説明

集光型太陽光発電装置用光学素子に用いられるガラス、それを用いた集光型太陽光発電装置用光学素子および集光型太陽光発電装置

【課題】集光型太陽光発電装置用光学素子に用いられるガラスであって、耐候性に優れ、かつ、複雑な形状に容易に加工することが可能なガラス、それを用いた集光型太陽光発電装置用光学素子、および、集光型太陽光発電装置を提供する。
【解決手段】集光型太陽光発電装置用光学素子に用いられるガラスであって、質量%で、SiO 30〜80%、B 0〜40%、Al 0〜20%、LiO 0.1%以上およびZrO 0.1%以上を含有することを特徴とするガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光型太陽光発電装置用光学素子に用いられるガラス、それを用いた集光型太陽光発電装置用光学素子および集光型太陽光発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集光型太陽光発電装置において、集光レンズと太陽電池セルとの間にガラス製の光学素子が設けられている。光学素子は、集光レンズによって集光された光を、内表面で全反射して太陽電池セルに伝える。光学素子に用いられる材質として、特許文献1にはホウ珪酸ガラス、特許文献2にはケイ酸塩ガラスが開示されている。光学素子は、一般に台形錐や円錐等の形状を有しており、インゴット状のガラス材料に対し研削、研磨加工を施すことにより作製される。
【0003】
ところで、集光型太陽光発電装置は主に屋外で使用されるため、それに用いられる光学素子には優れた耐候性が要求される。例えば、特許文献3には、光学素子の側面にフッ素樹脂製の薄膜を設ける方法が提案されており、それにより、光学素子の表面が水滴等により白濁して、そこから光の一部が漏れ出ることを防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−313809号公報
【特許文献2】特開2010−199588号公報
【特許文献3】特開2006−278581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
集光型太陽光発電装置に用いられる従来のガラス製の光学素子は耐候性が不十分であり、長期間屋外で使用すると、表面変質等の不具合が発生しやすかった。したがって、光学素子に対して、さらなる耐候性の向上が求められている。
【0006】
なお、集光型太陽光発電装置において、さらなる発電効率の向上や小型化を図るため、光学素子の形状は、端部を曲面にしたり多角錐形状にするなど、複雑な形状が要求されることが今後予想される。しかしながら、切削や研磨加工ではこのような複雑な形状を達成することが困難であり、コスト面でも不利である。
【0007】
以上に鑑み、本発明は、集光型太陽光発電装置用光学素子に用いられるガラスであって、耐候性に優れ、かつ、複雑な形状に容易に加工することが可能なガラス、それを用いた集光型太陽光発電装置用光学素子、および、集光型太陽光発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、集光型太陽光発電装置用光学素子に用いられるガラスであって、質量%で、SiO 30〜80%、B 0〜40%、Al 0〜20%、LiO 0.1%以上およびZrO 0.1%以上を含有することを特徴とするガラスに関する。
【0009】
上記組成を有するガラスからなる光学素子であれば、耐候性に優れ、長期間屋外で使用しても、表面変質等の不具合が生じにくい。また、低軟化点または低粘度を達成しやすいため、溶融や成形に適しており、金型の形状を適宜選択することにより、複雑な形状を有する光学素子を容易に作製することが可能となる。
【0010】
第二に、本発明のガラスは、さらに、質量%で、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、BaO 0〜20%、MgO 0〜20%、ZnO 0〜20%、NaO 0〜20%、KO 0〜20%およびTiO 0〜10%を含有することが好ましい。
【0011】
第三に、本発明のガラスは、さらに、質量%で、Bi+La+Gd+Ta+TiO+Nb+WOを0〜20%含有することを特徴とすることが好ましい。
【0012】
第四に、本発明のガラスは、さらに、質量%で、CeO+Pr+Nd+Eu+Tb+Er+Y+Ybを0〜5%含有することが好ましい。
【0013】
第五に、本発明のガラスは、Feの含有量が500ppm以下であることが好ましい。
【0014】
第六に、本発明のガラスは、鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないことが好ましい。
