説明

防蟻剤含有マスターバッチ、それを用いた防蟻性スチレン系樹脂発泡体の製造方法及び防蟻性スチレン系樹脂発泡体

【課題】毒物又は劇物に該当する防蟻剤を取り扱う現場の負担を軽減すると共に、発泡体中での防蟻剤の分散状態を目視で確認できるようにし、防蟻剤が均一に分散された良好な品質の防蟻性スチレン系樹脂発泡体を容易に得られるようにする。
【解決手段】スチレン系樹脂と、防蟻剤と、白色以外の着色剤とを含む防蟻剤含有マスターバッチを用いる。マスターバッチ中の防蟻剤濃度を調整することで、毒物又は劇物に該当する防蟻剤でも現場で取り扱いやすくなると共に、着色状態の均一性から発泡体中の防蟻剤の分散状態を判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂に防蟻剤を混合するのに用いられるマスターバッチ、該マスターバッチを用いた防蟻性スチレン系樹脂発泡体の製造方法及び防蟻性スチレン系樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の断熱材として用いられるスチレン系樹脂発泡体が白蟻の食害を受けることを防止するために、スチレン系樹脂及び発泡剤と共に、溶融混練温度で安定な防蟻剤を押出機に供給し、これらを溶融混練して押出発泡成形することで、スチレン系樹脂発泡体に防蟻性を付与することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−88185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防蟻剤は、一般に劇物又は毒物であることが多く、発泡体製造プロセスでの取り扱い、保管・貯蔵などに関し厳しい管理が要求される。このため、防蟻性スチレン系樹脂発泡体を日常的に製造する現場では、防蟻剤の管理に多大な手間がかかる問題がある。また、吸湿性を有する防蟻剤の場合、吸湿によって性状が変化し、ハンドリング上の制約を受けやすい問題もある。
【0005】
一方、一般に防蟻剤は白色系の粉体であり、しかもこの防蟻剤を含ませる発泡体は気泡の存在により白色となるので、分散状態が目視で確認できない問題がある。このため、防蟻剤が偏在した発泡体を製造してしまう恐れがある。また、通常の発泡体の製造から防蟻性発泡体の製造への切り換え又はその逆の切り換え時に、どこからどこまでが防蟻性発泡体か通常の発泡体であるかを目視で識別できない問題もある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、防蟻剤を取り扱う現場の負担を軽減すると共に、発泡体中での防蟻剤の分散状態を目視で確認できるようにし、防蟻剤が均一に分散された良好な品質の防蟻性スチレン系樹脂発泡体を容易に得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一に、スチレン系樹脂と、防蟻剤と、白色以外の着色剤とを含み、全重量中防蟻剤が2〜0.2重量%であることを特徴とする防蟻剤含有マスターバッチを提供するものである。
【0008】
上記発明の第一は、防蟻剤の熱分解温度が200℃を超える温度であること、
防蟻剤が、無機粉粒体の含有量が10〜90重量%、防蟻剤の含有量が90〜10重量%で、両者の合計が100重量%となる配合比で無機粉粒体と予め混合されてからスチレン系樹脂及び着色剤と混合されていること
を好ましい態様として含むものである。
【0009】
本発明は、第二に、少なくとも、上記本発明の第一に係るマスターバッチと、スチレン系樹脂と、発泡剤とを押出機に供給して溶融混練し、防蟻剤含有マスターバッチに含まれる着色剤により均一に着色された発泡体を押出発泡成形することを特徴とする防蟻性スチレン系樹脂発泡体の製造方法を提供するものである。
【0010】
更に本発明は、第三に、前記本発明の第一に係る防蟻剤含有マスターバッチを用いたスチレン系樹脂の押出発泡成形品であり、防蟻剤含有マスターバッチに含まれる着色剤で均一に着色されていることを特徴とする防蟻性スチレン系樹脂発泡体を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
