集積型薄膜光電変換装置とその製造方法
【課題】光電変換特性、および信頼性に優れた積層型薄膜光電変換装置を低コストで提供する。
【解決手段】透光性基板1上に順次積層された裏面透明導電層2、導電性を有するレーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を含み、これらの層をレーザビームによって加工する。
【解決手段】透光性基板1上に順次積層された裏面透明導電層2、導電性を有するレーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を含み、これらの層をレーザビームによって加工する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の薄膜光電変換ユニットが複数のセルに分割されかつそれらのセルが電気的に直列接続された集積型薄膜光電変換装置とその製造方法の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、薄膜光電変換装置の典型例である薄膜太陽電池も多様化し、従来の非晶質薄膜太陽電池の他に結晶質薄膜太陽電池も開発され、これらを積層したハイブリッド型(積層型の一種)薄膜太陽電池も実用化されている。
【0003】
薄膜太陽電池は、一般に少なくとも表面が絶縁性の基板上に順に積層された透明導電膜、1以上の半導体薄膜光電変換ユニット、および裏面電極を含んでいる。そして、1つの光電変換ユニットは、p型層とn型層でサンドイッチされたi型層を含んでいる。
【0004】
光電変換ユニットの厚さの大部分は実質的に真性の半導体層であるi型層によって占められ、光電変換作用は主としてこのi型層内で生じる。したがって、光電変換層であるi型層の膜厚は光吸収のためには厚いほうが好ましいが、必要以上に厚くすればその堆積のためのコストと時間が増大することになる。
【0005】
他方、p型やn型の導電型層は光電変換ユニット内に拡散電位を生じさせる役目を果たし、この拡散電位の大きさによって薄膜太陽電池の重要な特性の1つである開放端電圧の値が左右される。しかし、これらの導電型層は光電変換には寄与しない不活性な層であり、導電型層にドープされた不純物によって吸収される光は発電に寄与せず損失となる。したがって、p型とn型の導電型層の膜厚は、十分な拡散電位を生じさせる範囲内で可能な限り薄くすることが好ましい。
【0006】
上述のような光電変換ユニットは、それに含まれるp型とn型の導電型層が非晶質か結晶質かに関わらず、i型の光電変換層が非晶質なものは非晶質光電変換ユニットと称され、i型層が結晶質のものは結晶質光電変換ユニットと称される。非晶質光電変換ユニットを含む薄膜太陽電池の一例として、i型光電変換層に非晶質シリコンを用いた非晶質薄膜シリコン太陽電池が挙げられる。また、結晶質光電変換ユニットを含む薄膜太陽電池の一例として、i型光電変換層に微結晶シリコンや多結晶シリコンを用いた結晶質薄膜シリコン太陽電池が挙げられる。
【0007】
一般に、光電変換層に用いられている半導体においては、光の波長が長くなるに従って光吸収係数が小さくなる。特に、光電変換材料が薄膜である場合には、吸収係数の小さな波長領域において十分な光吸収が生じないために、光電変換量が光電変換層の膜厚によって制限されることになる。そこで、光電変換装置内に入射した光が外部に逃げにくい光散乱構造を形成することによって、実質的な光路長を長くして十分な吸収を生じさせ、これによって大きな光電流を発生させる工夫がなされている。例えば、光散乱透過を生じさせるために、表面凹凸形状を含むテクスチャ透明導電膜が用いられている。
【0008】
ところで、大面積の薄膜光電変換装置は、通常では集積型薄膜光電変換モジュールとして形成される。すなわち、集積型薄膜光電変換モジュールは、支持基板上で小面積に区切られた複数の光電変換セルを電気的に直列接続した構造を有している。それぞれの光電変換セルは、一般的には、第1の電極層、1以上の半導体薄膜光電変換ユニット、および第2の電極層の形成とレーザビームによるパターニングとを順次行うことによって形成されている。
【0009】
すなわち、集積型薄膜光電変換装置においては、レーザビームによる加工技術がその光電変換装置の生産性や光電変換性能に重要な影響を及ぼす。一般に、このレーザビーム加工技術において、レーザ光を吸収しやすい半導体層を複数の領域に分割加工することは容易である。他方、レーザ光を反射する金属層やレーザ光を透過しやすい裏面透明導電層においては、それらを単独で分割加工することは容易ではない。
【0010】
図4は、特許文献1に開示された集積型薄膜光電変換装置の作製方法を模式的な断面図で図解している。なお、本願の図面において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を示している。また、本願の図面においては、長さ、幅、厚さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。特に厚さ関係が、適宜に変更されて描かれている。
【0011】
図4(a)〜(c)において、まず透明ガラス基板1上に透明な酸化錫層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4が順次積層される。透明酸化錫層2は、熱CVD法によって堆積され得る。そのような透明酸化錫層2は微細な凹凸を含む表面テクスチャ構造を有し、その表面テクスチャ構造を裏面電極層4の表面に伝えてその表面での光乱反射によって半導体光電変換ユニット内での光吸収効率を高めるために設けられる。レーザ光吸収層3としては、非晶質シリコン(a−Si)層がプラズマCVD法によって堆積される。裏面電極層4としては、マグネトロンスパッタリング装置を用いてAg層が堆積される。
【0012】
図4(d)において、スパッタリング反応室から取出された基板はX−Yテーブル上にセットされ、透明ガラス基板1側から入射されるレーザビームLB1xを用いて複数の分割線溝D1xを形成することによって、透明酸化錫層2、レーザ光吸収層3、および金属の裏面電極層4の積層が複数の領域に分割される。レーザビームLB1xは透明ガラス基板1および透明酸化錫層2を通してレーザ光吸収層3によって効率的に吸収されて発熱を生じるので、透明酸化錫層2および裏面電極層4を比較的容易に同時に分割加工することができる。このように形成された複数の分割線溝D1xは互いに平行であって、図面の紙面に直交する方向に延びている。
【0013】
図4(e)において、分割された裏面電極層4および分割線溝D1xを覆うように、半導体光電変換ユニット5がプラズマCVD装置を用いて堆積される。
【0014】
図4(f)において、プラズマCVD反応室から取出された基板はX−Yテーブル上にセットされ、半導体光電変換ユニット5側から入射されるYAGレーザビームLB2xを用いて複数の分割線溝D2xを形成することによって、その半導体光電変換ユニット5が複数の光電変換領域に分割される。これらの分割線溝D2xの各々は、分割線溝D1xに近接しかつそれに平行である。
【0015】
図4(g)において、分割された半導体光電変換ユニット5と分割線溝D2xを覆うように、受光面透明電極層6が堆積される。この受光面透明電極層6は、電子ビーム蒸着装置内でITO(インジウム錫酸化物)層を堆積することによって形成され得る。
【0016】
最後に、図4(h)において、電子ビーム蒸着装置から取出された基板はX−Yテーブル上にセットされ、受光面透明電極層6側から入射されるYAGレーザビームLB3xを用いて複数の分割線溝D3xを形成することによって、その受光面透明電極層6が複数の領域に分割される。この場合、受光面電極層6は透明であるが、下層にレーザ光を吸収しやすい半導体光電変換ユニット5が存在しているので、その半導体光電変換ユニット5からの発熱をも利用して、その受光面透明電極層6を比較的容易に分割加工することができる。こうして、集積型薄膜光電変換装置が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−79522号公報
【特許文献2】特開2002−203976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述の特許文献1によれば、図4(d)におけるように、レーザビームLB1xは透明ガラス基板1および透明酸化錫層2を通してレーザ光吸収層3によって効率的に吸収されて発熱を生じるので、透明酸化錫層2と金属の裏面電極層4を比較的容易に同時に分割して分割線溝D1xを形成することができる。
【0019】
また、図4(f)におけるように、レーザビームLB2xは半導体光電変換ユニット5側から入射されるので、半導体光電変換ユニット5を比較的容易に分割して分割線溝D2xを形成することができる。しかし、分割線溝D2x内において、半導体光電変換ユニット5からの発熱や裏面電極層4に到達したレーザビームLB2xによって、裏面電極層4がダメージを受けることがあり得る。その場合、完成後の薄膜光電変換装置において、シャント抵抗の低下やシリーズ抵抗の増大を生じて光電変換性能の低下を来たすこともある。
【0020】
さらに、図4(h)におけるように、レーザビームLB3xは受光面透明電極層6を通して半導体光電変換ユニット5に照射されるので、その半導体光電変換ユニット5からの発熱をも利用して、受光面透明電極層6を比較的容易に分割して分割線溝D3xを形成することができる。しかし、分割線溝D3xの深さを半導体光電変換ユニット5の途中でとどめることは困難である。したがって、分割線溝D2xの場合に類似して、分割線溝D3x内においても、半導体光電変換ユニット5からの発熱や裏面電極層4に到達したレーザビームLB3xによって、裏面電極層4がダメージを受けることがあり得る。そして、完成後の薄膜光電変換装置において、シャント抵抗の低下やシリーズ抵抗の増大を生じて光電変換性能の低下を来たすこともある。
【0021】
上述のような特許文献1における問題を回避するためには、レーザパワーの安定性や高い照射位置精度などが求められ、高精度のレーザ発振機や複雑な光学系が必要となる。他方、このようなレーザ加工における困難性に鑑みて、レーザパターニングの代わりに化学エッチングやリフトオフ法などが用いられる場合もある。しかし、その場合には、工程の複雑化や分割線溝の精度の低下が懸念される。そして、これらのいずれの場合においても、集積型薄膜光電変換装置の製造コストの上昇をも招くことになる。
【0022】
上述のような先行技術における状況に鑑み、本発明は、全ての分割線溝をレーザ加工によって高い生産性で行うことが可能で、かつ光電変換特性、および信頼性に優れた積層型薄膜光電変換装置を低コストで提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による集積型薄膜光電変換装置は、透光性基板1上に順次積層された裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を含み、これらの層の各々は平行に設けられた複数の各分割線溝によって複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、
かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置である。
【0024】
本発明の光電変換装置において、レーザ光吸収層3は裏面透明導電層2と裏面電極層4を電気的に接続できる程度の導電性を有している。半導体光電変換ユニット5はレーザ光吸収層3、裏面電極層4、および半導体光電変換ユニット5を貫通する複数の第3種分割線溝D2によって複数の短冊状光電変換領域に分割されている。受光面透明電極層6はレーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を貫通する複数の第4種分割線溝D3によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されている。そして、互いに隣接する光電変換セル間において、一方のセルの裏面電極領域はレーザ光吸収層3、裏面透明導電層2、および第3種分割線溝D2を介して他方のセルの受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されている。
【0025】
なお、本発明の光電変換装置において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5を貫通する複数の第3種接続孔(D20)が存在している態様を含む。第3種接続孔(D20)が存在している態様の場合、図面や明細書本文等で説明しているD2は、分割線溝ではなくて、接続孔あるいは接続孔の集合であると説明した方が適切な場合が有る。その場合、第3種接続孔(D20)は複数存在しさえすれば良く、隣接する第3種接続孔同士が透光性基板の主面に対して平行な方向において繋がって形成される実質的な分割線溝に類似したものであってもよい。接続孔D20(または、場合によっては分割線溝D2も)については、また、途切れた複数の分割線溝であってもよく、また、点と線分とが交互に並ぶような、一点鎖線状に途切れた分割線溝の集合などであってもよい。すなわち、当業者が想到可能なあらゆる変形を含む。
【0026】
本発明のレーザ光吸収層(3)は、導電性を有する。さらに具体的には、レーザ光吸収層(3)は、裏面透明導電層(2)と裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有する。
【0027】
本発明においては、レーザ光吸収層(3)が導電性を持っているため、裏面電極層(4)と裏面透明導電層(2)の導通を取るために、新たにレーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いという、従来に比べて、格段に顕著な効果が有る。レーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いということは、工程が1種類削減されることであり、これは、量産時には莫大なメリットととなる。
【0028】
レーザ光吸収層3の一態様としては、導電型決定不純物を含み、かつ非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、および非晶質ゲルマニウムからなる群から選択される層を1以上含む層とすることで実現できる。このレーザ光吸収層3は導電性を持っているため、裏面電極層4と裏面透明導電層2の導通を取るために、新たにレーザ光吸収層3を貫通した孔等を形成する必要はない。
【0029】
また、レーザ光吸収層(3)が導電型決定不純物として、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、およびTi(チタン)からなる群から選択される1以上を含むことが望ましい。特に、BまたはPが、それぞれ原料ガスとしてB2H6、PH3を用いてプラズマCVD法でレーザ光吸収層を容易に形成できるので特に望ましい。
【0030】
レーザ光吸収層(3)が、SIMSによる元素の定量で、導電型決定不純物としてBを1016〜1021cm−3もしくはPを1016〜1021cm−3含んでいることが望ましい。導電型決定不純物濃度が1016cm−3以上だとレーザ光吸収層の抵抗が低くなりレーザ光吸収層の断面方向に十分電流を流すことができる。また導電型決定不純物濃度が1021cm−3以下にすると、不純物による欠陥の発生が許容できる範囲に抑制されて、レーザ光吸収層に十分電流を流すことができる。
