障害電流の送電を制限する技術
高電圧送電網と一緒に有利に使用できる新タイプの超伝導障害電流制限器が提供される。障害電流制限器は、送電網に接続する2つの端子に電気的に接続される。超伝導回路は接地から電気的に絶縁された筐体又はタンク内に収容される。その結果、筐体と超伝導回路との間の電圧及び筐体と端子との間の電圧差が現在の構成の場合に存在する電圧差より大幅に小さくなる。いくつかの実施形態においては、筐体は端子の一つに電気的に接続されるが,他の実施形態では、筐体は前記端子から電気的に絶縁される。超伝導回路を他の同様の回路組み合わせて様々な送電網構成に対処することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害電流の伝送を制限する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力送電及び配電網においては、障害電流状態が起こり得る。障害電流状態は網内の障害又は短絡によって生じる網を流れる電流の急激な変化(サージ)である。障害の原因には、網への落雷、悪天候又は倒木による送電線の地絡などが含まれる。障害が起こると、大きな負荷が瞬間的に現れる。これに応答して網はこの負荷、即ちこの場合には障害に多量の電流(過電流)を供給する。このサージ又は障害電流状態は網又は網に接続された機器を損傷し得るため望ましくない。特に、網及び網に接続された機器が燃えることがあり、場合によっては爆発することもある。
【0003】
電力機器を障害電流による損傷から保護するために使用されているシステムの一つは回路遮断器である。障害電流が検出されたとき、回路遮断器は回路を機械的に開き、過電流の流れを遮断する。
【0004】
障害電流を制限する別のシステムは超伝導障害電流制限器(「SCFCL」)である。一般に、SCFCLは臨界温度レベルTc、臨界磁界レベルHc及び臨界電流レベルIcより低い場合に殆ど零の抵抗値を示す超伝導回路を備える。これらの条件の少なくとも一つが上記の臨界レベルを超える場合には、この回路はクエンチされ、抵抗性を示す。
【0005】
通常動作中、SCFCLの超伝導回路はTc,Hc及びIcより低く維持される。傷害時に、これらの条件の一つ以上が臨界レベルTc,Hc及びIcより高くなる。そのとき瞬時にSCFCLの超伝導回路はクエンチされ、その抵抗値が急激に増大し、それによって障害電流の伝導が制限される。若干の時間遅延後及び短絡障害の解消後に、Tc,Hc及びIcは正常値に戻され、網及びSCFCLを経て電流が流される。
【0006】
電力送電網に現在使用されている超伝導障害電流制限器は障害電流を制限できるが十分ではない。例えば、SCFCLは高電圧送電網をサポートし得ない。加えて、従来のSCFCLはその技術的な欠陥のために大きな設置面積を必要とする。従って、新しいタイプのSCFCLが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
これから、障害電流の送電を制限する技術を説明する。一つの特定の模範的な実施形態において、この技術は障害電流の送電を制限する新しいタイプの装置によって実現することができる。この装置は、接地電位から電気的に絶縁されるように接地から電気的に減結合された筐体と、少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第1及び第2の端子と、及び前記筐体内に収容され且つ前記第1及び第2の端子に電気的に接続された第1の超伝導回路とを備えている。
【0008】
この特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記筐体は電気的に絶縁性の材料からなるものとし得る。
【0009】
更にこの特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記筐体は電気的に導電性とし得る。
【0010】
この特定の模範的な実施形態の他の実施例によれば、前記筐体は前記第1及び第2の端子から電気的に絶縁することができる。
【0011】
この特定の模範的な実施形態の追加の実施例によれば、前記第1の端子に第1の電圧が存在し、前記第2の端子に第2の電圧が存在し、前記筐体は前記第1及び第2の電圧の間の電圧である。
【0012】
この特定の模範的な実施形態の他の追加の実施例によれば、前記筐体は前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続されている。
【0013】
この特定の模範的な実施形態の更に別の実施例によれば、前記装置は、前記筐体と前記接地との間に配置され、前記筐体を支持する支持体を更に備え、前記支持体によって前記筐体を接地から電気的に絶縁している。
【0014】
この特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記装置は、前記超伝導回路を所定の温度より低く維持するために前記筐体内に冷却剤を更に備えている。
【0015】
更にこの特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記装置は、前記筐体がその上に支持されたプラットフォームを備え、前記プラットフォームは接地から電気的に絶縁されている。
【0016】
更にこの特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記装置は。第2の筐体と、第3及び第4の端子と、前記第2の筐体内に収容された第2の超伝導回路とを更に備え、前記第2の超伝導回路は前記第3及び第4の端子に電気的に接続され、前記第2の超伝導回路は前記プラットフォームにより支持されている。
【0017】
更にこの特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記装置は、前記筐体及び前記第2の筐体が電気的に絶縁されるように、前記筐体と前記プラットフォームとの間に置かれた支持体を更に備えることができる。
【0018】
この特定の模範的な実施形態の他の実施例によれば、前記第3及び第4の端子の各々は一つ以上の配電線に電気的に接続されている。
【0019】
この特定の模範的な実施形態の追加の実施例によれば、前記第3の端子は前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続されている。
【0020】
この特定の模範的な実施形態の他の追加の実施例によれば、前記装置は、少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第3及び第4の端子と、前記筐体内に収容され且つ前記第3及び第4の端子に電気的に接続された第2の超伝導回路とを更に備えている。
【0021】
この特定の模範的な実施形態の更に別の実施例によれば、前記装置は、少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第5及び第6の端子と、前記筐体内に収容され且つ前記第5及び第6の端子に電気的に接続された第3の超伝導回路とを更に備えている。
【0022】
この特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記第1の超伝導回路と前記筐体との間の隙間長が250cm未満である。
【0023】
この特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記第1の超伝導回路と前記筐体との間の隙間長が約8〜25cmである。
【0024】
別の特定の実施形態においては、障害電流を制限する手法は、第1及び第2の端子を一つ以上の電流搬送線に電気的に接続するステップと、障害電流を通す通路を与えるために筐体内に収容された超伝導回路を前記第1及び第2の端子に電気的に接続するステップと、前記筐体を接地から電気的に絶縁するステップとを備える。
【0025】
この特定の実施形態の別の実施例によれば、前記手法は、前記筐体を前記第1及び第2の端子から電気的に絶縁するステップを更に備えることができる。
【0026】
更にこの特定の実施形態の別の実施例によれば、前記手法は導電性の筐体を使用し、前記筐体を前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続するステップを更に備えることができる。
【0027】
別の特定の実施形態において、障害電流を制限する手法は、筐体と複数のブッシング絶縁体を備え、前記筐体は外気に露出し、接地電位に維持され、接地から第1の垂直距離だけ離間されている回路遮断機を用意するステップと、前記回路遮断機に電気的に結合された、筐体と第1及び第2の端子と前記筐体内に収容され前記第1及び第2の端子に電気的に結合された第1の超伝導回路を備える障害電流制限器を用意するステップを備え、前記筐体は前記接地から前記第1の垂直距離大きい第2の垂直距離だけ離間されている。
【0028】
本発明はこれから添付図面に示される模範的な実施形態について詳細に説明される。本発明は模範的な実施形態について以下に説明されるが、本発明はこれらに限定されないものと理解されたい。本明細書に開示された技術にアクセスする当業者は、本明細書に開示された技術の範囲に含まれる追加の種々の実施、変更及び具体化並びに他の応用分野を認識でき、この点に関し本開示は極めて有意義である。
【0029】
本発明の理解を容易にするために、添付図面を参照して説明する。これらの図はカバラ寿司も正しい寸法比で描かれていない。更に、これらの図は本発明を限定するものでなく、単なる例示であるものと解釈されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明の一実施形態による模範的な超伝導障害電流制限(SCFCL)システムを示す。
【図1B】本発明のSCFCLシステムに収容し得る模範的な障害電流制限ユニットを示す。
【図2】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図3A】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図3B】本発明の別の実施形態による内部シャントリアクタを用いる別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図3C】本発明の別の実施形態による外部シャントリアクタを用いる別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図4A】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムの側面図を示す。
【図4B】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムの上面図を示す。
【図5A】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムの側面図を示す。
【図5B】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムの上面図を示す。
【図6】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図7】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書には、超伝導障害電流制限器のいくつかの実施形態が紹介される。当業者は、本明細書に開示されるこれらの実施形態は説明のための単なる例示であることを理解されたい。説明を簡単明瞭にするために、既に知られている部品、特徴及び機能は説明が省略されるかもしれない。
【0032】
図1A及び1Bを参照すると、本発明の一実施形態による模範的な超伝導障害電流制限(SCFCL)システム100が示されている。本実施形態において、SCFCLシステム100は一つ以上のモジュール110を備えることができる。しかし、本発明のSCFCLシステム100は任意の数のモジュール110を含むことができる。例えば、SCFCLシステム100は互いに同一の3つの単相モジュールを有することができる。これらのモジュールは直列に又は並列に接続することができる。説明を簡単明瞭にするために、SCFCLシステム100の説明は一つの単相モジュール110に限定する。
【0033】
SCFCLシステム100のモジュール110はその中にチャンバを画成する筐体又はタンク112を備えることができる。一実施形態において、筐体又はタンク112は熱的に及び/又は電気的に絶縁性のタンク、例えばガラス繊維又は他の電気絶縁材料製のタンクとすることができる。本実施形態において、タンク112は内層及び外層112a及び112bとそれらの間に介挿された電気絶縁媒体とからなる金属タンク112である。
