説明

防眩性ハードコートフィルムもしくはシート

【課題】防眩性と解像性をバランス良く満たす光学特性と防汚性、耐薬品性や耐擦傷性に優れた表面硬度を有するハードコート性を兼ね備えた各種表示装置のための防眩性ハードコートフィルムもしくはシートを提供することにある。
【解決手段】透明プラスチックシート基材10の少なくとも一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂被膜層を設けてなるハードコートシートであって、前記基材10上に無機もしくは有機微粒子を含有する微粒子含有硬化樹脂層20と微粒子を含有しないクリア硬化樹脂層30とを順に積層してなる防眩性ハードコートシート1としたもので、その防眩性ハードコートシートにおいて、微粒子含有硬化樹脂層20の積層後、活性エネルギー線照射によってハーフキュアさせ、次いでクリア硬化樹脂層30の積層後、活性エネルギー線照射によって同時に完全硬化させる防眩性ハードコートシート1の製造方法としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種表示装置に用いる防眩性ハードコートフィルムもしくはシートに関するものであり、さらに詳しくは、液晶表示装置、CRT表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロクロミック表示装置、発光ダイオード表示装置、EL表示装置、各種の表示装置等の画面用の防眩により優れたハードコートフィルムもしくはシートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置あるいはCRT等のディスプレイにおいて、外部から光が画面表面で反射してギラツキ等を発生させ、表示画像を見にくくする問題がある。特に近年、フラットパネルディスプレイの急速な普及と大型化に伴い上記問題を解決すること(以降、防眩と記述する)が益々重要な課題となっている。特に液晶表示体の場合は、それ自身発光せず、バックライトを内蔵しない限り、外光を利用して画像表示を行なわざるを得ないために、より優れた防眩を施すことが重要となる。
【0003】
従来より、防眩性を付与する手段としての一方法に、ガラス板やフィルム等の表面に多層蒸着層を設ける多層蒸着膜法があり、又フィルムもしくはシートの表面をサンドブラストやエンボス加工する方法、フィルムもしくはシートの表面に紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂ににシリカ粒子を配合させた硬化皮膜を形成する方法(特公昭63−40283号公報)のように表面を微細凹凸構造化する方法(以下、微細凹凸構造形成法とする)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記多層蒸着膜法は、大面積の画像表示面に形成させることが難しいことから、ディスプレイの大型化に対応することが困難であることに加えて、多層蒸着膜を画像表示面に形成させるコストが高いために、ディスプレイの製造コスト上昇を招くという問題点があった。
【0005】
一方、微細凹凸構造形成法は、液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイが薄型化及び軽量化するに伴い、この方法で微細凹凸表面化された透明プラスチックフィルムやシートを画像表示体表面に直接貼り合わすことができるのでコスト面でも優位な方法である。例えば液晶表示装置に使用される偏光板に於いて、偏光膜を保護あるいは補強するために偏光膜の両面に透明プラスチックフィルムもしくはシートを直接貼合わせている。この場合に透明プラスチックフィルムもしくはシートの外側に面するフィルムに微細凹凸表面化された透明プラスチックフィルムもしくはシートを使用することによって、別個に防眩性を付与したフィルムやシートを設ける必要がなく、薄型化及び軽量化を達成することができるためメリットが大きい。このような使用方法の場合、本来の表示像の視認性を低下させては利点がないことから、表示像の一定以上の解像度を保持する性能も要求される。
【0006】
しかしながら、従来の微細凹凸構造形成法による透明プラスチックフィルム及びシートに於いては、防眩性と解像性をバランス良く満足させることが困難であった。例えば上記提案の紫外線硬化型樹脂にシリカ粒子を配合する方法においては、その配合量を多くした場合にはヘイズ値の上昇を招いて解像度が低下し、配合量を少なくした場合には光沢度が上昇して防眩性が低下すると共に表示像の視認性も低下する。また該フィルムもしくはシートは直接外部に曝されて指で触ったり、薬品で拭かれたりすることになるため、防眩性と解像性を満足する光学特性を有すると共に、耐擦傷性や耐薬品性も要求される。従って、フィルム若しくはシート表面に傷が付きにくい表面硬度を有するハードコート性と共に、耐薬品性及び透明性にも優れる防汚性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−113709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点の解決と要求を満たすものであり、その課題とするところは、防眩性と解像性をバランス良く満たす光学特性と防汚性、耐薬品性や耐擦傷性に優れた表面硬度を有するハードコート性を兼ね備えた各種表示装置のための防眩性ハードコートフィルムもしくはシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、透明プラスチックフィルムもしくはシート基材の少なくとも一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂被膜層を設けてなるハードコートフィルムもしくはシートであって、前記基材上に無機もしくは有機微粒子を含有する微粒子含有硬化樹脂層と無機もしくは有機微粒子を含有しないクリア硬化樹脂層とを順に積層してなることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシートとしたものである。
