。長期防汚は、N-置換グリシンポリマーブロック(ここで、nは、典型的には約20である)から得られると考えられる。PMPは、隔週の細胞播種によって5ヵ月を超えて線維芽細胞付着に対して長期抵抗を示すことがわかった。
【実施例1】
【0068】
医療装置を二層で被覆する。第一層は、ポリアミノ酸接着ブロックとポリ(N-置換グリシン)の追加のペプトイドブロックを有する接着コポリマーとして作用するPMP層である。変形例として、追加のポリマーブロックをPMPに挿入して、ポリアミノ酸接着ブロックをペプトイドブロックから隔置させてもよい。例えば、特に、Fmoc、サブモノマーとATRP合成技術を用いて、上記のように広範囲の構造を有する明確なブロックコポリマーを生成させてもよい。第一層を金属表面、例えば、チタン又はステンレス鋼の表面に当該技術において既知の任意の適切な方法、例えば、浸漬コーティング、噴霧コーティング又はスピンコーティングによって適用する。この層は、上記のように、接着コポリマーのポリアミノ酸ブロックによって金属表面に付着する。
【0069】
第二層は、少なくとも一つのポリ(N-置換グリシン)防汚ブロック、例えば、下にあるPMPに適合が見られたものと、少なくとも一つの追加のブロック、例えば、疎水性ポリ(無置換モノマー)ブロック、例えば、ポリスチレンブロックを含有する防汚コポリマーから形成される。例えば、防汚コポリマーは、他の可能性の中でも、ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーであり得る。防汚特性を与えることに加えて、防汚コポリマーのN-置換グリシンブロックは、例えば、第一層におけるPMPの表面付着したN-置換グリシン鎖との適合性のために、下にある第一層との接着性を促進させ、この適合性が、例えば、N-置換グリシンブロックとの間の相互拡散及び/又は他の相互作用につながることになる。第二層は、当該技術において既知の任意の適切な方法、例えば、上で示したものによって、第一層に適用することができる。
【0070】
第二層の利点は、ポリマーブロック相互の質量比、例えば、ポリスチレンブロックとN-置換グリシンブロックとの比を調整して、機械的特性とタンパク質抵抗性の所望の組み合わせを得ることができることである。更に、上層が一つ以上の治療剤、例えば、抗血栓剤及び/又は抗増殖剤を含む場合には、比を調整して、所望の放出プロファイルを得ることができる。機械的特性、防汚特性及び薬剤放出特性もまた、防汚コポリマーの構造(例えば、直鎖、星型、櫛型、樹枝状等)を変化させることによって調整することができる。
【実施例2】
【0071】
医療装置を二層で被覆する。第一層は、接着ブロックとしてのポリ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)又はポリ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン-コ-リジン)と追加のポリマーブロック、例えば、疎水性ポリ(不飽和モノマー)ブロック、例えば、ポリスチレンブロックを組み込んでいる接着コポリマーを含有する。第二層は、実施例1に用いたように防汚コポリマーを含有する。実施例1のように、一つ以上の治療剤を、必要により、コーティングに装填してもよく、第一層と第二層を、当該技術において既知の標準コーティングプロセスを用いて医療装置基体に適用することができる。層の間の接着性は、それぞれ第一層と第二層における接着コポリマーと防汚コポリマーのポリスチレンブロックの相互適合性によって促進され、この適合性が、例えば、ポリスチレンブロックとの間の相互拡散及び/又は他の相互作用につながることになる。
【実施例3】
【0072】
医療装置を、当該技術において既知の標準コーティングプロセスを用いて二つのポリマー層で被覆する。第一ポリマー層は、ポリ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)又はポリ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン-コ-リジン)を含み、これが層に接着特性を与える。例えば、ポリ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン-alt-リジン)ブロックと疎水性ポリ(不飽和モノマー)ブロック、例えば、ポリスチレンブロックのような高Tgブロック又はポリイソブチレンブロックのような低Tgブロックを有する接着コポリマーを調製することができる。
【0073】
二つ以上の高Tgブロックが低いTgブロックによって分かれているブロックコポリマーを含有する第二ポリマー層を第一層の上に形成する。例えば、第二層は、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)を含有してもよく、Pinchuk et alの米国第6,545,097号に記載されるように形成することができる。この種のポリマーは、高強度とゴム状弾性を示すことができ、同時に、溶媒ベース及び/又は溶融ベースの処理技術のような技術を用いて加工可能である。周知のように、ブロックコポリマーは、相分離する傾向がある。上記のようなポリマーにおいて、(硬質である)高Tgブロックは、凝集して、硬質相ドメインを形成する。理論によって縛られることを望まないが、高Tg硬質ブロックは低Tgブロックによって相互接続することから、硬質相ドメインは、エラストマーブロックによって相互に物理的に架橋される。更に、架橋は、本来は共有結合でないことから、例えば、ブロックコポリマーを溶解又は融解することによって逆転させることができる。
【0074】
上記のように、一つ以上の治療剤を、必要により、コーティングに装填してもよく、当該技術において既知の標準コーティングプロセスを用いて第一層と第二層を医療装置基体に適用することができる。
【実施例4】
【0075】
医療装置を、当該技術において既知の標準コーティングプロセスを用いて単一ポリマー層で被覆する。このポリマー層は、ポリ(N-置換グリシン)ブロックを含み、これがポリマー層と装置のさらされた外面に防汚機能を与える。例えば、ポリ(N-置換グリシン)ブロックとポリスチレンブロックのような疎水性ポリ(不飽和モノマー)ブロックを有している防汚コポリマーを調製することができる。一つ以上の選択できる治療剤を、コーティングに装填してもよい。上記のように、種々のポリマーブロック比とポリマー構造を用いて、層の機械的特性とタンパク質抵抗特性だけでなく、一つ以上の治療剤が含まれる場合に層の放出特性を調整することができる。