【0015】
当該構成により、環境負荷の小さいガラスとすることができる。ここで、「鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しない」とは、これらの成分を意図的に添加しないという意味であり、不可避的不純物の混入まで排除するものではない。具体的には、これらの成分の含有量が各々0.1%未満であることを意味する。
【0016】
第七に、本発明のガラスは、30〜300℃における平均線熱膨張係数が120×10−7/℃以下であることが好ましい。
【0017】
当該構成により、成形後の冷却時や、屋外で使用した際の温度変化による破損を抑制することができる。
【0018】
第八に、本発明のガラスは、102.0Pa・sの粘度に相当する温度が1300℃以下であることが好ましい。
【0019】
当該構成によれば、溶融性や成形性を向上できる。
【0020】
第九に、本発明のガラスは、軟化点が750℃以下であることが好ましい。
【0021】
当該構成によれば、成形時における金型の劣化を抑制することができる。
【0022】
第十に、本発明のガラスは、肉厚10mmかつ波長400nmにおける内部透過率が90%以上であることが好ましい。
【0023】
当該構成を満たすガラスからなる光学素子を用いることにより、集光型太陽光発電装置の発電効率を向上させることができる。
【0024】
第十一に、本発明のガラスは、肉厚10mmかつ波長300nmにおける内部透過率が40%以下であることが好ましい。
【0025】
第十二に、本発明は、前記いずれかのガラスからなる集光型太陽光発電装置用光学素子に関する。
【0026】
第十三に、本発明は、太陽電池と、太陽電池に集光する集光光学系とを備え、集光光学系が前記いずれかの光学素子を有することを特徴とする集光型太陽光発電装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る集光型太陽光発電装置の模式的概念図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光学素子の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0029】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率等は、現実の物体の寸法の比率等とは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0030】
(集光型太陽光発電装置)
図1は、本実施形態に係る光学素子を備えた集光型太陽光発電装置の模式的概念図である。
【0031】
集光型太陽光発電装置1は、太陽電池5と、太陽電池5に太陽光を集光する集光光学系2とを備える。集光光学系2は、集光部材3と光学素子4とを有する。集光部材3は、太陽光等の光を集光する。集光部材3は、例えば凸レンズや正の光学的パワーを有するフレネルレンズ等により構成することができる。
【0032】
光学素子4は、集光部材3と太陽電池5との間に配されている。集光部材3により集光された光は、光学素子4の端面41(図2を参照)から光学素子4内に入射する。光学素子4は、集光部材3により集光された光を均質化し、太陽電池5の受光面50に導く。具体的には、光学素子4に入射した光は、光学素子4の側面43a〜43dにおいて反射されることにより均質化されながら光学素子4内を伝搬する。そして、光学素子4内を伝搬した光は、光学素子4の端面42から均質化された面状光として受光面50に向けて出射される。
【0033】
光学素子4の端面42には、受光面50が端面42に対向するように太陽電池5が配されている。光学素子4の端面42から出射した光は太陽電池5に入射する。そして、太陽電池5において、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0034】
なお、太陽電池5の種類は特に限定されない。太陽電池5は、例えば、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、薄膜太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、色素増感型太陽電池、有機半導体太陽電池等により構成することができる。
【0035】
(光学素子)
図2は、本実施形態に係る光学素子の模式的斜視図である。次に、図2を参照しながら、光学素子4の具体的構成について説明する。
【0036】
