説明

陰イオン性界面活性剤の検出

本明細書に陰イオン性界面活性剤の検出および/または定量化のための方法を開示する。また、本明細書に、環境保護に関して導き出されるサンプルのようなサンプル中の陰イオン性界面活性剤の濃度を評価するために、開示した方法を利用する試験キットも開示する。若干の特定の具体化において、本方法および試験キットを、数ある中でも、陰イオン性界面活性剤が含有される水性膜形成泡を検出するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張 この国際特許出願は、2007年10月9日付け出願のオーストラリア国仮特許出願2007905529について優先権を主張し、その内容をここに参照することによって組み込む。
【0002】
技術的分野 本明細書において、陰イオン性界面活性剤の検出および/または定量化のための方法を開示する。また、環境保護に関して導き出されるサンプル(試料)のようなサンプルにおける陰イオン性界面活性剤の濃度を評価するために、開示した方法を利用する試験キットも本明細書において開示する。若干の特定の具体化において、本方法および試験キットは、数ある中でも、陰イオン性界面活性剤を含む水性膜形成泡を検出するために用いることができる。
【背景技術】
【0003】
背景 界面活性剤は、関心を増しつつある一群の有機化合物である。それらは、1年につき9.86×10kgを上回る世界的な生産により世界中で広く使用される一群の化学物質である。界面活性剤は、世界中の家庭において、洗浄剤および洗剤において、殺虫剤、セメントおよびコンクリート産業における可塑剤、鉱業、製薬および他の多くの製品の製造を含む産業上の適用において、日常的に大量に使用されている。
【0004】
陰イオン性界面活性剤は、洗剤の中に用いられる界面活性剤の主要なクラス(部類)である。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)は、最も広く用いられている陰イオン性界面活性剤であると発表されている。廃水処理設備は、洗浄目的のための、および他の供給源からの洗剤の大量使用のために、著しい量の陰イオン性界面活性剤を受け取る。大部分の界面活性剤は慣習的な廃水処理によって排除することが可能であるが、生分解性が低い若干の界面活性剤もあり、また他には、望ましくない生分解生成物が形成され、そして流出物と共に表流水に放出される。これらの化学物質を環境中に導入することについてのもう1つのルートには、農業においての汚水スラッジ(汚泥)の肥料としての使用が含まれる。界面活性剤は周囲の土壌に浸出することがあり、そして地下水および表流水にまで運搬される。
【0005】
特殊な界面活性剤の1つの特定のクラス、フッ素化(フッ素系)界面活性剤は、それらを消防の適用に特に良好に適したものにする特性をもつ。PFOS(ペルフルオロオクタンスルホナートC17SO-)およびPFOA(ペルフルオロオクタン酸C15COH)は、普通に用いられる2種類のフッ素化界面活性剤である。これらの界面活性剤は、ヒト血液、水、土壌、堆積物、空気、および生物相のサンプル中において検出されている。これらの化合物は、世界的に分布し、持続性であり、そして生物濃縮性であることが見出された。
【0006】
環境において陰イオン性界面活性剤汚染が検出できるために、陰イオン性界面活性剤の検出用の様々なアッセイ(検定)が開発されてきた。
【0007】
メチレンブルー活性物質(MBAS)アッセイは、水中の陰イオン性界面活性剤の濃度を評価するために使用する、現行基準の比色試験である。水サンプルを酸性にし、3mLのクロロホルムおよびメチレンブルー溶液を加え、そしてサンプルをかくはんする。MBASアッセイにおいて、陰イオン性界面活性剤は陽イオン性染料と複合体(錯体)を形成する。陰イオン性界面活性剤の濃度が高いほど、より一層多くの染料が取り込まれ、そしてより大きな比色変化を生ずる。方法の感度のために、LASを、陰イオン性界面活性剤の濃度を評価するために用い、そして濃度をLAS相当物において報告する。MBASアッセイは、0.025mg/Lという発表された検出限界をもつ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この方法は広く使用されている一方、アッセイの使用は、それがヒトの発がん性物質として疑われているクロロホルムを抽出溶媒として使用するため、問題を有している。このように、陰イオン性界面活性剤の検出のための改良されたアッセイが必要とされている。そのようなアッセイは、発がん性が疑われている溶媒である、クロロホルムの使用が排除されることが望ましい。また、環境サンプル中の陰イオン性界面活性剤の迅速な検出のために、改良したアッセイがその分野における使用に適していたら望ましいであろう。
【0009】
本明細書中のいかなる先行技術への言及も、この先行技術がいかなる国においても共通の一般知識の一部を形成するという自認、または何らかの形態の示唆として受けとられることはなく、またそのように解されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の概略 本発明は、一部分において、陰イオン性界面活性剤の検出および/または定量化のための方法およびキットに基づく。
【0011】
第1の見地において、この発明はサンプルにおいて陰イオン性界面活性剤を検出し、および/または定量化するための方法を提供し、本方法は、すなわち
陽イオン性染料を提供することであり、サンプルと実質非混和性である溶媒に選択(優先)的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、陽イオン性染料は、サンプル由来の陰イオン性界面活性剤と複合体を形成することが可能であること、
サンプルと実質非混和性である溶媒を提供すること、
溶媒において選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、サンプルまたは抽出物における陰イオン性界面活性剤が陽イオン性染料と複合体を形成するように、陽イオン性染料を、サンプルおよび溶媒または溶媒におけるサンプルの抽出物のいずれかと接触させること、
