説明

陽イオン交換体の製造方法

【課題】陽イオン交換体の製造方法を提供する。
【解決手段】高い機械的、浸透圧および酸化安定性の強酸性陽イオン交換体は、1つ以上のビニル芳香族モノマー、1つ以上の架橋剤および0.2〜20重量%の1つ以上のビニルエーテルおよび/またはビニルエステルから形成されたビーズポリマーをスルホン化することによって製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上のビニル芳香族モノマー、1つ以上の架橋剤およびビニルアルコールの1つ以上のエーテルおよび/またはエステルから形成されるビーズポリマーをスルホン化することによる高い機械的、浸透圧および酸化安定性の強酸性陽イオン交換体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強酸性陽イオン交換体は、架橋スチレンビーズポリマーを官能化することによって得ることができる。官能化は、ポリマー骨格の芳香族単位とスルホン化剤、例えば硫酸との反応によって共有結合したスルホン酸基を生み出す。
【0003】
公知の強酸性陽イオン交換体での一問題は、必ずしも十分とは限らない、ストレス下でのそれらの安定性の問題である。例えば、陽イオン交換体ビーズは、機械力または浸透力の結果として破壊し得る。陽イオン交換体の全ての用途について、ビーズ形態で存在する交換体は、それらの性質を維持しなければならず、利用の間ずっと部分的にもまたは全くでさえ分解してはならないし、または断片へ崩壊してはならない。断片およびビーズポリマー破片は、精製中に精製されるべき溶液中に入り、そしてそれら自体を汚染し得る。さらに、損傷したビーズポリマーの存在は、カラム法に使用される陽イオン交換体自体の機能にとっても好ましくない。破片はカラムシステムの高い圧力降下につながり、それ故にカラムによって精製されるべき液体の処理量を減らす。
【0004】
公知の強酸性陽イオン交換体のさらなる問題は、水に溶解した多種多様な異なる酸化剤(大気酸素、過酸化水素、バナジル塩、クロム酸塩)の作用の結果として使用中に水からスルホン化水溶性断片を放出するそれらの傾向である。用語「浸出」で一般に当業者に知られる、この現象は、処理されるべき水中のスルホン化有機成分の富化につながり、それは、完全脱塩水の供給を当てにしている下流システムで様々な問題につながり得る。例えば、水溶性断片は、例えば、発電所の冷却回路での腐食問題に、エレクトロニクス産業で生産されるマイクロチップでの欠陥に、浸食機(eroding machine)での水の過度に高い導電率によるシステムの破損につながる。
【0005】
向上した機械的安定性、浸透圧安定性および/または向上した酸化安定性を有する強酸性陽イオン交換体を提供しようとする試みは決して少なくなかった。
【0006】
例えば、強酸性陽イオン交換体の機械的および浸透圧安定性は、いわゆるシード−フィード法で、ビーズポリマーの2段階構造によって高めることができる。かかる方法は、例えば、(特許文献1)、(特許文献2)および(特許文献3)に記載されている。2段階で製造された陽イオン交換体は、傑出した機械的安定性を示すが、1段階で製造された樹脂より処理水に有意に多いスルホン化分解生成物を放出する。
【0007】
スチレン−ジビニルベンゼン共重合体への少量のアクリレートモノマーの組み入れもまた、(特許文献4)および(特許文献5)に記載されているように、機械的安定性の増加につながる。しかしながら、ポリマー構造中のアクリル酸単位の増加は、樹脂のより高い酸化感受性につながる。
【0008】
バッハマン(Bachmann)らは(特許文献6)で、125〜180℃の温度で塩素化膨潤剤の添加なしにスルホン化することによる機械的におよび浸透圧的に安定な陽イオン交換体の製造方法を記載している。しかしながら、スルホン化における塩素化膨潤剤での分散は、樹脂の酸化安定性を向上させない。
【0009】
強酸性陽イオン交換体の酸化安定性は、例えば、(特許文献7)に記載されているように、酸化防止剤を添加することによって高めることができる。これらの酸化防止剤は樹脂からゆっくり洗い落とされ、それは、処理される水への有機成分の放出につながる。さらに、それらは、比較的短時間の使用後に消費される。その後、酸化防止剤で処理された樹脂は、通常の強酸性陽イオン交換体と同じ酸化感受性を示す。
【0010】
強酸性陽イオン交換体の酸化安定性はまた、ビーズポリマーの架橋密度を上げることによって向上させることができる。しかしながら、多量の架橋剤の組み入れはポリマーをより脆くし、それはビーズの機械的安定性の顕著な低下につながる。さらに、陽イオン交換の速度論は、増加する架橋密度と共に著しく低下し、それは多くの用途で不十分な吸収容量につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP 0 101 943 A2
【特許文献2】EP−A 1 000 659
【特許文献3】DE−A 10 122 896
【特許文献4】米国特許第4,500,652号明細書
【特許文献5】DE−A 3 230 559
【特許文献6】EP−A 868 444
【特許文献7】EP−A 0 366 258
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、速い交換速度論、高い機械的および浸透圧安定性、ならびに同時に高い酸化安定性の陽イオン交換体に対するニーズが依然としてある。
【0013】
本発明によって対処される問題はそれ故、速い交換速度論、高い機械的および浸透圧安定性、ならびに高い酸化安定性の陽イオン交換体を製造するための簡単な、ロバストなおよび経済的に実行可能な方法を提供するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題への解決策およびそれ故に本発明の主題は、ビニル芳香族モノマーから形成された架橋ビーズポリマーをスルホン化することによる強酸性陽イオン交換体の製造方法であって、ビーズポリマーが0.2〜20重量%のビニルエーテルおよび/またはビニルエステルをコモノマーとして含む製造方法である。
【0015】
驚くべきことに、本発明による方法で得られる陽イオン交換体は、等しいまたはより高い機械的および浸透圧安定性に加えて、先行技術と比べて有意により高い酸化安定性を有する。驚くべきことに、本発明のビーズポリマーから得られる強酸性陽イオン交換体の酸化安定性の向上は、コモノマーがどのようにそして何時ビーズポリマーの形成の過程で加えられ、重合させられるかに関係なく、ビーズポリマーへのコモノマーの組み入れに専ら帰せられることがさらに分かった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