【0034】
タンク112内には、一つ以上の障害電流制限ユニット120(明瞭且つ簡単化のためにブロックとして示されている)を収容することができる。本実施形態においては、モジュール110は単相障害電流制限ユニット120を有する単相モジュール110とすることができる。別の実施例においては、モジュール110は3つの単相障害電流制限ユニット120を有する3層モジュールとすることができる。図1Bに示すように、障害電流制限ユニット120内には一つ以上の超伝導回路122及び第1及び第2のエンドキャップ124及び126を配置することができる。第1及び第2のエンドキャップ124及び126は、一例では、コロナシールドとすることができる。本実施形態においては、障害電流制限ユニット120はタンク112から250cm以下の隙間長を有することができる。好ましくは、隙間長は8−25cmとすることができる。本明細書において、隙間長とは一つ以上の超伝導回路122とタンク112との管の間の最短距離をいう。
【0035】
図1Aを参照するに、モジュール110は一つ以上の電気ブッシング116を備えることもできる。ブッシング116は内部導体(図示せず)及び外部絶縁体を備えることができる。ブッシング116の遠方端は、SCFCLも110を送電網(図示せず)に結合するために、端子144及び146によりそれぞれの電流搬送線142に結合することができる。電流搬送線142は一つの位置から別の位置に(例えば電流源から電流エンドユーザに)電力を伝送するのに使用される送電線又は電流分配線とすることができる。ブッシング116内の内部導体はブッシング116の端子144及び146を障害電流制限ユニット120に接続することができる。一方、外部絶縁体は筐体又はタンク112を内部導体から絶縁するために使用され、それによってタンク112及び端子144及び146を異なる電位にすることが可能になる。必要に応じ、SCFCLモジュール110は、電気ブッシング116内に含まれる導体間を接続するために、オプションの内部シャントリアクタ118又は外部シャントリアクタ148又はその両方を備えることができる。しかし、本発明は、内部シャントリアクタ118又は外部シャントリアクタ148又はその両方を備えないSCFCLも110を排除するものではない。
【0036】
一以上の障害電流制限ユニット120の温度はタンク112内に含まれる冷却剤114によって所望の温度範囲に維持することができる。一例では、障害電流制限ユニット120は低い温度、例えば−77°Kに維持するのが望ましい。このような低温度に維持するために、冷却剤114として液体窒素又はヘリウムガスを使用することができる。他の例では、一以上の障害電流制限ユニット120の温度は他の温度範囲に維持するのが望ましことがあり、気体状又は液体状の他の種類の冷却剤を使用することもできる。例えば、障害電流制限ユニット120の温度は室温に維持するのが望ましいことがある。このような場合には、冷却剤114として室温に維持された空気を使用することもできる。冷却剤114はタンク112に結合されたフィードライン(図示せず)及びポート115を介してタンク112に供給することができる。本発明において、フィードライン及びポート115は熱的に及び/又は電気的に絶縁性の材料からなるものとするのが好ましい。しかし、本発明は熱的に及び/又は電気的に導電性の材料からなるフィードライン及びポートのいずれも排除しない。フィードライン及びポート115がタンク112又はそれに含まれる任意の構成要素の接地を与えない場合には、それらは任意の種類の材料からなるものとすることができる。
【0037】
本実施形態においては、タンク112はオプションの外部支持体134によって接地から支持することができる。一方、障害電流制限ユニット120はオプションの内部支持体132によってタンク112から支持することができる。障害電流制限ユニット120は他の何らかの構成要素によってタンク112から支持することもできるので、内部支持体132はオプションとすることができることは当業者に理解されよう。内部支持体132を含む場合にも、内部支持体132は障害電流制限ユニット120を必ずしもその底面からではなく障害電流制限ユニット120の側面又は上面から支持することができる。同様に、タンク112も他の何らかの構成要素によって接地から支持することができる。更に、外部支持体134を含む場合にも、外部支持体134はタンク112を必ずしもタンク112の底面からではなくタンク112の側面又は上面から支持することができる。
【0038】
内部支持体132及び外部支持体134を含む場合には、これらの支持体の各々は熱的に及び/又は電気的に絶縁性の材料からなるものとするのが好ましい。しかし、本発明は熱的に及び/又は電気的に伝導性の内部支持体132及び外部支持体134を排除するものではない。熱的に及び/又は電気的に伝導性の外部支持体134を使用する場合には、タンク112を接地から電気的に絶縁するために支持体134と接地との間に電気的に絶縁性の材料を設けるのが望ましい。
【0039】
1つ以上のSCFCLモジュール110を有するSCFCLシステム100は配電網に組み込むことができる。タンク112は送電線142に電気的に接続することができる。しかし、タンク112は接地から絶縁体として作用し得る空気によって又はオプションの外部支持体134によって電気的に減結合するができる。上述したように、タンク112はいくつかの実施例においては金属タンク112とすることができる。これらの実施例においては、タンク112は典型的には端子144及び146に近い電圧に浮かせることができる。通常動作中、送電線142a、142bの電圧はほぼ同一のままであるので、タンク104の電圧は送電線142で送電される電圧とほぼ同じになり得る。障害時に、メタルタンクの電圧は送電線142a及び142b間の電圧になり得る。
【0040】
通常動作中、送電線142からの電流は、第1の端子144からブッシング116及び障害電流制限ユニット120を経て第2の端子146へと、SCFCLモジュール110を経て伝送される。障害電流制限ユニット120内の超伝導回路122は臨界温度(Tc)、臨界磁界(Hc)及び臨界電流(Ic)以下に維持され、超伝導状態に維持される。従って、その抵抗値はシステムインピーダンスに比較して無視できるほど小さくなる。障害が起こると、モジュール110に伝送される障害電流が動作パラメータ、温度(Tc)、磁界(Hc)及び電流(Ic)の少なくとも一つを臨界制限値Tc,Hc又はIcより上に増大し得る。超伝導回路122の抵抗値は増大し、SCFCLモジュール110を経て伝送される障害電流は所定の値、好ましくは約50%に減少される。SCFCLによる電流制限は、システムオペレータの仕様に応じて、10%から90%の範囲で変化させることができる。障害電流の減衰後、超伝導回路122は超伝導状態に戻ることができ、よってほぼ零抵抗の状態に戻ることができる。
【0041】
本発明においては、モジュール110のタンク112は接地から電気的に減結合される。更に、高電圧設計の問題はモジュール110の外部で、例えば絶縁体として作用し得る空気によって解決することができる。その結果、さもなければ高電圧下で動作するように収容しなければならないタンク112内の高電圧ブッシング設計及び特高電圧設計は不要にすることができる。従って、モジュール110の設計を簡単化することができる。更に、モジュール110の大きさを大幅に小さくすることができる。モジュール110のタンク112が導電材料からなる場合でも、タンク112は、例えばタンク112を接地から切り離し、タンク112を接地に対して電気的に浮かせることによって非零電位に維持することができる。タンク112は、タンクと送電網と接地の間の電気絶縁量に基づく異なる電圧にすることができる。いくつかの実施例においては、支持構造132及び134はモジュール110と接地との間の分圧器を構成し、タンク112の電位は接地より高く端子電圧より低い値にすることができる。
【0042】
本発明においては、モジュール110は以下の模範的な仕様を有するのが好ましい。
・ 定格制限障害電流における障害時の最大電圧=10kVrms
・ 最大負過電流=12kArms
・ 最大障害電流=40kArms
・ 定格制限障害電流における障害時の最大インピーダンス=0.25Ω
【0043】
換言すれば、電流制限モジュール110のインピーダンスは障害時に0.25Ωに増大し得る。モジュール110は40KArmsの最大電流に耐え得る。これらの値に基づいて、モジュール110の両端間の最大電圧は0.25Ω×40kArms、即ち10kVrmsになり得る。これらのパラメータを知っていれば、様々なシステム電圧を使用し、さもなければ発生し得る最大障害電流より低い最大障害電流を有する様々な送電網を設計することができる。
【0044】
送電網が138kVのシステム電圧、1200Aの最大負過電流、及び63kAの障害送電線を有する3相システムを必要とする場合、これらの特性に基づいて、以下の仕様を算出することができる。
・ 相電圧(システム電圧/√3と定義される)は80kVである。
・ システム短絡インピーダンスは相電圧を最大障害電流で除算することにより計算され、80kV/63kV=1.26Ωである。
・ SCFCLモジュールにより許容される最大障害電流は40kAであるから、電流低減要件は少なくとも(63kA−40kA)/63kA、即ち37%である。
【0045】
40kA未満の最大障害電流を達成するために、送電網のインピーダンスは80kV/40kA、即ち2Ωより大きくし得る。SCFCLモジュールの数は、所望のインピーダンス(2.0Ω)からシステム短絡インピーダンス(1.26Ω)を減算し、その結果を0.25Ω(1つのSCFCLモジュールのインピーダンス)で除算することによって決定することができる。余裕を考慮すると、必要とされる10kVのSCFCLモジュールの数は4になる。これに基づいて、全てのモジュールの合計SCFCLモジュールインピーダンスは4×0.25=1.0Ωになる。この場合、制限障害電流は80kV/(1.26Ω+1.0Ω)で与えられ、35kAになる。達成される障害電流の低減は(63kA−35kA)/63kAで与えられ、44%である。
【0046】
表1は利用できる他の構成を示す。以下に示す実施形態では制限電流は40kA未満に維持される。各構成のシステム電圧ひいては相電圧を変化させて、必要とされるSCFCLの数を計算した。これに基づいて、制限電流及び制限電流の低減率を計算した。
【0047】
表1:種々のシステム構成に対する要件
【表1】
【0048】
1つ以上のモジュール100を備えるSCFCLシステム100は多くの利点をもたらす。上述したように、モジュール110の大きさは接地に電気的に結合されるモジュールの大きさに比較して大幅に小さくすることができる。例えば、本発明のSCFCLモジュール110は250cm以下の隙間長を有し得る。一実施例においては、隙間長は8−15cmとすることができる。上述したように、隙間長は1つ以上の超伝導回路122とタンク112との間の最短距離とすることができる。これは接地に電気的に結合されるタンクと相違する点である。後者の場合には、隙間長は90インチにもなり得る。
【0049】
後者の場合における大きな隙間長は超伝導回路とタンクとの間のアーク通路に起因する。障害状態時に、タンク内の温度が大きく増大し得る。冷却剤として液体窒素を使用する場合、温度上昇によって液体窒素が窒素気泡になり得る。超伝導回路電圧からの高電界によって窒素気泡は超伝導回路からタンクに向かって整列させられる。窒素ガスは液体窒素に比較して弱い電気絶縁体であるから、窒素気泡は超伝導回路とタンクとの間にアークフラッシュオーバを発生し得る弱い絶縁通路を与え得る。タンクが接地電位に維持される場合、超伝導回路、タンク及び接地を窒素気泡を介して接続するアーク通路が形成され得る。その結果として、高電圧破壊が発生し、別の障害を生じ得る。このような通路の形成を防ぐ一つの方法は隙間長を増大させ、それによってタンクと超伝導回路との間に完全な通路が形成される確率を減少させるものである。しかしながら、タンクと超伝導回路との間の距離を増大させると、必然的にSCFCLモジュールの設置面積が増大する。本実施形態においては、窒素気泡が超伝導回路からタンクに向かって整列する場合でも、接地電圧レベルより高く維持されたタンクによってアーク電流が超伝導回路から接地へ流れるのを阻止することができる。従って、本実施形態のSCFCLシステム100は、より小さい設置面積であるにも係わらず、追加の障害を防止することができ、送電及び配電システムに緊急に必要とされている超高電圧性能を有するコンパクトなSCFCL装置を提供する。
