説明

除振装置

【課題】 本発明は、高速で移動する移動体及び除振装置本体の重心位置に依存することなく、除振台の姿勢が水平状態となるように精度良く制御することのできる除振装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 X−Yステージ17の座標位置を認識するステージ制御手段40と、除振装置本体11の重心位置G2を求める重心位置演算手段49と、第1の演算手段41,42に除振装置本体11の重心位置G2に応じて運動モードの演算値を補正する第1の補正手段41A,42Aと、第2の演算手段43,44に除振装置本体11の重心位置G2に応じて運動モードの演算値を補正する第2の補正手段43A,44Aと、第1及び第2の制御量演算手段45,46に除振装置本体11の重心位置G2に応じて第1及び第2の制御量を補正する制御量補正手段45A,46Aと、第1及び第2の制御量に応じてアクチュエータを制御するアクチュエータ制御手段47とを設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除振装置に係り、特に除振台上を移動する移動体を備える除振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動精度の高い移動体(例えば、X−Yステージ)を備える電子顕微鏡や半導体露光装置等の装置では、外部からの振動を除振すると共に、移動体が移動可能に配設される除振台が水平状態となるように制御するための除振装置が設けられている。
【0003】
除振装置は、除振装置本体と、除振装置本体の制御全般を行なう制御手段とから構成される。除振装置本体は、例えば、除振台と、除振台上を移動するステージと、床に対して除振台を支持すると共に、床からの振動を除振する除振支持機構と、除振台が水平状態となるように駆動するアクチュエータと、除振台の変動を検出するセンサとから構成される。
【0004】
センサは、除振台の鉛直(Z軸)方向の変動を検出する第1のセンサと、除振台の水平2軸(X軸及びY軸)方向の変動を検出する第2のセンサとから構成される。アクチュエータは、除振台を鉛直方向に駆動させる第1のアクチュエータと、除振台を水平方向に駆動させる第2のアクチュエータとから構成される。
【0005】
制御手段は、センサの検出信号に基づき各運動モードの演算値を求めると共に、この運動モードの演算値から第1及び第2のアクチュエータの制御量を求め、制御量に応じて第1及び第2のアクチュエータを駆動させて除振台の姿勢が水平状態となるように制御する。より具体的には、制御手段は、第1のセンサの検出信号から演算されたZ軸方向の運動モードの演算値、θx方向(X軸の回転方向)の運動モードの演算値、及びθy方向(Y軸の回転方向)の運動モードの演算値に基づいて、第1のアクチュエータの制御量を求めて、第1のアクチュエータを制御すると共に、第2の検出信号から演算された水平2軸方向の運動モードの演算値とθz方向(Z軸の回転方向)の運動モードの演算値とに基づいて、第2のアクチュエータの制御量を求め、第2のアクチュエータを制御する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−259851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、図1〜図4を参照して、除振装置本体の重心位置と除振台の傾きとの関係について説明する。図1〜図4は、除振装置本体の重心位置と除振台の傾きとの関係について説明するための図である。なお、図1〜図4において、X方向及びY方向は水平2軸方向、Z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。また、G1は移動体102が除振台101の中心に位置する場合の除振装置本体100の重心位置(以下、「重心位置G1」とする)、G1’は移動体102が除振台101の中心からX方向に移動した際の除振装置本体100の重心位置(以下、「重心位置G1’」とする)、F1,F2(F1=F2)は除振台101を支持する保持力(以下、「保持力F1,F2」とする)、F3,F4(F3=F4)は除振台101のY方向に印加される第2のアクチュエータからの力(以下、「力F3,F4」とする)、L1,L2(L1=L2)は重心位置G1から保持力F1,F2が印加される力点までの距離(以下、「距離L1,L2」とする)、L1’,L2’(L1’<L2’)は重心位置G1’から力F3,F4が印加される力点までの距離(以下、「距離L1’,L2’」)をそれぞれ示す。
【0007】
図1に示すように、移動体102が除振台101の中心に位置する場合には、F1・L1とF2・L2とが等しくなり、重心位置G1を通過するY軸の回転方向のモーメントが釣り合うため、除振台101が水平状態に対してθy方向に傾くことはない。しかし、図2に示すように、移動体102が移動して除振装置本体100の重心位置G1が重心位置G1’に変化した場合には、F1・L1’<F2・L2’となるため、重心位置G1を通過するY軸の回転方向のモーメントが釣り合わず、除振台101はθy方向に傾いてしまう。同様な理由により、除振装置本体100の重心位置がG1’の場合には、水平状態に対してθx方向にも除振台101が傾いてしまう。
【0008】
また、図3に示すように、移動体102が除振台101の中心に位置した状態で力F3,F4が除振台101に印加された場合には、F3・L1とF4・L2とが等しくなって、重心位置G1を通過するZ軸の回転方向のモーメントが釣り合うため、除振台101が水平状態に対してθz方向に傾くことはない。しかし、図4に示すように、移動体102が移動して除振装置本体100の重心位置G1が重心位置G1’に変化した場合には、F3・L1’<F4・L2’となるため、重心位置G1を通過するZ軸の回転方向のモーメントの釣り合いが取れなくなり、除振台101は重心位置G1’を軸とする旋回方向の回転力によってθz方向に傾いてしまう。
【0009】
従来の除振装置では、移動体102の移動による除振装置本体100の重心位置が変化しないものとして制御しており、精密な制御を行なう場合、除振装置本体100の重心位置が移動することにより生じる除振台101の傾きが重要となり、除振台101の姿勢が水平状態となるように制御することが難しくなる。特に、高速でステップアンドリピートする除振装置や、移動体の重量と除振台の重量との差が小さい場合には、除振台が傾き易くなるため、上記問題が顕著となる。