【0031】
レーザ光吸収層(3)の導電率が102〜10−6S/cmであることが望ましい。導電率が10−6S/cm以上の場合、レーザ光吸収層の断面方向に十分電流を流すことができる。また、導電率が102S/cm以下の場合、過剰な導電型決定不純物をレーザ光吸収層に含む必要がなく、欠陥を抑制してレーザ光吸収層に十分電流を流すことができる。
【0032】
本発明の実施形態1においては、図1に示すように、裏面電極層4は裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通する複数の第2種分割線溝D1によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されている。
【0033】
一方、本発明の実施形態2においては、図3に示すように、裏面電極層4は、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通する複数の第6種分割線溝D5によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されている。そして、裏面透明導電層2は裏面透明導電層2を貫通する複数の第5種分割線溝D4によって複数の短冊状裏面透明導電領域に分割されている。すなわち、前記実施形態1においては、第2種分割線溝D1が裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通するのに対して、本発明の実施形態2は、第2種分割線溝D1に代えて、裏面透明導電層2を貫通する第5種分割線溝D4と、裏面透明導電層2を貫通せずにレーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通する第6種分割線溝D5を有している。
【0034】
本発明の実施形態2においては、複数の光電変換セルが電気的に直列接続される観点から、前記の各種分割線溝、接続孔は、第6種分割線溝D5、第5種分割線溝D4、第3種分割線溝(あるいは接続孔)D2、第4種分割線溝D3、の順、若しくは、図3に示すように、第5種分割線溝D4、第6種分割線溝D5、第3種分割線溝(あるいは接続孔)D2、第4種分割線溝D3の順に並んでいるものが挙げられる。
【0035】
また、図5〜11に示すように、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5とが接続しており、これに第3種分割線溝(あるいは接続孔)D2、第4種分割線溝D3の順に並んでいるものも、本発明の実施形態2に含まれる。このように、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続された場合、これらの分割線溝は実施形態1における第2種分割線溝D1と等価なものとなる。一方で、実施形態1においては、第2種分割線溝D1が、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通するように形成されるのに対して、実施形態2においては、裏面透明導電層2を貫通する第5種分割線溝D4と、レーザ光吸収層3および裏面電極層4を貫通する第6種分割線溝D5とが別に形成される。そのため、実施形態2においては、分割線溝D4、D5周辺部の加工断面が変質する問題が抑制され、あるいはその変質に起因して該分割線溝周辺部の膜が盛り上がる等の問題が抑制され、光電変換装置の曲線因子(Fill Factor)を高く保つことが可能となる。このような実施形態の構成および製造例については、後の実施例において、より詳細に説明する。
【0036】
なお、本発明による集積型薄膜光電変換装置は受光面透明電極層6上にグリッド金属電極配線7を付加的に含むこともでき、その場合には第4種分割線溝D3はグリッド金属電極配線7をも貫通している。
【0037】
本発明による集積型薄膜光電変換装置を製造する方法においては、分割線溝のすべてが透光性基板1側からレーザビームを照射することによって形成されることが好ましい。このように一方向からレーザビームを照射することで、異なるレーザ加工の間で基板の表裏を反転させる必要がなくなり、基板反転のための装置と作業が不要となることに加えて、位置合わせを容易にし、加工精度の向上にも寄与することができる。
【0038】
また、好ましくは、分割線溝の形成において、透光性基板1が、裏面透明導電層2よりも鉛直上方に位置した状態で、すべての分割線溝が形成される。このように透光性基板1が上方となるようにすると、レーザビームを上方から照射することとなり、裏面電極層等の各層を加工する際に生じた飛沫は、レーザにより光電変換装置の外部に排出されるとともに、重力によって下方に落下するために、光電変換装置に戻ってくることが抑制される。そのため、飛沫によるショート等の光電変換性能の低下が抑制される。
【0039】
また、本発明の製造方法の一実施形態においては、裏面透明導電層2を貫通しない溝、すなわち、実施形態1においては第3種、および第4種の分割線溝D2、D3、実施形態2においては第3種、第4種および第6種の分割線溝D2,D3,D5が、裏面透明導電層2を透過するレーザビームを用いて形成される。かかる実施形態の一例において、レーザ光吸収層3がシリコンおよびゲルマニウムを主要元素とする半導体からなり、これらの裏面透明導電層2を貫通しない溝は例えばYAGレーザの第2高調波のビーム(波長:532nm)を用いて形成され得る。
【0040】
また、本発明の製造方法の別の一実施形態においては、裏面透明導電層2を貫通する溝、すなわち、実施形態1においては第2種分割線溝D1、実施形態2においては第5種分割線溝D4が、裏面透明導電層2に吸収されるレーザビームを用いて形成される。かかる実施形態の一例において、裏面透明導電層2が透明導電性酸化物を含み、裏面透明導電層2を貫通する溝はYAGレーザの基本波のビーム(波長:1064nm)を用いて形成され得る。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、裏面電極層にダメージを与えることなくレーザビーム加工によって集積型薄膜光電変換装置を得ることができ、その光電変換特性を顕著に向上させることができる。また、本発明の製造方法によれば、レーザビーム加工において基板側からのビーム照射のみが行なわれるので、これによっても加工精度と光電変換特性の改善された集積型薄膜光電変換装置を高い生産性と低いコストで得ることができる。
【0042】
また、互いに隣接する各光電変換セルが電気的に直列接続されるための手段として一般的には、レーザ吸収層にレーザ加工を施して接続孔を作り、裏面電極領域と裏面透明導電層を電気的に接続する手法が考えられる。しかし本発明ではレーザ吸収層に導電性不純物を含有させ導電性を持たせることで、レーザ加工の必要無く、裏面電極領域と裏面透明導電層を電気的に接続することが可能である。よって本発明では接続孔レーザ加工による膜の変質や、接続孔の接触不良による光電変換性能における曲線因子の低下などの問題が少ない。すなわち、本発明ではより少ない製造工程で、光電変換装置の高い集積型薄膜光電変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態1による積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態1による積層型薄膜光電変換装置の一例を示す模式的斜視図である。
【図3】本発明の実施形態2による積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図4】従来の積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図5】実施例6における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図6】実施例7における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図7】実施例8における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図8】実施例9における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図9】実施例12における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図10】比較例3における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図11】本発明の実施形態1による積層型薄膜光電変換装置における、分割線溝と複数の第1種接続孔D0との配置状況の一例を示す、概念図である。
【図12】図11において、第3種分割線溝(D2)に代えて第3種接続孔(D2)を備える場合の、概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の第1は、
「透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置であって、
前記レーザ光吸収層(3)は、前記裏面透明導電層(2)と前記裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有し、
前記裏面電極層(4)は、前記裏面透明導電層(2)、前記レーザ光吸収層(3)、および前記裏面電極層(4)を貫通する複数の第2種分割線溝(D1)によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されており、
前記半導体光電変換層(5)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、および前記半導体光電変換層(5)を貫通しかつ前記第2種分割線溝(D1)に平行な複数の第3種分割線溝(D2)によって複数の短冊状光電変換領域に分割されており、
前記第3種分割線溝(D2)は内部を前記受光面透明電極層(6)で満たされ、これにより前記裏面透明導電層(2)と前記受光面透明電極層(6)が電気的に接続されており、
前記受光面透明電極層(6)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、前記半導体光電変換ユニット(5)および前記受光面透明電極層(6)を貫通しかつ前記第2種分割線溝(D1)に平行な複数の第4種分割線溝(D3)によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されており、
各種分割線溝は、第2種分割線溝(D1)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
互いに隣接する前記光電変換セル間において、一方のセルの前記裏面電極領域は前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面透明導電層(2)、および前記第3種分割線溝(D2)を介して他方のセルの前記受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されていることを特徴とする集積型薄膜光電変換装置」である。
【0045】
なお、「各種分割線溝は、第2種分割線溝(D1)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
」とは
D1、D2、D3、D1、D2、D3、D1、D2、D3・・・の様な配置をいう。後述するようにD2が接続孔の場合は、「各種分割線溝は」を「各種分割線溝および接続孔は」と読み替え、また、「第3種分割線溝(D2)」を「第3種接続孔(D2)」と読み替える。
【0046】
本発明では、この配置を主として含めば良く、直列接続の末端部分においてどの溝が存在するか、は問わない。すなわち、直列接続の直列方向の末端部分においては、D3、D1,D2等が配置の末端となりうる。またこれらの配置は、光電変換ユニットの発電面積をなるべく大きく取るために、D1、D2、D3が近接して存在していることが望ましい。
【0047】
本発明は、また、
「透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置であって、
前記裏面透明導電層(2)は裏面透明導電層(2)を貫通する複数の第5種分割線溝(D4)によって複数の短冊状透明導電領域に分割されており、
前記レーザ光吸収層(3)は、前記裏面透明導電層(2)と前記裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有し、
前記裏面電極層(4)は、前記レーザ光吸収層(3)、および前記裏面電極層(4)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に平行な複数の第6種分割線溝(D5)によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されており、
前記半導体光電変換ユニット(5)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、および前記半導体光電変換ユニット(5)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に略平行な位置に配置される複数の第3種分割線溝(D2)によって複数の短冊状に類似した光電変換領域に分割されており、
前記第3種分割線溝(D2)は内部を前記受光面透明電極層(6)で満たされ、これにより前記裏面透明導電層(2)と前記受光面透明電極層(6)が電気的に接続されており、
前記受光面透明電極層(6)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、前記半導体光電変換ユニット(5)、および前記受光面透明電極層(6)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に平行な複数の第4種分割線溝(D3)によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されており、
各種分割線溝は、第5種分割線溝(D4)、第6種分割線溝(D5)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順、もしくは第6種分割線溝(D5)、第5種分割線溝(D4)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
互いに隣接する前記光電変換セル間において、一方のセルの前記裏面電極領域は前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面透明導電層(2)、および前記第3種分割線溝(D2)を介して他方のセルの前記受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されていることを特徴とする集積型薄膜光電変換装置」である。
【0048】
