説明

障害物検出センター装置、障害物検出システム及び障害物検出方法

【課題】位置情報等の軌跡情報を記録する装置、及びその情報を送信する装置を搭載した車両の情報を利用して、故障や事故等で停止した道路上の停止車両や、道路上の落下物等の障害物が存在する可能性を間接的に把握できるようにする。
【解決手段】地上の障害物検出センター装置30は、車両の軌跡情報PIを受信する路上装置31を備え、受信した複数の車両20の軌跡情報PIに基づいて車両20の車線変更地点を検出し、その車線変更の台数に基づいて道路上に障害物90が存在することを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路走行中の複数の車両から軌跡情報を収集し、通常走行と障害物の発生場所周辺の走行との違いを検出し、障害物の発生場所を特定することができる、障害物検出センター装置、障害物検出システム及び障害物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路上に事故車両、故障車両、搬送途中に落下した積荷、崩れた土砂等の障害物が発生したとき、この障害物をいち早く検出して、後続の車両に知らせたり、後続の車両を誘導したりする必要がある。
従来、高速道路等の重要な幹線道路では、道路の安全走行を維持するために、定期的に専用のパトロール車両を走らせている。これにより、故障車等の比較的長く停止した車両を検出して、当該車両が安全に措置されるように援助、指示を行ったり、道路上の落下等の障害物や土砂を発見して取り除いたりして、事故の発生を未然に防止している。しかし費用の観点から、パトロールができる頻度には限界があるため、迅速な障害物の発見ができていない。
【0003】
かかる問題を解決するため、道路にカメラを設置して、画像処理をして障害物による交通流の異常を検出することが行われている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平7−22488号公報
【特許文献2】特開平10−40490号公報
【特許文献3】特開2002−163754号公報
【特許文献4】特開2004−355662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、道路上の障害物の場所を特定するためには、道路の広い範囲にわたって高密度にカメラを設置することが必要である。が、カメラを多く設置するには経費がかかる。
一方、経費を削減するために、カメラの設置密度を下げることも考えられるが、そうすれば、障害物の発生した場所をおおまかにしか特定できない。そして、その交通流の異常が、交通事故車両等の障害物によるものか、自然渋滞によるものかの判定が難しくなり、障害物警告情報が意味をなくし、走行中のドライバへの間違った情報を提供するおそれもある。しかも、救急車両を必要とする事態の判定の有無がつけにくく、交通事故時において救急搬送車両等の初期初動の迅速さを欠いてしまう。
【0005】
さらに、可視光線感知のカメラでは、夜間や悪天候時の検出が困難である。一方、赤外線感知のカメラは、夜間等の撮影に向いているが、機器自体が高価なことにより、莫大な経費がかかってしまう。
もし、パトロールという特定車両の意図的な走行ではなく、バス、トラック、あるいは一般車両に容易に搭載できるような、車両の軌跡情報を蓄積、解析し、その情報を発信する車載装置があれば、上記のような停止車両や障害物が存在する可能性が高い地点の存在が判定できる可能性がある。また、ドライバ自身、意識せずとも、障害物検出センターは道路の軌跡情報を収集できるので、障害物の検出のための情報を一括管理でき、非常に効率的である。
【0006】
さらに、少なくとも当該地点にパトロール車両が到着するまでは、上記停止車両や障害物等の道路上の障害の存在する可能性が高いことを、その地点に向かう車両に自動的に情報提供することにすれば、走行の安全が計れ、事故の防止につなげることができる。また、停止車両が事故車両による場合には、2次的な事故の発生を押さえることができる。
そこで、本発明の目的は、位置情報等の軌跡情報を記録する装置、及びその情報を送信する装置を搭載した車両の情報を複数利用して、故障や事故等で停止した道路上の停止車両や土砂、道路上の落下物等の障害物が存在する可能性が高いことを間接的に把握できる障害物検出センター装置、障害物検出システム及び障害物検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の障害物検出センター装置は、車両の軌跡情報を受信するための受信手段と、前記受信手段で受信した車両の軌跡情報に基づいて車両の車線変更を検出する車線変更検出手段と、道路上の所定の区域において前記車線変更検出手段に基づいて一方向への車線変更をした車両の台数の、当該区域を通過した車両の台数に対する比が、第1の閾値以上になっている場合に、当該区域内に障害物が存在することを検出する障害物検出手段とを備えるものである(請求項1)。
【0008】
この発明によれば、位置、方位、速度や時刻等の軌跡情報を記録する装置、及びその情報を送信する装置を搭載した車両の情報を複数利用して、故障や事故等で停止した道路上の停止車両や道路上の落下物等の障害物が存在する可能性が高いことを間接的に判定することができる。そして、障害物検出センター装置は、道路上のある区域を走行している車両の車線変更が第1の閾値以上みとめられることで、当該区域内に障害物があることを、検出することができる。
【0009】
また、障害物検出センター装置の前記障害物検出手段は、所定の処理周期に検出した「当該区域を通過した車両の台数」が第2の閾値以上となっている場合に、前記比の算出を有効にするものである(請求項2)。この発明によれば、道路の交通量が少ない場合に、車線変更をした車両の台数の当該区域を通過した台数に対する比が第一の閾値以上になっていても、所定の時間内に第2の閾値未満の通過台数しか認められないときは、障害物検出センター装置は、障害物が存在する可能性が高くないとして、障害物が存在することを検出しないことができる。これにより、障害物検出センター装置は、精度よく障害物の検出をすることができる。
【0010】
また、前記障害物検出手段は、前記一方向の車線変更と、逆方向の車線変更とを対で行うことに基づき障害物の存在を検出することができる(請求項3)。この発明によれば、道路上に障害物が存在しているとき、当該地点を走行する車両は、障害物を避けて走行する退避走行を行う。この退避走行とは、車両走行中の道路上に障害物があれば、多くのドライバは、障害物を避けるため当該地点の上流で車線変更し、当該地点通過後に元の車線に戻り走行する、という一対の車線変更を伴う走行パターンのことである。そこで、当該車両の位置、方位、速度や時刻等の軌跡情報が解析されれば、当該車両の車線変更の存在の有無と車線変更を行った地点とが検出でき、しいては、退避走行の有無を検出することができる。したがって、複数の車両からの軌跡情報から、所定の時間内に、ほぼ同一の位置での退避走行が行われていることが確認できれば、障害物検出センター装置は、当該地点に障害物が存在している可能性が高い、と判定できる。
【0011】
また、障害物検出センター装置の前記車線変更検出手段は、時刻tの関数で表した当該車両の方位と道路の方位との角度差で表される進路角θ(t)において、時刻t1に0より大きく第3の閾値以下となり、時刻t2に第4の閾値以上となり、時刻t3に0より大きく第3の閾値以下になったとき(ただし、時刻t1<t2<t3とする。以下、同じ。)に、前記車両の通行している車線の幅、当該車両の速度、時刻t1からt3までの時間及び時刻t1からの経過時間の関数で表される車線変更の角度推移パターンφa(t)との差Δθ(t)が、時刻t1からt3までの間に第5の閾値以下である場合に、当該車両が時刻t1からt3にかけての走行で右側への車線変更を行った、と検出することができる(請求項4)。
【0012】
さらに同様に、逆方向への前記車線変更検出手段は、前記進路角θ(t)において、時刻t1に0より小さく第6の閾値以上となり、時刻t2に第7の閾値以下となり、時刻t3に0より小さく第6の閾値以上となったときに、前記車両の通行している車線の幅、当該車両の速度、時刻t1からt3までの時間及び時刻t1からの経過時間の関数で表される車線変更の角度推移パターンφb(t)との差Δθ(t)が、時刻t1からt3までの間に第8の閾値以下である場合に、当該車両が時刻t1からt3にかけての走行で左側への車線変更を行ったことを検出することができる(請求項5)。