明確にするために、本発明の範囲は、全ての組み合わせで、一般にまたは好ましい領域内で、下記の全ての定義およびパラメーターを包含することが指摘されるべきである。
【0017】
本発明に従って好適な架橋ビーズポリマーは、少なくとも1つのモノエチレン系不飽和芳香族モノマー、少なくとも1つの架橋剤および少なくとも1つのビニルエーテルまたはビニルエステルの共重合体である。
【0018】
使用されるモノエチレン系不飽和芳香族(ビニル芳香族)モノマーは好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレンまたはビニルナフタレンである。これらのモノマーの混合物もまた非常に好適である。スチレンおよびビニルトルエンが特に好ましい。
【0019】
架橋剤がモノマーに加えられる。架橋剤は一般に、ポリエチレン系不飽和化合物、好ましくはジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、オクタジエンまたはトリアリルシアヌレートである。ビニル芳香族架橋剤はより好ましくはジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼンである。ジビニルベンゼンが非常に特に好ましい。ビーズポリマーを製造するために、ジビニルベンゼンの異性体だけでなく、エチルビニルベンゼンなどの通例の副生物を含む工業銘柄品質のジビニルベンゼンを使用することが可能である。本発明によれば、55〜85重量%のジビニルベンゼン含有率の工業銘柄品質が特に好適である。
【0020】
架橋剤は単独でまたは異なる架橋剤の混合物として使用することができる。使用のための架橋剤の総量は、エチレン系不飽和化合物の合計を基準として、一般に0.1〜80重量%、好ましくは0.5〜60重量%、より好ましくは1〜40重量%である。
【0021】
使用されるコモノマーはビニルエーテルおよび/またはビニルエステルである。
【0022】
本発明との関連で、ビニルエーテルはビニルアルコールのおよびイソプロペニルアルコールのエーテルを意味すると理解される。本発明との関連でのビニルエーテルは1つ以上のビニルまたはイソプロペニルアルコール単位を含有してもよい。1〜18個の炭素原子を有するアルキルおよびヒドロキシアルキルエーテル、およびエチレングリコールの縮合生成物でのエーテルが好ましい。メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールモノビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、メチルイソプロペニルエーテルまたはエチルイソプロペニルエーテルが特に好ましい。エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテルおよびブタンジオールジビニルエーテルを使用することが非常に特に好ましい。
【0023】
本発明との関連で、ビニルエステルはビニルアルコールのおよびイソプロペニルアルコールのエステルを意味すると理解される。本発明との関連でのビニルエステルは1つ以上のビニルまたはイソプロペニルアルコール単位を含有してもよい。1〜18個の炭素原子を有するカルボン酸のエステルが好ましい。ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、オレイン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、安息香酸ビニル、フタル酸ジビニルまたは酢酸イソプロペニルを使用することが特に好ましい。酢酸ビニルおよび酢酸イソプロペニルを使用することが非常に特に好ましい。
【0024】
ビニルエーテルの混合物、ビニルエステルの混合物またはビニルエーテルとビニルエステルとの混合物を使用することもまた可能である。
【0025】
コモノマーは、ビニル芳香族モノマーおよび架橋剤の合計を基準として、0.2〜20重量%の量で使用される。0.5〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%の量を使用することが好ましい。ビニルエーテルおよび/またはビニルエステルの混合物が使用されるとき、量は全てのコモノマーの合計を基準とする。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、コモノマーは、重合が始まる前にモノマー混合物に加えることができる。しかしながら、それはまた重合の過程で、好ましくは10〜90%、より好ましくは15〜80%の重合転化率で計量供給することもできる。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態では、コモノマーは、重合の過程で水溶性開始剤と一緒に水相に加えられる。この好ましい実施形態で好適な水溶性開始剤は、温度が高められたときにフリーラジカルを形成する化合物である。ペルオキソ二硫酸塩が好ましく、ペルオキソ二硫酸塩カリウム、ペルオキソ二硫酸塩ナトリウムおよびペルオキソ二硫酸塩アンモニウム、水溶性アゾ化合物、より好ましくは2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]4水和物、2,2’−アゾビス[N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、そしてまたヒドロペルオキシド、より好ましくはt−ブチルヒドロペルオキシドおよびクミルヒドロペルオキシドが特に好ましい。
【0028】
しかしながら、コモノマーはまた、ビーズポリマーの重合が終わった後に加えることもでき、別個の重合工程で重合させることができる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、多孔質体(porogen)として知られる、細孔形成剤をモノマーに加えることもまた可能である。多孔質体は、非官能性ビーズポリマーでの細孔構造の形成に役立つ。使用される多孔質体は好ましくは有機希釈剤である。10重量%未満、好ましくは1重量%未満の程度に水に溶解するそれらの有機希釈剤を使用することが特に好ましい。特に好適な多孔質体はトルエン、エチルベンゼン、キシレン、シクロヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、n−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノールまたはn−オクタノールである。トルエン、シクロヘキサン、イソオクタン、イソドデカン、4−メチル−2−ペンタノールまたはメチルイソブチルケトンが非常に特に好ましい。使用される多孔質体はまた、非架橋の線状または分岐ポリマー、例えば、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートであってもよい。異なる多孔質体の混合物もまた好適である。