防蟻剤を含有するマスターバッチとすると、マスターバッチ中の防蟻剤濃度を自由に調整できる。このため、劇物又は毒物に該当する防蟻剤でも、人体や環境に大きな影響を与えない濃度でマスターバッチに含ませることで、管理上の手間を大幅に改善することができる。特に本発明の防蟻剤含有マスターバッチ中の防蟻剤濃度は2ppc(parts per cent)以下であるので、劇物毒物取締法の対象からも外れるものとなる。加えて、防蟻剤が吸湿性を有していても、マスターバッチ全体としては吸湿による性状変化をほとんど生じなくなる。これらのことから、防蟻剤を扱う現場の負担を大幅に軽減することができる。
【0012】
また、本発明の防蟻剤含有マスターバッチは、防蟻剤と共に白色以外の着色剤を含有しているので、白色系の防蟻剤であっても、この防蟻剤含有マスターバッチを用いて得られる発泡体の着色状態の均一性から、防蟻剤の分散状態を確認することができる。つまり、着色剤と防蟻剤の分散状態は比例関係にあることから、着色状態が均一な発泡体を製品とすることで、防蟻剤が偏在した製品を排除することができる。また、通常の発泡体の製造から防蟻性発泡体の製造への切り換え又はその逆の切り換え時に、防蟻剤を含有しているかどうかを着色の有無で確認でき、切り換え作業も容易となる。
【0013】
更には、本発明のマスターバッチを用いることにより、押出発泡材料に防蟻剤を直接添加する場合に比して添加量のバラツキが少なくなり、しかも防蟻剤の分散性も向上する。また、押出発泡プロセス中の溶融混練条件を調整しやすいので、溶融混練度合いを抑制でき、プロセス中での防蟻剤の分解を容易に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の防蟻剤含有マスターバッチは、スチレン系樹脂に防蟻剤を混合するためのもので、スチレン系樹脂と、防蟻剤と、白色以外の着色剤とを含んでいる。
【0015】
本発明の防蟻剤含有マスターバッチに用いるスチレン系樹脂は、例えばポリスチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジメチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン誘導体の重合体、又はこれらの2種以上の組み合わせからなる共重合体、あるいはそれらとアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、無水マレイン酸又はブタジエンなどの重合可能な化合物との共重合体をいう。また、後述する防蟻性スチレン系樹脂発泡体製造時に押出発泡材料として用いるスチレン系樹脂も同様である。上記スチレン系樹脂の中でも、建物の断熱材の用途としては、ポリスチレンが好ましい。
【0016】
本発明で用いる防蟻剤としては、通常の住宅などの白蟻対策に利用されている防蟻剤の中から、スチレン系樹脂への配合に適した防蟻剤が使用できる。例えば、カーバメート系防蟻剤であるカルバリル、フェノルカルブ、プロポクスル、ピレスロイド系防蟻剤であるアレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、ピレスロイド様化合物系防蟻剤であるエトフェンプロックス、シラフルオフェン、トリアジン系防蟻剤であるトリプロピルイソシアネート(TPIC)、クロルフェノール系防蟻剤である4−ブロモ−2,5−ジクロルフェノール(BDCP)、クロルニコチル系防蟻剤であるイミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、天然物系防蟻剤であるカプリン酸、ヒバ中性油、ウコン、無機化合物系防蟻剤であるホウ素、ホウ酸、ホウ酸亜鉛、その他の防蟻剤であるピレトリン、オクタクロロジプロピルエーテル、フィプロニルなどを用いることができる。これらの防蟻剤は、単独又は複数を併用して使用することができる。
【0017】
防蟻剤としては、防蟻性が高いことから、劇物又は毒物である防蟻剤が好ましい。この劇物又は毒物に該当する防蟻剤としては、イミダクロプリド、クロルホピリス、フェニトロチオン、プロペンタンホス、ペルメトリン、トラロメトリン、アレスリン、プロブクスル、バッサなどが挙げられる。特に好ましい防蟻剤としては、イミダクロプリドが挙げられる。なお、劇物又は毒物とは、毒物劇物取締法に該当する物質をいう。
【0018】
