説明

陶器切削工具及び和風便器の切断工法

【課題】和風便器のリム内周面に沿ってスムーズに移動させて和風便器切断作業を行うことができる陶器切削工具及び和風便器の切断工法を提供する。
【解決手段】陶器切削工具10は、モータを内蔵した回転駆動装置本体11と、該本体11の前端面から突出する回転軸12と、該回転軸12の先端に取り付けられた円盤状の回転刃13と、回転軸12の基端側の外周に取り付けられたベアリング14と、回転駆動装置本体11の前端面に取り付けられた透明板15とからなる。透明板15をリム3dに架け渡し、ベアリング14をリム3dの内周面に押し当てたまま回転駆動装置本体11をリム3dに沿って移動させ、和風便器3の上部を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶器切削工具と、それを用いた和風便器の切断工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや公団アパート等の和風トイレルームにあっては、コンクリート製床スラブに和風便器設置用の開口が設けられ、この開口に上方から嵌め込むようにして和風便器が設置されている。和風便器の排水口には、スラブ下を引き回された排便管が接続されている。
【0003】
このような和風トイレルームを洋風便器が設置された洋風トイレルームに改修する場合、和風便器をすべてハツリ落し、排便管を立て直し、スラブ開口に補強筋を配筋してコンクリートで埋めて床を構築し、その後洋風便器を設置することが行われている。しかしながら、この工法では、階下へ和風便器の解体ガラが落下したり排便管の移動などのために階下からの工事も必要となり、工期が長くなり、コストも嵩むものとなっていた。
【0004】
階上からだけの和洋改修が可能な工法として、特許第3183295号公報及び特開2005−256467号公報には、トイレルームの床に設置された和風便器の上部を切断除去し、該和風便器内を自硬性充填物で埋め、その後、その上に洋風便器を設置する工法が記載されている。
【0005】
特開2003−89111号公報には、既設の和風便器の上縁を所定深さにわたって切断する工具として、回転駆動装置の回転軸に回転刃を取り付けたものが記載されている。
【0006】
この回転軸を和風便器のリム内周面に当てながら回転駆動装置をリムに沿って移動させ、リム下70mmのレベルで和風便器を切断する。
【特許文献1】特許第3183295号公報
【特許文献2】特開2005−256467号公報
【特許文献3】特開2003−89111号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特開2003−89111号では、回転軸がリム内周面に直に当るため、回転駆動装置をリム内周面に沿ってスムーズに移動させにくい。
【0008】
また、上記特開2003−89111号では、回転駆動装置本体を一定レベルに維持するために、和風便器を跨ぐようにフレームを設けているが、設備が大掛りとなる。
【0009】
本発明は、和風便器のリム内周面に沿ってスムーズに移動させて和風便器切断作業を行うことができる陶器切削工具及び和風便器の切断工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の陶器切削工具は、回転駆動装置本体及び該回転駆動装置本体の前端側から突出した回転軸を有する回転駆動装置と、該回転軸に取り付けられた回転刃とを有する陶器切削工具において、該回転刃と回転駆動装置本体との間の回転軸の外周に、該回転軸と同軸に且つ該回転軸に対し回動自在な、該回転刃よりも小径の環状体を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の陶器切削工具は、請求項1において、前記環状体は、内周環、外周環及びこれらの間に介在された転動体よりなるベアリングの該外周環であり、該内周環に前記回転軸が差し込まれ、該内周環が該回転軸に固定されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の陶器切削工具は、請求項1又は2において、前記回転駆動装置本体の前端側に、板面が前記回転軸と直交方向となっている透明板が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4の和風便器の切断工法は、請求項1ないし3のいずれか1項の陶器切削工具を用いて和風便器の上縁を切断する工法であって、該陶器切削工具の前記環状体を該和風便器のリムの内周面に当接させながら該陶器切削工具を移動させ、前記回転刃によって和風便器の上縁を切断することを特徴とするものである。
【0014】
請求項5の和風便器の切断工法は、請求項4において、前記陶器切削工具は請求項3に記載の陶器切削工具であり、前記透明板を前記和風便器のリム上面に架け渡し、該リム上面に沿ってスライドさせて切断を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の陶器切削工具及びそれを用いた和風便器の切断工法にあっては、陶器切削工具の回転軸に設けられた回転自在な環状体をリム内周面に当てて移動させ、リム上部を切断する。この環状体が回転軸に対し回転自在となっているため、回転する回転軸がリム内周面に直当りせず、回転駆動装置をスムーズに移動させることができる。
【0016】
この環状体をベアリングの外周環にて構成した場合には、回転駆動装置を極めてスムーズに移動させることができる。
【0017】
回転駆動装置本体の前端側に透明板を設けておいた場合には、この透明板をリム上面に当て、透明板をリム上面に沿ってスライドさせながら切断作業を行う。これにより、正確にリム下の同一深さレベルを切断することができる。なお、透明板を透してリム付近の様子を目視確認しながら作業を進めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図及び第2図は実施の形態に係る陶器切削工具及び和風便器の切断工法を示す側面図と斜視図、第3図はトイレルームの床構成図、第4図は和風便器の上部を切断した後のトイレルーム床面の断面図である。
