説明

除湿乾燥機

【課題】少ない労力で効率良くムラ無く短時間で少量多品種の被乾燥物を乾燥できるようにする。
【解決手段】上記課題を解決するために本発明の除湿乾燥機1は、トレイT上に並べた被乾燥物AをトレイTごと傾斜させた姿勢で保持する棚枠13を備えた移動台車7と、上記移動台車7ごと被乾燥物Aを搬入し、当該移動台車7を旋回移動させた状態で乾燥風Dを被乾燥物Aに当てて乾燥させる乾燥機本体9と、上記乾燥機本体9から排出される湿気を帯びた空気を取り込み、除湿後、加熱して再び乾燥風Dとして上記乾燥機本体9に送り込む除湿装置11と、を具備することによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量多品種の魚の干物等を製造するのに好適な除湿乾燥機に係り、特に被乾燥物の表裏両面に乾燥風を当てることで少ない労力で効率の良い被乾燥物の乾燥を実現できるようにした除湿乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
同一品種の魚の干物等を大量に製造する場合には、コンベヤ等の上に被乾燥物となる魚を並べて当該被乾燥物を搬送しながら乾燥させる連続乾燥方式の乾燥機が多く使用されている。一方、異なる品種の魚の干物等を少量ずつ製造する場合には、トレイ上に並べた被乾燥物をラック等に水平に配設してから乾燥室に入れて乾燥させるバッチ式の乾燥機が多く使用されている。
また、構造上、上記コンベヤ方式の乾燥機は大型になるため、該大型の乾燥機を収容できない中小の工場では、上記乾燥室を使用したバッチ式の乾燥機が一般に使用されている。
【0003】
また、外観品質や味の良い魚の干物等を安定して製造するための乾燥機として、除湿手段を備え、乾燥室の内壁面に遠赤外線塗料を塗布した低温遠赤外線乾燥機が下記の特許文献1に示すように開発されている。
そして、上記低温遠赤外線乾燥機では、例えばアジの干物を製造する場合にはアジの氷結点である約−1.5℃に庫内温度を設定して10〜15時間かけてゆっくりと被乾燥物を乾燥させている。また、上記低温乾燥の終了後、遠赤外線塗料から放出される遠赤外線を利用して当該被乾燥物の温度を常温まで戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−142059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記低温遠赤外線乾燥機を使用した乾燥方法を採用した場合には、被乾燥物の乾燥に時間がかかってしまって1日に処理できる被乾燥物の量が限られてしまう。
一方、熱風乾燥機等を使用すれば、乾燥時間の大幅な短縮が見込まれるが、完成した乾燥品の外観品質を悪くしたり、風味を損なうことになる。
【0006】
また、従来のバッチ式の乾燥機では、トレイ上に並べた被乾燥物を平置きした状態で乾燥室に入れていたため、当該被乾燥物に作用する乾燥風は、被乾燥物の表面ないし裏面の一方に限られていた。
従って、乾燥の途中で被乾燥物の乾燥状態を確認して乾燥が不十分な面に多く乾燥風が当たるように被乾燥物を裏返したり、並べる位置を変えたりする作業が必要になっていた。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、被乾燥物の外観や風味を損なうことなく、少量多品種の被乾燥物を少ない手間で効率良く、短時間で乾燥させることができる除湿乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1による除湿乾燥機は、トレイ上に並べた被乾燥物をトレイごと傾斜させた姿勢で保持する棚枠を備えた移動台車と、上記移動台車ごと被乾燥物を搬入し、当該移動台車を旋回移動させた状態で乾燥風を被乾燥物に当てて乾燥させる乾燥機本体と、上記乾燥機本体から排出させる湿気を帯びた空気を取り込み、除湿後、加熱して再び乾燥風として上記乾燥機本体に送り込む除湿装置と、を具備していることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2による除湿乾燥機は、請求項1記載の除湿乾燥機において、上記移動台車は、上記棚枠を上下方向に一定の間隔で複数段に亘って配設した収納ラックと、上記収納ラックの底部に設けられる複数のキャスターと、を備えることによって構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3による除湿乾燥機は、請求項1