【0030】
多孔質体は、各場合にエチレン系不飽和化合物の合計を基準として、典型的には10〜70重量%、好ましくは25〜65重量%の量で使用される。
【0031】
架橋ビーズポリマーを製造するために、上述のモノマーは、本発明のさらに好ましい実施形態では、水性懸濁液で開始剤を使用して分散助剤の存在下に重合させられる。
【0032】
使用される分散助剤は好ましくは天然および合成の水溶性ポリマーである。ゼラチン、デンプン、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸または(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体を使用することが特に好ましい。ゼラチンまたはセルロース誘導体、特に、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースもしくはメチルヒドロキシエチルセルロースなどの、セルロースエステルおよびセルロースエーテルを使用することが非常に特に好ましい。使用される分散助剤の量は、水相を基準として、一般に0.05〜1%、好ましくは0.1〜0.5%である。
【0033】
本発明のさらに好ましい実施形態では、開始剤がモノマー混合物中に使用される。本発明では、モノマー混合物は、ビニル芳香族モノマー、架橋剤、コモノマーおよび適切な場合には多孔質体の混合物を意味する。好適な開始剤は、温度が高められ、そしてモノマー混合物に溶解するときにフリーラジカルを形成する化合物である。ペルオキシ化合物が好ましく、過酸化ジベンゾイル、ジラウロイルペルオキシド、ビス(p−クロロベンゾイル)ペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネートまたは第三アミルペルオキシ−2−エチルヘキサンが特に好ましく、そしてまたアゾ化合物が好ましく、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)もしくは2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)、あるいは脂肪族ペルオキシエステル、好ましくは第三ブチルペルオキシアセテート、第三ブチルペルオキシイソブチレート、第三ブチルペルオキシピバレート、第三ブチルペルオキシオクタノエート、第三ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、第三ブチルペルオキシネオデカノエート、第三アミルペルオキシピバレート、第三アミルペルオキシオクタノエート、第三アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、第三アミルペルオキシネオデカノエート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジピバロイル−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(2−ネオデカノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ−第三ブチルペルオキシアゼラートもしくはジ−第三アミルペルオキシアゼラートが特に好ましい。
【0034】
モノマー混合物に可溶である開始剤は、エチレン系不飽和化合物の合計を基準として、一般に0.05〜6.0重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%、より好ましくは0.2〜2重量%の量で用いられる。
【0035】
水相は、水相のpHを12〜3、好ましくは10〜4の値に調整する緩衝剤システムを含んでもよい。特に好適な緩衝剤システムはリン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩またはホウ酸塩を含有する。
【0036】
水相に溶解した抑制剤を使用することが有利であるかもしれない。有用な抑制剤には、無機および有機物質の両方が含まれる。無機抑制剤の例は、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、亜硝酸ナトリウムまたは亜硝酸カリウムなどの窒素化合物である。有機抑制剤の例は、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、レソルシノール、ピロカテコール、第三ブチルピロカテコール、フェノールとアルデヒドとの縮合生成物などのフェノール化合物である。さらなる有機抑制剤は、窒素含有化合物、例えばジエチルヒドロキシルアミンおよびイソプロピルヒドロキシルアミンである。レゾルシノールが抑制剤として好ましい。抑制剤の濃度は、水相を基準として、5〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm、より好ましくは20〜250ppmである。
【0037】
有機相は、撹拌によってかまたはジェッティングによって小滴として水相へ分散させることができる。有機相は、モノマーおよび架橋剤、ならびにまた、適切な場合、さらに多孔質体および/または開始剤の混合物を意味すると理解される。通常の分散重合では、有機小滴は撹拌によって発生させられる。4リットル規模では、250〜400rpmの撹拌機速度が典型的には用いられる。小滴がジェッティングによって生み出されるとき、有機小滴をカプセル化することによって均一な小滴径を維持することが賢明である。ジェットされた有機小滴のマイクロカプセル化法は、例えば、その内容がマイクロカプセル化に関して本出願によって包含されるEP 0 046 535に記載されている。
【0038】
カプセル化されていないまたはカプセル化されたモノマー小滴の平均粒度は10〜1000μm、好ましくは100〜1000μmである。