【0019】
第3図に示すように、トイレルームの床スラブ1に和風便器設置用開口2が設けられ、この開口2に上方から嵌め込まれるようにして陶器製の和風便器3が設置されている。この実施の形態では、該床スラブ1はコンクリート製の床スラブ本体1aと、該床スラブ本体1aの上面に形成されたモルタル等よりなる表層(仕上げ層)1bとからなる。この床スラブ1の下側空間に排便管4が配設され、該開口2内においてこの排便管4と和風便器3の排水口3aとが接続されている。3bは排水トラップ、3cは上方突出部(金隠し部)を示す。
【0020】
第1,2図の通り、この和風便器を切断するための陶器切削工具10は、モータを内蔵した回転駆動装置本体11と、該本体11の前端面から突出する回転軸12と、該回転軸12の先端に取り付けられた円盤状の回転刃13と、回転軸12の基端側の外周に取り付けられたベアリング14と、回転駆動装置本体11の前端面に取り付けられた透明板15とからなる。この透明板15は、和風便器2の横幅よりも大きいものであり、アクリル等の透明プラスチック板よりなる。この透明板15は、その板面が回転軸12と直交方向となっている。
【0021】
ベアリング14は、内周環、外周環及び該内周環と外周環との間に介在されたボールよりなるボールベアリングが好適であるが、ボールの代りにローラを配置したローラベアリングなどであってもよい。
【0022】
このベアリング14の内周環に回転軸12が差し込まれ、内周環が該回転軸に固定される。外周環は回転軸12に対し回転自在となっている。
【0023】
このように構成された陶器切削工具10を用いて和風便器3の上部の切断を行うには、まず、和風便器3の上方突出部3cをリム3dの上面と面一となるようにダイヤモンドカッター等により切断除去しておく。次いで、透明板15を和風便器3のリム3dの上面に架け渡す。そして、回転駆動装置本体11のモータを駆動し、回転刃13を和風便器3に食い込ませる。このとき、深く回転刃を食い込ませてもリムの内周面にベアリングがあたり、陶器切削工具の回転軸が直にあたらず、スムーズに安全に作業ができる。さらに、ベアリング、回転刃の大きさを変えることで、適切な切断深さを調節しておくことができる。すなわち、ベアリングがリムの内周面にあたるまで回転刃を食い込ませ、50mm〜60mm和風便器リム部分を切断することができる。ベアリング14をリム3dの内周面に押し当てたまま回転駆動装置本体11をリム3dに沿って移動させ、和風便器3の上部を切断する。これにより、第4図に示す通り、和風便器3の上部が床から一定深さに沿って切断除去される。
【0024】
この実施の形態では、ベアリング14をリム3dの内周面に当てるため、回転駆動装置10をスムーズに移動させることができる。また、透明板15を設けているので、和風便器3を正確に一定深さのレベルで切断することができる。また、透明板15を透して透明板15の下側の作業状況を見ることができる。また、粉塵の飛散を防止できると共に、安全に作業できる。
【0025】
この透明板15は、回転駆動装置本体11に取り付けられているだけであり、構造が簡易である。
【0026】
本発明では、透明板の下面に既設床の仕上げ層にあたるようにコロを設け、容易に陶器切削工具を水平移動できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態に係る陶器切削工具の側面図である。
【図2】実施の形態に係る陶器切削工具の斜視図である。
【図3】トイレルーム床面の構成図である。
【図4】和風便器上部の切断後の床断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 陶器切削工具
11 回転駆動装置本体
12 回転軸
13 回転刃
14 ベアリング
15 透明板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動装置本体及び該回転駆動装置本体の前端側から突出した回転軸を有する回転駆動装置と、該回転軸に取り付けられた回転刃とを有する陶器切削工具において、
該回転刃と回転駆動装置本体との間の回転軸の外周に、該回転軸と同軸に且つ該回転軸に対し回動自在な、該回転刃よりも小径の環状体を設けたことを特徴とする陶器切削工具。
【請求項2】
請求項1において、前記環状体は、内周環、外周環及びこれらの間に介在された転動体よりなるベアリングの該外周環であり、該内周環に前記回転軸が差し込まれ、該内周環が該回転軸に固定されていることを特徴とする陶器切削工具。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記回転駆動装置本体の前端側に、板面が前記回転軸と直交方向となっている透明板が取り付けられていることを特徴とする陶器切削工具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項の陶器切削工具を用いて和風便器の上縁を切断する工法であって、
該陶器切削工具の前記環状体を該和風便器のリムの内周面に当接させながら該陶器切削工具を移動させ、前記回転刃によって和風便器の上縁を切断することを特徴とする和風便器の切断工法。
【請求項5】
請求項4において、前記陶器切削工具は請求項3に記載の陶器切削工具であり、前記透明板を前記和風便器のリム上面に架け渡し、該リム上面に沿ってスライドさせて切断を行うことを特徴とする和風便器の切断工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−144784(P2007−144784A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342280(P2005−342280)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】