なお、「各種分割線溝は、第5種分割線溝(D4)、第6種分割線溝(D5)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、」とは、D4、D5、D2、D3、D4、D5、D2、D3、D4、D5、D2、D3・・・の様な配置をいう。後述するようにD2が接続孔の場合は、「各種分割線溝は」を「各種分割線溝および接続孔は」と読み替え、また、「第3種分割線溝(D2)」を「第3種接続孔(D2)」と読み替える。
【0049】
本発明では、この配置を主として含めば良く、直列接続の末端部分においてどの溝が存在するか、は問わない。すなわち、直列接続の直列方向の末端部分においては、D3、D4(あるいはD5),D2等が配置の末端となりうる。またこれらの配置は、光電変換ユニットの発電面積をなるべく大きく取るために、D5、D2、D3が近接して存在していることが望ましい。また、裏面電極層4と裏面透明導電層2の接続におけるレーザ吸収層3での抵抗損失、もしくはリーク電流を小さくするために、D4、D5が近接もしくは重なって存在していることが望ましい。
【0050】
なお、「各種分割線溝は、」「もしくは第6種分割線溝(D5)、第5種分割線溝(D4)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、」とは、D5、D4、D2、D3、D5、D4、D2、D3、D5、D4、D2、D3・・・の様な配置をいう。後述するようにD2が接続孔の場合は、「各種分割線溝は」を「各種分割線溝および接続孔は」と読み替え、また、「第3種分割線溝(D2)」を「第3種接続孔(D2)」と読み替える。
【0051】
本発明では、この配置を主として含めば良く、直列接続の末端部分においてどの溝が存在するか、は問わない。すなわち、直列接続の直列方向の末端部分においては、D3、D4(あるいはD5),D2等が配置の末端となりうる。またこれらの配置は、光電変換ユニットの発電面積をなるべく大きく取るために、D5、D2、D3が近接して存在していることが望ましい。また、裏面電極層4と裏面透明導電層2の接続におけるレーザ吸収層3での抵抗損失、もしくはリーク電流を小さくするために、D4、D5が近接、もしくは重なって存在していることが望ましい。
【0052】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)が導電型決定不純物を含み、かつ、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、および非晶質ゲルマニウムからなる群から選択される層を1以上含む、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0053】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)が含む導電型決定不純物が、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、およびTi(チタン)からなる群から選択される1以上を含む、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0054】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)が、SIMSによる元素の定量で、導電型不純物としてホウ素原子(B)を1016〜1021cm−3もしくはリン原子(P)を1016〜1021cm−3含んでいる前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0055】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)の導電率が102〜10−6S/cmである、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0056】
本発明は、また、
「前記第3種分割線溝(D2)に代えて第3種接続孔(D2)を備えて、当該第3種接続孔(D2)の基板に鉛直な方向から見た形状が、円、楕円、三角形、四角形、多角形、不定形、1以上の溝形状、交差する複数の溝形状、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上である、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0057】
なお、第3種接続孔D2は、複数存在しさえすれば良く、隣接する第3種接続孔同士が透光性基板の主面に対して平行な方向において繋がって形成される実質的な分割線溝に近いものであってもよい。レーザ照射等で、一度に作製できるという観点では、第3種接続孔D2は、隣接する第3種接続孔同士が透光性基板の主面に対して平行な方向において繋がって形成される実質的な分割線溝であることが好ましい。
【0058】
本発明は、また、
「前記第5種分割線溝(D4)と前記第6種分割線溝(D5)とが接続しており、
第6種分割線溝(D5)は第5種分割線溝(D4)よりも溝の幅が狭くかつ第5種分割線溝(D4)の内側に形成されているか、
または、
第5種分割線溝(D4)は第6種分割線溝(D5)よりも溝の幅が狭くかつ、第6種分割線溝(D5)の内側に形成されている
ことを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0059】
本発明は、また、
「前記受光面透明電極層(6)上にグリッド金属電極配線(7)をさらに含み、前記第4種分割線溝(D3)は前記グリッド金属電極配線(7)をも貫通していることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0060】
本発明は、また、
「前記の集積型薄膜光電変換装置を製造するための方法であって、
前記分割線溝および接続孔のすべてが前記透光性基板側からレーザビームを照射することによって形成されることを特徴とする、集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0061】
本発明は、また、
「前記透光性基板(1)が、前記裏面透明導電層(2)よりも鉛直上方に位置した状態で、すべての分割線溝および接続孔が形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0062】
本発明は、また、
「前記第2種分割線溝(D1)が、波長およびパワー密度の少なくともいずれか一方が異なる2種類のレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0063】
本発明は、また、
「前記第5種分割線溝(D4)が、前記第6種分割線溝(D5)を形成するレーザビームとは、波長およびパワー密度の少なくともいずれか一方が異なるレーザビームにより形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0064】
本発明は、また、
「前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝が、裏面透明導電層(2)を透過するレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0065】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)がシリコンまたはゲルマニウムを主要元素とする半導体からなり、かつ、前記裏面透明導電層(2)を透過するレーザビームがYAGレーザの第2高調波のビームであることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0066】
本発明は、また、
「前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝が、裏面透明導電層(2)に吸収されるレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0067】
本発明は、また、
「前記裏面透明導電層(6)は透明導電性酸化物を含み、前記第2種分割線溝はYAGレーザの基本波のビームを用いて形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0068】
本発明は、また、
「前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝と、前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝とが、同一波長のレーザビームを用いて形成され、前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝を形成するためのレーザビームは、前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝を形成するためのレーザビームよりもパワー密度が高いことを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0069】
本発明は、また、
「前記半導体光電変換ユニット(5)が少なくとも1以上の結晶質シリコン系半導体光電変換ユニットを含み、その結晶質シリコン系半導体光電変換ユニットはその膜面に平行な(220)の優先結晶配向面を有しており、θ−2θ法によるX線回折測定において2θ=47.4°付近に現れる(220)回折ピークと2θ=28.5°付近に現れる(111)回折ピークの強度比が、(220)回折ピーク強度/(111)回折ピーク強度比=2.0以上である、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。この構成によって、光電変換特性の優れた集積型薄膜光電変換装置が得られる。
【0070】
本発明は、また、
「前記裏面電極層(4)が凹凸構造を有しており、半導体光電変換ユニット(5)を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、裏面電極層(4)の凹部近傍を始点として、半導体光電変換ユニット(5)内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均して1個以下見られることを特徴とする前記の集積型薄膜光電変換装置」である。この構成によって、いわゆる結晶粒界が少ない、より高品質の、光電変換特性の優れた集積型薄膜光電変換装置が得られる。
【0071】
光閉じ込めの観点から半導体光電変換ユニット5の下層である裏面電極層4が凹凸構造を持たせることが多い。その場合、半導体光電変換ユニット5を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、半導体光電変換ユニット下層の凹部を発生源として、前記半導体光電変換ユニット5内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均1個以下であることが光電変換性能上好ましい。さらに望ましくはこの白色部が0個であると良い。
【0072】
本発明は、また、
「前記受光面透明電極層(6)上に、さらに、充填材および封止材をさらに含む、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0073】
本発明は、また、
「前記封止材にガラスが含まれていることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0074】
前記に述べた集積型光電変換装置に、(具体的には、前記受光面透明電極層(6)上に、さらに、)充填材(EVA、PVB)を重ねて、表側に表面封止材(単体のガラス板などの表面封止材や、フッ化ビニル樹脂(たとえばデュポン社製テドラー)またはフッ化ビニル樹脂/Al/フッ化ビニル樹脂などからなる背面カバーフィルムなど)を設けることで太陽電池モジュールにすることができる。
【0075】
好適な一態様について、以下、より詳しく述べる。
【0076】
集積型光電変換装置のデバイス部分の両端には電極が設けられている。この電極に、例えば2mm幅の銅箔を這わせる。電極と銅箔の接合は、例えば、セラミック専用の半田(商品名:セラソルザエコ)などを好適に用いることができる。約25mm間隔ではんだ付けを行い、その半田に半田をコーティングした2mm幅の銅箔を這わせて接合する。片側をガラスよりも大きくしてリードを出す。なお、電極より大きくなった部分については2mm幅の銅箔の両側に充填材が在るようにする。具体的にはリードに沿って小さな充填材を挟み込む。次にガラスより少し大きな充填材を設けるか、あるいは、若干小さな充填材と周囲の部分にブチルゴムを設ける。具体的な例としては、特開2001−148496に記載がある。
【0077】
更に、ガラスあるいは、透明か不透明なカバーフィルムを設けて真空ラミネータに投入し封止工程を終える。真空ラミネータで、例えば150℃30分間保持することにより樹脂は硬化する。
【0078】
充填材の具体的な例としては、EVA(エチレン−酢ビ共重合体)、PVB(ポリビニルブチラール)等が一般的ではあるがこれに限定されるものでは無い。
【0079】
封止材として用いうるガラスとしては、白板ガラスを強化したもの(いわゆる強化ガラス)が好適に用いられる。封止材として用いるフィルムとしてはETFE、PFAの単膜あるいは複合膜が好適に用いられる。何れの場合においても近赤外線に対する吸収が少ないことが望ましい。封止材としては、従来使われているような、金属箔の両面を樹脂フィルムで覆った形態のサンドイッチ構造等の複合的な封止材であってもよい。
【0080】
このようにして完成したモジュールの周辺のリードの取り回しには、例えば、特開平10−303447や特開2005−347698にあるような構造を用いて、ケーブルを引き回すことが可能である。
【0081】
この様なモジュールの設置には、取付け冶具を後ろに貼る方式やフレームを取り付ける方式などを採用して、設置場所に設置する。
【0082】
以下、実施形態のいくつかについて、説明する。
【0083】
[実施形態1]
図1において、本発明の実施形態1による集積型薄膜光電変換装置の作製方法の一例が模式的な断面図で図解されている。
【0084】
まず、図1(a)において透光性基板1上に裏面透明導電層2と順次積層される。透光性基板1はセル加工に使用するレーザの波長(532nm、1064nm)に対して透明であれば良い。裏面透明導電層2は、使用するレーザの波長に対して透明で有り、かつ表面に導電性を持つものであれば良い。例えば酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなどの透明導電性酸化物(TCO)で形成することができ、酸化亜鉛であればMOCVD法で作製されたものが特に望ましい。
【0085】
図1(b)において、裏面透明導電層2を覆うようにしてレーザ光吸収層3が積層される。ここで、レーザ光吸収層3は、導電性を有する。さらに具体的には、レーザ光吸収層(3)は、裏面透明導電層(2)と裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有する。
【0086】