【0039】
有機相対水相の比は一般に1:20〜1:0.6、好ましくは1:10〜1:1、より好ましくは1:5〜1:1.2である。
【0040】
しかしながら、有機相はまた、その教示が本出願によって包含されるEP−A 0 617 714によれば、有機相を吸収するシードポリマーの懸濁液に、いわゆるシード−フィード法で加えることができる。有機相で膨潤したシードポリマーの平均粒度は5〜1200μm、好ましくは20〜1000μmである。水相に対する有機相+シードポリマーの合計の比は一般に1:20〜1:0.6、好ましくは1:10〜1:1、より好ましくは1:5〜1:1.2である。
【0041】
モノマーおよびコモノマーの重合は高温で行われる。重合温度は、開始剤の分解温度によって導かれ、典型的には50〜150℃、好ましくは60〜130℃の範囲にある。重合時間は30分〜24時間、好ましくは2〜15時間である。
【0042】
重合の終わりに、架橋ビーズポリマーは、好ましくは吸引フィルター上で、水相から取り出され、場合により乾燥させられる。
【0043】
架橋ビーズポリマーは、スルホン化によって陽イオン交換体に変換される。有用なスルホン化剤には、硫酸、クロロスルホン酸および三酸化硫黄が含まれる。硫酸を使用することが好ましい。
【0044】
硫酸は、好ましくは80〜120%、より好ましくは85〜105%、最も好ましくは88〜99%の濃度で使用される。硫酸について、本発明では、100%より大きい濃度数値は、100%硫酸中の三酸化硫黄(SO)の溶液を意味する。例えば、120%の硫酸濃度は、100%硫酸中のSOの20%溶液を意味すると理解される。
【0045】
比較的高い濃度の硫酸と比較的低い濃度の硫酸とを混合することによって必要な酸濃度を確立することが有利であり、その場合に使用される比較的低い濃度の硫酸は前のスルホン化反応からの回収硫酸であってもよい。硫酸の混合は、生じた混合熱が反応混合物の温度上昇につながるように、スルホン化されるべきビーズポリマーの存在下にスルホン化反応器で達成することができる。
【0046】
硫酸対ビーズポリマーの比は2.0〜6ml/g、好ましくは2.5〜5ml/g、より好ましくは2.6〜4.2ml/gである。
【0047】
必要ならば、膨潤剤、好ましくはクロロベンゼン、ジクロロエタン、ジクロロプロパンまたは塩化メチレンをスルホン化に用いることができる。膨潤剤は、乾燥ビーズポリマーの1グラム当たり好ましくは0.1〜1ml、より好ましくは乾燥ビーズポリマーの1グラム当たり0.2〜0.5mlの量で使用される。膨潤剤は好ましくは、スルホン化反応の開始前に、硫酸中に初めに装入されたビーズポリマーへ加えられる。
【0048】
スルホン化での温度は一般に50〜200℃、好ましくは80〜160℃、より好ましくは90〜140℃である。スルホン化が第1反応工程にて第1温度で開始され、第2反応工程にてより高い温度で継続される温度プログラムをスルホン化で用いることが有利であるかもしれない。
【0049】
スルホン化で、反応混合物は撹拌される。パドル撹拌機、アンカー撹拌機、ゲート撹拌機またはタービン撹拌機などの、異なる撹拌機タイプを用いることが可能である。
【0050】
スルホン化反応の継続期間は一般に数時間、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜16時間、最も好ましくは3〜12時間である。
【0051】
スルホン化の後、スルホン化生成物および残りの酸からなる反応混合物は室温に冷却され、先ず濃度の低下する硫酸で、次に水で希釈される。
【0052】
必要ならば、本発明に従って得られた陽イオン交換体は、70〜180℃、好ましくは105〜130℃の温度で脱イオン水で、精製のために、H形で処理することができる。
【0053】
多くの用途のためには、陽イオン交換体を酸性形からナトリウム形に変換することが有益である。この変換は、2〜60重量%、好ましくは4〜10重量%の濃度の水酸化ナトリウム溶液で、または塩化ナトリウムが1〜25重量%、好ましくは4〜10重量%である塩化ナトリウム水溶液で達成される。
【0054】
変換後に、陽イオン交換体は、脱イオン水または塩水溶液で、例えば塩化ナトリウムもしくは硫酸ナトリウム溶液で処理することによってさらに精製することができる。70〜150℃、好ましくは120〜135℃での処理が特に有効であり、そして陽イオン交換体の容量のいかなる低下ももたらさないことが分かった。
【0055】
本発明の強酸性陽イオン交換体は細孔を含有してもよい。多孔質の本発明の強酸性陽イオン交換体はミクロ孔質、メソ孔質および/またはマクロ孔質であってもよい。ポリマーに関する用語「ゲル形」、「多孔質」、「ミクロ孔質」、「メソ孔質」および「マクロ孔質」の定義については、Pure Appl.Chem.第76巻(2004)、No.4、889−906ページ(IUPAC勧告2003)について、より具体的にはp.900ページ§3.9および902−903ページ§3.23について言及される。
【0056】
本発明の強酸性陽イオン交換体は30μm〜1000μm、好ましくは100〜800μmの平均粒度Dを有する。平均粒度および粒度分布を測定するためには、ふるい分析または画像分析などの慣習的方法が好適である。平均粒度Dは、本発明との関連で、容量分布の50%値(φ(50))を意味すると理解される。容量分布の50%値(φ(50))は、粒子の50容量%の直径より上である直径を示す。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、単分散の強酸性陽イオン交換体が製造される。本発明との関連での単分散の粒度分布は、少なくとも75容量%、好ましくは少なくとも85容量%、より好ましくは少なくとも90容量%の0.9D〜1.1Dの粒子の容量割合を有する。
【0058】
本発明はまた、
a)単分散またはヘテロ分散ビーズポリマーがビニル芳香族モノマー、架橋剤および0.2〜20重量%のビニルエーテルおよび/またはビニルエステルから懸濁重合によって製造され、そして
b)これらのビーズポリマーが硫酸、三酸化硫黄および/またはクロロスルホン酸の作用によって強酸性陽イオン交換体に変換される
ことを特徴とする、強酸性陽イオン交換体の製造方法に関する。
【0059】
本発明による方法によって得られた強酸性陽イオン交換体は、特に高い機械的安定性、浸透圧安定性および酸化安定性について注目すべきである。長期にわたる使用および多数の再生の後でさえ、それらは、イオン交換体球にいかなる欠陥もほとんど示さない。