溶媒において染料−界面活性剤複合体を検出し、および/または定量化することであり、溶媒における染料−界面活性剤複合体の存在はサンプルにおける陰イオン性界面活性剤の存在を指し示すこと
を含む。
【0012】
1種の具体化において、陽イオン性染料には、エチルバイオレットまたはその誘導体が包含される。
【0013】
さらなる具体化において、溶媒には、酢酸エチルが包含される。
【0014】
少なくとも若干の具体化において、開示した方法は、陰イオン性界面活性剤の検出および/または定量化のために、メチレンブルー活性物質(MBAS)アッセイのような標準的な陰イオン性界面活性剤検出方法を超えた、増大した感度および分解能(解像度)を提供することが確認された。
【0015】
さらにまた、開示した方法の少なくとも若干の具体化は、特に陰イオン性界面活性剤のためのフィールドベース(現場ベース)のアッセイに適する。
【0016】
第2の見地では、この発明は、サンプルにおいて陰イオン性界面活性剤を検出し、および/または定量化するためのキットを提供し、キットは、すなわち
陽イオン性染料であり、サンプルと実質非混和性である溶媒に選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、陽イオン性染料は、サンプル由来の陰イオン性界面活性剤と複合体を形成することが可能であるもの、および
本発明の第1の見地に従った方法を実行するための指示
を含む。
【0017】
本明細書において開示した方法およびキットは、任意の適切な陰イオン性界面活性剤を検出するために用いることができる。しかしながら、若干の特定の具体化において、本方法およびキットは、水性膜形成泡の陰イオン性界面活性剤成分および/またはフッ素化陰イオン性界面活性剤を検出するために適する。
【0018】
この明細書の全体にわたって、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「comprise(含む)」という語、または「comprises」もしくは「comprising」といった変形(バリエーション)は、述べられた要素または整数(integer)、または要素または整数の群の包括を暗示するが、任意の他の要素または整数、または要素または整数の群の除外ではないと理解される。
【0019】
【表1】

【発明を実施するための形態】
【0020】
模範的な具体化の説明 以下の説明は、特定の具体化を説明する目的のためだけのものであり、上記記載について制限することを意図しないと理解されるべきである。
【0021】
第1の見地において、この発明は、サンプルにおいて陰イオン性界面活性剤を検出し、および/または定量化するための方法を提供し、本方法は、すなわち
陽イオン性染料を提供することであり、サンプルと実質非混和性である溶媒に選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、陽イオン性染料は、サンプル由来の陰イオン性界面活性剤と複合体を形成することが可能であること、
サンプルと実質非混和性である溶媒を提供すること、
溶媒に選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、サンプルまたは抽出物における陰イオン性界面活性剤が陽イオン性染料と複合体を形成するように、陽イオン性染料を、サンプルおよび溶媒または溶媒におけるサンプルの抽出物のいずれかと接触させること、
溶媒において染料−界面活性剤複合体を検出し、および/または定量化することであり、溶媒における染料−界面活性剤複合体の存在はサンプルにおける陰イオン性界面活性剤の存在を指し示すこと
を含む。
【0022】
上述されるように、本明細書において開示された方法は、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の検出のためのものである。この技術において熟練する者(当業者)によってすぐに理解されるように、「界面活性剤」は疎水性部分および親水性部分を含む両親媒性の分子である。「陰イオン性界面活性剤」の場合、分子の親水性部分は、概して、少なくとも7またはそれよりも高いpHにて負電荷を運ぶ。そのようなものとして、用語「陰イオン性界面活性剤」には、カルボン酸のような分子が含まれてよく、それは7またはそれよりも高いpHにて陰イオン(すなわち、共役塩基)を形成しうるが、それは必ずしも7未満のpHで陰イオンの形でありうるとは限らない。例えば、環境サンプル中のカルボン酸界面活性剤は、必ずしもカルボン酸界面活性剤が塩基性の陽イオン性染料のような塩基の存在下にあるときまで、カルボン酸界面活性剤が陰イオンの形であるとは限らないとしても、陰イオン性界面活性剤とみなすことができる。
【0023】
開示された方法を用いて検出され、および/または定量化されうる陰イオン性界面活性剤の範囲は、当業者によってすぐに確かめられるであろう。模範的な陰イオン性界面活性剤には、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホナート(LAS)、ナトリウムドデシルスルファート(SDS)、フッ素化界面活性剤で、ペルフルオロオクタンスルホナート(PFOS)またはペルフルオロオクタン酸(PFOA)、等のようなものが含まれる。
【0024】
本方法はまた、前述のフッ素化界面活性剤のような、水性膜形成泡(AFFF)の構成要素である陰イオン性界面活性剤の検出および/または定量化への特定の適用ももつ。模範的なAFFFsには、Light WaterTM(ライト・ウォーター(商品名)、3M(スリーエム社)、St.Paul(セントポール)、MN(米国ミネソタ州)、USA)、およびAnsulite(アンスライト、Ansul Incorporated(アンスル・インコーポレイテッド)、Marinette(マリネット)、WI(米国ウィスコンシン州)、USA)が包含される。
【0025】
また上述したように、本方法はサンプル中の陰イオン性界面活性剤の検出および/または定量化を企図する(contemplates)。
【0026】
