説明

防除機の散布量制御装置及び散布量制御方法

【課題】現場での作業前に、簡単に散布条件の適正範囲が確認でき、特に、単位面積当たりの目標散布量を設定した場合に、どれ位の作業速度で防除機を走らせれば適正な散布条件での散布量制御が可能であるかを作業者が把握できるようにする。
【解決手段】検出された散布条件が設定入力された目標散布条件になるように散布量を制御する制御手段10を備え、制御手段10は、目標散布条件の調整可能範囲を表示して調整可能範囲内での設定入力を可能にする表示入力手段11を備え、複数の目標散布条件を一つずつ設定入力可能にすると共に、先に設定入力された目標散布条件に基づいて後に設定入力可能にする目標散布条件の調整可能範囲を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防除機の散布量制御装置及び散布量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自走しながら圃場面の作物等に薬剤を散布する防除機では、周辺に薬剤が飛散するドリフトの抑止や薬剤散布量を必要最小限に抑えること等を目的として、単位面積当たりの散布量が設定された目標値になるように、防除機の作業速度(スリップ率を考慮した車速)に応じて散布量を制御する速度連動式の散布量制御装置を備えたものが知られている。具体的には、乗用型のブームスプレーヤ等にこのような散布量制御装置が備えられている。
【0003】
下記特許文献1には、散布条件である車速,散布流量,散布圧力,ブーム長或いは稼働ノズル数等を検知するセンサを防除機に配備し、各センサからの検出信号に基づいて薬液タンクから散布ノズルに供給する薬液流量を制御する制御装置を備え、散布幅と移動速度のいずれかが変化しても単位面積当たりの目標散布量どおりの散布を可能にするものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−230337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の散布量制御装置は、予め制御装置に入力された目標値(単位面積当たりの目標散布量)になるように散布量制御が行われる。また、この目標値は、制御装置が最適な自動散布を達成することを主体として設定されているため、作業者は、常に散布量制御装置の走行速度が制御可能な範囲に入るように気を付けながら、散布作業を行わなければならなかった。薬剤の散布量制御は、効果的な薬効が得られる最低限の量から薬害が発生しない量の範囲が許容範囲になり、その許容範囲内で制御が行われればよいが、従来の散布量制御では制御装置が決めた1点に限定して制御が行われるので、逆に作業者にとっては操作上の制約が多くなってしまう問題があった。
【0006】
また、従来技術には散布圧力や車速が適正範囲から外れるとエラー表示や警報ブザーによって作業者が確認できるものもあるが、これでは、車速や散布圧力が適正範囲から外れていることをある程度散布作業を行った後でしか把握できないため、作業範囲全体を適正な散布条件で作業できない問題があった。
【0007】
更に、従来技術では、単位面積当たりの目標散布量を得るための散布条件の設定が制御装置側で一点に決められてしまい、作業者が散布条件を調整することができなかった。例えば、従来技術は散布ノズルを変更しないことを前提としているが、実際上は各種のドリフト低減ノズルに変更することが行われており、ドリフト低減ノズルの種類毎にノズルの適正圧力範囲が示されているので、この場合にはノズルに対応した圧力調整が必要になる。また、車速センサは車軸の回転検出値に一定のスリップ率を掛けて作業速度を割り出しているが、実際上は圃場条件によってスリップ率が大きく変わることがあるので、一定作業速度に対しても各種の散布条件を調整可能にして、作業者の経験に基づいて散布条件を調整できるものが求められている。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、現場での作業前に、簡単に散布条件の適正範囲が確認でき、簡易に設定入力できるようにすること、特に、単位面積当たりの目標散布量を設定した場合に、どれ位の作業速度で防除機を走らせれば適正な散布条件での散布量制御が可能であるかを作業者が把握できること、散布作業当初から車速や散布圧力が適正範囲内に入ることで作業範囲全体を適正な散布条件で作業できること、ノズル種類の変更等に対応して散布条件を作業者が適正散布条件の範囲内で簡単に調整できるようにすること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による防除機の散布量制御装置及び散布量制御方法は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0010】