【0013】
これらの発明によれば、障害物検出センター装置は、車線変更を行うときの前記関数に沿った進路角の変化をともなう走行を比較することで、当該車両が車線変更をしたか否かを、しいては、退避走行をしたか否かを検出することが容易にできる。
また、障害物検出センター装置の前記障害物検出手段は、前記一方向の車線変更の地点から逆方向の車線変更の地点までの走行速度の、通常時の走行速度に対する比が、第9の閾値以下であることを条件に加えて、障害物の存在を検出することができる(請求項6)。この発明によれば、障害物を避けて通るために退避走行目的で車線変更し障害物に隣接する車線を走行する場合、通過車両は、通常時に比べて速度が低下するので、障害物検出センター装置は、障害物の検出に当該車両の速度の変化を加えることができる。ここで、通常時とは、道路上に障害物が存在しない時のことをいう。これにより、障害物検出センター装置は、さらに精度よく障害物の検出をすることができる。
【0014】
また、障害物検出センター装置の前記車線変更検出手段は、方向指示器の点灯情報に基づき車線変更を検出することができる(請求項7)。この発明によれば、障害物検出センター装置は、車両から送信された軌跡情報に含まれる方向指示器の点灯情報に基づき、容易に車線変更を検出することができ、精度よく障害物の検出をすることができる。
また、障害物検出センター装置の前記障害物検出手段は、前記一方向への車線変更をした車両の台数の、当該区域を通過した車両の台数に対する比が、第1の閾値以上になっている場合に、当該区域内での前記逆方向への車線変更をした車両の台数の、前記通過した車両の台数に対する比が、第10の閾値以上の場合は、当該区域には障害物が存在することを検出しないことができる(請求項8)。この発明によれば、障害物検出センター装置は、道路上に障害物がないにもかかわらず偶然にも複数車両が同一地点で退避走行に酷似した車線変更を行った場合に、障害物方面への車線変更が認められることにより、障害物が存在しない、と判定することができる。また、障害物検出センター装置による特定の区域において障害物の検出がなされていても、障害物が存在している方向への車線変更がまれに認められることがある。これは、パトロールカーや救急車等の緊急車両のように、障害物の除去のために障害物に近づく車両が存在するためである。このとき、障害物の存在が取り消されることのないようにするため、第10の閾値を設けた。
【0015】
また、道路上の第1の区域及びその上流の第2の区域を走行する車両の軌跡情報を受信し、受信した車両の軌跡情報に基づいて前記第1の区域及び第2の区域における車両の車線変更を検出し、当該車両の前記第1の区域における車線変更が検出された場合に、当該車両の前記第2の区間における車線変更の頻度が第12の閾値以下であれば、前記第1の区域における車線変更台数として重み付けを大きくした台数を採用し、前記第2の区間における車線変更の頻度が第12の閾値より大きければ、前記第1の区域における車線変更台数として重み付けを小さくした台数を採用することにより、当該第1の区域内に障害物が存在することを検出することができる。このように走行車両の走行履歴を考慮して、実績上、車線変更の少ない車両が車線変更したときは重みを大きくし、普段から車線変更の多い車両が車線変更したときは重みを小さくして車線変更台数を算出することにより、障害物の存在検出の精度をさらに向上させることが可能になる。
【0016】
なお、当該車両の前記第1の区域における車線変更が検出された場合に、当該車両の前記第2の区域における車線変更の頻度が前記第12の閾値より大きいときであっても、当該車両の前記第1の区域と前記第2の区域との車線変更の挙動が異なっていれば、前記第1の区域における車線変更台数として1以上の所定台数を採用し、前記第1の区域と前記第2の区域との車線変更の挙動が同じであれば、前記第1の区域における車線変更台数を0台としてもよい。今回の走行ルート上の実績から車線変更の多いと判定される車両であっても、車線変更したときの挙動が実績と異なっていれば、重みを小さくする必要はないからである。
【0017】
また、本発明の障害物検出センター装置は、車両の軌跡情報を受信するための受信手段と、前記受信手段で受信した車両の軌跡情報に基づいて車両の車線変更を検出する車線変更検出手段と、複数の車両の、一方向への車線変更を行った平均地点と、逆方向への車線変更を行った平均地点との間に障害物が存在することを検出する障害物検出手段と、を備えるものである(請求項11)。
【0018】
この発明によれば、退避走行目的で車線変更をする場合、上述のとおり、一方向への障害物通過前の車線変更をし、障害物を通過したのち、すみやかに逆方向への障害物通過後の車線変更を行う。そして、多くのドライバは、ほぼ同一地点で、退避走行をすることがわかっている。この複数の車両による障害物通過前及び障害物通過後の車線変更を行った地点を検出し、その平均を求めることで、ドライバが障害物通過前及び障害物通過後の車線変更をよく行う地点である平均地点を求めることができる。これにより、複数の車両における障害物通過前の車線変更の平均地点と障害物通過後の車線変更の平均地点とを求めることで、両地点の間に障害物が存在する、と容易に検出することができる。
【0019】
また、本発明の障害物検出センター装置は、車両の軌跡情報を受信する受信手段と、複数の車両からの前記軌跡情報に基づいて、各車線を所定の距離に細分化した区間毎に当該車両の通過台数を加算する加算手段と、前記加算手段によるある区間の車両の通過台数の、当該道路を通過する車両の通過台数の和に対する比が、第11の閾値以下である場合に、当該区間に障害物が存在することを検出する障害物検出手段とを備えている(請求項12)。この発明によれば、道路を区間に細分してその区間を通過する車両を検出する。障害物が存在する車線区間は車両が通行できず、障害物が存在しない車線区間は車両が通行できることに着目をして、障害物検出センター装置は、ある区間の通過台数に基づき、より詳細に障害物の場所を特定することができる。また、障害物検出センター装置による特定の区域において障害物の検出がなされていても、障害物が存在している方向への車線変更がまれに認められることがある。これは、パトロールカーや救急車等の緊急車両のように、障害物の除去のために障害物に近づく車両が存在するためである。このとき、障害物の存在が取り消されることのないようにするため、第11の閾値を設けた。
【0020】
また、本発明の障害物検出システムは、車載装置と、道路上に障害物が存在していることを検出する障害物検出手段を有する障害物検出センター装置とを備え、前記車載装置は、車両の位置を検出する位置検出手段と、車両の方位を検出する方位検出手段と、前記位置検出手段及び前記方位検出手段による情報と検出した時刻とを軌跡情報として蓄積する軌跡情報蓄積手段と、前記軌跡情報蓄積手段による情報に基づいて、当該車両の車線変更の地点を検出する車線変更検出手段と、前記車線変更検出手段による情報を送信する通信手段とを含み、障害物検出手段は、前記複数の車両の車線変更の地点が道路上の所定の区域内に含まれるか否かを判定し、含まれると判定した場合に、当該区域内に障害物が存在することを検出する(請求項13)。この発明によれば、車線変更の検出を車載装置で行っている。
【0021】
また、本発明の障害物検出方法は、車両の軌跡情報を受信し、受信した車両の軌跡情報に基づいて車両の車線変更を検出し、道路上の所定の区域において一方向への車線変更をした車両の台数の、当該区域を通過した車両の台数に対する比が、第1の閾値以上になっている場合に、当該区域内に障害物が存在することを検出する方法である(請求項14)。上記は、請求項1記載の障害物検出センター装置と同一の発明にかかる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、道路上の障害物の存在を検出する障害物検出システムを示す概略図である。
障害物検出システムは、車載装置10を搭載したプローブ車両20と路上装置31とで通信を行い、路上装置31に接続された障害物検出センター装置30において当該車両20の位置情報等を含む軌跡情報PIを解析し、道路上の障害物の存在を検出するシステムである。