一種の具体化において、「サンプル」は、水性または水ベースのサンプルであってよい。若干の具体化では、水性サンプルは、水サンプル、土壌希釈物等のような、環境保護に関して導き出されるサンプルでありうる。サンプルは、例えば、とりわけ多くある中で、工業用地、界面活性剤による汚染が疑われている場所で、AFFFsが使われていた場所のようなところ、産業上の、または家庭的な流出物、処置された水サンプル、雨水サンプル、湖または川の水または堆積物のサンプル、海の水または堆積物のサンプルから導き出すことができる。
【0027】
認められるように、水性サンプルはまた、固体から導き出しうる。例えば、サンプルを生産するために、土壌を水または別の水性溶媒において希釈してよい。さらに、サンプルを生産するために、植物素材や建築素材等のような他の固形物を、破砕し、または水または別の水性溶媒中に希釈する前に漬けて柔らかくすることができる。
【0028】
さらなる具体化において、サンプルはアッセイにおいて用いる溶媒中に抽出することができる。これらの具体化では、溶媒を、固形物、半固形物または液体であってよいサンプルに加えることができる。このようなサンプルの例には、土壌、植物素材、建築素材等が含まれうる。
【0029】
一種の具体化においては、溶媒および染料の双方をサンプルに加え、そしてサンプル中の任意の陰イオン性界面活性剤は、陽イオン性染料と複合体を形成し、溶媒において選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体が形成される。さらなる具体化においては、陰イオン性界面活性剤および染料が使用する溶媒において溶解性であり、陰イオン性界面活性剤および染料が溶媒中に溶けることができ、そして陰イオン性界面活性剤と染料の間の複合体を溶媒相内で形成することができる。さらなる具体化において、アッセイにおける使用のために、溶媒中でサンプルの抽出物を形成するように、溶媒をサンプルに加えることができる。若干の具体化において、サンプルを抽出物から分けることができ、またはそれらを混合物として使用することができる。いずれにしても、染料−界面活性剤複合体の形成を許し、それが次に溶媒において検出されることができるようにするために、陽イオン性染料をそのような抽出物に加えることができる。
【0030】
上述のように、開示した方法はサンプルと実質非混和性である溶媒において選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、サンプルからの陰イオン性界面活性剤と複合体を形成することが可能な陽イオン性染料の使用を企図する。
【0031】
開示した方法に従って有用である陽イオン性染料には、サンプルと実質非混和性である溶媒において選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を生産するために、陰イオン性界面活性剤と複合体を形成することが可能な任意の正電気を帯びた(陽イオン性)染料が含まれる。
【0032】
さらなる具体化においては、陽イオン性染料はまた、塩基であり、それは、サンプルへ加えた際(ほぼ中性のpHにて)、染料によってサンプル中の有機酸の界面活性剤がその陰イオン性共役塩基の形成を引き起こされるようなものであり、そして従ってこの発明の方法を用いる検出に適したものとなる。
【0033】
適した染料の範囲は、陰イオン性界面活性剤の検出のために用いることができ、例えば、数ある中で、エチルバイオレット、メチレンブルー、アクリジンオレンジ、ブリリアントグリーンおよびマラカイトグリーンが含まれる。
【0034】
しかしながら、トリアリールメタンのクラスの陽イオン性染料が開示した方法に従った使用に特に適すると定められた。
【0035】
この発明の若干の具体化において、トリアリールメタンのクラスの陽イオン性染料は構造(I)を含む。すなわち
【化1】


式中、各々のR、RおよびRは、随意に置換されたC−Cアルキルからなる群より無関係に選ばれ、そしてmは0および1からなる群より選ばれる。
【0036】
一種の特定の具体化では、mは1であり、そして、各々のR、RおよびRはエチル基である。この構造をもつ染料は本明細書においてエチルバイオレットとして言及する。
【0037】
開示した方法の特定の具体化において、使用する陽イオン性染料は「エチルバイオレットまたはその誘導体」である。本明細書において言及するように、エチルバイオレットの「誘導体」には、構造(I)を含む他の陽イオン性染料および/またはトリアリールメタンのクラスの他の陽イオン性染料が含まれる。
【0038】
上述するように、本方法はまた、サンプルと実質非混和性の溶媒で、それに、染料−界面活性剤複合体が選択的に溶解するものの使用を企図する。
【0039】
本明細書において言及するように、用語「選択的に溶解する」は、溶媒においてサンプルにおけるよりも染料−界面活性剤複合体の溶解性の増大したレベルまたは速度に言及すると理解されるべきである。選択的な溶解性にはまた、サンプルから溶媒への、染料−界面活性剤複合体の分配も包含される。
【0040】
この開示を何らかの特定の作用機序に制限することなく、開示した方法において、サンプル中の陰イオン性界面活性剤の親水性の(陰イオン性の)頭部は、染料−界面活性剤複合体を形成するために、陽イオン性染料と複合体を形成する。この複合体を次に選択的に溶解させ、または溶媒相に分配させ、それをいくつかの検出方法(後述する)のうちの1つを使用して検出することができる。
【0041】
概して、サンプルと実質非混和性の溶媒には、酢酸エチル、クロロホルム、トルエン、ジクロロメタン等のような有機溶媒が含まれる。
【0042】
前述のように、陰イオン性界面活性剤の検出についての標準的なMBASアッセイは溶媒としてクロロホルムを使用する。クロロホルムへの曝露により肝臓および腎臓に毒性を生じさせることが知られている。さらに、クロロホルムは既知の催奇形物質および疑いのある発がん性物質である。クロロホルムの毒性を考慮すると、それは望ましい溶媒ではない。加えて、クロロホルムの使用は、MBASアッセイを、本分野における使用に特に不十分にしか適さないようにし、ユーザーおよび/または環境へのクロロホルム汚染および/または毒性のリスクが増大する。