【0050】
より小さい寸法はまた縦向き又は横向きモジュールを可能にする。ここで、縦向き又は横向きはモジュール110の高さ対幅のアスペクト比に関する。一実施例においては、モジュール110は背が高く薄いモジュール、即ち縦向きモジュールとすることができる。別の例においては、モジュール110は短く幅の広い寸法を有する横向きモジュールとすることができる。
【0051】
システム100内に2つ以上のモジュール110を含める場合には、高電圧及び/又は高電流用途向けに設計をカスタマイズするために、複数の小寸法モジュール110を直列に及び/又は並列に結合することができる。加えて、SCFCL装置を障害状態中に高電圧で試験することが電力会社によって要求されるが、その厳しい試験要件は本発明のモジュール110によって満たすことができ、本発明によれば各モジュールを個別に試験することができる。保守又は修理作業は使用されているモジュール110を除去する及び/又は新しいモジュール110と交換することによって行うことができる。本実施形態のモジュール110は単相モジュール100aとすることができる。別の実施例では、モジュールは3相モジュールとすることができる。単相モジュールは送電線SCFCLを設計する際に有利である。一方、3相モジュールは低電圧分配システム用に使用することができる。
【0052】
図2を参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム200が示されている。本実施形態のSCFCLシステム200は前実施形態のシステム100に類似することは当業者に認識されよう。更に、本実施形態のSCFCLシステム200は図1A及び1Bに示されるSCFCLシステム100に含まれるコンポーネントに類似する多くのコンポーネントを含む。従って、前実施形態のSCFCLシステム100の符号及び説明は本実施形態のSCFCLシステム200にも同様に適用される。
【0053】
モジュール210は、SCFCLシステム100のモジュール110と異なり、障害電流制限ユニット120及びタンク112を送電線142a及び142bの一つに接続する導電性ロッド216を備える。従って、タンク112は通常状態中も障害状態中も端子144及び146の一つと同じ電位に維持することができる。
【0054】
SCFCLシステムが複数のSCFCLモジュールを備える場合には、これらのモジュールは種々の構成に配置することができる。図3Aを参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム300aが示されている。装置300aは複数のSCFCLモジュール310i〜310iiiを備えるSCFCLシステムとすることができる。本実施形態のSCFCLシステム300aは前実施形態で記載したコンポーネントに類似するコンポーネントを含むことができることは当業者に認識されよう。明瞭のために、類似の特徴の説明は省略しよう。従って、本実施形態のSCFCLシステム300aの説明は前実施例形態のSCFCLシステムの説明と一緒に読まれたい。
【0055】
図3Aに示されるように、本実施形態のSCFCLシステム300aは複数のSCFCLモジュール、好ましくは3つの単相SCFCLモジュール300i〜300iiiを備えることができる。各モジュール310i〜310iiiは互いに類似するとともに前実施形態で記載したモジュールに類似するものとし得る。必要に応じ、一つ以上のモジュール310i〜310iiiは内部及び/又は外部シャントリアクタを含むことができるが、本実施形態は一つ以上のモジュール310i〜310iiiが内部及び/又は外部シャントリアクタを含まないものを排除しない。
【0056】
各モジュール310i〜310iiiのタンク312は間隔を置いて配置するとともに接地から電気的に減結合することができる。必要に応じ、各タンク312は電気的に及び/又は熱的に絶縁性の支持体334a及び334b及びプラットフォーム336によって支持することができる。SCFCLシステム300は冷却剤を冷却剤フィードライン354を経て各タンクに供給する冷却材供給源252も備えることができる。
【0057】
各モジュール310i〜310iiiは直列に配置された単相モジュールである。従って、電流は第1のモジュール310iを経て第2のモジュール310iiに流れ、次いで第3のモジュール310iiiに流れ得る。このような直列構成は表1に示す構成を生成するために使用することができる。上述したSCFCLモジュールと同様に、各モジュール310i〜310iiiは横向き又は縦向きにすることができる。
【0058】
図3Bにおいて、別の模範的なSCFCLシステム300Bのモジュール310i〜310iiiも縦向き又は横向きにすることができる。しかし、各モジュール310i〜310iiiは外部シャントリアクタを含まない。代わりに、各モジュール310i〜310iiiは内部シャントリアクタを含むことができる。図3cにおいて、更に別の模範的なSCFCLシステム300dのモジュール310i〜310iiiも縦向き又は横向きにすることができる。しかし、単一の外部シャントリアクタ348を用いて送電線315a及び315bを接続することができる。
【0059】
前実施形態のSCFCLシステム100及び200のタンク112と同様に、本実施形態のSCFCLシステムのタンク312は金属のような導電材料又はガラス繊維のような絶縁材料からなるものとし得る。更に、タンク312は接地から及び/又は端子342a、342b、344a,344b、346a及び346bから電気的に減結合される。導電性タンク312の場合には、各タンク312の電圧は通常動作中送電線3215a及び315bの電圧で又はほぼその電圧で電気的に浮かせることができる。障害の場合には、各タンク312はその端子342a、342b、344a,344b、346a及び346bの各々に存在する電圧の間の電圧で電気的に浮いた状態になる。タンク312は共通のプラットフォーム336上に置くことができるため、障害の場合に各タンクを異なる電位で電気的に浮いた状態になるように、絶縁支持体334a及び334bを用いてタンク312を互いに電気的に絶縁することができる。
【0060】
他の実施形態においては、タンク312は導電性であり、各タンク112はそれぞれの端子342a、342b、344a,344b、346a及び346bの一つに接続される。この場合には、障害の場合にタンク312をプラットフォーム336から絶縁するとともに互いに絶縁するために絶縁支持体334bを使用することができ、各タンクを異なる電位にすることができる。一実施例では、一つのタンクをプラットフォーム336に電気的に接続し、他のタンクはプラットフォームから電気的に絶縁することができる。
【0061】
図4A及び4Bを参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム400の側面図及び上面図がそれぞれ示されている。本実施形態においては、SCFCLシステム400は第1乃至第6の単相超伝導障害電流制限モジュール410i,410ii,410iii,410iv,410v及び410viを備えることができる。SCFCLモジュール410i,410ii,410iii,410iv,410v及び410viの各々は前実施形態のSCFCLシステム100,200及び300に含まれるSCFCLモジュールの各々に類似するものとし得る。
【0062】
図4Bに示されるように、SCFCLモジュール410i,410ii,410iii,410iv,410v及び410viは直列及び並列接続に配置されている。例えば、第1及び第4のSCFCLモジュール410i及び410ivを並列に電気的に接続することができ、第2及び第5のSCFCLモジュール410ii及び410vを並列に電気的に接続することができ、第3及び第6のSCFCLモジュール410iii及び410viを並列に電気的に接続することができる。同時に、第1及び第4のSCFCLモジュール410i及び410ivを第2及び第5のSCFCLモジュール410ii及び410vに直列に接続し、第2及び第5のSCFCLモジュール410ii及び410vを第3及び第6のSCFCLモジュール410iii及び410viに直列に接続することができる。このような構成はもっと高い電流を許容するため(並列構成のおかげ)及びもっと高い電圧を許容するため(直列構成のおかげ)に使用できる。SCFCLモジュール410i,410ii,410iii,410iv,410v及び410viは任意の組み合わせの直列及び並列接続に配置することができるため、本発明はこの特定の構成に限定されないことは当業者に理解されよう。更に、SCFCLモジュールの数は特定の数に限定されない。
【0063】
図5A及び5Bを参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム500の側面図及び上面図がそれぞれ示されている。本実施形態においては、SCFCLシステム500はSCFCLモジュール510を備える。本実施形態のSCFCLモジュール510は、例えばガラス繊維又はG10などの熱的に及び/又は電気的に絶縁性の材料からなるタンク512を備えることができる。しかし、本発明においては、例えば金属タンク512のような導電性タンク512も排除されない。タンク512が導電材料からなる場合でも、タンク512は接地から電気的に絶縁し、減結合することができる。いくつかの実施例では、タンク512は端子517a〜517fのすべてから絶縁することができ、他の実施例では端子517の正確に一つに電気的に結合することができる。
【0064】
タンク512内には複数のSCFCLユニット510i,510ii及び510iiiが配置される。SCFCLユニット510i,510ii及び510iiiの各々は前実施形態に記載したSCFCLユニットに類似するものとし得る。更に、本実施形態のSCFCLユニット510i,510ii及び510iiiは前実施形態に記載した構成の一以上の構成に配置することができる。各ユニット510i,510ii及び510iiiは単相ユニットとすることができ、好ましくは各ユニット510i,510ii及び510iiの位相は隣接するユニット510i,510ii及び510iiiの位相と相違させることができる。例えばユニット520iはユニット520iiと異なる位相を有することができる。一方、ユニット520iはユニット520iiiの位相と同じ又は異なる位相を有することができる。いくつかの実施例では、3つのモジュールがタンク512内に収容され、各モジュールは3相電力システムの一つの相とする。この実施例では、各相は他の2つの相からそれぞれ120°だけオフセットされる。更に、SCFCLユニット520i,520ii及び520iiiは縦向き又は横向きに配置することができる。
【0065】
超伝導障害電流制限ユニット520i,520ii及び520iiiの温度は所望の温度に維持することができる。例えば、超伝導障害電流制限ユニット520iは、タンク512に導入される冷却剤114、例えば液体窒素又は別の冷却剤(気体又は液体状)によって低い温度(例えば〜77k)に維持することができる。冷却剤113は、導入時に、タンク512に結合されたフィードライン354及びポート515を経てタンク512に導入することができる。前実施形態と同様に、フィードライン及びポートは絶縁性フィードラインとし得るが、導電性フィードラインも本発明では排除されない。
【0066】
SCFCLユニット520i,520ii及び520iiiの各々は電気ブッシング516にも結合される。各ユニットのこの電気ブッシング516は内部シャントリアクタ(図示せず)により互いに結合することができる。また、前実施形態のSCFCLのように、ブッシング516は外部シャントリアクタ546により互いに結合することもできる。更に別の実施例においては、SCFCLモジュール520iは内部及び外部シャントリアクタの両方を備えることもでき、各SCFCLユニット520i,520ii及び520iiiのブッシング516は内部及び外部シャントリアクタの両方で互いに結合することができる。更に、ブッシング516は端子517で送電線に結合し、よってSCFCLシステム500を送電網(図示せず)に結合することができる。
【0067】
各SCFCLユニット520i,520ii及び520iiiの各々はオプションの内部支持体132によって支持することができる。一方、SCFCタンク512は一つ以上のオプションの外部支持体334a及び334bによって支持することができる。本実施形態の大きなSCFCLシステム500を収容するために、オプションのプラットフォーム336を含めることもできる。前実施形態と同様に、内部及び外部支持体132及び334a及び334b及びプラットフォーム336(もし含まれるなら)は熱的に及び/又は電気的に絶縁性の構造とすることができる。しかし、本実施形態においては、タンク512及びフィードライン354と同様に、熱的に及び/又は電気的に伝導性の構造も本発明では排除されない。