本発明においては、レーザ光吸収層(3)が導電性を持っているため、裏面電極層(4)と裏面透明導電層(2)の導通を取るために、新たにレーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いという、従来に比べて、格段に顕著な効果が有る。レーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いということは、レーザスクライブ工程が1種類削減されることであり、これは、量産時には莫大なメリットとなる。
【0087】
レーザ光吸収層3の一態様としては、導電型不純物を含む薄膜非単結晶のシリコンまたはゲルマニウムもしくはそれらの合金によって形成することができる。導電型不純物としては、B、P、Al、Ga、As、Sb、In、Ti等が考えられるが、B、Pが特に望ましい。不純物濃度としてはBまたはPを1016〜1021cm−3含むことが望ましく、5×1018〜5×1020cm−3含むことがさらに望ましい。またレーザ光吸収層3は102〜10−6S/cmの導電率を有することが望ましく、特に10−5S/cm以上の導電率を有することが望ましい。
【0088】
図1(c)において、レーザ光吸収層3を覆うように裏面電極層4が積層される。この裏面電極層4は、例えば銀などの金属を利用して形成することができる。また、裏面電極層4は、レーザ光吸収層3に近い側から、第一の透明導電層、金属層、および第二の透明導電層を順に含むことが好ましい。このように、透明導電層を有することで、裏面電極層4とレーザ光吸収層3および、裏面電極層4と半導体光電変換ユニット5の密着力が高まり、光電変換特性を向上し得る。裏面電極層4を形成する第一の透明導電層としては酸化亜鉛、酸化錫、チタンなどが用いられる。裏面電極層4を形成する金属層としては銀、アルミニウム、およびニッケルなどが用いられる。裏面電極層4を形成する第二の透明導電層としては、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、チタンなどが用いられるが主として酸化亜鉛を含むものが好適に用いられる。
【0089】
図1(d)において、透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB1によって複数の領域に分割される。レーザビームLB1は、透明導電層2およびレーザ光吸収層3に吸収されて発熱を生じるものが選択される。例えばYAGレーザの基本波、ファイバレーザなどが好ましい。このレーザにより生じた発熱によって裏面電極層4が比較的容易に分割されて、第2種分割線溝D1が形成され得る。こうして形成された複数の第2種分割線溝D1の各々は、互いに平行であって、図面の紙面に直交する方向に延びている。
【0090】
図1(e)において、分割された裏面電極層4および第2種分割線溝D1を覆うように、半導体光電変換ユニット5が積層される。この半導体光電変換ユニット5は、その主面に平行な半導体pn接合、もしくはpin接合(図示せず)を含んでおり、例えば薄膜非単結晶のシリコンまたはゲルマニウムもしくはそれらの合金によって形成することができる。またこの半導体光電変換ユニット5は2つ以上のpn接合を直列に接続したタンデム型も可能である。
【0091】
図1(f)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、および半導体光電変換ユニット5は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB2aによって複数の領域に分割される。このとき、レーザビームLB2aは、レーザ光吸収層3に吸収されて発熱を生じる。そして、その発熱によって、裏面電極層4と半導体光電変換ユニット5が比較的容易に分割され得る。こうして形成された複数の第3種分割線溝D2の各々は、第2種分割線溝D1に対して近接しかつ平行に延びている。
【0092】
図1(g)において、分割された半導体光電変換ユニット5および第3種分割線溝D2を覆うように、受光面透明電極層6が堆積される。受光面透明電極層6には酸化亜鉛、酸化インジウム錫(ITO)などが用いられる。受光面透明電極層6の膜厚は50nm〜100nmの範囲が好ましいが、反射防止の点から600nm〜800nmが特に好ましい。酸化亜鉛を用いる場合はスパッタ法、MOCVD法などによる製膜が考えられるが、MOCVD法により製膜された酸化亜鉛光閉じ込めの点で好ましく、その膜厚は500nm〜3000nmが好ましく、さらに望ましくは1500nm〜2500nmが好適とされる。
【0093】
また本発明における集積型半導体光電変換装置は、複数のセルが集積されているため、非集積の半導体光電変換装置と比べて1セルあたりの表面積が非常に小さい。このため本発明では、集電用にグリッド電極を作製しなくても、受光面透明電極層6のみで電気抵抗の影響をほとんど受けずに集電でき、高い光電変換性能を有する半導体光電変換装置が作製可能である。
【0094】
最後に、図1(h)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB3aによって複数の領域に分割される。このとき、レーザビームLB3aは、レーザ光吸収層3に吸収され発熱を生じる。そして、その発熱によって、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6が比較的容易に分割され得る。こうして形成された複数の第4種分割線溝D3の各々は、第3種分割線溝D2に対して近接しかつ平行に延びている。
【0095】
以上のようにして、1つの透光性基板1上に、複数の細長い短冊状の薄膜光電変換セルが形成される。1つのセルの裏面電極層4はレーザ光吸収層3を介して透明導電層2に接続されており、また受光面透明電極層6は第3種分割線溝D2を介して隣接するセルの透明導電層2に接続されている。すなわち、隣接する短冊状のセルは、互いに電気的に直列に接続されている。なお、図1(h)においては図面の簡略化のために1つの基板上に限られた数の光電変換セルのみが示されているが、通常はさらに多くの光電変換セルが形成される。また、図面の明瞭化のために、各層の厚さが適宜にかつ顕著に拡大されて示されていることに留意されたい。
【0096】
上述のように、図1に示された集積型薄膜光電変換装置においては、レーザ光吸収層3を介して透明導電層2と裏面電極層4とが電気的に接続され得る。このことによって、半導体光電変換ユニット5を分割するためのレーザビームLB2aおよび受光面透明電極層6を分割するためのレーザビームLB3aを透光性基板1側から入射させることが可能となる。その結果、本発明の実施形態1においては、先行技術による図4(d)におけるような分割線溝D2x内で裏面電極層4へのダメージを回避でき、図4(f)におけるように分割線溝D3xの深さを半導体光電変換ユニット5の途中までに設定する必要もなくかつ分割線溝D3xに沿って裏面電極層4にダメージを与えることもない。
また、半導体光電変換ユニット5の下層に凹凸構造をつけることが光電変換性能を高める上で有効であるが、図1に示された集積型薄膜光電変換装置においては、透光性基板1、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4の4層で様々な凹凸構造を作り出すことができ、光閉じ込めを考える上で有利である。例えば透光性基板1は化学的エッチングによる凹凸、裏面透明導電層2は導電性酸化物成長の凹凸、レーザ光吸収層のエッチングによる凹凸、裏面電極層4は金属層成長の凹凸などが考えられ、これらを組み合わせて最適な光閉じ込めを作り出すことが可能となる。
【0097】
また、本発明の実施形態1においては、利用されるすべてのレーザビームLB1、LB2a、LB3aを透光性基板1側から入射させることができるので、異なるレーザ加工の間で基板の表裏を反転させる必要がない。そして、基板反転のための装置と作業が不要であることは、特に大面積の基板上に集積型薄膜光電変換装置を作製する場合に、生産性の改善とコスト低減に寄与し得る。さらに、異なるレーザ加工の間で基板を反転させる必要がないことは、異なるレーザ加工の間における位置合わせを容易にし、加工精度の向上にも寄与することができる。
【0098】
特に大面積の光電変換装置の作製においては、基板の表裏を反転させるために規模の大きい装置を必要とする上に、高精度の位置合わせが困難であることから、裏表を反転させる必要がない本願発明の構成を適用することの利点が大きい。かかる観点から、本発明の光電変換装置は大面積であることが好ましい。具体的には、基板サイズは910mm×455mm(0.41m2)以上、好ましくは、0.5m2以上、より好ましくは1000mm×1000mm(1.0m2)以上、さらに好ましくは1000mm×1300mm(1.3m2)以上、あるいは1000mm×1400mm(1.4m2)以上、特に好ましくは1200mm×1200mm(1.44m2)以上である。適用し得る基板サイズに上限は無く、例えば2000mm×2000mm(4.0m2)以上の基板に本発明の構成を適用することも可能である。
【0099】
また、図1(a)〜(h)においては、集積型薄膜光電変換装置の製造工程の理解を容易とする観点から、透光性基板1が透明導電層2よりも下方となるように図示したが、本発明においては、レーザビームの照射を、透光性基板1が、透明導電層2よりも鉛直上方に位置する状態で分割線溝の形成を行うことが好ましい。レーザビームの照射により分割線溝を形成する際に、裏面電極層等の各層の加工により生じた飛沫は、レーザにより光電変換装置の外部に排出されるが、透光性基板1側を上方として、上方からレーザビームを照射することによって、飛沫は重力によって下方に落下し、光電変換装置内に戻ってくることが抑制される。そのため、加工時の飛沫に起因するショート等の光電変換性能の低下が抑制される。
【0100】
本発明の実施形態1の一応用例によれば、図2の模式的斜視図に示されているような集積型薄膜光電変換装置を作製することも可能である。この集積型薄膜光電変換装置の作製においては、受光面透明電極層6上にグリッド金属電極配線7を形成した後に、透光性基板1側からレーザビームLB3aを入射させることによって第4種分割線溝D3を形成し、これによってグリッド金属電極配線7がセルごとに分割される。図2の集積型薄膜光電変換装置においては、比較的抵抗率の高い受光面透明電極層6からグリッド金属電極配線7に電荷を集電して効率的に輸送することができるので、直列抵抗成分の低減が可能となり、各セルの幅を広くすることも可能となる。そして、各セルの幅を広くすることは、分割線溝D1、D2、D3の本数を低減させることになり、レーザ加工が簡略化され得る。
【0101】
以上のように、本発明の実施形態1によれば、光電変換特性の優れた積層型薄膜光電変換装置が、高い加工精度、高い生産効率、および低いコストで提供され得る。
【0102】
[実施形態2]
図3において、本発明の実施形態2による集積型薄膜光電変換装置の作製方法が模式的な断面図で図解されている。
【0103】
実施形態2は、実施形態1と同様に、透光性基板1上に順次積層された裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を含み、これらの層の各々は平行に設けられた複数の各分割線溝によって複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている。
そして、前記レーザ光吸収層3が導電性を有する点、半導体光電変換ユニット5がレーザ光吸収層3、裏面電極層4、および半導体光電変換ユニット5を貫通する複数の第3種分割線溝D2によって複数の短冊状光電変換領域に分割されている点、受光面透明電極層6がレーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を貫通する複数の第4種分割線溝D3によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されている点、および、互いに隣接する光電変換セル間において、一方のセルの裏面電極領域がレーザ光吸収層3、裏面透明導電層2、および第3種分割線溝D2を介して他方のセルの裏面電極領域に電気的に接続されている点において、実施形態1と構成が共通している。
【0104】
実施形態2において、透光性基板1、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6は、実施形態1の説明において記載したのと同様のものを同様の方法により形成することができる。
【0105】
前記実施形態1においては、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通する第2種分割線溝D1によって裏面電極層4が複数の短冊状裏面電極領域に分割されているのに対して、実施形態2においては、これに代え、裏面透明導電層2を貫通する第5種分割線溝D4と、レーザ光吸収層3および前記裏面電極層4を貫通する第6種分割線溝D5を有している。そして、裏面透明導電層2は、複数の第5種分割線溝D4によって複数の短冊状裏面透明導電領域に分割されており、裏面電極層4は、複数の第6種分割線溝D5によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されている。
【0106】
図3において、本発明の実施形態2による集積型薄膜光電変換装置の作製方法の一例が模式的な断面図で図解されている。以下、図3における集積型薄膜光電変換装置の作製方法について説明する。なお、図3において、図1と同一の参照符号は前記実施形態1と同一部分または相当部分を示している。以下の説明において、前記実施形態1と重複する内容についての記載は省略されている。
【0107】
まず、図3(a)において、ガラスなどの透光性基板1上に裏面透明導電層2が積層される。その後、裏面透明導電層2は透光性基板1側から入射されるレーザビームLB4によって形成される第5種分割線溝D4により複数の領域に分割される。ここで使用されるレーザビームLB4は裏面透明導電層2に吸収されるものであり、これにより裏面透明導電層2は比較的容易に分割加工され第5種分割線溝D4が形成される。このように形成された複数の分割線溝D4は互いに平行であって、図面の紙面に直交する方向に延びている。
【0108】
図3(b)において、分割された裏面透明導電層2および第5種分割線溝D4を覆うようにレーザ光吸収層3が積層される。
【0109】
このレーザ光吸収層3は後に積層される裏面電極層4と裏面透明導電層2を導通させるのに十分な導電性を有している。
【0110】
図3(c)において分割されたレーザ光吸収層3を覆うように裏面電極層4が積層される。
【0111】
図3(d)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4は透光性基板1側から入射されるレーザビームLB5によって形成される第6種分割線溝D5により複数の領域に分割される。ここで使用されるレーザビームLB5は裏面透明導電層2に吸収されず、レーザ光吸収層3に吸収され発熱し、これによりレーザ光吸収層3、裏面電極層4は比較的容易に分割加工され第6種分割線溝D5が形成される。こうして形成された複数の分割線溝D5の各々は平行に延びている。
【0112】