【0043】
一方、溶媒の酢酸エチルが特に適すると定められた。酢酸エチルは、標準的なMBASアッセイにおいて用いられるようなクロロホルムと比較してより一層低い毒性および発がん性しかもたない。
【0044】
開示した方法の若干の具体化において、陽イオン性染料には、エチルバイオレットまたはその誘導体が含まれ、そして溶媒には、酢酸エチルが含まれる。染料としてのエチルバイオレットおよび溶媒としての酢酸エチルの組合せを利用する方法は、本明細書において、Ethyl Violet Ethyl Acetate Active Substances(エチルバイオレットエチルアセタート活性物質、EVEA−AS)方法またはアッセイと言及される。EVEA−AS分析の1種の特定の具体化を、例において述べる。
【0045】
EVEA−ASアッセイは、陰イオン性界面活性剤の検出および/または定量化のために、MBASアッセイのような標準的な陰イオン性界面活性剤の検出方法を超えて、増大した感度および分解能を提供することが定められた。
【0046】
本明細書に言及するように、EVEA−ASアッセイの改善された感度は、特にMBASアッセイと比較したとき、EVEA−ASアッセイのより一層低い検出限界への参照が含まれると理解されるべきである。例において述べるように、MBASアッセイを超えたEVEA−ASアッセイの改良された感度は、陰イオン性界面活性剤が、アッセイの溶媒相において色付きの染料−界面活性剤複合体の視覚的検出によって検出され、および/または分析されるときに、特に明らかである(検出方法の議論については後述を参照)。
【0047】
MBASアッセイと比較して改良された感度に加えて、EVEA−ASアッセイはまたMBASアッセイと比較して改良された分解能をもみせる。本明細書に言及するように、用語「分解能」は、アッセイにおいて生じる検出可能な染料−界面活性剤複合体の量を、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の量と比べた比率として理解されるべきである。例えば、高分解能は、サンプルにおいて所定の量の陰イオン性界面活性剤について生じる比較的大量の検出可能な染料−界面活性剤複合体に言及すると理解されるべきである。逆にいえば、低分解能は、サンプルにおいて同じ量の陰イオン性界面活性剤について生じる比較的小量の検出可能な染料−界面活性剤複合体として理解されるべきである。
【0048】
前述のものを考慮すると、アッセイの分解能は、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の既知量の増加(x軸上)を伴い、溶媒相における検出可能な染料−界面活性剤複合体の量(y軸上)に関連するアッセイのための図式的較正線の傾斜によって表すことができると認められる。この場合、アッセイの増大した分解能は較正線の増大した傾斜によって表される。
【0049】
サンプルにおける陰イオン性界面活性剤に対する高分解能アッセイの増大した反応のため、アッセイの増大した分解能がまた、異なるサンプル間でのより一層小さな陰イオン性界面活性剤の濃度の差の間を区別することも許容するであろうことは認められる。
【0050】
上記の定義に基づき、これらの例は、EVEA−ASアッセイが、MBASアッセイおよび一連の他の染料−溶媒の組合せアッセイの双方と比較して、増大した分解能を有することを論証する。
【0051】
このように、さらなる具体化において、開示した方法は、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の検出のための方法を提供し、そこでは、本方法は、LAS標準のための較正線の傾斜によって測定されるように、0.5mg/Lおよび5mg/Lの間の濃度にて、少なくとも0.32、少なくとも0.35、少なくとも0.40、少なくとも0.45または少なくとも0.5の相対分解能を含む。
【0052】
またさらなる具体化において、この発明の開示した方法は、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の検出のための方法を提供し、本方法は、SDS標準のための較正線の傾斜によって測定されるように、0.5mg/Lおよび5mg/Lの間の濃度にて、少なくとも0.35、少なくとも0.40、少なくとも0.45または少なくとも0.5の相対分解能を含む。
【0053】
またさらなる具体化において、この発明の開示した方法は、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の検出のための方法を提供し、本方法は、PFOS標準のための較正線の傾斜によって測定されるように、0.25mg/Lおよび1mg/Lの間の濃度にて、少なくとも1.8、少なくとも2.0、少なくとも2.2または少なくとも2.4の相対分解能を含む。
【0054】
さらにまた、EVEA−ASアッセイは、特に陰イオン性界面活性剤のためのフィールドベースのアッセイ用にも適する。このことは部分的には、比較的安全な溶媒である酢酸エチルを使用しているためであり、管理された実験室条件の外における、およびまた潜在的に比較的不慣れな人員によるアッセイが行われることを可能にする。さらに、本アッセイの増大した感度および分解能はまた、特にアッセイの結果の視覚的なアセスメントに良好に適し(後述を参照)、そして従って、分光光度計のような嵩張る機器を用いることなく、フィールドにおける陰イオン性界面活性剤の検出および/または定量化のために良好に適する。
【0055】
開示した方法において、サンプルと実質的に混ざらない(非混和性の)溶媒に優先的に溶解性である「検出可能な染料−界面活性剤複合体」を形成するために、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤は陽イオン性染料と複合体を形成する。
【0056】