[請求項1]自走しながら薬剤を散布する防除機の散布量制御装置であって、
検出された散布条件が設定入力された目標散布条件になるように散布量を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記目標散布条件の調整可能範囲を表示して該調整可能範囲内での設定入力を可能にする表示入力手段を備え、複数の前記目標散布条件を一つずつ設定入力可能にすると共に、先に設定入力された前記目標散布条件に基づいて後に設定入力可能にする目標散布条件の調整可能範囲を決定することを特徴とする防除機の散布量制御装置。
【0011】
[請求項8]自走しながら薬剤を散布する防除機の散布量制御方法であって、
検出された散布条件が設定入力された目標散布条件になるように散布量を制御するための準備工程として、前記目標散布条件の調整可能範囲を表示して該調整可能範囲内での設定入力を可能にする表示入力工程を有し、複数の前記目標散布条件を一つずつ設定入力可能にすると共に、先に設定入力された前記目標散布条件に基づいて後に設定入力可能にする目標散布条件の調整可能範囲を決定することを特徴とする防除機の散布量制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る防除機の散布量制御装置の構成を示した説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る防除機の散布量制御装置における更に具体的な構成例を示した説明図である。
【図3】散布条件の一つであるノズルの選択入力を行う表示入力画面を示した説明図である。
【図4】ノズル選択が行われた後の第1設定入力画面を示した説明図である。
【図5】ノズル選択が行われ、第1基準の目標散布条件が設定入力された後の第2設定入力画面を示した説明図である。
【図6】ノズル選択が行われ、第1,2基準の目標散布条件が設定入力された後の第3設定入力画面を示した説明図である。
【図7】設定入力画面の前段のメニュー選択画面の一例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る防除機の散布量制御装置の構成を示した説明図である。本発明の実施形態に係る防除機の散布量制御装置は、自走しながら薬剤を散布する防除機に装備され、検出された散布条件が設定入力された目標散布条件になるように散布量を制御する制御手段10を備える。この制御手段10は、防除機に備えられる散布条件検出センサ20(車速センサ、散布流量センサ、散布圧力センサ、ブーム長さ計測センサ、稼働ノズル数検知センサ等)からの検出信号が入力され、この散布条件に係る検出信号が設定入力された目標散布条件になるように散布量制御の制御信号を出力する。
【0014】
前述した目標散布条件は、表示入力装置(液晶表示入力装置)30からの入力信号によって設定入力されるが、制御手段10はこの表示入力装置30を制御するための表示入力手段11を備える。表示入力装置30の一例を図示に基づいて説明すると、液晶表示画面31を備えると共に、各種の入力ボタン32(電源ボタン32A,メニューボタン32B,決定ボタン32C,切り替えボタン32D,32E,32F,32G)等を備えている。
【0015】
そして、制御手段10は、表示入力手段11の機能によって、設定入力される目標散布条件の調整可能範囲を表示してこの調整可能範囲内での目標散布条件の設定入力を可能にし、更には、複数の目標散布条件を一つずつ設定入力可能にすると共に、先に設定入力された目標散布条件に基づいて後に設定入力可能にする目標散布条件の調整可能範囲を決定する。ここでの目標散布条件は、単位面積当たりの散布量(L/10a)、防除機の車速(km/h)、散布流量(L/min)、散布圧力(MPa)等の一部又は全部を含むものである。
【0016】
この制御手段10によって実行される防除機の散布量制御方法は、検出された散布条件が設定入力された目標散布条件になるように散布量制御を実行するための準備工程として行われ、目標散布条件の調整可能範囲を表示してこの調整可能範囲内での設定入力を可能にする表示入力工程を有する。この表示入力工程では、複数の目標散布条件を一つずつ設定入力可能にすると共に、先に設定入力された目標散布条件に基づいて後に設定入力可能にする目標散布条件の調整可能範囲を決定する。
【0017】