または2記載の除湿乾燥機において、上記乾燥機本体の支持架台には、上記除湿装置から供給された乾燥風を乾燥機本体の約半分のスペースに送り込む第1給送用ダクトファンと、乾燥風を乾燥機本体の残りの約半分のスペースに送り込む第2給送用ダクトファンと、が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4による除湿乾燥機は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の除湿乾燥機において、上記乾燥機本体には、乾燥室内に搬入された移動台車に作用して当該移動台車を所定の方向に所定の速度で旋回させる旋回アームと、上記旋回アームの旋回軸を回転駆動する駆動モータと、上記旋回アームの旋回角度を設定する旋回角度設定機構と、を備えた旋回装置が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項5による除湿乾燥機は、請求項4記載の除湿乾燥機において、上記旋回軸には外方に水平に張り出す係合アームが設けられており、該係合アームの先端部と上記移動台車の背面部には、両者を着脱自在に接続する係合構造が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項6による除湿乾燥機は、請求項4または5記載の除湿乾燥機において、上記旋回角度設定機構は、上記移動台車の搬入搬出のタイミングを設定する第1角度センサと、上記旋回軸の旋回速度と旋回角度の異常を検出する第2角度センサと、上記第1角度センサの取付け位置に対応する上記旋回軸を中心とする円周上に配置される第1マーカーと、上記第2角度センサの取付け位置に対応する上記旋回軸を中心とする円周上に配置される第2マーカーと、を備える割出し板と、を具備することによって構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項7による除湿乾燥機は、請求項6記載の除湿乾燥機おいて、上記移動台車は複数台設けられており、上記旋回アームと係合アーム及び係合構造は該移動台車の数に対応した複数組ずつが設けられており、上記第1マーカーは上記各移動台車の位置に対応した間隔と個数で等分配置されており、上記第2マーカーは上記各第1マーカー間の位置を更に細かく分割して等分配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項8による除湿乾燥機は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の除湿乾燥機おいて、上記移動台車、乾燥機本体及び除湿装置が配置されている乾燥室の内壁面には、遠赤外線を照射するパネルヒータが設置されていることを特徴とするものである。
【0016】
そして、上記手段によって以下のような作用が得られる。まず、トレイ上に並べた被乾燥物をトレイごと傾斜した姿勢で保持する棚枠を備えた移動台車を具備したことによって、該移動台車を旋回移動させた状態で被乾燥物に乾燥風を当てると、被乾燥物の表裏両面に乾燥風を当てることができる。従って、乾燥の途中で被乾燥物を裏返したり、並べ替えなくても被乾燥物を満遍無く乾燥させることが可能になる。
また、除湿装置の採用によって、被乾燥物の外観品質や風味を損なうことなく、効率の良い乾燥が可能になる。
【0017】
また、上記棚板を複数段に亘って配設した収納ラックを採用した場合には、被乾燥物の処理量を増やすことができ、キャスターを備えた移動台車の採用により、被乾燥物を収容したトレイを移動台車から一々取り出さなくても移動台車のまま被乾燥物を乾燥室内で旋回移動させることができる。
また、当該移動台車は、前工程からの被乾燥物の移動や次工程への被乾燥物の移動にも利用することができる。
【0018】
また、上記乾燥機本体に対して第1給送用ダクトファンと、第2給送用ダクトファンとを設けた場合には、乾燥室内で正逆方向の乾燥風の循環した流れが形成されるから、被乾燥物の表裏両面に隈なく乾燥風を当てることができ、乾燥効率が向上する。
また、上記乾燥機本体に旋回アームと、駆動モータと、旋回角度設定機構と、を備えた旋回装置を設けた場合には、上記移動台車の乾燥室内での旋回移動を比較的簡単な構成で確実に実行できるようになる。
【0019】
