説明

防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート及びそれを用いた射出成形品

【課題】 被転写体となる物品の表面形状が単純な平面ではない場合でも、外観を害さず、物品とより一体化した転写が可能であり、湿度依存性が少なく長期間にわたって帯電防止性が維持でき、かつ透明性も良好な、帯電防止性能および防眩性能を有する転写シートを提供する。
【解決手段】 防眩性を発現するために表面に微細な凹凸が形成され、かつ、透明な導電性有機高分子を含む帯電防止層を、インモールド転写で射出成形品に付与する転写シート。前記導電性有機高分子は、好ましくはポリチオフェン系高分子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド転写シートに関し、さらに詳しくは、被転写体である物品に、防眩性及び帯電防止性を同時に付与することができる、防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート及びそれを用いた射出成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話などの電気製品には、製造、流通及び保管時に塵埃が付着しないように帯電防止処理がなされている。また、塵埃の付着による美観の損失以外にも、蓄積した電荷の放電による火災や、放電による電子部品の故障の危険性があり、これらを防止するためにも帯電防止処理がなされている。
そして、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、液晶テレビ、プラズマテレビなどの表示装置(ディスプレイ)は、導光板、レンズフィルム、光拡散フィルム、偏光フィルム、視野角調整フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、タッチパネル、表示窓材などの多くの光学部材から構成されており、これらの部材を表示装置へ組立てる際や、表示装置として使用中に、切断屑や環境ゴミが光学部材へ付着して、表示機能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0003】
しかしながら、導光板や表示窓などの成形品は、効率よく帯電防止性を付与することが困難な場合が多く、さらに、光学部材のために、帯電防止性に加えて、高い透明性、適度なヘイズや、高いハードコート性が求められ、さらに表示窓では、外光の写り込みの少ない防眩性も求められている。
【0004】
ここで、物品に帯電防止性を付与する方法としては、物品表面に帯電防止剤を塗工する方法や、直接物品に帯電防止剤を添加する方法がある。
しかし、物品表面が平坦ではない等の理由で直接塗工が困難な場合や、物品中に帯電防止剤の添加が困難な場合には、物品表面に帯電防止剤を含む帯電防止層を転写することも行なわれており、係る帯電防止剤としては、ニッケル、銀、銅等の金属や黒鉛等の導電性炭素などの導電性材料、又はアニオン型、カチオン型、あるいはノニオン型の界面活性剤が用いられている。
【0005】
しかしながら、上記の導電性材料は、帯電防止性及び経時安定性については良好であるものの、着色して透明性が悪化するという問題があり、一方、上記の界面活性剤は、透明性については良好であるものの、経時安定性に欠けるという欠点があり、透明性と経時安定性の双方を、高い性能で両立させることは困難であった。
【0006】
そこで、透明性を維持しつつ長期間帯電防止性を保つための試みとして、帯電防止性が良好な、比較的低分子量の材料を、樹脂中にポリマーアロイ化する方法が、提案されている(例えば、特許文献1、2)。
しかしながら、含有できる樹脂の種類に制限があり、相溶化剤の併用が必要であり、さらに、かなり大量の含有量を必要とし、コスト的にも高いという問題点がある。
【0007】
また、トリフルオロメタンスルフォン酸リチウムなどの含ハロゲン酸のアルカリ金属塩を含有させることも提案されている(例えば、特許文献3)。
しかしながら、トリフルオロメタンスルフォン酸リチウムでは、その含有量が多いと表面への移行が多く、外観が悪化して商品価値が落ちるという問題があった。さらに、高温高湿度下において白化して、外観不良となるという問題もあった。
【0008】
その後、これらの問題点を解消し、さらに防眩性を転写と同時に付与する方法として、導電性有機高分子を含み、表面に微小な凹凸を設けた帯電防止層を、転写法で物品に貼付する方法が提案された(特許文献4)。
しかしながら、物品の表面形状が平坦ではなく、例えば、物品の縁が急峻な曲面形状で構成されているような場合でも、外観を害さず、物品とより一体化した帯電防止層の付与が求められており、また、そのような形状でのハードコート性も求められており、さらに、印刷絵柄等の高い装飾性も求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−233743号公報
【特許文献2】特開平3−26756号公報
【特許文献3】特開平7−82411号公報
【特許文献4】特開2005−305944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、物品の表面形状が単純な平面ではない場合でも、外観を害さず、物品とより一体化した転写が可能であり、湿度依存性が少なく長期間帯電防止性が維持でき、かつ透明性も良好な、帯電防止性および防眩性を有する転写シートを提供することであり、さらには、上記のような曲面形状においても十分なハードコート性を有し、さらに、印刷絵柄等の高い装飾性を有する転写シートを提供することである。
またさらに、帯電防止性と共に、高い透明性、適度なヘイズ、高いハードコート性、及び防眩性を有する帯電防止層が、表面に積層一体化されている射出成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明者は種々研究の結果、防眩性を発現するために表面に微細な凹凸が形成され、かつ、透明な導電性有機高分子を含む帯電防止層を、インモールド転写で射出成形品に付与する転写シートであれば、物品の表面形状が単純な平面ではない場合でも、より一体化した転写が可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の請求項1に係わる発明は、離型性基材シートの表面上に、転写層を有するインモールド転写シートにおいて、前記転写層が、少なくとも、帯電防止層、透明架橋硬化樹脂層、及び接着剤層をこの順に有しており、かつ、前記透明架橋硬化樹脂層と前記接着剤層の間に、少なくとも部分的に印刷絵柄層を有しており、かつ、前記離型性基材シートの表面と、前記帯電防止層の離型性基材シート側の表面に、雌雄関係となる微細な凹凸が形成されており、さらに、前記帯電防止層が、透明な導電性有機高分子を含有することを特徴とする防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートである。
