説明

防炎性の発泡性重合体

本発明は、難燃性の発泡性重合体に関し、この難燃性の発泡性重合体には、難燃剤としての少なくとも一つのリン化合物と、追加の難燃剤又は難燃協力剤としての少なくとも一つのイオウ化合物との組み合わせが、難燃剤系として含まれている。本発明によれば、リン化合物は、リン元素、及び/又は少なくとも一つの無機リン化合物、及び/又は;少なくとも一つの以下の一般式(I)又は(II)の有機リン化合物:
【化1】


ここで、残基R1、R2及びR3は、有機又は無機の残基を意味し互いに独立である;
であり、イオウ化合物は、イオウ元素、及び/又は少なくとも一つの無機又は有機のイオウ化合物及び/又はイオウ含有化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第一の特徴において、本発明は、少なくとも一つの発泡剤を含む防炎性の発泡性重合体に関し、この重合体には、難燃剤として働く少なくとも一つのリン化合物と追加の難燃剤又は協力剤として働く少なくとも一つのイオウ化合物との組み合わせが、難燃剤系として含まれている。
【0002】
本発明は、さらに、これらの重合体の製造方法に関し、さらに、これらの難燃剤系によって保護された高分子発泡体とその製造方法とに関し、また、発泡性重合体及び高分子発泡体における上記難燃剤系の特定の使用法にも関する。
【0003】
第二の特に有益な特徴において、本発明は、少なくとも一つの発泡剤を含む防炎性の発泡性重合体に関し、この重合体には、難燃剤として、少なくとも一つの以下の一般式(I)のリン化合物:
【0004】
【化1】

(ここで、各Rは独立に、−H、置換又は無置換の炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルケニル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリール、炭素数7〜30のアルキルアリール、炭素数1〜8のアルコキシ若しくは炭素数1〜8のアルキルチオ又は−OH若しくは−SH並びにそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はホスホニウム塩を表す)
或いはその加水分解物又は塩が含まれている。
【0005】
第二の特徴による本発明は、さらにこれらの重合体の製造方法に関し、さらにこれらの難燃剤系によって保護された高分子発泡体及びその製造方法に関し、また発泡性重合体及び高分子発泡体における上記の難燃剤系の特定の使用法にも関する。
【背景技術】
【0006】
本発明の第一の特徴(請求項1〜16)
難燃剤を用いる高分子発泡体の改質は、多くの分野において、重要かつ/又は必須である。建物用断熱材としての発泡性ポリスチレン(EPS)のポリスチレン粒子発泡体の使用又は押出ポリスチレン発泡体(XPS)のプレートの使用に関する規則は、ほとんどの場合、防炎の改質を要求している。ポリスチレンの単独重合体及び共重合体は、大部分は、ハロゲンを含有する有機化合物、特に、臭素化された有機化合物、例えばヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)によって耐炎性にされている。しかしながら、この臭素化された物質及び多くの他の臭素化された物質は、潜在的な環境及び健康被害のために、検討中であるか既に禁止されている。
【0007】
公知の代替物は、種々のハロゲンを含まない難燃剤である。しかしながら、ハロゲンを含有する難燃剤と同様の難燃剤効果を得るためには、ハロゲンを含有しない難燃剤は、通常、大幅に多量に使用しなければならない。
【0008】
これが、コンパクト熱可塑性ポリマー(compact thermoplastic polymers)に用いることのできるハロゲンを含まない難燃剤は、しばしば、それらが、発泡過程を阻害するか或いは高分子発泡体の機械的及び熱的特性に悪影響を与えるので、高分子発泡体には同様の態様で用いることができない一つの理由である。懸濁重合による発泡性ポリスチレンの製造において、多量の難燃剤が、懸濁液の安定性を低下させ、したがって、製造方法を阻害するか又は製造方法に悪影響を与えることもある。
【0009】
コンパクトポリマーに用いられる難燃剤の高分子発泡体に対する効果は、斯かる発泡体の特質及びそれらの異なる燃焼挙動のため或いは異なる燃焼試験のため、しばしば予測することができない。
【0010】
発泡性重合体におけるリンを含む物質の使用は、本技術分野において一般に知られている。
【0011】
ヨーロッパ特許公開第 834 529号は、ハロゲンを含まない難燃剤として、リン化合物と水分解(water-eliminating)金属水酸化物との混合物を含む発泡性スチレンポリマーを記述している。5〜10重量%のMg(OH)と5〜10重量%のリン酸トリフェニル(TPP)が、押出機内の溶融されたポリスチレンに添合され粒状化され、この粒状体が、発泡剤を含む水性懸濁液に再び含浸されるのが好ましい。
【0012】
国際公開第00/34342号は、難燃剤としての5〜50重量%の発泡性グラファイト及び任意に2〜20重量%のリン化合物の存在下での懸濁重合による発泡性ポリスチレンの製造方法を記述している。
【0013】
さらに、例えば、国際公開第2006/027241号には、高分子発泡体用のハロゲンを含まない難燃剤、即ち、リン化合物:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド (6H−ジベンズ[c,e]−オキサホスホリン−6−オキシド、DOPO、CAS[35948-25-5])が記載されている。
【0014】
この難燃剤は、既にある程度効果的に使用することができるが、難燃剤の含有率をできるだけ低く保ちながら又は難燃剤の含有率を上げることなしに、斯かる重合体及び高分子発泡体をさらにいっそう耐火性にする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の第一の特徴の目的は、低い難燃剤含有率と良好な品質を有する十分に耐火性、防炎性で発泡性の重合体を作り出すことである。
【0016】
この目的のためには、重合体が、耐炎性の面で最も厳しい要件、例えば建築に使用するための、例えばDIN 4102-2によるB2小炎試験又はEN 11925-2による易燃性試験でさえも満たすことができることが特に望ましい。
【0017】
本発明の第一の特徴の更なる目的は、斯かる重合体の有益な製造方法を作り出すことである。
【0018】
本発明の第一の特徴のさらに別の目的は、ハロゲンの使用なしに炎に対して保護されているが、なおも良好な機械的特性のほかに十分な品質と有益な燃焼挙動を有する高分子発泡体とともに、その有益な製造方法を作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的は、本発明の第一の特徴による独立請求項1、9、12及び16によって達成される。
【0020】
上記の種類の重合体又は高分子発泡体の場合には、目的は、難燃剤系において難燃剤として作用し、
リン元素、特に赤リン、及び/又は;
少なくとも一つの無機リン化合物或いはその加水分解物又は塩、及び/又は;
少なくとも一つの以下の一般式(I)又は(II)の有機リン化合物或いはその加水分解物又は塩:
【0021】
【化2】

ここで、残基R1、R2及びR3は、各々独立に有機又は無機の残基を表す;
であるリン化合物によって、並びに
難燃剤及び/又は協力剤として作用し、
イオウ元素、及び/又は;
少なくとも一つの無機又は有機のイオウ化合物及び/又はイオウ含有化合物;
であるイオウ化合物によって達成される。
【0022】
驚くべきことに、斯かる防炎性の重合体及び高分子発泡体は、予想外に高い程度まで向上した難燃効果を有することが分かった。そのため、難燃剤の総量を減らすことができ、このことが、例えば、製造方法、費用、製品の機械的特徴などに関して多くの利点をもたらす。特に、発泡過程及び発泡体の特徴が、ほとんど影響を受けず、このことが質の高い製品に帰着する。
【0023】
本願明細書で使用される「リン化合物」の語は、リン元素並びに有機及び無機のリン化合物並びに/或いはリン含有化合物、そのほかそれらの加水分解物又は塩を意味し、要約するものである。
【0024】
リン元素は、白リン、赤リン、黒リン及び紫リンとして四つの同素変態で存在している。これらの基本型は、各々異なる結晶構造を形成しており、これが異なる物理的性質及び反応性に帰着している。難燃剤としては、赤リンが最も好都合に用いられている。
【0025】
無機リン化合物としては、リン酸の非縮合塩などの(ポリ)リン酸塩或いはリン酸アンモニウム及びポリリン酸アンモニウムなどの縮合塩を用いるのが好都合である。
【0026】
本発明にしたがって用いられる一般式(I)又は(II)の有機リン化合物は、
【0027】
【化3】