また、上記駆動モータによって駆動される旋回軸に係合アームを設け、該係合アームの先端部と上記移動台車の背面部に両者を着脱自在に接続する係合構造を設けた場合には、当該係合構造を係合させた状態では上記旋回軸の回転が上記移動台車を旋回移動させる動力として確実に伝達できるようになり、当該係合構造の係合を解除することにより、乾燥を終えた移動台車を速やかに乾燥室外に取り出すことができるようになる。
【0020】
また、上記旋回角度設定機構を上記移動台車の搬入搬出のタイミングを設定する第1角度センサと、上記旋回軸の旋回速度と旋回角度の異常を検出する第2角度センサと、上記第1角度センサの取付け位置に対応する第1マーカーと上記第2角度センサの取付け位置に対応する第2マーカーとを備える割出し板と、を具備することによって構成した場合には、旋回アームの旋回角度を比較的簡単な構成によって正確に設定できるようになる。
【0021】
また、上記移動台車を複数台設け、該移動台車の数に対応して旋回アームと係合アーム及び係合構造を複数組設け、前記第1マーカーを各移動台車の位置に対応した間隔と個数で等分配置し、上記第2マーカーを上記第1マーカー間の位置を更に細かく分割して等分配置した場合には、1回の乾燥で処理できる被乾燥物の処理量を大幅に増やすことができ、複数台の移動台車のそれぞれの旋回位置を正確に把握して各移動台車を確実に旋回移動させることが可能になる。
また、上記乾燥室の内壁面に遠赤外線を照射するパネルヒータを設置した場合には、被乾燥物の乾燥が促進され、完成した乾燥品の味にまろやかさを加えることができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の除湿乾燥機によると、被乾燥物の外観や風味を損なうことなく少量多品種の被乾燥物の乾燥に対応できるようになる。
また、一旦、被乾燥物をトレイ上に並べて移動台車にセットした後は、移動台車にセットしたままの状態で乾燥室内での旋回移動や前後工程との間の移動ができるようになる。また、被乾燥物を傾斜姿勢で保持する棚板の採用もあって作業者の負担を軽減し、少ない手間で効率良く乾燥風を被乾燥物に作用させて短時間で乾燥を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、除湿乾燥機を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、除湿乾燥機を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、旋回装置と移動台車を示す縦断正面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、旋回装置と移動台車を示す図3中のE−E断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す図で、第1給送用ダクトファンを示す図1中のF−F断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す図で、旋回装置の駆動モータと旋回角度設定機構周辺を示す図3中のB部の拡大図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す図で、旋回角度設定機構を示す図6中のG−G断面図である。
【図8】本発明の実施の形態を示す図で、移動台車を示す正面図である。
【図9】本発明の実施の形態を示す図で、移動台車を示す側面図である。
【図10】本発明の実施の形態を示す図で、トレイ上に載置された被乾燥物の旋回時の姿勢変化と乾燥風の作用状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態を示す図で、除湿装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図11に示す実施の形態を例にとって本発明の除湿乾燥機1について具体的に説明する。
尚、図示の除湿乾燥機1は、少量多品種の魚の干物製造に適したバッチ式の除湿乾燥機であり、遠赤外線照射型のロータリー式の除湿乾燥機になっている。
【0025】
本実施の形態による除湿波乾燥機1は、一例として幅が約5m、高さが約2.2m、奥行きが約3mの角箱状の乾燥室3を備えている。そして、上記乾燥室3の一例として前面には、被乾燥物Aとなる干物用に下処理された魚等を搬入、搬出するのに使用される搬入搬出口4を閉塞する開閉式の扉5が設けられている。
また、上記乾燥室3の内部には、以下詳述する本発明の主要な構成部材になっている移動台車7が上記搬入搬出口4から出入り自由に収容され、乾燥機本体9と除湿装置11が配置されている。