図3(e)において、分割された裏面電極層4および第6種分割線溝D5を覆うように、半導体光電変換ユニット5が積層される。
【0113】
図3(f)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、および半導体光電変換ユニット5は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB2aによって複数の領域に分割される。
【0114】
図3(g)において、分割された半導体光電変換ユニット5および分割線溝D2を覆うよう
に、受光面透明電極層6が堆積される。
【0115】
最後に、図3(h)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB3aによって複数の領域に分割される。
【0116】
また、本発明の実施形態2においては、前記実施形態1と同様に、第3種分割線溝D2x内で裏面電極層4へのダメージを回避でき、かつ第4種分割線溝D3xに沿って裏面電極層4にダメージを与えることもない。
【0117】
さらに、利用されるすべてのレーザビームLB4、LB5、LB2a、LB3aを透光性基板1側から入射させることができるため、レーザビームの照射を、透光性基板1が、裏面透明導電層2よりも鉛直上方となるようにして分割線溝の形成を行うことで、加工時の飛沫によるショート等の光電変換性能の低下が抑制される。
【0118】
また、実施形態1と同様に、受光面透明電極層6上にグリッド金属電極配線7を形成した後に、透光性基板1側からレーザビームLB3aを入射させることによって第4種分割線溝D3を形成し、これによってグリッド金属電極配線7をセルごとに分割することで、比較的抵抗率の高い受光面透明電極層6からグリッド金属電極配線7に電荷を集電して効率的に輸送することができ、直列抵抗成分の低減が可能となる。
【0119】
[実施形態2A]
実施形態2の一例として、前記第5種分割線溝D4と、前記第6種分割線溝D5が接続した実施形態2Aを採用することもできる。このように、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続した場合、これらの分割線溝は実施形態1における第2種分割線溝D1と等価なものとなる。一方で、実施形態1においては、第2種分割線溝D1が、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通するように形成されるのに対して、実施形態2においては、裏面透明導電層2を貫通する第5種分割線溝D4と、レーザ光吸収層3および裏面電極層4を貫通する第6種分割線溝D5とが別に形成される。そのため、実施形態2においては、分割線溝D4、D5周辺部の加工断面が変質する、もしくはその変質に起因して該分割線溝周辺部の膜が盛り上がる等の問題が抑制され、曲線因子を高く保つことが可能となる。このような実施形態の構成および製造例については、後の実施例において、より詳細に説明する。
【0120】
[全ての実施形態に共通する、レーザ光吸収層の他の態様]
本明細書中では、主に、レーザ光吸収層の素材を、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、および微結晶ゲルマニウムからなる群から選択される層を1以上含むように記載している。例えば、レーザ光吸収層の素材シリコンもしくはゲルマニウム系半導体を含む半導体であるように、記載している。レーザ光吸収層は、例えば、プラズマCVD法によって堆積されてなる非晶質シリコン(a−Si)層や、半導体のpn接合またはpin接合を含む態様などである。
【0121】
しかしながら、本発明のレーザ光吸収層の具体例としては、他に引き続く工程に耐久性が有る限りにおいては、無機物・有機物を問わないあらゆる層を適用可能である。レーザ光吸収層は、200〜250℃程度の高温に耐えうる耐熱性を有する物質・素材を主たるマトリックス材料として、公知のレーザ光吸収物質が分子結合されているか、あるいは、分散されているような、層であっても良い。また、そのマトリックス材料だけでレーザ光吸収する場合は、そのような材料も、レーザ光吸収層として適用可能である。
【0122】
マトリックス材料の耐熱性という点では、例えば、ポリイミド材料、アラミド材料等が、好ましい。他にも、有機物に対して親和性を有する無機物ともいえるシルセスキオキサン(Silsesquioxanes)類を含む材料が、レーザ光吸収層のマトリックス材料であっても良い。例えばポリイミド材料をマトリックス材料とする場合には、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を、ワニス状態で調製した後、基板上にキャストし加熱して脱水縮合反応をすることによって、ポリイミド材料を作製することもできる。
【0123】
なお、レーザ光吸収層は、本発明で主に説明したようなCVD法で作製する以外にも、真空装置を使わない他の安価な方法や簡便な方法によって作製することも、できる。すなわち、レーザ光吸収層は、印刷法、ナノインプリント法、スピンコート法、ロールコーター法、ディップ法等、公知の方法で作製することも、できる。
【0124】
すなわち、本発明のレーザ吸収層を作製するCVD法は、例示の一つである。引き続く他の工程との親和性という観点では、CVD法で作製することは、好ましい。ただし、前述の、真空装置を使わない他の安価な方法や簡便な方法の方が、より好ましい。
【0125】
レーザ光吸収層の必要特性としては、レーザ光を吸収して、レーザスクライブ等で分割可能であること、である。
【0126】
本発明の一態様としては、レーザ光吸収層の表面に、何らかのテクスチャ構造を形成しても良い。テクスチャ構造の一例としては、凹凸(concavities and convexities)や、2次元あるいは3次元的に周期的な構造を有するような構造、ある一定の表面粗さを有する構造、等が有り得るが、他にも、当業者が想到しうるあらゆる変形が可能である。
【0127】
[全ての実施形態に共通する、本願の利点]
以下に、全ての実施形態に共通する、本願の利点を述べる。
【0128】
本発明においては、レーザ光吸収層(3)が導電性を持っているため、裏面電極層(4)と裏面透明導電層(2)の導通を取るために、新たにレーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いという、従来に比べて、格段に顕著な効果が有る。レーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いということは、工程が1種類削減されることであり、これは、量産時には莫大なメリットとなる。
【0129】
すなわち、透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置においては、光電変換セル1つに対応してレーザスクライブ工程が1つ削減されることであり、レーザスクライブ工程を1つ実施する時間が削減されることであり、製造時間の短縮につながり、量産時には莫大なメリットとなる。
【0130】
本発明の半導体光電変換ユニット5は2つ以上のpn接合を直列に接続したタンデム型も可能である。一例として微結晶シリコンpin接合と非晶質シリコンpin接合の2積層構造等が選択され得る。この構造を考えた時、微結晶シリコンpin接合製膜時の製膜温度は自由度が高く、100℃〜450℃の範囲から選択され得る。製膜温度が高まると、結晶質光電変換ユニットの光電変換層の結晶性が向上するため、有利である。また、本発明の構成によって、微結晶シリコンpin接合製膜時のパワー密度や、製膜圧力などにおいても、自由度が高くなる。
【0131】
例えば、結晶質光電変換ユニットと非晶質光電変換ユニットとの2つの光電変換ユニットを備える、タンデム型の集積型薄膜光電変換装置を製造するにあたり、従来技術においては製膜温度の自由度が少なかったが、本発明においては製膜温度について自由度が非常に高い。本発明の有利な効果を具体的に説明することによって、本発明の技術的意義を説明する。
【0132】
従来、光透過側から順に、透光性基板上に、順次積層された透明電極層と、非晶質光電変換ユニットと、結晶質光電変換ユニットと、裏面電極層とを含むような非晶質光電変換ユニット/結晶質光電変換ユニットの2段タンデム型光電変換装置(ハイブリッド型光電変換装置)を製造するためには、2つの光電変換ユニットの内、最初に非晶質光電変換ユニットを製膜する必要が有った。下地である非晶質光電変換ユニットに対して熱的ダメージを与えないようにするために、結晶質光電変換ユニットを製膜する際には、例えば200℃以下の製膜温度を選択せざるを得なかった。
【0133】
一方、本発明では、透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、結晶質光電変換ユニット、非晶質光電変換ユニット、および受光面透明電極層(6)を含み、光は、受光面透明電極層側から透過する。本発明では、2つの光電変換ユニットの内、最初に結晶質光電変換ユニットを製膜することができる。従来技術で下地となっていた非晶質光電変換ユニットに対する熱的ダメージを、本発明では、全く気にする必要が無い。すなわち、本発明では、結晶質光電変換ユニットを製膜する際に、例えば100℃〜450℃の範囲から適宜選択することが可能である。製膜温度が高まると、結晶質光電変換ユニットの光電変換層の結晶性が向上するため、有利である。また、本発明では、プラズマCVD法等で製膜する際、従来よりも製膜時のパワー密度を高くすることもできるため、製膜速度を格段に高めることができるという、従来に無い、著しい効果も有る。
【0134】
本発明の一態様である非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットとの2段タンデム型の光電変換装置の場合、非晶質シリコンと結晶質シリコンの光吸収係数等の関係で、非晶質光電変換ユニットの厚みは薄く、結晶質光電変換ユニットの厚みは厚い。通常、非晶質シリコン層は、300〜600nm程度であるのに対して、長波長光閉じ込め効果を必要とする結晶質シリコン層は2000〜4000nm程度の膜厚を有する。より厚みの大きい結晶質光電変換ユニットの製膜速度を格段に高めることができる本発明は、工業的な意味で、製造時間を格段に短縮できるという意味なども含めて、従来技術よりも、大量生産時の生産効率が著しく高い。
【0135】
ここまでに、非晶質光電変換ユニット/結晶質光電変換ユニットの2段タンデム型光電変換装置が説明されたが、1つ以上の非晶質光電変換ユニットおよび/または1つ以上の結晶質光電変換ユニットをさらに含む多段タンデム型光電変換装置にも本発明が適用され得ることはいうまでもない。
【0136】
また、前記の光電変換ユニットの中や、タンデム型の複数の光電変換ユニット同士の界面等には、光電変換効率を高める目的で、例えば、シリコンカーバイドや、シリコンゲルマニウムなどのシリコン系合金材料や、シリコンと酸素との非晶質合金中にシリコン結晶相を含むシリコン複合層などを、適宜、挿入可能である。
【0137】
またこの微結晶シリコンpin接合はX線回折で測定した時、(220)配向のピーク強度が(111)配向のピーク強度に対して1.5倍以上あることが好ましく、望ましくは2.5倍以上がさらに好ましい。 また、光閉じ込めの観点から半導体光電変換ユニット5の下層である裏面電極層4が凹凸構造を持つ場合、半導体光電変換ユニット5であるの一例である、前記微結晶シリコンpin接合を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、半導体光電変換ユニット下層である裏面電極層(4)の凹部を発生源として、前記微結晶シリコンpin接合内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均1個以下であることが光電変換性能上好ましい。さらに望ましくはこの白色部が0個であると良い。この白色部は、凹凸基板上に結晶が成長する時、成長した結晶同士がぶつかり合い発生した微小なクラックだと考えられ、このクラックが多数存在すると、開放電圧が低下するため、クラックができるだけ発生しないような凹凸基板、結晶質の半導体光電変換ユニットの微結晶シリコン成長条件を選択することが必要である。
【0138】
なお、前記の態様は、「前記裏面電極層(4)が凹凸構造を有しており、半導体光電変換ユニット(5)を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、裏面電極層(4)の凹部近傍を始点として、半導体光電変換ユニット(5)内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均して1個以下見られることを特徴とする前記の集積型薄膜光電変換装置」に関する。この態様は、前記の全ての実施形態でも、同様に、好ましい。
【0139】
なお、本発明の明細書中では構成要件等を、「符号の説明」欄に記載の符号を入れた形で説明している部分も有るが、本発明は、単なる例示であるこれらの符号や図面等に拘束されるものではない。すなわち、本発明は、当分野において通常の知識を有する者により、本発明の技術的思想内で、以下説明する符号等に拘束されることなく多くの変形が、可能である。
【実施例】
【0140】
上述のような本発明による実施形態に対応する具体的な例として、以下においていくつかの実施例が比較例と共に説明される。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0141】
[実施形態1に関する実施例]
(実施例1)
本発明の実施例1においては、図1に対応して集積型薄膜光電変換装置が作製された。まず、図1(a)において、透明ガラス基板1上に酸化錫の裏面透明導電層2を積層した。その裏面透明導電層2は、熱CVD法によって約800nmの厚さに堆積された。こうして堆積された裏面透明導電層2は、微細な凹凸を含む表面テクスチャ構造を有している。この表面テクスチャ構造は、後に堆積される裏面電極層4中の金属層表面に伝えられる。そして、その金属層表面における微細な表面凹凸は、光の乱反射を生じて、半導体光電変換ユニット5内の光吸収効率を高めるように作用し得る。
【0142】
図1(b)において裏面透明導電層2を覆うようにレーザ光吸収層3が堆積された。レーザ光吸収層3としては、Bが添加されたp型非晶質シリコン(p:a−Si)層がプラズマCVD法によって200nmの厚さに堆積された。このp型非晶質シリコンの導電率は10−4S/cmであった。また、レーザ吸収層3をSIMSにより元素の定量を行ったところ、導電型不純物であるB(ホウ素)が1019cm−3含まれていた。なお、レーザ光吸収層3は後の全てのレーザビーム加工を可能ならしめる厚さを有していればよく、この前提の下で適宜に選択された厚さを有し得る。
【0143】
図1(c)において、レーザ光吸収層3を覆うように裏面電極層4を堆積させた。裏面電極層4としては、スパッタリング法を用いて第一の透明電極層である厚さ90nmの酸化亜鉛層、金属層である厚さ200nmの銀層、および第二の透明電極層である厚さ90nmの酸化亜鉛層を順次積層させた。裏面電極層4に含まれる酸化亜鉛層は、レーザ光吸収層3および後に堆積される半導体光電変換ユニット5と銀層との密着強度向上および銀の反射率を高めるために好ましい。
【0144】