【0023】
車両走行中の道路上に障害物があれば、多くのドライバは、障害物を避けるため当該地点の上流で車線変更し、当該地点通過後に元の車線に戻り走行する、という一対の車線変更を伴う走行パターン(以下、「退避走行」という)が多くなる。上記システムは、複数の車両からこの退避走行を検出することで、道路上の障害物の場所を検出するシステムである。
【0024】
まず、プローブ車両20の車載装置10は、当該プローブ車両20の軌跡情報PIを収集する。車載装置10は、収集した当該プローブ車両20の軌跡情報PIを蓄積し、それを路上装置31に送信する。そして、路上装置31へ送信された軌跡情報PIは、障害物検出センター装置30へ送信される。
次に、軌跡情報PIを受信した障害物検出センター装置30は、複数の車両20から収集された軌跡情報PIを解析し、道路上に障害物が存在するかを判定する。特定の道路上に障害物が認められたとき、障害物検出センター装置30は、障害物警告情報RIを作成する。
【0025】
作成された障害物警告情報RIは、関連機関や路上を走行する各車両、可変表示板等に送られ、結果として、当該道路上を走行しているドライバに対して注意を喚起する。
図2は、プローブ車両20に搭載された車載装置10を示すブロック図である。ここでは、図1も参照しながら、図2に図示される車載装置10を説明する。
図2に示す車載装置10は、車両の軌跡情報を検出する軌跡情報センサ21等の情報を処理する入力処理部11と、入力処理部11に入った情報を受け取り当該車両の軌跡情報を判定する判定部12と、判定部12で判定された軌跡情報を路上装置31へと送信する通信部13と、路上装置31から受信した障害物警告情報RI等を各々の車載装置10に合わせたデータにして出力するための出力処理部14と、判定部12でデータ加工された情報を蓄積するための記録部15とを備える。
【0026】
前記軌跡情報センサ21は、例えば、プローブ車両20の位置や方位を感知できる衛星からの電波を利用したGPS(Global Positioning System)受信機22、車両の方向指示器の点灯を検出する指示器点灯情報センサ23や、車両の走行速度を検出する速度センサ24等を総称したものをいう。なお、方位については、ジャイロスコープ等の方位センサによって検出された方位を用いても良い。
【0027】
前記軌跡情報センサ21からの位置、方位、速度等の情報、計時センサ25の時刻情報は、入力処理部11で入力処理される。入力処理部11で処理された情報は、判定部12に入力されて軌跡情報PIとして生成されて、通信部13に渡され、路上装置31に向けて送信される。
ここでの車載装置10と路上装置31との局所間の通信方式は、例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communication)といった極近距離に適した通信方式があげられる。またこの他に電波ビーコン、光ビーコン、信号制御関連機器の情報板等の情報提供関連機器等が挙げられる。また、比較的広域の通信であれば、情報提供関連機器や信号制御関連機器との無線LAN等が挙げられる。
【0028】
複数のプローブ車両20から軌跡情報PIを受信した路上装置31は、障害物検出センター装置30にこれらの軌跡情報PIを送信する。障害物検出センター装置30は、後述する検出手段により、複数の軌跡情報PIに基づき、がけ崩れ、道路上の事故車両や故障停止車両等の障害物の有無を検出する。当該道路上に障害物が検出されたとき、障害物検出センター装置30は、当該道路上に障害物がある旨、を含んだ障害物警告情報RIを、障害物の存在が検出された地点より上流の路上装置31や当該地点を走行中の車両に送信し、また通信回線を通して、警察、消防署、放送局、国土交通庁、周辺地方自治体等の各関連機関に送信する。
【0029】
そして、路上装置31から障害物警告情報RIを受信した車両は、車載したディスプレイやスピーカから、画像や音、音声によりドライバに走行上の注意を喚起する。
また、障害物の存在を検出した障害物検出センター装置30は、路上にある路側ビーコンや可変表示板等と、有線通信網もしくは無線通信網を通して接続されており、可変表示板により障害物警告を掲示することにより、当該道路上を走行している車両に対して注意を促す。
【0030】
図3は、障害物検出システムの他の通信形態を示す概略図である。このシステムでは、図1に示すシステムと違い、プローブ車両20が路上装置31を介さず直接障害物検出センター装置30と通信している部分に相違がある。
プローブ車両20は、図3に示すとおり、携帯電話や自動車電話等の通信端末19と車載装置10とを接続することにより、路上装置31を介さずに障害物検出センター装置30と直接通信ができる。
【0031】
なお、上述の通信手段は、情報の送受信ができればよく、上述の携帯電話や自動車電話等の通信端末だけに限られることはなく、他の通信手段を用いてもよい。
以下、車両が障害物90を避けるときの車線変更を検出する車線変更検出の手順を説明する。
図4は、障害物検出センター装置30における車線変更の検出手段を説明するための概略図である。ここでは、道路を、例えば、100m毎に、道路区域W1、W2で区分する。
【0032】
車両走行中の道路上に障害物90があれば、当該道路上を走行中のドライバは、上述のとおり、一対の車線変更を伴う退避走行をする傾向がある。
そこで、プローブ車両20の位置、方位、速度や時刻等の軌跡情報が解析されれば、当該プローブ車両20の車線変更の存在の有無と車線変更を行った地点とが検出でき、しいては、退避走行の有無を検出することができる。したがって、複数のプローブ車両20からの軌跡情報PIから、所定の時間内に、ほぼ同一の地点での退避走行が行われていることが確認できれば、当該地点に障害物90が存在している可能性が高い、と判定できる。
【0033】
右側の車線への車線変更のモデル式として、ここでは、以下の式を提案する。
φa(t)=D{1−cos(2πt/T)}/VT ・・・(A)
また、左側の車線への車線変更のモデル式として、以下の式を提案する。
φb(t)=D{cos(2πt/T)−1}/VT ・・・(B)
ここで、φは角度推移パターン(rad)、Dは車線変更の幅(m)、Vは走行速度(m/s)、Tは車線変更の所要時間(s)、tは時刻である。車線変更の幅Dは高速道路では3.5(m)程度である。比較的すいている高速道路では、経験上、V=25m/s(=時速90km)、T=5s (0≦2πt/T<2π)となる。角度は、車両進行方向に対して時計回りに正とし、右側に車線変更をするときは正、左側に車線変更をするときは負、の値をとる。
【0034】
なお、当該プローブ車両20の車線変更の所要時間Tは、ドライバの特性を加味できるよう、車両毎に任意に変更できるものとしてもよい。
軌跡情報PIに方位情報が含まれている場合には、前記方位情報を各時刻における車両の絶対方位Θとする。一方、軌跡情報PIに方位情報が含まれておらず、位置情報のみが含まれている場合には、各時刻の位置とその1秒前の位置を結んだ線分の方位を求め、前記線分の方位を車両の絶対方位Θとみなす。そして、車両の絶対方位Θと道路の絶対方位Φとの差を、進路角θとする。
【0035】
また、軌跡情報PIの位置検出がGPS受信機からの情報のみによる場合には、道路上の高架道路の存在等により、位置にバラツキが生じる場合があるが、移動平均等によって平滑処理を行ってから、車両の進路角θを求めることができる。
なお、当該地点の道路の絶対方位Φが不明なときは、当該地点を過去に通過したプローブ車両20の走行方位の中央値、平均値等を用い、演算により割り出してもよい。
【0036】
まず、右側への車線変更パターンについて説明する。車載装置10は、軌跡情報センサ21に基づいて、一定時間(例えば、1秒)毎に進路角θを算出している。
ある区域で、車両の進路角θが最大値をとるときの時刻をTaとする。時刻Taにおいて進路角θ(Ta)と第4の閾値H3(例えば、20度)との関係が、
θ(Ta)≧H3
を満たしているとき、Taの前後の時刻Ta−T/2からTa+T/2までの軌跡情報を解析する。そして、上記進路角θ(t)と第3の閾値H2(例えば、5度)との関係が、
0<θ(Ta−T/2)≦H2
かつ、
0<θ(Ta+T/2)≦H2
を満たす場合、時刻Ta−T/2からTa+T/2までの各時刻tにおいて、上記進路角θ(t)と上記式(A)の角度推移パターンφa(t)と第5の閾値H4(例えば、10度)との関係が、
