説明

防錆塗装物及びその被膜形成方法

【課題】 クロムフリー防錆剤で防錆被膜を形成しても、長期間に亘り、金属基材に対して、高い防錆効果を確実に付与する。
【解決手段】 防錆下地剤で処理された金属基材表面の防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない無機系組成物で構成された防錆被膜が形成された防錆塗装物を調製する。前記防錆下地層は、リン酸鉄被膜などのリン酸金属塩被膜であってもよい。前記防錆被膜の腐食電位は、例えば、−1100〜−800mV(特に、−1100〜−900mV程度)であってもよい。前記無機系組成物は、少なくとも板状亜鉛末(例えば、板状亜鉛末及びバインダー成分、特に、板状亜鉛末、板状アルミニウム末及びケイ素含有バインダー)を含んでいてもよい。前記防錆被膜は複数の層で構成されていてもよい。前記防錆被膜は、板状金属末が積層した構造を有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛末などの金属末を含むクロムフリー防錆被膜が形成された防錆塗装物及びその被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車部品(ボルトナット、パイプ、インテークマニホールドパイプ、マフラーなどの自動車足回り部品など)や洗濯機用部品などの金属部品は、高い耐塩水性や防食性が要求されるため、コーティング処理がなされている。このようなコーティング処理においては、金属部品(主に鉄基材)に対して強固に付着させるために、亜鉛などの防錆剤が、クロム酸などの六価クロム化合物と組み合わせて使用されてきた。例えば、ダクロタイズド処理では、六価クロム化合物及び亜鉛末を主成分とする水性無機塗料を金属部品に塗布し、約300℃以上の温度で塗膜を焼成させることにより、金属部品に対して亜鉛末を強固に付着させて高い防錆性を付与している。
【0003】
しかし、六価クロム化合物は、人体に接触すると皮膚炎や潰瘍の原因となり、消化器や肺などの炎症や発ガンの原因となることが指摘されている。従って、特に欧米を中心として、六価クロム化合物の使用は制限される傾向にある。
【0004】
このような流れの下、前記ダクロタイズド処理においても、六価クロム化合物を使用せずに、亜鉛末とアルミニウム末とケイ素系バインダー成分とを組み合わせた新たなダクロダイズド処理が提案されている(GEOMET(ジオメット)カタログ(非特許文献1)参照)。
【0005】
クロムフリーで亜鉛を含む塗料として、例えば、特開平6−9897号公報(特許文献1)には、表面にコロイダルシリカ被膜を有するコーティング亜鉛含有金属フレークを含む塗料が開示されている。さらに、ジンクリッチな水系塗料として、特開2004−2637号公報(特許文献2)には、アルカリケイ酸塩の溶液にイオン交換水を添加して加水分解させて重合度を低下させたものと亜鉛粉末とを混合して攪拌することにより調製される亜鉛粉末含有スラリーを用いて調整される水系コーティング材が開示されている。
【0006】
また、亜鉛を用いたメッキ方法としても、例えば、特開平7−18461号公報(特許文献3)には、水性樹脂と、特定のシリコーン化合物と、前記水性樹脂に対してクロムが10〜1500ppmの割合である六価クロム塩とを含有する表面処理剤を、亜鉛−アルミニウム合金メッキ鋼板の表面に塗布する亜鉛−アルミニウム合金メッキ鋼板の表面処理方法が開示されている。この方法では、アクリル系塗料などの水性樹脂とシリコーン化合物とを組み合わせることにより、亜鉛−アルミニウム合金メッキにおいて、六価クロムの含有量を極力少なくしている。
【0007】
これらのクロムフリー防錆被膜においても耐蝕性は付与できる。しかし、六価クロム化合物を用いた防錆被膜とは異なり、工業的に多量に製造すると、バラツキが大きく、確実に高い耐蝕性を付与できない。例えば、ボルト・ナットなどの多量に消費される部品を耐蝕処理すると、処理の不均一性に起因するためか、一部に耐蝕性の劣る部品が生成する。しかも、耐蝕性の劣る部品を予め検査により排除することも困難である。そのため、耐蝕性の高い部品を工業的に確実に製造することが困難である。また、六価クロム化合物を用いた防錆被膜と比べると、長期間に亘る耐蝕性が低下する。
【0008】
一方、従来から、微粉金属及び六価クロム化合物を含有する電着被覆物などにおいて、得られた被膜を適当な塗装剤で外装することにより、防錆性を向上させることが提案されている(特開昭48−30739号公報(特許文献4)参照)。しかし、このような外装被膜(トップコート膜)を樹脂成分などで形成すると、凹部などに樹脂成分が液溜まりを起こして硬化する。そのため、被覆層の厚み精度が低下し、例えば、基材がネジ類である場合には、ネジ締めが困難となる。