【0012】
また、本発明の請求項2に係わる発明は、前記導電性有機高分子が、ポリチオフェン系高分子であることを特徴とする請求項1記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートである。
【0013】
また、本発明の請求項3に係わる発明は、前記透明架橋硬化樹脂層が、電離放射線硬化型の樹脂からなる透明架橋硬化樹脂層であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートである。
【0014】
また、本発明の請求項4に係わる発明は、前記透明架橋硬化樹脂層の接着剤層側の面に、プライマ層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートである。
【0015】
また、本発明の請求項5に係わる発明は、前記離型性基材シートの他方の面に、第2の帯電防止層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートである。
【0016】
また、本発明の請求項6に係わる発明は、前記離型性基材シートが、基材層と、該基材層の転写層側に積層された離型層との積層体から成り、該離型層の転写層側の表面と、前記帯電防止層の離型性基材シート側の表面に、雌雄関係となる微細な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートである。
【0017】
また、本発明の請求項7に係わる発明は、請求項1〜6に記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートを用いて、インモールド転写により、前記転写シートの転写層が、熱可塑性樹脂からなる射出成形品の表面に、積層一体化されていることを特徴とする射出成形品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インモールド転写を用いるため、防眩性を有する帯電防止層を含む転写層を、より一体化した状態で射出成形品に付与することができる。また、本発明の転写シートは、転写層に印刷絵柄層を含んでいるため、転写される物品に高い装飾性を付与することができる。
【0019】
また、請求項2の本発明によれば、前記導電性有機高分子が、ポリチオフェン系高分子であるため、本発明の転写シートは、その転写層に、湿度依存性が少なく長期間帯電防止性が維持でき、かつ透明性も良好な帯電防止層を有することとなる。
【0020】
また、請求項3の本発明によれば、前記透明架橋硬化樹脂層が、電離放射線硬化型の樹脂からなる透明架橋硬化樹脂層であるため、本発明の転写シートは、その転写層が転写される物品表面が複雑な形状の場合においても、十分なハードコート性を有することとなる。
すなわち、本発明の転写シートを用いてインモールド転写を行うことにより、射出成形品の表面には、前記透明架橋硬化樹脂層を外側として転写層が付与され、その後、紫外線硬化処理を施すことにより、前記射出成形品の表面形状に応じた形状で前記透明架橋硬化樹脂層が硬化し、その結果、物品表面が複雑な形状の場合においても、十分なハードコート性を有することとなる。
【0021】
また、請求項4の本発明によれば、前記透明架橋硬化樹脂層の接着剤層側の面に、プライマ層を有するため、該プライマ層の上に形成する印刷絵柄層、および接着剤層との密着性を向上させることができ、このような構成とすることで、転写後の被転写体から透明架橋硬化樹脂層及び帯電防止層の積層体が脱落することを防止することができる。
【0022】
また、請求項5の本発明によれば、前記離型性基材シートの他方の面に、第2の帯電防止層を有するため、本発明の転写シートは、転写シートの製造時や保管時等でも帯電防止性を発現することができ、塵埃が付着せず、このような構成とすることで、被転写体となる物品の外観が、塵埃により損なわれることを防止することができる。
【0023】
また、請求項6の本発明によれば、このような構成とすることで、本発明の転写シートは、離型層が離型性を担うため、基材層の材料選択の自由度が増し、転写時の剥離性が安定して、転写がより容易にできることとなる。
【0024】
また、請求項7の本発明によれば、このような構成とすることで、本発明の射出成形品は、インモールド転写により、防眩性を有する帯電防止層を含む転写層を、より一体化した状態で、その表面に有することとなり、また、前記転写層には印刷絵柄層を含んでいるため、高い装飾性を有することとなる。さらに、請求項1〜6に記載の転写シートを用いているため、本発明の射出成形品は、転写シートの転写領域において、経時安定性に優れた帯電防止性と、高い透明性、低いヘイズ、高いハードコート性、そして防眩性も有することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る転写シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る転写シートの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る転写シートの他の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る転写シートの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
(転写シート)
本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート1は、図1に示すように、離型性基材シート2の一方の面上に、転写層7として、少なくとも、帯電防止層3、透明架橋硬化樹脂層4、及び接着剤層6をこの順に有しており、かつ、透明架橋硬化樹脂層4と接着剤層6の間に、少なくとも部分的に印刷絵柄層5を有しており、かつ、離型性基材シート2の表面と、帯電防止層3の離型性基材シート側の表面に、雌雄関係となる微細な凹凸が形成された構成を、基本構成とする転写シートであり、さらに、帯電防止層3が、透明な導電性有機高分子を含有するものである。
前記帯電防止層3の表面に形成された微細な凹凸により、転写層7は防眩性を発現する。
【0028】
本発明に係る転写シートは、インモールド転写を用いるため、防眩性を有する帯電防止層を含む転写層7を、より一体化した状態で射出成形品に転写することができる。そして、本発明の転写シートは、転写層7に印刷絵柄層5を含んでいるため、転写される物品に高い装飾性を付与することができる。
【0029】
また、本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートは、図2に示すように、透明架橋硬化樹脂層4の接着剤層側の面に、プライマ層8を有する構成としても良い。