単量体有機リン化合物又は重合体有機リン化合物などの有機リン化合物、無機リン化合物などから選択することができ、ここで、R1、R2及びR3は独立に有機又は無機の残基を表し、これらの化合物は当業者に公知である。
【0028】
これらの置換基又は残基Rは、互いに独立であり、同じでも異なっていてもよく、全くなくてもよい。残基Rは、各々独立に−H、置換又は無置換の炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルケニル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリール、炭素数7〜30のアルキルアリール、炭素数1〜8のアルコキシ又は炭素数1〜8のアルキルチオ或いは−OH又は−SH並びにそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はホスホニウム塩を表すのが好ましい。
【0029】
式(I)によるリン化合物の随意の置換基Rの「アルキル」部分は、飽和及び不飽和脂肪族化合物の両方を意味し、これらは直鎖状でも分岐していてもよく、不飽和基であるのが好ましい。置換基Rは、6以下、より好ましくは4又は3以下、さらに好ましくは2以下の炭素原子の短鎖アルキル基、又はアリール基としてのフェニルを有しているのが好ましい。より長鎖の残基、より高レベルの飽和及びより多数の置換基は、難燃効果を害することがあるため、より短鎖の残基が好ましい。特に有効なリン化合物は、置換されていないことが好ましい。
【0030】
置換基Rが存在する場合、難燃効果をさらに向上させるためには、それらは−SH、−SO3NH4、−SO−又は−SO2−などのイオウ含有置換基、或いは−PO(ONH4)2などのリン含有置換基などを有しているのが好ましい。
【0031】
リン化合物のあらゆるSH又はOH基の随意の塩のなかで、アンモニウム塩及びホスホニウム塩が、それらが難燃効果に寄与することもできるため、好ましい。アンモニウムイオン及びホスホニウムイオンは、水素原子の代わりに、最多4つまでの有機の残基、例えば、上記の置換基R(すなわち、それぞれ、NR4+及びPR4+)を有することができる。アンモニウムの場合には、水素が置換基として好ましい。
【0032】
一般式(I)又は(II)の斯かるリン化合物の例には、有機リン化合物及びその塩、例えば、リン酸エステル化合物、リン酸アミドエステル化合物及びホスホニトリル化合物、亜リン酸の有機化合物、例えば、亜リン酸のエステル、次亜リン酸の化合物、ホスフィン及びホスフィンオキシド、例えば、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシド(tricresyl phosphine oxide)などを含む単量体有機リン化合物がある。
【0033】
ハロゲン化されたリン化合物を除き、リン化合物には、最初に言及したように、十分な難燃効果を得るためには、通常比較的高い濃度のリン化合物を用いる必要があるという不都合がある。高分子発泡体では、ほとんどの場合、これらの高い濃度が、フォーム構造のつぶれに帰着する。したがって、本発明の目的は、これらの濃度をできるだけ低下させることであった。これは、驚くべきことに難燃効果の並外れた向上を示した追加のイオウ含有化合物を添加することによって達成することができた。
【0034】
斯かる発泡性重合体の有益な実施の形態は、重合体の総重量に基づいて0.5〜25重量%、特に3〜15重量%の量で、難燃剤として含まれるリン化合物を有している。
【0035】
115℃より低温で熱重量分析(TGA)により分析して、10重量%未満の重量損失を示すリン化合物が、好都合であることが分かっている。
【0036】
本明細書で使用される「イオウ化合物」の語は、イオウ元素と、有機と無機のイオウ化合物及び/又はイオウ含有化合物の両方、並びにそれらの加水分解物又は塩を意味して省略するか、意味するか又は省略するものである。
【0037】
斯かる発泡性重合体の有益な実施の形態は、重合体の総重量に基づいて0.5〜25重量%、特に3〜15重量%の量で、難燃剤として含まれるイオウ化合物を有している。
【0038】
特に適しているのは、イオウ元素及びイエロー・シクロオクタサルファー(S8)であり、得られるEPS粒状体に基づいて0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、最も好ましくは約2重量%の量で添加されるのがよい。
【0039】
イオウ化合物としては、例えば、硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、スルファン、スルホキシル酸塩、スルホン、チオ硫酸塩、亜チオン酸塩、チオン酸塩、二硫酸塩、スルホキシド、窒化イオウ、ハロゲン化イオウ及び/又はチオール、チオエーテル、チオフェンなどの有機イオウ化合物、などを有益に使用することができる。
【0040】
加えて、115℃より低温で熱重量分析(TGA)により分析して10重量%未満の重量損失を示すイオウ化合物、例えば、チオ硫酸アンモニウム、ジカプロラクタムジスルフィド、硫化亜鉛、ポリ硫化フェニレンなどが、好都合であることが分かっている。
【0041】
イオウ含有化合物又はイオウ化合物が、少なくとも一つのイオウ原子が二価の形で存在する少なくとも一つのS-S結合を有している場合、例えば、二亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、シスチン、アミルフェノールジスルフィド、ポリ-tert-ブチルフェノールジスルフィドなどが特に有益である。
【0042】
リン化合物とイオウ化合物の特に好ましい組み合わせは:
ポリリン酸アンモニウムとイエローサルファー(S8)、
ポリリン酸アンモニウムとチオ硫酸アンモニウム、
ポリリン酸アンモニウムと硫化亜鉛、
トリフェニルホスフィンとシスチン、及び
トリフェニルホスフィンとポリ硫化フェニレン
の組み合わせである。
【0043】
本発明の発泡性重合体は、発泡性スチレン重合体(EPS)又は発泡性粒状スチレンポリマー(EPS)であるのが好ましい。好都合なことに、それらはスチレンの単独重合体又は共重合体からなっており、透明な(crystal-clear)ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アニオン重合させたポリスチレン又は耐衝撃性ポリスチレン(A-IPS)、スチレンとα-メチルスチレンの共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)重合体或いはそれらの混合物又はポリ(フェニレンエーテル)(PPE)若しくはポリ(硫化フェニレン)(PPS)との混合物からなっているのが好ましい。特に、ポリスチレンに関しては、高品質の製品に対する要求が強い。
【0044】
機械的性質又は温度耐性を改善するため、上記のスチレンポリマーを、随意に相溶化剤を用いて、通常ポリマー溶融物に基づいて、合計で最大30重量%の割合、好ましくは1〜10重量%の範囲の割合のポリアミド(PA)などの熱可塑性ポリマー、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)などのポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン、又はポリエーテルスルフィド(PES)、或いはそれらの混合物と、混合することができる。
【0045】
加えて、上記の量範囲の混合物は、例えば、疎水的に改質された又は官能化されたポリマー又はオリゴマー、ポリアクリル酸エステル又はポリジエンなどのゴム、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、或いは生分解性の脂肪族又は脂肪族/芳香族共重合ポリエステルを用いて調製することもできる。
【0046】
適した相溶化剤は、例えば、無水マレイン酸で改質したスチレン共重合体、エポキシ基含有ポリマー又はオルガノシランである。
【0047】
難燃剤系の効能は、熱ラジカル形成剤過酸化ジクミル(thermal radical formers dicumyl peroxide)、過酸化ジ-tert-ブチル又はジクミルなどの適当な難燃性協力剤を添加することによりさらに向上させることができる。
【0048】
また、種々の追加の難燃剤、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、金属酸化物、金属水酸化物、リン酸塩、ホスフィン酸塩、又はSb2O3若しくはZn化合物などの協力剤を用いることもできる。
【0049】
重合体又は高分子発泡体が全くハロゲンを含まない必要のない場合には、リン化合物を使用して、少量のハロゲンを含有する、特に臭素化された難燃剤、例えばヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を、好ましくは0.05〜1、特に0.1〜0.5重量%の範囲の量で添加することにより、ハロゲンを少なくした発泡体を製造することができる。
【0050】
本発明のさらに別の特徴は、斯かる重合体の製造に関する。本発明によれば、上記の防炎性の発泡性重合体は、一般に知られる様に、上記の難燃剤並びに随意にイオウ及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物又はイオウ化合物を混合することによって製造することができる。
【0051】
有益な方法が、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、一以上のリン化合物、イオウ化合物及び発泡剤を、スチレンポリマー溶融物と混合することと、それに続く粒状化を含んでいる。
【0052】
そのほか、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、一以上のリン化合物及びイオウ化合物を、未だ粒状のポリスチレン重合体と混合した後に溶融し、次いで溶融物を発泡剤と混合し、粒状化することを規定することができる。
【0053】
ほかに、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、一以上のリン化合物及びイオウ化合物を、未だ粒状のEPSと混合し、次いでこの混合物を溶融し、粒状化することを規定することができる。
【0054】
そのほか、さらに、一以上のリン化合物、イオウ化合物、及び発泡剤の存在下に、水性懸濁液中でのスチレンの懸濁重合によって粒状化が行われることを規定することができる。
【0055】
本発明の防炎性の発泡性スチレン重合体(EPS)の本発明の更なる製造方法が、以下の工程:
重量平均分子量(Mw)>120000g/mol、好ましくは150000〜250000g/mol、より好ましくは180000〜220000g/molの分子量を有する粒状のPS又はEPS、一以上のリン化合物、イオウ化合物、並びに随意に一以上の更なる添加剤を、一緒に押出機に投入すること、
押出機内で全ての成分を一緒に溶融すること、
随意に少なくとも一つの発泡剤を添加すること、
全ての成分を120℃を越える温度で混合すること、
例えば1〜20バールで、5mm未満、好ましくは0.2〜2.5mmの粒度まで、30〜100℃、最も好ましくは50〜80℃の水温での加圧水中粒状化(pressurized underwater granulation)による粒状化、
随意に、例えば、ケイ酸塩、脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどのコーティング剤で、表面を被覆すること、
を含んでいる。
【0056】
本発明のハロゲンを含まない防炎性の発泡性スチレンポリマー(EPS)及びスチレンポリマー押出発泡体(XPS)は、発泡剤、一以上のリン化合物並びにイオウ及元素及び/又はイオウ含有化合物又はイオウ化合物をポリマー溶融物に混入させ、次いで押出をして発泡体シート、発泡体ストランド、又は発泡性の粒体にすることによって製造することができる。
【0057】
発泡性スチレンポリマーは、120000g/molを越える分子量を有しているのが好ましく、180000〜220000g/molの範囲の分子量を有しているのがより好ましい。剪断及び/又は温度の影響による分子量の減少のため、発泡性ポリスチレンの分子量は、通常、用いるポリスチレンの分子量よりも約10000g/mol少ない。
【0058】
さらに、前記の熱可塑性ポリマー、特にスチレンポリマー及び発泡性スチレンポリマー(EPS)のリサイクルポリマーを、スチレンポリマー溶融物に添加することができる。すなわち、それらの性質を実質的に劣化させない量で、通常、最多50重量%の量で、特に1〜20重量%の量で添加することができる。
【0059】
発泡剤含有スチレンポリマー溶融物は、通常、一以上の均一に分散した発泡剤を、発泡剤含有スチレンポリマー溶融物に基づいて、合計で2〜10重量%、好ましくは3〜7重量%の割合で含んでいる。適した発泡剤は、通常EPSに用いられる物理的発泡剤、例えば、炭素原子2〜7個の脂肪族炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル又はハロゲン化された炭化水素である。イソブタン、n-ブタン、イソペンタン、又はn-ペンタンが使用されるのが好ましい。XPSに関しては、CO2或いは、CO2とアルコール又はケトンとの混合物が使用されるのが好ましい。
【0060】
添加する発泡剤の量は、発泡性スチレンポリマー(EPS)が、7〜200g/L、好ましくは10〜50g/Lの膨張率を有するように選択される。
【0061】
本発明の発泡性粒状スチレンポリマー(EPS)は、通常、700g/L以下、好ましくは590〜660g/Lの範囲の嵩密度を有している。
【0062】
さらに、添加剤、核生成剤、充填剤、可塑剤、可溶性及び不溶性の無機及び/又は有機の染料及び顔料、例えば、カーボンブラック、グラファイト又はアルミニウム粉末などの赤外線吸収剤を、一緒に又は空間的に隔てられた態様で、例えばミキサー又はサイド押出機を用いて、スチレンポリマー溶融物に添加することができる。通常、染料及び顔料は、0.01〜30重量%の範囲、好ましくは1〜10重量%の範囲の量で添加される。スチレンポリマー中での顔料の均一で微細な分散(homogeneous and microdisperse distribution)のため、特に極性の顔料に関しては、分散剤、例えばオルガノシラン、エポキシ基含有ポリマー、又は無水マレイン酸でグラフト化されたスチレンポリマーを用いるのが有益である。好ましい可塑剤は、鉱油、フタル酸エステルであり、これらは、スチレン重合体に基づいて0.05〜10重量%の量で用いられる。
【0063】
本発明のさらに別の特徴は、上述のリン化合物の少なくとも一つとともにイオウ元素及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物又はイオウ化合物を難燃剤として含む高分子発泡体、特にスチレンポリマー粒子発泡体又は押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)に関する。
【0064】
有益な高分子発泡体が、本発明に係る防炎性の発泡性重合体から、特に発泡性スチレン重合体(EPS)から、特に重合体ビーズを発泡させて凝結させることにより又は粒状体を押し出すことにより、得られる。
【0065】
このハロゲンを含まない防炎性の高分子発泡体は、8〜200g/Lの範囲の密度を有しているのが好ましく、10〜50g/Lの範囲の密度を有しているのが最も好ましい。それらのハロゲンを含まない防炎性の高分子発泡体は、80%超が独立気泡発泡体であるのが好ましく、95〜100%が独立気泡発泡体であるのが最も好ましく及び/又は1mmあたり0.5超の気泡を有する大部分が独立気泡の構造を有している。
【0066】
本発明によれば、発泡性重合体において、特に発泡性スチレン重合体(EPS)又は発泡性スチレンポリマー粒状体(EPS)において、或いは発泡性重合体から発泡させることにより得られるような高分子発泡体において、特にスチレンポリマー粒子発泡体において、或いは押出ポリスチレン硬質発泡体において(XPS)、リン化合物の少なくとも一つが、難燃剤又は協力剤としてのイオウ及び/又はイオウ含有化合物又はイオウ化合物と組み合わせて使用されている。
【0067】
防炎性の押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)を製造するため、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、リン化合物、イオウ化合物及び発泡剤が、スチレンポリマー溶融物と混合された後、発泡されるか、又はダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、リン化合物及びイオウ化合物が、未だ粒状のポリスチレン重合体に添加された後溶融され、しかる後、溶融物には発泡剤が添加され発泡される。
【0068】
使用することのできるリン化合物及びイオウ化合物及びそれらの製造方法それ自体は、本技術分野における一般知識から当業者に知られている。
【0069】
発泡性重合体が防炎性にされる製造方法、例えば、粒状体又はビーズの形態のEPSの製造方法それ自体は、当業者に知られている。上記のリン化合物及びイオウ化合物を含む本発明による重合体の製造は、ほぼ類似している。例えば、国際公開WO 2006/027241号の代表的な実施の形態を用いることができる。高分子発泡体及びXPSについても同様である。
【0070】
どのようにしてイオウ又はイオウ化合物を添加するかも公知である。例えば、イオウ元素は、カプセルに入れられた形態或いは被覆された粒状体又は粒子の形態で導入することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明の第一の特徴による本発明を、五つの具体的な代表的な実施の形態1〜5に基づき、例示としてここで詳細に説明するが、それらは限定するものと解釈すべきではない。実施例6〜10は、難燃剤系の相乗効果を示すための比較例である。
【0072】
具体的な有益な代表的実施の形態は、難燃剤の組み合わせ:
ポリリン酸アンモニウム(APP)とイエローサルファー(S8)、
ポリリン酸アンモニウム(APP)とチオ硫酸アンモニウム(ATS)、
ポリリン酸アンモニウム(APP)と硫化亜鉛(ZnS)、
トリフェニルホスフィンとシスチン、及び
トリフェニルホスフィンとポリ硫化フェニレン(PPS)
を示している。
【0073】
実施例1(代表的実施の形態 APP+S):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、12重量%のポリリン酸アンモニウム(APP)と2重量%のイエローサルファー(S8)が、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で190℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機(pressurized underwater granulator)を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
実施例2(代表的実施の形態 APP+ATS):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、12重量%のポリリン酸アンモニウム(APP)と5重量%のチオ硫酸アンモニウム(ATS)が、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で150℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
実施例3(代表的実施の形態 APP+ZnS):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、12重量%のポリリン酸アンモニウム(APP)と5重量%の硫化亜鉛(ZnS)が、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で190℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
実施例4(代表的実施の形態 トリフェニルホスフィン+シスチン):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、12重量%のトリフェニルホスフィンと5重量%のシスチンが、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で190℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
実施例5(代表的実施の形態 トリフェニルホスフィン+PPS):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、12重量%のトリフェニルホスフィンと5重量%のポリ硫化フェニレン(PPS)が、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で190℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
実施例6(実施例1〜3に対する比較例 APP単独):
実施例1が繰り返されたが、イオウ又はイオウ化合物が添加されなかったことが異なる。
実施例7(実施例4及び5に対する比較例 トリフェニルホスフィン単独):
実施例4が繰り返されたが、イオウ又はイオウ化合物が添加されなかったことが異なる。
実施例8(実施例3に対する比較例 ZnS単独):
実施例3が繰り返されたが、リン化合物が添加されなかったことが異なる。
実施例9(実施例5に対する比較例 PPS単独):
実施例5が繰り返されたが、リン化合物が添加されなかったことが異なる。
実施例10(参考例 HBCD):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、2重量%のHBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)が、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で190℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
【0074】
以下の表1は、規定した試験体の燃焼挙動、及び発泡させた発泡体ビーズの崩壊までの時間すなわち安定性を試験した結果を、明瞭に併記している。
【0075】
【表1】