【0068】
本実施形態の超伝導障害電流制限器500はいくつかの利点をもたらす。例えば、高電圧設計要件の大部分は空気及び空隙絶縁中の外部支持構造に移行される。更に、SCFCL500はタンク512内のユニット520i,520ii及び520iiiの間により短い内部空隙を必要とするとともに、より短く低い定格電圧のブッシング516を必要とする。更に、3相モジュールの設置は3つの単相モジュールの設置において発生し得る空間利用の冗長性を除去できる。特に、SCFCLの全体寸法はよりコンパクトに軽量にすることができる。このようなSCFCLシステム500は小さい設置面積が望ましい場合に魅力的である。更にSCFCLシステム500はデバイスレベルモジュール設計の一部分とすることができる。このようなモジュールは、高電流及び高電圧用に複数のユニットを並列及び/又は直列に接続することによってより大きなユニットを構成するのに使用することができる。
【0069】
図6を参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム600が示されている。SCFCLシステム600は図5に示すSCFCLシステムに類似している。しかし、本実施形態のSCFCLシステム600のタンク612は導電性で、接地に電気的に結合されている。従って、タンク612は接地電位に維持される。支持体132はオプションでタンク612とユニット520i−520iiiとの間で電気的絶縁体にすることができる。
【0070】
図7を参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム700が示されている。本実施形態においては、SCFCLシステム700は3相システムであり、3つの単相モジュール710を備える。更に、システム700は回路遮断機770の近くに設けられる。本実施形態のSCFCLシステム700は3つの単相モジュール110を備えるが、説明を簡単明瞭にするために2つのモジュール710のみが示されている。
【0071】
SCFCLシステム700に隣接する回路遮断機770は筐体772及びタンクアセンブリ771を含むことができる。図に示されるように、筐体772は接地から第1の垂直距離y1だけ離間することができる。一方、タンクアセンブリ771は第1の円筒タンク774を備えることができる。図に示されていないが、タンクアセンブリ771は第2及び第3の円筒タンクを含むことができる。タンクアセンブリ771は複数のブッシング絶縁体776も含むことができる。回路遮断機770のタイプに応じて、ブッシング絶縁体776の数は変えることができる。例えば、3相回路遮断機770は1対の第1相のブッシング絶縁体776a-i及び776a-ii、1対の第2相のブッシング絶縁体776b-i及び776b-ii及び1対の第3相のブッシング絶縁体(図示せず)を備えることができる。各ブッシング絶縁体に複数の電流変成器778を結合することができる。
【0072】
上述したように、本実施形態のSCFCLシステム700は3相システムであり、3つの単相モジュール710を備える。第1のモジュール710は第1相のブッシング絶縁体対776a-i及び776a-iiの一つに結合することができ、第2のモジュール710は第2相のブッシング絶縁体対776b-i及び776b-iiの一つに結合することができ、第3のモジュール710は第3相のブッシング絶縁体対(図示せず)の一つに結合することができる。
【0073】
本実施形態のSCFCLモジュール710の各々は図1に示すSCFCLシステムのSCFCLモジュール110に類似するものとし得る。例えば、本実施形態の各モジュール710は、接地から離間され非接地電位に維持することができるタンク712を備えることができる。図に示されるように、タンク712は接地から第2の垂直距離y2だけ離間させることができる。更に、タンク712は回路遮断機770から水平方向に横方向距離xだけ離間させることができる。
【0074】
タンク712内には1つ以上の障害電流制限ユニット720を設けることができ、各モジュール710は1つ以上のブッシング716及び1つ以上のオプションの内部又は外部シャントリアクタ718及び748を備えることができる。本実施形態の各モジュール710は図1で説明したモジュールに類似するものとし得るので、追加の説明は省略する。
【0075】
本実施形態のSCFCLシステム700は回路遮断機770に隣接して配置することができる。好ましくは、各モジュール710のタンク712は接地電位に維持される回路遮断機770の筐体772又は他の部分の上方に配置される。例えば、タンク712はブッシング絶縁体776a-i,776a-ii,776b-i,776b-ii,…と水平方向780に整列させることができ、あるいは、それらの上方に配置することができる。従って、第2の垂直距離y2は第1の垂直距離y1より大きいものとし得る。タンク712をブッシング絶縁体776a-i,776a-ii,776b-i,776b-ii,…の近く又は上方に配置することによって、回路遮断機770の上部空間を利用することができる。
【0076】
更に、タンク712と回路遮断機770との間の横方向間隔xを最小にすることができる。タンク712をブッシング絶縁体776a-i,776a-ii,776b-i,776b-ii,…と整列させることによって、又はそれらの上方に配置することによって、横方向間隔xを減少させても、タンク712と筐体772との間の間隔を拡大することができる。例えば、タンク712と筐体772との間の間隔は垂直方向に沿って拡大することができる。その過程で、タンク712と筐体772との間に空気により適切な電気絶縁を与えることができる。従って、SCFCLシステム700及び回路遮断機770は横方向により密に詰め込むことができ、電気的絶縁に妥協することなく設置面積要件を最少にすることができる。
【0077】
接地電位に維持されるタンクを有するSCFCLシステムにおいては、タンクは通常接地に接触させる。このようなシステムでは、回路遮断機770とタンクとの間の横方向距離xは適切な電気的絶縁を与えるために大きくしなければならない。従って、SCFCLシステム及び回路遮断機770は大きな設置面積を必要とする。
【0078】
障害電流を制限する装置のいくつかの実施形態について説明した。本発明はここに開示する特定の実施形態により制限されないことは当業者に認識されよう。実際、ここに開示した実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態及び変更例が当業者に、以上の開示及び添付図面の開示から明らかになるであろう。従って、このような他の実施形態及び変更例は本発明の範囲に含まれることが意図されている。更に、本発明は特定の目的に対する特定の環境における特定の実施と関連して記載されているが、当業者は、その有用性がこれに限定されず、本発明は任意の数の目的に対して任意の数の環境において有利に実施できることを認識されよう。従って、後記の特許請求の範囲はここに記載する本発明の範囲の広さ及び精神を考慮して解釈すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害電流の伝送を制限する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力送電及び配電網においては、障害電流状態が起こり得る。障害電流状態は網内の障害又は短絡によって生じる網を流れる電流の急激な変化(サージ)である。障害の原因には、網への落雷、悪天候又は倒木による送電線の地絡などが含まれる。障害が起こると、大きな負荷が瞬間的に現れる。これに応答して網はこの負荷、即ちこの場合には障害に多量の電流(過電流)を供給する。このサージ又は障害電流状態は網又は網に接続された機器を損傷し得るため望ましくない。特に、網及び網に接続された機器が燃えることがあり、場合によっては爆発することもある。
【0003】
電力機器を障害電流による損傷から保護するために使用されているシステムの一つは回路遮断器である。障害電流が検出されたとき、回路遮断器は回路を機械的に開き、過電流の流れを遮断する。
【0004】
障害電流を制限する別のシステムは超伝導障害電流制限器(「SCFCL」)である。一般に、SCFCLは臨界温度レベルTc、臨界磁界レベルHc及び臨界電流レベルIcより低い場合に殆ど零の抵抗値を示す超伝導回路を備える。これらの条件の少なくとも一つが上記の臨界レベルを超える場合には、この回路はクエンチされ、抵抗性を示す。
【0005】
通常動作中、SCFCLの超伝導回路はTc,Hc及びIcより低く維持される。傷害時に、これらの条件の一つ以上が臨界レベルTc,Hc及びIcより高くなる。そのとき瞬時にSCFCLの超伝導回路はクエンチされ、その抵抗値が急激に増大し、それによって障害電流の伝導が制限される。若干の時間遅延後及び短絡障害の解消後に、Tc,Hc及びIcは正常値に戻され、網及びSCFCLを経て電流が流される。
【0006】
電力送電網に現在使用されている超伝導障害電流制限器は障害電流を制限できるが十分ではない。例えば、SCFCLは高電圧送電網をサポートし得ない。加えて、従来のSCFCLはその技術的な欠陥のために大きな設置面積を必要とする。従って、新しいタイプのSCFCLが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
これから、障害電流の送電を制限する技術を説明する。一つの特定の模範的な実施形態において、この技術は障害電流の送電を制限する新しいタイプの装置によって実現することができる。この装置は、接地電位から電気的に絶縁されるように接地から電気的に減結合された筐体と、少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第1及び第2の端子と、及び前記筐体内に収容され且つ前記第1及び第2の端子に電気的に接続された第1の超伝導回路とを備えている。
【0008】
この特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記筐体は電気的に絶縁性の材料からなるものとし得る。
【0009】
更にこの特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記筐体は電気的に導電性とし得る。
【0010】
この特定の模範的な実施形態の他の実施例によれば、前記筐体は前記第1及び第2の端子から電気的に絶縁することができる。
【0011】
この特定の模範的な実施形態の追加の実施例によれば、前記第1の端子に第1の電圧が存在し、前記第2の端子に第2の電圧が存在し、前記筐体は前記第1及び第2の電圧の間の電圧である。
【0012】
この特定の模範的な実施形態の他の追加の実施例によれば、前記筐体は前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続されている。
【0013】
この特定の模範的な実施形態の更に別の実施例によれば、前記装置は、前記筐体と前記接地との間に配置され、前記筐体を支持する支持体を更に備え、前記支持体によって前記筐体を接地から電気的に絶縁している。
【0014】
この特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記装置は、前記超伝導回路を所定の温度より低く維持するために前記筐体内に冷却剤を更に備えている。
【0015】
更にこの特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記装置は、前記筐体がその上に支持されたプラットフォームを備え、前記プラットフォームは接地から電気的に絶縁されている。
【0016】
更にこの特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記装置は。第2の筐体と、第3及び第4の端子と、前記第2の筐体内に収容された第2の超伝導回路とを更に備え、前記第2の超伝導回路は前記第3及び第4の端子に電気的に接続され、前記第2の超伝導回路は前記プラットフォームにより支持されている。
【0017】
更にこの特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記装置は、前記筐体及び前記第2の筐体が電気的に絶縁されるように、前記筐体と前記プラットフォームとの間に置かれた支持体を更に備えることができる。
