説明

防爆型ガスセンサー

【課題】信頼性の高い防爆性が得られる新規な構造の防爆型ガスセンサーの提供。
【解決手段】上記課題は、ガスセンサー本体と、このガスセンサー本体を囲むよう設けられた通気性を有する金属焼結体およびこの金属焼結体を保持するベース部材よりなるフレームアレスタと、前記金属焼結体を囲むよう、前記ベース部材に螺合されて装着されたガード部材とを具えてなり、ガード部材は、ストッパネジによって螺合に係る回転が禁止された状態とされており、ストッパネジは、ガード部材に形成されたネジ装着用孔に頭部が収容され、更に、当該ネジ装着用孔内に金属が充填されて頭部が埋没された状態で、装着された構成の防爆型ガスセンサーにより、達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば金属焼結体が用いられて防爆構造が構成されてなる防爆型ガスセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可燃性のガスや蒸気を含む爆発性雰囲気の存在により、引火、爆発が発生し得る環境で使用されるガスセンサーにおいては、所定の防爆性能を有した防爆構造を具備していることが要求されている。
【0003】
例えば、赤外線が検知対象ガスによって吸収されることによる赤外線量の減衰の程度に応じてガス濃度を測定する、非分散型赤外線吸収法を利用した赤外線ガスセンサーにおいては、原理上、測定するガスの濃度に応じて十分な吸収を得るための相応の光路長(吸収長)を確保することが要求されることから、一般的に、例えばガス導入口を有する円筒形状のガスセルを備え、このガスセルの両端に赤外線光源と赤外線センサー素子が位置された構成とされている。
そして、このような赤外線ガスセンサーにおいては、防爆構造とするために、ガスセルの外周に焼結金属よりなる防爆ケースがガス導入口を塞ぐよう装着されている(特許文献1参照。)。
【0004】
焼結金属は、機械的強度が小さくて耐久性が不十分であるものであるために、特許文献1に開示されている赤外線ガスセンサーにおいては、当該防爆ケースの破損を保護するための保護枠が防爆ケースの外周を囲うよう設けられている。
この保護枠は、通常、ガスセンサーを作製する上で有利であることから、例えば螺合により装着されている。
【0005】
而して、このような赤外線センサーが防爆構造を有するものであると認められるためには、取り外し可能な構成部材や部品が取り外された状態で所定の耐久性や防炎性能のテストに合格することが必要とされている。
従って、上記赤外線ガスセンサーのように、保護枠が単なる螺合によって装着されている構成のものにおいては、当該保護枠が取り外しが可能であるから、保護枠が取り外された状態で上記テストが行われることになるため、赤外線ガスセンサーを十分な防爆性を有するものとして構成することができない場合がある、という問題がある。
【0006】
上記のような赤外線ガスセンサーに限らず、焼結金属が用いられて防爆構造が構成されてなるガスセンサーについても同様の課題を有している。
【特許文献1】特開2002−22655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、信頼性の高い防爆性が得られる新規な構造の防爆型ガスセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防爆型ガスセンサーは、ガスセンサー本体と、このガスセンサー本体を囲むよう設けられた通気性を有する金属焼結体およびこの金属焼結体を保持するベース部材よりなるフレームアレスタと、前記金属焼結体を囲むよう前記ベース部材に螺合されて装着されたガード部材とを具えてなり、
ガード部材は、ストッパネジによって螺合に係る回転が禁止された状態とされており、 ストッパネジは、ガード部材に形成されたネジ装着用孔に頭部が収容され、更に、当該ネジ装着用孔内に金属が充填されて頭部が埋没された状態で、装着されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の防爆型ガスセンサーにおいては、ストッパネジのネジ穴を含むネジ装着用孔の空間内に金属よりなるピン部材が圧入されることにより、ストッパネジの頭部が埋没された構成とすることができる。
【0010】
また、本発明の防爆型ガスセンサーにおいては、フレームアレスタが、金属焼結体およびベース部材が同時焼結により接合されてなる構成のものであることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の防爆型ガスセンサーにおいては、ガスセンサー本体が、ガス導入口が周壁に形成された円筒状のガスセルを備え、このガスセルの一端部に赤外線光源が設けられると共に他端部に赤外線センサー素子が設けられてなる構成のものとすることができる。
【0012】
さらにまた、本発明の防爆型ガスセンサーにおいては、金属焼結体が有底円筒状であり、ガード部材が円筒形態であって開口部が形成されてなるものにより構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防爆型ガスセンサーによれば、金属焼結体がガスセンサー本体を囲うよう装着されていると共に当該金属焼結体を保護するガード部材が着脱不可の状態で装着されていることにより、金属焼結体が破損して所期の防爆性能が損なわれることを確実に防止することができるので、ガスセンサーを十分に信頼性の高い防爆性を有するものとして構成することができる。