図1(d)において、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)の赤外レーザビームLB1を透明ガラス基板1側から照射し、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を加工して分割線溝D1を形成した。前述のように裏面透明導電層2はYAGレーザの基本波(波長1064nm)の赤外光を吸収して発熱し得るので、レーザビームLB1による裏面透明導電層2およびレーザ光吸収層3の発熱によって、それらの層および裏面電極層4を比較的容易に同時に分割加工することができる。
【0145】
このように、裏面透明導電層2およびその他の層を分割加工するためのレーザビームLB1としては、裏面透明導電層2に吸収されるものが好ましく、YAGレーザの基本波(波長1064nm)の他に、例えば、これと同じ波長のレーザ光を射出するYVO4レーザの基本波や、略同じ波長のレーザを射出し得るファイバレーザ等を用いることができる。下記の分割線溝D2、D3を形成するための、レーザビームLB2aにおいても同様である。
【0146】
図1(e)において、分割された裏面電極層4および分割線溝D1を覆うように、半導体光電変換ユニット5をプラズマCVD法により堆積した。その半導体光電変換ユニット5は、順次積層された厚さ約20nmのn型微結晶Si層、厚さ約300nmのi型a−Si:H(Hを含むa−Si)層、および厚さ約15nmのp型a−SiC:H(Hを含むa−SiC)層を含んでいる。すなわち、本実施例1における半導体光電変換ユニット5は、その主面に平行な一組のnip接合からなる単一の光電変換ユニットを含んでいる。
【0147】
図1(f)において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB2aを透明ガラス基板1側から照射して分割線溝D2を形成した。ここで使用されるレーザビームLB0は、裏面透明導電層2にダメージを与えることなくレーザ光吸収層3、裏面電極層4および半導体光電変換ユニット5を分割加工できればよい。例えばYAGレーザに関して、a−Siのレーザ光吸収層3は、第2高調波(波長532nm)の光をよく吸収し得る。他方、裏面透明導電層2は、YAGレーザの基本波(波長1064nm)の赤外ビームをよく吸収する。しかし、YAGレーザの第2高調波(波長532nm)の光に関しては、裏面透明導電層2はほぼ透明であって僅かに吸収するだけである。したがって、例えばYAGレーザの第2高調波であって12kW/cm2のパワー密度と60μmの断面径を有するレーザビームLB0を照射することによって、裏面透明導電層2にダメージを与えることなくレーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5のみを分割加工することができる。
【0148】
このように、裏面透明導電層2にダメージを与えることなくレーザ光吸収層3を分割加工するためのレーザビームとしては、裏面透明導電層2に対してほぼ透明で、かつ、レーザ光吸収層3に吸収されるものが好ましく、YAGレーザの第2高調波(波長532nm)の他に、例えば、これと同じ波長のレーザ光を射出するYVO4(イットリウム・バナデート)レーザの第2高調波や、略同じ波長のレーザを射出し得るファイバレーザ等を用いることができる。
【0149】
図1(g)において、分割された半導体光電変換ユニット5および分割線溝D2を覆うように、電子ビーム蒸着法によって酸化インジウムの受光面透明電極層6を約80nmの厚さに堆積した。
【0150】
図1(h)において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB3aを透明ガラス基板1から照射して分割線溝D3を形成した。波長532nmのレーザビームLB3aはレーザ光吸収層3および半導体光電変換ユニット5によって効率的に吸収されて発熱を生じるので、それらの層とともに裏面電極層4および受光面透明電極層6をも比較的容易に同時に分割加工することができる。
【0151】
本実施例1において得られた集積型薄膜光電変換装置にリード線を接続し、環境温度25℃において、ソーラーシミュレータを用いてAM1.5の光を100mW/cm2の強度で照射して光電変換特性を測定したところ、短絡電流密度が16.21mA/cm2、一セルあたりの開放端電圧が0.891V、曲線因子0.727、そして光電変換効率が10.5%であった。
【0152】
(実施例2)
本発明の実施例2による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例1に比べて、下記事項(1)と(2)のみにおいて変更されていた。
すなわち実施例2におけるレーザ光吸収層3の不純物濃度はBを1019cm−3含み、導電率は10−4S/cmであった。
【0153】
(1) 図1(a)の工程において、レーザ光吸収層3の厚さが200nmではなくて400nmの厚さに増大された。
【0154】
(2) 図1(e)の工程において、半導体光電変換ユニット5は、下段のnip接合からなる下段光電変換ユニットと上段のnip接合からなる上段光電変換ユニットを含むタンデム型に変更された。この下段光電変換ユニットとして、厚さ約20nmのn型微結晶Si層、厚さ約2μmのi型微結晶シリコン光電変換ユニット、そして厚さ約15nmのp型微結晶Si層が順次積層された。他方、上段光電変換ユニットは、実施例1における光電変換ユニットと同じ条件で形成された。
【0155】
(実施例3)
本発明の実施例3による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてPが添加されたn型非晶質シリコン(n:a−Si)層が400nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例3における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このn型非晶質シリコンは不純物としてPを1019cm−3含み、導電率は10−3S/cmであった。
【0156】
(実施例4)
本発明の実施例4による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてBが添加されたp型非晶質シリコンゲルマニウム(p:a−SiGe)層が300nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例4における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このp型非晶質シリコンゲルマニウムは不純物としてBを1019cm−3含み、導電率は10−5S/cmであった。一般的に非晶質シリコンゲルマニウムは非晶質シリコンよりも加工に使用するレーザの波長(例えば532nm、1064nm)で光吸収係数が高く、レーザ吸収層の膜厚を薄くすることが可能である。
【0157】
(実施例5)
本発明の実施例5による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてBが添加されたp型非晶質ゲルマニウム(p:a−Ge)層が300nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例5における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このp型非晶質ゲルマニウムは不純物としてBを1019cm−3含み、導電率は10−4S/cmであった。一般的に非晶質ゲルマニウムは非晶質シリコンよりもレーザの波長(nm)で光吸収係数が高く、レーザ吸収層の膜厚を薄くすることが可能である。
【0158】
(実施例6)
本発明の実施例6による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてBが添加されたp型微結晶シリコン(p:mc−Si)層が800nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例5における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このp型非晶質シリコンは不純物としてBを1019cm−3含み、導電率は10−4S/cmであった。一般的に微結晶シリコンは非晶質シリコンよりもレーザの波長(nm)で光吸収係数が小さいため、レーザ吸収層として微結晶シリコンを用いる場合は、非晶質シリコンを用いた場合と比べ、レーザ吸収層の膜厚を厚くする、もしくはレーザ加工条件を変更する必要がある。
【0159】
(実施例7)
本発明の実施例7による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてBが添加されたp型微結晶ゲルマニウム(p:mc−Ge)層が400nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例5における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このp型微結晶ゲルマニウムの導電率は10−2S/cmであった。
【0160】
(実施例8)
本発明の実施例8による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3として、導電率が10−6S/cm である400nmのp型非晶質シリコン(p:a−Si)層を用いており、 レーザ光吸収層の導電率が小さい点が異なっていた。このレーザ吸収層3をSIMSにより元素の定量を行ったところ、Bが1016cm−3含まれていた。また本実施例8における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。
【0161】
(実施例9)
本発明の実施例9においては、図2に対応する集積型薄膜光電変換装置が作製された。そして、本実施例9の集積型薄膜光電変換装置の作製では、実施例2に比べて、図1(g)の工程において受光面透明電極層6上にアルミニウムのグリッド金属電極配線7が蒸着法によって付加的に形成されたことのみにおいて異なっていた。すなわち、本実施例9における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。
【0162】
(実施例10)
本発明の実施例10においては、図1に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、図1(d)の工程において、レーザビームLB1として、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)を用いる代わりに、パワー密度60kW/cm2のQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)を用いた点において実施例2と異なっていた。
【0163】
(実施例11)
本発明の実施例11においては、図1に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、図1(c)の工程において、裏面電極層4の第ニの透明導電層がMOCVD法にて酸化亜鉛が90nmの厚さで作製された点において、実施例2と異なっていた。
【0164】
[実施形態2Aに関する実施例]
(実施例12)
本発明の実施例12においては、図5に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、下記の点において実施例2と異なっていた。
【0165】
実施例2における図1(d)の工程に代えて、図5(d1)のように裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4に透光性基板1側から入射されるQスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4aによって分割線溝D4が形成された。さらに、図5(d2)のように分割線溝D4の上から、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4をレーザビームLB4aよりもビーム径の大きいQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB5aが照射され分割線溝D5が形成された。
【0166】
これらの工程により、第5種分割線溝D4および第6種分割線溝D5が形成され、図5(f)に示すように、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続しており、第5種分割線溝D4は、第6種分割線溝D5よりも溝の幅が狭く、かつ、第6種分割線溝D5の内側に形成されている集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0167】
(実施例13)
本発明の実施例13においては、図6に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、下記の点において実施例2と異なっていた。
【0168】
実施例2における図1(d)の工程に代えて、図6(d1)のようにレーザ光吸収層3、および裏面電極層4に透光性基板1側から入射されるQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB5bによって分割線溝D5が形成された。さらに、図6(d2)のように分割線溝D5の上から、裏面透明導電層2をレーザビームLB5bよりもビーム径が小さいQスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4bが照射され分割線溝D4が形成された。
【0169】
これらの工程により、第5種分割線溝D4および第6種分割線溝D5が形成され、図6(f)に示すように第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続しており、第5種分割線溝D4は、第6種分割線溝D5よりも溝の幅が狭く、かつ、第6種分割線溝D5の内側に形成されている集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0170】
(実施例14)
本発明の実施例14においては、図7に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、実施例2に比べて、下記の(1)、(2)において異なっていた。
【0171】
(1) 実施例2における図1(a)の工程に代えて、図7(a1)のように透光性基板1上に裏面透明導電層2が堆積された後に、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4cにより分割線溝D4が形成され、その後、図7(a2)のようにレーザ光吸収層3が堆積された。
【0172】
(2) 実施例2における図1(d)の工程に代えて、図7(d)のように分割線溝D4の上から、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4にレーザビームLB4cよりもビーム径の大きいQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長533nm)のレーザビームLB5cが照射され分割線溝D5が形成された。