Δθ(t)=abs{φa(t)−θ(t)}≦H4 (abs{}は絶対値を表す)
を常に満たすとき、このプローブ車両20は右側への車線変更を行ったと判定することができる。
【0037】
次に、左側への車線変更パターンについて説明する。
ある区域で、車両の進路角θが最小値をとるときの時刻をTbとする。時刻Tbにおいて進路角θ(Tb)と第7の閾値H6(例えば、−20度)との関係が、
θ(Tb)≦H6
を満たし、Tbの前後の時刻Tb−T/2からTb+T/2までの軌跡情報を解析する。そして、上記進路角θ(t)と第6の閾値H5(例えば、−5度)との関係が、
H5≦θ(Tb−T/2)<0
かつ、
H5≦θ(Tb+T/2)<0
を満たす場合、時刻Tb−T/2からTb+T/2までの各時刻tにおいて、上記進路角θ(t)と上記式(B)の角度推移パターンφb(t)と第8の閾値H7(例えば、10度)との関係が、
Δθ(t)=abs {φb(t)−θ(t)}≦H7 (abs{}は絶対値を表す)
を常に満たすとき、このプローブ車両20は左側への車線変更を行ったと判定することができる。
【0038】
そして、車線変更の地点は、例えば、右側への車線変更ならばθ(t)が最大値(上述のθ(Ta))となる地点、左側への車線変更ならばθ(t)が最小値(上述のθ(Tb))となる地点、とする。
以上により、右側への車線変更の地点、左側への車線変更の地点を検出することができる。そして、障害物検出センター装置30は、特定パターンの退避走行をした車線変更の地点を含む道路区域W1に、障害物90が存在している、と判定する。
【0039】
また、後に詳しく説明するように、右側への車線変更と左側への車線変更とを対で行った場合に、2つの車線変更をした地点間の区域に障害物90が存在している、と判定してもよい。これは、路上に障害物90が存在しているときには、一定時間以上にわたる一方向への車線変更と元の車線に戻る車線変更を伴う一対の車線変更である退避走行が多く認められることが容易に予測できるからである。そこで、上記の手段を用い当該車両の車線変更の地点の検出することで、退避走行に合致しているか否かが容易に判定できる。
【0040】
また、前半の退避走行、例えば、右側への車線変更は、そのタイミングがドライバ特性や交通状況によりばらつくことが予想されるが、後半の退避走行、例えば、左側への車線変更は、障害物を通りすぎてのちに、速やかになされる、と考えられる。よって、退避走行位置としては、後半の車線変更の地点を判定基準とすることもできる。
なお、上述の退避走行において、前半の車線変更を右方向とし、後半の車線変更を左方向としたが、障害物の存在位置により、前半の車線変更を左方向、後半の車線変更を右方向としてもよい。
【0041】
また、事故車両などの障害物に近づく車両(例えば、救急車両やパトロールカー)がある。この場合、当該車両は退避走行を行わないのが普通である。また、検出誤差により車線変更の検出漏れも考えられる。
そこで、第1の閾値を設け、車線変更をした車両の台数の、当該区域を通過した車両の台数に対する比が、1未満であっても第1の閾値を超える割合の車両が車線変更を行っていれば、障害物が存在すると見なす。これにより、正しく障害物の検出がなされるようにすることができる。第1の閾値は1より若干少ない値に設定するとよい。第1の閾値の最適値はシステム運用経験から決定すればよいが、例えば0.90という値が例示できる。
【0042】
ところで、1台のみの退避走行車両の検出では、そのプローブ車両20が偶然、退避走行をした場合に、障害物90がなくても、退避走行をした台数(例えば、1台)の当該区域を通過した台数(例えば、1台)に対する比(例えば、1)が第1の閾値(例えば、0.95)以上となり、障害物90がある、と誤って判定してしまう。このため、複数のプローブ車両20による軌跡情報PIで判定することが好ましい。
【0043】
そこで、所定の区域において、第2の閾値(例えば、10台)以上のプローブ車両20からのデータを取得すれば、この判定を行うこととする。ただし、制限時間を設けなければ、この判定に時間がかかり過ぎるため、処理周期(例えば、5分)を設けて、この処理周期内に第2の閾値を超えたかどうかで判定する。
さらに、退避走行目的で車線変更し、障害物90の横を走行する場合には、通常時に比べて速度が低下することから、このことを障害物の検出の要件としてもよい。この障害物の存在判定では、通過車両は、障害物の影響を受けずに走行している通常時に比べて速度が低下するので、通常時の速度からの低下が第9の閾値以上(例えば、時速90kmから45km以下への速度の5割以上の減速)のときに退避走行を行っている、と判定する。これにより、退避走行の判定の精度を増すことができる。
【0044】
なお、上述の第9の閾値は、その時間帯の道路の走行状況、最高速度等を加味して、任意に設定してもよい。これにより、障害物検出センター装置は、障害物の検出の精度を高めることができる。
さらに、渋滞していない自由走行時に障害物が発生すると、これがボトルネックとなって渋滞が上流側に伸びたり、渋滞の発生はなくとも上流側の流れが絞られて速度が低下したり、あるいは当該地点を含む区間の旅行時間が増加したりすることから、障害物の存在判定の精度を更に向上するため、これらの渋滞の発生を、退避走行の判定の前提に加えることもできる。
【0045】
また、軌跡情報PIに方向指示器の点灯情報が含まれている場合には、障害物検出センター装置30は、上述の車線変更のモデル式を用いなくてもよく、一定時間(例えば、3秒)以上の右方向あるいは左方向への方向指示器の点滅をもって、右方向あるいは左方向への車線変更を検出することができ、退避走行の検出をすることができる。
ところで、車線変更の検出は、上述のとおり、プローブ車両20から送信される軌跡情報PIを元に、障害物検出センター装置30で行われる。しかし、送信される軌跡情報PIが増えるにつれ、障害物検出センター装置30が処理すべき軌跡情報PIが増え、それにともない、処理時間が増える。
【0046】
そこで、当該プローブ車両20に搭載された車載装置10に車線変更検出機能を備えることもできる。これにより、車載装置10は当該プローブ車両20の車線変更を検出することができ、さらには、当該プローブ車両の退避走行を検出でき、退避走行を含む情報を軌跡情報PIとして、車載装置10の記録部15に記録することができる。
したがって、プローブ車両20が送信する情報を、車線変更情報を含んだ軌跡情報PIとすることができる。これにより、本来、障害物検出センター装置30で行う処理を車載装置10内で処理判定することで、障害物検出センター装置30の負荷を軽減することができ、迅速な情報提供をすることができる。
【0047】
なお、実際に障害物があるか否かの判定は、障害物検出センター装置30で収集された、複数の車両の軌跡情報PIに基づいて行われる。
図5は、障害物検出システムの障害物検出センター装置30側で行われる処理を説明するフローチャートである。図1及び図2も参照しながら、図5の流れに従って、この実施形態における上述の車線変更による障害物の検出の手順を説明する。
【0048】
まず、障害物検出センター装置30は、路上装置31を介しプローブ車両20と交信を試みる(ステップS5−1)。プローブ車両20と通信が確立できれば(ステップS5−1のYes)、障害物検出センター装置30の蓄積された情報の中に、複数の軌跡情報PIに基づき検出した障害物警告情報RIの有無を確認する(ステップS5−2)。障害物警告情報RIがあれば(ステップS5−2のYes)、障害物検出センター装置30は、路上装置31を介し当該プローブ車両20に向けて当該障害物警告情報RIを送信する(ステップS5−3)。
【0049】
一方、ステップS5−2において障害物警告情報RIが確認できないとき(ステップS5−2のNo)は、次のステップに進む。
次に、プローブ車両20において車載装置10の記録部15に記録された軌跡情報PIの有無を確認する(ステップS5−4)。ステップS5−4において当該プローブ車両20の軌跡情報PIが確認できれば(ステップS5−4のYes)、当該プローブ車両20の車線変更検出機能の搭載の有無を確認する(ステップS5−5)。車線変更検出機能の搭載が確認できなければ(ステップS5−5のNo)、障害物検出センター装置30は、路上装置31を介し送信された当該プローブ車両20の軌跡情報PIの位置情報や方位情報等に基づいて前述した退避走行の検出を行う(ステップS5−6)。そこで、退避走行が検出されれば(ステップS5−7のYes)、障害物検出センター装置30に所定の道路上で退避走行があったか、等の旨の退避走行の検出を記録する(ステップS5−8)。