【特許文献1】特開平6−9897号公報(請求項1及び4)
【特許文献2】特開2004−2637号公報(請求項1及び5)
【特許文献3】特開平7−18461号公報(請求項1、段落番号[0012][0021])
【特許文献4】特開昭48−30739号公報(請求項1、第8頁右上欄第10行〜左下欄14行)
【非特許文献1】「GEOMET(ジオメット)カタログ、2004年3月31日、ver.3」、株式会社日本ダクロシャムロック
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、有害な六価クロム化合物を含有しないクロムフリー防錆剤で防錆被膜を形成しても、長期間に亘って、金属部品などの基材に対して高い耐蝕性を付与できる防錆塗装物及びその被膜形成方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、塩水などの過酷な条件下であっても、金属部品などの基材に対して高い耐蝕性を付与できる防錆塗装物及びその被膜形成方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、工業的に大量生産しても、金属部品などの基材に対して高い耐蝕性を確実に付与できる防錆塗装物及びその被膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の防錆下地剤で金属基材を下地処理すると、クロムフリー防錆剤で防錆被膜を形成しても、金属基材に対して、長期間に亘り、高い耐蝕性を確実に付与できることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の防錆塗装物は、防錆下地剤で形成された金属基材表面の防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない無機系組成物で構成された防錆被膜が形成されている。前記防錆下地層は、リン酸鉄被膜などのリン酸金属塩被膜であってもよい。前記防錆被膜の腐食電位は、例えば、−1100〜−800mV(特に、−1100〜−900mV程度)であってもよい。前記無機系組成物は、少なくとも板状亜鉛末(例えば、板状亜鉛末及びバインダー成分、特に、板状亜鉛末、板状アルミニウム末及びケイ素含有バインダー)を含んでいてもよい。前記防錆被膜は複数の層で構成されていてもよい。前記防錆被膜は、板状金属末が積層した構造を有していてもよい。
【0014】
本発明には、金属基材を防錆下地剤で処理し、形成された防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない防錆剤を適用した後、形成された塗膜を焼成する被膜形成方法も含まれる。この方法において、防錆下地剤として、リン酸水素金属塩を含む溶液を用い、かつ防錆剤として、少なくとも板状亜鉛末を含む防錆剤を用いるとともに、200〜410℃程度の温度で塗膜を焼成してもよい。
【0015】
また、本発明には、金属基材を防錆下地剤で処理して、形成された防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない無機系組成物を適用して焼成し、金属基材の耐蝕性を向上させる方法も含まれる。この方法において、金属基材をリン酸水素金属塩を含む溶液で処理して、形成された防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない無機系組成物を塗布した後、200〜410℃で焼成してもよい。さらに、前記方法において、焼成温度により防錆被膜の腐食電位を調整し、金属基材の耐蝕性を向上させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、特定の防錆下地剤を用いて金属基材を下地処理することにより、クロムフリー防錆剤で防錆被膜を形成しても、長期間に亘り、金属基材に対して、高い密着性及び耐蝕性を付与できる。特に、塩水などの過酷な条件下であっても、高い耐蝕性が得られる。さらに、工業的に大量生産しても、金属部品などの基材に対して、高い耐蝕性を確実に付与できる。特に、工業的に大量生産した場合に、傷が生成したり、異種の金属粉が混入しても、高い耐蝕性が得られる。すなわち、人体に対する危険性が指摘されている有害な六価クロム化合物を使用することがないため、環境的に安全な方法で、従来の六価クロム化合物を用いた場合と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の防錆塗装物は、金属基材と、この金属基材の表面に形成された防錆下地層と、この防錆下地層の上に形成された防錆被膜とで構成されている。
