説明

陶芸窯における温度制御装置の放熱構造

【課題】 温度制御装置に対する焼成炉からの熱伝達を低減し、温度制御装置の信頼性や寿命を良好に維持できる、陶芸窯における温度制御装置の放熱構造を提供する。
【解決手段】 温度制御装置4が、横扉3に構成した収納室18内に収納されて、制御装置取り付け金具4bを介して横扉3に固定され、収納室18の下壁に開口孔36が備えられて開口孔36の近傍に放熱フィン35が備えられ、グラファイトシート50が制御装置取り付け金具4bと横扉3の金属枠17との間に挟着されて、グラファイトシート50の一端が放熱フィン35に貼り付けられている。また、温度制御装置4の表面が、グラファイトシート52によって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶芸作品を焼成する陶芸窯において、焼成炉内の温度を制御する温度制御装置の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陶芸作品を収納して焼成する焼成炉と、焼成炉の内壁に沿って配設され、通電によって発熱し焼成炉内の温度を上昇させる電気ヒータと、焼成炉の開口部を開閉する横扉と、焼成炉内の温度を制御する温度制御装置とを備え、焼成炉の外面に温度制御装置を配設した陶芸窯が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、前述のように温度制御装置を焼成炉の外面に配設する構成によれば、陶芸窯全体の容積及び陶芸窯を設置するためのスペースが大きくなるという問題がある。
【0004】
そこで、温度制御装置を横扉内に埋設し、その操作部のみを横扉の表面から露出するように構成した陶芸窯がある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−185444号公報
【特許文献2】特開2001−311590号公報
【特許文献3】特開2005−60186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3のように温度制御装置を横扉に埋設した構成によれば、焼成炉の外面に温度制御装置を配設するよりも、焼成炉内の熱が温度制御装置に伝達し易くなるので、温度制御装置への熱伝達を低減すべく、さらに改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、温度制御装置に対する焼成炉からの熱伝達を低減し、温度制御装置の信頼性や寿命を良好に維持できる、陶芸窯における温度制御装置の放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、陶芸作品を出し入れする開口部を備えた焼成炉と、前記焼成炉の開口部を開閉する扉と、前記焼成炉内の温度を制御する温度制御装置と、を備えた陶芸窯において、前記扉には、前記開口部側に配設された断熱部材と、前記断熱部材を介して前記焼成炉とは反対側に配設され、前記温度制御装置を収納する収納室と、が備えられ、前記温度制御装置が前記収納室内に収納されて前記扉に固定され、前記収納室の下壁に開口部が備えられて、該開口部の近傍に放熱フィンが備えられ、グラファイトシートが前記温度制御装置に貼り付けられて、該グラファイトシートの一端が前記放熱フィンに貼り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造によれば、温度制御装置が収納室内に収納されて扉に固定され、収納室の下壁に開口部が備えられて開口部の近傍に放熱フィンが備えられ、グラファイトシートが温度制御装置に貼り付けられて、このグラファイトシートの一端が放熱フィンに貼り付けられているので、焼成炉から温度制御装置に伝達される熱を、グラファイトシートを介して放熱フィンに導いて放熱でき、温度制御装置の温度上昇を低減でき、延いては、温度制御装置の信頼性や寿命を良好に維持できる。また、この際、グラファイトシートの表面積の分だけ温度制御装置の放熱面積が増加し、放熱効果を向上できる。
【0009】
次に、請求項1に記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、請求項2に記載の発明のように、前記グラファイトシートが、前記扉の外装部材に沿って貼り付けられていることにより、焼成炉から温度制御装置に伝達した熱を扉の外装部材に伝達して速やかに放熱できる。
【0010】
次に、請求項1又は請求項2に記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、請求項3に記載の発明のように、前記グラファイトシートの表面方向の熱伝導率が、前記扉の外装部材よりも高いことにより、焼成炉から温度制御装置に伝達した熱を速やかに放熱フィンに導くことができ、且つ、扉表面の温度上昇を低減できる。
【0011】
次に、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造において、前記放熱フィンに代えて、前記開口部には外部の空気を前記収納室に流入する換気扇が取り付けられ、前記グラファイトシートの一端が、該換気扇の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造によれば、収納室の開口部には外部の空気を収納室に流入する換気扇が取り付けられ、グラファイトシートの一端が、換気扇の近傍に配置されているので、換気扇によって収納室に流入される空気中にグラファイトシートを晒し、焼成炉から温度制御装置に伝達した熱を速やかに放熱できる。