【0010】
また、請求項2の発明では、前記微粒子含有硬化樹脂層が膜厚0.5μm以上、前記クリア硬化樹脂層が膜厚0.1〜10μmであることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシートとしたものである。
【0011】
また、請求項3の発明では、請求項1または2記載の防眩性ハードコートフィルムもしくはシートにおいて、微粒子含有硬化樹脂層の積層後、活性エネルギー線照射によってハーフキュアさせ、次いでクリア硬化樹脂層の積層後、前記微粒子含有硬化樹脂層と前記クリア硬化樹脂層を活性エネルギー線照射によって同時に完全硬化させることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシートの製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
即ち、透明プラスチックフィルムもしくはシート基材の少なくとも一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂被膜層を設けてなるハードコートフィルムもしくはシートであって、前記基材上に無機もしくは有機微粒子を含有する微粒子含有硬化樹脂層と無機もしくは有機微粒子を含有しないクリア硬化樹脂層とを順に積層してなる防眩性ハードコートフィルムもしくはシートとしたので、表面の山部分間の谷部分が平坦となり、防眩性と解像性に優れ、且つ防汚性、耐擦傷性にも優れた防眩性ハードコートフィルムもしくはシートを提供できる。
【0013】
また、透明プラスチックフィルムもしくはシート基材上に微粒子含有硬化樹脂層の積層後、活性エネルギー線照射によってハーフキュアさせ、次いでクリア硬化樹脂層の積層後、前記微粒子含有硬化樹脂層と前記クリア硬化樹脂層を活性エネルギー線照射によって同時に完全硬化させることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシートの製造方法としたので、微粒子含有硬化樹脂層とクリア硬化樹脂層間の密着度がより向上し、皮膜全体の密着強度の低下のない防眩性ハードコートフィルムもしくはシートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態を示す防眩性ハードコートフィルムもしくはシートを側断面で表した説明図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す防眩性ハードコートフィルムもしくはシートの側断面の模式図である。
【図3】本発明の一実施例の形態を示すもので、表面の3次元イメージの5000倍拡大図である。
【図4】本発明に係わる一比較例の形態を示す防眩性ハードコートフィルムもしくはシートの側断面の模式図である。
【図5】本発明に係わる一比較例の形態を示すもので、表面の3次元イメージの5000倍拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を説明する。
本発明の防眩性ハードコートフィルムもしくはシートは、図1に示すように、透明プラスチックフィルムもしくはシート基材(10)の少なくとも一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂被膜層を設けてなるハードコートフィルムもしくはシートであって、前記基材(10)上に無機もしくは有機微粒子を含有する微粒子含有硬化樹脂層(20)と無機もしくは有機微粒子を含有しないクリア硬化樹脂層(30)とを順に積層してなることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシート(1)としたものである。
また、前記微粒子含有硬化樹脂層(20)が膜厚0.5μm以上、前記クリア硬化樹脂層(30)が膜厚0.1〜10μmである防眩性ハードコートフィルムもしくはシート(1)としたものである。
【0016】
このように微粒子含有硬化樹脂層(20)とクリア硬化樹脂層(30)の2層構成とすることによって、防眩性と解像性を満足する光学特性を有すると共に、耐擦傷性や耐薬品性にも優れたハードコート性を付与することができる。特にディスプレイの表面に使用する場合には、指脂等による汚れの拭き取り性に優れた防眩性ハードコートフィルムもしくはシートを得ることができる。すなわち図2に示すように、ハードコート表面の山部分(Y)間の谷部分(T)が平滑で、その谷部分(T)に微小な凹凸が存在しない理想的な表面状態とすることができる。それに対して、微粒子を含有する微粒子含有硬化樹脂層(20)のみでは、図4に示すように、谷部分(T)に微小な凹凸が存在し、表面光沢を大幅に低下させることができるが、表面粗度が粗くなりギラツキ感に伴う解像性の低下と谷部分(T)の凹凸への汚れの侵入による汚れ拭き取り性の低下が顕著になる。
【0017】