本発明における着色剤は、白以外の着色剤であれば、特に限定されないが、灰色又は有彩色の着色剤が用いられる。一般に合成樹脂の着色に使用されている顔料や染料を用いることができるが、防蟻剤と粒径が近似しており、その分散状態が防蟻剤の分散状態近似したものとなることから、少なくとも顔料を含むことが好ましい。更に、分散性及び着色性を考慮して、顔料及び染料を混合して使用することが好ましい。ここで、顔料、染料は、複数種類を組み合わせて用いることができる。また、発泡体とした後に目視により着色状態を識別しやすい色で、住宅に断熱材として設置した時に大きな違和感のない色を選択することが好ましい。
【0019】
本発明で用いる特に好ましい顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料などを挙げることができる。染料としては、アントラキノン系染料、アゾ系染料などを挙げることができる。この着色剤の添加量は、一緒に添加される防蟻剤の押出発泡材料中の濃度も加味して決定される。通常の押出発泡材料中の着色剤の濃度は、0.005ppc〜0.05ppcである。例えば、2ppcの防蟻剤と0.2ppcの着色剤をスチレン系樹脂に添加しマスターバッチを作製した場合、ポリスチレン系樹脂により20倍程度に希釈することで、適度に着色された押出発泡体を得ることができる。
【0020】
本発明の防蟻剤含有マスターバッチにおいては、全重量中防蟻剤が2〜0.2重量%含有されている。この範囲であれば、押出発泡材料中の防蟻剤濃度を、防蟻性が得やすい0.05〜0.5ppcに調整しやすいと共に、マスターバッチ中の防蟻剤濃度を2ppc以下とすることができる。防蟻剤濃度が2ppc以下の場合、防蟻剤が劇物又は毒物である場合でも、人体や環境への影響を抑えることができ、劇物毒物取締法の対象からも外れることから、現場での管理が容易となる。マスターバッチ中の防蟻剤の含有量が2重量%を超えると、マスターバッチ中の防蟻剤濃度が2ppcを超えるため、防蟻剤が劇物又は毒物である場合、人体や環境への影響を無視できなくなり、現場での管理負担が大きくなる。また、マスターバッチ中の防蟻剤の含有量が0.2重量%未満では、押出発泡材料中の防蟻剤濃度を上記0.05〜0.5ppcにするのに多量のマスターバッチが必要となり、加工性が低下してコスト高となる。
【0021】
本発明の防蟻剤含有マスターバッチは、上記防蟻剤と、スチレン系樹脂と、着色剤を押出機のホッパーから投入し、防蟻剤の熱分解温度以下の温度にて溶融混練し、ノズルから押し出してペレット化することにより得られる。このマスターバッチ製造時の押出機及び後述する防蟻性スチレン系樹脂発泡体製造時の押出機の最高温度は、通常200度程度であることから、使用する防蟻剤の熱分解温度は200℃を超える温度であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の防蟻剤含有マスターバッチにおける防蟻剤は、無機粉粒体の含有量が10〜90重量%、防蟻剤の含有量が90〜10重量%で、両者の合計が100重量%となる配合比で無機粉粒体と予め混合されてからスチレン系樹脂及び着色剤と混合されていることが好ましい。防蟻剤を予め無機粉粒体を混合しておき、この混合物をスチレン系樹脂及び着色剤と混合することで、マスターバッチ製造時の防蟻剤の分散性を向上させることができる。防蟻剤の分散性が良好であると、マスターバッチ製造時の押出機における樹脂滞留時間を短くすることができ、防蟻剤の熱分解及び樹脂劣化を抑制しやすくなる。無機粉粒体が10重量%未満では、防蟻剤の分散性向上が得にくい。無機粉粒体が90重量%を超えると、マスターバッチがもろくなってハンドリングしにくくなると同時に、多量の無機粉粒体が必要となってコスト高となる。また、次の発泡工程にて別途多量の無機粉粒体が混入されるので、得られる発泡体の気泡が連続気泡となり、断熱材用途には適さなくなりやすい。
【0023】