【0050】
一方、ステップS5−5において当該プローブ車両20に車線変更検出機能の搭載が確認でき(ステップS5−5のYes)、当該プローブ車両20の退避走行が検出されたとき(ステップS5−9のYes)には、障害物検出センター装置30は、路上装置31を介し送信されたプローブ車両20内の退避走行を含む軌跡情報PIを読み取り(ステップS5−10)、次のステップに進む。
【0051】
ここで、所定時間内で、所定区域内のプローブ車両20からの軌跡情報PIに含まれる退避走行の検出記録を参照し(ステップS5−11)、所定時間内に第2の閾値(例えば、10台)以上の通過台数があり、退避走行を行った車両の台数の全通過台数に対する比が第1の閾値(例えば、0.90)以上であるかを確認する(ステップS5−12)。所定区域内においてそれらが確認できれば(ステップS5−12のYes)、障害物検出センター装置30は、当該区域内に障害物90が存在すると検出判定する(ステップS5−13)。
【0052】
そして、障害物検出センター装置30は、当該区域内に障害物90が存在する旨、の障害物警告情報RIを、当該区域の上流の路上装置31や関連機関に送信し、ドライバに注意を促す掲示等をする(ステップS5−14)。
一方、ステップS5−1において車両との通信が確立できなかったとき(ステップS5−1のNo)、ステップS5−4において軌跡情報PIを確認できなかったとき(ステップS5−4のNo)、ステップS5−7において退避走行を検出できなかったとき(ステップS5−7のNo)、ステップS5−12で障害物が存在されると思われる道路上で、ある時間帯で退避走行車両が認められなかったとき(ステップS5−12のNo)、及びステップS5−9においてプローブ車両20から退避走行を検出できなかったとき(ステップS5−9のNo)は、ステップS5−1に再び戻る。
【0053】
障害物検出センター装置30は、上記ステップS5−1からステップS5−14までの処理を、所定の周期に基づいて行う。
なお、上記処理は障害物検出センター装置30で行うことを前提に説明したが、路上装置31で行ってもよい。
以上、障害物検出センター装置30側での処理手順を説明したが、プローブ車両20で退避走行検出処理を行ってもよい。以下では、プローブ車両20側の処理手順を説明する。
【0054】
図6は、障害物検出システムのプローブ車両20側で行われる処理を説明するフローチャートである。図1及び図2も参照しながら、図6の流れに従って、この実施形態における上述の車線変更による退避走行の検出の手順を説明する。
また、以下の説明は、あるプローブ車両20に注目して、そこで行われる処理についてのものであるが、それぞれのプローブ車両20において同様の処理が行われることを、予め断っておく。
【0055】
まず、プローブ車両20は路上装置31を介して障害物検出センター装置30との交信を試みる(ステップS6−1)。そして、通信が確立し(ステップS6−1のYes)、当該プローブ車両20に車載装置10が搭載されており(ステップS6−2のYes)、車線変更検出機能が装備されていれば(ステップS6−3のYes)、退避走行の有無と検出時の位置等の軌跡情報PIを路上装置31に送信する(ステップS6−4)。
【0056】
一方、ステップS6−2において車載装置10が搭載されていないとき(ステップS6−2のNo)、ステップS6−3において車線変更検出機能がなく(ステップS6−3のNo)軌跡情報PIとして、退避走行の情報を含まない、位置、方位、速度等の情報を送信したとき(ステップS6−5)は、次の処理に進む。
次に、当該プローブ車両20が障害物警告情報RIを受信しているのならば(ステップS6−6のYes)、障害物警告情報RIの内容を、車載装置10の出力処理部14によって、画像もしくは音声により、障害物90の情報を伝え、ドライバに注意を喚起する(ステップS6−7)。
【0057】
一方、ステップS6−1においてプローブ車両20が路上装置31を介して障害物検出センター装置30との通信を確立できないとき(ステップS6−1のNo)、ステップS6−6において障害物警告情報RIを受信できなかったとき(ステップS6−6のNo)は、次の処理に進む。
次に、車両に車載装置10が搭載されていれば(ステップS6−8のYes)、車両の位置や方位等を検出して軌跡情報PIとして記録する(ステップS6−9)。そして、車線変更検出機能が搭載されていれば(ステップS6−10のYes)、プローブ車両20に記録された軌跡情報PIに基づき、退避走行の有無を検出する(ステップS6−11)。ステップS6−11で、退避走行が検出されたなら(ステップS6−12のYes)、検出された退避走行の位置を車載装置10の記録部に保存する(ステップS6−13)。
【0058】
一方、ステップS6−8において車載装置10がないとき(ステップS6−8のNo)、車線変更検出機能がないとき(ステップS6−10のNo)、退避走行を検出できなかったとき(ステップS6−12のNo)、ステップS6−13の処理が終了したときは、再度、ステップS6−1に戻り、上記処理を行う。
以上、障害物90が検出され障害物警告情報RIが作成される手順を説明したが、以下では、障害物警告情報RIの作成が取り消される場合を説明する。
【0059】
図7は、障害物90の存在を判定したあとに、判定を取り消すときの例図である。
ここでは、車線変更の検出を第1の閾値を、例えば、車線変更を行った台数が全通行台数に比べ5割、所定の区域の範囲を、例えば、図示している範囲である100m、とする。
車線1及び車線2のある時間帯の通過台数を20台とした場合、車線1から車線2への車線変更Aが18台、車線2から車線1への車線変更Bが19台、ともに第1の閾値(例えば、0.90)以上となっており、かつ、車線変更Aと車線変更Bの地点は、所定の区域内に含まれるため、一旦、車線変更Aと車線変更Bの間で障害物90が存在している、と判定される。
【0060】
しかし、車線変更Aと車線変更Bとの間で、車線変更Aとは逆の車線2から車線1への車線変更Cの2台が、車線変更を行った台数が全通行台数に比べ第10の閾値(例えば、0.10)以上となっている場合には、障害物90は、車線変更Aと車線変更Bとの間に存在していないと再判定し、上記の障害物90が存在している旨、の判定を取り消す。
第10の閾値を設定したのは、プローブ機能を搭載したパトロールカーや救急車等の緊急車両のように、障害物の除去のために障害物に近づく車両が存在したときに、障害物90の存在が取り消されることのないようにするためである。
【0061】
なお、一旦障害物が存在していると判定した後で、その判定を取り消すという態様に限らず、上記のような場合には、最初から障害物が存在していると判定しないという態様でもよい。
また、障害物の規模が大きければ、それに伴い緊急車両が増加することが予想されるため、適宜、第10の閾値を変更することができる。
【0062】
次に、当該車両の上流区間の走行履歴を参考にして障害物の判定精度を上げる本発明の他の実施形態について説明する。
図8は、道路を見下ろした図であり、ここでは、道路を所定距離毎に、道路区域A,B,Cなどで区分している。各道路区域A,B,C,..にはそれぞれ路上装置31が設置されている。各路上装置31は、通信回線を通して障害物検出センター装置30とつながっている。また、図中、車載装置10を搭載したプローブ車両20を示している。これらのプローブ車両20、路上装置31、障害物検出センター装置30などにより障害物検出システムを構成する。
【0063】
この実施形態では、プローブ車両20の挙動に基づいて、例えば道路区域Cにおいて障害物の有無を検出する場合に、その上流の道路区域A,B等における当該プローブ車両20の車線変更の履歴を参考にする。前記道路区域Cが「第1の区域」に相当し、その上流の道路区域A,B等が「第2の区域」に相当する。
すなわち、当該プローブ車両20の道路区域Cにおける一方向への車線変更が検出された場合に、当該プローブ車両20の上流の道路区域A,Bにおける一方向への車線変更の頻度を考慮する。