二つの右側の欄の実験結果は、上述の実施例1〜10の製造物の試験によって得られた。
【0076】
実施例6〜9は、実施例1〜5の参考例である。実施例10は、先行技術の参考例である。
【0077】
全ての実験における全ての評価は、結果が数字1〜5によって示され、低い数字、特に1は、より有益な傾向があり、高い数字、特に5は、より不都合であることにおいて、この参考実験10を参照している。
詳細な説明
燃焼試験(表1の第2欄):
実施例から得られたEPS粒状体を、飽和蒸気によって予め発泡して15〜25kg/mの粗密度を有する発泡体ビーズにして、24時間保管し、成形装置内で発泡体プレートに成形した。
【0078】
厚さ2cmの試験片が、発泡体プレートから切り取られ、それらは、72時間後、DIN4102-2(B2-小炎試験)による燃焼試験において、70℃で状態調節を受けた。
【0079】
1〜5の数字で採点した結果は、ヘキサブロモシクロドデカンによって防炎されたEPS(実施例8)との関連で評価された。これに関連し、「燃焼試験」の表題の付いた欄における1の点数は、試験物質が、HBCDによって保護されたEPSと同様に、その燃焼挙動に関して作用したことを示している。5の点数は、燃焼挙動が非常に劣っており、防炎されていないEPSの燃焼挙動と等しいことを示している。
発泡体構造の安定性(表1の第3欄):
実施例から得られたEPS粒状体を、飽和蒸気に曝し、ビーズが崩壊し始めるまでの時間を測定した。結果の概要において、この時間は、難燃剤を含まないEPS粒子に関連して評価された。リンに基づく難燃剤の軟化効果により、EPS粒子は、予備発泡の間、異なる安定性を示した。
【0080】
第3欄において、1の値は、ビーズが通常の安定性を有していたことを示している。5の値は、成形に適したであろう発泡体構造が形成されることなしに、ビーズが直ちに崩壊したことを示している。
【0081】
これらの結果から明らかに分かるように、実施例1〜5の材料は、実施例6〜9の材料と比較して、燃焼試験において驚くほどはっきりと向上した結果を示しており、これらの結果は、特にこの程度までとは、予想することができなかった。
【0082】
リン化合物のみの添加(実施例6及び7)も、イオウ化合物のみの添加(実施例8及び9)も、匹敵しうる結果を達成することができなかった。
【0083】
燃焼挙動が、リン化合物とイオウ化合物の同時の添加により、相乗的に向上した。
【0084】
本発明による又は本発明の方法によって保護された重合体及び発泡体は、したがって、リン化合物又はイオウ化合物のみによって保護されたポリマーと比較して、それらの燃焼挙動に関して大幅に有益である。
【0085】
また、驚くべきことに、安定性がほとんど影響を受けず、それどころか向上さえした。
【0086】
本発明の第二の特徴(請求項17〜33)
第二の特に有益な特徴において、本発明は、少なくとも一つの発泡剤を含む防炎性の発泡性重合体に関し、この重合体には、難燃剤として、少なくとも一つの以下の一般式(I)のリン化合物:
【0087】
【化4】