【実施例5】
【0076】
医療装置を、当該技術において既知の標準コーティングプロセスを用いて単一ポリマー層で被覆する。このポリマー層は、層に接着特性を与えるペプトイドブロックと防汚特性を与えるペプチドブロックを有するコポリマーを含む。このコポリマーは、更に、生分解性ブロックを含む。例えば、このコポリマーは、(a)ポリ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)又はポリ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン-コ-リジン)ブロック、(b)ポリ(N-置換グリシン)ブロック又は(c)ポリラクチド、ポリラクチド-コ-グリコリド、ポリカプロラクトン、又はチロシンベースのポリマーブロックを含有してもよい。特に、Fmoc、サブモノマーと開環重合合成技術を用いて、広範囲の構造を有する明確なブロックコポリマーを生成させることができる。上記のように、必要により、一つ以上の治療剤をポリマー層に装填してもよい。
【実施例6】
【0077】
医療装置を、当該技術において既知の標準コーティングプロセスを用いて二つのポリマー層で被覆する。第一ポリマー層は、層に接着特性を与えるペプトイドブロックと生分解性/生体吸収性ブロックを有する接着コポリマーを含む。第二層は、防汚特性を与えるペプチドブロックと接着コポリマーと適合する生分解性/生体吸収性ブロックを有する防汚コポリマーを含む。上記のように、必要により、一つ以上の治療剤をポリマー層に装填してもよい。
【実施例7】
【0078】
医療装置を、当該技術において既知の標準コーティングプロセスを用いて二つのポリマー層で被覆する。第一ポリマー層は、層に接着特性を与えるPMPを含む。第二層は、下にある層に接着を与えるとともに外層表面に防汚特性を促進させる、PMPのような生分解性/生体吸収性ブロックとポリ(N-置換グリシンブロック)を含む。上記のように、必要により、一つ以上の治療剤をポリマー層に装填してもよい。
種々の実施態様が本明細書に詳細に示され説明されているが、本発明の修正及び変更が上記教示によって包含され、本発明の真意及び意図した範囲を逸脱することなく添付の特許請求の範囲の範囲内にあることは理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基体; (b)(i)複数のペンダントアルコキシ官能基を含む防汚ポリマーブロックと(ii)生体安定性ポリマーブロック、生分解性ポリエステルブロック、生分解性ポリ(オルトエステル)ブロック、生分解性ポリ酸無水物ブロック及び生分解性のチロシンベースのポリマーブロックより選ばれる第一の追加のポリマーブロックを含む防汚コポリマーを含む第一層を備える医療装置。
【請求項2】
第一の追加のポリマーブロックが、生体安定性ポリ(不飽和モノマー)ブロックである、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
第一の追加のポリマーブロックが、生体安定性高Tgポリ(不飽和モノマー)ブロックである、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
第一の追加のポリマーブロックが、生体安定性低Tgポリ(不飽和モノマー)ブロックである、請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
第一の追加のポリマーブロックが、生分解性ポリエステルブロックである、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
第一の追加のポリマーブロックが、生分解性のチロシンベースのポリマーブロックである、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
ポリ(不飽和モノマー)ブロックが、ビニル芳香族モノマー、アクリルモノマー、メタクリルモノマー、アルケンモノマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の医療装置。
【請求項8】
第一層が、更に、治療剤を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
アルコキシ基が、C1-C5-アルコキシ基である、請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
アルコキシ基が、アルコキシアルキル基である、請求項1に記載の医療装置。
【請求項11】
アルコキシアルキル基が、C1-C5-アルコキシ-C1-C5-アルキル基である、請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
アルコキシアルキル基が、メトキシエチル基である、請求項10に記載の医療装置。
【請求項13】
防汚ポリマーブロックが、ポリアミドポリマー骨格鎖を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項14】
防汚ポリマーブロックが、ペプトイドを含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項15】
ペプトイドが、ポリ(N-アルコキシアルキルグリシン)鎖を含む、請求項14に記載の医療装置。
【請求項16】
ペプトイドが、ポリ(N-メトキシエチルグリシン)鎖を含む、請求項14に記載の医療装置。
【請求項17】
ペプトイドが、下記式のポリマー鎖を含む、請求項1に記載の医療装置

(式中、nは、3以上の整数であり、R1及びR2は、独立して、H、C1-C6アルキル、C1-C6アルケン、芳香族、N、O又はSと組み合わせたC1-C6アルキル、N、O又はSと組み合わせたC1-C6アルケン、及びN、O又はSと組み合わせたC6-C10芳香族より選ばれ、R3は、C1-C6アルキルである)。