【0010】
そこで本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高速で移動する移動体及び除振装置本体の重心位置に依存することなく、除振台の姿勢が水平状態となるように精度良く制御することのできる除振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項1記載の発明は、移動体を移動可能に支持する除振台と、外部からの振動を除振すると共に、除振台の鉛直方向及び水平2軸方向の変動を検出する検出手段と、除振台を鉛直方向及び水平2軸方向に変位させるアクチュエータとを有する除振ユニットとを備える除振装置本体と、前記移動体の移動を制御すると共に、移動体の座標位置を認識する移動体制御手段と、前記検出手段の検出信号に基づき、除振台の鉛直方向、水平2軸方向、及びこれらの回転方向に関する第1の運動モードの演算値を求める第1の演算手段と、該第1の運動モードの演算値に基づき、アクチュエータへ供給される制御量を求める制御量演算手段と、該制御量に基づいて、アクチュエータを制御するアクチュエータ制御手段とを有する制御手段とを備える除振装置であって、前記制御手段は、前記移動体の座標位置に基づき、除振装置本体の重心位置を求める重心位置演算手段を備え、前記第1の演算手段は、前記除振装置本体の重心位置に応じて第1の運動モードの演算値を補正する第1の補正手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記制御量演算手段は、前記除振装置本体の重心位置に応じて、アクチュエータの制御量を補正する制御量補正手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記検出手段は、変位センサからなることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記検出手段は、第1の検出手段と第2の検出手段とを有し、
前記第1の検出手段は、変位センサからなり、前記第2の検出手段は、加速度センサからなることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、前記加速度センサの検出信号に基づき、除振台の鉛直方向、水平2軸方向、及びこれらの回転方向に関する第2の運動モードの演算値を求める第2の演算手段を設けると共に、該第2の演算手段に前記除振装置本体の重心位置に応じて、第2の運動モードの演算値を補正する第2の補正手段をさらに設け、前記制御量演算手段は、第1及び第2の補正手段により補正された第1及び第2の運動モードの演算値に基づき、アクチュエータの制御量を求めると共に、前記制御量補正手段により前記除振装置本体の重心位置に応じて、該アクチュエータの制御量を補正することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、前記制御手段は、前記移動体の座標位置に対応する除振装置本体の重心位置が格納された記憶手段をさらに備え、前記重心位置演算手段は、前記記憶手段の中から移動体の座標位置に対応する除振装置本体の重心位置のデータを読み込むことを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、前記移動体は、前記除振台上を水平2軸方向に移動するX−Yステージであることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、前記アクチュエータは、空気バネ或いはボイスコイルモータであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移動体の座標位置に基づき、除振装置本体の重心位置を求める重心位置演算手段と、第1の演算手段に除振装置本体の重心位置に基づき、第1の運動モードの演算値を補正する第1の補正手段とを設け、制御量演算手段により除振装置本体の重心位置を通過する鉛直軸の回転方向のモーメント及び水平2軸の回転方向のモーメントがそれぞれ釣り合うようなアクチュエータの制御量を求め、アクチュエータ制御手段により該制御量に応じてアクチュエータを制御することにより、移動体が高速で移動した場合や、移動体の移動により除振装置本体の重心位置が大きく変位した場合でも、除振台の姿勢が水平状態となるように精度良く制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0022】
図5は、本発明の一実施の形態に係る除振装置の概略構成図である。図6は除振装置本体の断面図であり、図7は除振装置本体の平面図である。なお、図5〜図7において、X−Y(X軸及びY軸)方向は水平2軸方向、Z(Z軸)方向は鉛直方向、G2はX−Yステージ17が移動することにより変動する除振装置本体11の重心位置(以下、「重心位置G2」とする)、G3は除振台13の重心位置(以下、「重心位置G3」とする)をそれぞれ示している。
【0023】
図5に示すように、本実施の形態の除振装置10は、除振装置本体11と、除振装置本体11の制御全般を行なう制御手段12とを有する。除振装置10は、外部からの振動を除振すると共に、移動体(本実施の形態の場合、X−Yステージ17)が移動可能に配設される除振台13が水平状態となるように制御するためのものであり、例えば、移動精度の高いステージを備える電子顕微鏡や半導体露光装置等に適用される。
【0024】
図5〜図7を参照するに、除振装置本体11は、移動体であるX−Yステージ17を移動可能に支持する除振台13と、除振ユニット15,16とを有する。除振台13は、直方体の形状をなしており、除振ユニット15,16を介して、床14に支持されている。また、除振台13の剛性運動は、XYZ座標系を基準に考えるとX軸方向、Y軸方向、Z軸(鉛直軸)方向、X軸の回転方向θx、Y軸の回転方向θy、及びZ軸の回転方向θzの6つの運動モード(「振動モード」ともいう)に分解される。
【0025】