このような構成とすることで、プライマ層8の上に形成する印刷絵柄層5、および接着剤層6との密着性を向上させることができ、転写後の被転写体から透明架橋硬化樹脂層4及び帯電防止層3の積層体が脱落することを防止することができることとなる点で、好ましい。
【0030】
また、本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートは、図3に示すように、離型性基材シート2の他方の面に、第2の帯電防止層9を有する構成としても良い。
このような構成とすることで、本発明の転写シートは、転写シートの製造時や保管時にも帯電防止性を発揮して塵埃が付着せず、転写層7が転写される物品の外観が、塵埃により損なわれることを防止できることとなる点で、好ましい。
【0031】
また、本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートは、図4に示すように、離型性基材シート2が、基材層10と、基材層10の転写層側に積層された離型層11との積層体から成り、離型層11の転写層側の表面と、帯電防止層3の離型性基材シート側の表面に、雌雄関係となる微細な凹凸が形成されている構成としても良い。
このような構成とすることで、本発明の転写シートは、離型層11が離型性を担うため、基材層10の材料選択の自由度が増し、転写時の剥離性が安定して、転写がより容易にできることとなる点で、好ましい。
【0032】
次に、本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートを構成する各材料、および製造方法等について説明する。
(離型性基材シート)
離型性基材シート2の層構成は、図1に示すように、それ自体が転写層7と十分な離型性を有する材料から成る単層であっても良いし、あるいは図4に示すように、基材層10と離型層11との積層体であっても良い。離型性基材シート2は、その転写層側の離型性表面に、微細な凹凸を有しており、この離型性基材シート2の微細な凹凸は、帯電防止層3の微細な凹凸と雄雌関係にある。そして、この離型性基材シート2の微細な凹凸は、該雄雌関係にある帯電防止層3の微細な凹凸が防眩性を示すものであれば良く、特に限定されるものではない。
【0033】
ここで、「防眩性」とは、表面の微細な凹凸によって、光を拡散(散乱)せしめることによって、ディスプレイ画像のギラツキやチラツキ感を防止する性能をいい、この性能の良し悪しを表す光学特性として、例えば、光沢度、ヘイズ値、および全光線透過率が挙げられる。
本発明に係る転写シートの光沢度(60゜グロス)は、10〜70%の範囲であることが好ましい。光沢度(60゜グロス)が70%を超えると反射による表面光沢により眩しさが増大し、本発明の目的に合致しないものとなるため好ましくない。
また、ヘイズ値は、0.5〜30%が好ましく、さらには1〜20%がより好ましい。ヘイズ値が30%を超えると透明性が悪くなり白濁が目立つため好ましくない。
また、全光線透過率は、70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80〜95%である。全光線透過率が70%未満では透明性が不足するため好ましくない。
【0034】
微細な凹凸を有する離型性基材シート2の材料としては、長尺帯状シートのロールを巻出して加工する、いわゆるロールツーロール方式に使用できる可撓性を有するものが好ましい。
離型性基材シート2が単層から構成される場合には、転写層と離型性の良い材料を選択する必要がある。この点から、離型性基材シート2の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、エチレングリコール−1,4ヘキサメチレンジメタノール−テレフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル等が使用できる。なかでも、一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムが、耐熱性に優れていることからより好ましい。
離型性基材シート2の厚みとしては、5μm〜200μm程度のものが好ましい。
【0035】
離型性基材シート2の離型面側に微細な凹凸を形成する方法としては、例えば、
(1)離型性基材シートの材料自身にフィラーなどを混合及び/又は混練させてから、キャレンダー法、キャスティング法、溶融押出法、インフレーション法等の手法で成膜することにより表面に微細な凹凸を形成する方法、
(2)表面に所望の微細な凹凸を形成した金属ロールを用い、製膜時に、該ロール上に溶融樹脂を押出して冷却したり、該ロールで圧延したり、あるいは該ロール上に塗工した液状樹脂を固体化することにより微細な凹凸を形成する手法、
(3)一旦、表面平滑に製膜したシートの離型面側に、エンボス加工、サンドブラスト加工、ケミカルエッチング加工等により、微細な凹凸を形成する方法、
等を用いることができる。
【0036】
凹凸形状の制御は、転写シートが防眩性を示すこととなるように、例えば、上記(1)の方法であれば、フィラーの種類、粒子径、及び含有量などを適宜選択し、上記(2)の方法であれば、金属ロールの表面凹凸を所望の形状に加工し、また上記(3)の方法であれば、加工条件を制御すればよい。
【0037】
(離型層)
一方、離型性基材シート2が基材層10と離型層11との積層体から成る場合においては、転写層との離型性能は離型層11が担うため、離型層11が前記の単層の離型性基材シート2で例示した材料で構成されていればよく、基材層10には可撓性を有する各種樹脂を使用できる。
【0038】
離型層11の材料としては、転写層7の最表面の帯電防止層3に対して離型性を持つ離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などが適用できる。
離型性樹脂としては、選択する帯電防止剤にもよるが、例えば、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、弗素系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は1種単独、あるいは2種以上混合して用いる。2種以上混合する例としては、アクリル系樹脂とシリコーン樹脂との混合物、アクリル樹脂とメラミン樹脂との混合物等が挙げられる。
離型剤を含んだ樹脂としては、例えば、弗素系樹脂、シリコーン樹脂、又は各種のワックスなどの離型剤を、添加または共重合させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、繊維素系樹脂などを用いることができる。
電離放射線で架橋する硬化性樹脂としては、例えば、紫外線(UV)、電子線(EB)などの電離放射線で重合(硬化)する官能基を有する、(メタ)アクリレート系、エポキシ系等のモノマー・オリゴマーなどを含有させた樹脂を用いることができる。
【0039】