【0013】
次に、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造において、前記温度制御装置が、少なくとも前記焼成炉側に位置する外周が前記グラファイトシートによって覆われていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造によれば、温度制御装置が、少なくとも前記焼成炉側に位置する外周が前記グラファイトシートに覆われているので、焼成炉から前記温度制御装置の外周に向かって伝達される熱を、グラファイトシートを介して、遮蔽して受熱し、放熱できる。
【0015】
また、請求項1乃至請求項5の何れか記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、請求項6の発明のように、グラファイトシートが、表面方向に高配向性の結晶構造を有するように、高分子フィルムを焼成して形成されたものであって、表面方向の熱伝導率が厚み方向の熱伝導率よりも高いことにより、焼成炉から温度制御装置に伝達された熱を、グラファイトシートに沿って速やかに放熱できる。また、このグラファイトシートが、厚み方向には表面方向に比べて熱伝導率が低いので、温度制御装置の表面をグラファイトシートで覆うことで、焼成炉から収納室内の空気を介して温度制御装置に伝達される熱を低減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、温度制御装置が扉に設けた収納室内に収納されて扉に固定され、収納室の下壁に開口部が備えられて開口部の近傍に放熱フィンが備えられ、グラファイトシートが制御装置に貼り付けられて、このグラファイトシートの一端が放熱フィンに貼り付けられているので、温度制御装置に対する焼成炉からの熱伝達を低減し、温度制御装置の信頼性や寿命を良好に維持できる。また、本発明の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、グラファイトシートの表面積の分だけ温度制御装置の放熱面積が増加し放熱効果を向上できる。
【0017】
また、本発明の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、グラファイトシートが、前記扉の外装部材に沿って貼り付けられているので、焼成炉から温度制御装置に伝達した熱を扉の外装部材に伝達して放熱できる。
【0018】
また、本発明の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、グラファイトシートの表面方向の熱伝導率が、前記扉の外装部材よりも高いことにより、焼成炉から温度制御装置に伝達した熱を速やかに放熱フィンに導くことができ、且つ、扉表面の温度上昇を低減できる。
【0019】
また、本発明の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、放熱フィンに代えて、収納室の開口部には外部の空気を収納室に流入する換気扇が取り付けられ、グラファイトシートの一端が、換気扇の近傍に配置されていることにより、換気扇によって収納室に流入される空気中にグラファイトシートを晒し、焼成炉から温度制御装置に伝達した熱を速やかに放熱できる。
【0020】
また、本発明の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造は、温度制御装置が、少なくとも前記焼成炉側に位置する外周が前記グラファイトシートに覆われていることにより、焼成炉から温度制御装置の外周に向かって伝達される熱を、グラファイトシートを介して、遮蔽して受熱し、放熱できる。また、このグラファイトシートは、厚み方向には表面方向に比べて熱伝導率が低いので、温度制御装置の表面をグラファイトシートで覆うことで、焼成炉から収納室内の空気を介して温度制御装置に伝達される熱を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の陶芸用電気窯の一実施例を図面にもとづいて説明する。図1は、本発明の一実施例の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造が適用された陶芸窯の外観図であって、(a)が平面図、(b)が正面図、図2は、同実施例の陶芸窯の構造を表す断面図であって、(a)が図1中のZ−Z断面図、(b)が図1中のD−D断面図、図3は、同実施例の陶芸窯の横扉の構成を表す外観図であって、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が下面図、図4は、同実施例の横扉の構成を表す断面図であって、(a)が図3中のZ−Z断面図、(b)が図3中のY−Y断面図、図5は、同実施例の変形例における横扉の構成を表す断面図であって、図5の(a)(b)が図3中の(a)(b)に対応する。
【0022】