光学素子4は、集光部材3側から太陽電池5側に向かって先細る形状を有する。光学素子4の表面40は、光入出面を構成している2つの端面41,42と、光反射面を構成している側面43a〜43dとを有する。端面41,42は、互いに対向している。側面43a〜43dは、端面41,42を接続している。尚、光学素子4の形状は、円錐状や角錐状であっても構わない。また、端面41,42の形状は、平面もしくは曲面のどちらでもよい。また、光学素子4の角部や稜線部に対しR面取り加工が施されていてもよく、それにより、外部からの衝撃による破損を抑制することができる。
【0037】
光学素子4を構成するガラスは、質量%で、SiO 30〜80%、B 0〜40%、Al 0〜30%、LiO 0.1%以上およびZrO 0.1〜10%を含有する。以下に、各成分の含有量を上記のように特定した理由を詳述する。なお、特に断りがない場合、以下の「%」は「質量%」を意味する。
【0038】
SiOはガラス骨格を構成する成分であり、失透を抑制するとともに耐候性を向上させる効果がある。また、アッベ数を高める効果がある。SiOの含有量は30〜80%、40〜75%、45〜70%、45〜65%、特に45〜60%であることが好ましい。SiOの含有量が多すぎると、軟化点が高くなったり、屈折率が低下する傾向がある。一方、SiOが少なすぎると、ガラスが不安定になって耐失透性が低下したり、分相するとともに耐酸性や耐水性等の耐候性が低下しやすくなる。また、熱膨張係数が大きくなって、耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
【0039】
もガラス骨格を構成する成分であり、失透を抑制するとともに耐候性を向上させる効果がある。Bの含有量は0〜40%、2.5〜30%、特に5〜20%であることが好ましい。Bの含有量が多すぎると、耐候性が低下したり、屈折率が低下する傾向がある。
【0040】
Alもガラス骨格を構成する成分であり、失透を抑制するとともに耐候性を向上させる効果がある。Alの含有量は0〜30%、2.5〜25%、特に5〜20%であることが好ましい。Alの含有量が多すぎると、屈折率が低下するとともに耐候性が低下する傾向がある。
【0041】
LiOは融剤として作用し、軟化点を低下させる効果の大きい成分である。LiOの含有量は0.1%以上、1%以上、特に2%以上であることが好ましい。LiOの含有量が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。なお、LiOの含有量が多すぎると、耐酸性や耐水性等の耐候性が低下する傾向がある。また、熱膨張係数が大きくなって、耐熱衝撃性が低下するおそれがある。したがって、LiOの含有量は20%以下、特に15%以下であることが好ましい。
【0042】
ZrOは耐酸性や耐水性等の耐候性を飛躍的に向上させる効果がある成分である。ZrOの含有量は0.1%以上、特に1%以上であることが好ましい。ZrOの含有量が少なすぎると、前記効果が得られにくくなる。なお、上限は特に限定されないが、ZrOの含有量が多すぎると、粘度が高くなって失透しやすくなるため、15%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。
【0043】
光学素子4を構成するガラスは、上記成分に加えて、さらに、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、BaO 0〜20%、MgO 0〜20%、ZnO 0〜20%、NaO 0〜20%、KO 0〜20%、TiO 0〜10%を含有することができる。
【0044】
CaO、SrO、BaO、MgOおよびZnOは融剤として作用して軟化点を低下させるとともに、液相温度を低下させる効果がある。その含有量は各々0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。これらの成分の含有量が多すぎると、耐酸性や耐水性等の耐候性が低下しやすくなる。
【0045】
なお、軟化点を低下させる効果を十分に得るとともに、良好な耐候性を確保するためには、CaO、SrO、BaO、MgOおよびZnOの合量を適宜調整することが好ましい。具体的には、CaO+SrO+BaO+MgO+ZnOは0.1〜50%、1〜40%、特に3〜35%であることが好ましい。これらの成分の合量が少なすぎると、軟化点を低下させる効果が得られにくくなり、一方、多すぎると、耐候性が低下しやすくなる。
【0046】
NaOおよびKOは融剤として作用して軟化点を低下させるとともに、液相温度を低下させる効果がある。その含有量は各々0〜20%、特に0.1〜10%であることが好ましい。これらの成分の含有量が多すぎると、耐酸性や耐水性等の耐候性が低下しやすくなる。また、熱膨張係数が大きくなって耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