【0018】
[防錆下地層]
本発明の防錆下地層は、金属基材を防錆下地剤で処理することにより形成される。防錆下地層は、防錆被膜を形成するためのクロムフリー防錆剤の焼成温度に対して耐熱性を有する樹脂成分や無機化合物で構成されていればよく、焼付け型プライマーなどの樹脂成分であってもよいが、通常、無機被膜(又は無機成分で構成された層)として形成される。
【0019】
無機被膜は、メッキなどにより、金属単体(アルミニウムなど)や金属酸化物(酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど)などの被膜を形成してもよいが、金属基材自体を化学的に処理することにより、下地層を形成するのが好ましく、特に、化学反応によって生成した化合物で下地層を構成するのが好ましい。このような下地層には、リン酸塩被膜、酸化鉄(例えば、一酸化鉄、四三酸化鉄、三二酸化鉄など)被膜、硫酸鉄被膜、塩化鉄被膜などが含まれるが、特に、リン酸塩被膜が好ましく使用される。なお、黒染め処理と称される四三酸化鉄被膜の場合には、濃水酸化ナトリウム水溶液などの下地剤で金属基材(鉄系基材)を処理し、金属基材に含まれる鉄を酸化させることにより形成することができる。
【0020】
リン酸塩被膜は、ボンデ処理と称される慣用の方法、すなわち、リン酸塩処理剤(又は下地剤)で金属基材を処理することによりで形成できる。リン酸塩処理剤は、少なくともリン酸水素金属塩を含んでいればよく、通常、リン酸水素金属塩、リン酸、及び必要に応じて鉱酸(硝酸など)又はその塩などを含む水溶液である。このようなリン酸塩処理剤で金属基材が処理されると、リン酸によって溶解した鉄系基材の表面とリン酸水素金属塩とが反応して、リン酸金属塩が被膜として形成される。被膜として形成されるリン酸塩としては、例えば、リン酸鉄、リン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸スズ、リン酸ナトリウム、リン酸亜鉛カルシウムなどが使用される。これらのうち、鉄系基材の場合には、基材との密着性及び耐熱性の観点から、リン酸鉄被膜が特に好ましい。
【0021】
なお、このようなリン酸鉄処理剤は、日本パーカライジング(株)から「パルホス525T」、「パルホス901」、「パルホス1077」、「パルホス2557」、「パルホス3454」、「ジュリジン210B」などとして入手できる。
【0022】
リン酸塩被膜の被膜重量は、例えば、0.01〜10g/m2、好ましくは0.05〜5g/m2、さらに好ましくは0.1〜3g/m2(特に0.3〜1g/m2)程度である。
【0023】
防錆下地層の厚みは、用途に応じて、例えば、0.1nm〜50μm、好ましくは1nm〜10μm、さらに好ましくは10nm〜5μm(特に100nm〜1μm)程度である。
【0024】
[防錆被膜]
防錆被膜は、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない無機系組成物で構成されている。
【0025】
すなわち、本発明では、防錆被膜は、不可避的に混入するクロム成分を除き、クロム成分を実質的に含まない。クロム成分としては、例えば、クロム酸(三クロム酸、四クロム酸など)や無水クロム酸(三酸化クロム)などの六価クロム化合物などが挙げられる。具体的には、クロムの含有量は、例えば、被膜中10ppm以下(例えば、0〜10ppm)、好ましくは5ppm以下(例えば、0〜5ppm)、さらに好ましくは1ppm以下(例えば、0〜1ppm)程度である。
【0026】
金属末としては、例えば、周期表第2A族金属(マグネシウムなど)、4A族金属(チタンなど)、7A族金属(マンガンなど)、8族金属(鉄、コバルト、ニッケルなど)、1B族金属(銅など)、2B族金属(亜鉛など)、3B族金属(アルミニウムなど)、4B族金属(スズなど)などの金属単体又は合金で構成された金属末が挙げられる。これらの金属末は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属末のうち、亜鉛末、アルミニウム末などが好ましく、防錆力の点から、亜鉛末及びアルミニウム末から選択された少なくとも一種の金属末(特に、少なくとも亜鉛末を含む金属末)が好ましい。
【0027】
金属末の形状は、特に制限されず、球状、棒状、不定形状などであってもよいが、鱗片状、薄片状、フレーク状などの板状が好ましい。本発明では、防錆被膜中において、前記板状金属末が積層した構造を有しているのが好ましい。このような積層防錆被膜は、被膜中で、数十層程度のフレーク状金属が積層した構造を形成することにより、外部から錆の生成因子が侵入するのを抑制できる。
【0028】