このような実施形態に係る防除機の散布量制御装置及び散布量制御方法によると、目標散布条件の調整可能範囲を表示して、その調整可能範囲内での設定入力を可能にし、複数の目標散布条件を一つずつ設定入力可能にすると共に、先に設定入力された目標散布条件に基づいて後に設定入力可能にする目標散布条件の調整可能範囲を決定するので、現場での作業前に、簡単に散布条件の適正範囲を確認することができ、特に、単位面積当たりの目標散布量を設定した場合に、それに基づいて作業速度の調整可能範囲が決定されて表示されるので、作業者はどれ位の作業速度で防除機を走らせればよいか、どれくらいの散布圧力で動作させればよいかを確認して散布作業を行うことができる。
【0018】
そして、前述した調整可能範囲を適正散布条件に基づいて決定することで、一つの設定された目標散布条件(例えば、単位面積当たりの目標散布量)に対して他の目標散布条件(散布圧力や散布流量等)をどの程度にすれば適正な散布条件での散布量制御が可能であるかを作業者が把握できる。ここでの適正散布条件とは、各種ノズルに対してドリフトさせないで散布を行うことができる散布圧力や散布流量の条件を含んでいる。
【0019】
また、作業者が自らの手で散布条件を設定入力できるので、ノズルの種類を変更した場合にも、そのノズルに応じた適正な散布条件を簡易に設定することが可能になる。
【0020】
散布作業の前に作業者が散布条件を認知しているので、散布作業当初から車速や散布圧力を適正範囲に入れることができ、作業範囲全体を適正は散布条件で作業することができる。
【0021】
また、制御手段10が設定入力された目標散布条件を保存する目標散布条件保存手段12を備えることで、表示入力手段11が目標散布条件保存手段12に保存されている既設値を表示することができ、これによって前回の作業時に設定入力した散布条件を利用して今回の作業時の条件設定を簡略化することができる。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係る防除機の散布量制御装置における更に具体的な構成例を示した説明図である。ここでは、散布条件として、車速と散布流量と散布圧力を検出し、これらの検出値に基づいて電動調圧弁を制御する例を示している。
【0023】
防除機は、図示省略の走行機体(自走式の走行機体,トラクタ等を含む)に、散布薬剤を貯留するタンク40、薬剤を圧送するためのポンプ41、供給流量を調整する電動調圧弁43、所定間隔で配置された複数の散布ノズル50が接続された散布管(供給ホース)51、これを備えたブーム42(42A,42B)、等が装備されており、タンク40からポンプ41を経て、分流器52によって分流されて複数の散布管51に至る配管経路53(53A〜53D)が形成されている。
【0024】
そして、配管経路53(53B)に散布流量センサ21と散布圧力センサ22が配備され、図示省略の走行機体の車軸に車速センサ23が配備されており、各センサからの検出信号が前述した制御手段10に入力されて、制御手段10は電動調圧弁43の調整モータ43Aを回転制御する。また、制御手段10は前述したように表示入力装置30の表示入力機能を制御している。
【0025】
このような散布量制御装置のシステム構成における表示入力機能(設定入力ガイダンス機能)、散布量制御方法における表示入力工程の具体例を以下に示す。
【0026】
図3は、散布条件の一つであるノズルの選択入力を行う表示入力画面を示している。防除機は散布ノズル50を他種類のものに切り替え又は交換することができる。散布ノズル50を切り替え又は交換した場合には、制御手段10が散布量を演算する際に用いるノズル情報を切り替える必要がある。図示の例では、表示入力装置30のメニュー画面(同図(a))で「ガイダンス」を選んで決定ボタン32C又は切り替えボタン32Eを押すと同図(b)に示すようなノズル選択入力画面が表示される(この入力画面で切り替えボタン32Dを押すと元のメニュー画面に戻すことができる)。
【0027】
この入力画面において、切り替えボタン32F,32Gを操作することで、選択入力項目を同図(b)〜(g)に示すように変更することができる。ここでは、同図(b)がノズル1を選択した状態、同図(c)がノズル2を選択した状態、同図(d)がノズル3を選択した状態、同図(e)がノズル4を選択した状態、同図(f)がノズル5を選択した状態、同図(g)がノズル6を選択した状態をそれぞれ示している(図中の■が選択した項目を示し、□が非選択の項目を示している)。
【0028】