【請求項18】
防汚ポリマーが、ポリ(N-メトキシエチルグリシン)ブロックと生体安定性ポリ(不飽和モノマー)ブロックを含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項19】
第一層が、更に、(i)複数のペンダント環ヒドロキシル置換芳香族基を含む接着ポリマーブロックと(ii)モノマー含量が第一の追加のポリマーブロックと同じか又はモノマー含量が第一の追加のポリマーブロックと異なってもよい第二の追加のポリマーブロックを含む接着コポリマーを含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項20】
第二の追加のポリマーブロックのモノマー含量が、第一の追加のポリマーブロックと同じである、請求項19に記載の医療装置。
【請求項21】
前記環ヒドロキシル置換芳香族基が、環ヒドロキシル置換C6-C12芳香族基を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項22】
前記環ヒドロキシル置換芳香族基が、ジヒドロキシフェニル基を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項23】
前記環ヒドロキシル置換芳香族基が、3,4-ジヒドロキシフェニル基を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項24】
前記環ヒドロキシル置換芳香族基は、3,4-ジヒドロキシフェニルアルキル基を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項25】
前記環ヒドロキシル置換芳香族基が、3,4-ジヒドロキシベンジル基を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項26】
前記接着ポリマーブロックが、更に、ポリマー骨格鎖に沿って複数のアミノアルキル基を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項27】
前記接着ポリマーブロックが、更に、ポリマー骨格鎖に沿って複数のアミノ-C1-C10-アルキル基を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項28】
前記接着ポリマーブロックが、更に、ポリマー骨格鎖に沿って複数のアミノ-C2-C6-アルキル基を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項29】
前記接着ポリマーブロックが、ポリアミド骨格鎖を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項30】
前記接着ポリマーブロックが、ポリ(アミノ酸)鎖を含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項31】
前記ポリ(アミノ酸)鎖が、複数の3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン単位を含む、請求項30に記載の医療装置。
【請求項32】
前記ポリ(アミノ酸)鎖が、複数の3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン単位に隣接した複数のリジン単位を含む、請求項30に記載の医療装置。
【請求項33】
接着ポリマーが、ポリ(3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン-alt-リジン)ブロックとポリ(不飽和モノマー)ブロックを含む、請求項19に記載の医療装置。
【請求項34】
第一層と基体との間にそれらと接触して配置される第二層を更に備える、請求項1に記載の医療装置。
【請求項35】
第二層が、(i)複数のペンダント環ヒドロキシル置換芳香族基を含む接着ポリマーブロックと(ii)モノマー含量が第一の追加のポリマーブロックと同じか又はモノマー含量が第一の追加のポリマーブロックと異なってもよい第二の追加のポリマーブロックを含む接着コポリマーを含む、請求項34に記載の医療装置。
【請求項36】
第二の追加のポリマーブロックのモノマー含量が、第一の追加のポリマーブロックと同じである、請求項35に記載の医療装置。
【請求項37】
(a)基体; (b)(i)複数のペンダント環ヒドロキシル置換芳香族基を含む接着ポリマーブロックと(ii)第一の追加のポリマーブロックを含む接着コポリマーを含む第一層; 及び(c)第一ポリマーブロックと第二ポリマーブロックを含むブロックコポリマーを含む第二層を備える医療装置。
【請求項38】
ブロックコポリマーの第一ポリマーブロックと第二ポリマーブロックの一方のモノマー含量が、接着コポリマーの第一の追加のポリマーブロックと同じである、請求項37に記載の医療装置。
【請求項39】
第一ポリマーブロックが、高Tgポリマーブロックであり、第二ポリマーブロックが、低Tgポリマーブロックである、請求項37に記載の医療装置。
【請求項40】
第一ポリマーブロックが、複数のペンダントアルコキシ官能基を含む防汚ポリマーブロックであり、第二ポリマーブロックが、生体安定性ポリマーブロックである、請求項37に記載の医療装置。
【請求項41】
第一ポリマーブロックが、骨格鎖に沿って複数のアルコキシ官能基を含む防汚ポリマーブロックであり、第二ポリマーブロックが、生分解性ポリマーブロックである、請求項37に記載の医療装置。
【請求項42】
第二層が、更に、治療剤を含む、請求項37に記載の医療装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−527270(P2010−527270A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508572(P2010−508572)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/063711
【国際公開番号】WO2008/144392
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】