上記無機粉粒体としては、マスターバッチ製造工程中に変質したり分解したり製造に有害な影響を与えたりしない材料であれば特には限定されない。例えば、カオリンクレー、モンモリロナイトクレー、ベントナイトクレー、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、ゼオライト、ベントナイトなどを用いることができる。これらの無機粉粒体は、単独で使用してもよいし、複数種類を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明の防蟻性スチレン系樹脂押出発泡体は、少なくとも、上記防蟻剤含有マスターバッチ、スチレン系樹脂及び発泡剤を押出機に供給し、発泡剤による発泡を抑制できる圧力下で溶融混練した押出発泡材料をダイから大気中に押し出し、防蟻剤含有マスターバッチに含まれる着色剤により均一に着色された発泡体を押出発泡成形することで得ることができる。また、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、押出助剤、脱酸素剤などを添加することが好ましい。
【0025】
本発明において使用される発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気、水などの無機ガス、メタン、エタン、プロパン、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン)、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、塩化エチルなどのハロゲン系炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族アルコール、エーテル系炭化水素などが挙げられる。
【0026】
発泡剤は、一般的に、スチレン系樹脂100重量部当たり約3〜30重量部の量で注入する。中でも、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、工業用ブタン(ノルマルブタンとイソブタンの混合物)、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンの炭化水素のいずれか1種以上ならびに塩化エチル及び二酸化炭素の組み合わせが好ましい。更には、イソブタン、塩化エチル、二酸化炭素の組み合わせ、又は、イソブタンに替わり安価な工業ブタンを用いることが、所定の発泡体物性(密度、気泡径、強度、熱伝導率など)を低コストで得られるので好ましい。
【0027】
また、前記気泡調整剤としてはタルク、ケイ酸カルシウムなど、難燃剤としてはヘキサブロモシクロドデカン、モノクロロペンタブロモシクロヘキサンなど、押出助剤としてはステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウムなど、脱酸素剤としては酸化マグネシウム、ピロリン酸テトラナトリウムなどを用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
実施例1
二軸押出機のホッパーから、ポリスチレン97.8重量%、防蟻剤としてイミダクロプリド2重量%、着色剤として顔料フタロシアニンブルー0.15重量%及び染料スミプラストボルドーHBL(住化ファインケム株式会社製)0.05重量%となる割合で各材料を投入し、溶融混練し、200℃でノズルから押し出し、水槽にて冷却後にカットすることにより、防蟻剤含有マスターバッチを得た。得られた防蟻剤含有マスターバッチを、静置したプレート状の型内で溶融させ、直ちに冷却することで樹脂プレートを作製して、得られた樹脂プレートの着色状態を目視にて観察した。
【0030】
上記防蟻剤含有マスターバッチの作製と、樹脂プレートの観察を、防蟻剤マスターバッチ作製時の二軸押出機での樹脂滞留時間を、押出量を調整することで変えて繰り返し、均一な着色状態の樹脂プレートが得られる最短樹脂滞留時間を求めた。最短樹脂滞留時間は約1.5分であった。
【0031】
次いで、上記最短樹脂滞留時間で作製した防蟻剤含有マスターバッチ5重量%と、重量平均分子量200,000のポリスチレン92重量%と、ヘキサブロモシクロドデカン3重量%とを押出機のホッパーより投入した。また、発泡剤として、固形原料対比にてイソブタン3重量部、塩化エチル2重量部、二酸化炭素1.5重量部を圧入して混練した後、冷却機でゲルを均一に冷却し、最適な発泡温度に調整し、ダイから大気圧下に押出発泡して発泡体を作製した。得られた発泡体の着色状態を目視にて観察した。
【0032】