ノズル1〜6はそれぞれ吐出特性の異なるものであり、各ノズルに対してそれに適する反当散布量(10aの単位面積当たりの散布量)を併せて表示している。防除機において切り替え又は交換された散布ノズル50に対応してノズル1〜6のいずれかを選択することで、防除機の散布ノズル50の種類に合わせて制御手段10におけるノズル情報を設定変更することができる。ノズル1〜6のいずれかを選択して、決定ボタン32C又は切り替えボタン32Eを押すと、選択したノズル(ノズル1〜6のいずれか)に対応した第1設定入力画面に切り替わる(この入力画面で切り替えボタン32Dを押すと元の画面に戻すことができる)。切り替わった後は選択されたノズルのノズル情報を基に制御手段10の演算処理が行われる。
【0029】
図4は、ノズル選択が行われた後の第1設定入力画面を示した説明図である。第1設定入力画面では、複数の目標散布条件のうち一つを選んで第1基準(「キジュン1」)とし、その第1基準(「キジュン1」)の設定入力を可能にする。この例では、目標散布条件として、反当散布量(10aの単位面積当たりの散布量;L/10a)、車速(km/h)、散布圧力(MPa)のうち一つを第1基準(「キジュン1」)として選択することができる。同図(a)が反当散布量(L/10a)を選択した状態、同図(b)が車速(km/h)を選択した状態、同図(c)が散布圧力(MPa)を選択した状態をそれぞれ示している(図中の■が選択した項目を示し、□が非選択の項目を示している)。選択項目の切り替えは切り替えボタン32F,32Gによって行う。
【0030】
第1基準(「キジュン1」)として、反当散布量(10aの単位面積当たりの散布量;L/10a)、車速(km/h)、散布圧力(MPa)のうち一つを選択して決定ボタン32C又は切り替えボタン32Eを押すと、各目標散布条件の設定入力可能画面(同図(a1),(b1),(c1))が表示される。ここでは予め制御手段10が保有する基準値が各画面で表示され、それに対して切り替えボタン32F,32Gを操作することで基準値を上下調整(UP,DOWN)できるようにしている。制御手段10が保有する基準値は前回の準備工程で設定された既設値にすることができる。この場合は前述した目標散布条件保存手段12に保存された値を最初の表示値として表示する。これによると、同条件で作業を行いたい場合には繰り返しの設定入力を簡略化できる。
【0031】
同図(a1)に示す画面では、目標散布条件のうち反当散布量(L/10a)を設定入力可能にしており、最初の表示値は選択されたノズル1〜6に対応する適正な反当散布量を表示し、これに対して上下調整を可能にしている。同図(b1)に示す画面では、目標散布条件のうち車速(km/h)を設定入力可能にしており、最初の表示値は選択されたノズル1〜6に対応する適正車速を表示し、これに対して上下調整を可能にしている。車速を設定入力すると、この車速を得るために適する変速ギア状態を併せて表示する。図示の「L−2」は低速2段の変速ギア状態を示している。設定入力された車速に対応する変速ギア状態が無い場合は表示を行わない。同図(c1)に示す画面では、目標散布条件のうち散布圧力(MPa)を設定入力可能にしており、最初の表示値は選択されたノズル1〜6に対応する適正な散布圧力を表示し、これに対して上下調整を可能にしている。
【0032】
第1基準(「キジュン1」)として、反当散布量(10aの単位面積当たりの散布量;L/10a)、車速(km/h)、散布圧力(MPa)のうち一つを選択して設定入力を行った後、決定ボタン32C又は切り替えボタン32Eを押すと、選択したノズル(ノズル1〜6のいずれか)と第1基準の設定入力に基づく第2設定入力画面に切り替わる(この入力画面で切り替えボタン32Dを押すと元の画面に戻すことができる)。切り替わった後は選択されたノズルのノズル情報と第1基準の設定値を基に制御手段10の演算処理が行われる。第1基準を複数の目標散布条件の中から選択できるようにしているので、作業者は自身の散布作業経験を生かして適正な散布条件を得る上で最初に決定すべき条件を選ぶ。これによって作業者の経験を生かした設定が可能になる。
【0033】
図5は、ノズル選択が行われ、第1基準の目標散布条件が設定入力された後の第2設定入力画面を示した説明図である。第2設定入力画面では、複数の目標散布条件のうち第1基準以外の一つを選んで第2基準(「キジュン2」)とし、その第2基準(「キジュン2」)の設定入力を可能にする。この第2設定入力画面では、第2基準の候補となる複数の目標散布条件を選択可能に列挙して一つずつ設定入力可能にしている。そして、各目標散布条件の調整可能範囲を表示してこの調整可能範囲内での設定入力を可能にしている。
【0034】