金属末の平均粒子径は、例えば、0.01〜30μm、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.1〜15μm(特に1〜10μm)程度である。金属末が板状である場合、板状金属末の平均厚みは、例えば、0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.1〜3μm程度であり、アスペクト比(平均粒径/平均厚み)は、例えば、2〜100、好ましくは3〜50、さらに好ましくは5〜30(特に5〜20)程度である。
【0029】
防錆被膜は、さらにバインダー成分を含有していてもよい。バインダー成分は、樹脂バインダーであってもよいが、耐熱性の点から、ケイ素含有バインダー、チタンカップリング剤(例えば、チタン酸テトライソプロピルやチタン酸テトラブチルなどのチタンアルコキシドやその重合物など)、ジルコニウムカップリング剤(例えば、ジルコニウム酸アルコキシドなど)などの無機系バインダー、特にケイ素含有バインダーが好ましい。
【0030】
ケイ素含有バインダーとしては、例えば、ケイ酸金属塩(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、アルミノケイ酸塩(アルミノケイ酸マグネシウム、ゼオライト、カオリン、ベントナイトなど)、ケイ素酸化物(一酸化ケイ素、コロイダルシリカなどの二酸化ケイ素など)、シランカップリング剤[クロロトリC1-2アルコキシシラン、グリシジルオキシアルキル−トリC1-2アルコキシシラン、ジ(グリシジルオキシアルキル)ジC1-2アルコキシシラン、アミノアルキル−トリC1-2アルコキシシラン、ジ(アミノアルキル)ジC1-2アルコキシシラン、ビニルトリC1-2アルコキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリC1-2アルコキシシラン、ジ((メタ)アクリロイルオキシアルキル)−ジC1-2アルコキシシランなど]、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの無機系バインダーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機系バインダーのうち、接着性及び耐熱性の点から、ケイ酸金属塩、特にケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸リチウムなどのケイ酸アルカリ金属塩(アルカリケイ酸塩)が好ましい。このようなケイ酸アルカリ金属塩の水溶液は、水ガラスと呼ばれ、粘着性に優れるため、水系塗料とし使用する場合に金属末のバインダーとして適している。
【0031】
特に、ケイ素含有バインダーは、板状金属末(特に亜鉛末やアルミニウム末で構成された板状金属末)で構成された積層構造において層間を埋めると共に、隣接する層を接合するため、高い防錆効果が得られる。さらに、このような防錆積層構造を有する防錆被膜と、前述の防錆下地剤(特に樹脂成分や鉄含有化合物)とを組み合わせることにより、クロム化合物を使用することなく、防錆被膜の接着性及び耐久性を大幅に向上させ、過酷な条件下での長期間に亘る使用に対して防錆効果を発揮する。
【0032】
無機系バインダーの割合は、金属末100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは1〜70重量部、さらに好ましくは3〜50重量部(特に5〜30重量部)程度である。
【0033】
防錆被膜は、クロムフリー防錆剤を塗料の形態でコーティングして硬化させてもよい。塗料の形態で使用される場合には、通常、溶媒及び界面活性剤を含有している。溶媒としては、前記防錆下地剤の項で例示された溶媒を使用することができる。水性塗料の場合には、さらに界面活性剤が含まれているのが好ましい。
【0034】
界面活性剤としては、例えば、慣用のアニオン、ノニオン、カチオン性界面活性剤が使用できるが、特に、テトラアルキルアンモニウム塩(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライドなどのモノ又はジC8-24アルキル−トリ又はジメチルアンモニウム塩など)、トリアルキルベンジルアンモニウム塩[例えば、セチルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどのC8-24アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム塩など)など]、塩化ベンゼトニウム、アルキルピリジニウム塩(例えば、セチルピリジニウムブロマイドなどのC8-24アルキルピリジニウム塩など)、アルキルアミン酢酸塩(例えば、オクタデシルアミン