説明

防音材料

【課題】防音材料に不燃性能を付与する
【解決手段】面密度が1.5kg/m以上のシートからなる遮音材1の少なくとも片面に、アルミ箔に無機質繊維からなる繊維シートを積層した繊維シート裏打ちアルミ箔2をアルミ箔側を上面とした状態で積層し、ISO5660−1に準拠した不燃性能試験の発熱性試験において、アルミ箔側を加熱し、少なくとも加熱開始後5分間で、総発熱量が8MJ/m以下で、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が無く、最高発熱速度が10秒間継続して200kW/m以下である防音材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主に、建築物で、壁や床、建築設備などに使用される防音材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、防音材料、特に遮音目的で高比重のシート材料が使用されている。材質は、鉛、例えば特開2002−46233に開示されているようなポリ塩化ビニル系樹脂に粉末充填剤を混合したものや例えば特開2003−74135に開示されているアスファルトに無機系フィラーを混合したものなどがある。不燃性能については、鉛からなるものについては不燃材料であるが、鉛が環境面より使用できなくなっており、その他の材料において不燃性能を有する材料は、見受けられない。
【特許文献1】特開2002−46233
【特許文献2】特開2003−74135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、面密度が1.5kg/m以上のシートからなる遮音材に不燃性能を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一は、面密度が1.5kg/m以上のシート材料からなる遮音材の少なくとも片面に、アルミ箔に無機質繊維からなる繊維シートを積層した繊維シート裏打ちアルミ箔をアルミ箔側を上面とした状態で積層し、ISO5660−1に準拠した不燃性能試験の発熱性試験において、アルミ箔側を加熱し、少なくとも加熱開始後5分間で、総発熱量が8MJ/m以下で、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が無く、最高発熱速度が10秒間継続して200kW/m以下であることを特徴とする防音材料である。
【0005】
本発明の第二は、面密度が1.5kg/m以上のシート材料からなる遮音材が、アスファルト5〜50重量%と粉体50〜95重量%からなることを特徴とした防音材料である。
【0006】
本発明の第三は、繊維シート裏打ちアルミ箔の無機質繊維からなる繊維シートが、ガラス糸およびこれを加工した糸を用いて織り上げたガラスクロスであることを特徴とした防音材料である。
【0007】
不燃性能については、不燃材料、準不燃材料、難燃材料に分けられ、不燃材料の判定基準の1つとして、発熱性試験において加熱開始後20分間で、総発熱量が8MJ/m以下で、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が無く、最高発熱速度が10秒間継続して200kW/m以下の条件がある。準不燃材料の判定基準の1つとして、発熱性試験において加熱開始後10分間で、総発熱量が8MJ/m以下で、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が無く、最高発熱速度が10秒間継続して200kW/m以下の条件がある。難燃材料の判定基準の1つとして、発熱性試験において加熱開始後5分間で、総発熱量が8MJ/m以下で、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が無く、最高発熱速度が10秒間継続して200kW/m以下の条件がある。本発明については、少なくとも加熱開始後5分であるので、最低でも難燃材料の不燃性能を有していることになり、使用目的に応じ、加熱時間を変更し、不燃材料、準不燃材料、難燃材料を設定することができる。
【発明の効果】
【0008】
不燃性能試験の発熱性試験は、材料に放射熱を照射し可燃性気体を発生させ、電気スパークを点火源として燃焼させるもので、その燃焼による総発熱量等を規定している。そこで、本発明の第一は、その輻射熱を効率よく反射させる材料として、アルミ箔を使用している。効率よく輻射熱を反射させることにより、遮音材に熱を伝達させず、遮音材からの可燃性気体を抑制する利点がある。しかしながら、アルミ箔は薄く機械的強度がないため、アルミ箔の裏面に無機質繊維からなる繊維シートを積層することにより、アルミ箔の機械的強度が向上し、また、無機質繊維を使用しているため、耐熱温度が高くなり高温時においても機械的強度が保持できる利点がある。また、本発明の第二は、アスファルトと粉体の混合体をシート材料としているため、アスファルトの優れた粘弾性特性により、質量則以上の遮音効果が得られる。本発明の第三は、無機質繊維からなる繊維シートが、ガラス糸およびこれを加工した糸を用いて織り上げたガラスクロスを使用することにより、物理的に織られているため耐熱性にも優れている利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明品の実施の最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明品の断面図を示す。
【0010】
面密度が1.5kg/m以上のシート材料からなる遮音材1は、ポリ塩化ビニルやポリエチレンなどの熱可塑性樹脂やゴム、アスファルトなどの可塑性材料と鉄、酸化鉄、砂鉄、硫酸バリウム、タルクおよび炭酸カルシウムなどの粉体を混合したものを使用する。可塑性材料5〜50重量%および粉体50〜95重量%で配合する。配合物の密度により、目的とする面密度となるよう厚みを調整する。可塑性材料としては、特に限定はないが、加工性の面から、アスファルトを使用することが好ましい。アスファルトについては、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、防水工事用アスファルトおよび合成ゴムや熱可塑性樹脂で改質された改質アスファルトを使用することができる。粉体は、特に限定はないが、遮音材の密度および不燃性能の面から、酸化鉄、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム等の無機粉体を使用することが好ましい。面密度は、1.5kg/m以上であれば良く、好ましくは2.0kg/m以上である。
【0011】