この例では、第1基準として反当散布量(L/10a)を設定入力した場合を示しており、第2基準の候補となる目標散布条件として、散布圧力(MPa)、散布流量(L/min)、車速(km/h)を選択可能に表示している。同図(a)が散布圧力(MPa)を選択した状態、同図(b)が散布流量(L/min)を選択した状態、同図(c)が車速(km/h)を選択した状態をそれぞれ示している(図中の■が選択した項目を示し、□が非選択の項目を示している)。選択項目の切り替えは切り替えボタン32F,32Gによって行う。
【0035】
第2設定入力画面で表示される調整可能範囲は、ノズルの選択と第1基準の設定値を基にして、適正な散布が可能となる範囲が求められ、目標散布条件毎に表示される。図示の例では、ノズル1が選択され、第1基準として反当散布量が25L/10aに設定入力されたことに基づき、制御手段10が散布圧力(MPa),散布流量(L/min),車速(km/h)の調整可能範囲を導き出して「最小値〜最大値」で表示している。
【0036】
同図(a),(b),(c)に示す第2設定入力画面では、ここでも予め制御手段10が保有する値が各画面で表示されている。この表示値は前述した調整可能範囲内の中間的な代表値が示されている。この表示値を前回の準備工程で設定された既設値にすることもできる。図示においては、散布圧力の調整範囲が0.5〜2.5MPaでありその範囲内の表示値が1.5MPaであること、散布流量の調整範囲が25〜124L/minでありその範囲内の表示値が100L/minであること、車速の調整範囲が1.8〜3.3km/hでありその範囲内の表示値が3.0km/hであること、3.0km/hの車速を実行する変速ギア状態が「L−2」(低速2段)であることが示されている。
【0037】
第2基準(「キジュン2」)として、散布圧力(MPa)、散布流量(L/min)、車速(km/h)のうち一つを選択して決定ボタン32C又は切り替えボタン32Eを押すと、各目標散布条件の設定入力可能画面(同図(a1),(b1),(c1))が表示される。ここでは、前述した表示値が示され、それに対して切り替えボタン32F,32Gを操作することで設定値を上下調整(UP,DOWN)できるようにしている。第2基準(「キジュン2」)として、散布圧力(MPa),散布流量(L/min),車速(km/h)の設定入力を行った後、決定ボタン32C又は切り替えボタン32Eを押すと、選択したノズル(ノズル1〜6のいずれか)、第1基準、第2基準の設定入力に基づく第3設定入力画面に切り替わる(この入力画面で切り替えボタン32Dを押すと元の画面に戻すことができる)。切り替わった後は選択されたノズルのノズル情報と第1,2基準の設定値を基に制御手段10の演算処理が行われる。
【0038】
このような第2設定入力画面を設けることで、第2基準となる目標散布条件を設定入力する際に、表示された調整可能範囲をみながら、その範囲内に適正に設定することができる。したがって、現場で設定値を計算しながら入力するような面倒な入力作業を省くことができる。また、調整可能範囲は、制御手段10の演算処理によって適正散布条件になるように求められたものであるから、その範囲内に設定入力しておけば、誤って不適正な設定をしてしまうこともない。更には、車速の調整可能範囲が表示されるので、作業者は作業当初から安心して適正な作業速度で防除機を走行させることができる。
【0039】
図6は、ノズル選択が行われ、第1,2基準の目標散布条件が設定入力された後の第3設定入力画面を示した説明図である。第3設定入力画面では、複数の目標散布条件のうち第1,2基準以外の一つを選んで第3基準とし、その第3基準の設定入力を可能にする。この第3設定入力画面では、設定入力済みの第1,2基準の目標散布条件を列挙表示すると共に、第3基準の候補となる目標散布条件を選択可能に列挙して一つずつ設定入力可能にしている。そして、各目標散布条件の調整可能範囲を表示してこの調整可能範囲内での設定入力を可能にしている。図6に示した状態から各目標散布条件を選択して設定入力可能にする動作は図5に示した例と同様である。
【0040】
同図(a)は、図5(a1)における設定入力後の状態であり、設定入力された第2基準である散布圧力「1.7MPa」が表示されると共にその調整可能範囲「0.5〜2.5」が表示されている。第3基準となる散布流量(L/min)と車速(km/h)に関しては、ノズル1の選択で反当散布量25L/10aと散布圧力1.7MPaとを設定した上で、それに対応した調整可能範囲が示されている。
【0041】