特に透明性が良好な点から微粒子としてシリカを用いた場合、大抵、粒子径にはある程度の分布を有する為、谷部分(T)にも微小な凹凸が発生する。一方、均一な単分散の粒子を用いる場合でも、粒子径が大きいとギラツキ感が増し、粒子径が小さいと汚れが侵入し易い微小な谷が多く発生する。また単分散の粒子は一般的に高価であり、製品価格を上昇させる。従って、微粒子を含有する微粒子含有硬化樹脂層(20)上に、さらに微粒子を含有しないクリア硬化樹脂層(30)の薄膜を設けることによって表面の凹凸間の谷を埋め、この部分を平滑化することによって防眩性と汚れ拭き取り性を同時に満足させることができるものである。
【0018】
ここて本発明の防眩性ハードコートフィルムもしくはシート(1)の材料等を説明する。
本発明に使用する透明プラスチックフィルムもしくはシートは、特に限定されるものではなく、公知の透明プラスチックフィルムもしくはシートの中から適宜選択して用いることができる。具体例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッソ樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができるが、本発明においては、特にトリアセチルセルロースフィルム、及び一軸延伸ポリエステルが透明性に優れることに加えて、光学的に異方性が無い点で好ましい。
【0019】
本発明に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂には特に制限はなく、紫外線や電子線硬化により鉛筆硬度でH以上の塗膜を与える樹脂であれば任意に使用することができる。このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等から合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂などを挙げることができる。さらにアクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も必要に応じて好適に使用することができる。またこれらの樹脂の反応性希釈剤としては、比較的低粘度である1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上のモノマー及びオリゴマー並びに単官能モノマー、例えばN−ビニルピロリドン、エチルアクリレート、プロピルアクリレート等のアクリル酸エステル類、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ノニルフェニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、及びそのカプロラクトン変成物などの誘導体、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸等及びそれらの混合物、などを使用することができる。
【0020】
本発明に於いて、活性エネルギー線が紫外線である場合には、光増感剤(ラジカル重合開始剤)を添加する必要があり、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4、4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。有機過酸化物や光重合開始剤の使用量は、前記樹脂組成物の重合性成分100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。
【0021】
本発明に於いて、上記活性エネルギー線硬化樹脂を構成する微粒子含有硬化樹脂層に配合する無機もしくは有機微粒子としては、活性エネルギー線硬化樹脂中で良好な透明性を保持する微粒子であれば任意に使用することができる。例えば、無機微粒子として一般的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどからなる微粒子が用いられ、その中で防眩性や解像性、ハードコート性等の点よりシリカ粒子、特に合成シリカ粒子が好ましい。尚、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン、等の導電性の透明微粒子も帯電防止性の付与に係わらず用いることができる。
【0022】
また有機微粒子としては、粒子内部に適度な架橋構造を有しており、活性エネルギー線硬化樹脂やモノマー、溶剤等による膨潤がない硬質な微粒子を用いることができる。例えば、粒子内部架橋タイプのスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、その他反応性ミクロゲル等を使用することができる。透明微粒子の配合量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部あたり0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。
【0023】
また、必要に応じて公知の一般的な塗料添加剤を配合することができる。例えばレベリング、表面スリップ性等を付与するシリコーン系、フッソ系の添加剤は硬化膜表面の傷つき防止性に効果があることに加えて、活性エネルギー線として紫外線を利用する場合は前記添加剤の空気界面へのブリードによって、酸素による樹脂の硬化阻害を低下させることができ、低照射強度条件下に於いても有効な硬化度合を得ることができる。これらの添加量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対し0.01〜0.5重量部が適当である。