【0064】
ここで「車線変更の頻度」とは、当該プローブ車両20が単位走行距離あたり又は単位時間あたりの行った車線変更の回数をいう。
上流の道路区域A,B等でそのプローブ車両20の車線変更の頻度が高ければ、そのプローブ車両20は、実績上、車線変更する度合いの高い車両、あるいはドライバであると判断できる。
【0065】
このような車両は、道路区域Cで車線変更を行っても、それが障害物の存在によるものでなく、追い越しなど通常行う車線変更であった確率が比較的高い。これとは逆に、普段車線変更する度合いの低い車両であれば、道路区域Cで車線変更を行った場合、それは障害物の存在によるものである確率は相対的に高くなる。
そこで、当該プローブ車両20が、当該道路区域C地点を通過するまでの走行履歴を判定に用いる。つまり、普段殆ど車線変更しない車両が車線変更を行っていれば、障害物が発生している可能性が高いと判断し、また、頻繁に車線変更を行う車両については、あまり信憑性がないものとして扱う。
【0066】
本実施形態では、当該プローブ車両20がその上流の道路区域A,B等で行った車線変更の頻度を記憶しておいて、その頻度が第12の閾値以下であれば、道路区域Cにおける車線変更車両台数に、より大きな重み付けを行い、第12の閾値より大きければ、道路区域Cにおける車線変更台数に、より小さな重み付けを行う。
前記「第12の閾値」は、例えば多数台のプローブ車両の一定期間又は一定走行距離の車線変更データを集積して車線変更の頻度の分布を求め、車線変更の頻度が所定値以上である車両数が全体のm%となる場合の前記所定値を第12の閾値と定めればよい。mの値は、システムの運用経験により定められる数値であるが、例えば20とか30とかいった数値となる。
【0067】
図9は、前記重み付け処理を含む、障害物検出センター装置30側で行われる障害物検出処理を説明するためのフローチャートである。
障害物検出センター装置30は、路上装置31を介しプローブ車両20と交信を試みる(ステップS9−1)。プローブ車両20と通信が確立できれば(ステップS9−1のYes)、当該プローブ車両20の管轄内全区域A,B,C,..における車線変更時の走行距離、車線変更頻度、車線変更時の走行速度等の車両の挙動を認識して、所定のメモリにデータとして記憶する(ステップS9−2)。
【0068】
注目する区域、例えば区域Cにおいて、当該プローブ車両20の退避走行があるかどうかを監視する(ステップS9−3)。
当該プローブ車両20の退避走行が検出された場合、障害物検出センター装置30に蓄積された車両走行データに基づいて、当該プローブ車両20の上流区域A,B当での車線変更頻度を調べる(ステップS9−4)。
【0069】
当該プローブ車両20の上流区域A,Bでの車線変更頻度を第12の閾値と比較して、車線変更頻度が第12の閾値より少ない場合(ステップS9−4でYes)、後に行う障害物存在判定処理での車線変更台数をn台(nは1より大きな定数;例えば3)とする(ステップS9−5)。つまり実際には1台の車両が1回車線変更を行っているに過ぎないが、計算上では、n台の車両が車線変更を行ったものとして扱う。
【0070】
一方、当該プローブ車両20の上流区域A,B等での車線変更頻度が第12の閾値より多い場合は(ステップS9−4でNo)、ステップS9−6に進む。
ステップS9−6では、当該プローブ車両20の上流の区域A,B等における車両の挙動と、障害物存在判定処理で検出された当該プローブ車両20の区域Cにおける車線変更の挙動とを比較する。比較する要素は、車線変更の所要時間、車両の進路角θの最大値、車線変更に要した距離、などである。これらの要素を単独で、あるいはこれらの要素の線形和を、比較する。比較の結果が閾値以上異なっていれば、普段車線変更することの多い当該プローブ車両20の挙動は、普段と違った挙動であり、退避走行である可能性が高いとみなして、ステップS9−7に移る。
【0071】
ステップS9−7では、後に行う障害物存在判定処理での車線変更台数に0以上1以下の台数として判定する。
比較の結果が閾値以内であれば、当該プローブ車両20の挙動は、やはり上流区域の挙動と同じであり、退避走行と判定することはできず、ステップS9−1に戻る。つまりこの場合、当該プローブ車両20の車線変更は数えないこととし、車線変更台数を0台とみなすのである。
【0072】
次に、ステップS9−8に移り、当該区域Cに所定比率以上の退避走行車両が存在するかどうかを判定する。すなわち、区域Cにおいて車線変更をした車両の台数の、当該区域を通過した車両の台数に対する比が、第1の閾値以上になっているかどうかを判定する。第1の閾値以上になっている場合に、当該区域内に障害物が存在することを判定する(ステップS9−9)。
【0073】
障害物が存在すると判定された場合、障害物検出センター装置30は、当該区域内に障害物90が存在する旨の障害物警告情報RIを、当該区域の上流の路上装置31や関連機関に送信し、ドライバに注意を促す掲示等をする(ステップS9−10)。
なお、上記処理は障害物検出センター装置30で行うことを前提に説明したが、路上装置31で行ってもよい。
【0074】
以上、障害物検出センター装置30側での処理手順を説明したが、車線変更と退避走行の検出は、プローブ車両20でも行えるため、これらをプローブ車両20で行ってもよい。以下では、プローブ車両20側の処理手順を説明する。
図10は、障害物検出システムのプローブ車両20側で行われる処理を説明するフローチャートである。
【0075】
プローブ車両20は、通常の走行において、車線変更時の走行距離、車線変更頻度、車線変更時の走行速度等の車両の挙動を認識して、所定のメモリにデータとして記憶している(ステップS10−1)。
プローブ車両20は、現在走行中の区域、例えば区域Cにおいて、退避走行をしているかどうかを監視する(ステップS10−2)。
【0076】
当該プローブ車両20の退避走行が検出された場合、蓄積されたデータに基づいて、当該プローブ車両20の車線変更頻度を調べる。
記憶当該プローブ車両20の車線変更頻度を第12の閾値と比較して、車線変更頻度が第12の閾値より少ない場合(ステップS10−3でYes)は、ステップS10−5に進む。
【0077】
ステップS10−5では、区域Cにおいて退避走行をしたことと車線変更頻度が第12の閾値より少ない旨とを記録し、路上装置31の近くを通ったときに路上装置31に送信する。障害物検出センター装置30は、これらの車両から上がってきた情報に基づいて、障害物存在の判定を行う。
なお、当該プローブ車両20の車線変更頻度を第12の閾値と比較して、車線変更頻度が第12の閾値より多い場合(ステップS10−3でNo)は、ステップS10−4に進む。
【0078】
ステップS10−4では、当該プローブ車両20が記憶している車両の挙動と、区域Cで検出された当該プローブ車両20の車線変更の挙動とを比較する。比較する要素は、車線変更の所要時間、車両の進路角θの最大値、車線変更に要した距離、などである。これらの要素を単独で、あるいはこれらの要素の線形和を、比較する。比較の結果が閾値以上異なっていれば、当該プローブ車両20の挙動は、普段と違った挙動であり、退避走行であるとみなして、ステップS10−5に移る。このように、普段車線変更することが多くても当該プローブ車両20の挙動は、普段と違った挙動であれば、退避走行である可能性が高いとして、障害物検出センター装置30に報告する。
【0079】
比較の結果が閾値以内であれば、当該プローブ車両20の挙動は、普段の挙動と変わらず、退避走行と判定することはできず、ステップS10−1に戻る。
以上のように、図9、図10の処理では、障害物を判定する当該区域Cに至るまでの走行履歴を用いて、当該地点に至るまでの車線変更の頻度を考慮することにより、障害物検知精度を高めることができる。
【0080】
なお、プローブ車両20の数が増えて、大量にプローブ情報が得られるようになった時代には、車線変更の頻度の多い車両から送信しないようにすれば、プローブデータの効果的な間引き方法としても有効である。
いままでの実施形態では、所定の距離で区切った道路区域内W1,W2での障害物の検出をしたが、次のように障害物の発生地点を特定してもよい。
【0081】