図1に表したように、陶芸用電気窯1は、横側を開口し箱状に形成された焼成炉2、焼成炉2の側部に開閉自在に装着された横扉3、横扉3内に収納され焼成炉2内の温度を制御する温度制御装置4、焼成炉2を床面に支持する脚体5、ガス抜き孔9等を備えている。
【0023】
また、図2に表したように、陶芸用電気窯1は、焼成炉2内に温度制御装置4を介して通電され、発熱して焼成炉2内を加熱する電気ヒータ6を備えている。なお、電気ヒータ6は、アルムニウムとクロムの合金線(パイロマックス)を螺旋状に巻いて形成されている。
【0024】
次に、図2に表したように、焼成炉2は、複数の耐熱煉瓦21が積層されてその内方に陶芸作品を収納して焼成する焼成室Qを備え、耐熱煉瓦21の外周が、セラミックス製の耐熱ボード22、23により二重に覆われている。
【0025】
また、焼成炉2は、その外周に沿って格子状に組まれた支柱24a〜24d、25a〜25d、支持板26a〜26d等によって支持され、耐熱ボード22、23が、間隙Sを介して、外装部材27、28、29、30、31により覆われている。
【0026】
詳しくは、焼成炉2は、底壁が支柱24a〜24dを介して外装部材27に覆われ、左側壁が支柱25a、25bを介して外装部材28に覆われ、右側壁が支柱25c、25dを介して外装部材29に覆われ、後壁が支柱25b、25dを介して外装部材30に覆われ、上壁が支柱25a〜25dを介して外装部材31に覆われ、これらの外装部材との間に間隙Sが構成されている。
【0027】
また、図1に表したように、外装部材28、29、31には、複数の通気孔28g、29g、31a、31bが形成されている。また右側壁側における間隙内には温度制御装置4を作動させるための回路部品32が収納され、回路部品32が、ケーブル33を介して、温度制御装置4に接続されている。
【0028】
次に、図1に表したように、横扉3は、一端が、焼成炉2に固定された上下二つの軸受け10、11に、支軸7を介して図中R方向に揺動自在に係合し、他端側には、オペレータが扉3を開閉する際に把持する取手12が備えられている。また、横扉3は、焼成炉2の開口部を閉鎖する際に、ハンドル13、14によって、そのロック及び解除が成されるように構成されている。詳しくは、横扉3は、ハンドル13、14が支軸15に揺動自在に係合しており、オペレータが、開口部の閉鎖位置において、ハンドル13、14を前方向に揺動させ、横扉3から突出した係止片20にハンドル13、14を係合させることによりロックされ、一方、ハンドル13、14を後方向に揺動させることにより、ロックが解除されるように構成されている。
【0029】
また、横扉3は、図4に表したように、塗装処理された圧延鋼板からなる金属枠17内に、取り付け金具41、42、43、44を介して耐熱ボード37、38が積層され、且つ、耐熱ボード37を介して焼成炉2側に、耐熱煉瓦40が積層されている。
【0030】
また、横扉3は、耐熱煉瓦40及び耐熱ボード37(所謂、本発明における断熱部材である。)を介して前方側(焼成炉2の反対側)において、耐熱ボード37と金属枠17との間に温度制御装置4を収納する収納室18を備え、且つ、収納室18に隣接するように耐熱ボード38と金属枠17との間に空室19を備え、収納室18内に温度制御装置4が取り付けられている。
【0031】
金属枠17は、耐熱煉瓦40及び耐熱ボード37、38の外周を覆うように側壁部を備えると共に、焼成炉2側に位置する後方及びその反対側に位置する前方が開口し、前方の開口を遮蔽する蓋部17bを備えている。
【0032】
収納室18は、温度制御装置4が収納された際に、温度制御装置4の外周に空気が流れる間隙ができるように、温度制御装置4の外形より大きく形成され、且つ、取り付け金具42は、横扉3を左右方向に仕切り、扉3の下端から上端に延出している。
【0033】
次に、図3に表したように、温度制御装置4は、回路基板が内蔵されて表面には操作パネル4aが設けられている。操作パネル4aには、各工程の温度を設定するための温度設定キー、各工程の時間設定キー、スタート/ストップキー等が設けられている。
【0034】
また、温度制御装置4は、金属枠17内において、制御装置取り付け金具(図1中の符号4b)を介して蓋部17bに固定され、操作パネル4aが、蓋部17bの係合孔17dに係合して蓋部17bから外方に突出している。
【0035】
また、金属枠17は、オペレータが必要に応じて温度制御装置4を着脱できるように、収納室(図4中の符号18)及び空室(図4中の符号19)を遮蔽する蓋部17bが、ネジ17cを介して着脱自在に取り付けられている。
【0036】
次に、陶芸用電気窯1は、温度制御装置4が横扉内で空気を介して焼成炉からの伝達された熱を効率よく放熱するために、下記の放熱構造が構成されている。
【0037】
金属枠17は、取り付け金具42を介して収納室18と空室19とに仕切られ、収納室18の上方、空室19の上方及び下方に、複数の貫通孔17aを備え、収納室18の下方に、開口孔(所謂、本発明における開口部である。)36を備えている。
【0038】