【0026】
本発明による除湿乾燥機1は、トレイT上に並べた被乾燥物AをトレイTごと傾斜した姿勢で保持する棚枠13を備えた移動台車7と、上記移動台車7ごと被乾燥物Aを搬入し、当該移動台車7を旋回移動させた状態で乾燥風Dを被乾燥物Aに当てて乾燥させる乾燥機本体9と、上記乾燥機本体9から排出される湿気を帯びた空気を取り込み、除湿後、加熱して再び乾燥風Dとして上記乾燥機本体9に送り込む除湿装置11と、を具備することによって基本的に構成されている。
【0027】
また、図示の除湿乾燥機1にあっては、4台の移動台車7を収容して乾燥を実行できるようになっており、それぞれの移動台車7は、アングル材等によって構成される縦長の支持枠15を有しており、該支持枠15の内部に手前下がりの傾斜姿勢で左右一対配置されている棚枠13を上下方向に一定の間隔で一例として14段配設した収納ラック17を備えている。
また、上記棚枠13の前端部には、収容したトレイTの前方への脱落を防止する一例として矩形平板状のストッパー29が設けられている。また、上記移動台車7を出し入れする際、手前になる上記支持枠15の側面には、上記移動台車7を出し入れする際の手掛かりとなる一例として丸棒状のハンドル16が水平に取り付けられている。
【0028】
また、上記収納ラック17の底部のコーナ部には計4個の自在に向きの変わるキャスター19が備えられており、上記収納ラック17の背面の中央より幾分上方の位置には、後述する係合構造21の構成部材になっている係合溝部23が水平に取り付けられている。
尚、上記係合溝部21の両端には外方に広がった案内傾斜面25が設けられており、後述する係合構造21の他の構成部材である係合フランジ27の進入、退出を容易にしている。
【0029】
乾燥機本体9は、角パイプ等によって構成される矩形枠体状の支持架台31を備えており、該支持架台31の一例として前方寄りの左側面に後述する除湿装置11から供給された乾燥風Dをを取り込み、乾燥機本体9の主として前方寄りの半分のスペースに送り込む第1第1給送用ダクトファン33が一例として3基設けられている。
また、上記支持架台31の一例として後方寄りの右側面には、上記第1第1給送用ダクトファン33によって送られてきた乾燥風Dを取り込み、乾燥機本体9の主として後方寄りの半分のスペースに送り込む第2給送用ダクトファン35が一例として3基設けられている。
【0030】
また、前記支持架台31の天板部の中央には後述する旋回軸37を回転自在に支承する上下に配置された2基のピローブロック39を各別に支持する一例として矩形平板状の2枚の支持基板41が上記支持架台31の天板部のフレームを挟むようにして取り付けられている。
そして、上記支持基板41とピローブロック39を利用して以下詳述する旋回装置43が取り付けられている。
【0031】
旋回装置43は、乾燥室3内に搬入された移動台車7に作用して当該移動台車7を一例として図4中時計方向に1分間で1回転する程度の速度で旋回させる旋回アーム45と、上記旋回アーム45の旋回軸37を回転駆動する駆動モータ47と、上記旋回アーム45の旋回角度を設定する旋回角度設定機構49とを備えることによって構成されている。
また、図示の旋回装置43にあっては、上記支持基板41から立ち上げられた支持ロッド51によって支持された一例として矩形平板状の取付け板53に対して一例としてギャードモータによって構成されている駆動モータ47が下向きで取り付けられている。
【0032】
また、上記駆動モータ47の出力軸48は、チェンカップリング55を介して鉛直方向下方に向けて延びる上述した旋回軸37に接続されている。
また、上記旋回軸37の下部には、平面視で「へ」の字状に途中で折り曲げられた一例として「コ」の字形断面形状の4本の旋回アーム45が90°ずつ角度を異らせて放射状に設けられている。
【0033】
また、同じく上記旋回軸37の下部には、外方に水平に張り出す4本の係合アーム57が上記旋回アーム45と同様、90°ずつ角度を異らせて放射状に設けられている。
そして、上記係合アーム57の先端面に、上述した係合溝部23と係合する一例として矩形平板状の係合フランジ27が設けられている。
【0034】