離型層11の形成方法としては、上記の樹脂を溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコ−ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、コンマコート、フローコート、スプレーコートなどのコーティング方法で塗布し乾燥して、溶剤を除去することにより形成する方法を用いることができる。
また必要に応じて、温度30℃〜200℃で加熱乾燥、あるいはエージングを施し、また、電離放射線硬化性樹脂の場合は、電離放射線を照射して架橋させる。
離型層11の厚さは、通常は0.1μm〜5.0μm程度、好ましくは0.3μm〜3.0μm程度である。この厚さは薄ければ薄い程良いが、0.3μm以上であればより良い成膜が得られて剥離力が安定する。
【0040】
離型性基材シート2が基材層10と離型層11との積層体から成る場合において、離型層11の表面に所望の微細な凹凸を形成する方法としては、
(1)前記の単層の離型性基材シートの場合と同様に、基材層10に所望の微細な凹凸を形成し、次いで該凹凸を埋めない様に膜厚と塗工条件を制御しつつ、該凹凸面上に離型層形成用材料を塗工して離型層11を形成することで、離型層11の表面に基材層10の凹凸が現われるようにする方法、
(2)基材層10は平坦なシートとして製膜し、その上に離型層11を形成する際に、離型層形成用材料中にフィラーを添加して、離型層11表面に所望の凹凸を形成する方法、(3)基材層10は平坦なシートとして製膜し、その上に平坦な離型層11を形成し、その後、該離型層11上にエンボス加工して所望の凹凸を形成する方法、
(4)基材層10は平坦なシートとして製膜し、その上に離型層11を塗工するに際して、離型層形成用材料を凹版印刷法等により所望の凹凸形状に形成する方法、
等を適用することができる。
【0041】
(第2帯電防止層)
また、本発明においては、図3及び図4に示すように、前記離型性基材シート2の他方の面に、第2の帯電防止層9を有する構成としても良い。該第2帯電防止層9は、帯電防止層転写シートの製造時、保管時、及び転写時にも静電気の発生等で塵埃が付着しないようにするためのものであり、その材料としては、種々の帯電防止剤を適用できる。
【0042】
第2帯電防止層9に用いる帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール類、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、ポリエチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド系、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットおよびソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪族アミド等の多価アルコール類、多価アルコールエステル類などの非イオン界面活性剤、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等のカルボン酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩類、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩類、燐酸塩類、ホスホン酸塩類、ホスホン酸エステル塩類などのアニオン界面活性剤、高級アルキルアミン類、環状アミン、ヒダントイン誘導体、アミドアミン、エステルアミド、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩類、ピリジンそのほかの複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類などのカチオン界面活性剤、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のアルキルベタイン類などの両性界面活性剤などの界面活性剤、また、サポニン等の天然界面活性剤、カーボンブラック、グラファイト、変性グラファイト、カーボンブラックグラフトポリマー、酸化スズ−酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末などが適用できる。
【0043】
また、界面活性剤のような低分子型帯電防止剤の導電性付与官能基を高分子に結合した高分子型帯電防止剤も適用できる。
該高分子型帯電防止剤には、例えば、ポリエーテル系(ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド架橋体、ポリエチレンオキサイドと他樹脂の共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールと他樹脂の共重合体)などの非イオン系、第四級アンモニウム塩系(第四級アンモニウム塩基含有共重合体、第四級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート共重合体、第四級アンモニウム塩基含有マレイミド共重合体、第四級アンモニウム塩基含有メタクリルイミド共重合体)などのカチオン系などがある。
【0044】
さらにまた、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(1,6−ヘプタジイン)、ポリビフェニレン(ポリパラフェニレン)、ポリパラフィニレンスルフィド、ポリフェニルアセチレン、ポロ(2,5−チエニレン)、又はこれらの誘導体などの導電性高分子も適用できる。
【0045】
これらの帯電防止剤は1種、又は複数を用いてもよく、単独又は他のバインダへ混入させて、塗布すればよい。これらの界面活性剤含有量は0.001〜10質量%程度である。また、必要に応じて、例えば、可塑剤、安定剤、硬化剤、分散剤キレート剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤などの添加剤を添加してもよい。
【0046】
(転写層)
続いて、本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートの転写層について説明する。図1に示すように、転写層7は、少なくとも、帯電防止層3、透明架橋硬化樹脂層4、及び接着剤層6をこの順に有しており、透明架橋硬化樹脂層4と接着剤層6の間に、少なくとも部分的に印刷絵柄層5を有している構成を基本構成とするものである。
また必要に応じて、図2に示すように、透明架橋硬化樹脂層4の接着剤層6側の面に、プライマ層8を有する構成としても良い。
【0047】
(帯電防止層)
本発明においては、離型性基材シート2の離型面(離型性基材シート2が基材層10と離型層11とで構成される場合は離型層11の表面)上に、帯電防止層3が設けられる。