【0024】
また、透明プラスチックフィルムもしくはシート基材(10)の少なくとも一方の面に積層するための微粒子含有硬化樹脂層(20)やクリア硬化樹脂層(30)の塗工方法は任意であるが、生産段階ではロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等のいずれでも可能である。
【0025】
活性エネルギー線源として紫外線を使用する場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用でき、フィラーを含まないクリア塗膜の硬化には高圧水銀灯、フィラーを含む場合や厚膜の硬化にはメタルハライドランプが一般的に使用される。
また、電子線を利用して硬化する場合にはコックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線が利用できる。
【0026】
また、もう一つの発明では、上記の防眩性ハードコートフィルムもしくはシートにおいて、微粒子含有硬化樹脂層(20)の積層後、活性エネルギー線照射によってハーフキュアさせ、次いでクリア硬化樹脂層(30)の積層後、前記微粒子含有硬化樹脂層(20)とクリア硬化樹脂層(30)を活性エネルギー線照射によって同時に完全硬化させることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシートの製造方法としたものである。
【0027】
このハーフキュア(半硬化)とは塗膜の物性(硬さ、耐スリキズ性等)が完全に飽和に達していない段階の架橋塗膜を指すが、少なくとも塗膜表面のタックがない程度に硬化した塗膜の状態を意味する。このように一層目の微粒子含有硬化樹脂層(20)をハーフキュアすることによって、微粒子含有硬化樹脂層(20)とクリア硬化樹脂層(30)の間の密着性をより向上させ、皮膜全体の密着強度の低下を防ぐものである。
【実施例】
【0028】
次に本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。
<実施例1>
〔微粒子含有硬化樹脂層(20)の作製〕
以下の処方に示す電子線硬化型の塗料組成物を、以下に述べる手順によって調製した。まずトルエン/2−ブタノン=1/1の混合溶媒にシリカを加え、ディスパーミキサーによる高速撹拌を行なうことによってシリカ分散液を調製した。次いで、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーとトリメチロールプロパントリアクリレートの混合液に前記シリカ分散液を撹拌しながら徐々に添加することによって調製した。
・6官能ウレタンアクリレートオリゴマー 40部
(U−6HA,新中村化学工業社製)
・トリメチロールプロパントリアクリレート 60部
(東亜合成化学社製)
・トルエン 50部
・2−ブタノン 50部
・シリカ(ファインシールX−45, トクヤマ社製) 6部
次に基材(10)として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムの片面に、前記の電子線硬化型の塗料組成物をワイヤーバーにて塗布し溶剤分を蒸発させて厚さ約5μmの塗布層を形成した後、塗膜側より加速電圧200KeVの電子線を吸収線量1Mradの条件で半硬化(ハーフキュア)処理することにより、微粒子含有硬化樹脂層(20)を作製した。
【0029】
〔クリア硬化樹脂層(30)の作製〕
ここで、シリカを含有しない以下の処方に示す電子線硬化型の塗料組成物を、クリア硬化樹脂層(30)の樹脂液として調製した。特にクリア硬化樹脂層(30)は薄膜とするために、微粒子含有硬化樹脂層(20)の塗料処方に比較して希釈溶剤分を多くした。
・6官能ウレタンアクリレートオリゴマー 20部
(U−6HA,新中村化学工業社製)
・トリメチロールプロパントリアクリレート 40部
(東亜合成化学社製)
・トルエン 70部
・2−ブタノン 70部
次に、前記の電子線硬化した微粒子含有硬化樹脂層(20)上に、上記組成のクリア硬化樹脂層(30)を熱乾燥後の膜厚が約0.3μmとなるように塗布した後、塗膜側より加速電圧200KeVの電子線を吸収線量3Mradの条件で硬化処理することによって、透明プラスチックフィルムもしくはシート基材(10)と微粒子含有硬化樹脂層(20)およびクリア硬化樹脂層(30)からなる防眩性ハードコートフィルムもしくはシート(1)を得た。
【0030】
<比較例1>
〔微粒子含有硬化樹脂層(20)の作製〕
以下の処方に示す電子線硬化型の塗料組成物を、以下に述べる手順によって調製した。まずトルエン/2−ブタノン=1/1の混合溶媒にシリカを加え、ディスパーミキサーによる高速撹拌を行なうことによってシリカ分散液を調製した。次いで、6官能ウレタンアクリレートオリゴマーとトリメチロールプロパントリアクリレートの混合液に前記シリカ分散液を撹拌しながら徐々に添加することによって調製した。
・6官能ウレタンアクリレートオリゴマー 40部
(U−6HA,新中村化学工業社製)
・トリメチロールプロパントリアクリレート 60部
(東亜合成化学社製)
・トルエン 50部
・2−ブタノン 50部
・シリカ(ファインシールX−45, トクヤマ社製) 6部