【0060】
本発明の強酸性陽イオン交換体について、多くの異なる用途がある。例えば、それらは、飲料水処理に、発電所水および超純水(コンピューター産業用のマイクロチップ生産の製造に必要とされる)の生産に、グルコースおよびフルクトースのクロマトグラフ分離のために、ならびに様々な化学反応(例えばフェノールおよびアセトンからのビスフェノールA製造)用の触媒として使用することができる。
【0061】
分析方法:
容積基準の総容量
20mlの交換体がタンピング容量計で脱塩水下に振盪される。200mlビーカー中で、これらの20mlの交換体、5gのNaCl p.a.および50mlの水酸化ナトリウム溶液c(NaOH)=1モル/lが組み合わせられ、塩酸c(HCl)=1.0モル/lでpH=4.3に至るまで滴定される。
【0062】
陽イオン交換体の総容量は次の通り計算される:
【0063】
TC=(HClの消費 c(HCL)=1.0mol/l)/20
【0064】
元来の安定性:製造後の完璧なビーズの数
100のビーズが顕微鏡下に観察される。亀裂を有するまたは破片化を示すビーズの数が測定される。完璧なビーズの数が損傷ビーズの数と100との差から計算される。
【0065】
膨潤安定性による陽イオン交換体の浸透圧安定性の測定
膨潤安定性試験では、交換体は、フィルターチューブ中で塩酸w(HCl)=6%および水酸化ナトリウム溶液w(NaOH)=4%で交互に処理される。各場合に脱塩水での中間の処理がある。
【0066】
本試験のために、脱塩水下に振盪された25mlの交換体がフィルターチューブ中へ組み込まれる。
【0067】
次に、樹脂は5分間脱塩水でバックリンスされる。バックリンスの速度は、樹脂がフィルターチューブの全長にわたって分配されるように調整される。
【0068】
バックリンス終了後、40の作業操作が実施される。1つの作業操作は、ローディングおよび再生のそれぞれ10分と、バックリンスの2×5分とを4サイクル行うことを含む。酸およびアルカリは、毛細管を通って1サイクル当たり500mlで交換体を通り抜ける。
【0069】
試験終了後、交換体は、フィルターチューブから流し出され、水はスクリーンチューブで吸引され、十分に混合される。
【0070】
交換体は次に、元来の安定性の測定での通り、亀裂ビーズおよび破片の、全体のビーズの百分率について顕微鏡下にカウントされる。
【0071】
赤化試験による陽イオン交換体の酸化安定性の測定
750mlの樹脂がUPW水中で振盪され、それで15リットル/時間の流量で4時間並流洗浄される。UPW水は、17.8Mオームcm未満の導電率および2.00ppb未満の有機物質の含有率(TOC)を有する水と定義される。洗浄後に、750mlの樹脂がガラス吸引フィルター上で5分間吸引にかけられる。UPWの導電率については、1998年半導体純水および化学薬品会議(1998 Semiconductor Pure Water and Chemicals Conference)、1998年3月2〜5日、
http://www.gatewayequipment.com/whitepapers/resistivity_instru_futureUPWsystems.pdf.
の下での、将来のUPWシステムのための固有抵抗計装の進歩(Advances in Resistivity Instrumentation for UPW Systems of the Future)、アンソニー C.ベビラクア(Anthony C.Bevilacqua)をまた参照されたい。
【0072】
50gの洗浄、吸引された陽イオン交換体がガラス瓶に移される。閉じられたガラス瓶は、室温で4週間日光の下で貯蔵される。貯蔵時間の終わりに、樹脂は100gのUPW水と混ぜられ、100rpmで10分間振盪される。続いて、サンプルが濾過され、溶出液が次の方法によって試験される:pH、225nm(1cmキュベット)での吸光度および赤化の目視評価、標点0は完全に無色の溶出液を、標点4は深紅溶出液を示唆する。
【0073】
本発明との関連で脱塩水は、それが0.1〜10μSの導電率、個々の成分としてのFe、Co、Ni、Mo、Cr、Cuについて1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下であり、そして言及された金属の合計について10ppm以下、好ましくは1ppm以下である溶解または非溶解金属イオンの含有率を有することを特徴とする。
【実施例】
【0074】
実施例1
スチレン、ジビニルベンゼンおよびエチルスチレンをベースとする単分散シード・ビーズポリマーの製造
4リットルガラス反応器に最初に1020gの脱塩水を装入し、86gの脱塩水中の3.2gのゼラチン、4.8gのリン酸水素二ナトリウム12水和物および0.24gのレゾルシノールの溶液を加え、混合した。混合物の温度を25℃に調節した。撹拌しながら、4.5重量%のジビニルベンゼン、1.12重量%のエチルスチレン、0.36重量%の第三ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートおよび94.02重量%のスチレンを含有する、ジェッティングによって得られた、そして狭い粒度分布をする1182gのマイクロカプセル化モノマー小滴を撹拌しながら加え、マイクロカプセルはゼラチンおよびアクリルアミドとアクリル酸との共重合体のホルムアルデヒド硬化錯体コアセルベートからなり、そして12のpHの1182gの水相を加えた。
【0075】
混合物を、25℃で始まり、95℃で終わる温度プログラムに従って温度を上げることによって撹拌しながら完了するまで重合させた。混合物を冷却し、315μmスクリーン上で洗浄し、次に減圧下に80℃で乾燥させた。365μmの平均粒度、ならびに狭い粒度分布および滑らかな表面を有する1152gのシード・ビーズポリマーを得た。
【0076】
比較例1(非発明)
C1a)コモノマーなしのビーズポリマーの製造
ゲート撹拌機、冷却器、温度センサーおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器で、1443gの脱イオン水および5.88gのリン酸水素二ナトリウム12水和物からなる水性初期装入物を得た。この初期装入物に、200rpmで撹拌しながら実施例1からの864.9gのシードポリマーを加えた。
【0077】