【0018】
この特定の模範的な実施形態の他の実施例によれば、前記第3及び第4の端子の各々は一つ以上の配電線に電気的に接続されている。
【0019】
この特定の模範的な実施形態の追加の実施例によれば、前記第3の端子は前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続されている。
【0020】
この特定の模範的な実施形態の他の追加の実施例によれば、前記装置は、少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第3及び第4の端子と、前記筐体内に収容され且つ前記第3及び第4の端子に電気的に接続された第2の超伝導回路とを更に備えている。
【0021】
この特定の模範的な実施形態の更に別の実施例によれば、前記装置は、少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第5及び第6の端子と、前記筐体内に収容され且つ前記第5及び第6の端子に電気的に接続された第3の超伝導回路とを更に備えている。
【0022】
この特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記第1の超伝導回路と前記筐体との間の隙間長が250cm未満である。
【0023】
この特定の模範的な実施形態の別の実施例によれば、前記第1の超伝導回路と前記筐体との間の隙間長が約8〜25cmである。
【0024】
別の特定の実施形態においては、障害電流を制限する手法は、第1及び第2の端子を一つ以上の電流搬送線に電気的に接続するステップと、障害電流を通す通路を与えるために筐体内に収容された超伝導回路を前記第1及び第2の端子に電気的に接続するステップと、前記筐体を接地から電気的に絶縁するステップとを備える。
【0025】
この特定の実施形態の別の実施例によれば、前記手法は、前記筐体を前記第1及び第2の端子から電気的に絶縁するステップを更に備えることができる。
【0026】
更にこの特定の実施形態の別の実施例によれば、前記手法は導電性の筐体を使用し、前記筐体を前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続するステップを更に備えることができる。
【0027】
別の特定の実施形態において、障害電流を制限する手法は、筐体と複数のブッシング絶縁体を備え、前記筐体は外気に露出し、接地電位に維持され、接地から第1の垂直距離だけ離間されている回路遮断機を用意するステップと、前記回路遮断機に電気的に結合された、筐体と第1及び第2の端子と前記筐体内に収容され前記第1及び第2の端子に電気的に結合された第1の超伝導回路を備える障害電流制限器を用意するステップを備え、前記筐体は前記接地から前記第1の垂直距離大きい第2の垂直距離だけ離間されている。
【0028】
本発明はこれから添付図面に示される模範的な実施形態について詳細に説明される。本発明は模範的な実施形態について以下に説明されるが、本発明はこれらに限定されないものと理解されたい。本明細書に開示された技術にアクセスする当業者は、本明細書に開示された技術の範囲に含まれる追加の種々の実施、変更及び具体化並びに他の応用分野を認識でき、この点に関し本開示は極めて有意義である。
【0029】
本発明の理解を容易にするために、添付図面を参照して説明する。これらの図はカバラ寿司も正しい寸法比で描かれていない。更に、これらの図は本発明を限定するものでなく、単なる例示であるものと解釈されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明の一実施形態による模範的な超伝導障害電流制限(SCFCL)システムを示す。
【図1B】本発明のSCFCLシステムに収容し得る模範的な障害電流制限ユニットを示す。
【図2】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図3A】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図3B】本発明の別の実施形態による内部シャントリアクタを用いる別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図3C】本発明の別の実施形態による外部シャントリアクタを用いる別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図4A】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムの側面図を示す。
【図4B】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムの上面図を示す。
【図5A】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムの側面図を示す。
【図5B】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムの上面図を示す。
【図6】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【図7】本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書には、超伝導障害電流制限器のいくつかの実施形態が紹介される。当業者は、本明細書に開示されるこれらの実施形態は説明のための単なる例示であることを理解されたい。説明を簡単明瞭にするために、既に知られている部品、特徴及び機能は説明が省略されるかもしれない。
【0032】
図1A及び1Bを参照すると、本発明の一実施形態による模範的な超伝導障害電流制限(SCFCL)システム100が示されている。本実施形態において、SCFCLシステム100は一つ以上のモジュール110を備えることができる。しかし、本発明のSCFCLシステム100は任意の数のモジュール110を含むことができる。例えば、SCFCLシステム100は互いに同一の3つの単相モジュールを有することができる。これらのモジュールは直列に又は並列に接続することができる。説明を簡単明瞭にするために、SCFCLシステム100の説明は一つの単相モジュール110に限定する。
【0033】
SCFCLシステム100のモジュール110はその中にチャンバを画成する筐体又はタンク112を備えることができる。一実施形態において、筐体又はタンク112は熱的に及び/又は電気的に絶縁性のタンク、例えばガラス繊維又は他の電気絶縁材料製のタンクとすることができる。本実施形態において、タンク112は内層及び外層112a及び112bとそれらの間に介挿された電気絶縁媒体とからなる金属タンク112である。
【0034】
タンク112内には、一つ以上の障害電流制限ユニット120(明瞭且つ簡単化のためにブロックとして示されている)を収容することができる。本実施形態においては、モジュール110は単相障害電流制限ユニット120を有する単相モジュール110とすることができる。別の実施例においては、モジュール110は3つの単相障害電流制限ユニット120を有する3層モジュールとすることができる。図1Bに示すように、障害電流制限ユニット120内には一つ以上の超伝導回路122及び第1及び第2のエンドキャップ124及び126を配置することができる。第1及び第2のエンドキャップ124及び126は、一例では、コロナシールドとすることができる。本実施形態においては、障害電流制限ユニット120はタンク112から250cm以下の隙間長を有することができる。好ましくは、隙間長は8−25cmとすることができる。本明細書において、隙間長とは一つ以上の超伝導回路122とタンク112との管の間の最短距離をいう。
【0035】
図1Aを参照するに、モジュール110は一つ以上の電気ブッシング116を備えることもできる。ブッシング116は内部導体(図示せず)及び外部絶縁体を備えることができる。ブッシング116の遠方端は、SCFCLも110を送電網(図示せず)に結合するために、端子144及び146によりそれぞれの電流搬送線142に結合することができる。電流搬送線142は一つの位置から別の位置に(例えば電流源から電流エンドユーザに)電力を伝送するのに使用される送電線又は電流分配線とすることができる。ブッシング116内の内部導体はブッシング116の端子144及び146を障害電流制限ユニット120に接続することができる。一方、外部絶縁体は筐体又はタンク112を内部導体から絶縁するために使用され、それによってタンク112及び端子144及び146を異なる電位にすることが可能になる。必要に応じ、SCFCLモジュール110は、電気ブッシング116内に含まれる導体間を接続するために、オプションの内部シャントリアクタ118又は外部シャントリアクタ148又はその両方を備えることができる。しかし、本発明は、内部シャントリアクタ118又は外部シャントリアクタ148又はその両方を備えないSCFCLも110を排除するものではない。
【0036】
一以上の障害電流制限ユニット120の温度はタンク112内に含まれる冷却剤114によって所望の温度範囲に維持することができる。一例では、障害電流制限ユニット120は低い温度、例えば−77°Kに維持するのが望ましい。このような低温度に維持するために、冷却剤114として液体窒素又はヘリウムガスを使用することができる。他の例では、一以上の障害電流制限ユニット120の温度は他の温度範囲に維持するのが望ましことがあり、気体状又は液体状の他の種類の冷却剤を使用することもできる。例えば、障害電流制限ユニット120の温度は室温に維持するのが望ましいことがある。このような場合には、冷却剤114として室温に維持された空気を使用することもできる。冷却剤114はタンク112に結合されたフィードライン(図示せず)及びポート115を介してタンク112に供給することができる。本発明において、フィードライン及びポート115は熱的に及び/又は電気的に絶縁性の材料からなるものとするのが好ましい。しかし、本発明は熱的に及び/又は電気的に導電性の材料からなるフィードライン及びポートのいずれも排除しない。フィードライン及びポート115がタンク112又はそれに含まれる任意の構成要素の接地を与えない場合には、それらは任意の種類の材料からなるものとすることができる。
【0037】
本実施形態においては、タンク112はオプションの外部支持体134によって接地から支持することができる。一方、障害電流制限ユニット120はオプションの内部支持体132によってタンク112から支持することができる。障害電流制限ユニット120は他の何らかの構成要素によってタンク112から支持することもできるので、内部支持体132はオプションとすることができることは当業者に理解されよう。内部支持体132を含む場合にも、内部支持体132は障害電流制限ユニット120を必ずしもその底面からではなく障害電流制限ユニット120の側面又は上面から支持することができる。同様に、タンク112も他の何らかの構成要素によって接地から支持することができる。更に、外部支持体134を含む場合にも、外部支持体134はタンク112を必ずしもタンク112の底面からではなくタンク112の側面又は上面から支持することができる。
【0038】
内部支持体132及び外部支持体134を含む場合には、これらの支持体の各々は熱的に及び/又は電気的に絶縁性の材料からなるものとするのが好ましい。しかし、本発明は熱的に及び/又は電気的に伝導性の内部支持体132及び外部支持体134を排除するものではない。熱的に及び/又は電気的に伝導性の外部支持体134を使用する場合には、タンク112を接地から電気的に絶縁するために支持体134と接地との間に電気的に絶縁性の材料を設けるのが望ましい。
【0039】
1つ以上のSCFCLモジュール110を有するSCFCLシステム100は配電網に組み込むことができる。タンク112は送電線142に電気的に接続することができる。しかし、タンク112は接地から絶縁体として作用し得る空気によって又はオプションの外部支持体134によって電気的に減結合するができる。上述したように、タンク112はいくつかの実施例においては金属タンク112とすることができる。これらの実施例においては、タンク112は典型的には端子144及び146に近い電圧に浮かせることができる。通常動作中、送電線142a、142bの電圧はほぼ同一のままであるので、タンク104の電圧は送電線142で送電される電圧とほぼ同じになり得る。障害時に、メタルタンクの電圧は送電線142a及び142b間の電圧になり得る。
【0040】