(ここで、各残基Rは独立に、−H、置換又は無置換の炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルケニル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリール、炭素数7〜30のアルキルアリール、炭素数1〜8のアルコキシ若しくは炭素数1〜8のアルキルチオ又は−OH若しくは−SH並びにそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はホスホニウム塩を表す)
或いはその加水分解物又は塩が含まれている。
【0088】
本発明の第二の特徴によれば、本発明は、さらにこれらの重合体の製造方法に関し、さらにこれらの難燃剤を用いて保護された高分子発泡体及びその製造方法に関し、また発泡性重合体及び高分子発泡体における上記の難燃剤の特定の用法にも関する。
【0089】
難燃剤を用いる高分子発泡体の改質は、多くの分野において、重要かつ/又は必須である。建物用断熱材としての発泡性ポリスチレン(EPS)のポリスチレン粒子発泡体の使用又は押出ポリスチレン発泡体プレート(XPS)の使用に関する規則は、ほとんどの場合、防炎の改質を要求している。ポリスチレンの単独重合体及び共重合体は、大部分、ハロゲンを含有する有機化合物、特に、臭素化された有機化合物、例えばヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)などによって耐炎性にされている。しかしながら、この及び多くの他の臭素化された物質は、それらの潜在的な環境及び健康の危害のおそれのために、議論に曝されているか又は既に禁止されている。
【0090】
代替物として、多数のハロゲンを含まない難燃剤が存在している。しかしながら、ハロゲン化された難燃剤と同様の難燃剤効果を得るためには、ハロゲンを含有しない難燃剤は、著しく多量に使用する必要がある。
【0091】
このことの部分的理由は、コンパクト熱可塑性ポリマーに用いることのできるハロゲンを含まない難燃剤は、しばしば、それらが、発泡過程を阻害するか或いは高分子発泡体の機械的及び熱的特性に悪影響を与えるので、高分子発泡体には同様の態様で用いることができないことである。加えて、懸濁重合による発泡性ポリスチレンの製造において、多量の難燃剤が、懸濁液の安定性を低下させ、製造方法を阻害するか又は製造方法に悪影響を与えることがある。
【0092】
高分子発泡体において、コンパクトポリマーに用いられる難燃剤の効果は、斯かる発泡体の特徴及び異なる燃焼挙動のため又は異なる燃焼試験のため、しばしば予測することができない。
【0093】
先行技術から、これに関連して、国際公開第 2006/027231号には、高分子発泡体用のハロゲンを含まない難燃剤が記載されており、この難燃剤は、大部分が独立気泡の高分子発泡体の製造を可能にしながら、発泡過程に実質上悪影響を与えない。この難燃剤は、1970年代初期から公知で使用されているリン化合物であり、このリン化合物は、例えば、日本国特許公開第2004−035495号、日本国特許公開第2002−069313号又は日本国特許公開第2001−115047号に従って製造することができる。リン化合物リン化合物:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド (6H−ジベンズ[c,e]−オキサホスホリン−6−オキシド、DOPO、CAS[35948-25-5])が、排他的にではないが、特に好ましい。
【0094】
【化5】

この難燃剤は、既にある程度効果的に使用することができるが、難燃剤の含有率をできるだけ低いレベルに保ちながら又は難燃剤の含有率を上げることなしに、斯かる重合体及び高分子発泡体をさらにいっそう耐火性にする要求がある。
【0095】
したがって、本発明の第二の特徴の目的は、低い難燃剤含有率と良好な品質を有する十分に耐火性、防炎性で発泡性の重合体を作り出すことである。
【0096】
斯かる重合体の有益な製造方法を作り出すことも、本発明の第二の特徴の目的である。
【0097】
本発明の第二の特徴のさらに別の目的は、ハロゲンの使用なしに炎に対して保護されているが、なおも十分な品質と有益な燃焼挙動と良好な機械的特性を有する高分子発泡体とともに、斯かる高分子発泡体の有益な製造方法を作り出すことである。
【0098】
これを達成するためには、重合体が、耐炎性の面で最も厳しい要件、例えば建築に使用するための、例えばDIN 4102-2によるB2小炎試験又はEN 11925-2による易燃性試験でさえも満たすことができることが特に望ましい。
【0099】
これらの目的は、独立請求項17、26、29及び33によって達成される。
【0100】
本発明の第二の特徴による目的は、重合体に関して請求項17の特徴要件事項部の特徴により、難燃剤又は協力剤として、さらにイオウ及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物若しくはイオウ化合物を添加することによって達成される。
【0101】
驚くべきことに、このようにして炎に対して保護されている重合体及び高分子発泡体は、予想外のレベルまで向上した難燃効果を有することが分かった。そのため、難燃剤の総量を減らすことができ、このことが、例えば、製造方法、費用、製品の機械的特徴などに関して多くの利点をもたらす。特に、発泡過程及び発泡体の機械的特徴が、ほとんど影響を受けず、このことが質の高い製品に帰着する。
【0102】
式(I)における置換基又は残基Rは、互いに独立であり、同じでも異なっていてもよく、全くなくてもよい。例えば、化合物(I)の二つのベンゼン環の各々において、0〜4個の同じ又は異なる残基があってよく、これらの残基はまた同様に、他のベンゼン環の残基と同じか又は異なっている。
【0103】
本明細書において、式(I)のリン化合物の随意の置換基Rの「アルキル」部分は、飽和及び不飽和脂肪族化合物の両方を意味し、これらは直鎖状でも分岐していてもよく、不飽和基であるのが好ましい。置換基Rは、6以下、より好ましくは4又は3以下、さらに好ましくは2以下の炭素原子の短鎖アルキル基、又はアリール基としてのフェニルを有しているのが好ましい。より長鎖の残基、高度の飽和及びより多数の置換基は、難燃効果に対して不都合な影響を有することがあるため、より短鎖の残基が好ましい。特に有効なリン化合物は、置換されていないことが好ましく、例えばDOPOが好ましい。
【0104】
置換基Rが存在する場合には、難燃効果をさらに向上させるためには、それらは−SH、−SO3NH4、−SO−又は−SO2−などのイオウ含有置換基、或いは−PO(ONH4)2などのリン含有置換基などを有しているのが好ましい。
【0105】
リン化合物のあらゆるSH又はOH基の随意の塩のなかで、アンモニウム塩及びホスホニウム塩が、それらが難燃効果に寄与することもできるため、好ましい。アンモニウムイオン及びホスホニウムイオンは、水素原子の代わりに、最多4つの有機の残基、例えば、先に定義した置換基R(すなわち、NR4+及びPR4+)を有することができるが、アンモニウムの場合には、水素が好ましい置換基である。
【0106】
リン化合物の特に好ましい代表は、化合物9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)
【0107】
【化6】