30分内に、625.7gのスチレン、109.5gのジビニルベンゼン(81.3%)および5.88gの過酸化ジベンゾイルの混合物を加えた。大気酸素を除去するために、混合物に次に窒素を15分間スパージングした。続いて、反応器内容物を30分内に30℃にし、この温度でさらに30分間保持した。次に、157gの水に溶解させた3.2gのメチルヒドロキシエチルセルロースの溶液を加え、混合物を30℃でもう1時間撹拌した。混合物を62℃に16時間、次に95℃に2時間加熱した。冷却後に、混合物を315μmスクリーン上で洗浄し、乾燥させた。448μmの平均粒度を有する1465gの単分散ビーズポリマーを得た。
【0078】
C1b)陽イオン交換体の製造
ゲート撹拌機、温度センサー、蒸留システムおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器に最初に741mlの87.8重量%硫酸を室温で装入した。30分内に、撹拌しながらC1a)からの350gのビーズポリマーおよび88mlの1,2−ジクロロエタンを導入した。反応器内容物を40℃で30分間撹拌した。続いて、159mlの発煙硫酸(100重量%硫酸中の65重量%SO)を、反応器温度が90℃を超えることなく1時間内に加えた。次に、混合物を115℃に加熱し、115℃で5時間撹拌し、その過程で1,2−ジクロロエタンを蒸留システムを用いて除去した。反応混合物を続いて140℃にし、140℃で3時間撹拌した。冷却後に、懸濁液をガラスカラムに移した。90重量%から始まって純水に終わる、濃度の低下する硫酸を最上部からカラムに加えた。H形基準で、2.08当量/lの総容量のH形の1460mlの単分散陽イオン交換体を得た。
【0079】
比較例2(非発明)
C2a)コモノマーなしのビーズポリマーの製造
ゲート撹拌機、冷却器(condenser)、温度センサーおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器で、1342gの脱イオン水、5.3gのホウ酸および2.97gの50重量%水酸化ナトリウム溶液からなる水性初期装入物を得た。この初期装入物に、200rpmで撹拌しながら、実施例1に従って製造した802.4gのシードポリマーを加えた。
【0080】
30分内に、687.7gのスチレン、114.7gのジビニルベンゼン(80.5%)および2.57gの第三ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの混合物を加えた。大気酸素を除去するために、混合物に次に窒素を15分間スパージングした。続いて、反応器内容物を30分内に30℃にし、この温度でさらに2時間保持した。157gの水に溶解させた3.2gのメチルヒドロキシエチルセルロースの溶液を次に加え、混合物を30℃でもう1時間撹拌した。混合物を65℃に11時間、次に95℃に2時間加熱した。冷却後に、混合物を315μmスクリーン上で洗浄し、乾燥させた。460μmの平均粒度を有する1544gの単分散ビーズポリマーを得た。
【0081】
C2b)陽イオン交換体の製造
ゲート撹拌機、温度センサー、蒸留システムおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器に最初に1400mlの98重量%硫酸を装入し、100℃に加熱した。30分内に、撹拌しながらC2a)からの350gのビーズポリマーを10分割して導入した。続いて、混合物を100℃で30分間、115℃で5時間撹拌した。冷却後に、懸濁液をガラスカラムに移した。90重量%から始まって純水に終わる、濃度の低下する硫酸を最上部からカラムに加えた。
【0082】
H形基準で、2.2当量/lの総容量のH形の1440mlの単分散陽イオン交換体を得た。
【0083】
比較例3(非発明)
C3a)DE−A 10 122 896に従ったアクリロニトリルでのビーズポリマーの製造
本手順は、4.71gのホウ酸および2.64gの50重量%水酸化ナトリウム溶液を初期装入物に使用したことを除いて、比較例C2a)での通りであった。これに、実施例1での通り製造した891.5gのシードポリマーと、560.3gのスチレン、88.7gのジビニルベンゼン(81.3%)、64.2gのアクリロニトリルおよび2.28gの第三ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの混合物とを加えた。混合物を61℃に11時間、次に130℃に2時間加熱した。
【0084】
442μmの平均粒度を有する1505gの単分散ビーズポリマーを得た。
【0085】
C3b)陽イオン交換体の製造
本手順は、2800mlの98重量%硫酸を最初に装入し、C3a)からの700gのビーズポリマーを導入し、そして混合物を105℃で5時間撹拌したことを除いて、比較例C2b)での通りであった。
【0086】
H形基準で、1.92当量/lの総容量のH形の3000mlの単分散陽イオン交換体を得た。
【0087】
実施例2(発明)
2a)ジエチレングリコールジビニルエーテルでのビーズポリマーの製造
ゲート撹拌機、冷却器、温度センサーおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器で、1443gの脱イオン水および5.88gのリン酸水素二ナトリウム12水和物からなる水性初期装入物を得た。この初期装入物に、200rpmで撹拌しながら、実施例1での通り製造した864.9gのシードポリマーを加えた。
【0088】
30分内に、625.7gのスチレン、109.5gのジビニルベンゼン(81.4%)および5.88gの過酸化ジベンゾイルの混合物を加えた。大気酸素を除去するために、混合物に次に窒素を15分間スパージングした。続いて、反応器内容物を30分内に30℃にし、この温度で30分間保持した。157gの水に溶解させた3.2gのメチルヒドロキシエチルセルロースの溶液を次に加え、混合物を30℃でもう1時間撹拌した。混合物を62℃に16時間加熱した。次に、30gのジエチレングリコールジビニルエーテルおよび50mlの水中の5gのペルオキソ二硫酸カリウムの溶液を、30分内に2つの別々のフィードで62℃で加えた。混合物を次に95℃に2時間加熱した。冷却後に、混合物を315μmスクリーン上で洗浄し、乾燥させた。448μmの平均粒度を有する1539gの単分散ビーズポリマーを得た。
【0089】
2b)陽イオン交換体の製造
本手順は、2a)からの700gのビーズポリマーを導入し、そして混合物を105℃で5時間の代わりに115℃で10時間撹拌したことを除いて、比較例C3b)での通りであった。
【0090】