通常動作中、送電線142からの電流は、第1の端子144からブッシング116及び障害電流制限ユニット120を経て第2の端子146へと、SCFCLモジュール110を経て伝送される。障害電流制限ユニット120内の超伝導回路122は臨界温度(Tc)、臨界磁界(Hc)及び臨界電流(Ic)以下に維持され、超伝導状態に維持される。従って、その抵抗値はシステムインピーダンスに比較して無視できるほど小さくなる。障害が起こると、モジュール110に伝送される障害電流が動作パラメータ、温度(Tc)、磁界(Hc)及び電流(Ic)の少なくとも一つを臨界制限値Tc,Hc又はIcより上に増大し得る。超伝導回路122の抵抗値は増大し、SCFCLモジュール110を経て伝送される障害電流は所定の値、好ましくは約50%に減少される。SCFCLによる電流制限は、システムオペレータの仕様に応じて、10%から90%の範囲で変化させることができる。障害電流の減衰後、超伝導回路122は超伝導状態に戻ることができ、よってほぼ零抵抗の状態に戻ることができる。
【0041】
本発明においては、モジュール110のタンク112は接地から電気的に減結合される。更に、高電圧設計の問題はモジュール110の外部で、例えば絶縁体として作用し得る空気によって解決することができる。その結果、さもなければ高電圧下で動作するように収容しなければならないタンク112内の高電圧ブッシング設計及び特高電圧設計は不要にすることができる。従って、モジュール110の設計を簡単化することができる。更に、モジュール110の大きさを大幅に小さくすることができる。モジュール110のタンク112が導電材料からなる場合でも、タンク112は、例えばタンク112を接地から切り離し、タンク112を接地に対して電気的に浮かせることによって非零電位に維持することができる。タンク112は、タンクと送電網と接地の間の電気絶縁量に基づく異なる電圧にすることができる。いくつかの実施例においては、支持構造132及び134はモジュール110と接地との間の分圧器を構成し、タンク112の電位は接地より高く端子電圧より低い値にすることができる。
【0042】
本発明においては、モジュール110は以下の模範的な仕様を有するのが好ましい。
・ 定格制限障害電流における障害時の最大電圧=10kVrms
・ 最大負過電流=12kArms
・ 最大障害電流=40kArms
・ 定格制限障害電流における障害時の最大インピーダンス=0.25Ω
【0043】
換言すれば、電流制限モジュール110のインピーダンスは障害時に0.25Ωに増大し得る。モジュール110は40KArmsの最大電流に耐え得る。これらの値に基づいて、モジュール110の両端間の最大電圧は0.25Ω×40kArms、即ち10kVrmsになり得る。これらのパラメータを知っていれば、様々なシステム電圧を使用し、さもなければ発生し得る最大障害電流より低い最大障害電流を有する様々な送電網を設計することができる。
【0044】
送電網が138kVのシステム電圧、1200Aの最大負過電流、及び63kAの障害送電線を有する3相システムを必要とする場合、これらの特性に基づいて、以下の仕様を算出することができる。
・ 相電圧(システム電圧/√3と定義される)は80kVである。
・ システム短絡インピーダンスは相電圧を最大障害電流で除算することにより計算され、80kV/63kV=1.26Ωである。
・ SCFCLモジュールにより許容される最大障害電流は40kAであるから、電流低減要件は少なくとも(63kA−40kA)/63kA、即ち37%である。
【0045】
40kA未満の最大障害電流を達成するために、送電網のインピーダンスは80kV/40kA、即ち2Ωより大きくし得る。SCFCLモジュールの数は、所望のインピーダンス(2.0Ω)からシステム短絡インピーダンス(1.26Ω)を減算し、その結果を0.25Ω(1つのSCFCLモジュールのインピーダンス)で除算することによって決定することができる。余裕を考慮すると、必要とされる10kVのSCFCLモジュールの数は4になる。これに基づいて、全てのモジュールの合計SCFCLモジュールインピーダンスは4×0.25=1.0Ωになる。この場合、制限障害電流は80kV/(1.26Ω+1.0Ω)で与えられ、35kAになる。達成される障害電流の低減は(63kA−35kA)/63kAで与えられ、44%である。
【0046】
表1は利用できる他の構成を示す。以下に示す実施形態では制限電流は40kA未満に維持される。各構成のシステム電圧ひいては相電圧を変化させて、必要とされるSCFCLの数を計算した。これに基づいて、制限電流及び制限電流の低減率を計算した。
【0047】
表1:種々のシステム構成に対する要件
【表1】
【0048】
1つ以上のモジュール100を備えるSCFCLシステム100は多くの利点をもたらす。上述したように、モジュール110の大きさは接地に電気的に結合されるモジュールの大きさに比較して大幅に小さくすることができる。例えば、本発明のSCFCLモジュール110は250cm以下の隙間長を有し得る。一実施例においては、隙間長は8−15cmとすることができる。上述したように、隙間長は1つ以上の超伝導回路122とタンク112との間の最短距離とすることができる。これは接地に電気的に結合されるタンクと相違する点である。後者の場合には、隙間長は90インチにもなり得る。
【0049】
後者の場合における大きな隙間長は超伝導回路とタンクとの間のアーク通路に起因する。障害状態時に、タンク内の温度が大きく増大し得る。冷却剤として液体窒素を使用する場合、温度上昇によって液体窒素が窒素気泡になり得る。超伝導回路電圧からの高電界によって窒素気泡は超伝導回路からタンクに向かって整列させられる。窒素ガスは液体窒素に比較して弱い電気絶縁体であるから、窒素気泡は超伝導回路とタンクとの間にアークフラッシュオーバを発生し得る弱い絶縁通路を与え得る。タンクが接地電位に維持される場合、超伝導回路、タンク及び接地を窒素気泡を介して接続するアーク通路が形成され得る。その結果として、高電圧破壊が発生し、別の障害を生じ得る。このような通路の形成を防ぐ一つの方法は隙間長を増大させ、それによってタンクと超伝導回路との間に完全な通路が形成される確率を減少させるものである。しかしながら、タンクと超伝導回路との間の距離を増大させると、必然的にSCFCLモジュールの設置面積が増大する。本実施形態においては、窒素気泡が超伝導回路からタンクに向かって整列する場合でも、接地電圧レベルより高く維持されたタンクによってアーク電流が超伝導回路から接地へ流れるのを阻止することができる。従って、本実施形態のSCFCLシステム100は、より小さい設置面積であるにも係わらず、追加の障害を防止することができ、送電及び配電システムに緊急に必要とされている超高電圧性能を有するコンパクトなSCFCL装置を提供する。
【0050】
より小さい寸法はまた縦向き又は横向きモジュールを可能にする。ここで、縦向き又は横向きはモジュール110の高さ対幅のアスペクト比に関する。一実施例においては、モジュール110は背が高く薄いモジュール、即ち縦向きモジュールとすることができる。別の例においては、モジュール110は短く幅の広い寸法を有する横向きモジュールとすることができる。
【0051】
システム100内に2つ以上のモジュール110を含める場合には、高電圧及び/又は高電流用途向けに設計をカスタマイズするために、複数の小寸法モジュール110を直列に及び/又は並列に結合することができる。加えて、SCFCL装置を障害状態中に高電圧で試験することが電力会社によって要求されるが、その厳しい試験要件は本発明のモジュール110によって満たすことができ、本発明によれば各モジュールを個別に試験することができる。保守又は修理作業は使用されているモジュール110を除去する及び/又は新しいモジュール110と交換することによって行うことができる。本実施形態のモジュール110は単相モジュール100aとすることができる。別の実施例では、モジュールは3相モジュールとすることができる。単相モジュールは送電線SCFCLを設計する際に有利である。一方、3相モジュールは低電圧分配システム用に使用することができる。
【0052】
図2を参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム200が示されている。本実施形態のSCFCLシステム200は前実施形態のシステム100に類似することは当業者に認識されよう。更に、本実施形態のSCFCLシステム200は図1A及び1Bに示されるSCFCLシステム100に含まれるコンポーネントに類似する多くのコンポーネントを含む。従って、前実施形態のSCFCLシステム100の符号及び説明は本実施形態のSCFCLシステム200にも同様に適用される。
【0053】
モジュール210は、SCFCLシステム100のモジュール110と異なり、障害電流制限ユニット120及びタンク112を送電線142a及び142bの一つに接続する導電性ロッド216を備える。従って、タンク112は通常状態中も障害状態中も端子144及び146の一つと同じ電位に維持することができる。
【0054】
SCFCLシステムが複数のSCFCLモジュールを備える場合には、これらのモジュールは種々の構成に配置することができる。図3Aを参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム300aが示されている。装置300aは複数のSCFCLモジュール310i〜310iiiを備えるSCFCLシステムとすることができる。本実施形態のSCFCLシステム300aは前実施形態で記載したコンポーネントに類似するコンポーネントを含むことができることは当業者に認識されよう。明瞭のために、類似の特徴の説明は省略しよう。従って、本実施形態のSCFCLシステム300aの説明は前実施例形態のSCFCLシステムの説明と一緒に読まれたい。
【0055】
図3Aに示されるように、本実施形態のSCFCLシステム300aは複数のSCFCLモジュール、好ましくは3つの単相SCFCLモジュール300i〜300iiiを備えることができる。各モジュール310i〜310iiiは互いに類似するとともに前実施形態で記載したモジュールに類似するものとし得る。必要に応じ、一つ以上のモジュール310i〜310iiiは内部及び/又は外部シャントリアクタを含むことができるが、本実施形態は一つ以上のモジュール310i〜310iiiが内部及び/又は外部シャントリアクタを含まないものを排除しない。
【0056】
各モジュール310i〜310iiiのタンク312は間隔を置いて配置するとともに接地から電気的に減結合することができる。必要に応じ、各タンク312は電気的に及び/又は熱的に絶縁性の支持体334a及び334b及びプラットフォーム336によって支持することができる。SCFCLシステム300は冷却剤を冷却剤フィードライン354を経て各タンクに供給する冷却材供給源252も備えることができる。
【0057】
各モジュール310i〜310iiiは直列に配置された単相モジュールである。従って、電流は第1のモジュール310iを経て第2のモジュール310iiに流れ、次いで第3のモジュール310iiiに流れ得る。このような直列構成は表1に示す構成を生成するために使用することができる。上述したSCFCLモジュールと同様に、各モジュール310i〜310iiiは横向き又は縦向きにすることができる。
【0058】
図3Bにおいて、別の模範的なSCFCLシステム300Bのモジュール310i〜310iiiも縦向き又は横向きにすることができる。しかし、各モジュール310i〜310iiiは外部シャントリアクタを含まない。代わりに、各モジュール310i〜310iiiは内部シャントリアクタを含むことができる。図3cにおいて、更に別の模範的なSCFCLシステム300dのモジュール310i〜310iiiも縦向き又は横向きにすることができる。しかし、単一の外部シャントリアクタ348を用いて送電線315a及び315bを接続することができる。
【0059】
前実施形態のSCFCLシステム100及び200のタンク112と同様に、本実施形態のSCFCLシステムのタンク312は金属のような導電材料又はガラス繊維のような絶縁材料からなるものとし得る。更に、タンク312は接地から及び/又は端子342a、342b、344a,344b、346a及び346bから電気的に減結合される。導電性タンク312の場合には、各タンク312の電圧は通常動作中送電線3215a及び315bの電圧で又はほぼその電圧で電気的に浮かせることができる。障害の場合には、各タンク312はその端子342a、342b、344a,344b、346a及び346bの各々に存在する電圧の間の電圧で電気的に浮いた状態になる。タンク312は共通のプラットフォーム336上に置くことができるため、障害の場合に各タンクを異なる電位で電気的に浮いた状態になるように、絶縁支持体334a及び334bを用いてタンク312を互いに電気的に絶縁することができる。