X−Yステージ17は、除振台13上に載置されており、X軸方向に移動するXステージと、Y軸方向に移動するYステージと、Xステージ及びYステージの座標位置を認識するXリニアスケール及びYリニアスケール(図示せず)とを有する。Xリニアスケールは、X−Yステージ17のX軸の座標位置を認識するためのものである。Yリニアスケールは、X−Yステージ17のY軸の座標位置を認識するためのものである。
【0026】
除振ユニット15は、除振台13の4隅のうちの3箇所に設けられており、残りの1箇所には除振ユニット16が設けられている(図7参照)。除振ユニット15,16は、床14に対して除振台13を支持すると共に、床14からの振動を除振や、除振台13が水平状態となるように調整するためのものである。
【0027】
図8は、除振ユニットの断面図である。次に、図8を参照して、除振ユニット15について説明する。除振ユニット15は、ベース部材18と、浮上部材22と、除振支持機構26,27と、第1及び第2のアクチュエータ33,34と、第1及び第2の変位センサ36,37と、第1及び第2の加速度センサ38,39とを有する。
【0028】
ベース部材18は、床14上に配置されており、板体19と、板体19と一体的に形成された突出部21とから構成される。浮上部材22は、枠体23と、枠体23上に一体的に形成された突出部24とから構成される。浮上部材22は、除振支持機構26,27を介して、ベース部材18に支持される。枠体23は、突出部21を囲むような形状とされている。枠体23と突出部21との間には、除振支持機構26,27、第1及び第2のアクチュエータ33,34、及び第2の変位センサ37を配置するための空間が形成されている。突出部24は、除振台13を直接支持するものである。突出部24は、例えば、ネジ締結により除振台13に固定される。
【0029】
除振支持機構26は、突出部21の側面21Bと、突出部21の側面21Bと対向する枠体23とを接続するよう設けられる。除振支持機構26は、水平方向(X軸方向またはY軸方向)から浮上部材22を支持すると共に、外部から伝わる水平方向の振動を除振する。
【0030】
除振支持機構27は、突出部21の上面21Aと、突出部21の上面21Aと対向する枠体23とを接続するよう設けられる。除振支持機構27は、鉛直方向から浮上部材22を支持すると共に、外部から伝わる鉛直方向の振動を除振するためのものである。除振支持機構26,27は、例えば、バネとダッシュポット等から構成することができる。
【0031】
図9は、アクチュエータの配設位置の一例を示した図である。第1のアクチュエータ33は、突出部21の上面21Aと、突出部21の上面21Aと対向する枠体23とを接続するよう設けられる。第1のアクチュエータ33は、除振台13をZ軸方向に変位させるためのものである。本実施の形態の除振装置本体11には、4つの第1のアクチュエータ33(以下、「第1のアクチュエータ33z1〜33z4」とする)が設けられている。第1のアクチュエータ33z1〜33z4は、例えば、図9に示すような位置に配設することができる。
【0032】
第2のアクチュエータ34は、突出部21の側面21Bと、突出部21の側面21Bと対向する枠体23とを接続するよう設けられる。第2のアクチュエータ34は、除振台13を水平方向(X軸方向またはY軸方向)に変位させるためのものである。本実施の形態の除振装置本体11には、除振台13をX軸方向に変位させる第2のアクチュエータ34x1,34x2と、除振台13をY軸方向に変位させる第2のアクチュエータ34y1,34y2とが設けられている。第2のアクチュエータ34x1,34x2,34y1,34y2は、例えば、図9に示すような位置に配設することができる。
【0033】
第1及び第2のアクチュエータ33,34は、除振台13の姿勢を水平状態となるようにするためのものである。第1及び第2のアクチュエータ33,34には、例えば、空気バネやボイスコイルモータ等を用いることができる。第1及び第2のアクチュエータ33,34として、例えば、空気バネを用いた場合には、ボイスコイルモータを用いた場合と比較して、第1及び第2のアクチュエータ33,34を小型化することができる。
【0034】
図10は、変位センサ及び加速度センサの配設位置の一例を示した図である。第1の検出手段である第1の変位センサ36は、板体19の上面19Aに設けられている。第1の変位センサ36は、除振台13のZ軸方向の変位を検出するためのものである。本実施の形態の除振装置本体11には、3つの第1の変位センサ36(以下、「第1の変位センサ36z1,36z2,36z3」とする)が設けられている。第1の変位センサ36z1は検出信号Dz1、第1の変位センサ36z2は検出信号Dz2、第1の変位センサ36z3は検出信号Dz3をそれぞれ検出する。これら検出信号Dz1,Dz2,Dz3は、後述する第1の演算手段41に送信される(図11参照)。
【0035】
第1の検出手段である第2の変位センサ37は、突出部21の側面21Cに設けられている。第2の変位センサ37は、除振台13のX軸方向及びY軸方向の変位を検出するためのものである。本実施の形態の除振装置本体11には、3つの第2の変位センサ37(以下、「第2の変位センサ37x1,37x2,37y1」とする)が設けられている。第2の変位センサ37x1,37x2は、除振台13のX軸方向の変位を検出するセンサであり、第2の変位センサ37y1は、Y軸方向の除振台13の変位を検出するセンサである。第2の変位センサ37x1は検出信号Dx1、第2の変位センサ37x2は検出信号Dx2、第2の変位センサ37y1は検出信号Dy1をそれぞれ検出する。これら検出信号Dx1,Dx2,Dy1は、後述する第1の演算手段42に送信される(図11参照)。
【0036】
上記第1及び第2の変位センサ36,37は、除振台13の重心位置G3から離れた位置に設けるとよい。除振台13の重心位置G3から離れた位置では、除振台13が傾いた際、重心位置G3に近い位置よりも除振台13の変動が大きくなる。そのため、第1及び2第の変位センサ36,37を除振台13の重心位置G3から離れた位置に設けることで除振台13の変位を検出しやすくすることができる。第1及び第2の変位センサ36z1,36z2,36z3,37x1,37x2,37y1は、例えば、図10に示すような位置に配設することができる。
【0037】