ここで、前述の第2帯電防止層9においては、単に帯電防止性が得られれば良いので、特に限定されるものではなく、種々の帯電防止剤を適用できた。しかしながら、帯電防止層3においては、湿度依存性が少なく長期間帯電防止性が維持でき、かつ、高い透明性、低いヘイズ、高いハードコート性を付与するために、本発明に特有の帯電防止剤を適用する。
【0048】
帯電防止層3に用いる帯電防止剤は、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(1,6−ヘプタジイン)、ポリビフェニレン(ポリパラフェニレン)、ポリパラフィニレンスルフィド、ポリフェニルアセチレン、ポリ(2,5−チエニレン)、またはこれらの誘導体などの導電性高分子であり、好ましくはポリチオフェン系の導電性有機高分子である。
前記導電性有機高分子を用いることで、湿度依存性が少なく長期間にわたって帯電防止性が維持でき、また、高い透明性、低いヘイズを有し、さらに、高いハードコート性、特に鉛筆硬度、スチールウール等に対する耐擦傷性を著しく向上できる。
【0049】
鉛筆硬度、スチールウール等に対する耐擦傷性が向上する理由は定かではないが、低塗布量での低い皮膜強度及び表面の滑り性等から、耐擦傷性の向上は、下層の透明架橋硬化性樹脂4の耐擦傷性が帯電防止層3を越えて発現されるためと思われる。
【0050】
これらの導電性有機高分子は1種または複数を用いてもよく、単独又は他のバインダへ混入させて、塗布すればよい。単独で塗布する場合は、溶媒へ適宜溶解又は分散させて、ロールコート、グラビアコート、バーコート、スプレーコートなどの公知の塗布法で塗布し、乾燥して帯電防止層3を形成すればよい。この場合の帯電防止層3の厚さとしては、5μm以下、好ましくは0.01〜1μm程度である。
また、バインダへ混入させる場合は、バインダへ0.01〜10質量%程度含有させて、単独と同様に塗布して帯電防止層3を形成すればよい。この場合の帯電防止層3の厚さとしては、0.1〜10μm程度、好ましくは0.1〜5μm程度である。
また、単独又は他のバインダへ混入させる場合でも、必要に応じて、例えば、可塑剤、安定剤、硬化剤、分散剤キレート剤、pH調整剤、防腐剤、消泡剤などの添加剤を添加してもよい。
【0051】
帯電防止層3のJIS−K−6911に準拠した表面固有抵抗は、1×1012Ω/□以下、好ましくは1×1010Ω/□以下、さらに好ましくは1×108Ω/□以下である。1×1012Ω/□程度ではホコリ付着防止程度の帯電防止機能しかなく、1×1010Ω/□以下になると帯電防止機能が向上し、さらに1×108Ω/□以下であれば塵埃に対して要求が厳しい光学部材にも使用できるようになる。
一方、1×1012Ω/□を超えると、帯電防止性が乏しく、容易にホコリが付着してしまう。
【0052】
(透明架橋硬化樹脂層)
透明架橋硬化樹脂層4を構成する樹脂としては、室温での化学反応、熱又は紫外線などの電離放射線等で架橋硬化する樹脂組成物を適用でき、好ましくは、電離放射線硬化樹脂である。透明架橋硬化樹脂層4の厚みは、通常1〜10μmである。
【0053】
熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を例示できる。ポリウレタン樹脂は、多価アルコ−ル(ポリオール)と多価イソシアネート(ポリイソシアネート)との反応により得られる樹脂である。
【0054】
多価アルコ−ルとしては、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、2,3−もしくは1,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、炭素数6〜18のα−オレフィンオキサイド、エピクロルヒドリンなどのアルキレンオキサイド(アルキレン基の炭素数2〜18)を付加した、ポリオキシアルキレンポリオール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどが用いられる。
【0055】
また、多価イソシアネートとしては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4´−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)などの脂環式ポリイソシアネート、などのポリイソシアネートが例示できる。
【0056】
電離放射線硬化性樹脂の組成物としては、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート(以下、本明細書ではアクリレートとメタアクリレートとを(メタ)アクリレートと記載する)等の分子中にラジカル重合型不飽和基を持つ化合物、エポキシ化合物等の分子中にカチオン重合型官能基を持つ化合物、あるいは不飽和ポリエステルなどの化合物の単量体(モノマー)、あるいはオリゴマー(またはプレポリマー)などからなる公知のものが適用できる。
これら単量体、オリゴマー(またはプレポリマー)は、1種単独で用いても良いし、あるいは異種の単量体同志、異種のオリゴマー(またはプレポリマー)同志、または単量体とオリゴマー(またはプレポリマー)とを混合して用いても良い。
【0057】
前記(メタ)アクリレートの単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0058】
前記(メタ)アクリレートのオリゴマー(またはプレポリマー)としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等が例示できる。
前記エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が例示できる。
【0059】
ここで、上記の単量体、オリゴマー(またはプレポリマー)として通常用いられているものは、未架橋状態では室温(常温)で液状であり、架橋後始めて固体となるものである。しかし、転写シートをインモールド転写する場合には、未架橋段階でも固体状をなし、電離放射線照射で架橋状態の固体になる形態のものを用いることが好ましい。
【0060】
そこで、本発明においては、前記電離放射線硬化性樹脂組成物の使用形態として、以下の方法を用いることができる。
先ず、前記電離放射線硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解(あるいは分散)して液状とした上で、離型性基材シート上の帯電防止層表面に塗工し、その後、溶剤を揮発乾燥させて未架橋のままで非粘着固体化させ、未架橋状態の透明架橋硬化樹脂層を作成する。
なお、その際に必要に応じて、射出成形品の表面形状への形状追従性を損なわない範囲内で、電離放射線を適量照射して、不完全(一部分)架橋状態とすることにより、より完全に乾燥させたり、あるいは転写時の熱や応力による透明架橋硬化樹脂層の流動を防止しても良い。
【0061】
