説明

防犯カメラシステム

【課題】車載カメラを用いて,防犯,犯罪追跡に対し有効に活用することができる防犯カメラシステムを提供する.
【解決手段】本発明は,自動車周辺の状況を随時,車載のカメラにて記録し,また,その画像記録時の記録された場所と時間とを記録する記録装置からなる.事故・犯罪が発生した際に,ラジオ放送等の通信手段により,画像所有者の受信機に要求情報を受信させる.その要求情報と記録された画像を演算装置にて解析し,該当する画像を所有する運転者等の画像所有者に知らせる.また,事件発生直後だけでなく,事件発生後,時間が経過したものに対しても,ラジオ受信機からの情報を基に,効果的な事故,犯罪追跡が可能となる.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,防犯カメラシステムに関する.典型的な応用例として,車載カメラから得た画像を交通事故,防犯に対して,利用するための車載用カメラシステムである.
【背景技術】
【0002】
事故が発生した際に,車等に搭載されたカメラ(ドライブレコーダ等)により,その際の画像が記録され,事故原因の究明に役立てられている.しかし,このような技術は,随時画像を記録しているもの,GPSセンサー付きのものなども市販されているが,事故の瞬間の急ブレーキや衝撃等により車両に対しなされた,急な加速度等を検知した際のみ記録が実施されるものが多い.
【0003】
近年,日本では凶悪な犯罪や子供たちを狙った誘拐,通り魔等の犯罪が多く発生している.これらの犯罪の多くが住宅街で発生しているにも関わらず,事件の目撃者の不在が大きな問題となっている.この原因のひとつとして,日本の旧来の地域社会に存在していた良い意味での相互監視機能が失われていることが挙げられる.
【0004】
その一方,現在では,防犯カメラを使用した防犯対策が一般になってきている.商店街等,人通りの多い場所において,抑止効果により犯罪を未然に防ぎ,犯罪が起きた際にも,防犯カメラからの画像により,犯罪追跡をすることを可能とする.
【0005】
車に搭載されたドライブレコーダ等のカメラを防犯カメラとして役立てることを考える事は有意義である.日本の自動車保有台数は,約7900万台(2009年)と世界で米国に次ぐ2位であり,このような膨大な数の自動車が,防犯に役立てることができれば,地域社会の安全が高度に高められることが考えられる.
【0006】
特許文献1のように,防犯に関して,車載画像記録装置を用い,犯人特定のための情報を得るシステムについての発明が出願されている.しかし,事件数日後に犯人を追跡するために,それらの画像を必要とする際など,単に随時画像録画を可能にしても,防犯に対し役立てることが難しい場合がある.
【0007】
特許文献2は,自動車が事故の際に自車車のドライブレコーダに事故の状況を記録するだけでなく,周辺の自動車へ信号を送り,その信号を受け取った自動車がドライブレコーダに映像を録画するシステムについての発明である.このシステムでも,特許文献1のように事件数日後に犯人を追跡するための画像を得ることはできない.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−352391号公報
【0009】
【特許文献2】特開2009−20774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする課題は,防犯等のために,車に搭載されたドライブレコーダ等により画像の随時記録を可能にしただけでは,犯罪抑止・容疑者特定に対する効果は低い.そのため,犯罪追跡等に対し,車載カメラを最大限に活用できるシステムを提供することを目的とする.
【0011】
また,本発明では,車にすでに取付けられている装置を活かすことで導入コストを最小限に抑えて,車載カメラの導入とその利用範囲を拡大することを容易にすることも目的とする.
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は,自動車周辺の状況を随時,車載のカメラにて記録し,また,その画像の記録された場所と時間とを合わせて記録する記録装置からなる.犯罪等が発生した際に,ラジオ放送等の通信手段により,画像所有者の受信機に要求情報を受信させる.その要求情報と記録された画像の情報とを演算装置により解析し,その結果を該当する画像を所有する運転者等の画像所有者に知らせ,画像を警察に提供するか否かの判断を仰ぐ.そのように事故,犯罪等の解決のための情報収集を可能とする.
【0013】
車載カメラシステムが事件等起きた時の画像を保存していても,所有者がそのことを自覚していなければ,画像を事件等の調査に利用されることはない.また,車載カメラシステムでは,保存期間が長期になることはない.事件発生直後であれば,画像が保存されている可能性はあるが,事件発生後に取得した画像を取り出そうとしてもすでに消去されている場合が考えられる.そこで,事件発生後,事件が起きた日時や場所の情報をラジオ等の通信手段を用いて自動車に送信する.受信した自動車は,当該日時に当該場所で撮影した画像があれば,消去対象とはせず一定期間保存するようにしても良い.また,自動車または車載カメラシステムが送信機能を有する場合には,当該日時に当該場所で撮影した画像を予め決められた場所に送信してもよい.