旋回角度設定機構49は、上記移動台車7の搬入搬出のタイミングを設定する一例として近接スイッチによって構成される第1角度センサ59と、上記旋回軸37の旋回速度と旋回角度の異常を検出する同じく一例として近接スイッチによって構成される第2角度センサ61と、上記第1角度センサ59の取付け位置に対応する上記旋回軸37を中心とする円周上に配置される第1マーカー63と、上記第2角度センサ61の取付け位置に対応する上記旋回軸37を中心とする円周上に配置される第2マーカー65と、を備える割出し板67と、を具備することによって一例として構成されている。
【0035】
そして、本実施の形態では上記第1マーカー63は、上記4台の移動台車7の位置に対応して90°間隔で4個が等分配置されており、上記第2マーカー65は、上記各第1マーカー63間の位置を更に3分割して30°間隔で12個が等分配置されている。
また、除湿装置11は、上記乾燥機本体9の一例として左方に配置されており、一例として幅が2.4m、高さが2m、奥行きが1.1m程度のボックス状の支持フレーム71によって支持されている装置である。
【0036】
上記支持フレーム71の向って右端寄りには上記乾燥機本体9から排出された湿気を帯びた空気を吸い込む一例として角筒状の吸込み口73が上下に2基設けられている。
また、上記吸込み口73の左方には、直膨コイル75が配設されており、吸込み口73から吸い込んだ湿気を帯びた空気を冷やして凝縮させ、除湿するように構成されている。
【0037】
また、上記直膨コイル75の左方には、再熱コイル77が配設されており、冷却し除湿した空気を再び加熱し、暖めて乾燥風Dに再生する。
また、再生された乾燥風Dは、再熱コイル77の左方の空間に導かれ、上下に2基設けられている一例として円筒状の放出口79から放出されて上記乾燥機本体9の第1給送用ダクトファン33に導かれるように構成されている。
【0038】
この他、本実施の形態では上記乾燥室3の一例として背面側の内壁面に遠赤外線を照射するパネルヒータ69が適宜の数(図示の実施の形態では、4列3段で計12個)設けられており、上記乾燥風Dによる乾燥に加えてパネルヒータ69から照射される遠赤外線によって被乾燥物Aの内部からの乾燥の促進が図られている。
【0039】
次に、このようにして構成される本実施の形態による除湿乾燥機1を使用して被乾燥物Aを乾燥する場合の作業手順に従って当該除湿乾燥機1の作用について説明する。
まず、除湿乾燥機1によって乾燥を行う被乾燥物Aの下処理加工を行う。次に、下処理された被乾燥物AをトレイT上に並べ、被乾燥物Aを並べたトレイTを上記移動台車7の傾斜した棚枠13にセットする。
【0040】
尚、当該被乾燥物Aが通常サイズのアジである場合には、1つのトレイTに28枚のアジを並べることができ、14段のすべての棚枠13にトレイTをセットすると1台の移動台車7で392枚、4台すべての移動台車7を使用すれば、1回の乾燥で計1568枚のアジの干物が製造できるようになっている。
このようにして被乾燥物Aがセットされた移動台車7は、ハンドル16を持って移動でき、扉5を開けて搬入搬出口4から乾燥室3内に搬入される。この際、案内傾斜面25に案内させて移動台車9背面の係合溝部23に係合アーム57先端の係合フランジ27を進入させて係合状態にする。また、このとき移動台車7は次段の係合アーム57の先端側部に当たって停止するようになっている。
【0041】
次に、旋回アーム45を図4中、時計方向に90°回転して、上記と同じ手順で2台目の移動台車7を搬入して係合状態にする。以下、同様の手順で4台すべての移動台車7を搬入して係合状態にし、扉5を閉めれば移動台車7の搬入が完了する。
次に、駆動モータ47、第1給送用ダクトファン33、第2給送用ダクトファン35及び除湿装置11を起動し、移動台車7を1分間に1回転程度の速度で図4中、時計方向に回転させる。
【0042】
また、同時に乾燥機本体9内には、第1給送用ダクトファン33によって乾燥風Dが送り込まれ、図10に示すように傾斜して旋回する被乾燥物Aの表裏両面に作用して乾燥が実行される。
また、乾燥機本体9内で乾燥に使用されて湿気を帯びた空気は、第2給送用ダクトファン35によって乾燥風Dが送り込まれ、同様に図10に示すように傾斜して旋回する被乾燥物Aの表裏両面に作用して乾燥が実行される。この際、乾燥風Dは正逆方向に被乾燥物Aに作用するから、旋回動とあいまって、被乾燥物Aの表裏両面が全体的にムラなく乾燥されることになる。
また、上記乾燥室3の背面側の内壁面に遠赤外線を照射するパネルヒータ69が設けられており、上記乾燥風Dによる乾燥に加えてパネルヒータ69から照射される遠赤外線によって被乾燥物Aの内部からの乾燥が行われる。