第2の検出手段である第1の加速度センサ38は、枠体23の上面23Aに設けられている。第1の加速度センサ38は、除振台13のZ軸方向の振動を検出するためのものである。本実施の形態の除振装置本体11には、3つの第1の加速度センサ38(以下、「第1の加速度センサ38z1,38z2,38z3」とする)が設けられている。第1の加速度センサ38z1は検出信号Az1、第1の加速度センサ38z2は検出信号Az2、第1の加速度センサ38z3は検出信号Az3をそれぞれ検出する。検出信号Az1,Az2,Az3は、後述する第2の演算手段43に送信される(図11参照)。
【0038】
第2の検出手段である第2の加速度センサ39は、枠体23の側面23Bに設けられている。第2の加速度センサ39は、除振台13のX−Y方向の振動を検出するためのものである。本実施の形態の除振装置本体11には、3つの第2の加速度センサ39(以下、「第2の加速度センサ39x1,39x2,39y1」とする)が設けられている。第2の加速度センサ39x1,39x2は、除振台13のX軸方向の振動を検出するセンサであり、第2の加速度センサ39y1は、除振台13のY軸方向の振動を検出するセンサである。第2の加速度センサ39x1は検出信号Ax1、第2の加速度センサ39x2は検出信号Ax2、第2の加速度センサ39y1は検出信号Ay1をそれぞれ検出する。これら検出信号Ax1,Ax2,Ay1は、後述する第2の演算手段44に送信される(図11参照)。
【0039】
第1及び第2の加速度センサ38,39は、除振台13の重心位置G3から離れた位置に設けるとよい。除振台13の重心位置G3から離れた位置では、除振台13が傾いた際、除振台13の重心位置G3に近い位置よりも除振台13の振動が大きくなる。そのため、第1及び第2の加速度センサ38,39を除振台13の重心位置G3から離れた位置に設けることで、除振台13の振動を検出しやすくすることができる。第1及び第2の加速度センサ38,39は、例えば、図10に示すような位置に配設することができる。
【0040】
除振ユニット16は、ベース部材18と、浮上部材22と、除振支持機構26,27と、第1のアクチュエータ33z3と、第2のアクチュエータ34y2とを有する。除振ユニット16は、除振ユニット15の構成から、第1及び2第の変位センサ36,37と、第1及び第2の加速度センサ38,39とを取り除いた構成とされる。
【0041】
次に、図5及び図11を参照して、制御手段12について説明する。図11は、制御手段が行う処理を説明するための図である。なお、図11において、a1〜a12は除振台13を所定の状態にするための入力値(以下、「入力値a1〜a12」とする)を示している。また、入力値a7〜a12の具体的な数値は0である。
【0042】
制御手段12は、移動体制御手段であるステージ制御手段40と、重心位置演算手段48と、記憶手段49と、第1の演算手段41,42と、第2の演算手段43,44と、制御演算部51〜54と、第1及び第2の制御量演算手段45,46と、アクチュエータ制御手段47とを有する。
【0043】
ステージ制御手段40は、X−Yステージ17と重心位置演算手段48とに接続されている。ステージ制御手段40は、X−Yステージ17の制御全般を行なうものである。ステージ制御手段40は、Xリニアスケール及びYリニアスケールから除振台13上におけるX−Yステージ17の座標位置を認識し、X−Yステージ17の座標位置を重心位置演算手段48に送信する。なお、以下の説明において、除振台13上をX−Yステージ17が移動することで変動するX−Yステージ17の座標位置を(x,y)=(17x,17y)とする。
【0044】
重心位置演算手段48は、ステージ制御手段40と、第1及び第2の演算手段41,42,43,44と、第1及び第2の制御量演算手段45,46と、記憶手段49とに接続されている。重心位置演算手段48は、ステージ制御手段40から送信されるX−Yステージ17の座標位置(17x,17y)に基づき、X−Yステージ17の座標位置(17x,17y)に対応する除振装置本体11の重心位置G2(以下、重心位置G2を「(x,y,z)=(G2x,G2y,G2z)」とする)を求め、重心位置G2のX座標及びY座標のデータG2x,G2yを第1及び第2の演算手段41,42,43,44と、第1及び第2の制御量演算手段45,46とに送信する。後述するような記憶手段49を有する場合、重心位置演算手段48は、X−Yステージ17が移動した際の重心位置(G2x,G2y,G2z)を演算により求める代わりに、記憶手段49からX−Yステージ17の座標位置(17x,17y)に対応する除振装置本体11の重心位置(G2x,G2y,G2z)のデータを読み込む。
【0045】
記憶手段49は、重心位置演算手段48と接続されている。記憶手段49は、予め取得されたX−Yステージ17の様々な座標位置(17x,17y)に対応する除振装置本体11の重心位置(G2x,G2y,G2z)のデータ(マッピングデータ)を格納するためのものである。
【0046】
このように、X−Yステージ17の様々な座標位置(17x,17y)に対応する除振装置本体11の重心位置(G2x,G2y,G2z)のデータを予め取得し、記憶手段49に重心位置(G2x,G2y,G2z)のデータを格納することにより、重心位置演算手段48は記憶手段49からX−Yステージ17の座標位置(17x,17y)に対応する重心位置(G2x,G2y,G2z)のデータを読み込むことが可能となる。これにより、重心位置演算手段48は、X−Yステージ17の座標位置(17x,17y)に基づいて、除振装置本体11の重心位置(G2x,G2y,G2z)を求める必要がなくなるため、制御手段12の処理スピードを向上させることができる。
【0047】
第1の演算手段41は、第1の補正手段41Aを有しており、第1の変位センサ36z1,36z2,36z3と、重心位置演算手段48と、制御演算部51とに接続されている。第1の演算手段41は、第1の変位センサ36z1,36z2,36z3からの検出信号Dz1,Dz2,Dz3に基づいて、Z軸方向の運動モードの演算値MzDと、X軸の回転方向θxの運動モードの演算値MθxDと、Y軸の回転方向θyの運動モードの演算値MθyDとを求めると共に、第1の補正手段41Aにより除振装置本体11の重心位置G2のX座標及びY座標のデータG2x,G2yに応じて運動モードの演算値MzD,MθxD,MθyD(第1の運動モードの演算値)の補正を行なう。すなわち、第1の補正手段41Aによる補正は、重心位置G2から第1の変位センサ36z1,36z2,36z3の配設位置までの距離を考慮して、除振装置本体11の重心位置G2を中心とする水平2軸の回転方向θx,θyのモーメントがそれぞれ釣り合うように行なう。補正された運動モードの演算値MzD,MθxD,MθyDは、制御演算部51に送信される。