【0047】
なお、軟化点を十分に低下させる効果を得るとともに、良好な耐候性および耐熱衝撃性を確保するためには、アルカリ金属酸化物成分であるLiO、NaOおよびKOの合量を適宜調整することが好ましい。具体的には、LiO+NaO+KOは0.1〜30%、1〜25%、特に3〜20%であることが好ましい。これらの成分の合量が少なすぎると、軟化点を低下させる効果が得られにくくなり、一方、多すぎると、耐候性が低下しやすくなったり、熱膨張係数が大きくなって耐熱衝撃性が低下しやすくなる。
【0048】
TiOは融剤として作用して軟化点を低下させるとともに、紫外線による着色を抑制する効果や、耐酸性や耐水性等の耐候性を向上させる効果がある。TiOの含有量は0〜10%、特に0.1〜5%であることが好ましい。TiOの含有量が多すぎると、透過率曲線において、紫外領域の透過率が長波長側にシフトして着色が起こりやすくなったり、屈折率が高くなる傾向がある。
【0049】
なお、Bi、La、Gd、Ta、TiO、NbおよびWOの合量を適宜調整することにより、紫外線による着色を効果的に抑制することができる。具体的には、Bi+La+Gd+Ta+TiO+Nb+WOは0〜20%、0〜10%、0.1〜8%、特に1〜5%であることが好ましい。これらの成分の合量が多すぎると、可視域の透過率が低下するおそれがある。
【0050】
また、低粘度かつ耐侯性に優れたガラスとするには、以下のように各成分の合量や比率を調整することが好ましい。
【0051】
SiO+Al+ZrOは35〜80%、特に37〜75%であることが好ましい。これらの成分の合量が多すぎると、粘度が高くなりやすく、一方、少なすぎると、耐侯性に劣る傾向がある。
【0052】
(SiO+Al)/ZrOは、質量比で、700以下、特に650以下であることが好ましい。当該比率が大きすぎると、耐侯性に劣る傾向がある。
【0053】
BaO+ZnOが1.5〜40%、特に2〜30%であることが好ましい。これらの成分の合量が少なすぎると、粘度が高くなる傾向があり、一方、多すぎると、耐侯性に劣る傾向がある。
【0054】
(SiO+Al)/LiOは、質量比で、700以下、特に600以下であることが好ましい。当該比率が大きすぎると、粘度が高くなる傾向がある。
【0055】
(NaO+KO)/LiOは、質量比で、0.1〜100、特に0.2〜50であることが好ましい。当該比率が小さすぎると、熱膨張係数が大きくなって耐熱衝撃性が低下するおそれがある。また、粘度が高くなる傾向がある。一方、当該比率が大きすぎると、耐侯性に劣る傾向がある。
【0056】
光学素子4を構成するガラスは、上記成分に加えて、さらに、質量%の合量で、CeO+Nd+Pr+Eu+Tb+Er+Y+Ybを0〜5%を含有することができる。
【0057】
CeO、Pr、Nd、Eu、Tb、Er、YおよびYbは、可視〜紫外域付近の光を照射することにより強い発光が生じる成分であり、これらの成分を添加することにより、太陽電池セルへの光照射量が増大して発電効率が向上することが期待できる。具体的には、CeO+Pr+Nd+Eu+Tb+Er+Y+Ybは0〜5%、0.1〜3%、特に0.1〜1%であることが好ましい。
【0058】
鉛成分(例えばPbO)、ヒ素成分(As)およびフッ素成分(例えばF)は、環境上の理由から、実質的なガラスへの導入は避けるべきである。よって、光学素子4を構成するガラスはこれらの成分を実質的に含有しないことが好ましい。
【0059】
また、着色成分であるFeを多く含有すると、透過率が低下して発電効率低下の原因になる。よって、Feの含有量は0.1%以下、0.05%以下、特に0.01%以下であることが好ましい。
【0060】
上記成分以外に、清澄剤、酸化剤または還元剤としてSb、SO、NOおよびカーボン等を合量で1%以下添加することができる。
【0061】
本発明のガラスの屈折率(nd)は特に限定されないが、例えば1.5〜1.7、特に1.5〜1.6であることが好ましい。屈折率が低すぎると、光学素子4の側面43a〜43dにおいて、光が外部に漏れやすくなる。一方、屈折率が高すぎると、光学素子4の端面41において光が反射して光学素子4の内部に入射しにくくなる。
【0062】
光学素子4の表面40の表面粗さは、JIS B0601で規定される算術表面粗さ(Ra)で200nm以下、100nm以下、50nm以下、20nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。
【0063】