また、開口孔36の近傍に位置する金属枠17内面には放熱フィン35が固定され、金属枠17と制御装置取り付け金具4b及び放熱フィン35との間に帯状のグラファイトシート50が挟着され、且つ、温度制御装置4の焼成炉2側に位置する外周がグラファイトシート52に覆われている。グラファイトシート50、52は、金属枠17側に位置する表面にアクリル系重合剤を主成分とする粘着剤が積層されており、この粘着剤を介して、金属枠17(所謂、本発明における扉の外装部材である。)及び温度制御装置4に貼り付けられている。また、このグラファイトシート50、52は、金属枠17に沿って放熱フィン35まで延出し、放熱フィン35と金属枠17との間に挟着されている。
【0039】
グラファイトシート50は、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムを不活性ガス中で焼成してグラファイト化し、熱伝導性を発現させたものであって、圧延処理をされて均一な厚みを有する(本実施例では、厚みが略0.2mmである)。また、金属枠17及び制御装置取り付け金具4bがアルミニウム合金で形成され、本実施例のグラファイトシート50は、表面方向における熱伝導率が、金属枠17及び制御装置取り付け金具4bの略3倍である。
【0040】
以下に、前記の構成を有する実施例の、陶芸窯1における温度制御装置4の放熱構造の作用効果を記載する。
【0041】
本実施例の陶芸窯1における温度制御装置4の放熱構造は、温度制御装置4が収納室18内に収納されて横扉3に固定され、収納室18の下壁に開口孔36が備えられて開口孔18の近傍に放熱フィン35が備えられ、グラファイトシート50が制御装置取り付け金具4bを介して温度制御装置4に貼り付けられて、このグラファイトシート50の一端が放熱フィン35に貼り付けられているので、温度制御装置4に対する焼成炉2からの熱伝達を低減し、温度制御装置4の信頼性や寿命を良好に維持できる。また、本実施例の陶芸窯1における温度制御装置4の放熱構造は、グラファイトシートの表面積の分だけ温度制御装置4の放熱面積が増加し放熱効果を向上できる。
【0042】
また、本実施例の陶芸窯1における温度制御装置4の放熱構造は、グラファイトシート50、52として、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムを焼成して熱分解させ高配向性を有するものを用いているので、グラファイトシート50、52が表面方向に沿って優れた熱伝導性を発現し、焼成炉2の熱が温度制御装置4に伝達しても、グラファイトシート50、52を熱伝導路として、この熱を放熱フィン35に導いて速やかに放熱できる。また、本実施例の陶芸窯1における温度制御装置4の放熱構造は、グラファイトシート52の厚み方向の熱伝導率が表面方向の熱伝導率に比べて低いので、温度制御装置4の表面をグラファイトシート52に覆うことで、焼成炉2から収納室18内の空気を介して温度制御装置4に伝達される熱を低減できる。
【0043】
また、本実施例の陶芸窯1における温度制御装置4の放熱構造は、グラファイトシート50が、横扉3の金属枠17に沿って貼り付けられているので、焼成炉2から温度制御装置4に伝達した熱を金属枠17に伝達して速やかに放熱できる。
【0044】
また、本実施例の陶芸窯1における温度制御装置4の放熱構造は、グラファイトシート50、52の表面方向の熱伝導率が、金属枠17及び制御装置取り付け金具4bよりも高いので、焼成炉2から温度制御装置4に伝達した熱を速やかに放熱フィン35に導くことができる。
【0045】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。
【0046】
例えば、図5に表したように、前記実施例における放熱フィン35に代えて、金属枠17の底方に、開口孔36を覆うように外部の空気を収納室に流入する換気扇51を備え、グラファイトシート50の一端を、換気扇51の近傍に配置してもよい。また、帯状のグラファイトシート50を制御装置取り付け金具4bと金属枠17との間に挟着し、さらに、グラファイトシート52によって温度制御装置4の外周全体を包むようにしてもよい。
【0047】
これにより、換気扇51によって収納室18に流入される空気中にグラファイトシート50が晒され、焼成炉2から温度制御装置4に伝達した熱が速やかに放熱される。また、温度制御装置4の焼成炉2側に位置する外周がグラファイトシート52に覆われているので、焼成炉2から温度制御装置4の外周に向かう熱を、グラファイトシート52を介して遮蔽して受熱し、放熱できる。
【0048】
また、本実施例において、横扉3に形成する貫通孔17aの位置、形状、換気扇35の種類等は、横扉3の外面の温度が均一になるように、設定することが好ましい。また、焼成炉2と外装部材28、29、30、31とによって構成される複数の間隙Sは、互いに連通して空気が出入りできるように構成することが好ましい。
【0049】
また、本実施例において、放熱フィン35を収納室18の内部に備えたが、金属枠17の外側に備えてもよい。また、グラファイトシート50、52を同一の材質で構成することなく、表面方向及び厚み方向の熱伝導率を必要に応じて異なるものにしてもよい。つまり、温度制御装置4を覆うグラファイトシート52の厚み方向の熱伝導率を、グラファイトシート50の厚み方向の熱伝導率よりも低いものにすれば、焼成炉2から温度制御装置4へ空気を介して伝達される熱をより効果的に低減できる。