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,記録された画像には,画像記録時の位置,時間が記録されており,事故,犯罪の解決に対し,効果的な情報収集ができる利点がある.また,事件発生直後だけでなく,事件発生後,時間が経過したものに対しても,ラジオ受信機等からの情報を基に事故や犯罪の解決に対して有益な画像を収集することが可能となる.
【0015】
本発明実施に必要なハードウェアは,最近販売される多くの車両に既に搭載されているハードウェアのみで構成されているため,導入コストが抑えられる.そのため,特に,導入に際し,大きなコストは発生しないため,早急に広範な道路の監視のために役立てることが可能である.
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は,本システムの実施例1の装置構成図である.
【図2】図2は,警察からの情報提供要請を受けてから,画像提出までの流れ図である.
【図3】図3は,画像提供時の画像受け渡し方法の説明図である.
【図4】図4は,RFIDを利用した際の説明図である.
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
図1は,本発明システムでの実施例を示す監視システムの構成図である.このシステムは,ラジオ受信機1と,時計2と,GPSセンサー3と,カメラ4と,記憶媒体としてのメモリカード5と,それらを制御する演算装置6と,で構成されている.自動車に取付けられたカメラ4からの画像を,GPSセンサー3による位置情報,時計2による時間情報と共に記録する.ラジオ受信機が受信する信号には,求められる画像の位置情報と時間の情報が含まれており,各ラジオ放送局が定期的に信号を送信することで自動車7への画像要求を知らせる方法が考えられる.
【0018】
図2は,情報提供要請から画像提出までの流れ図を示している.ラジオ放送等により,ラジオ受信機1に警察からの情報提供要請を受信する.演算装置6が,警察からの画像提供要請と記録されている画像が一致した場合,その旨を,運転者(所有者)に通知し伝える.運転者(所有者)は,画像提供するか否かを自由に判断可能であり,画像所有者の選択として,画像を提供する場合は,当該時間帯部分の画像(位置情報,時間情報付)を,図3に示すように提出用メモリカード32にコピーし,最寄りの交番30に届ける.交番30に届けられた提出用メモリカード32と交換に代替品33を提出者は受け取り,提出された画像は,警察31において事件事故の調査に役立てられる.また,該当する画像があることを警察などへインターネット,携帯電話回線等の通信手段を用いて伝えてもよい.
【0019】
また,送信手段が使える場合,ドライバーがあらかじめ定めた条件に従い,記録画像の全部または一部をそのまま,あるいは,不鮮明化したものを,警察などに自動送信しても良い.
【0020】
事故や犯罪が起きた場所に通信機器を設置し,事故や犯罪の起きた日時や場所の情報をETC等で利用されているRFID(Radio Frequency
Identification)を利用して知らせる方法がある.図4はその例である.事件が起きた場所に設置された通信機器42がRFID 等の短距離の通信方式を用いて自動車41へ事件や犯罪の場所や日時を送信し,それを受信した自動車41の中で当該日時や場所の画像を保持している場合には,画像を一定期間保存するとともに自動車41の所有者への通知や画像を設置された通信機器42へ送信する.事件が起きた時にその場所を通っている自動車41は日常的にその場所を通る可能性が高いと考えられ,事件に関連する画像を収集することができる.この方法では,自動車41からの通信手段が短距離の通信方式のものでよいこと,また,自動車のラジオ受信機が随時稼動しているとは限らないことに対処できることなどが利点としてある.
【0021】
演算装置として,すでに車に搭載された演算装置を使用してもよいし,別個に演算装置を取り付けてもよい.市販のGPS付きドライブレコーダを改造して使用することも考えられる.その場合,車載器が車の回りの監視をしたのと同様に,携帯機器として,歩行者の周りの監視が実現できる.
【0022】
GPS位置情報付のドライブレコーダとしては,市販品が,既に多くある.たとえば,株式会社ユピテルのドラカメ「DRY-R5」などが良い例である.
【0023】
画像が,時間情報,GPSに基づく位置情報と共に保存される際に,検索効率を高めるために,画像ファイル名の時系列表と時間・位置情報は別々に保存されることが考えられる.
【0024】
GPS位置情報付の画像データは,暗号化して保存してもよい.その場合,車の持ち主は,閲覧に制限をかけることが可能となる.たとえば,車の持ち主への閲覧制限としては,下記のように,さまざまな様態が考えられる.
* まったく,閲覧できない.
* 不鮮明処理したもののみ,閲覧できる.
* 特定の時間範囲,あるいは,100コマ置きなど,閲覧枚数に制限を掛けてもよい.
暗号化して保存することにより,警察など,特定の機関・人物のみが,画像の暗号を解除し,完全な状態の画像,あるいは,資格に応じて不鮮明化処理をした画像を閲覧できるようにすることができる.