次いで、前記転写シートを用いて、転写層を射出成形品の表面形状に追従させつつ転写する。この際、前記透明架橋硬化樹脂層は完全には架橋していないため、熱可塑性を維持しており、射出成形品の表面形状に追従することができる。その後、再び電離放射線を照射することにより、前記透明架橋硬化樹脂層を完全に架橋、硬化せしめる。
これにより、前記透明架橋硬化樹脂層は十分な耐擦傷性(ハードコート性)を発現することとなる。
【0062】
一方、未架橋段階でも固体状をなす電離放射線硬化性樹脂組成物の例としては、
(1)高分子量化して融点または溶融温度が室温以上(通常80℃以上)とした(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、あるいは不飽和ポリエステル等のオリゴマー(またはプレポリマー)、
(2)室温で、未架橋状態では液状の(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、あるいは不飽和ポリエステル等の単量体、またはオリゴマー(乃至はプレポリマー)に、室温で固体のアクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を添加して、室温で非粘着固体化したもの、等が例示できる。
【0063】
更に、以上に列記した各種の電離放射線硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、反応性希釈剤、光重合開始剤、光増感剤、充填剤等の添加剤を添加して用いることができる。
反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びに多官能モノマー、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等がある。
光重合開始剤は、電離放射線として、紫外線、可視光線等の光を用いる場合に添加が必要となるものである。光重合開始剤としては、分子中にラジカル重合型不飽和基を持つ化合物の場合には、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類などがあり、分子中にカチオン重合型官能基を持つ化合物の場合には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等がある。
光増感剤としてはn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルホスフィンなどがあり、混合して使用することができる。
【0064】
(フィラー)
透明架橋硬化樹脂層4には、フィラーを含有させてもよく、該フィラーとしては、有機微粒子及び/又は無機微粒子が適用できる。
無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、ガラス、珪藻土、雲母粉、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデンなどが適用できるが、好ましくはシリカである。
有機微粒子としては、ガラス転移温度が50℃以上の熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、WAX、ポリエチレン、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、メタアクリル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリスチレン、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)などの微粒子が適用できる。
【0065】
フィラーの粒子径は、平均粒子径で0.001〜30μm程度、好ましくは0.01〜20μm程度の範囲である。さらに好ましくは0.1〜5μm程度のシリカである。この範囲未満では、ハード性の向上が少なく、これを超えるとヘイズが増加してしまう。
さらに、フィラーの含有量としては、透明架橋硬化樹脂分100質量%に対して、好ましくは2〜20質量%の範囲である。この範囲未満ではハード性の向上が少なく、これを超えるとヘイズが増加して光学部材としては支障がでるため好ましくない。
微粒子の形状としては、特に限定されるものではなく、球状、直方状、板状、燐片状、針状など、また中空体であってもよい。
このように、透明架橋硬化樹脂層4へフィラーを含有させると、該フィラーが耐磨材として働くためか、著しくハード性を向上させることができる。
【0066】
(プライマ層)
透明架橋硬化樹脂層4は、他の層との密着性に欠ける場合があるので、図2に示すように、必要に応じて、プライマ層8を設ける。該プライマ層8によって、この面に形成する印刷絵柄層5、および接着剤層6との密着性が向上して、転写後の被転写体から透明架橋硬化樹脂層4及び帯電防止層3の積層体が脱落することを防止することができる。
【0067】
プライマ層8としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニル、あるいはアクリル酸等との共重合体、エポキシ樹脂等が適用できる。好ましくは、イソシアネート、又はイソシアネートと多価アルコールとからなるポリウレタン樹脂である。
【0068】
これらの樹脂を、適宜溶剤に溶解または分散して塗布液とし、これを透明架橋硬化樹脂層4に公知のコーティング法で塗布し乾燥してプライマ層8とする。また、樹脂にモノマー、オリゴマー、プレポリマーなどと、反応開始剤、硬化剤、架橋剤などを、適宜組み合わせたり、あるいは、主剤と硬化剤とを組み合わせる場合には、塗布し乾燥して、乾燥または乾燥した後のエージング処理によって反応させて、形成しても良い。該プライマ層8の厚さは、0.05〜10μm程度、好ましくは0.1〜5μmである。
【0069】
(印刷絵柄層)
印刷絵柄層5は、所望の文字、図柄、模様等のパターンが印刷形成されたものである。通常使用されるインキは、アクリル系、ビニル系及びウレタン系等の合成樹脂をビヒクルに必要に応じて顔料、染料、添加材等を添加して着色した着色インキが用いられる。
上記ビヒクルとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル酸系モノマーあるいはメタクリル酸系モノマーの単独重合体、またはこれらのアクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマーをコモノマーとする共重合体、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン等のスチレン系樹脂及びスチレン系共重合体、酢酸セルロース、塩化ビニル、酢酸ビニル、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂やアルコール不溶系樹脂が好ましく、これらの中から1種または2種以上を選択して使用することができる。