光学素子4は、30〜300℃における平均線熱膨張係数が120×10−7/℃以下、110×10−7/℃以下、特に100×10−7/℃以下であることが好ましい。平均線熱膨張係数が高すぎると、成形後の冷却時や、屋外で使用した際の温度変化に対応できず、破損するおそれがある。なお、下限については特に限定されないが、現実的には30×10−7/℃以上、特に50×10−7/℃以上である。
【0064】
光学素子4は、102.0Pa・sの粘度に相当する温度が1300℃以下、特に1200℃以下であることが好ましい。102.0Pa・sの粘度に相当する温度が高すぎると、溶融性及び成形性が低下し、溶融時における耐火物あるいは成形時における金型が劣化しやすくなる。
【0065】
光学素子4は、軟化点が750℃以下、700℃以下、特に650℃以下であることが好ましい。軟化点が高すぎると、成形時に金型が劣化しやすくなる。
【0066】
光学素子4は、肉厚10mmかつ波長400nmにおける内部透過率が90%以上、92.5%以上、特に95%以上であることが好ましい。内部透過率が低すぎると、集光型太陽光発電装置の発電効率に劣る傾向がある。
【0067】
また、肉厚10mmかつ波長300nmにおける内部透過率が40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に0%であることが好ましい。さらに、肉厚10mmかつ波長315nmにおける内部透過率が60%以下、40%以下、20%以下、特に0%であることが好ましい。波長300nmまたは315nmにおける内部透過率が高すぎると、光学素子を透過する紫外線量が多くなり、その結果、光学素子周辺に使用される樹脂製接着剤が劣化しやすくなる。
【0068】
以下、光学素子4の製造方法の一例について説明する。
【0069】
(光学素子の製造方法)
光学素子4は、機械研磨による研磨加工またはプレス成形により得られる。プレス成形は、溶融ガラスを直接金型に流し込み、加圧成形を行うダイレクトプレスや、一旦ガラス化して得られた成形体を再加熱し、軟化変形させるリヒートプレス等が挙げられる。特に上下面が曲面形状であったり、複雑な形状の光学素子を得る場合は、機械研磨よりプレス成型が有利である。
【0070】
プレス成型により光学素子4を作製する場合、低軟化点あるいは低粘度のガラスを用いることで、金型の劣化を抑制することができる。
【0071】
プレス成型後、例えば火炎研磨を行なうことにより、容易に良好な表面粗さを得ることができる。また、光学素子4の稜線部や角部に対し、R面取り加工を施してもよい。
【0072】
なお、本実施形態では、光学素子4が角錐台形状である場合について説明したが、この構成に限定されず、太陽電池への集光が可能な形状を有するものであれば特に限定されない。また端面41,42は平面状でなくてもよく、凸状や凹状であってもよい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0074】
表1〜5は本発明の実施例(No.1〜32および36〜43)および比較例(No.33〜35)をそれぞれ示している。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
各試料は次のようにして調製した。
【0081】
まず、表に示す各組成になるようにガラス原料を調合し、白金ルツボを用いて1000〜1400℃で4時間溶融した。溶融後、ガラス融液をカーボン板上に流し出し、さらにアニール後、各測定に適した試料を作製した。
【0082】
得られた試料について、熱膨張係数、軟化点、102.0Pa・sの粘度に相当する温度、内部透過率を測定した。また、耐侯性について評価した。結果を表1〜5に示す。
【0083】
表から明らかなように、実施例であるNo.1〜32および36〜43の試料は、熱膨張係数が119×10−7/℃以下、軟化点が730℃以下、102.0Pa・sの粘度に相当する温度が1295℃以下、肉厚10mmかつ波長400nmにおける内部透過率90.3%以上と、各特性に優れていた。また、いずれも良好な耐失透性を示していた。
【0084】
一方、比較例であるNo.33の試料は軟化点が765℃と高く、リヒートプレス成形に適していなかった。また、102.0Pa・sの粘度に相当する温度が1300℃を超えており、ダイレクトプレス成形に適していなかった。No.34の試料は耐候性に劣っており、長期間屋外で使用するのが困難であると考えられえる。また、肉厚10mmかつ波長400nmにおける内部透過率が86%と低く、太陽電池の発電効率に劣ると考えられる。No.35の試料は熱膨張係数が129×10−7/℃と高いため、プレス成形時や屋外での使用において、破損が生じやすいと考えられる。また、耐候性にも劣っていた。