同図(b)は、図5(b1)における設定入力後の状態であり、設定入力された第2基準である散布流量「105L/min」が表示されると共にその調整可能範囲「25〜124」が表示されている。第3基準となる散布圧力(MPa)と車速(km/h)に関しては、ノズル1の選択で反当散布量25L/10aと散布流量100L/minとを設定した上で、それに対応した調整可能範囲が示されている。
【0042】
同図(c)は、図5(c1)における設定入力後の状態であり、設定入力された第2基準である車速「3.2km/h」が表示されると共にその調整可能範囲「1.8〜3.3」が表示されている。第3基準となる散布圧力(MPa)と散布流量(L/min)に関しては、ノズル1の選択で反当散布量25L/10aと車速3.2km/hとを設定した上で、それに対応した調整可能範囲が示されている。
【0043】
前述した例では、第1基準として反当散布流量(L/10a)を選択した場合を説明したが、第1基準として車速(km/h)や散布圧力(MPa)を選択した場合も同様に他の目標散布条件を第2,第3基準として選択して、各目標散布条件を設定入力することができる。また、一旦設定入力した目標散布条件を変更する場合にも、図5或いは図6に示した画面から変更する目標散布条件を選択して同様に設定入力することができ、その場合にも、その変更された設定値に基づいて各目標散布条件の調整可能範囲が求められる。
【0044】
図7は、設定入力画面の前段のメニュー選択画面の一例を示したものである。この例では、自動散布モードと手動散布モードを選択することができるようになっている。自動散布モードを選択した場合には表示入力装置30に装備した赤色LEDを点灯させ、手動散布モードを選択した場合には緑色LEDを点灯させる等してモード選択の違いを表示する。自動散布モードは、前述した散布条件検出センサ20の検出信号を設定された目標散布条件に近づける制御を行うモードであり、手動散布モードは、散布条件検出センサ20の検出信号によらず作業者の設定に従って動作するモードである。
【0045】
何れのモードにおいても、待ち受け画面(同図(a),(b))では選択ノズルとタンク40内の薬剤貯留量が表示されている。自動散布モードの場合(同図(a))には自動散布の完了状況(%)が併せて表示されている。表示入力装置30のメニューボタン32Bを押すとメニュー選択画面(同図(c)〜(e))が表示される。切り替えボタン32F,32Gでメニューの選択を行う。メニューとしては、「ヒョウジキリカエ」,「タンクセッテイ」,「ノズルヘンコウ」,「セキサンリセット」,「エキショウセッテイ」,「LEDセッテイ」,「ガイダンス」が例示されており、その一つの「ガイダンス」を選択することで、図3〜図6によって説明したような設定入力ガイダンス機能が実行する。
【0046】
「エキショウセッテイ」メニューを選択することで、図1に示したバックライト点灯制御手段13を作動させて表示入力装置30の液晶表示画面31のバックライトを制御することができる。防除機による散布作業は屋外で行われるので、表示入力装置30は作業中直射日光を受けて温度上昇しやすく、表示入力装置30を長時間屋外で使用すると液晶焼けが発生して表示画面が黒っぽくなり表示性能が低下する問題がある。液晶焼けは液晶パネルの温度上昇によって起こるが、この温度上昇には直射日光だけでなくバックライトの点灯による加熱が大きく寄与している。本発明の実施形態におけるバックライト点灯制御手段13は、温度上昇による液晶焼けを防止するために、バックライトの点灯条件を制御するものである。
【0047】
バックライト点灯制御手段13の基本動作は、液晶表示画面31のバックライトを常時オフにして点灯信号入力時、すなわち作業者が点灯を必要とする場合にのみ設定時間だけオンにする。表示入力装置30を屋外で使用する場合には、日光の反射を利用してバックライト無しでも十分な表示性能が確保できる。しかしながら、屋外作業後に屋内に入った場合などはバックライト無しでは液晶表示画面31を視認できない場合がある。この場合にスイッチ操作などでバックライトを点灯させる。この際バックライトによる液晶パネルの加熱を防ぐために設定時間点灯させた後バックライトをオフにする制御を行う。設定時間は適宜変更可能であり、使用状況に応じた制御が可能である。
【0048】
また、応用例としては、昼間であれば屋内外のいずれでもバックライト無しで液晶表示画面31を視認できることが多いので、朝夕、夜間のみバックライトを点灯することも有効である。この場合には制御手段10のタイマー機能によって昼間(例えば8時から16時)はバックライトをオフにする制御を行う。また液晶パネルに温度センサを設けて、液晶焼けが発生する温度になったことを検知してバックライトをオフにする制御を行うようにしても良い。