【0048】
第1の補正手段42Aを有する第1の演算手段42は、下記(1)式により上記補正及び演算処理を行う。下記(1)式において、第1の変位センサ36z1の座標位置を(x,y,z)=(36z1x,36z1y,36z1z)、第1の変位センサ36z2の座標位置を(x,y,z)=(36z2x,36z2y,36z2z)、第1の変位センサ36z3の座標位置を(x,y,z)=(36z3x,36z3y,36z3z)、除振装置本体11の重心位置G2を(x,y,z)=(G2x,G2y,G2z)とする。
【0049】
【数1】

このように、第1の演算手段41に第1の補正手段41Aを設け、除振装置本体11の重心位置G2に応じて、運動モードの演算値MzD,MθxD,MθyDを補正することにより、除振装置本体11の重心位置G2を中心とする水平2軸の回転方向θx,θyのモーメントがそれぞれ釣り合うような運動モードの演算値MzD,MθxD,MθyDを求めることができる。これにより、X−Yステージ17が高速で移動した場合や、X−Yステージ17の移動により除振装置本体11の重心位置が大きく変位した場合でも、除振台13の姿勢が水平状態となるように制御することが可能となる。
【0050】
第1の演算手段42は、第1の補正手段42Aを有しており、第2の変位センサ37x1,37x2,37y1と、重心位置演算手段48と、制御演算部52とに接続されている。第1の演算手段42は、第2の変位センサ37x1,37x2,37y1からの検出信号Dx1,Dx2,Dy1に基づいて、X軸方向の運動モードの演算値MxDと、Y軸の運動モードの演算値MyDと、Z軸の回転方向の運動モードの演算値MθzDとを求めると共に、第1の補正手段42Aにより除振装置本体11の重心位置G2のX座標及びY座標のデータG2x,G2yに応じて運動モードの演算値MxD,MyD,MθzD(第1の運動モードの演算値)の補正を行なう。すなわち、第1の補正手段42Aによる補正は、重心位置G2から第2の変位センサ37x1,37x2,37y1の配設位置までの距離を考慮して、除振装置本体11の重心位置G2を中心とするZ軸の回転方向θzのモーメントがそれぞれ釣り合うように行なう。補正された運動モードの演算値MxD,MyD,MθzDは、制御演算部52に送信される。
【0051】
第1の補正手段42Aを有する第1の演算手段42は、下記(2)式により上記補正及び演算処理を行う。なお、下記(2)式において、第2の変位センサ37z1の座標を(x,y,z)=(37z1x,37z1y,37z1z)、第2の変位センサ37z2の座標を(x,y,z)=(37z2x,37z2y,37z2z)、第2の変位センサ37z3の座標を(x,y,z)=(37z3x,37z3y,37z3z)とする。
【0052】
【数2】

このように、第1の演算手段42に第1の補正手段42Aを設け、除振装置本体11の重心位置G2に応じて、運動モードの演算値MxD,MyD,MθzDを補正することにより、除振装置本体11の重心位置G2を中心とするZ軸の回転方向θzのモーメントが釣り合うような運動モードの演算値MxD,MyD,MθzDを求めることができる。これにより、X−Yステージ17が高速で移動した場合や、X−Yステージ17の移動により除振装置本体11の重心位置が大きく変位した場合でも、除振台13の姿勢が水平状態となるように制御することが可能となる。
【0053】
第2の演算手段43は、第2の補正手段43Aを有しており、第1の加速度センサ38z1,38z2,38z3と、重心位置演算手段48と、制御演算部53とに接続されている。第2の演算手段43は、第1の加速度センサ38z1,38z2,38z3からの検出信号Az1,Az2,Az3に基づいて、Z軸方向の運動モードの演算値MzAと、X軸の回転方向θxの運動モードの演算値MθxAと、Y軸の回転方向θyの運動モードの演算値MθyAとを求めると共に、第2の補正手段43Aにより除振装置本体11の重心位置G2のX座標及びY座標のデータG2x,G2yに応じて運動モードの演算値MzA,MθxA,MθyA(第2の運動モードの演算値)の補正を行なう。すなわち、第2の補正手段43Aによる補正は、重心位置G2から第1の加速度センサ38z1,38z2,38z3の配設位置までの距離を考慮して、除振装置本体11の重心位置G2を中心とする水平2軸の回転方向θx,θyのモーメントがそれぞれ釣り合うように行なう。補正された運動モードの演算値MzA,MθxA,MθyAは、制御演算部53に送信される。
【0054】
第2の補正手段43Aを有する第2の演算手段43は、下記(3)式により上記補正及び演算処理を行う。なお、下記(3)式において、第1の加速度センサ38z1の座標を(x,y,z)=(38z1x,38z1y,38z1z)、第1の加速度センサ38z2の座標を(x,y,z)=(38z2x,38z2y,38z2z)、第1の加速度センサ38z3の座標を(x,y,z)=(38z3x,38z3y,38z3z)とする。
【0055】
【数3】

このように、第2の演算手段43に第2の補正手段43Aを設け、除振装置本体11の重心位置G2に応じて、運動モードの演算値MzA,MθxA,MθyAを補正することにより、除振装置本体11の重心位置G2を中心とする水平2軸の回転方向θx,θyのモーメントがそれぞれ釣り合うような運動モードの演算値MzA,MθxA,MθyAを求めることができる。これにより、X−Yステージ17が高速で移動した場合や、X−Yステージ17の移動により除振装置本体11の重心位置が大きく変位した場合でも、除振台13の姿勢が水平状態となるように制御することが可能となる。
【0056】