上記発泡体の着色状態が均一になるよう押し出し条件を調整し、本発明の防蟻性発泡体を得た。均一に着色された本発明の防蟻性発泡体から5個の試験片を切り出し、社団法人日本木材保存協会規格「加圧処理用木材防蟻剤の室内防蟻効力試験方法および性能基準」(JWPS−TW−P.1)に準拠して試験を行った。試験片の大きさは、2cm×2cm×2cmの立方体とした。
【0033】
各試験片の初期質量を測定した後、28℃の暗所である白蟻の飼育容器に21日間静置した食害試験後、各試験片の質量を測定し、平均質量減少率(平均値)と、個々の質量減少率の最小値と最大値とを求め、{(最大値−最小値)/平均値}×100から求められるバラツキ度を算出した。
【0034】
上記バラツキ度は50%未満であった。
【0035】
比較例1
実施例1で、着色状態が均一になるよう押し出し条件を調整する前に得られた、着色状態が不均一な発泡体に基づき、実施例1と同様にしてバラツキ度を算出した。
【0036】
得られたバラツキ度は50%を超えており、実施例1で得た着色状態が均一な発泡体の方が防蟻剤の均一分散性が高いことが推認できる。
【0037】
実施例2
予め、防蟻剤としてイミダクロプリド90重量%と、無機粉粒体としてカオリンクレー10重量%とを混合した混合物を作製した。
【0038】
次に、上記混合物2重量%、ポリスチレン樹脂97.8重量%、着色剤として顔料フタロシアニンブルー0.2重量%を二軸押出機のホッパーから投入し、実施例1と同様に溶融混練し、200℃にてノズルから押し出し、水槽にて冷却後にカットすることにより防蟻剤含有マスターバッチを得た。
【0039】
上記防蟻剤含有マスターバッチの作製と、樹脂プレートの観察を、防蟻剤マスターバッチ作製時の二軸押出機での樹脂滞留時間を、押出量を調整することで変えて繰り返し、均一な着色状態の樹脂プレートが得られる最短樹脂滞留時間を求めた。最短樹脂滞留時間は約1分で、実施例1に比して短縮することができた。
【0040】
実施例3
イミダクロプリドを92重量%とし、カオリンクレーを8重量%とした以外は実施例2と同様にして、予め防蟻剤と無機粉粒体の混合物を作製し、これを用いて実施例2と同様にして防蟻剤含有マスターバッチを作製した。
【0041】
防蟻剤と無機粉粒体の混合物は均一に分散混合させることがでず、この状態で他の材料と共に押出機に投入したが、最短樹脂滞留時間を実施例1より短縮することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂と、防蟻剤と、白色以外の着色剤とを含み、全重量中防蟻剤が2〜0.2重量%、であることを特徴とする防蟻剤含有マスターバッチ。
【請求項2】
防蟻剤の熱分解温度が200℃を超える温度であることを特徴とする請求項1に記載の防蟻剤含有マスターバッチ。
【請求項3】
防蟻剤が、無機粉粒体の含有量が10〜90重量%、防蟻剤の含有量が90〜10重量%で、両者の合計が100重量%となる配合比で無機粉粒体と予め混合されてからスチレン系樹脂及び着色剤と混合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防蟻剤含有マスターバッチ。
【請求項4】
少なくとも、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防蟻剤含有マスターバッチと、スチレン系樹脂と、発泡剤とを押出機に供給して溶融混練し、防蟻剤含有マスターバッチに含まれる着色剤により均一に着色された発泡体を押出発泡成形することを特徴とする防蟻性スチレン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の防蟻剤含有マスターバッチを用いたスチレン系樹脂の押出発泡成形品であり、防蟻剤含有マスターバッチに含まれる着色剤で均一に着色されていることを特徴とする防蟻性スチレン系樹脂発泡体。

【公開番号】特開2009−292948(P2009−292948A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148113(P2008−148113)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000109196)ダウ化工株式会社 (69)
【Fターム(参考)】