また、乾燥機本体9内で乾燥に使用されて湿気を帯びた空気は、第2給送用ダクトファン35によって除湿装置11に導かれ、上述した直膨コイル75と再熱コイル77の作用で再び乾燥風Dに再生される。
そして、再生された乾燥風Dは再び乾燥機本体9内に導かれ、上記循環経路を辿って繰り返し使用される。
【0043】
尚、被乾燥物Aの大きさや種類等によって乾燥時間は相違するが、概ね、20〜40分程度の時間で乾燥は終了する。
また、所定の乾燥時間になって乾燥が終了すると、上記駆動モータ47、第1給送用ダクトファン33、第2給送用ダクトファン35及び除湿装置11は駆動を停止し、移動台車7は、上記第1角度センサ59によって所定の旋回位置で停止する。
【0044】
そして、作業者は扉5を開けて搬出位置にある移動台車7のハンドル16を握り、手前に引くだけで当該移動台車7の係合状態を解除できる。続いて、旋回アーム45を90°旋回させて、次の移動台車7を搬出位置に位置させて乾燥室3外に取り出し、以下同様に残りの2台の移動台車7を乾燥室3外に取り出す。
また、乾燥室3外に取り出された移動台車7は、そのまま次の冷凍工程等に向けて移送される。
【0045】
また、乾燥中、旋回アーム45の回転に異常があった場合には、上記第2角度センサ61によってその異常が検知され、駆動モータ47の駆動が停止される。
そして、この場合にも作業者は扉5を開けて当該異常の原因を取り除き、再び扉5を閉めて残りの乾燥を継続することになる。
【0046】
また、本実施の形態に係る除湿乾燥機1は、移動台車7ごとに乾燥時間を異ならせて乾燥工程を行うことが可能である。例えば4台の移動台車7のうち、2台の乾燥時間が20分で残りの2台の乾燥時間が30分である場合、最初の20分は4台の移動台車7を乾燥室3内に入れて乾燥し、乾燥が終了した2台の移動台車7を取り出してから、乾燥室3内に残る2台の移動台車7の残余の10分の乾燥を継続するような使用形態を採用することが可能である。
【0047】
このように本実施の形態による除湿乾燥機1によれば、被乾燥物Aの外観や風味を損なうことなく少量多品種の被乾燥物Aの乾燥を少ない手間で効率良く短時間で実行できるようになる。
また、遠赤外線を照射するパネルヒータを併用した場合には、被乾燥物の乾燥が促進され、完成した乾燥品の味にまろやかさを加えることができる。
【0048】
尚、本発明の除湿乾燥機1は、上記の実施の形態のものに限定されずその発明の要旨内での変更が可能である。例えば、乾燥室3内に収容できる移動台車7の数は4台に限らず、3台以下でも良いし、5台以上に設定することが可能である。
これに伴って、旋回アーム45、係合アーム57、第1マーカー63及び第2マーカー65の数や配置も移動台車7の数に応じて適宜変更することが可能である。
【0049】
また、上記の実施の形態のものでは、上記乾燥機本体の支持架台には、上記除湿装置から供給された乾燥風を乾燥機本体の約半分のスペースに送り込む第1給送用ダクトファンと、乾燥風を乾燥機本体の残りの約半分のスペースに送り込む第2給送用ダクトファンと、が設けられている構成としたが、給送用ダクトファンで乾燥風を乾燥機本体に一方向から送り込むようにし、排送用ダクトファンで除湿装置に導かれるようにする循環経路とすることも可能である。この場合にも、上記の実施の形態と同様に被乾燥物の表裏両面を満遍なく乾燥することが可能である。
また、上記実施の形態において旋回アームの旋回角度を設定する旋回角度設定機構49を省略して旋回アームの旋回動と停止を適宜のスイッチとタイマーで行う除湿乾燥機1とすることも可能である。
また、上記実施の形態において乾燥室3の内壁面に設けたパネルヒータ69を省略して遠赤外線の照射なしで乾燥風Dのみによる乾燥を行う除湿乾燥機1とすることも可能である。
また、乾燥室3、移動台車7及び除湿装置11の大きさも被乾燥物Aの大きさや種類、あるいは処理量の大小等によって適宜、変更することが可能であり、移動台車7の棚枠13の数や傾斜角度も被乾燥物Aの種類等の違いによって適宜、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の除湿乾燥機1は、少量多品種の被乾燥物の乾燥を行っている乾燥品の製造、使用分野等で利用でき、特に少ない労力で効率良くムラ無く短時間で乾燥を実行したい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0051】
1 除湿乾燥機
3 乾燥室
4 搬入搬出口
5 扉
7 移動台車
9 乾燥機本体
11 除湿装置