第2の演算手段44は、第2の補正手段44Aを有しており、第2の加速度センサ39x1,39x2,39y1と、重心位置演算手段48と、制御演算部54とに接続されている。第4の演算手段44は、第2の加速度センサ39x1,39x2,39y1からの検出信号Ax1,Ax2,Ay1に基づいて、X軸方向の運動モードの演算値MxAと、Y軸の運動モードの演算値MyAと、Z軸の回転方向θzの運動モードの演算値MθzAとを求めると共に、第2の補正手段44Aにより除振装置本体11の重心位置G2のX座標及びY座標のデータG2x,G2yに応じて運動モードの演算値MxA,MyA,MθzA(第2の運動モードの演算値)の補正を行なう。すなわち、第2の補正手段44Aによる補正は、重心位置G2から第2の加速度センサ39x1,39x2,39y1の配設位置までの距離を考慮して、除振装置本体11の重心位置G2を中心とするZ軸の回転方向θzのモーメントがそれぞれ釣り合うように行なう。補正された運動モードの演算値MxA,MyA,MθzAは、制御演算部54に送信される。
【0057】
第2の補正手段44Aを有する第2の演算手段44は、下記(4)式により上記補正及び演算を行う。なお、下記(4)式において、第2の加速度センサ39z1の座標を(x,y,z)=(39z1x,39z1y,39z1z)、第2の加速度センサ39z2の座標を(x,y,z)=(39z2x,39z2y,39z2z)、第2の加速度センサ39z3の座標を(x,y,z)=(39z3x,39z3y,39z3z)とする。
【0058】
【数4】

このように、第2の演算手段44に第2の補正手段44Aを設け、除振装置本体11の重心位置G2に応じて、運動モードの演算値MxA,MyA,MθzAを補正することにより、除振装置本体11の重心位置G2を中心とするZ軸の回転方向θzのモーメントが釣り合うような運動モードの演算値MxA,MyA,MθzAを求めることができる。これにより、X−Yステージ17が高速で移動した場合や、X−Yステージ17の移動により除振装置本体11の重心位置が大きく変位した場合でも、除振台13の姿勢が水平状態となるように制御することが可能となる。
【0059】
制御演算部51は、制御演算部51A〜51Cから構成されており、第1の演算手段41と接続されている。制御演算部51A〜51Cは、PID制御をするためのものである。制御演算部51Aは、運動モードの演算値MzDに入力値a1が加えられた運動モードの演算値MzD1が入力された際、運動モードの演算値MzD2を出力する。制御演算部51Bは、運動モードの演算値MθxDに入力値a2が加えられた運動モードの演算値MθxD1が入力された際、運動モードの演算値MθxD2を出力する。制御演算部51Cは、運動モードの演算値MθyDに入力値a3が加えられた運動モードの演算値MθyD1が入力された際、運動モードの演算値MθyD2を出力する。制御演算部51A〜51Cには、例えば、PIDフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を用いることができる。
【0060】
制御演算部52は、制御演算部52A〜52Cから構成されており、第1の演算手段42と接続されている。制御演算部52A〜52Cは、入力されたデータをPID制御するためのものである。制御演算部52Aは、運動モードの演算値MxDに入力値a4が加えられた運動モードの演算値MxD1が入力された際、運動モードの演算値MxD2を出力する。制御演算部52Bは、運動モードの演算値MyDに入力値a5が加えられた運動モードの演算値MyD1が入力された際、運動モードの演算値MyD2を出力する。制御演算部52Cは、運動モードの演算値MθzDに入力値a6が加えられた運動モードの演算値MθzD1が入力された際、運動モードの演算値MθzD2を出力する。制御演算部52A〜52Cには、例えば、PIDフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を用いることができる。
【0061】
制御演算部53は、制御演算部53A〜53Cから構成されており、第2の演算手段43と接続されている。制御演算部53A〜53Cは、PID制御をするためのものである。制御演算部53Aは、運動モードの演算値MzAに入力値a7が加えられた運動モードの演算値MzA1が入力された際、運動モードの演算値MzA2を出力する。制御演算部53Bは、運動モードの演算値MθxAに入力値a8が加えられた運動モードの演算値MθxA1が入力された際、運動モードの演算値MθxA2を出力する。制御演算部53Cは、運動モードの演算値MθyAに入力値a9が加えられた運動モードの演算値MθyA1が入力された際、運動モードの演算値MθyA2を出力する。制御演算部53A〜53Cには、例えば、PIDフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を用いることができる。
【0062】
制御演算部54は、制御演算部54A〜54Cから構成されており、第4の演算手段44と接続されている。制御演算部54A〜54Cは、入力されたデータをPID制御するためのものである。制御演算部54Aでは、運動モードの演算値MxAに入力値a10が加えられた運動モードの演算値MxA1が入力された際、運動モードの演算値MxA2を出力する。制御演算部54Bでは、運動モードの演算値MyAに入力値a11が加えられた運動モードの演算値MθyA1が入力された際、運動モードの演算値MyA2を出力する。制御演算部54Cでは、運動モードの演算値MθzAに入力値a12が加えられた運動モードの演算値MθzA1が入力された際、運動モードの演算値MθzA2を出力する。制御演算部54A〜54Cには、例えば、PIDフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を用いることができる。
【0063】
第1の制御量演算手段45は、制御量補正手段45Aを有しており、アクチュエータ制御手段47と接続されている。第1の制御量演算手段45は、運動モードの演算値MzD2,MzA2よりなる運動モードの演算値Mzと、運動モードの演算値MθxD2,MθxA2よりなる運動モードの演算値Mθxと、運動モードの演算値MθyD2,MθyA2よりなる運動モードの演算値Mθyとに基づいて、第1のアクチュエータ33z1〜33z4を制御するために必要な第1の制御量Fz1〜Fz4を求めると共に、制御量補正手段45Aにより除振装置本体11の重心位置G2のX座標及びY座標のデータG2x,G2yに応じて第1の制御量Fz1〜Fz4の補正を行なう。すなわち、制御量補正手段45Aによる補正は、重心位置G2から第1のアクチュエータ33z1〜33z4の配設位置までの距離を考慮して、除振装置本体11の重心位置G2を中心とする水平2軸の回転方向θx,θyのモーメントがそれぞれ釣り合うように行なう。補正された第1の制御量Fz1〜Fz4は、アクチュエータ制御手段47に送信される。