しかも、ガード部材を溶接などにより接合することなしに、取り外し不可の状態とすることができるので、簡単な構成により、十分に信頼性の高い防爆構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の防爆型ガスセンサーの一例における構成を示す平面図、図2は、図1に示す防爆型ガスセンサーの左側面図、図3は、図1におけるA−A断面図である。
この防爆型ガスセンサー10は、ガスセンサー本体20と、このガスセンサー本体20を囲うよう設けられた、通気性を有する有底円筒状の金属焼結体12およびこの金属焼結体12の開口側端部を保持するベース部材13よりなるフレームアレスタ11と、このフレームアレスタ11を構成する金属焼結体12を囲うよう設けられたガード部材40とを具えている。
【0015】
ガスセンサー本体20は、被検ガスが導入される例えばステンレス鋼よりなる円筒状のガスセル21を備え、このガスセル21の一端部に、点滅駆動される赤外線光源23が設けられていると共に、ガスセル21の他端部に、赤外線光源23から放射される赤外光を受光する赤外線センサー素子24が設けられて、構成されている。
ガスセル21には、その両側面の軸方向に並んだ位置に、周壁を貫通する複数のガス流入口22が形成されている。
図3において、25は光源駆動用プリント基板、26はセンサー基板、27はリード線である。
【0016】
ガスセンサー本体20におけるガスセル21の他端部には、筒状のキャップ部材30が装着されており、更にスリーブ部材31がキャップ部材30の他端部に嵌合されて一体に装着され、キャップ部材30およびスリーブ部材31が、例えばOリングよりなるシール部材33によって気密性が確保された状態で、フレームアレスタ11を構成するベース部材13に保持固定されることにより、ガスセンサー本体20がフレームアレスタ11内に配設されている。
【0017】
フレームアレスタ11は、各々例えばステンレス鋼(SUS316)よりなる金属焼結体12およびベース部材13が同時焼結によって一体に接合されてなるものであり、これにより、内部爆発に耐えうる十分な接合強度が得られ、接合面の隙間から通じて火炎が外部へ着火することを確実に防止することができる。ここに、「同時焼結」とは、圧粉体である金属焼結体12をベース部材13当接させた状態で焼結させると同時にベース部材13に接合させることをいう。
【0018】
ここに、フレームアレスタ11を構成する金属焼結体12の仕様の一例を示すと、例えば厚みが3mm、密度が4.3g/cc、気孔サイズが121.01μmであり、このような構成であることにより、所期の火炎伝播阻止効果を確実に得ることができる。
【0019】
キャップ部材30およびスリーブ部材31の内部空間には、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂35が充填されて封止されており、この絶縁性樹脂35によるガスセル21内に導入されるガスの隔離機能およびフレームアレスタ11による火炎伝播阻止機能によりガスセンサーが防爆構造を有するものとして構成されている。ここに、絶縁性樹脂35としては、例えば耐熱温度が120℃以上の熱安定性を有するものが用いられている。
【0020】
ガード部材40は、例えば鋳鋼(SCS13、SUS304に相当)よりなる全体が円筒形態のものであって、一端が丸みを帯びた円柱体を想定したときに、この円柱体の周面に沿った形態を有するフレーム部分41と、フレームアレスタ11を構成するベース部材13との螺合装着部を形成する筒状部分42とを有し、筒状部分42がリング状のパッキン32が介在された状態で、フレームアレスタ11を構成するベース部材13に螺合されて装着されている。
【0021】
フレーム部分41は、互いに周方向に離間した位置に配列された、各々軸方向に伸びる複数のフレーム構成部材41Aが、先端部分が径方向内方に向かって湾曲して互いに連結されていると共に基端部分が筒状部分42に連結されて、構成されており、隣接するフレーム構成部材間にガス導入用の開口部41Bが形成されている。43は、校正用ガスを導入するための貫通孔であって、図示しないパッキンを介してフレームアレスタ11を構成する金属焼結体12の先端面に気密に接続されている。
【0022】
ガード部材40の筒状部分42には、厚み方向に貫通して伸びるストッパネジ装着用孔44が形成されており、このストッパネジ装着用孔44に、例えば六角穴付止めネジよりなるストッパネジ45が、その頭部がストッパネジ装着用孔44内に収容された状態で、装着されている。
【0023】
この防爆型ガスセンサー10においては、ストッパネジ45のネジ穴45A(図4参照。)を含むストッパネジ装着用孔44の空間内に金属が充填されてストッパネジ45の頭部が埋没された状態とされている。
具体的には、図4に示すように、金属よりなるピン部材46が当該空間内に圧入されてストッパネジ45の頭部が埋没された状態とされており、ストッパネジ45に対する工具の挿入が阻止されることによってガード部材40の螺合に係る回転が禁止され、これにより、ガード部材40が取り外し不可の状態とされている。
【0024】
上述したように、ガスセンサーが防爆構造を有するものとして認められるためには、取り外し可能な構成部材および部品は、それらが取り外された状態で所定の耐久性や防炎性能のテストに合格することが必要である。