【0173】
これらの工程により、第5種分割線溝D4および第6種分割線溝D5が形成され、図7(f)に示すように第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続しており、第5種分割線溝D4は、第6種分割線溝D5よりも溝の幅が狭く、かつ、第6種分割線溝D5の内側に形成されている集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0174】
(実施例15)
本発明の実施例15においては、図8に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、実施例2に比べて、下記の(1)、(2)において異なっていた。
【0175】
(1) 実施例2における図1(a)の工程に代えて、図8(a1)のように透光性基板1上に裏面透明導電層2が堆積された後に、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4dにより分割線溝D4が形成され、その後、図8(a2)のようにレーザ光吸収層3が堆積された。
【0176】
(2) 実施例2における図1(d)の工程に代えて、図8(d)のように分割線溝D4の上から、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4をレーザビームLB4dよりもビーム径の小さいQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB5dが照射され分割線溝D5が形成された。
【0177】
これらの工程により、図8(f)に示すように第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続しており、第6種分割線溝D5は、第5種分割線溝D4よりも溝の幅が狭く、かつ第5種分割線溝D4の内側に形成されている集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0178】
(実施例16)
本発明の実施例16においては、図6に図解されている工程によって、実施例7と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、図6(d2)の工程において、レーザビームLB4bとして、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)を用いる代わりに、パワー密度60kW/cm2QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)を用いた点において実施例7と異なっていた。
【0179】
(実施例17)
本発明の実施例17においては、実施例7と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、図6(g)の工程において受光面透明電極層6上にアルミニウムのグリッド金属電極配線7が蒸着法によって付加的に形成された点において実施例7と異なっていた。
【0180】
これによって、受光面透明電極層上にグリッド金属電極配線を含み、第4種分割線溝がグリッド金属電極配線を貫通している集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0181】
(実施例18)
本発明の実施例18においては、図9に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、実施例2に比べて、下記の(1)、(2)において異なっていた。
【0182】
(1) 実施例2における図1(a)の工程に代えて、図9(a1)のように透光性基板1上に裏面透明導電層2が堆積された後に、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4eにより分割線溝D4が形成され、その後、図9(a2)のようにレーザ光吸収層3が堆積された。
【0183】
(2) 実施例2における図1(d)の工程に代えて、図9(d)のように第5種分割線溝D4の近傍において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB5eが照射され第6種分割線溝D5が形成された。これらの工程により、図9(f)に示す集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0184】
(実施例19)
本発明の実施例19においては、図1に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、下記の点において実施例2と異なっていた。
【0185】
図1(e)において半導体光電変換ユニット5の構成が、裏面電極層4側から順に、厚さ約15nmのp型微結晶Si層、厚さ約2μmのi型微結晶シリコン光電変換層、厚さ約20nmのn型微結晶Si層の順から成る下段光電変換ユニットと、厚さ約15nmのp型a−SiC:H(Hを含むa−SiC)層、厚さ約300nmのi型a−Si:H(Hを含むa−Si)層、および厚さ約20nmのn型微結晶Si層の順から成る上段光電変換ユニットを含むタンデム型となっていた。すなわち実施例2と比べ半導体光電変換ユニット5の整流特性が逆向きとなっていた。
【0186】
実施例2〜19において得られた集積型薄膜光電変換装置にリード線を接続し、実施例1の場合と同様にして光電変換特性を測定した。結果を表1に示す。
【0187】
(比較例1)
上述の種々の実施例との対比のための比較例1として、図4に対応して集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0188】
まず、図4(a)〜(c)において、透明ガラス基板1上に透明酸化錫層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4が、堆積された。ここでレーザ光吸収層3は不純物添加の無いi型非晶質シリコン(i:a−Si)が200nmの厚さで堆積された。透明酸化錫層2、裏面電極層4は実施例2の場合と同じ条件で堆積された。
【0189】
図4(d)において、実施例1の場合の図1(d)の工程と同じ条件下でQスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB1を透明ガラス基板1側から照射し、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を加工して分割線溝D1xを形成した。
【0190】
図4(e)において、実施例1の場合の図1(e)の工程と同じ条件下で、分割された裏面電極層4および分割線溝D1xを覆うように半導体光電変換ユニット5を堆積した。
【0191】
図4(f)において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB2xを半導体光電変換ユニット5側から照射して分割線溝D2xを形成した。
【0192】
図4(g)において、実施例1の場合の図1(g)の工程と同じ条件下で、分割された半導体光電変換ユニット5および分割線溝D2xを覆うように受光面透明電極層6を堆積した。
【0193】
図4(h)において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB3xを受光面透明電極層6側から照射して分割線溝D3xを形成した。
【0194】
(比較例2)
比較例2として、比較例1と同様に、図4に対応して集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、比較例1に比べて、下記事項(1)と(2)のみにおいて変更されていた。
【0195】
(1) 図4(b)の工程において、レーザ光吸収層3の厚さが200nmではなくて400nmの厚さに増大された。
【0196】
(2) 図1(e)の工程において、半導体光電変換ユニット5は、下段のnip接合からなる下段光電変換ユニットと上段のnip接合からなる上段光電変換ユニットを含むタンデム型に変更された。この下段光電変換ユニットとして、厚さ約20nmのn型微結晶Si層、厚さ約2μmのi型微結晶シリコン光電変換層、そして厚さ約15nmのp型微結晶Si層が順次積層された。他方、上段光電変換ユニットは、比較例1における光電変換ユニットと同じ条件で形成された。
【0197】
(比較例3)
比較例3による集積型薄膜光電変換装置は図10の工程によって作製された。図10の工程は、図1の工程に比べて図10(b2)の工程が追加されたものであり、その他は図1と同じ工程を踏んでいる。よって本比較例3は、実施例2に比べて、下記の点(1)(2)のみが異なっていた。
(1)レーザ光吸収層3として不純物添加無しのa−Si層が積層された。このレーザ光吸収層の導電率は10−7S/cmであった。
(2)各光電変換領域を直列接続するためには、裏面電極層4と裏面透明導電層2とが導通していなければいけない。
【0198】
しかし本比較例3ではレーザ光吸収層の導電率が10−7S/cmと低いため、裏面電極層4と裏面透明導電層2の導通をとるために、図10(b2)の工程においてレーザ光吸収層が積層された後、YAGレーザ第2高調波(532nm)によりレーザ光吸収層3を貫通する複数の接続孔D0が作製された。この接続孔D0は図10(c)の工程で内部を裏面電極層4で満たされ、これにより裏面電極層4と裏面透明導電層2が導通することになる。
【0199】
比較例1、2、3において得られた集積型薄膜光電変換装置にリード線を接続し、実施例1の場合と同様にして光電変換特性を測定した。結果を表1に示す。
【0200】
【表1】
【0201】
[光電変換特性の対比]
表1から明らかなように、単一の光電変換ユニットを含んでいる、比較例1と実施例1を対比すると、本発明の積層型薄膜光電変換装置は、いずれの光電変換特性においても優れていることがわかる。また、タンデム型の光電変換ユニットを含む比較例2と実施例2〜19を対比すると、これらの実施例の積層型薄膜光電変換装置は、比較例2の積層型薄膜光電変換装置に比して、光電変換効率に優れていることがわかる。
【0202】
比較例3は実施例2に比べレーザ光吸収層3をノンドープとし、かわりにレーザによって接続孔を設ける工程を加えたものであるが、実施例2と光電変換性能を比較すると曲線因子の点で劣っていることがわかる。これは接続孔における接続不良等に起因する直列抵抗成分が影響していると考えられる。よって本発明による実施例2は、比較例3とくらべ、工程数においても光電変換性能においても優れていることが判る。
【0203】
実施例2〜8はレーザ光吸収層3に含まれる材料と導電率がそれぞれ異なる積層型薄膜光電変換装置の例である。これらを対比すると、実施例8と比べ、実施例2〜7における光電変換性能が優れていることがわかる。実施例8では導電不純物Bの濃度が1016cm−3と小さいため導電率が低く、その直列抵抗が光電変換性能に影響を及ぼし始めていると考えられる。よってレーザ吸収層の不純物濃度としては少なくとも1016cm−3より大きいことが望ましい。
【0204】
一方で、実施例2〜7における光電変換性能はそれぞれほぼ等しくなっている。これより、レーザ光吸収層3は一定以上の不純物濃度、導電率を有していれば、材料、多少の不純物濃度の大小、多少の不純物の大小によらずほぼ等しい性能となることが判る。
【0205】
実施例2と実施例10を比較すると、いずれの光電変換特性においてもほぼ同等の特性であることから、裏面透明導電層2に吸収されず透過するQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)でもパワー密度が十分高ければ、裏面透明導電層2を分離し、分割線溝D1を形成出来ることがわかる。
【0206】
実施例2と実施例12〜18を比較すると、実施例12から実施例18の集積型薄膜光電変換装置は、実施例2の光電変換装置と比べて、曲線因子、光電変換効率において優れている。これは、実施例2においては、第2種分割線溝D1を1種類のレーザビーム(YAGレーザの基本波)により一度に形成するのに対して、実施例6〜実施例12においては、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5とが別のレーザビームにより形成されるため、分割線溝D1周辺部の変質が軽減されたものと推測される。
【0207】
実施例12と実施例16を比較すると、いずれの光電変換特性においてもほぼ同等の特性であることから、裏面透明導電層2に吸収されず透過するQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)でもパワー密度が十分高ければ、裏面透明導電層2を分離し、分割線溝D1を形成出来ることがわかる。
【0208】
実施例2と、実施例19を比較すると、光電変換セルにp型層側から光が入射する構造を有している実施例2の集積型薄膜光電変換装置は、光電変換セルにn型層側から光が入射する構造を有している実施例19の集積型薄膜光電変換装置と比べて、各光電変換性能に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0209】
1 透光性基板
2 裏面透明導電層
3 レーザ光吸収層
4 裏面電極層
5 半導体光電変換ユニット
6 受光面透明電極層
7 グリッド金属電極配線
LB1〜LB5 レーザビーム
D1〜D5 分割線溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の薄膜光電変換ユニットが複数のセルに分割されかつそれらのセルが電気的に直列接続された集積型薄膜光電変換装置とその製造方法の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、薄膜光電変換装置の典型例である薄膜太陽電池も多様化し、従来の非晶質薄膜太陽電池の他に結晶質薄膜太陽電池も開発され、これらを積層したハイブリッド型(積層型の一種)薄膜太陽電池も実用化されている。
【0003】
薄膜太陽電池は、一般に少なくとも表面が絶縁性の基板上に順に積層された透明導電膜、1以上の半導体薄膜光電変換ユニット、および裏面電極を含んでいる。そして、1つの光電変換ユニットは、p型層とn型層でサンドイッチされたi型層を含んでいる。
【0004】
光電変換ユニットの厚さの大部分は実質的に真性の半導体層であるi型層によって占められ、光電変換作用は主としてこのi型層内で生じる。したがって、光電変換層であるi型層の膜厚は光吸収のためには厚いほうが好ましいが、必要以上に厚くすればその堆積のためのコストと時間が増大することになる。
【0005】
他方、p型やn型の導電型層は光電変換ユニット内に拡散電位を生じさせる役目を果たし、この拡散電位の大きさによって薄膜太陽電池の重要な特性の1つである開放端電圧の値が左右される。しかし、これらの導電型層は光電変換には寄与しない不活性な層であり、導電型層にドープされた不純物によって吸収される光は発電に寄与せず損失となる。したがって、p型とn型の導電型層の膜厚は、十分な拡散電位を生じさせる範囲内で可能な限り薄くすることが好ましい。
【0006】