次に基材(10)として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムの片面に、前記の電子線硬化型の塗料組成物をワイヤーバーにて塗布し溶剤分を蒸発させて厚さ約5μmの塗布層を形成した後、塗膜側より加速電圧200KeVの電子線を吸収線量3Mradの条件で完全硬化処理することにより、微粒子含有硬化樹脂層(20)のみの防眩性ハードコートフィルムもしくはシートを作製した。
【0031】
得られた防眩性ハードコートフィルムについて、下記の測定方法により諸物性を測定し、評価した結果を表1に示した。
〔評価方法〕
・ヘイズ度(透明フィルムに入射する平行光のうちで散乱したり屈折する光の割合):直読ヘイズコンピューター(スガ試験機社製)によって測定した。
・20度光沢度:ヘイズ−グロスリフレクトメーター(ビック・ガードナー社製)により塗面を測定した。
・表面粗さ:Surfcom 550AD(東京精密社製)の表面粗さ、輪郭形状計測システムにより、Ra値及び3次元イメージを得た。なお、3次元イメージは実施例1については図3に、比較例1については図5に示した。
・汚れ拭き取り性:指脂汚れの代用として、オレイン酸を布(ベンコットM−3、旭化成社製)に少量付着させ、これによって防眩性ハードコートフィルム表面を汚し、12時間放置後、汚れのないきれいな布によって拭き取った場合の拭き取り易さを官能評価した。
・被膜密着度:硬化被膜層表面にカッターによって1mm×1mmのクロスハッチ(升目)を100個入れ、その上にセロテープ(登録商標)(ニチバン社製)を貼り付けした後、該セロテープ(登録商標)を剥がしたときに硬化被膜がフィルム基材(10)から剥がれた升目の数を計測することで評価した。
・鉛筆硬度:異なる硬度の鉛筆を用いて、500g荷重下での傷の有無を判定した。
・耐擦傷性:#0000のスチールウールにより、ハードコート膜の表面を400gの荷重をかけながら10回摩擦し、傷の発生の有無及び傷の程度を目視により観察し、以下の判定基準に従って評価した。
〔耐擦傷性の判定基準〕
A:傷の発生が全く認められない。
B:数本の細い傷が認められる。
C:無数の傷が認められる。
【0032】
【表1】

【0033】
〔評価結果〕
図3に実施例1の3次元表面粗さのイメージ(5000倍)を、図5に比較例1の3次元表面粗さのイメージを示す。これより、微粒子含有硬化樹脂層(20)のみの場合と比較して、微粒子含有硬化樹脂層(20)とクリア硬化樹脂層(30)の2層構成にした場合は明らかに表面の凸部分(Y)間の谷部分(T)が平滑となっており、Ra値が小さく、ヘイズ度が減少することで透明性、すなわち解像性が向上している。但し、光沢値の若干の上昇は避け難いが、特に汚れ拭き取り性に於いて、顕著な差が見られた。汚れ拭き取り試験後の試料のヘイズ度を測定したところ、比較例1の微粒子含有硬化樹脂層(20)のみの場合は、表面の凹凸間に試薬が付着した状態であるため、ヘイズ度が大きく低下している。一方、微粒子含有硬化樹脂層(20)とクリア硬化樹脂層(30)の2層からなる実施例1の場合は、汚れがほとんど除去されているため、ヘイズ度の低下が非常に小さいものであった。
また、被膜密着度、鉛筆硬度、耐擦傷性に関しては、微粒子含有硬化樹脂層(20)のみの比較例1とクリア硬化樹脂層(30)を付加した実施例1の場合とでは差が認められなかった。但し、比較例1の場合、鉛筆硬度試験での汚れ(鉛筆芯材の微粒子によるハードコートの凹凸表面の目詰まり)の除去が困難であった。
【符号の説明】
【0034】
1‥‥防眩性ハードコートフィルムもしくはシート
10‥‥透明プラスチックフィルムもしくはシート基材
20‥‥微粒子含有硬化樹脂層
30‥‥クリア硬化樹脂層
T‥‥谷部分
Y‥‥山部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルムもしくはシート基材の少なくとも一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂被膜層を設けてなるハードコートフィルムもしくはシートであって、前記基材上に無機もしくは有機微粒子を含有する微粒子含有硬化樹脂層と無機もしくは有機微粒子を含有しないクリア硬化樹脂層とを順に積層してなることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシート。
【請求項2】
前記微粒子含有硬化樹脂層が膜厚0.5μm以上、前記クリア硬化樹脂層が膜厚0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の防眩性ハードコートフィルムもしくはシート。
【請求項3】
請求項1または2記載の防眩性ハードコートフィルムもしくはシートにおいて、微粒子含有硬化樹脂層の積層後、活性エネルギー線照射によってハーフキュアさせ、次いでクリア硬化樹脂層の積層後、前記微粒子含有硬化樹脂層と前記クリア硬化樹脂層を活性エネルギー線照射によって同時に完全硬化させることを特徴とする防眩性ハードコートフィルムもしくはシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−215621(P2011−215621A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107997(P2011−107997)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2007−55410(P2007−55410)の分割
【原出願日】平成9年5月26日(1997.5.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】