及びその開環加水分解物である。
【0108】
さらに別の好ましいリン化合物においては、R1は、-OH、-ONH4、-SH、-S-DOPO又は-S-DOPSである。これは、以下のリン化合物をもたらす:9,10−ジヒドロ−10−ヒドロキシ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO-OH)、9,10−ジヒドロ−10−ヒドロキシ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドアンモニウム塩(DOPO-ONH4)、9,10−ジヒドロ−10−メルカプト−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO-SH)、ビス(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−イル)オキシド(DOPO-S-DOPO)、又は9,10−ジヒドロ−10−(9,10−ジヒドロ−10−ヒドロキシ−9−オキサ−10−ホスファ−10−チオキサフェナントレン−10−イルチオ)9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO-S-DOPS)。
【0109】
発泡性重合体の有益な実施の形態は、ポリマーの総重量に基づいて0.5〜25重量%、特に3〜15重量%の量で、難燃剤として含まれるリン化合物を有している。
【0110】
イオウ化合物としては、例えば、硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、スルファン、スルホキシル酸塩、スルホン、チオ硫酸塩、亜チオン酸塩、チオン酸塩、二硫酸塩、スルホキシド、窒化イオウ、ハロゲン化イオウ及び/又はチオール、チオエーテル、チオフェンなどの有機イオウ化合物、などを有益に使用することができる。
【0111】
特に適しているのは、イオウ元素及びイエロー・シクロオクタサルファー(S8)であり、得られるEPS粒状体に基づいて0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、最も好ましくは約2重量%の量で添加されるのがよい。
【0112】
イオウ含有化合物又はイオウ化合物が、115℃より低温で熱重量分析(TGA)により分析して10重量%未満の重量損失を示す場合、例えば、チオ硫酸アンモニウム、ジカプロラクタムジスルフィド、ポリ硫化フェニレン、硫化亜鉛などが好都合である。
【0113】
イオウ含有化合物又はイオウ化合物が、少なくとも一つのイオウ原子が二価の形で存在する少なくとも一つのS-S結合を有している場合、例えば、二亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、シスチン、アミルフェノールジスルフィド、ポリ-tert-ブチルフェノールジスルフィドなどが特に有益である。
【0114】
本発明の発泡性重合体は、発泡性スチレン重合体(EPS)又は発泡性粒状スチレンポリマー(EPS)であるのが好ましい。好都合なことに、それらはスチレンの単独重合体又は共重合体からなっており、透明なポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アニオン重合させたポリスチレン又は耐衝撃性ポリスチレン(A-IPS)、スチレンとα-メチルスチレンの共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)重合体或いはそれらの混合物又はポリ(フェニレンエーテル)(PPE)との混合物からなっているのが好ましい。特に、ポリスチレンに関しては、高品質の製品に対する要求が強い。
【0115】
機械的性質又は温度耐性を改善するため、上記のスチレンポリマーを、随意に相溶化剤を用いて、通常ポリマー溶融物に基づいて、合計で最大30重量%の割合、好ましくは1〜10重量%の範囲の割合のポリアミド(PA)などの熱可塑性ポリマー、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)などのポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン、又はポリエーテルスルフィド(PES)、或いはそれらの混合物と、混合することができる。
【0116】
加えて、上記の量範囲の混合物は、例えば、疎水的に改質された又は官能化されたポリマー又はオリゴマー、ポリアクリル酸エステル又はポリジエンなどのゴム、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、或いは生分解性の脂肪族又は脂肪族/芳香族共重合体を用いて調製することもできる。
【0117】
適した相溶化剤は、例えば、無水マレイン酸で改質したスチレン共重合体、エポキシ基含有ポリマー又はオルガノシランである。
【0118】
リン化合物の効能は、熱ラジカル形成剤過酸化ジクミル、過酸化ジ-tert-ブチル又はジクミルなどの適当な難燃性協力剤を添加することによりさらに向上させることができる。
【0119】
加えて、他の難燃剤、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、金属酸化物、金属水酸化物、或いはSb2O3又はZn化合物などの協力剤を用いることができる。
【0120】
重合体又は高分子発泡体が全くハロゲンを含まない必要のない場合には、リン化合物を使用し、少量のハロゲン化された、特に臭素化された難燃剤、例えばヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を、好ましくは0.05〜1、特に0.1〜0.5重量%の範囲の量で添加して、ハロゲンを少なくした発泡体を製造することができる。
【0121】
本発明のさらに別の特徴は、斯かる重合体の製造に関する。本発明によれば、上記の防炎性の発泡性重合体は、一般に知られる様に、上記のリン化合物並びにイオウ及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物又はイオウ化合物を混合することによって製造することができる。
【0122】
有益な方法が、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、難燃剤、例えばDOPO、イオウ化合物及び発泡剤を、スチレンポリマー溶融物と混合すること、及びそれに続く粒状化を含んでいる。
【0123】
そのほか、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、難燃剤、例えばDOPO及びイオウ化合物を、未だ粒状のポリスチレン重合体に混入させた後に溶融させること、及び、次いで溶融物に発泡剤を添加し、粒状化することを規定することができる。
【0124】
ほかに、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、難燃剤、例えばDOPO及びイオウ化合物を、未だ粒状のEPSと混合すること、及び、次いでこの混合物を溶融し、粒状化することを規定することができる。
【0125】
そのほか、さらに、難燃剤、例えばDOPO、イオウ化合物、及び発泡剤の存在下に、水性懸濁液中でのスチレンの懸濁重合によって粒状化を行うことを規定することができる。
【0126】
本発明の防炎性の発泡性スチレン重合体(EPS)の本発明の更なる製造方法が、以下の工程:
重量平均分子量(Mw)>120000g/mol、好ましくは150000〜250000g/mol、より好ましくは180000〜220000g/molの分子量を有する粒状のPS又はEPS、難燃剤、特にDOPO、イオウ化合物、及び随意に一以上の更なる添加剤を、一緒に押出機に投入すること、
押出機内で全ての成分を一緒に溶融すること、
随意に少なくとも一つの発泡剤を添加すること、
全ての成分を120℃を越える温度で混合すること、
例えば1〜20バールで、5mm未満、好ましくは0.2〜2.5mmの粒度まで、30〜100℃、最も好ましくは50〜80℃の水温での加圧水中粒状化(pressurized underwater granulation)による粒状化、
随意に、例えば、ケイ酸塩、脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどのコーティング剤で、表面を被覆すること、
を含んでいる。
【0127】
本発明のハロゲンを含まない防炎性の発泡性スチレンポリマー(EPS)及びスチレンポリマー押出発泡体(XPS)は、発泡剤、一般式(I)のリン化合物又はその加水分解物若しくは塩、並びにイオウ元素及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物又はイオウ化合物を、ポリマー溶融物に混入させ、次いで押出をして発泡体シート、発泡体ストランド、又は発泡性の粒体とすることによって製造することができる。
【0128】
発泡性スチレンポリマーは、120000g/molを越える分子量を有しているのが好ましく、180000〜220000g/molの範囲の分子量を有しているのがより好ましい。剪断及び/又は温度の影響による分子量の減少のため、発泡性スチレンの分子量は、通常、用いるポリスチレンの分子量よりも約10000g/mol少ない。
【0129】
さらに、前記の熱可塑性ポリマー、特にスチレンポリマー及び発泡性スチレンポリマー(EPS)のリサイクルポリマーを、スチレンポリマー溶融物に添加することができる。すなわち、それらの性質を実質的に劣化させない量で、通常、最多50重量%の量で、特に1〜20重量%の量で、斯かるリサイクルポリマーを添加することができる。
【0130】
発泡剤含有スチレンポリマー溶融物は、通常、一以上の均一に分散した発泡剤を、発泡剤含有スチレンポリマー溶融物に基づいて、合計で2〜10重量%、好ましくは3〜7重量%の割合で含んでいる。適した発泡剤は、通常EPSに用いられる物理的発泡剤、例えば、炭素原子2〜7個の脂肪族炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル又はハロゲン化した炭化水素である。イソブタン、n-ブタン、イソペンタン、又はn-ペンタンを用いるのが好ましい。XPSに関しては、CO2或いは、CO2とアルコール又はケトンとの混合物を用いるのが好ましい。
【0131】
添加する発泡剤の量は、発泡性スチレンポリマー(EPS)が、7〜200g/L、好ましくは10〜50g/Lの膨張率を有するように選択される。
【0132】
本発明の発泡性粒状スチレンポリマー(EPS)は、通常、700g/L以下、好ましくは590〜660g/Lの嵩密度を有している。
【0133】
さらに、添加剤、核生成剤、充填剤、可塑剤、可溶性及び不溶性の無機及び/又は有機の染料及び顔料、例えば、カーボンブラック、グラファイト又はアルミニウム粉末などの赤外線吸収剤を、一緒に又は空間的に隔てられた態様で、例えばミキサー又はサイド押出機を用いて、スチレンポリマー溶融物に添加することができる。通常、染料及び顔料は、0.01〜30重量%の範囲、好ましくは1〜10重量%の範囲の量で添加される。スチレンポリマー中での顔料の均一で微細な分散(homogeneous and microdisperse distribution)のためには、分散剤、例えばオルガノシラン、エポキシ基含有ポリマー、又は無水マレイン酸でグラフト化されたスチレンポリマーを用いるのが有益であり、特に極性の顔料には有益である。好ましい可塑剤は、鉱油、フタル酸エステルであり、これらは、スチレン重合体に基づいて0.05〜10重量%の量で用いられる。
【0134】
本発明のさらに別の特徴は、高分子発泡体、特に一般式(I)の上記リン化合物の少なくとも一つ、又はその開環加水分解物若しくは塩とともに、イオウ元素及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物又はイオウ化合物を難燃剤として含む高分子発泡体、特にスチレンポリマー粒子発泡体又は押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)に関する。
【0135】
有益な高分子発泡体が、本発明に係る防炎性の発泡性重合体から、特に発泡性スチレン重合体(EPS)から、特に重合体ビーズを発泡させて凝結させることにより又は粒状体を押し出すことにより得られる。
【0136】
このハロゲンを含まない防炎性の高分子発泡体は、8〜200g/Lの範囲の密度を有しているのが好ましく、10〜50g/Lの範囲の密度を有しているのが最も好ましい。それらのハロゲンを含まない防炎性の高分子発泡体は、80%超が独立気泡発泡体であるのが好ましく、95〜100%が独立気泡発泡体であるのが最も好ましく及び/又は1mmあたり0.5超の気泡を有する大部分が独立気泡の構造を有している。
【0137】
本発明によれば、発泡性重合体において、特に発泡性スチレン重合体(EPS)又は発泡性スチレンポリマー粒状体(EPS)において、或いは発泡性重合体から発泡させることにより得られる高分子発泡体において、特にスチレンポリマー粒子発泡体において、又は押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)において、一般式(I)のリン化合物の少なくとも一つ或いはその開環加水分解物又は塩が、難燃剤又は協力剤としてのイオウ及び/又はイオウ含有化合物又はイオウ化合物と組み合わせて使用されている。
【0138】
防炎性の押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)を製造するため、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、リン化合物、イオウ化合物及び発泡剤が、スチレンポリマー溶融物と混合された後に発泡されるか、又はダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて、リン化合物及びイオウ化合物が、未だ粒状のポリスチレン重合体と混合されて溶融され、続いて、溶融物には発泡剤が添加され発泡される。
【0139】
本発明で使用することのできる式(I)によるリン化合物及びそれらの製造方法は、本技術分野における当業者には知られている。発泡性重合体が防炎性にされる製造方法、例えば、粒状体又はビーズの形態のEPSの製造方法それ自体は、当業者に知られている。上記の難燃剤並びにイオウ又はイオウ化合物を含む本発明によるポリマーの製造は、ほぼ類似している。例えば、国際公開第2006/027241号の代表的な実施の形態を用いることができる。高分子発泡体及びXPSについても同様である。
【0140】
どのようにしてイオウ又はイオウ化合物を添加するかも公知である。例えば、イオウ元素は、カプセルに入れられた形態で、或いは被覆された粒状体又は粒子として導入することができる。
【0141】
本発明の第二の特徴による本発明を、四つの具体的な代表的な実施の形態1〜4に基づき、例示としてここで詳細に説明するが、それらは限定するものと解釈すべきではない。実施例5〜8は、DOPOとイオウの相乗効果を示すための比較例である。
【0142】
実施例1(代表的実施の形態 DOPO7.5%+S):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、7.5重量%の9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)と2重量%のイエローサルファー(S8)が、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で190℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機(pressurized underwater granulator)を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
実施例2(代表的実施の形態 DOPO15%+S):
実施例1が繰り返されたが、得られるEPS粒状体に基づいて、15重量%の9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)が混合されたことが異なる。
実施例3(代表的実施の形態 DOPO15%+ATS):
実施例2が繰り返されたが、得られるEPS粒状体に基づいて、6重量%のチオ硫酸アンモニウムが混合されたことが異なる。
実施例4(代表的実施の形態 DOPO15%+DCDS):
実施例2が繰り返されたが、得られるEPS粒状体に基づいて、7重量%のジカプロラクタムジスルフィド(DCDS)が混合されたことが異なる。
実施例5(実施例1に対する比較例 DOPO7.5%単独、S不使用):
実施例1が繰り返されたが、イオウが添加されなかったことが異なる。
実施例6(実施例2に対する比較例 DOPO15%単独、S不使用):
実施例2が繰り返されたが、イオウが添加されなかったことが異なる。
実施例7(比較例 S単独、DOPO不使用):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、2重量%のイエローサルファー(S8)が、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で190℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
実施例8(比較例 HBCD単独、S不使用、DOPO不使用):
スチレンポリマー(SUNPOR EPS-STD、6重量%ペンタン、鎖長 重量平均分子量(Mw)=200000g/mol、多分散性 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2.5)に、得られるEPS粒状体に基づいて、2重量%のHBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)が、二軸押出機の取り込み領域において混合され、押出機内で190℃で溶融された。そのようにして得られたポリマー溶融物は、20kg/hのスループットでノズル板を通って搬送され、加圧水中造粒機を用いてコンパクトEPS粒状体に粒状化された。
【0143】
以下の表1は、規定した試験体の燃焼挙動、安定性すなわち発泡させた発泡体ビーズの崩壊までの時間及び臭気を試験した結果を、明瞭に併記している。
【0144】
【表2】