【0064】
制御量補正手段45Aを有する第1の制御量演算手段45は、下記(5)式により上記補正及び演算処理を行う。なお、下記(5)式において、第1のアクチュエータ33z1の座標を(x,y,z)=(33z1x,33z1y,33z1z)、第1のアクチュエータ33z2の座標を(x,y,z)=(33z2x,33z2y,33z2z)、第1のアクチュエータ33z3の座標を(x,y,z)=(33z3x,33z3y,33z3z)とする。
【0065】
【数5】

このように、第1の制御量演算手段45に制御量補正手段45Aを設け、除振装置本体11の重心位置G2に応じて、第1の制御量Fz1〜Fz4を補正することにより、除振装置本体11の重心位置G2を中心とする水平2軸の回転方向θx,θyのモーメントがそれぞれ釣り合うような第1の制御量Fz1〜Fz4を求めることができる。これにより、X−Yステージ17が高速で移動した場合や、X−Yステージ17の移動により除振装置本体11の重心位置が大きく変位した場合でも、除振台13の姿勢が水平状態となるように制御することが可能となる。
【0066】
第2の制御量演算手段46は、制御量補正手段46Aを有しており、アクチュエータ制御手段47と接続されている。第2の制御量演算手段46は、運動モードの演算値MxD2,MxA2よりなる運動モードの演算値Mxと、運動モードの演算値MyD2,MyA2よりなる運動モードの演算値Myと、運動モードの演算値MθzD2,MθzA2よりなる運動モードの演算値Mθzとに基づき、第2のアクチュエータ34x1,34x2,34y1,34y2を制御するために必要な第2の制御量Fx1,Fx2,Fy1,Fy2を求めると共に、制御量補正手段46Aにより除振装置本体11の重心位置G2のX座標及びY座標のデータG2x,G2yに応じて第2の制御量Fx1,Fx2,Fy1,Fy2の補正を行なう。すなわち、制御量補正手段46Aによる補正は、重心位置G2から第2のアクチュエータ34x1,34x2,34y1,34y2の配設位置までの距離を考慮して、除振装置本体11の重心位置G2を中心とするZ軸の回転方向θzのモーメントがそれぞれ釣り合うように行なう。補正された第2の制御量Fx1,Fx2,Fy1,Fy2は、アクチュエータ制御手段47に送信される。
【0067】
制御量補正手段46Aを有する第2の制御量演算手段46は、下記(6)式により上記補正及び演算処理を行う。なお、下記(6)式において、第2のアクチュエータ34z1の座標を(x,y,z)=(34z1x,34z1y,34z1z)、第2のアクチュエータ34z2の座標を(x,y,z)=(34z2x,34z2y,34z2z)、第2のアクチュエータ34z3の座標を(x,y,z)=(34z3x,34z3y,34z3z)とする。
【0068】
【数6】

このように、第2の制御量演算手段46に制御量補正手段46Aを設け、除振装置本体11の重心位置G2に応じて、第2の制御量Fx1,Fx2,Fy1,Fy2を補正することにより、除振装置本体11の重心位置G2を中心とするZ軸の回転方向θzのモーメントが釣り合うような第2の制御量Fx1,Fx2,Fy1,Fy2を求めることができる。これにより、X−Yステージ17が高速で移動した場合や、X−Yステージ17の移動により除振装置本体11の重心位置が大きく変位した場合でも、除振台13の姿勢が水平状態となるように制御することが可能となる。
【0069】
アクチュエータ制御手段47は、第1及び第2の制御量演算手段45,46と、第1及び第2のアクチュエータ33z1〜33z4,34x1,34x2,34y1,34y2とに接続されている。アクチュエータ制御手段47は、補正された第1及び第2の制御量Fz1〜Fz4,Fx1,Fx2,Fy1,Fy2のそれぞれに応じた駆動量を出力し、この駆動量により第1及び第2のアクチュエータ33z1〜33z4,34x1,34x2,34y1,34y2を制御する。
【0070】
以上、説明したように、本実施の形態の除振装置10によれば、除振装置本体11の重心位置G2を通過する水平2軸の回転方向θx,θyのモーメントがそれぞれ釣り合うような第1の制御量Fz1〜Fz4を求めると共に、重心位置G2を通過するZ軸の回転方向θzのモーメントが釣り合うような第2の制御量Fx1,Fx2,Fy1,Fy2とを求め、アクチュエータ制御手段47により第1及び第2の制御量Fz1〜Fz4,Fx1,Fx2,Fy1,Fy2に応じた駆動量を出力させて第1及び第2のアクチュエータ33,34を制御することにより、X−Yステージ17が高速で移動した場合や、X−Yステージ17の移動により除振装置本体11の重心位置G2が大きく変位した場合でも、除振台13の姿勢が水平状態となるように精度良く制御することができる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求に範囲に記載された本発明の範囲において、様々の変形・変更が可能である。なお、本実施の形態の除振装置10では、除振台13の4隅のうち3箇所に除振ユニット15を設けたが、除振台13の4隅全てに除振ユニット15を設けてもよい。本実施の形態の除振装置10のように、除振台13の4隅のうち3箇所に除振ユニット15を設けることにより、除振台13の4隅全てに除振ユニット15を設けた場合と比較して、センサ36〜39の数が少なくなるのでの除振装置10のコストを低減することができる。また、移動体がX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動する場合には、除振装置本体11の重心位置G2のX座標、Y座標、及びZ座標のデータG2x,G2y,G2zに応じて本実施の形態の除振装置10と同様な補正を行なうことで、同様な効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、高速で移動する移動体及び除振装置本体の重心位置に依存することなく、除振台の姿勢が水平状態となるように精度良く制御することのできる除振装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】除振装置本体の重心位置と除振台の傾きとの関係について説明するための図(その1)である。