而して、上記構成の防爆型ガスセンサー10によれば、フレームアレスタ11がガスセンサー本体20を囲うよう装着されていると共にフレームアレスタ11を構成する金属焼結体12を保護するガード部材40がフレームアレスタ11を構成するベース部材13に着脱不可の状態で装着されていることにより、ガード部材40が装着されたままの状態で上記テストが実施されることとなり、金属焼結体12が破損して所期の防爆性能が損なわれることを確実に防止することができるので、ガスセンサーを十分に信頼性の高い防爆性を有するものとして構成することができる。
しかも、金属製のピン部材46がストッパネジ45のネジ穴45Aを含むストッパネジ装着用孔44の空間内に圧入してストッパネジ45の頭部を埋没させた状態とすることによって工具の挿入を阻止し、これにより、ガード部材40を溶接などにより接合することなしに、ガード部材40を取り外し不可の状態とすることができるので、簡単な構成により、十分に信頼性の高い防爆構造を提供することができる。
また、金属焼結体12が有底円筒状であり、ガード部材40が円筒形態を有するものであることにより、金属焼結体12を含むフレームアレスタ11およびガード部材40をガスセンサー本体20に対する所定の位置に容易に装着することができ、所定の防爆型ガスセンサー10を有利に作製することができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、ガード部材を取り外し不可な状態とするための方法としては、ストッパネジによって螺合に係る回転を禁止した状態において、ネジ装着用孔内に金属が充填された状態を得ることができれば、ピン部材をネジ装着用孔内に圧入する方法に限定されるものではない。
また、本発明は赤外線センサーに限定されるものではなく、焼結金属が用いられて防爆構造が構成されてなるガスセンサーのいずれのものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の防爆型ガスセンサーの一例における構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す防爆型ガスセンサーの左側面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図1に示す防爆型ガスセンサーにおける、ガード部材とベース部材との螺合装着部の構成の概略を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 防爆型ガスセンサー
11 フレームアレスタ
12 金属焼結体
13 ベース部材
20 ガスセンサー本体
21 ガスセル
22 ガス流入口
23 赤外線光源
24 赤外線センサー素子
25 光源駆動用プリント基板
26 センサー基板
27 リード線
30 キャップ部材
31 スリーブ部材
32 パッキン
33 シール部材
35 絶縁性樹脂
40 ガード部材
41 フレーム部分
41A フレーム構成部材
41B 開口部
42 筒状部分
43 貫通孔
44 ストッパネジ装着用孔
45 ストッパネジ
45A ネジ穴
46 ピン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサー本体と、このガスセンサー本体を囲むよう設けられた通気性を有する金属焼結体およびこの金属焼結体を保持するベース部材よりなるフレームアレスタと、前記金属焼結体を囲むよう前記ベース部材に螺合されて装着されたガード部材とを具えてなり、 ガード部材は、ストッパネジによって螺合に係る回転が禁止された状態とされており、 ストッパネジは、ガード部材に形成されたネジ装着用孔に頭部が収容され、更に、当該ネジ装着用孔内に金属が充填されて頭部が埋没された状態で、装着されていることを特徴とする防爆型ガスセンサー。
【請求項2】
ストッパネジのネジ穴を含むネジ装着用孔の空間内に金属よりなるピン部材が圧入されることにより、ストッパネジの頭部が埋没された状態とされていることを特徴とする請求項1に記載の防爆型ガスセンサー。
【請求項3】
フレームアレスタは、金属焼結体およびベース部材が同時焼結により接合されてなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防爆型ガスセンサー。
【請求項4】
ガスセンサー本体が、ガス導入口が周壁に形成された円筒状のガスセルを備え、このガスセルの一端部に赤外線光源が設けられると共に他端部に赤外線センサー素子が設けられてなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の防爆型ガスセンサー。
【請求項5】
金属焼結体が有底円筒状であり、ガード部材が円筒形態であって開口部が形成されてなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の防爆型ガスセンサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−132695(P2007−132695A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323430(P2005−323430)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】