【0145】
右側の欄の実験結果は、上述の実施例1〜8の製造物についての試験によって得られた。
【0146】
例えば、DOPOのみによって炎に対して保護され、イオウによっては炎に対して保護されていない重合体又は発泡体に相当する実施例6は、実施例2、3及び4には同量のDOPOが含まれているので、それらの実施例に対する直接の対照である。
【0147】
先行技術に対するもう一つの対照は、実施例8である。全ての実験における全ての評価は、結果が数字1〜5によって示され、低い数字、特に1は、より有益な傾向があり、高い数字、特に5は、より不都合であることにおいて、この参考実験8を参照している。
詳細な説明
燃焼試験(表1の第2欄):
実施例から得られたEPS粒状体は、飽和蒸気によって予め発泡されて15〜25kg/mの粗密度を有する発泡体ビーズにして、24時間保管し、成形装置内で発泡体プレートに成形された。
【0148】
厚さ2cmの試験片が、発泡体プレートから切り取られ、それらは、72時間後、DIN4102-2(B2-小炎試験)による燃焼試験において、70℃で状態調節を受けた。
【0149】
1〜5の数字で採点した結果は、ヘキサブロモシクロドデカンによって防炎されたEPS(実施例8)との関連で評価された。これに関連し、「燃焼試験」の表題の付いた欄における1の点数は、試験物質が、HBCDによって保護されたEPSと同様に、その燃焼挙動に関して作用したことを示している。5の点数は、燃焼挙動が非常に劣っており、防炎されていないEPSの燃焼挙動と等しいことを示している。
発泡体構造の安定性(表1の第3欄):
実施例から得られたEPS粒状体を、飽和蒸気に曝し、ビーズが崩壊し始めるまでの時間を測定した。結果の概要において、この時間は、難燃剤を含まないEPS粒子に関連して評価された。リンに基づく難燃剤の軟化効果により、EPS粒子は、予備発泡の間、異なる安定性を示した。
【0150】
第3欄において、1の値は、ビーズが通常の安定性を有していたことを示している。5の値は、成形に適したであろう発泡体構造が形成されることなしに、ビーズが直ちに崩壊したことを示している。
臭気(表1の第4欄)
実施例から得られたEPS粒状体を、飽和蒸気によって予め発泡して15〜25kg/mの粗密度を有する発泡体ビーズにして、24時間保管し、成形装置内で発泡体プレートに成形した。
【0151】
2cmの厚さを有する試験体が、発泡体プレートから切り取られ、数人の研究室のスタッフによる臭気の官能試験を受けた。評価は、スコア1に対応する「感知できず」からスコア5の「不快でいやである」までの基準に従って主観的に行われた。
【0152】
これらの結果から明らかに分かるように、実施例2、3及び4の材料は、実施例6の材料と比較して、燃焼試験において著しく向上した結果を示している。実施例7から分かるように、イオウ単独の添加は、比較的劣る燃焼挙動をもたらすが、実験2〜4は、驚くべき良好な結果をもたらした、これらの結果は、この高い程度でとは、予想することができなかった。本発明によるポリマー及び発泡体或いは本発明によって保護されたポリマー及び発泡体は、したがって、DOPOのみによって保護されたポリマー及びイオウのみによって処理されたポリマーの両方よりも、かなり有益である。
【0153】
たとえ少量のDOPOでも、明らかな予想外の耐火性の向上及び改善が示された(実施例5と比較して実施例1)。
【0154】
また、驚くべきことに、安定性がほとんど影響を受けず、それどころか向上さえした。
【0155】
臭気に関しては、イオウ含有物質の添加が、検知可能な影響を有していたが、例えば、ジカプロラクタムジスルフィドを用いている実験4において、その影響はどちらかというと穏やかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン無しに防炎されているのが好ましく、少なくとも一つの発泡剤を含む防炎性の発泡性重合体において、難燃剤として少なくとも一つのリン化合物と、追加の難燃剤又は協力剤として少なくとも一つのイオウ化合物及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物及び/又はイオウとの組み合わせからなる難燃剤系が含まれている防炎性の発泡性重合体であって、
a)前記リン化合物が、
リン元素、特に赤リン、及び/又は、
少なくとも一つの無機リン化合物或いはその加水分解物又は塩、及び/又は、
少なくとも一つの以下の一般式(I)又は(II)の有機リン化合物:
【化1】