本明細書において使用するように、用語「検出可能な染料−界面活性剤複合体」は、陽イオン性染料および陰イオン性染料界面活性剤の間で形成される任意の複合体に言及し、それはアッセイの溶媒相において後に検出可能である。染料−界面活性剤複合体を任意の適切な方法を使用して検出し、および/または定量化することができる。
【0057】
本方法の若干の具体化において、光学的検出方法を用いて染料−界面活性剤複合体を溶媒相において検出する。本明細書において言及するように、「光学的検出方法」には、1種またはそれよりも多くの波長における光の吸収、反射または屈折に基づいて染料−界面活性剤複合体を検出する任意の方法をも包含される。
【0058】
若干の具体化では、陰イオン性界面活性剤および陽イオン性染料によって形成される染料−界面活性剤複合体を色付けることができる。これらの具体化では、染料−界面活性剤複合体をアッセイの溶媒相における色変化の検出および/または定量化によって溶媒相において検出することができる。
【0059】
一種の具体化において、アッセイの溶媒相における色変化を、外観検査によって検出し、および/または定量化することができる。溶媒相中の染料−界面活性剤複合体の量を定量化するために、外観検査には1種またはそれよりも多くの視覚的基本色(参照色)を有する溶媒の色の比較を含めることができる。アッセイに従って用いるための「視覚的基本色」は、アッセイをサンプルにおける陰イオン性界面活性剤の既知の濃度と共に用いるとき、溶媒相の色を含む前もって決めた色であることができる。未知サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の定量化を、次に未知サンプルのアッセイからの溶媒相の色を最も近い基本色と適合させ、そして次にその最も近い基本色と関係する既知濃度を読み取ることによって行う。
【0060】
代わりの具体化において、光学的検出方法には、分光測定が含まれる。分光測定法はこの技術においてよく知られており、本明細書において詳細には説明しない。典型的に、分光測定は、検出する生成物のピーク吸光度と同じ、またはそれに近い波長にて行う。それとして、生成物の分光光度法による検出は、例えば、可視光、紫外線または赤外線スペクトルを含め、任意の光の適切なスペクトルにおいて起こすことができる。エチルバイオレットの場合、この染料のピーク吸光度の波長は596nmである。このように、エチルバイオレットを含有する複合体の分光光度法による検出を、典型的に約596nmの波長にて行う。未知の吸光度のピークを有する生成物の場合、これらを一連の波長にわたり生成物の吸光度スペクトルを得ることによって実験的に定めることができる。
【0061】
若干の具体化において、サンプルを陽イオン性染料および/または溶媒と接触させるのに先立ち、サンプルにおける1種またはそれよりも多くの陰イオン性界面活性剤の濃度を高めるために、本方法はさらに濃縮のステップ(工程)を含む。
【0062】
濃縮ステップは、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の濃度を高める任意の濃縮ステップも含むことができる。模範的な濃縮ステップには、例えば、固相抽出(SPE)、溶媒蒸発、溶媒昇華(例は、凍結乾燥)、調製的クロマトグラフィー(例は、分取TLC、分取HPLCまたは分取GC)等が含まれる。
【0063】
濃縮ステップは、例えば、環境サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の濃度をこの発明によるアッセイの検出範囲内にまで高めるために用いることができる。認められるように、濃縮ステップを定量アッセイにおいて用いる場合、アッセイから得られる濃縮の結果は、濃縮ステップの濃縮因子を考慮に入れなければならない。
【0064】
若干の具体化において、濃縮ステップには、固相抽出(SPE)を含むことができる。サンプルからの陰イオン性界面活性剤の濃縮のための適切なSPE方法の範囲は、当業者によってすぐに確かめられるであろう。この点について、固相抽出(Solid−Phase Extraction)に関して参照する:Principles, Techniques, and Applications(原理、技術、および応用), Simpson(シンプスン), N. K.編 (Ed.), CRC Press(CRCプレス社), 2000年。また、模範的なSPE法を開示する例3にも参照する。
【0065】
認められるように、高い界面活性剤濃度を有するサンプルについて、アッセイされるサンプルの濃度を本方法の検出範囲に入れるために希釈ステップを用いることもできる。
【0066】
第2の見地において、この発明は、サンプルにおいて陰イオン性界面活性剤を検出および/または定量化するために、キットを提供し、本キットは、すなわち
陽イオン性染料であり、サンプルと実質非混和性である溶媒に選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、陽イオン性染料は、サンプルからの陰イオン性界面活性剤と複合体を形成することが可能であるもの、および
本発明の第1の見地に従った方法を実行するための指示
を含む。
【0067】
キットにおいて用いる陽イオン性染料には、開示した方法に関して以上に記載するような陽イオン性染料を包含することができる。そのようなものとして、若干の具体化において、陽イオン性染料には、エチルバイオレットまたはその誘導体が含まれる。
【0068】
若干の具体化では、キットはさらに、開示した方法に関して以上に記載するように、サンプルと実質非混和性である溶媒を含むことができる。そのようなものとして、若干の具体化においては、溶媒には、酢酸エチルが含まれる。
【0069】
さらなる具体化において、この発明のキットはまた、サンプルを、陽イオン性染料および/または溶媒と接触させるための反応容器をさらに含むことができる。
【0070】
キットにおいて含まれる反応容器は、試験管、ねじぶたキャップチューブまたは容器、フラスコ等のような、この発明によるアッセイのための任意の適切な反応容器であることができる。
【0071】
またさらなる具体化において、キットは、1種またはそれよりも多くの参照物体を含むことができ、それぞれには、溶媒において染料−界面活性剤複合体を検出し、および/または定量化するために、1種またはそれよりも多くの基本色が含まれる。