また、インキ層間の強度を向上させるため、2液硬化タイプの樹脂系の使用も可能であり、この場合は硬化剤を必要量添加して使用することもできる。
印刷絵柄層を形成するための手段としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、静電印刷及びジェットプリント等、公知の印刷法を用いることができる。
【0070】
(接着剤層)
本発明において、接着剤層6は、図1に示すように、透明架橋硬化樹脂層4、および印刷絵柄層5を覆うように設けられる。また、図2に示すように、プライマ層8を透明架橋硬化樹脂層4と印刷絵柄層5の間に設けた場合には、接着剤層6は、プライマ層8、および印刷絵柄層5を覆うように設けられる。
接着剤層6は、転写層7を、被転写体側に貼り付けるために用いられるもので、常温で粘着力を持つものや、加熱などの処理によって粘着又は接着力を発現するものを用いることができる。
【0071】
接着剤層6の材料としては、接着性及び/又は粘着性を持てばよく、いわゆる接着剤、粘着剤、ホットメルトと呼ばれるものも含み、特に限定されるものではない。
例えば、アクリル系、エポキシ系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、イソシアネート系、シリコーン系、スチレンーブタジエン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル系、ポリエステル系、塩化ゴム系、塩素化ポリプロピレン系、ポリウレタン系などの樹脂を単独で使用、またはこれらの混合物を主成分とするエマルジョン系樹脂や有機溶剤型樹脂、水溶性樹脂などが挙げられる。
【0072】
接着剤層6の形成方法としては、上記の樹脂を水や有機溶剤で希釈させた塗布用液体を、グラビア印刷、オフセット印刷、若しくはスクリーン印刷などの印刷方法、又は、グラビアコート、ロールコート、バーコート、コンマコート、スプレーコート、若しくは押出しコートなどのコート法で塗布し、その後、乾燥又は冷却して形成する方法を用いることができる。
接着剤層6の厚みは、特に制限は無いが、通常1μm〜10μm程度である。
【0073】
(射出成形品)
本発明に係る射出成形品は、前記転写シートを用いたインモールド転写により、前記転写層が、熱可塑性樹脂からなる射出成形品の表面に、積層一体化されている射出成形品である。
このような構成とすることで、本発明の射出成形品は、防眩性を有する帯電防止層を含む転写層を、より一体化した状態で、その表面に有することとなり、また、前記転写層には印刷絵柄層を含んでいるため、高い装飾性を有することとなる。
【0074】
また、本発明に係る射出成形品は、前記本発明に係る転写シートの転写層を、インモールド転写により、その表面に有するため、該転写層の領域において高い透明性や適度なヘイズを示し、防眩性に優れ視認性がよく、並びに高いハードコート性を有し、かつ、湿度依存性が少なく、長期間にわたって維持される帯電防止性をも有するものである。
【0075】
本発明に係る転写シートを用いて、帯電防止層を含む転写層を転写する対象となる物品、即ち被転写体としては、TV、パーソナルコンピュータ、携帯電話などの電気製品の筐体、窓材、計器盤など種々のものが挙げられ、特に限定されるものではないが、直接帯電防止層を形成しにくく、かつ防眩性が必要な液晶やPDP等のディスプレイの表示窓などの成形品であることが好ましい。
【0076】
また、液晶表示装置に用いる面光源装置(バックライト)の導光板や表示窓などの成型品、あるいはこれらに用いられる反射板、レンズフィルム、光拡散フィルム、偏光フィフム、視野角調整フィルム、タッチパネル、表示窓(液晶素子側)などに用いれば、ニュートンリング防止の効果もある。
【0077】
被転写体に用いられる材料としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂であれば使用でき、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等、種々のものがある。いずれの樹脂においても、本発明に係る転写シートの接着剤層の材料を適宜選択することで、転写層を被転写体の表面に転写可能である。
【0078】
転写法としては、射出成形用の金型内に転写シートを挿入し、射出樹脂の熱と圧力を用いて転写する、いわゆるインモールド転写法(射出成形同時転写法)を用いることができる。該転写法によって、本発明に係る転写シートの転写層が射出成形品の表面に、積層一体化されて形成されることになる。
そして、離型性基材シートが剥離されることにより、被転写体の表面に、微細な凹凸が形成された帯電防止層が露出し、防眩性が発現する。
【0079】
本発明によれば、帯電防止性と防眩性とを別々の工程で付与していた従来法に対し、工程数が少なく、極めて効率よく、帯電防止性と防眩性の両性能を被転写体へ付与することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
離型性基材シート2の基材層10として、無機質フィラーを練り込んだ光沢度約80%、厚さ38μmの2軸延伸PETフィルム:E−180(三菱化学ポリエステルフィルム社製、マットPET/商品名)を用い、前記基材層10上の一方の面へ、離型層11として、EX−114(大日精化工業社製、離型剤/商品名)を、厚さが1.0μm(乾燥後)になるように、グラビアロールコート法で塗布し乾燥して、離型層11を形成した。
【0081】
次に、前記離型層11上へ、転写層7として以下の層を順次積層した。
まず、デナトロン(長瀬産業社製、導電性有機高分子/商品名)を、厚さが0.5μm(乾燥後)になるように、グラビア印刷法で塗布し乾燥して、帯電防止層3を形成した。
その後、前記帯電防止層3上へ、透明架橋硬化樹脂層4を形成させる樹脂液(組成物)として、EXF(大日精化工業社製、電離放射線硬化性樹脂/商品名)を厚さが5.0μm(硬化後)になるように、スリットコート法で塗布し、高圧水銀灯(ウシオ電機社製、硬化装置/商品名)80W/cmを用いて、走行速度40m/分で紫外線を照射し、僅かに架橋を進めた状態で乾燥した、透明架橋硬化樹脂層4を形成した。
【0082】
次に、前記透明架橋硬化樹脂層4面へ、プライマとしてTM−AC(大日精化工業社製、2液硬化型プライマ層組成物/商品名)を、厚さが2.5μm(乾燥後)になるように、グラビア印刷法で塗布し乾燥して、プライマ層8を形成した。
次に、前記プライマ層8の表面に、ウレタン系印刷インキVM(大日精化工業社製、2液硬化型印刷インキ/商品名)にて所望の絵柄を5色刷でグラビア印刷した。
さらに、前記印刷絵柄層5上に、TM−HS(大日精化工業社製、接着層組成物/商品名)を、厚さが1.5μm(乾燥後)になるように、グラビア印刷法により塗布し、接着剤層6を形成して、本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート1を得た。