或いはその加水分解物又は塩、ここで、残基R1、R2及びR3は、各々独立に有機又は無機の残基を表す、
であることと、
b)前記イオウ化合物が、
イオウ元素、及び/又は、
少なくとも一つの無機又は有機のイオウ化合物及び/又はイオウ含有化合物であること、
を特徴とする防炎性の発泡性重合体。
【請求項2】
前記リン化合物が、前記重合体の総重量に基づいて、0.5〜25重量%、特に3〜15重量%の量で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の発泡性重合体。
【請求項3】
前記イオウ化合物が、前記重合体の総重量に基づいて、0.5〜25重量%、特に3〜15重量%の量で含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性重合体。
【請求項4】
イエロー・シクロオクタサルファー(S8)が、前記重合体の総重量に基づいて、0.1〜10重量%、特に約0.5〜5重量%、好ましくは約2重量%の量で含まれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項5】
前記イオウ化合物が、115℃より低温で熱重量分析(TGA)により分析して、10重量%未満の重量損失を示すことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項6】
前記リン化合物が、115℃より低温で熱重量分析(TGA)により分析して、10重量%未満の重量損失を示すことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項7】
前記イオウ化合物が、前記イオウ原子の少なくとも一つが二価の形で存在するS-S結合を少なくとも一つ有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項8】
前記発泡性重合体が、発泡性スチレン重合体(EPS)又は発泡性スチレンポリマー粒状体(EPS)であり、それらは、特にスチレンの単独重合体又は共重合体からなっており、透明なポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アニオン重合させたポリスチレン又は耐衝撃性ポリスチレン(A-IPS)、スチレン−α-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)重合体或いはそれらの混合物又はポリ(フェニレンエーテル)(PPE)若しくはポリ(硫化フェニレン)(PPS)との混合物からなっているのが好ましいことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項9】
請求項1乃至9の何れか一つにおいて規定された少なくとも一つのリン化合物が難燃剤として用いられ、先行請求項の何れか一つにおいて規定された少なくとも一つのイオウ化合物が追加の難燃剤又は協力剤として用いられていることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の防炎性の発泡性重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の防炎性の発泡性スチレンポリマーの製造方法において、
前記リン化合物、前記イオウ化合物及び発泡剤が、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いてスチレンポリマー溶融物と混合された後に粒状化されるか、又は
前記リン化合物及び前記イオウ化合物が、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて未だ粒状のポリスチレンポリマーと混合され、溶融され、次いでこの溶融物に発泡剤が添加されて粒状化されるか、又は
前記リン化合物及びイオウ化合物が、未だ粒状のEPSに混合され、次いでこの混合物が溶融されて粒状化されるか、又は
粒状体の調製が、前記リン化合物、前記イオウ化合物及び発泡剤の存在下に、水性懸濁液中でのスチレンの懸濁重合によって行われる方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の防炎性の発泡性スチレンポリマー(EPS)の製造方法であって:
重量平均分子量(Mw)>120000g/mol、好ましくは150000〜250000g/mol、最も好ましくは180000〜220000g/molの分子量を有するPS又はEPS粒状体とともに、前記リン化合物、前記イオウ化合物、及び随意に一以上の追加の添加剤、特に:
a)難燃協力剤、例えば、過酸化ジクミルなどの熱ラジカル形成剤を0.1〜20重量%の濃度で、
b)赤外線不透明化剤、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アルミニウム、酸化チタンを0.1〜1重量%の濃度で、
c)安定化剤、例えば、HTEMPOなどのニトロキシルラジカル形成剤を0.1〜1重量%の濃度で、
d)更に別のハロゲン化された又はハロゲンを含まない難燃剤、例えば、HBCD、DOPO、水酸化マグネシウムを0.1〜20重量%の濃度で、及び/又は
e)フィルター、例えば、チョーク、タルク、ケイ酸塩を1〜20重量%の濃度で、
一緒に押出機に投入する工程と、
押出機内で全ての成分を一緒に溶融する工程と、
随意に少なくとも一つの発泡剤を添加する工程と、
全ての成分を120℃を越える温度で混合する工程と、
例えば1〜20バールで、5mm未満、好ましくは0.2〜2.5mmの粒度をもたらすまで、30〜100℃、特に50〜80℃の水温で加圧水中粒状化(pressurized underwater granulation)により粒状化する工程と、
随意に、ケイ酸塩、脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどのコーティング剤で、表面を被覆する工程、
を含む方法。
【請求項12】
請求項9乃至11の何れか一つの方法によって得られる防火性の発泡性スチレンポリマー(EPS)。
【請求項13】
請求項1乃至8の何れか一つにおいて規定された少なくとも一つのリン化合物を難燃剤として、請求項1乃至8何れか一つにおいて規定された少なくとも一つのイオウ化合物を追加の難燃剤又は協力剤として含む高分子発泡体、特にスチレンポリマー粒子発泡体又は押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)。
【請求項14】
請求項1乃至8の何れか一つの防炎性の発泡性重合体から、特に発泡性スチレンポリマー(EPS)から、特に前記ポリマーを発泡させて凝結させることにより又は押出により得られる請求項13に記載の高分子発泡体。
【請求項15】
7〜200g/Lの間の密度及び/又は1mmあたり0.5超の気泡を有する大部分が独立気泡の構造若しくは気泡の80%超が独立気泡である構造を有する請求項13又は14に記載の高分子発泡体。
【請求項16】
発泡性重合体における、特に請求項8において規定された発泡性スチレンポリマー(EPS)又は発泡性スチレンポリマー粒状体(EPS)における、又は
発泡性重合体からの発泡により得られる高分子発泡体における、特にスチレンポリマー粒子発泡体における、又は押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)における、
追加の難燃剤又は協力剤としての請求項1乃至8の何れか一つにおいて規定された少なくとも一つのイオウ化合物と組み合わせた、難燃剤としての請求項1乃至8の何れか一つにおいて規定された少なくとも一つのリン化合物の用法。
【請求項17】
少なくとも一つの発泡剤を含む防炎性の発泡性重合体において、
難燃剤として、少なくとも一つの以下の一般式(I)のリン化合物:
【化2】