【0072】
既知濃度の陰イオン性界面活性剤を有するサンプルについてアッセイを行うとき、1種またはそれよりも多くの基本色が溶媒相の色と対応する。一連の適切な基本色を、サンプルにおける既知の陰イオン性界面活性剤濃度の範囲に対応させ、キットにおいて含めることができる。このようにして、アッセイを陰イオン界面活性剤の未知濃度を有するサンプルについて行うとき、アッセイを行った後の溶媒相の色を1種またはそれよりも多くの基本色と比較し、未知濃度を有するサンプルにおける陰イオン性界面活性剤の濃度の評価を提供することができる。
【0073】
1種またはそれよりも多くの基本色を含む1種またはそれよりも多くの「参照物体」は、カラーチャートのような任意の適したカラー対象物を含むことができる。代わりに、1つまたはそれよりも多くの基本色は、反応容器上に印刷され、またはキットの包装中に組み込まれるような、キットの他の構成要素の1つまたはそれよりも多くに組み込むことができる。
【0074】
上述するように、この発明のキットは、任意の適した陰イオン性界面活性剤を検出するために用いることができる。しかしながら、若干の特定の具体化において、この発明のキットは水性膜形成泡および/またはフッ素化陰イオン性界面活性剤の陰イオン性界面活性剤成分を検出するのに適する。
【0075】
本発明を、以下の非制限的例によってさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】MBASアッセイとEVEA−ASアッセイとの比較を、較正標準としてLASを使用して示す。パネルAは、MBASアッセイを、サンプルにおいてLASの濃度を変動させて用いた後の溶媒相での吸光度を示す。パネルBは、EVEA−ASアッセイを、サンプルにおいてLASの濃度を変動させて用いた後の溶媒相の吸光度を示す。
【図2】MBASアッセイとEVEA−ASアッセイとの比較を、較正標準としてSDSを使用して示す。パネルAは、MBASアッセイを、サンプルにおいてSDSの濃度を変動させて用いた後の溶媒相の吸光度を示す。パネルBは、EVEA−ASアッセイを、サンプルにおいてSDSの濃度を変動させて用いた後の溶媒相の吸光度を示す。
【図3】MBASアッセイとEVEA−ASアッセイとの比較を、較正標準としてPFOSを使用して示す。パネルAは、MBASアッセイを、サンプルにおいてPFOSの濃度を変動させて用いた後の溶媒相の吸光度を示す。パネルBは、EVEA−ASアッセイを、サンプルにおいてPFOSの濃度を変動させて用いた後の溶媒相の吸光度を示す。
【図4A】図4は、様々な染料/溶媒の組合せを使用した陰イオン性界面活性剤の検出方法の比較を示す。いずれの場合においても、検出される陰イオン性界面活性剤は様々な濃度のSDSであった。パネルAは、メチレンブルー/ジクロロメタンに基づく方法についての結果を示す。
【図4B】パネルBは、アクリジンオレンジ/トルエンに基づく方法についての結果を示す。
【図4C】パネルCは、ブリリアントグリーン/トルエンに基づく方法についての結果を示す。
【図4D】パネルDは、マラカイトグリーン/酢酸エチルに基づく方法についての結果を示す。
【図5】0.5グラムのシリカSPEカラム上における濃縮後、LAS標準の増大する容量(mL)の吸光度を示す。
【実施例】
【0077】
例1
エチルバイオレットエチルアセタート活性物質(EVEA−AS)アッセイ
【0078】
この発明の1種の具体化による陰イオン性界面活性剤の検出のための方法を提示する。この方法は染料エチルバイオレットと溶媒として酢酸エチルとの組合せを用い、そしてこうした前述したようなEVEA−AS方法の具体化である。
【0079】
以下に述べるように、標準的なMBAS方法と比較するとき、この方法は陰イオン性界面活性剤のより一層低い濃度に対してより一層高い感度があり、有毒な溶媒であるクロロホルムへの曝露を伴わずに本分野において用いることができる。
材料および方法
【0080】
本方法において用いるためのすべてのガラス製品を、アセトンで3回およびメタノールで3回により洗浄した。ガラス製品は洗剤によって洗浄しなかった。
【0081】
200mLのミリQ(Milli−Q)水において0.0064gのエチルバイオレットを含むエチルバイオレット溶液(1Lにつき32mg)を調製した。
【0082】
本アッセイを実行するために、1mLのエチルバイオレット溶液(上述)を8mLの水サンプルに加えた。その後、3mLの酢酸エチルを水サンプルに加えた。次に、安定にし、そして二つの相を形成されるのを許す前に、サンプル−染料−溶媒混合物を激しく振動させた。
【0083】
次に、着色した染料−界面活性剤複合体の存在を酢酸エチル溶媒相において算定した。非酸性化した検量線(LAS)または非酸性の標準的な呈色チャート(カラーレーション・チャート)を、サンプル中の陰イオン性界面活性剤濃度を評価するために用いた。
【0084】
代わりの具体化においては、溶媒相において着色した染料−界面活性剤複合体の存在を検出するために分光光度計を用いた。この具体化において、溶媒相の吸光度は595nmにて測定された。
データおよび結果
【0085】
図1、2および3は、MBASアッセイとEVEA−ASアッセイとの比較を、陰イオン性界面活性剤の3つの較正標準を用いて示す。
【0086】
図1、2および3に示すように、各々の陰イオン性界面活性剤標準を用いたEVEA−ASアッセイのための較正線のより一層大きな傾斜は、EVEA−AS法がMBASアッセイよりも高い分解能をもたらすことを指し示した。すなわち、EVEA−AS法は、吸光度、そしてその後、相当する各々の標準の濃度について、溶媒相における色変化において、MBASアッセイよりも高い増大をもたらす。
【0087】
595nmでの分光光度法によるプレートリーダーを使用するEVEA−ASの検出限界は、0.02mg/LのLASであり、それに対して、652nmでのMBASでは0.025mg/LのLASである。
【0088】