酢酸塩など)などのカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンC6-24アルキルエーテルなど)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンC6-18アルキルフェニルエーテルなど)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸アミドなどのポリオキシエチレンC8-24脂肪酸アミドなど)、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンオレイン酸エステルなどのポリオキシエチレングリセリンC8-24脂肪酸エステルなど)、ポリオキシエチレンヒマシ油及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのノニオン性界面活性剤などを好ましく使用できる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
界面活性剤の割合は、金属末100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部(特に1〜5重量部)程度である。
【0036】
さらに塗料中の金属末の濃度は、例えば、30〜400g/リットル、好ましくは50〜350g/リットル程度である。
【0037】
本発明において、防錆被膜の腐食電位は、例えば、−1100〜−800mV(例えば、−1100〜−900mV)、好ましくは−1100〜−950mV(例えば、−1100〜−1000mV)、さらに好ましくは−1080〜−980mV(特に−1070〜−1000mV)程度である。防錆被膜の腐食電位がこの範囲にあると、被膜の安定性及び耐蝕性が向上する。このような腐食電位は、前記防錆下地層の種類や厚み、防錆被膜の焼成温度によりコントロールできる。例えば、前述のリン酸鉄被膜を防錆下地層として形成した場合には、防錆被膜の焼成温度を高めの温度(例えば、380℃程度)に設定することにより、このような範囲の腐食電位を有する防錆被膜を形成できる。
【0038】
防錆被膜は、耐蝕性を向上する点から、複数の層(例えば、二層)で構成してもよい。複数の層で構成された防錆被膜において、密着性の点から、各層は少なくとも同系統の成分で構成された層(特に同成分で構成された層)で構成するのが好ましい。さらに、複数の層のうち、各層は、同一又は異なる腐食電位を有する層で構成してもよく、少なくとも1つの層(特に最外層)を前記範囲の腐食電位を有する層で構成するのが好ましい。例えば、防錆被膜を二層で構成する場合には、板状亜鉛末、板状アルミニウム末及びケイ素含有バインダーを含む防錆剤を用いて、焼成温度を変えることにより、腐食電位の異なる同成分で構成された二層を形成してもよい。本発明では、特に、防錆被膜を複数の層で構成し、表面層の腐食電位を前記範囲に調整すると、クロムフリー防錆被膜であるにも拘わらず、傷の生成や異種の金属粉の混入に対しても影響の少ない高い耐蝕性を有する被膜を形成することができる。
【0039】
防錆被膜の厚み(複数の層を有する場合は合計厚み)は、例えば、1〜100μm、好ましくは2〜50μm、さらに好ましくは3〜20μm程度である。なお、防錆被膜が複数の層で形成される場合は、通常、各層の厚みは同程度の厚みである。
【0040】
防錆被膜は、さらに防錆下地剤と同様の慣用の添加剤を含有していてもよい。
【0041】
なお、このようなクロムフリー防錆剤は、水性防錆剤として、(株)日本ダクロシャムロックから「ジオメット」(クロムフリーダクロタイズド)、椿本チエイン(株)から「プログレート」として入手でき、溶剤型防錆剤として、アイシン化工(株)から「ドルフレーク」として入手できる。
【0042】
[金属基材]
金属基材の種類は特に制限されず、アルミニウム、亜鉛、銅、チタン、ニッケル、錫、マグネシウム、鉄又はこれらの金属成分を含む合金(例えば、ステンレススチールなど)などであってもよく、通常、腐食性金属基材、特に鉄系基材が使用される。好ましい鉄系基材としては、腐蝕性を有する鉄鋼材料が使用され、鋼材の成分、組成割合は特に制限されない。
【0043】
鉄系基材としては、線状又は棒状形状(鋼棒、鋼線など)、板状基材(例えば、鋼板、鋼帯など)、筒状形状(パイプ、ロッドなど)、立体形状(鋳物など)の種々の形状を使用することができる。具体的には、小型の鉄系基材(ボルト、ナット、ボンベチューブ、瓦釘、伸縮継手、特装車用金具部品、ターンバックルパイプ、防霜ファン、送電金具など)や、比較的大型の鉄系基材(例えば、高欄、親柱、橋梁用防護柵、道路標識、道路用ガードフェンス、河川用フェンス、落石防止網など)が使用できる。これらのうち、特に、耐塩性、非水素脆性などが必要とされる鉄鋼製品などが好適である。