(ここで、各Rは独立に、−H、置換又は無置換の炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルケニル、炭素数3〜8のシクロアルキル、炭素数6〜18のアリール、炭素数7から30のアルキルアリール、炭素数1〜8のアルコキシ若しくは炭素数1〜8のアルキルチオ又は−OH若しくは−SH並びにそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はホスホニウム塩を表す)
或いはその加水分解物又は塩が含まれている防炎性の発泡性重合体であって、イオウ及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物及び/又はイオウ化合物が、追加の難燃剤又は協力剤として含まれていることを特徴とする防炎性の発泡性重合体。
【請求項18】
各々の残基Rが、炭素原子1〜4個、より好ましくは炭素原子1又は2個のアルキル基、アルコキシ基又はアルキルチオ基を表すことを特徴とする請求項17に記載の発泡性重合体。
【請求項19】
各々の残基Rが、イオウ含有及び/又はリン含有置換基を有していることを特徴とする請求項17又は18に記載の発泡性重合体。
【請求項20】
9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)
【化3】


、その加水分解物又は金属塩が、リン化合物として含まれていることを特徴とする請求項17乃至19の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項21】
リン化合物が、難燃剤として、前記重合体の総重量に基づいて、0.5〜25重量%、特に3〜15重量%の量で含まれていることを特徴とする請求項17乃至20の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項22】
イエロー・シクロオクタサルファー(S8)が、前記重合体の総重量に基づいて、0.1〜10重量%、特に約0.5〜5重量%、好ましくは約2重量%の量で含まれていることを特徴とする請求項17乃至21の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項23】
前記イオウ含有化合物又はイオウ化合物が、115℃より低温で熱重量分析(TGA)により分析して、10重量%未満の重量損失を示すことを特徴とする請求項17乃至22の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項24】
前記イオウ含有化合物又はイオウ化合物が、前記イオウ原子の少なくとも一つが二価の形で存在するS-S結合を少なくとも一つ有していることを特徴とする請求項17乃至23の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項25】
前記発泡性重合体が、発泡性スチレン重合体(EPS)又は発泡性スチレンポリマー粒状体(EPS)であり、それらは、特にスチレンの単独重合体又は共重合体からなっており、透明なポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アニオン重合させたポリスチレン又は耐衝撃性ポリスチレン(A-IPS)、スチレン−α-メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)重合体或いはそれらの混合物又はポリ(フェニレンエーテル)(PPE)との混合物からなっているのが好ましいことを特徴とする請求項17乃至24の何れか一つに記載の発泡性重合体。
【請求項26】
請求項17乃至25の何れか一つに記載の防炎性の発泡性重合体の製造方法であって、請求項1乃至21の何れか一つにおいて規定された少なくとも一つの一般式(I)のリン化合物又はその開環加水分解物若しくは塩が、難燃剤として用いられ、請求項1、22、23及び又は24の何れか一つにおいて規定されたイオウ及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物又はイオウ化合物が、追加の難燃剤又は協力剤として用いられていることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の防炎性の発泡性スチレン重合体(EPS)の製造方法において、
前記リン化合物、前記イオウ若しくはオウ化合物及び発泡剤が、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いてスチレンポリマー溶融物と混合された後に粒状化されるか、又は
前記リン化合物及び前記イオウ若しくはイオウ化合物が、ダイナミックミキサー又はスタティックミキサーを用いて未だ粒状のポリスチレンポリマーと混合され、溶融され、次いでこの溶融物に発泡剤が添加されて粒状化されるか、又は
前記リン化合物及び前記イオウ若しくはイオウ化合物が、未だ粒状のEPSに混合され、次いでこの混合物が溶融されて粒状化されるか、又は
粒状体の調製が、前記リン化合物、前記イオウ若しくはイオウ化合物及び発泡剤の存在下に、水性懸濁液中でのスチレンの懸濁重合によって行われる方法。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の防炎性の発泡性スチレンポリマー(EPS)の製造方法であって:
重量平均分子量(Mw)>120000g/mol、好ましくは150000〜250000g/mol、最も好ましくは180000〜220000g/molの分子量を有するPS又はEPS粒状体とともに、前記リン化合物、前記イオウ化合物、及び随意に一以上の追加の添加剤、特に:
a)難燃協力剤、例えば、過酸化ジクミルなどの熱ラジカル形成剤を0.1〜20重量%の濃度で、
b)赤外線不透明化剤、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アルミニウム、酸化チタンを0.1〜1重量%の濃度で、
c)安定化剤、例えば、HTEMPOなどのニトロキシルラジカル形成剤を0.1〜1重量%の濃度で、
d)他のハロゲン化された又はハロゲンを含まない難燃剤、例えば、HBCD、DOPO、水酸化マグネシウムを0.1〜20重量%の濃度で、及び/又は
e)フィルター、例えば、チョーク、タルク、ケイ酸塩を1〜20重量%の濃度で、
一緒に押出機に投入する工程と、
押出機内で全ての成分を一緒に溶融する工程と、
随意に少なくとも一つの発泡剤を混合する工程と、
全ての成分を120℃を越える温度で混合する工程と、
例えば1〜20バールで、5mm未満、好ましくは0.2〜2.5mmの粒度まで、30〜100℃、特に50〜80℃の水温で加圧水中粒状化(pressurized underwater granulation)により粒状化する工程と、
随意に、ケイ酸塩、脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどのコーティング剤で、表面を被覆する工程、
を含む方法。
【請求項29】
請求項26乃至28の何れか一つに記載の方法によって得られる防炎性の発泡性スチレン重合体(EPS)。
【請求項30】
請求項17乃至21の何れか一つにおいて規定された一般式(I)の少なくとも一つのリン化合物及び/又はその加水分解物若しくは塩を難燃剤として、請求項17、22、23及び/又は24の何れか一つにおいて規定されたイオウ及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物又はイオウ化合物を追加の難燃剤又は協力剤として含む高分子発泡体、特にスチレンポリマー粒子発泡体又は押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)。
【請求項31】
請求項17乃至25の何れか一つに記載の防炎性の発泡性重合体から、特に発泡性スチレンポリマー(EPS)から、特に前記重合体を発泡させて凝結させることにより又は押出により得られる請求項30の高分子発泡体。
【請求項32】
7〜200g/Lの間の密度及び/又は1mmあたり0.5超の気泡を有する大部分が独立気泡の構造若しくは気泡の80%超が独立気泡である構造を有する請求項30又は31に記載の高分子発泡体。
【請求項33】
発泡性重合体における、特に請求項25において規定された発泡性スチレンポリマー(EPS)及び/又は発泡性スチレンポリマー粒状体(EPS)における、又は
発泡性重合体からの発泡により得られる高分子発泡体における、特にスチレンポリマー粒子発泡体における、又は押出ポリスチレン硬質発泡体(XPS)における、
それぞれ、難燃剤及び協力剤としての、請求項17〜21の何れか一つにおいて規定された一般式(I)の少なくとも一つのリン化合物及び/又はその加水分解物若しくは塩並びに請求項1乃至8の何れか一つにおいて規定されたイオウ及び/又は少なくとも一つのイオウ含有化合物又はイオウ化合物を組み合わせた用法。

【公表番号】特表2013−506009(P2013−506009A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530050(P2012−530050)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【国際出願番号】PCT/AT2010/000346
【国際公開番号】WO2011/035357
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(510070131)サンポール クンストストツフ ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】SUNPOR KUNSTSTOFF GES.M.B.H.
【Fターム(参考)】