【0060】
他の実施形態においては、タンク312は導電性であり、各タンク112はそれぞれの端子342a、342b、344a,344b、346a及び346bの一つに接続される。この場合には、障害の場合にタンク312をプラットフォーム336から絶縁するとともに互いに絶縁するために絶縁支持体334bを使用することができ、各タンクを異なる電位にすることができる。一実施例では、一つのタンクをプラットフォーム336に電気的に接続し、他のタンクはプラットフォームから電気的に絶縁することができる。
【0061】
図4A及び4Bを参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム400の側面図及び上面図がそれぞれ示されている。本実施形態においては、SCFCLシステム400は第1乃至第6の単相超伝導障害電流制限モジュール410i,410ii,410iii,410iv,410v及び410viを備えることができる。SCFCLモジュール410i,410ii,410iii,410iv,410v及び410viの各々は前実施形態のSCFCLシステム100,200及び300に含まれるSCFCLモジュールの各々に類似するものとし得る。
【0062】
図4Bに示されるように、SCFCLモジュール410i,410ii,410iii,410iv,410v及び410viは直列及び並列接続に配置されている。例えば、第1及び第4のSCFCLモジュール410i及び410ivを並列に電気的に接続することができ、第2及び第5のSCFCLモジュール410ii及び410vを並列に電気的に接続することができ、第3及び第6のSCFCLモジュール410iii及び410viを並列に電気的に接続することができる。同時に、第1及び第4のSCFCLモジュール410i及び410ivを第2及び第5のSCFCLモジュール410ii及び410vに直列に接続し、第2及び第5のSCFCLモジュール410ii及び410vを第3及び第6のSCFCLモジュール410iii及び410viに直列に接続することができる。このような構成はもっと高い電流を許容するため(並列構成のおかげ)及びもっと高い電圧を許容するため(直列構成のおかげ)に使用できる。SCFCLモジュール410i,410ii,410iii,410iv,410v及び410viは任意の組み合わせの直列及び並列接続に配置することができるため、本発明はこの特定の構成に限定されないことは当業者に理解されよう。更に、SCFCLモジュールの数は特定の数に限定されない。
【0063】
図5A及び5Bを参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム500の側面図及び上面図がそれぞれ示されている。本実施形態においては、SCFCLシステム500はSCFCLモジュール510を備える。本実施形態のSCFCLモジュール510は、例えばガラス繊維又はG10などの熱的に及び/又は電気的に絶縁性の材料からなるタンク512を備えることができる。しかし、本発明においては、例えば金属タンク512のような導電性タンク512も排除されない。タンク512が導電材料からなる場合でも、タンク512は接地から電気的に絶縁し、減結合することができる。いくつかの実施例では、タンク512は端子517a〜517fのすべてから絶縁することができ、他の実施例では端子517の正確に一つに電気的に結合することができる。
【0064】
タンク512内には複数のSCFCLユニット510i,510ii及び510iiiが配置される。SCFCLユニット510i,510ii及び510iiiの各々は前実施形態に記載したSCFCLユニットに類似するものとし得る。更に、本実施形態のSCFCLユニット510i,510ii及び510iiiは前実施形態に記載した構成の一以上の構成に配置することができる。各ユニット510i,510ii及び510iiiは単相ユニットとすることができ、好ましくは各ユニット510i,510ii及び510iiの位相は隣接するユニット510i,510ii及び510iiiの位相と相違させることができる。例えばユニット520iはユニット520iiと異なる位相を有することができる。一方、ユニット520iはユニット520iiiの位相と同じ又は異なる位相を有することができる。いくつかの実施例では、3つのモジュールがタンク512内に収容され、各モジュールは3相電力システムの一つの相とする。この実施例では、各相は他の2つの相からそれぞれ120°だけオフセットされる。更に、SCFCLユニット520i,520ii及び520iiiは縦向き又は横向きに配置することができる。
【0065】
超伝導障害電流制限ユニット520i,520ii及び520iiiの温度は所望の温度に維持することができる。例えば、超伝導障害電流制限ユニット520iは、タンク512に導入される冷却剤114、例えば液体窒素又は別の冷却剤(気体又は液体状)によって低い温度(例えば〜77k)に維持することができる。冷却剤113は、導入時に、タンク512に結合されたフィードライン354及びポート515を経てタンク512に導入することができる。前実施形態と同様に、フィードライン及びポートは絶縁性フィードラインとし得るが、導電性フィードラインも本発明では排除されない。
【0066】
SCFCLユニット520i,520ii及び520iiiの各々は電気ブッシング516にも結合される。各ユニットのこの電気ブッシング516は内部シャントリアクタ(図示せず)により互いに結合することができる。また、前実施形態のSCFCLのように、ブッシング516は外部シャントリアクタ546により互いに結合することもできる。更に別の実施例においては、SCFCLモジュール520iは内部及び外部シャントリアクタの両方を備えることもでき、各SCFCLユニット520i,520ii及び520iiiのブッシング516は内部及び外部シャントリアクタの両方で互いに結合することができる。更に、ブッシング516は端子517で送電線に結合し、よってSCFCLシステム500を送電網(図示せず)に結合することができる。
【0067】
各SCFCLユニット520i,520ii及び520iiiの各々はオプションの内部支持体132によって支持することができる。一方、SCFCタンク512は一つ以上のオプションの外部支持体334a及び334bによって支持することができる。本実施形態の大きなSCFCLシステム500を収容するために、オプションのプラットフォーム336を含めることもできる。前実施形態と同様に、内部及び外部支持体132及び334a及び334b及びプラットフォーム336(もし含まれるなら)は熱的に及び/又は電気的に絶縁性の構造とすることができる。しかし、本実施形態においては、タンク512及びフィードライン354と同様に、熱的に及び/又は電気的に伝導性の構造も本発明では排除されない。
【0068】
本実施形態の超伝導障害電流制限器500はいくつかの利点をもたらす。例えば、高電圧設計要件の大部分は空気及び空隙絶縁中の外部支持構造に移行される。更に、SCFCL500はタンク512内のユニット520i,520ii及び520iiiの間により短い内部空隙を必要とするとともに、より短く低い定格電圧のブッシング516を必要とする。更に、3相モジュールの設置は3つの単相モジュールの設置において発生し得る空間利用の冗長性を除去できる。特に、SCFCLの全体寸法はよりコンパクトに軽量にすることができる。このようなSCFCLシステム500は小さい設置面積が望ましい場合に魅力的である。更にSCFCLシステム500はデバイスレベルモジュール設計の一部分とすることができる。このようなモジュールは、高電流及び高電圧用に複数のユニットを並列及び/又は直列に接続することによってより大きなユニットを構成するのに使用することができる。
【0069】
図6を参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム600が示されている。SCFCLシステム600は図5に示すSCFCLシステムに類似している。しかし、本実施形態のSCFCLシステム600のタンク612は導電性で、接地に電気的に結合されている。従って、タンク612は接地電位に維持される。支持体132はオプションでタンク612とユニット520i−520iiiとの間で電気的絶縁体にすることができる。
【0070】
図7を参照すると、本発明の別の実施形態による別の模範的なSCFCLシステム700が示されている。本実施形態においては、SCFCLシステム700は3相システムであり、3つの単相モジュール710を備える。更に、システム700は回路遮断機770の近くに設けられる。本実施形態のSCFCLシステム700は3つの単相モジュール110を備えるが、説明を簡単明瞭にするために2つのモジュール710のみが示されている。
【0071】
SCFCLシステム700に隣接する回路遮断機770は筐体772及びタンクアセンブリ771を含むことができる。図に示されるように、筐体772は接地から第1の垂直距離y1だけ離間することができる。一方、タンクアセンブリ771は第1の円筒タンク774を備えることができる。図に示されていないが、タンクアセンブリ771は第2及び第3の円筒タンクを含むことができる。タンクアセンブリ771は複数のブッシング絶縁体776も含むことができる。回路遮断機770のタイプに応じて、ブッシング絶縁体776の数は変えることができる。例えば、3相回路遮断機770は1対の第1相のブッシング絶縁体776a-i及び776a-ii、1対の第2相のブッシング絶縁体776b-i及び776b-ii及び1対の第3相のブッシング絶縁体(図示せず)を備えることができる。各ブッシング絶縁体に複数の電流変成器778を結合することができる。
【0072】
上述したように、本実施形態のSCFCLシステム700は3相システムであり、3つの単相モジュール710を備える。第1のモジュール710は第1相のブッシング絶縁体対776a-i及び776a-iiの一つに結合することができ、第2のモジュール710は第2相のブッシング絶縁体対776b-i及び776b-iiの一つに結合することができ、第3のモジュール710は第3相のブッシング絶縁体対(図示せず)の一つに結合することができる。
【0073】
本実施形態のSCFCLモジュール710の各々は図1に示すSCFCLシステムのSCFCLモジュール110に類似するものとし得る。例えば、本実施形態の各モジュール710は、接地から離間され非接地電位に維持することができるタンク712を備えることができる。図に示されるように、タンク712は接地から第2の垂直距離y2だけ離間させることができる。更に、タンク712は回路遮断機770から水平方向に横方向距離xだけ離間させることができる。
【0074】
タンク712内には1つ以上の障害電流制限ユニット720を設けることができ、各モジュール710は1つ以上のブッシング716及び1つ以上のオプションの内部又は外部シャントリアクタ718及び748を備えることができる。本実施形態の各モジュール710は図1で説明したモジュールに類似するものとし得るので、追加の説明は省略する。
【0075】
本実施形態のSCFCLシステム700は回路遮断機770に隣接して配置することができる。好ましくは、各モジュール710のタンク712は接地電位に維持される回路遮断機770の筐体772又は他の部分の上方に配置される。例えば、タンク712はブッシング絶縁体776a-i,776a-ii,776b-i,776b-ii,…と水平方向780に整列させることができ、あるいは、それらの上方に配置することができる。従って、第2の垂直距離y2は第1の垂直距離y1より大きいものとし得る。タンク712をブッシング絶縁体776a-i,776a-ii,776b-i,776b-ii,…の近く又は上方に配置することによって、回路遮断機770の上部空間を利用することができる。
【0076】
更に、タンク712と回路遮断機770との間の横方向間隔xを最小にすることができる。タンク712をブッシング絶縁体776a-i,776a-ii,776b-i,776b-ii,…と整列させることによって、又はそれらの上方に配置することによって、横方向間隔xを減少させても、タンク712と筐体772との間の間隔を拡大することができる。例えば、タンク712と筐体772との間の間隔は垂直方向に沿って拡大することができる。その過程で、タンク712と筐体772との間に空気により適切な電気絶縁を与えることができる。従って、SCFCLシステム700及び回路遮断機770は横方向により密に詰め込むことができ、電気的絶縁に妥協することなく設置面積要件を最少にすることができる。