13 棚枠
15 支持枠
16 ハンドル
17 収納ラック
19 キャスター
21 係合構造
23 係合溝部
25 案内傾斜面
27 係合フランジ
29 ストッパー
31 支持架台
33 第1給送用ダクトファン
35 第2給送用ダクトファン
37 旋回軸
39 ピローブロック
41 支持基板
43 旋回装置
45 旋回アーム
47 駆動モータ
48 出力軸
49 旋回角度設定機構
51 支持ロッド
53 取付け板
55 チェンカップリング
57 係合アーム
59 第1角度センサ
61 第2角度センサ
63 第1マーカー
65 第2マーカー
67 割出し板
69 パネルヒータ
71 支持フレーム
73 吸込み口
75 直膨コイル
77 再熱コイル
79 放出口
A 被乾燥物
T トレイ
D 乾燥風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ上に並べた被乾燥物をトレイごと傾斜させた姿勢で保持する棚枠を備えた移動台車と、
上記移動台車ごと被乾燥物を搬入し、当該移動台車を旋回移動させた状態で乾燥風を被乾燥物に当てて乾燥させる乾燥機本体と、
上記乾燥機本体から排出させる湿気を帯びた空気を取り込み、除湿後、加熱して再び乾燥風として上記乾燥機本体に送り込む除湿装置と、を具備していることを特徴とする除湿乾燥機。
【請求項2】
上記移動台車は、上記棚枠を上下方向に一定の間隔で複数段に亘って配設した収納ラックと、
上記収納ラックの底部に設けられる複数のキャスターと、を備えることによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の除湿乾燥機。
【請求項3】
上記乾燥機本体の支持架台には、上記除湿装置から供給された乾燥風を乾燥機本体の約半分のスペースに送り込む第1給送用ダクトファンと、乾燥風を乾燥機本体の残りの約半分のスペースに送り込む第2給送用ダクトファンと、が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の除湿乾燥機。
【請求項4】
上記乾燥機本体には、乾燥室内に搬入された移動台車に作用して当該移動台車を所定の方向に所定の速度で旋回させる旋回アームと、
上記旋回アームの旋回軸を回転駆動する駆動モータと、
上記旋回アームの旋回角度を設定する旋回角度設定機構と、を備えた旋回装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の除湿乾燥機。
【請求項5】
上記旋回軸には外方に水平に張り出す係合アームが設けられており、該係合アームの先端部と上記移動台車の背面部には、両者を着脱自在に接続する係合構造が設けられていることを特徴とする請求項4記載の除湿乾燥機。
【請求項6】
上記旋回角度設定機構は、上記移動台車の搬入搬出のタイミングを設定する第1角度センサと、
上記旋回軸の旋回速度と旋回角度の異常を検出する第2角度センサと、
上記第1角度センサの取付け位置に対応する上記旋回軸を中心とする円周上に配置される第1マーカーと、上記第2角度センサの取付け位置に対応する上記旋回軸を中心とする円周上に配置される第2マーカーと、を備える割出し板と、を具備することによって構成されていることを特徴とする請求項4または5記載の除湿乾燥機。
【請求項7】
上記移動台車は複数台設けられており、上記旋回アームと係合アーム及び係合構造は該移動台車の数に対応した複数組ずつが設けられており、上記第1マーカーは上記各移動台車の位置に対応した間隔と個数で等分配置されており、上記第2マーカーは上記各第1マーカー間の位置を更に細かく分割して等分配置されていることを特徴とする請求項6記載の除湿乾燥機。
【請求項8】
上記移動台車、乾燥機本体及び除湿装置が配置されている乾燥室の内壁面には、遠赤外線を照射するパネルヒータが設置されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の除湿乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−7542(P2013−7542A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141579(P2011−141579)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(503225847)有限会社エムテック (3)
【Fターム(参考)】