【0050】
また、金属枠17の材質は、塗装された圧延鋼板を用いたが、放熱に支障がない範囲で種種の材質を用いてもよい。例えば、金属枠17として、金属板の表面に断熱材を積層した複合材を用いてもよい。
【0051】
また、グラファイトシート50、52は、温度制御装置4から放熱フィン35又は換気扇51まで、必要に応じて、ストレートに延出したり蛇行させて延出させたりすればよい。これにより、横扉3の表面の温度分布を調整できる。
【0052】
また、本発明は、電気ヒータを熱源とする陶芸用電気窯の他に、燃焼ガスを熱源とする陶芸窯や焼成炉にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施例の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造が適用された陶芸窯の外観図であって、(a)が平面図、(b)が正面図である。
【図2】同実施例の陶芸窯の構造を表す断面図であって、(a)が図1中のZ−Z断面図、(b)が図1中のD−D断面図である。
【図3】同実施例の陶芸窯の横扉の構成を表す外観図であって、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が下面図である。
【図4】同実施例の横扉の構成を表す断面図であって、(a)が図3中のZ−Z断面図、(b)が図3中のY−Y断面図である。
【図5】同実施例の変形例における横扉の構成を表す断面図であって、図5の(a)(b)が図3の(a)(b)に対応する。
【符号の説明】
【0054】
1…陶芸用電気窯、2…焼成炉、3…横扉、4…温度制御装置、4a…操作パネル、4b…制御装置取り付け金具、5…脚体、6…電気ヒータ、7…支軸、9…ガス抜き孔、10,11…軸受け、12…取手、13,14…ハンドル、15…支軸、17…金属枠、17a…貫通孔、17b…蓋部、17c…ネジ、17d…係合孔、18…収納室、19…空室、20…係止片、21…耐熱煉瓦、22,23…耐熱ボード、24a〜24d…支柱、25a〜25d…支柱、26a〜26d…支持板、27〜31…外装部材、28g,29g,31a,31b…通気孔、32…回路部品、33…ケーブル、35…放熱フィン、36…開口孔、37,38…耐熱ボード、41,42,43,44…取り付け金具、40…耐熱煉瓦、Q…焼成室、S…間隙、50,52…グラファイトシート、51…換気扇。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶芸作品を出し入れする開口部を備えた焼成炉と、
前記焼成炉の開口部を開閉する扉と、
前記焼成炉内の温度を制御する温度制御装置と、
を備えた陶芸窯において、
前記扉には、
前記開口部側に配設された断熱部材と、
前記断熱部材を介して前記焼成炉とは反対側に配設され、前記温度制御装置を収納する収納室と、
が備えられ、
前記温度制御装置が前記収納室内に収納されて前記扉に固定され、
前記収納室の下壁に開口部が備えられて、該開口部の近傍に放熱フィンが備えられ、
グラファイトシートが前記温度制御装置に貼り付けられて、該グラファイトシートの一端が前記放熱フィンに貼り付けられている、
ことを特徴とする陶芸窯における温度制御装置の放熱構造。
【請求項2】
前記グラファイトシートが、前記扉の外装部材に沿って貼り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造。
【請求項3】
前記グラファイトシートの表面方向の熱伝導率が、前記扉の外装部材よりも高い、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造。
【請求項4】
前記放熱フィンに代えて、前記開口部には外部の空気を前記収納室に流入する換気扇が取り付けられ、前記グラファイトシートの一端が、該換気扇の近傍に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造。
【請求項5】
前記温度制御装置は、少なくとも前記焼成炉側に位置する外周が前記グラファイトシートによって覆われている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造。
【請求項6】
前記グラファイトシートは、表面方向に高配向性の結晶構造を有するように、高分子フィルムを焼成して形成されたものであって、表面方向の熱伝導率が厚み方向の熱伝導率よりも高い、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか記載の陶芸窯における温度制御装置の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−113892(P2007−113892A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308588(P2005−308588)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000107147)日本電産シンポ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】