【0049】
このようなバックライト点灯制御手段13を備えることで、屋外使用において液晶表示画面31に液晶焼けが発生しないので、作業者は常に正確な散布情報を画面で確認できる。必要な場合だけバックライトを点灯させるので、不必要な電力を削減できる。バックライト点灯による温度上昇に伴う部品劣化が少なくなるといった利点を得ることができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10:制御手段,11:表示入力手段,12:目標散布条件保存手段,
13:バックライト点灯制御手段,
20:散布条件検出センサ,21:散布流量センサ,22:散布圧力センサ,23:車速センサ,
30:表示入力装置(液晶表示入力装置),31:液晶表示画面,
32:入力ボタン,32A:電源ボタン,32B:メニューボタン,32C:決定ボタン,32D〜32G:切り替えボタン,
40:タンク,41:ポンプ,42(42A,42B):ブーム,
43:電動調圧弁,43A:調整モータ,
50:ノズル,51:散布管,52:分流器,53(53A〜53D):配管経路,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走しながら薬剤を散布する防除機の散布量制御装置であって、
検出された散布条件が設定入力された目標散布条件になるように散布量を制御する制御手段(10)を備え、
該制御手段(10)は、前記目標散布条件の調整可能範囲を表示して該調整可能範囲内での設定入力を可能にする表示入力手段(11)を備え、複数の前記目標散布条件を一つずつ設定入力可能にすると共に、先に設定入力された前記目標散布条件に基づいて後に設定入力可能にする目標散布条件の調整可能範囲を決定することを特徴とする防除機の散布量制御装置。
【請求項2】
前記目標散布条件は、単位面積当たりの散布量、前記防除機の車速、散布流量、散布圧力の一部又は全部を含むことを特徴とする請求項1に記載された防除機の散布量制御装置。
【請求項3】
前記調整可能範囲は、適正散布条件に基づいて決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載された防除機の散布量制御装置。
【請求項4】
前記表示入力手段(11)は、前記目標散布条件が防除機の車速の場合に前記調整可能範囲に対応する変速ギアの状態を併せて表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された防除機の散布量制御装置。
【請求項5】
設定入力された目標散布条件を保存する目標散布条件保存手段(12)を備え、前記表示入力手段は該保存手段(12)に保存されている既設値を表示することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された防除機の散布量制御装置。
【請求項6】
前記表示入力手段(11)は、複数の前記目標散布条件を選択可能に列挙表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された防除機の散布量制御装置。
【請求項7】
前記表示入力手段(11)の出力を表示する液晶表示入力装置(30)を備え、
該液晶表示入力装置(30)における液晶表示画面(31)のバックライトを常時オフにして点灯信号入力時に設定時間だけオンにするバックライト点灯制御手段(13)を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された防除機の散布量制御装置。
【請求項8】
自走しながら薬剤を散布する防除機の散布量制御方法であって、
検出された散布条件が設定入力された目標散布条件になるように散布量を制御するための準備工程として、
前記目標散布条件の調整可能範囲を表示して該調整可能範囲内での設定入力を可能にする表示入力工程を有し、
複数の前記目標散布条件を一つずつ設定入力可能にすると共に、先に設定入力された前記目標散布条件に基づいて後に設定入力可能にする目標散布条件の調整可能範囲を決定することを特徴とする防除機の散布量制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−259366(P2010−259366A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112668(P2009−112668)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509264132)株式会社やまびこ (65)
【Fターム(参考)】