図11は、障害物の検出場所を特定するために示す概略図である。退避走行目的で車線変更をする場合、上述のとおり、多くのドライバは、ほぼ同一地点で第1の車線変更をし、障害物を通過したのち、すみやかに第2の車線変更を行うことがわかっている。これにより、複数の車両における第1の車線変更の平均地点Xと第2の車線変更の平均地点Yとを検出することで、両地点の間に障害物90が存在する、と容易に検出することができる。
【0082】
また、障害物90の発生場所の検出には、XとYとの中間地点とすることもできる。
さらに、地形パターンによって、走行中のドライバが目視できる範囲も違ってくるので、退避走行の前半の車線変更を行う地点も変わってくる。しかし、障害物90を通過してすぐに元の車線に戻る走行パターンをする傾向があるので、地形パターンを条件に追加し、XとYとの地点から障害物の発生場所を特定することもできる。
【0083】
次に、本発明の他の実施形態である、車両の所定区間毎の通過台数により障害物の存在を検出する処理について説明する。
図12は、片側二車線道路の車線1,2において、交通流の異常が見られないときの所定区間毎の車両の通過台数を示す図である。図13は、交通流の異常が見られるときの所定区間毎の車両の通過台数を示す図である。矢印は走行方向を示す。
【0084】
全走行車両に対するプローブ車両の存在比率が比較的高い場合には、以下の方法により、障害物90の検出を行うことができる。
ここでは、一定時間(例えば、5分間)毎に、路上装置又はセンターに送信された複数の軌跡情報の各時刻の位置に基づいて、道路の各車線を一定距離(例えば、5m)単位で細分化した区間1a〜1y及び2a〜2y毎に、プローブ車両の通過台数を加算した値を、シミュレーションした。
【0085】
障害物90が存在しない場合には、図12に示すとおり、ある区間の通過台数が、その区間の当該車線及び他の車線の通過台数の和に比べ、第11の閾値(例えば、1割)以下になる区間はなく、どの区間も一定してプローブ車両が走行していることがわかる。
しかし、障害物90が図13における区間1uに存在する場合には、区間1uは、車両が走行できないことにより通過台数は0になる。その場合、区間1uの通過台数0台の、その区間1u及び他の車線にある区間2uの通過台数の和16台に対する比は0であり、第11の閾値以下となっている。したがって、当該区間1uには障害が存在すると判定でき、障害物90の場所を特定できる。
【0086】
ここで、第11の閾値を設けたのは、交通量が少なくなる時間帯により通行車両数の絶対数が少なくなってしまったときや、交通渋滞等による通行車両の低速化によるときの判定を排除するためにある。この閾値は、実際の道路上に障害物が発生した時点前後の車線利用率のデータを記憶しておき、本発明の実施により道路上の障害物発生をもっとも精度よく検出することができるような値を選べばよい。さらに、交通量、時間帯、曜日、催時の有無等、過去のいろいろな条件での通過台数のデータを蓄積し、交通量、時間帯、曜日、催時の有無等に応じて、最適な閾値を設定することもできる。
【0087】
なお、図12及び図13に示すシミュレーションでは、車線1,2とも同一方向に向かうものとしたが、車線1,2がお互い対向車線であるとしてもよい。このときも、同様の結果が得られる。
図14は、以上説明した車両の所定区間毎の通過台数により障害物の存在を検出する処理を表すフローチャートである。図12及び図13も参照しながら、図14の流れに従って、この実施形態における障害物の検出の手順を説明する。
【0088】
以下の説明は、図13における障害物90が存在している区間1uに注目して、その地点で行われる処理についてのものであるが、それぞれ同様の処理が他の区間に関しても行われることを、予め断っておく。
まず、障害物検出センター装置30は、予め設定された計時手段に基づき、所定の処理周期に達しているかを判定する(ステップS11−1)。処理周期に達していれば(ステップS11−1のYes)、複数のプローブ車両20から集められた複数の軌跡情報PIに基づき、各々の道路、車線、一定の距離で区切られた当該区間(例えば、図13での区画1u)において、その通過台数の、その区間の車線に対して垂直にある区間(例えば、図13での区間1u、2u)の通過台数の和に対する比が、第11の閾値以下であるかを確認する(ステップS11−2)。ステップS11−2において、第11の閾値以下であれば(ステップS11−2のYes)、第11の閾値以下の区間(この場合、区間1u)に障害物90が存在していると判定できる。よって、障害物検出センター装置30は障害物警告情報RIを作成する(ステップS11−3)。
【0089】
一方、ステップS11−1で処理周期に達していなかったとき(ステップS11−1のNo)、ステップS11−2で第11の閾値より大きいとき(ステップS11−2のNo)は、フローチャートは以下のステップに進む。
次に、障害物検出センター装置30は、路上装置31を介してプローブ車両20との通信が確立できるかを試みる(ステップS11−4)。当該プローブ車両20との通信が確立できれば(ステップS11−4のYes)、ステップS11−3で作成された障害物警告情報RIの有無を確認する(ステップS11−5)。障害物警告情報RIが存在すれば(ステップS11−5のYes)、障害物検出センター装置30は、路上装置31を介し当該プローブ車両20に向けて、障害物警告情報RIを送信する(ステップS11−6)。
【0090】
一方、ステップS11−5において障害物警告情報RIの存在が認められないとき(ステップS11−5)は、以下のステップに進む。
次に、軌跡情報PIが当該プローブ車両20に蓄積されていることを確認できれば(ステップS11−7のYes)、当該プローブ車両20に蓄積された軌跡情報PIを送信するように促し(ステップS11−8)、受信した当該軌跡情報PIに基づいて、区間毎に通過台数を加算していく(ステップS11−9)。
【0091】
一方、ステップS11−4においてプローブ車両20との通信が確立できなかったとき(ステップS11−4のNo)、ステップS11−7において軌跡情報PIがなかったとき(ステップS11−7のNo)は、再度、ステップS11−1に戻り、上記同様の処理を行う。
障害物検出センター装置30は、上記ステップS11−1からステップS11−9までを、所定の周期に基づいて処理する。
【0092】
以上のとおり、障害物90の存在が判定された場合には、その上流となる路上装置31を通じて、プローブ車両20に障害物警告情報RIを送信して走行注意の警告を行う。また、障害物検出センター装置30からの情報を得た可変情報板による表示により、走行注意の警告を行っても良い。
なお、障害物警告情報RIの送信は、障害物発生地点の周辺を走行する車両のみに行っても良い。
【0093】
また、上述の処理は障害物検出センター装置30で行うことを前提に説明したが、路上装置31でも行うことができる。路上装置31は、前述の障害物検出センター装置30と同様、複数の軌跡情報PIから路上の障害物90を検出し、障害物検出センター装置30に障害物警告情報RIを作成する命令を出すことができる。これにより、障害物センター装置30の処理負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】道路上の障害物の存在を検出する障害物検出システムを示す概略図である。
【図2】プローブ車両20に搭載された車載装置10を示すブロック図である。
【図3】障害物検出システムの他の通信形態を示す概略図である。
【図4】障害物検出センター装置30における車線変更の検出方法を説明するための概略図である。
【図5】障害物検出システムの障害物検出センター装置30側で行われる処理を説明するフローチャートである。
【図6】障害物検出システムのプローブ車両20側で行われる処理を説明するフローチャートである。
【図7】障害物90の存在を判定したあとに、判定を取り消す処理を説明する概略図である。
【図8】所定距離毎に、道路区域A,B,Cなどで区分された道路を示す俯瞰図である。
【図9】プローブ車両の車線変更の履歴に基づく重み付けを行った上で障害物の存在を検出する処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】障害物検出システムのプローブ車両20側で行われる処理を説明するフローチャートである。
【図11】障害物の検出場所を特定するために示す概略図である。
【図12】交通流の異常が見られないときの所定区間毎の車両の通過台数を示す図である。