【0025】
プライバシー侵害に対する危険性の懸念は,防犯カメラ等の導入の際は,特に問題になるため,本発明のシステムが,プライバシーの問題を解決して実施されることは重要である.
【0026】
確実にプライバシー侵害を防止する方法として,特開2009−44311の撮像装置,撮像システム,及び画像閲覧システムが発明されており,これと一緒に用いることにより本発明は効果的に活用できる.撮像された画像データを,暗号化鍵に基づいて暗号化して記憶し,正しいユーザID及びパスワードが入力された場合のみ,画像閲覧ができる.また,封印シールが,防犯カメラシステム(演算装置などを含む)の内部を改ざんするときに開けられる部分を封印するように表面に貼着されており,封印シールが剥離されると,封印シールが破壊される.
【0027】
画像がドライバー等の所有者に閲覧できないよう暗号化されて保存される場合においても,事故時またはその指令を命令するボタン等を押した際の前後数分間は,暗号化なしで保存する.または,所有者が閲覧できる状態で画像が保存されることも考えられる.
【0028】
また,特願2009−293787の発明のように,それぞれの閲覧者のレベルごとに,復号化された画像の不鮮明化処理のレベルを調整することによる,よりきめ細かいプライバシーの保護が可能となる.この発明により,画像所有者であるドライバーも不鮮明な画像なら確認できるため,犯罪抑止効果等のカメラが持つ長所を残し,プライバシー侵害の可能性を抑制することができる.
【実施例2】
【0029】
本発明のシステムが,ネットワークに繋がれることにより,高い防犯システムの構築が可能となる.
【0030】
例えば,特許4314369の発明と一緒に用いることにより,有効にネットワーク内の防犯システムを構築することができる.あらかじめ所有者により条件設定された設定に応じ,自動的に画像送信するシステムとしてもよい.その際,プライバシー保護のため,モザイク化等の不鮮明化処理を施した画像を送信することも有効である.
【0031】
特願2009−185748の発明を用いて実施することにより,一般通行人が携帯電話またはその他の電子機器を用いて,車載の防犯カメラに関する所有者,管理者,画像閲覧者,設置場所等の情報を知るができることは効果的である.例えば,ブルートゥースなどのデジタル機器用の近距離無線通信を利用することにより,カメラシステムの素性の開示,画像データを近隣の人,車,信号機,電柱,交番等に送受信することが考えられる.歩行者の携帯電話などと画像データの送受信をし,画像の共有を可能とし,車側,および,携帯電話側に記録することも,防犯上,また,犯罪捜査上,有効である.
【0032】
携帯電話,インターネット等の無線,有線の通信回線を使用し,画像データの送受信が実施されることは,敏速な対応が迫られる事件に対して有効である.しかし,そのような通信手段が難しい場所において,記憶媒体上のデータの,手渡し,郵送等による,画像データの受け渡しもよい.
【0033】
専用の通信網を構築することも考えられる.例えば,警察等の通信網に接続された信号機などから,信号待ちをしている際に,画像データ等の通信をすることが考えられる.
【0034】
発明者らが組織する特定非営利活動法人e自警ネットワーク研究会で研究開発されている,防犯カメラシステム,e自警カメラまたはe自警灯内の記憶装置に画像送信が実施されることも考えられる.
【0035】
また,それらが,インターネット回線に繋がることにより,さらに情報が共有され,効果的である.例えば,交通事故が起きた際にも,共有されている情報を管理するシステムをインターネット上に設置し,調査する際に利用することにより,その事故当時の詳細を追跡調査することを可能とすることができ,社会全体に対し,高機能,低コストの防犯システムの構築が可能となる.
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は,防犯,事故究明に対して利用できるほか,行方不明者の探索等の他の社会安全,予防のためにも利用することができる.また,本発明は,車載に限らずGPS・カメラ付き携帯機器にも適用できる.
【符号の説明】
【0037】
1 ラジオ受信機
2 時計
3 GPSセンサー
4 カメラ
5 メモリカード
6 演算装置
30 交番
31 警察
32 提出用メモリカード
33 代替品
41 自動車
42 通信機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置と,
撮影された画像と記録時の場所・時間とを記録する記録装置と,
連絡を受け取る受信機と,
収集された情報を解析するための演算装置と,
その結果を運転手または所有者に伝える伝達装置とからなる,
カメラシステム
【請求項2】
前記撮影装置からの送信手段を備えた,請求項1記載のカメラシステム
【請求項3】
前記撮影装置で撮影された画像が暗号化されて保存されることを特徴とする,請求項1,又は2記載のカメラシステム


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−180693(P2011−180693A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42403(P2010−42403)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(709003492)特定非営利活動法人e自警ネットワーク研究会 (6)
【出願人】(507266037)イージケイシステム株式会社 (5)
【出願人】(509295446)株式会社 トステック (3)
【Fターム(参考)】