アルミ箔に無機質繊維からなる繊維シートを積層した繊維シート裏打ちアルミ箔2のアルミ箔としては、厚さ7〜100μmのものが使用できる。特に、厚さ20μmのものが好ましい。また、無機質繊維からなる繊維シートであるが、材質は、ガラス繊維、ロックウール繊維およびシリカ繊維などの無機材料であれば特に限定はない。また、繊維シートは、織布または不織布が使用できる。特に、ガラス繊維からなる織布が耐熱性ならびに機械的強度の面から好ましい。アルミ箔と無機質繊維からなる繊維シートの積層方法であるが、押し出しラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法およびウェットラミネート法が挙げられる。特に熱可塑性樹脂を使用した押し出しラミネート法が好ましい。
【0012】
面密度が1.5kg/m以上のシート材料からなる遮音材1と繊維シート裏打ちアルミ箔2の積層方法は、特に限定しないが、接着剤を使用した方法、または、熱可塑性樹脂やアスファルトを使用している場合、これを加熱溶解し、接着剤として使用することができる。
【0013】
面密度が1.5kg/m以上のシート材料からなる遮音材1の少なくとも片面に繊維シート裏打ちアルミ箔2を積層する。片面の場合は、他面に例えば、フェルトや発泡体等の吸音材を積層することにより、吸音材と遮音材を備えた複合防音材となる。吸音材の種類は、特に限定はなく、合成樹脂からなる発泡体やフェルト、無機材料からなる不織布等が使用できる。また、織布や不織布などの繊維シートを積層することにより、全体の機械的強度が向上する。図2に、両面に繊維シート裏打ちアルミ箔2を積層した断面図を、図3に片面に繊維シート裏打ちアルミ箔2を、他面に吸音材3を積層した断面図を示す。
【0014】
本発明品において、不燃性能を必要とする面側に、繊維シート裏打ちアルミ箔2が位置するように施工する。本発明品の端部切断面に遮音層が露出している場合は、その部分にアルミ箔ならびに繊維シート裏打ちアルミ箔を接着することもできる。
【実施例】
【0015】
図4に本発明品の実施例1の断面図を示す。面密度が1.5kg/m以上のシート材料からなる遮音材1として、ストレートアスファルト150〜200を90重量%、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体を10重量%混合した改質アスファルト15重量%に、製鉄所から発生するコンディショナースラジ(酸化鉄(3)46重量%、酸化鉄(2)41重量%、マンガン鉄13重量%)を65重量%、炭酸カルシウムを20重量%を十分混合しアスファルト系遮音材4とした。アスファルト系遮音材4の厚さは1mm、面密度は3.3kg/mであった。アルミ箔に無機質繊維からなる繊維シートを積層した繊維シート裏打ちアルミ箔2は、厚み20μmのアルミ箔に厚さ0.13mm、質量87g/m、密度16×15本/inchのガラスクロスを質量5g/mのポリエチレンを用い、押し出しラミネート法で積層したガラスクロス裏打ちアルミ箔5を使用した。
【0016】
アスファルト系遮音材4とガラスクロス裏打ちアルミ箔5の積層は、アスファルト系遮音材4を加熱しアスファルトが軟化、接着性を有している間に片面にガラスクロス裏打ちアルミ箔5を積層し、他面は、ポリエステルからなる目付50g/mの不織布6を積層した。
【0017】
実施例1について、加熱開始後20分間の発熱性試験ならびに音響透過損失試験による遮音性の評価を行った。発熱性試験の結果を表1、音響透過損失の結果を表2に示す。発熱性試験においては、試験体数3で、20分間の総発熱量(MJ/m)、最高発熱速度(kW/m)、200kW/m超過継続時間(s)および防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴の有無の評価を行った。音響透過損失については、JIS A 1416に規定されているタイプ2試験室を用いて試験を行った。また、実施例1の面密度3.3kg/mで質量則に基づいた音響透過損失計算値を算出した。結果より、発熱性試験においては、全ての点で合格し、また、音響透過損失においても、質量則による計算値を上回る結果となった。以上のことより、本発明の効果が認められる結果となった。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明品の断面図
【図2】本発明品で、面密度が1.5kg/m以上のシートからなる遮音材の両面に繊維シート裏打ちアルミ箔を積層した際の断面図
【図3】本発明品で、面密度が1.5kg/m以上のシートからなる遮音材の片面に繊維シート裏打ちアルミ箔を、他面に吸音材料を積層した際の断面図
【図4】本発明品の実施例1の断面図
【符号の説明】
【0021】
1 面密度が1.5kg/m以上のシートからなる遮音材
2 アルミ箔に無機質繊維からなる繊維シートを積層した繊維シート裏打ちアルミ箔
3 吸音材料
4 アスファルト系遮音材
5 ガラスクロス裏打ちアルミ箔
6 ポリエステルからなる目付50g/mの不織布



【特許請求の範囲】
【請求項1】
面密度が1.5kg/m以上のシートからなる遮音材1の少なくとも片面に、アルミ箔に無機質繊維からなる繊維シートを積層した繊維シート裏打ちアルミ箔2をアルミ箔側を上面とした状態で積層し、ISO5660−1に準拠した不燃性能試験の発熱性試験において、アルミ箔側を加熱し、少なくとも加熱開始後5分間で、総発熱量が8MJ/m以下で、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が無く、最高発熱速度が10秒間継続して200kW/m以下であることを特徴とする防音材料。
【請求項2】
面密度が1.5kg/m以上のシートからなる遮音材1が、アスファルト5〜50重量%と粉体50〜95重量%からなることを特徴とした請求項1記載の防音材料。
【請求項3】
繊維シート裏打ちアルミ箔2の無機質繊維からなる繊維シートが、ガラス糸およびこれを加工した糸を用いて織り上げたガラスクロスであることを特徴とした請求項1または2記載の防音材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−38366(P2011−38366A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189010(P2009−189010)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(591260513)七王工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】