検出の視覚的限界、すなわち、EVEA−AS方法の、色の参照を用いる視覚的比較による染料−界面活性剤複合体の検出および/または定量化は、0.075mg/LのLASであり、それに対し、MBASアッセイでは0.175mg/LのLASである。
【0089】
EVEA−AS抽出方法の分光光度計に基づく検出方法について示唆される較正範囲は、0.02mg/Lから3.25mg/Lまでである。MBASアッセイの検出限界は0.025mg/Lにて発表されている。
【0090】
例2
EVEA−ASアッセイの染料/溶媒の組合せを用いる比較
【0091】
図4は、陰イオン性界面活性剤の検出のためのアッセイにおいて様々な代わりの染料/溶媒の組合せを使用して得られる結果の比較を示す。これらのアッセイにおいて用いた構成要素および結果を以下の表2に提示する。
【0092】
比較アッセイのための各々の染料を、アクリジンオレンジ以外、同じ様に、そして例1におけるエチルバイオレットについて記載したのと同じ濃度で調製した。アクリジンオレンジを、ミリQ水における0.005Mの濃度に調製した。
【0093】
各々の場合において、本アッセイは、1mLの適正な染料溶液を、既知濃度の陰イオン性界面活性剤SDS含有の8mLの水サンプルに加えることによって行った。
【0094】
その後、3mLの適正な溶媒を水サンプルに加えた。サンプル−染料−溶媒混合物を次に、安定化し、そして二つの相が形成されるのを許す前に、激しく振動させた。
【0095】
溶媒相における着色した染料−界面活性剤複合体の形成を、次に分光測定を用いて決定した。
【0096】
【表2】

SDSを用いた較正線の傾斜により表される相対分解能
例1から採取されたデータ
【0097】
加えて、EVEA−ASアッセイは、試験された各々の他の染料/溶媒の組合せよりも陰イオン性界面活性剤SDSについての分解能を増大させた(較正線の傾斜によって測定されるように)。
【0098】
例3
固相抽出
【0099】
若干の環境サンプルのような、若干のサンプルについて、陰イオン性界面活性剤を検出するのに先立ち、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤を濃縮することが望ましいことがある。例えば、原サンプルにおける界面活性剤の濃度が低く、そしてアッセイの検出限界より潜在的に低いとき、サンプルにおいて陰イオン性界面活性剤を初めに濃縮するのが望ましい場合がある。
【0100】
サンプルの濃縮が必要なとき、陰イオン性界面活性剤を、固相抽出(SPE)を用いてサンプルにおいて濃縮することができる。開示した方法とともに用いるのに適する模範的なSPEのプロトコルを以下に説明する。
【0101】
水サンプルを、あらゆる8mLの水サンプルに1滴の1M塩酸を、またはあらゆる8mLの水サンプルに3−4滴の1M硝酸(HNO)を加えることにより、酸性化した。
【0102】
0.5グラムのシリカSPE媒体を、200℃において4−6時間シリカを活性化した後に使用した。SPE媒体を次に〜(約)5mLのアセトンと共に充填した。充填後、次にSPE媒体を〜5mLのMQ水を用いて2−3回すすいだ。
【0103】
すすいだ後に、サンプルを〜5−6mL/分の速度において最小限の真空の下で媒体上に負荷(ロード)した。サンプルにおける陰イオン性界面活性剤はSPE媒体に結合した。
【0104】
SPE媒体に結合した陰イオン性界面活性剤を、次に〜1−2mL/分の速度で、SPE媒体から2mLのアセトンにおいて溶出した。
【0105】
SPE媒体からの溶出物(陰イオン性界面活性剤を含む)を、次にEVEA−ASアッセイのために上述のように8mLのMQ水、3mLの酢酸エチルおよび1mLのエチルバイオレット溶液と混合した。次に、2mLのアセトン呈色チャートを用いた較正曲線(検量線)(LAS)を、サンプルにおける陰イオン性界面活性剤の濃度を評価するために用いた(サンプルの濃度を考慮する)。
【0106】
平均して、MBASアッセイにおいて使用する中間レベルのLAS標準(ほぼ0.375mg/L)の回収率は、サンプルを濃縮するためのSPE方法において100%であったが、以下に示す表3を参照。
【0107】
【表3】

【0108】
0.5グラムの活性化したシリカSPEの使用により、SDSおよびPFOSの双方についても>85%の回収率が実現された。
【0109】
この方法を、興味のある化合物の損失を伴わずに、サンプルのより一層高い容量についての試験を検証するために、SPEカートリッジ(図5)上のLASの標準の容量を増やして試験した。
【0110】
これらの結果は、SPEが、EVEA−AS方法の線形範囲内にまで、希薄サンプルにおける陰イオン性界面活性剤を濃縮するために使用できることを指し示す。
【0111】
本明細書において説明する発明が、特に記載しているもの以外の変形および修飾を受けやすいことは、この技術における熟練者には認められることである。本発明が、すべてのこのような変形および修飾を含むことは理解されるべきである。本発明はまた、この明細書において個々にまたは集合的に述べ、または指し示すすべてのステップ、特長、組成物および化合物、および任意の2つまたはそれよりも多くのステップまたは特長の任意の、およびすべての組合せをも含む。
【0112】
また、本明細書において用いるように、単数形「a(1つ)」、「an」および「the(その)」は、文脈上既に他に指定しない限り、複数の形態も含むことに注目されなければならない。このように、例えば、「陰イオン性界面活性剤」の言及は、ある種の表面活性剤ならびに2つまたはそれよりも多くの界面活性剤の種類、その他を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルにおいて陰イオン性界面活性剤を検出し、および/または定量化するための方法であって、
陽イオン性染料を提供することであり、サンプルと実質非混和性である溶媒に選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、陽イオン性染料はサンプル由来の陰イオン性界面活性剤と複合体を形成することが可能であること、
サンプルと実質非混和性である溶媒を提供すること、