H形基準で、2.12当量/lの総容量のH形の3920mlの単分散陽イオン交換体を得た。
【0091】
実施例3(発明)
3a)ジエチレングリコールジビニルエーテルでのビーズポリマーの製造
ゲート撹拌機、冷却器、温度センサーおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器で、1443gの脱イオン水、4.85gのホウ酸および2.72gの50重量%水酸化ナトリウム溶液からなる水性初期装入物を得た。この初期装入物に、200rpmで撹拌しながら、実施例1での通り製造した864.9gのシードポリマーを加えた。
【0092】
30分内に、Sgのスチレン(表を参照されたい)、109.5gのジビニルベンゼン(81.3%)、Xgのジエチレングリコールジビニルエーテル(DEGDVE、表を参照されたい)および2.35gの第三ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの混合物を加えた。大気酸素を除去するために、混合物に次に窒素を15分間スパージングした。続いて、反応器内容物を30分内に30℃にし、この温度で30分間保持した。次に157gの水に溶解させた3.2gのメチルヒドロキシエチルセルロースの溶液を加え、混合物を30℃でもう1時間撹拌した。混合物を65℃に11時間、次に95℃に2時間加熱した。冷却後に、混合物を315μmスクリーン上で洗浄し、乾燥させた。Ygの単分散ビーズポリマーを得た(表を参照されたい)。
【0093】
3b)陽イオン交換体の製造
本手順は、各場合に3a)からの350gのビーズポリマーを導入したことを除いて、比較例C2b)での通りであった。
【0094】
H形基準で、TC当量/lの総容量のH形のZmlの単分散陽イオン交換体を得た(表1を参照されたい)。
【0095】
【表1】

【0096】
実施例4(発明)
4a)ブタンジオールジビニルエーテルでのビーズポリマーの製造
本手順は、30gのブタンジオールジビニルエーテルを30gのエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに使用したことを除いて、実施例2a)での通りであった。
【0097】
1550gの単分散ビーズポリマーを得た。
【0098】
4b)陽イオン交換体の製造
ゲート撹拌機、温度センサー、蒸留システムおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器に、最初に1200mlの98重量%硫酸を装入し、100℃に加熱した。30分内に、撹拌しながら4a)からの300gのビーズポリマーを10分割して導入した。続いて、混合物を115℃で5時間、135℃で2時間撹拌した。冷却後に、懸濁液をガラスカラムに移した。90重量%から始まって純水に終わる、濃度の低下する硫酸を最上部からカラムに加えた。
【0099】
H形基準で、2.19当量/lの総容量のH形の1280mlの単分散陽イオン交換体を得た。
【0100】
実施例5(発明)
5a)エチレングリコールモノビニルエーテルでのビーズポリマーの製造
本手順は、30gのエチレングリコールモノビニルエーテルを30gのエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに使用したことを除いて、実施例2a)での通りであった。
【0101】
1670gの単分散ビーズポリマーを得た。
【0102】
5b)陽イオン交換体の製造
本手順は、1400mlの98重量%硫酸を最初に装入し、そして5a)からの350gのビーズポリマーを導入したことを除いて、実施例4b)での通りであった。
【0103】
H形基準で、2.21当量/lの総容量のH形の1470mlの単分散陽イオン交換体を得た。
【0104】
実施例6(発明)
6a)酢酸ビニルでのビーズポリマーの製造
本手順は、30gの酢酸ビニルを30gのエチレングリコールジビニルエーテルの代わりに使用したことを除いて、実施例2a)での通りであった。
【0105】
1264gの単分散ビーズポリマーを得た。
【0106】
6b)陽イオン交換体の製造
本手順は、6a)からの350gのビーズポリマーを使って実施例5bでの通りであった。
【0107】
H形基準で、2.17当量/lの総容量のH形の1480mlの単分散陽イオン交換体を得た。
【0108】
実施例7(発明)
7a)ジエチレングリコールジビニルエーテルでのビーズポリマーの製造
実施例2aを繰り返した。1570gの単分散ビーズポリマーを得た。
【0109】
7b)陽イオン交換体の製造
本手順は、664mlの84.7重量%硫酸を最初に室温で装入し、そして7a)からの350gのビーズポリマーを使用し、そして227mlの発煙硫酸を加えたことを除いて、比較例C1b)に似ていた。
【0110】
H形基準で、2.08当量/lの総容量のH形の1500mlの単分散陽イオン交換体を得た。
【0111】
実施例8(発明)
8a)ジエチレングリコールジビニルエーテルでのビーズポリマーの製造
ゲート撹拌機、冷却器、温度センサーおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器で、1400gの脱イオン水、6.88gのリン酸水素二ナトリウム12水和物および90.3gのメチルヒドロキシエチルセルロースの2%水溶液からなる水性初期装入物を得た。
【0112】
その後、1316.4gのスチレン、137.7gのジビニルベンゼン(80.3%)、14.7gのジエチレングリコールジビニルエーテルおよび11.8gの過酸化ジベンゾイル(水中75重量%)の混合物を加えた。反応器内容物を室温で30分間放置し、その過程で2相が形成した。次に撹拌機のスイッチを180rpmで入れ、混合物を室温で30分間撹拌した。反応器内容物を続いて62℃で16時間、95℃で2時間加熱した。冷却後に、混合物を315μmスクリーン上で洗浄し、乾燥させた。1441gのヘテロ分散ビーズポリマーを得た。
【0113】
8b)陽イオン交換体の製造
本手順は、1110mlの86重量%硫酸を最初に室温で装入し、8a)からの350gのビーズポリマーを使用し、そして322mlの発煙硫酸を加えたことを除いて、比較例C1b)に似ていた。混合物を115℃で5時間撹拌したにすぎなかった(140℃段階なしで)。
【0114】
H形基準で、1.90当量/lの総容量のH形の1590mlのヘテロ分散陽イオン交換体を得た。
【0115】
実施例9(発明)
9a)ジエチレングリコールジビニルエーテルでのマクロ孔質ビーズポリマーの製造