【0044】
なお、金属基材は、必要に応じて、防錆下地剤による下地処理に先だって、慣用の前処理、例えば、脱脂処理、酸洗浄処理などの表面処理、ショットブラストなどの表面加工処理などが施されていてもよい。
【0045】
[被膜形成方法]
本発明の防錆塗装物は、金属基材を防錆下地剤で処理し、形成された防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない防錆剤(クロムフリー防錆剤)を適用した後、形成された塗膜を焼成して、被膜を形成する方法により得られる。
【0046】
金属基材を防錆下地剤で処理する方法としては、防錆下地剤が焼付け型プライマーの場合には、慣用の塗装又はコーティング方法により、防錆下地剤を前記金属基材に適用できる。金属基材に適用された防錆下地剤は、例えば、温度200℃以上(例えば、200〜400℃)、好ましくは220〜380℃程度での加熱により硬化又は架橋させて被膜を形成してもよい。
【0047】
一方、防錆下地層が、無機被膜で構成された層である場合には、例えば、噴霧(スプレー)や浸漬などにより、防錆下地剤を前記金属基材に適用することができる。
【0048】
リン酸塩被膜を形成するためのボンデ処理においては、通常、金属基材の表面を洗浄(脱脂処理など)した後、リン酸塩処理剤で、金属基材(鉄系基材)を処理することにより形成できる。前記下地剤で処理した後は、水洗され、必要に応じて、30〜80℃(好ましくは40〜60℃)程度で加熱してもよい。
【0049】
四三酸化鉄被膜を形成するための黒染め処理においては、例えば、100〜180℃、好ましくは110〜170℃、さらに好ましくは、120〜160℃程度の温度で沸騰させた防錆下地剤(濃水酸化ナトリウム水溶液)中に金属基材を浸漬してもよい。
【0050】
防錆下地層にクロムフリー防錆剤を適用する方法としては、慣用の方法(例えば、ディッピング、ロールコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティングなど)で、防錆下地層の上にクロムフリー防錆剤を適用した後、焼成することにより得ることができる。クロムフリー防錆剤の適用方法としては、一般的には、下地処理した金属基材を水性塗料の形態であるクロムフリー防錆剤中にディッピングし、過剰なクロムフリー防錆剤を遠心機などにより液切りすることによりクロムフリー防錆剤を塗布する場合が多い。
【0051】
クロムフリー防錆剤を適用した後の焼成温度は、200℃以上(例えば、200〜410℃程度)であってもよく、例えば、280〜420℃(例えば、300〜420℃)、好ましくは320〜410℃、さらに好ましくは350〜400℃(特に360〜400℃)程度である。特に複数の層を形成する場合には、少なくとも1つの層(特に最外層)の焼成温度を高温域(例えば、350〜420℃、特に360〜400℃程度)にするのが好ましい。このような温度でクロムフリー防錆剤を焼付けることにより、塗膜の密着性および耐蝕性に優れる塗装品を得ることができる。焼付け時間は、通常、5分〜1時間、好ましくは10〜50分、特に15〜45分程度である。この焼付けにより、耐水素脆性、耐蝕性(特に耐塩水性)、耐熱防錆性に優れる被膜(防錆被膜)を形成できる。
【0052】
本発明では、金属基材に防錆下地層(特にリン酸鉄被膜などのリン酸金属塩被膜)を形成することにより、優れた防錆性を有する被膜を形成可能な焼成温度の範囲を拡大することができる。特に、前述の高温域の焼成温度でクロムフリー防錆剤を焼き付けても、高い耐蝕性を有する防錆被膜を形成できる。
【0053】
防錆被膜の上には、必要により、さらに、前記防錆剤(例えば、コーティング剤など)でトップコート層を形成してもよく、電気絶縁性又は導電性被膜、抗菌性などの機能で付与された被膜などを形成してもよいが、塗装物の種類によっては、液溜まりが生じないように注意する必要がある。
【0054】
これらの工程は、通常、連続的に行なうことができ、焼付け処理は、塗布された金属基材を加熱炉や焼付け炉内で走行させながら行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の防錆塗装品は、耐蝕性などが要求される種々の用途、例えば、自動車部品[ボルト、ナット、座金、巻きバネなどのバネ、パイプ(インテークマニホールドパイプなど)、マフラー、ブラケット、コネクター、電装部品など]、家庭用電気製品の部品(洗濯機やクーラーなどの部品)、土木建築用部品(ハイテンションボルト、オートネイル、止め具、電設部品など)、船外機エンジン部品、搬送関係基材、対塩害防錆を必要とする機器や部品などとして有用である。特に冬季に散布される凍結防止剤(塩化カルシウムなど)による塩害対策用塗装品(例えば、自動車の足回り部品など)として有用である。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で得られた塗装品について、塗膜の密着性及びを次のようにして評価した。