【図13】交通流の異常が見られるときの所定区間毎の車両の通過台数を示す図である。
【図14】車両の所定区間毎の通過台数により障害物の存在を検出する処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
10 車載装置
20 プローブ車両
30 障害物検出センター装置
31 路上装置
90 障害物
PI 軌跡情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に障害物が存在していることを検出するための障害物検出センター装置であって、
車両の軌跡情報を受信するための受信手段と、
前記受信手段で受信した車両の軌跡情報に基づいて車両の車線変更を検出する車線変更検出手段と、
道路上の所定の区域において前記車線変更検出手段に基づいて一方向への車線変更をした車両の台数の、当該区域を通過した車両の台数に対する比が、第1の閾値以上になっている場合に、当該区域内に障害物が存在することを検出する障害物検出手段と、を備える障害物検出センター装置。
【請求項2】
前記障害物検出手段は、所定の処理周期に検出した「当該区域を通過した車両の台数」が第2の閾値以上となっている場合に、前記比の算出を有効にする、請求項1に記載の障害物検出センター装置。
【請求項3】
前記障害物検出手段は、
前記一方向の車線変更と、逆方向の車線変更と、を対で行うことに基づき障害物の存在を検出する、請求項1に記載の障害物検出センター装置。
【請求項4】
前記車線変更検出手段は、
時刻tの関数で表した当該車両の方位と道路の方位との角度差で表される進路角θ(t)において、
時刻t1に0より大きく第3の閾値以下となり、
時刻t2に第4の閾値以上となり、
時刻t3に0より大きく第3の閾値以下になったとき(ただし、時刻t1<t2<t3とする。以下同じ。)に、
前記車両の通行している車線の幅、当該車両の速度、時刻t1からt3までの時間及び時刻t1からの経過時間の関数で表される車線変更の角度推移パターンφa(t)との差Δθ(t)が、時刻t1からt3までの間に第5の閾値以下である場合に、当該車両が時刻t1からt3にかけての走行で右側への車線変更を行った、と検出する、請求項1に記載の障害物検出センター装置。
【請求項5】
逆方向への前記車線変更検出手段は、
前記進路角θ(t)において、
時刻t1に0より小さく第6の閾値以上となり、
時刻t2に第7の閾値以下となり、
時刻t3に0より小さく第6の閾値以上となったときに、
前記車両の通行している車線の幅、当該車両の速度、時刻t1からt3までの時間及び時刻t1からの経過時間の関数で表される車線変更の角度推移パターンφb(t)との差Δθ(t)が、時刻t1からt3までの間に第8の閾値以下である場合に、当該車両が時刻t1からt3にかけての走行で左側への車線変更を行った、と検出する、請求項4に記載の障害物検出センター装置。
【請求項6】
前記障害物検出手段は、
前記一方向の車線変更の地点から逆方向の車線変更の地点までの走行速度の、通常時の走行速度に対する比が、第9の閾値以下であることを条件に加えて、障害物の存在を検出する、請求項1に記載の障害物検出センター装置。
【請求項7】
前記軌跡情報は少なくとも方向指示器の点灯情報を含み、
前記車線変更検出手段は、前記方向指示器の点灯情報に基づき車線変更を検出する、請求項1に記載の障害物検出センター装置。
【請求項8】
前記障害物検出手段は、
前記一方向への車線変更をした車両の台数の、当該区域を通過した車両の台数に対する比が、第1の閾値以上になっている場合に、
当該区域内での前記逆方向への車線変更をした車両の台数の、前記通過した車両の台数に対する比が、第10の閾値以上の場合は、
当該区域には障害物が存在することを検出しない、請求項1に記載の障害物検出センター装置。
【請求項9】
前記受信手段は、道路上の第1の区域及びその上流の第2の区域を走行する車両の軌跡情報を受信するものであり、
車線変更検出手段は、前記受信手段で受信した車両の軌跡情報に基づいて前記第1の区域及び第2の区域における車両の車線変更を検出するものであり、
前記車線変更検出手段により当該車両の前記第1の区域における車線変更が検出された場合に、前記車線変更検出手段により検出された当該車両の前記第2の区間における車線変更の頻度が第12の閾値以下であれば、前記第1の区域における車線変更台数として重み付けを大きくした台数を採用し、前記第2の区間における車線変更の頻度が第12の閾値より大きければ、前記第1の区域における車線変更台数として重み付けを小さくした台数を採用する車線変更台数算出手段をさらに有し、
前記障害物検出手段は、前記第1の区域において前記車線変更台数算出手段により算出された台数の、前記第1の区域を通過した車両の台数に対する比が、第1の閾値以上になっている場合に、当該第1の区域内に障害物が存在することを検出する、請求項1記載の障害物検出センター装置。
【請求項10】
前記第1の区域及び第2の区域における前記車両の車線変更時の車両の挙動を検出する挙動検出手段をさらに備え、
前記車線変更台数算出手段は、当該車両の前記第1の区域における車線変更が検出された場合に、当該車両の前記第2の区域における車線変更の頻度が前記第12の閾値より大きいときであっても、当該車両の前記第1の区域と前記第2の区域との車線変更の挙動が異なっていれば、前記第1の区域における車線変更台数として1以上の所定台数を採用し、前記第1の区域と前記第2の区域との車線変更の挙動が同じであれば、前記第1の区域における車線変更台数を0台とする請求項9に記載の障害物検出センター装置。
【請求項11】
道路上に障害物が存在していることを検出するための障害物検出センター装置であって、
車両の軌跡情報を受信するための受信手段と、
前記受信手段で受信した車両の軌跡情報に基づいて車両の車線変更を検出する車線変更検出手段と、
複数の車両の、一方向への車線変更を行った平均地点と、逆方向への車線変更を行った平均地点との間に障害物が存在することを検出する障害物検出手段と、を備える障害物検出センター装置。
【請求項12】
道路上に障害物が存在していることを検出する障害物検出センター装置であって、
車両の軌跡情報を受信する受信手段と、
複数の車両からの前記軌跡情報に基づいて、各車線を所定の距離に細分化した区間毎に各車両の通過台数を加算する加算手段と、
前記加算手段によるある区間の車両の通過台数の、当該道路を通過する車両の通過台数の和に対する比が、第11の閾値以下である場合に、当該区間に障害物が存在することを検出する障害物検出手段と、を備える障害物検出センター装置。
【請求項13】
車載装置と、道路上に障害物が存在していることを検出する障害物検出手段を有する障害物検出センター装置と、を備える障害物検出システムであって、
前記車載装置は、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
車両の方位を検出する方位検出手段と、
前記位置検出手段及び前記方位検出手段による情報と検出した時刻とを軌跡情報として蓄積する軌跡情報蓄積手段と、
前記軌跡情報蓄積手段による情報に基づいて、当該車両の車線変更の地点を検出する車線変更検出手段と、
前記車線変更検出手段による情報を送信する通信手段とを含み、
前記障害物検出手段は、前記複数の車両の車線変更の地点が道路上の所定の区域内に含まれるか否かを判定し、含まれると判定した場合に、当該区域内に障害物が存在することを検出する障害物検出システム。
【請求項14】
道路上に障害物が存在していることを検出するための障害物検出方法であって、
車両の軌跡情報を受信し、
受信した車両の軌跡情報に基づいて車両の車線変更を検出し、
道路上の所定の区域において一方向への車線変更をした車両の台数の、当該区域を通過した車両の台数に対する比が、第1の閾値以上になっている場合に、当該区域内に障害物が存在することを検出する、障害物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−313519(P2006−313519A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290159(P2005−290159)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】