【図2】除振装置本体の重心位置と除振台の傾きとの関係について説明するための図(その2)である。
【図3】除振装置本体の重心位置と除振台の傾きとの関係について説明するための図(その3)である。
【図4】除振装置本体の重心位置と除振台の傾きとの関係について説明するための図(その4)である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る除振装置の概略構成図である。
【図6】除振装置本体の断面図である。
【図7】除振装置本体の平面図である。
【図8】除振ユニットの断面図である。
【図9】アクチュエータの配設位置の一例を示した図である。
【図10】変位センサ及び加速度センサの配設位置の一例を示した図である。
【図11】制御手段が行う処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0074】
10 除振装置
11 除振装置本体
12 制御手段
13 除振台
14 床
15,16 除振ユニット
17 X−Yステージ
18 ベース部材
19 板体
21,24 突出部
19A,21A,23A 上面
21B,21C,23B 側面
22 浮上部材
23 枠体
26,27 除振支持機構
33,33z1〜33z4 第1のアクチュエータ
34,34x1,34x2,34y1,34y2 第2のアクチュエータ
36,36z1,36z2,36z3 第1の変位センサ
37,37x1,37x2,37y1 第2の変位センサ
38,38z1,38z2,38z3 第1の加速度センサ
39,39x1,39x2,39y1 第2の加速度センサ
40 ステージ制御手段
41,42 第1の演算手段
41A,42A 第1の補正手段
43,44 第2の演算手段
43A,44A 第2の補正手段
45 第1の制御量演算手段
45A,46A 制御量補正手段
46 第2の制御量演算手段
47 アクチュエータ制御手段
48 重心位置演算手段
49 記憶手段
51〜54,51A〜51C,52A〜52C,53A〜53C,54A〜54C 制御演算部
a1〜a12 入力値
z1,Dz2,Dz3,Dx1,Dx2,Dy1,Az1,Az2,Az3,Ax1,Ax2,Ay1 検出信号
z1〜Fz4 第1の制御量
x1,Fx2,Fy1,Fy2 第2の制御量
G1,G1’,G2,G3 重心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を移動可能に支持する除振台と、
外部からの振動を除振すると共に、除振台の鉛直方向及び水平2軸方向の変動を検出する検出手段と、除振台を鉛直方向及び水平2軸方向に変位させるアクチュエータとを有する除振ユニットとを備える除振装置本体と、
前記移動体の移動を制御すると共に、移動体の座標位置を認識する移動体制御手段と、前記検出手段の検出信号に基づき、除振台の鉛直方向、水平2軸方向、及びこれらの回転方向に関する第1の運動モードの演算値を求める第1の演算手段と、該第1の運動モードの演算値に基づき、アクチュエータへ供給される制御量を求める制御量演算手段と、該制御量に基づいて、アクチュエータを制御するアクチュエータ制御手段とを有する制御手段とを備える除振装置であって、
前記制御手段は、前記移動体の座標位置に基づき、除振装置本体の重心位置を求める重心位置演算手段を備え、
前記第1の演算手段は、前記除振装置本体の重心位置に応じて第1の運動モードの演算値を補正する第1の補正手段を備えることを特徴とする除振装置。
【請求項2】
前記制御量演算手段は、前記除振装置本体の重心位置に応じてアクチュエータの制御量を補正する制御量補正手段を備えることを特徴とする請求項1記載の除振装置。
【請求項3】
前記検出手段は、変位センサからなることを特徴とする請求項1または2記載の除振装置。
【請求項4】
前記検出手段は、第1の検出手段と第2の検出手段とを有し、
前記第1の検出手段は、変位センサからなり、前記第2の検出手段は、加速度センサからなることを特徴とする請求項1または2記載の除振装置。
【請求項5】
前記加速度センサの検出信号に基づき、除振台の鉛直方向、水平2軸方向、及びこれらの回転方向に関する第2の運動モードの演算値を求める第2の演算手段を設けると共に、該第2の演算手段に前記除振装置本体の重心位置に応じて、第2の運動モードの演算値を補正する第2の補正手段をさらに設け、
前記制御量演算手段は、第1及び第2の補正手段により補正された第1及び第2の運動モードの演算値に基づき、アクチュエータの制御量を求めると共に、前記制御量補正手段により前記除振装置本体の重心位置に応じて、該アクチュエータの制御量を補正することを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか一項記載の除振装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記移動体の座標位置に対応する除振装置本体の重心位置が格納された記憶手段をさらに備え、
前記重心位置演算手段は、前記記憶手段の中から移動体の座標位置に対応する除振装置本体の重心位置のデータを読み込むことを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか一項記載の除振装置。
【請求項7】
前記移動体は、前記除振台上を水平2軸方向に移動するX−Yステージであることを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか一項記載の除振装置。
【請求項8】
前記アクチュエータは、空気バネ或いはボイスコイルモータであることを特徴とする請求項1〜7のうち、いずれか一項記載の除振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−307932(P2006−307932A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129853(P2005−129853)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】