ゲート撹拌機、冷却器、温度センサーおよびサーモスタットならびに温度記録計付き4リットル撹拌反応器で、1112gの脱イオン水、7.86gのリン酸水素二ナトリウム12水和物および149gのメチルヒドロキシエチルセルロースの2.2%水溶液からなる水性初期装入物を得た。
【0116】
その後、812gのスチレン、140.2gのジビニルベンゼン(81.8%)、19.1gのジエチレングリコールジビニルエーテル、421gのイソドデカンおよび5.73gの第三ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの混合物を加えた。反応器内容物を室温で20分間放置し、その過程で2相が形成した。次に撹拌機のスイッチを300rpmで入れ、混合物を室温で30分間撹拌した。反応器内容物を次に70℃で7時間、95℃で2時間加熱した。冷却後に、混合物を315μmスクリーン上で洗浄し、乾燥させた。959gのマクロ孔質ヘテロ分散ビーズポリマーを得た(r=回転数)。
【0117】
9b)マクロ孔質陽イオン交換体の製造
本手順は、9a)からの350gのビーズポリマーを115℃(100℃での代わりに)で硫酸へ導入したことを除いて、比較例C2b)に似ていた。
【0118】
H形基準で、1.90当量/lの総容量のH形の1600mlのヘテロ分散陽イオン交換体を得た。
【0119】
比較例4(非発明)
C4a)コモノマーなしのマクロ孔質ビーズポリマーの製造
本手順は、ジエチレングリコールジビニルエーテルを削除したことを除いて、実施例9a)での通りであった。936gのマクロ孔質ヘテロ分散ビーズポリマーを得た。
【0120】
C4b)マクロ孔質陽イオン交換体の製造
本手順は、C4a)からの350gのビーズポリマーを115℃で硫酸へ導入したことを除いて、実施例9b)での通りであった。
【0121】
H形基準で、1.87当量/lの総容量のH形の1640mlのヘテロ分散陽イオン交換体を得た。
【0122】
【表2】

【0123】
実施例10
樹脂の酸化安定性の測定
実施例2〜8からのおよび比較例C1〜C3からの樹脂を赤化試験にかけた。
【0124】
pHは、どのくらい多くの可溶性酸(主にポリスチレンスルホン酸、いわゆる浸出した、樹脂のスルホン酸基の加水分解からの少量の硫酸と組み合わせられた)が所与の貯蔵時間後に空気下で形成されたかに関する情報を与え、225nmでの吸収は、放出された水溶性芳香族化合物、この場合オリゴマーおよびポリマーのスチレンスルホン酸についての尺度である。
【0125】
本試験で、
−溶出液のpHが高ければ高いほど、樹脂によって放出される可溶性酸の量はより少なく、樹脂の酸化安定性はより高い、
−225nmでの溶出液の吸収値が低ければ低いほど、樹脂によって放出される可溶性芳香族化合物の量がより少なく、樹脂の酸化安定性はより高い、
−溶出液の目視評価で標点が低ければ低いほど、溶出液はより無色である。
【0126】
異なる実施例および比較例についての浸透圧安定性試験および酸化安定性試験の結果を表2に報告する。
【0127】
表2は、本発明の強酸性陽イオン交換体が比較例の総容量に決して劣らない総容量を有することを示す。
【0128】
本発明の強酸性陽イオン交換体が、最新技術に相当する比較例の値に匹敵するかまたはそれより高い、非常に高い元来のおよび膨潤安定性値を有することを理解することができる。
【0129】
全ての発明陽イオン交換体は、赤化試験で、比較例より高いpHの溶出液および225nmでより低い吸収値の溶出液を有する。これは、本発明の樹脂からの可溶性ポリスチレンスルホン酸の放出が有意に減少したこと、それ故に本発明の樹脂のより高い酸化安定性を実証する。
【0130】
表2はまた、本発明の強酸性陽イオン交換体の特性プロフィールの向上がジビニルエーテル化合物(実施例2、3、4、7)について特に著しいことを示す。
【0131】
実施例2、3および4の比較は、重合でビニルエーテルおよび/またはビニルエステルを加えることの影響がコモノマー組み入れのタイプとおよびその時間と無関係であることを示す。
【0132】
比較例4と比較して実施例9は、ビニルエーテルおよび/またはビニルエステルの本発明の組み入れの結果として強酸性陽イオン交換体の酸化安定性の向上がまたマクロ孔質樹脂の場合にも起こることを明らかにする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族モノマー、架橋剤および0.2〜20重量%のビニルエーテルおよび/またはビニルエステルから形成されるビーズポリマーをスルホン化することによって得られる強酸性陽イオン交換体。
【請求項2】
前記ビーズポリマーが少なくとも1つのモノエチレン系不飽和芳香族モノマー、少なくとも1つの架橋剤および少なくとも1つのビニルエーテルまたはビニルエステルの共重合体である、請求項1に記載の強酸性陽イオン交換体。
【請求項3】
単分散粒度分布を有する、請求項1または2に記載の強酸性陽イオン交換体。
【請求項4】
シード−フィード法によって製造されるビーズポリマーから得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の強酸性陽イオン交換体。
【請求項5】
a)単分散またはヘテロ分散ビーズポリマーがビニル芳香族モノマー、架橋剤および0.2〜20重量%のビニルエーテルおよび/またはビニルエステルから懸濁重合によって製造され、そして
b)これらのビーズポリマーが硫酸、三酸化硫黄および/またはクロロスルホン酸の作用によって強酸性陽イオン交換体に変換される
強酸性陽イオン交換体の製造方法。
【請求項6】
飲料水処理での、発電所水および超純水の生産での、グルコースおよびフルクトースのクロマトグラフ分離のための、ならびに様々な化学反応用の触媒としての前記強酸性陽イオン交換体の使用。
【請求項7】
前記強酸性陽イオン交換体がフェノールおよびアセトンからのビスフェノールA製造における触媒として使用される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ミクロ孔質粒度分布を有する、請求項1または2に記載の強酸性陽イオン交換体。

【公開番号】特開2009−149887(P2009−149887A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−321361(P2008−321361)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】