溶媒において選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、サンプルまたは抽出物における陰イオン性界面活性剤が陽イオン性染料と複合体を形成するように、陽イオン性染料を、サンプルおよび溶媒または溶媒におけるサンプルの抽出物のいずれかと接触させること、
溶媒において染料−界面活性剤複合体を検出し、および/または定量化することであり、溶媒における染料−界面活性剤複合体の存在はサンプルにおける陰イオン性界面活性剤の存在を指し示すこと
を含む、方法。
【請求項2】
陽イオン性染料には、エチルバイオレットまたはその誘導体が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒には、酢酸エチルが含まれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
陽イオン性染料には、エチルバイオレットまたはその誘導体が含まれ、および溶媒には、酢酸エチルが含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
サンプルは水サンプルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
サンプルは土壌サンプルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
サンプルを陽イオン性染料および/または溶媒と接触させるのに先立ち、サンプルにおける1種またはそれよりも多くの陰イオン性界面活性剤の濃度を高めるために、方法はさらに濃縮ステップを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
濃縮ステップには、固相抽出が含まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
染料−界面活性剤複合体は、溶媒において光学的検出方法を用いて検出され、および/または定量化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
光学的検出方法には、溶媒の外観検査が含まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
外観検査には、溶媒の色と1種またはそれよりも多くの視覚的基本色との比較が含まれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
光学的検出方法には、分光測定が含まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
陰イオン性界面活性剤には、水性膜形成泡の陰イオン性界面活性剤成分が含まれる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
陰イオン性界面活性剤には、フッ素化陰イオン性界面活性剤が含まれる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
サンプルにおいて陰イオン性界面活性剤を検出し、および/または定量化するためのキットであって、
陽イオン性染料であり、サンプルと実質非混和性である溶媒に選択的に溶解する検出可能な染料−界面活性剤複合体を形成するために、陽イオン性染料はサンプルからの陰イオン性界面活性剤と複合体を形成することが可能であるもの、および
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法を実行するための指示
を含む、キット。
【請求項16】
陽イオン性染料には、エチルバイオレットまたはその誘導体が含まれる、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
キットはさらに、サンプルと実質非混和性である溶媒を含む、請求項15または16に記載のキット。
【請求項18】
溶媒には、酢酸エチルが含まれる、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
キットはさらに、サンプルを陽イオン性染料および/または溶媒と接触させるための反応容器を含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載のキット。
【請求項20】
キットはさらに1種またはそれよりも多くの参照物体を含み、各々は、溶媒において染料−界面活性剤複合体を検出し、および/または定量化するために、1種またはそれよりも多くの基本色を含む、請求項15〜19のいずれか1項に記載のキット。
【請求項21】
キットは水性膜形成泡の陰イオン性界面活性剤成分を検出するためのものである、請求項15〜20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
キットはフッ素化陰イオン性界面活性剤を検出するためのものである、請求項15〜21のいずれか1項に記載のキット。
【請求項23】
図および/または例のいずれかに関して、本明細書において実質説明されたような、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
図および/または例のいずれかに関して、本明細書において実質説明されたような、請求項15に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−540974(P2010−540974A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528241(P2010−528241)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001494
【国際公開番号】WO2009/046491
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510098238)シーアールシー ケア プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】