【0085】
なお、各特性は以下の方法により測定および評価した。
【0086】
熱膨張係数は熱膨張測定装置(dilato meter)を用いて測定した。
【0087】
軟化点はASTM 338−93に基づくファイバー法により測定した。
【0088】
102.0Pa・sの粘度に相当する温度は白金球引き上げ法により測定した。
【0089】
内部透過率は、まず分光光度計(株式会社島津製作所製UV−3100)を用いて、厚さ5mm±0.1mmおよび10mm±0.1mmの光学研磨された各試料について、波長200〜800nmの範囲における表面反射損失を含む透過率を0.5nm間隔で測定し、得られた測定値から波長400nm、315nmおよび300nmにおける内部透過率を算出した。また、内部透過率が0%となる波長を読み取った。
【0090】
耐候性は、試料を温度85℃および相対湿度85%の恒温恒湿槽に2000時間放置した後、試料表面を顕微鏡で観察し、表面に白濁や析出物が確認されなかったものを「○」、白濁や表面析出物が確認されたものを「×」として評価した。
【符号の説明】
【0091】
1…集光型太陽光発電装置
2…集光光学系
3…集光部材
4…光学素子
40…表面
41、42…端面
43a、43b、43c、43d…側面
5…太陽電池
50…受光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集光型太陽光発電装置用光学素子に用いられるガラスであって、質量%で、SiO 30〜80%、B 0〜40%、Al 0〜20%、LiO 0.1%以上およびZrO 0.1%以上を含有することを特徴とするガラス。
【請求項2】
さらに、質量%で、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、BaO 0〜20%、MgO 0〜20%、ZnO 0〜20%、NaO 0〜20%、KO 0〜20%およびTiO 0〜10%を含有することを特徴とする請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
さらに、質量%で、Bi+La+Gd+Ta+TiO+Nb+WOを0〜20%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のガラス。
【請求項4】
さらに、質量%で、CeO+Pr+Nd+Eu+Tb+Er+Y+Ybを0〜5%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス。
【請求項5】
Feの含有量が0.1%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス
【請求項6】
鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス。
【請求項7】
30〜300℃における平均線熱膨張係数が120×10−7/℃以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガラス。
【請求項8】
102.0Pa・sの粘度に相当する温度が1300℃以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガラス。
【請求項9】
軟化点が750℃以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガラス。
【請求項10】
肉厚10mmかつ波長400nmにおける内部透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のガラス。
【請求項11】
肉厚10mmかつ波長300nmにおける内部透過率が40%以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のガラス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のガラスからなる集光型太陽光発電装置用光学素子。
【請求項13】
太陽電池と、太陽電池に集光する集光光学系とを備え、集光光学系が請求項12に記載の光学素子を有することを特徴とする集光型太陽光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−47167(P2013−47167A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196671(P2011−196671)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】