【0077】
接地電位に維持されるタンクを有するSCFCLシステムにおいては、タンクは通常接地に接触させる。このようなシステムでは、回路遮断機770とタンクとの間の横方向距離xは適切な電気的絶縁を与えるために大きくしなければならない。従って、SCFCLシステム及び回路遮断機770は大きな設置面積を必要とする。
【0078】
障害電流を制限する装置のいくつかの実施形態について説明した。本発明はここに開示する特定の実施形態により制限されないことは当業者に認識されよう。実際、ここに開示した実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態及び変更例が当業者に、以上の開示及び添付図面の開示から明らかになるであろう。従って、このような他の実施形態及び変更例は本発明の範囲に含まれることが意図されている。更に、本発明は特定の目的に対する特定の環境における特定の実施と関連して記載されているが、当業者は、その有用性がこれに限定されず、本発明は任意の数の目的に対して任意の数の環境において有利に実施できることを認識されよう。従って、後記の特許請求の範囲はここに記載する本発明の範囲の広さ及び精神を考慮して解釈すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害電流の送電を制限する装置であって、前記装置は、
接地電位から電気的に絶縁されるように接地から電気的に減結合された筐体、
少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第1及び第2の端子、及び
前記筐体内に収容され且つ前記第1及び第2の端子に電気的に接続された第1の超伝導回路を、
備える装置。
【請求項2】
前記筐体は電気的に絶縁性の材料からなる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記筐体は電気的に導電性である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記筐体は前記第1及び第2の端子から電気的に絶縁されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記第1の端子に第1の電圧が存在し、前記第2の端子に第2の電圧が存在し、前記筐体は前記第1及び第2の電圧の間の電圧にある、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記筐体は前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記筐体と前記接地との間に配置され、前記筐体を支持する支持体を更に備え、前記支持体が前記筐体を接地から電気的に絶縁している、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記超伝導回路を所定の温度より低く維持するために前記筐体内に冷却剤を更に備える、請求項1記載の装置。
【請求項9】
その上に前記筐体が支持されたプラットフォームを備え、前記プラットフォームは接地から電気的に絶縁されている、請求項1記載の装置。
【請求項10】
第2の筐体と、第3及び第4の端子と、前記第2の筐体内に収容された第2の超伝導回路とを更に備え、
前記第2の超伝導回路は前記第3及び第4の端子に電気的に接続され、前記第2の超伝導回路は前記プラットフォームにより支持されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記筐体及び前記第2の筐体が電気的に絶縁されるように前記筐体と前記プラットフォームとの間に支持体を更に備える、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記第3及び第4の端子の各々は一つ以上の配電線に電気的に接続されている、請求項10記載の装置。
【請求項13】
前記第3の端子は前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続されている、請求項10記載の装置。
【請求項14】
少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第3及び第4の端子、及び
前記筐体内に収容され且つ前記第3及び第4の端子に電気的に接続された第2の超伝導回路、
を更に備える、請求項1記載の装置。
【請求項15】
少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第5及び第6の端子、及び
前記筐体内に収容され且つ前記第5及び第6の端子に電気的に接続された第3の超伝導回路、
を更に備える、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記第1の超伝導回路と前記筐体との間の隙間長が250cm未満である、請求項1記載の装置。
【請求項17】
前記第1の超伝導回路と前記筐体との間の隙間長が約8〜25cmである、請求項15記載の装置。
【請求項18】
障害電流の送電を制限する方法であって、該方法は、
第1及び第2の端子を一つ以上の電流搬送線に電気的に接続するステップ、
障害電流を通す通路を与えるために筐体内に収容された超伝導回路を前記第1及び第2の端子に電気的に接続するステップ、及び
前記筐体を接地から電気的に絶縁するステップを備える、方法。
【請求項19】
前記筐体を前記第1及び第2の端子から電気的に絶縁するステップを更に備える、請求項18記載の方法。
【請求項20】
導電性の筐体を使用し、前記筐体を前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続するステップを更に備える、請求項18記載の方法。
【請求項21】
障害電流を制限する方法であって、該方法は
筐体と複数のブッシング絶縁体を備え、前記筐体は外気に露出し、接地電位に維持され、接地から第1の垂直距離だけ離間されている回路遮断機を用意するステップと、
前記回路遮断機に電気的に結合された、筐体と第1及び第2の端子と前記筐体内に含まれ前記第1及び第2の端子に電気的に結合された第1の超伝導回路とを備える障害電流制限器を用意するステップと、を備え、
前記筐体は前記接地から第2の垂直距離だけ離間させ、前記第2の垂直距離は前記第1の垂直距離より大きくする、方法。
【請求項1】
障害電流の送電を制限する装置であって、前記装置は、
接地電位から電気的に絶縁されるように接地から電気的に減結合された筐体、
少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第1及び第2の端子、及び
前記筐体内に収容され且つ前記第1及び第2の端子に電気的に接続された第1の超伝導回路を、
備える装置。
【請求項2】
前記筐体は電気的に絶縁性の材料からなる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記筐体は電気的に導電性である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記筐体は前記第1及び第2の端子から電気的に絶縁されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記第1の端子に第1の電圧が存在し、前記第2の端子に第2の電圧が存在し、前記筐体は前記第1及び第2の電圧の間の電圧にある、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記筐体は前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記筐体と前記接地との間に配置され、前記筐体を支持する支持体を更に備え、前記支持体が前記筐体を接地から電気的に絶縁している、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記超伝導回路を所定の温度より低く維持するために前記筐体内に冷却剤を更に備える、請求項1記載の装置。
【請求項9】
その上に前記筐体が支持されたプラットフォームを備え、前記プラットフォームは接地から電気的に絶縁されている、請求項1記載の装置。
【請求項10】
第2の筐体と、第3及び第4の端子と、前記第2の筐体内に収容された第2の超伝導回路とを更に備え、
前記第2の超伝導回路は前記第3及び第4の端子に電気的に接続され、前記第2の超伝導回路は前記プラットフォームにより支持されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記筐体及び前記第2の筐体が電気的に絶縁されるように前記筐体と前記プラットフォームとの間に支持体を更に備える、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記第3及び第4の端子の各々は一つ以上の配電線に電気的に接続されている、請求項10記載の装置。
【請求項13】
前記第3の端子は前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続されている、請求項10記載の装置。
【請求項14】
少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第3及び第4の端子、及び
前記筐体内に収容され且つ前記第3及び第4の端子に電気的に接続された第2の超伝導回路、
を更に備える、請求項1記載の装置。
【請求項15】
少なくとも一つが一つ以上の電流搬送線に電気的に接続された第5及び第6の端子、及び
前記筐体内に収容され且つ前記第5及び第6の端子に電気的に接続された第3の超伝導回路、
を更に備える、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記第1の超伝導回路と前記筐体との間の隙間長が250cm未満である、請求項1記載の装置。
【請求項17】
前記第1の超伝導回路と前記筐体との間の隙間長が約8〜25cmである、請求項15記載の装置。
【請求項18】
障害電流の送電を制限する方法であって、該方法は、
第1及び第2の端子を一つ以上の電流搬送線に電気的に接続するステップ、
障害電流を通す通路を与えるために筐体内に収容された超伝導回路を前記第1及び第2の端子に電気的に接続するステップ、及び
前記筐体を接地から電気的に絶縁するステップを備える、方法。
【請求項19】
前記筐体を前記第1及び第2の端子から電気的に絶縁するステップを更に備える、請求項18記載の方法。
【請求項20】
導電性の筐体を使用し、前記筐体を前記第1及び第2の端子の一つに電気的に接続するステップを更に備える、請求項18記載の方法。
【請求項21】
障害電流を制限する方法であって、該方法は
筐体と複数のブッシング絶縁体を備え、前記筐体は外気に露出し、接地電位に維持され、接地から第1の垂直距離だけ離間されている回路遮断機を用意するステップと、
前記回路遮断機に電気的に結合された、筐体と第1及び第2の端子と前記筐体内に含まれ前記第1及び第2の端子に電気的に結合された第1の超伝導回路とを備える障害電流制限器を用意するステップと、を備え、
前記筐体は前記接地から第2の垂直距離だけ離間させ、前記第2の垂直距離は前記第1の垂直距離より大きくする、方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2012−531881(P2012−531881A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517683(P2012−517683)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/039646
【国際公開番号】WO2010/151583
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(500239188)ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/039646
【国際公開番号】WO2010/151583
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(500239188)ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】
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