【0057】
[塗膜の密着性]
塗膜に、セロハンテープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)No.405)を貼り付け、指で強くこすることにより気泡を排除した後、セロハンテープの端部を固定して、瞬間的に引き剥がした。なお、引き剥がすとき、セロハンテープの端部と塗膜面との角度は45°に設定した。そして、以下の基準で密着性を評価した。
【0058】
○:塗膜の剥離がない
△:塗膜面積の半分程度が剥離する
×:塗膜が全面に亘り剥離する。
【0059】
[防錆性]
防錆塗装処理されたボルト(検体数n=5)について、下記の条件で塩水噴霧試験(JIS Z2371)を行った。そして、ボルトの頭部及び脚部における赤錆の発生について、目視観察により、下記の基準で評価した。なお、評価結果は、A〜Eの各評価について、該当するボルトの検体数(5検体中の検体数)を示した。さらに、比較例3〜4及び実施例3〜19については、効果の違いを明確にするために、ボルトの頭部側壁にエックス「X」字状の傷(クロスカット)を形成して評価した。
【0060】
(塩水噴霧試験条件)
塩化ナトリウム濃度:50g/L
噴霧室の温度 :35±2℃
噴霧量 :1ml/80cm2/時間
(評価基準)
A:赤錆の発生が全くない
B:ドット状の微かな赤錆が1又は数カ所で発生
C:赤錆が発生
D:顕著な赤錆が発生
E:全面に亘り赤錆が発生。
【0061】
[腐食電位]
得られた最終塗装物について、3.3モル/リットルの銀−塩化銀電極を照合電極として、5重量%食塩水溶液中に24時間浸漬した後の腐食電位を測定した。
【0062】
実施例1
アルカリ脱脂処理後にショットブラスト処理した自動車用フランジボルト(首下30mm、ねじ山径10mm、ピッチ1mm)を、リン酸塩処理液(日本パーカライジング(株)製、商品名「パルホス2577」)をディッピングにより処理して、リン酸鉄で構成された防錆下地層(被膜重量0.5g/m2)を形成した。さらに、このボルトを、室温(温度19℃)で水性無機塗料((株)日本ダクロシャムロック製、商品名「ジオメット720」)に浸漬して引き上げた後、遠心機を用いて液切りし、150℃で15分間プレヒートした後、350℃で45分間焼き付けることにより、厚み4μmの防錆被膜(第1の被膜)を形成した。さらに、このボルトに水性無機塗料を用いて同様の処理を繰返し、厚み4μmの防錆被膜(第2の被膜)を形成した。得られた防錆被膜の被膜重量は270mg/dm2であった。得られた塗装品について、評価した結果を表1に示す。
【0063】
実施例2
防錆被膜の被膜重量を300mg/dm2にする以外は実施例1と同様にして防錆被膜を形成した。評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
防錆下地層を形成しない以外は実施例1と同様にして防錆被膜を形成した。評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例2
防錆下地層を形成しない以外は実施例2と同様にして防錆被膜を形成した。評価結果を表1に示す。
【0066】
なお、実施例1〜2及び比較例1〜2については、防錆性の評価における塩水噴霧試験の処理時間は2400時間である。
【0067】
【表1】

【0068】
表1の結果から明らかなように、実施例の塗装物では、2400時間処理後も、赤錆が発生していないが、比較例の塗装物では、一部のボルトで赤錆の発生が見られる。
【0069】
比較例3
アルカリ脱脂処理後にショットブラスト処理した自動車用フランジボルト(首下30mm、ねじ山径6mm、ピッチ1mm)を、室温(温度19℃)で水性無機塗料((株)日本ダクロシャムロック製、商品名「ジオメット720」)に浸漬して引き上げた後、遠心機を用いて液切りし、150℃で15分間プレヒートした後、350℃で45分間焼き付けることにより、厚み3μmの防錆被膜(第1の被膜)を形成した。さらに、このボルトに水性無機塗料を用いて同様の処理を繰返し、厚み3μmの防錆被膜(第2の被膜)を形成した。得られた防錆被膜の被膜重量は240mg/dm2であった。得られた塗装品について、評価した結果を表2に示す。
【0070】
比較例4
焼き付け温度をいずれも380℃にした以外は比較例1と同様にして防錆被膜を形成した。評価結果を表2に示す。