【0083】
(実施例2)
透明架橋硬化樹脂層4を形成する樹脂液(組成物)へ、透明架橋硬化樹脂95質量部に対して、平均粒径3μmのシリカ粒子5質量部を含有させる以外は、実施例1と同様にして、本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート1を得た。
【0084】
(実施例3)
離型性基材シート2の基材層10として、厚さ50μmの表面平坦な2軸延伸PETフィルムを用い、該基材層10の一方の面に、EX−114(大日精化工業社製、離型剤/商品名)95質量部に平均粒径4.5μmのシリカ粒子5質量部を添加した塗膜を、離型層11として積層したこと以外は実施例2と同様にして、本発明に係る防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート1を得た。
【0085】
(実施例4)
実施例1の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート1を、接着剤層6が成形品側になるように、携帯電話機用の液晶画面窓用金型内に載置し、熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を用いて射出成形を行い、転写層7(帯電防止層3/透明架橋硬化樹脂層4/プライマ層8/印刷絵柄層5/接着剤層6)をアクリル樹脂からなる射出成形品上に転写、移行させて、さらに、その射出成形品に、別途、紫外線照射装置にて積算光量1000mJ/cm2の紫外線を照射して、前記透明架橋硬化樹脂層4を完全に硬化させ、前記転写シート1の転写層7が、前記射出成形品の表面に積層一体化されてなる、防眩性、帯電防止性及びハードコート性を有する携帯電話機用の液晶画面窓成型品を得た。
【0086】
(実施例5)
実施例2の防眩性を有する帯電防止転写シートを用いる以外は、実施例4と同様にして、実施例5の防眩性を有する帯電防止処理された物品を得た。
【0087】
(実施例6)
実施例3の防眩性を有する帯電防止転写シートを用いる以外は、実施例4と同様にして、実施例6の防眩性を有する帯電防止処理された物品を得た。
【0088】
(評価)
実施例1〜3で得られた本発明に係る転写シートについて、ヘイズ及び全光線透過率を評価した。
また、実施例1〜3で得られた本発明に係る転写シートを、それぞれインモールド転写して得られた実施例4〜6の本発明に係る射出成形品について、表面抵抗値、鉛筆硬度、防眩性、視認性を評価した。
【0089】
(1)ヘイズ及び全光線透過率
ヘイズ及び全光線透過率は、JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターHM150(村上色彩社製)を用いて測定した。
得られたヘイズは、実施例1と2で、3.0%であり、実施例3が2.5%であり、実施例1〜3のいずれも適度なヘイズであることが確認された。
また、全光線透過率は、実施例1〜3のいずれも90%であり、高い透明性が確認された。
【0090】
(2)表面抵抗値
表面抵抗値は、JIS−K−6911に定められた方法により測定した。
各射出成形品の転写直後と、相対湿度95%、気温60℃雰囲気中で4日経過後の各値を測定して経時安定性を確認した。
実施例4〜6いずれも、転写直後で5×107Ω/□、4日経過後で7×107Ω/□と低い表面抵抗値を示し、良好な帯電防止性および経時安定性が確認された。
【0091】
(3)鉛筆硬度試験
鉛筆硬度試験は、JIS−K−5400に準拠して測定した。
実施例4〜6いずれも、鉛筆硬度3Hと、高いハードコート性が確認された。
【0092】
(4)防眩性及び視認性
防眩性、視認性は、輝度、コントラスト、黒表示での外光の反射及びギラツキを目視で観察し、実用上支障がないものを合格とした。
実施例4〜6いずれも、実用上支障なく、良好な結果であった。
【符号の説明】
【0093】
1 転写シート
2 離型性基材シート
3 帯電防止層
4 透明架橋硬化樹脂層
5 印刷絵柄層
6 接着剤層
7 転写層
8 プライマ層
9 第2帯電防止層
10 基材層
11 離型層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型性基材シートの表面上に、転写層を有するインモールド転写シートにおいて、
前記転写層が、少なくとも、帯電防止層、透明架橋硬化樹脂層、及び接着剤層をこの順に有しており、かつ、
前記透明架橋硬化樹脂層と前記接着剤層の間に、
少なくとも部分的に印刷絵柄層を有しており、かつ、
前記離型性基材シートの表面と、前記帯電防止層の離型性基材シート側の表面に、
雌雄関係となる微細な凹凸が形成されており、さらに、
前記帯電防止層が、透明な導電性有機高分子を含有することを特徴とする防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート。
【請求項2】
前記導電性有機高分子が、ポリチオフェン系高分子であることを特徴とする請求項1記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート。
【請求項3】
前記透明架橋硬化樹脂層が、電離放射線硬化型の樹脂からなる透明架橋硬化樹脂層であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート。
【請求項4】
前記透明架橋硬化樹脂層の接着剤層側の面に、プライマ層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート。
【請求項5】
前記離型性基材シートの他方の面に、第2の帯電防止層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート。
【請求項6】
前記離型性基材シートが、
基材層と、該基材層の転写層側に積層された離型層との積層体から成り、
該離型層の転写層側の表面と、前記帯電防止層の離型性基材シート側の表面に、
雌雄関係となる微細な凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シート。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の防眩性を有する帯電防止インモールド転写シートを用いて、インモールド転写により、前記転写シートの転写層が、熱可塑性樹脂からなる射出成形品の表面に、積層一体化されていることを特徴とする射出成形品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−234610(P2010−234610A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84141(P2009−84141)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】