【0071】
なお、比較例3〜4については、防錆性の評価における塩水噴霧試験の処理時間は720時間である。
【0072】
【表2】

【0073】
表2の結果から明らかなように、比較例3〜4の塗装物では、焼き付け温度が高くなると、赤錆の発生も大きくなる傾向が見られる。
【0074】
実施例3
アルカリ脱脂処理後にショットブラスト処理した自動車用フランジボルト(首下30mm、ねじ山径6mm、ピッチ1mm)を、リン酸塩処理液(日本パーカライジング(株)製、商品名「パルホス2557」)をディッピングにより処理して、リン酸鉄で構成された防錆下地層(被膜重量0.5g/m2)を形成した。さらに、このボルトを、室温(温度19℃)で水性無機塗料((株)日本ダクロシャムロック製、商品名「ジオメット720」)に浸漬して引き上げた後、遠心機を用いて液切りし、150℃で15分間プレヒートした後、380℃で45分間焼き付けることにより、厚み3μmの防錆被膜(第1の被膜)を形成した。さらに、このボルトに水性無機塗料を用いて同様の処理を繰返し、厚み3μmの防錆被膜(第2の被膜)を形成した。得られた防錆被膜の被膜重量は230mg/dm2であった。得られた塗装品について、評価した結果を表3に示す。
【0075】
実施例4〜18
焼き付け温度(焼成温度)を表3に示す温度にした以外は実施例3と同様にして防錆被膜を形成した。評価結果を表3に示す。
【0076】
なお、実施例4〜18については、防錆性の評価における塩水噴霧試験の処理時間は720時間である。
【0077】
【表3】

【0078】
表3の結果から明らかなように、実施例3〜18の塗装物は、いずれも優れた特性を示している。特に、第2の被膜を高めの温度で焼き付けて、特定の腐食電位を有する実施例3、4、7、11及び15の塗装物については極めて高い防錆性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防錆下地剤で形成された金属基材表面の防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない無機系組成物で構成された防錆被膜が形成されている防錆塗装物。
【請求項2】
防錆下地層が、リン酸金属塩被膜である請求項1記載の塗装物。
【請求項3】
防錆被膜の腐食電位が−1100〜−800mVである請求項1記載の塗装物。
【請求項4】
無機系組成物が、少なくとも板状亜鉛末を含む請求項1記載の塗装物。
【請求項5】
無機系組成物が、板状亜鉛末及びバインダー成分を含む請求項1記載の塗装物。
【請求項6】
無機系組成物が、板状亜鉛末、板状アルミニウム末及びケイ素含有バインダーを含む請求項1記載の塗装物。
【請求項7】
防錆被膜が、板状金属末が積層した構造を有する請求項1記載の塗装物。
【請求項8】
防錆被膜が複数の層で構成されている請求項1記載の塗装物。
【請求項9】
防錆下地層がリン酸鉄被膜であり、かつ防錆被膜が板状亜鉛末、板状アルミニウム末及びケイ素含有バインダーを含有する無機組成物で構成されるとともに、防錆被膜の腐食電位が−1100〜−900mVである請求項1記載の塗装物。
【請求項10】
金属基材を防錆下地剤で処理し、形成された防錆下地層の上に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない防錆剤を適用した後、形成された塗膜を焼成する被膜形成方法。
【請求項11】
防錆下地剤として、リン酸水素金属塩を含む溶液を用い、かつ防錆剤として、少なくとも板状亜鉛末を含む防錆剤を用いるとともに、200〜410℃の温度で塗膜を焼成する請求項10記載の方法。
【請求項12】
金属基材を防錆下地剤で処理して、形成された防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない無機系組成物を適用して焼成し、金属基材の耐蝕性を向上させる方法。
【請求項13】
金属基材をリン酸水素金属塩を含む溶液で処理して、形成された防錆下地層に、金属末を含み、かつ実質的にクロムを含まない無機系組成物を塗布した後、200〜410℃で焼成する請求項12記載の方法。
【請求項14】
焼成温度により防錆被膜の腐食電位を調整し、金属基材の耐蝕性を向上させる請求項12記載の方法。

【公開番号】特開2006−187679(P2006−187679A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381834(P2004−381834)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(591006520)株式会社興和工業所 (34)
【Fターム(参考)】