上述のような光電変換ユニットは、それに含まれるp型とn型の導電型層が非晶質か結晶質かに関わらず、i型の光電変換層が非晶質なものは非晶質光電変換ユニットと称され、i型層が結晶質のものは結晶質光電変換ユニットと称される。非晶質光電変換ユニットを含む薄膜太陽電池の一例として、i型光電変換層に非晶質シリコンを用いた非晶質薄膜シリコン太陽電池が挙げられる。また、結晶質光電変換ユニットを含む薄膜太陽電池の一例として、i型光電変換層に微結晶シリコンや多結晶シリコンを用いた結晶質薄膜シリコン太陽電池が挙げられる。
【0007】
一般に、光電変換層に用いられている半導体においては、光の波長が長くなるに従って光吸収係数が小さくなる。特に、光電変換材料が薄膜である場合には、吸収係数の小さな波長領域において十分な光吸収が生じないために、光電変換量が光電変換層の膜厚によって制限されることになる。そこで、光電変換装置内に入射した光が外部に逃げにくい光散乱構造を形成することによって、実質的な光路長を長くして十分な吸収を生じさせ、これによって大きな光電流を発生させる工夫がなされている。例えば、光散乱透過を生じさせるために、表面凹凸形状を含むテクスチャ透明導電膜が用いられている。
【0008】
ところで、大面積の薄膜光電変換装置は、通常では集積型薄膜光電変換モジュールとして形成される。すなわち、集積型薄膜光電変換モジュールは、支持基板上で小面積に区切られた複数の光電変換セルを電気的に直列接続した構造を有している。それぞれの光電変換セルは、一般的には、第1の電極層、1以上の半導体薄膜光電変換ユニット、および第2の電極層の形成とレーザビームによるパターニングとを順次行うことによって形成されている。
【0009】
すなわち、集積型薄膜光電変換装置においては、レーザビームによる加工技術がその光電変換装置の生産性や光電変換性能に重要な影響を及ぼす。一般に、このレーザビーム加工技術において、レーザ光を吸収しやすい半導体層を複数の領域に分割加工することは容易である。他方、レーザ光を反射する金属層やレーザ光を透過しやすい裏面透明導電層においては、それらを単独で分割加工することは容易ではない。
【0010】
図4は、特許文献1に開示された集積型薄膜光電変換装置の作製方法を模式的な断面図で図解している。なお、本願の図面において、同一の参照符号は同一部分または相当部分を示している。また、本願の図面においては、長さ、幅、厚さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。特に厚さ関係が、適宜に変更されて描かれている。
【0011】
図4(a)〜(c)において、まず透明ガラス基板1上に透明な酸化錫層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4が順次積層される。透明酸化錫層2は、熱CVD法によって堆積され得る。そのような透明酸化錫層2は微細な凹凸を含む表面テクスチャ構造を有し、その表面テクスチャ構造を裏面電極層4の表面に伝えてその表面での光乱反射によって半導体光電変換ユニット内での光吸収効率を高めるために設けられる。レーザ光吸収層3としては、非晶質シリコン(a−Si)層がプラズマCVD法によって堆積される。裏面電極層4としては、マグネトロンスパッタリング装置を用いてAg層が堆積される。
【0012】
図4(d)において、スパッタリング反応室から取出された基板はX−Yテーブル上にセットされ、透明ガラス基板1側から入射されるレーザビームLB1xを用いて複数の分割線溝D1xを形成することによって、透明酸化錫層2、レーザ光吸収層3、および金属の裏面電極層4の積層が複数の領域に分割される。レーザビームLB1xは透明ガラス基板1および透明酸化錫層2を通してレーザ光吸収層3によって効率的に吸収されて発熱を生じるので、透明酸化錫層2および裏面電極層4を比較的容易に同時に分割加工することができる。このように形成された複数の分割線溝D1xは互いに平行であって、図面の紙面に直交する方向に延びている。
【0013】
図4(e)において、分割された裏面電極層4および分割線溝D1xを覆うように、半導体光電変換ユニット5がプラズマCVD装置を用いて堆積される。
【0014】
図4(f)において、プラズマCVD反応室から取出された基板はX−Yテーブル上にセットされ、半導体光電変換ユニット5側から入射されるYAGレーザビームLB2xを用いて複数の分割線溝D2xを形成することによって、その半導体光電変換ユニット5が複数の光電変換領域に分割される。これらの分割線溝D2xの各々は、分割線溝D1xに近接しかつそれに平行である。
【0015】
図4(g)において、分割された半導体光電変換ユニット5と分割線溝D2xを覆うように、受光面透明電極層6が堆積される。この受光面透明電極層6は、電子ビーム蒸着装置内でITO(インジウム錫酸化物)層を堆積することによって形成され得る。
【0016】
最後に、図4(h)において、電子ビーム蒸着装置から取出された基板はX−Yテーブル上にセットされ、受光面透明電極層6側から入射されるYAGレーザビームLB3xを用いて複数の分割線溝D3xを形成することによって、その受光面透明電極層6が複数の領域に分割される。この場合、受光面電極層6は透明であるが、下層にレーザ光を吸収しやすい半導体光電変換ユニット5が存在しているので、その半導体光電変換ユニット5からの発熱をも利用して、その受光面透明電極層6を比較的容易に分割加工することができる。こうして、集積型薄膜光電変換装置が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−79522号公報
【特許文献2】特開2002−203976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述の特許文献1によれば、図4(d)におけるように、レーザビームLB1xは透明ガラス基板1および透明酸化錫層2を通してレーザ光吸収層3によって効率的に吸収されて発熱を生じるので、透明酸化錫層2と金属の裏面電極層4を比較的容易に同時に分割して分割線溝D1xを形成することができる。
【0019】
また、図4(f)におけるように、レーザビームLB2xは半導体光電変換ユニット5側から入射されるので、半導体光電変換ユニット5を比較的容易に分割して分割線溝D2xを形成することができる。しかし、分割線溝D2x内において、半導体光電変換ユニット5からの発熱や裏面電極層4に到達したレーザビームLB2xによって、裏面電極層4がダメージを受けることがあり得る。その場合、完成後の薄膜光電変換装置において、シャント抵抗の低下やシリーズ抵抗の増大を生じて光電変換性能の低下を来たすこともある。
【0020】
さらに、図4(h)におけるように、レーザビームLB3xは受光面透明電極層6を通して半導体光電変換ユニット5に照射されるので、その半導体光電変換ユニット5からの発熱をも利用して、受光面透明電極層6を比較的容易に分割して分割線溝D3xを形成することができる。しかし、分割線溝D3xの深さを半導体光電変換ユニット5の途中でとどめることは困難である。したがって、分割線溝D2xの場合に類似して、分割線溝D3x内においても、半導体光電変換ユニット5からの発熱や裏面電極層4に到達したレーザビームLB3xによって、裏面電極層4がダメージを受けることがあり得る。そして、完成後の薄膜光電変換装置において、シャント抵抗の低下やシリーズ抵抗の増大を生じて光電変換性能の低下を来たすこともある。
【0021】
上述のような特許文献1における問題を回避するためには、レーザパワーの安定性や高い照射位置精度などが求められ、高精度のレーザ発振機や複雑な光学系が必要となる。他方、このようなレーザ加工における困難性に鑑みて、レーザパターニングの代わりに化学エッチングやリフトオフ法などが用いられる場合もある。しかし、その場合には、工程の複雑化や分割線溝の精度の低下が懸念される。そして、これらのいずれの場合においても、集積型薄膜光電変換装置の製造コストの上昇をも招くことになる。
【0022】
上述のような先行技術における状況に鑑み、本発明は、全ての分割線溝をレーザ加工によって高い生産性で行うことが可能で、かつ光電変換特性、および信頼性に優れた積層型薄膜光電変換装置を低コストで提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による集積型薄膜光電変換装置は、透光性基板1上に順次積層された裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を含み、これらの層の各々は平行に設けられた複数の各分割線溝によって複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、
かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置である。
【0024】
本発明の光電変換装置において、レーザ光吸収層3は裏面透明導電層2と裏面電極層4を電気的に接続できる程度の導電性を有している。半導体光電変換ユニット5はレーザ光吸収層3、裏面電極層4、および半導体光電変換ユニット5を貫通する複数の第3種分割線溝D2によって複数の短冊状光電変換領域に分割されている。受光面透明電極層6はレーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を貫通する複数の第4種分割線溝D3によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されている。そして、互いに隣接する光電変換セル間において、一方のセルの裏面電極領域はレーザ光吸収層3、裏面透明導電層2、および第3種分割線溝D2を介して他方のセルの受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されている。
【0025】
なお、本発明の光電変換装置において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5を貫通する複数の第3種接続孔(D20)が存在している態様を含む。第3種接続孔(D20)が存在している態様の場合、図面や明細書本文等で説明しているD2は、分割線溝ではなくて、接続孔あるいは接続孔の集合であると説明した方が適切な場合が有る。その場合、第3種接続孔(D20)は複数存在しさえすれば良く、隣接する第3種接続孔同士が透光性基板の主面に対して平行な方向において繋がって形成される実質的な分割線溝に類似したものであってもよい。接続孔D20(または、場合によっては分割線溝D2も)については、また、途切れた複数の分割線溝であってもよく、また、点と線分とが交互に並ぶような、一点鎖線状に途切れた分割線溝の集合などであってもよい。すなわち、当業者が想到可能なあらゆる変形を含む。
【0026】
本発明のレーザ光吸収層(3)は、導電性を有する。さらに具体的には、レーザ光吸収層(3)は、裏面透明導電層(2)と裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有する。
【0027】
本発明においては、レーザ光吸収層(3)が導電性を持っているため、裏面電極層(4)と裏面透明導電層(2)の導通を取るために、新たにレーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いという、従来に比べて、格段に顕著な効果が有る。レーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いということは、工程が1種類削減されることであり、これは、量産時には莫大なメリットととなる。
【0028】
レーザ光吸収層3の一態様としては、導電型決定不純物を含み、かつ非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、および非晶質ゲルマニウムからなる群から選択される層を1以上含む層とすることで実現できる。このレーザ光吸収層3は導電性を持っているため、裏面電極層4と裏面透明導電層2の導通を取るために、新たにレーザ光吸収層3を貫通した孔等を形成する必要はない。
【0029】
また、レーザ光吸収層(3)が導電型決定不純物として、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、およびTi(チタン)からなる群から選択される1以上を含むことが望ましい。特に、BまたはPが、それぞれ原料ガスとしてB2H6、PH3を用いてプラズマCVD法でレーザ光吸収層を容易に形成できるので特に望ましい。
【0030】
レーザ光吸収層(3)が、SIMSによる元素の定量で、導電型決定不純物としてBを1016〜1021cm−3もしくはPを1016〜1021cm−3含んでいることが望ましい。導電型決定不純物濃度が1016cm−3以上だとレーザ光吸収層の抵抗が低くなりレーザ光吸収層の断面方向に十分電流を流すことができる。また導電型決定不純物濃度が1021cm−3以下にすると、不純物による欠陥の発生が許容できる範囲に抑制されて、レーザ光吸収層に十分電流を流すことができる。
【0031】
レーザ光吸収層(3)の導電率が102〜10−6S/cmであることが望ましい。導電率が10−6S/cm以上の場合、レーザ光吸収層の断面方向に十分電流を流すことができる。また、導電率が102S/cm以下の場合、過剰な導電型決定不純物をレーザ光吸収層に含む必要がなく、欠陥を抑制してレーザ光吸収層に十分電流を流すことができる。
【0032】
本発明の実施形態1においては、図1に示すように、裏面電極層4は裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通する複数の第2種分割線溝D1によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されている。
【0033】
一方、本発明の実施形態2においては、図3に示すように、裏面電極層4は、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通する複数の第6種分割線溝D5によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されている。そして、裏面透明導電層2は裏面透明導電層2を貫通する複数の第5種分割線溝D4によって複数の短冊状裏面透明導電領域に分割されている。すなわち、前記実施形態1においては、第2種分割線溝D1が裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通するのに対して、本発明の実施形態2は、第2種分割線溝D1に代えて、裏面透明導電層2を貫通する第5種分割線溝D4と、裏面透明導電層2を貫通せずにレーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通する第6種分割線溝D5を有している。
【0034】
本発明の実施形態2においては、複数の光電変換セルが電気的に直列接続される観点から、前記の各種分割線溝、接続孔は、第6種分割線溝D5、第5種分割線溝D4、第3種分割線溝(あるいは接続孔)D2、第4種分割線溝D3、の順、若しくは、図3に示すように、第5種分割線溝D4、第6種分割線溝D5、第3種分割線溝(あるいは接続孔)D2、第4種分割線溝D3の順に並んでいるものが挙げられる。
【0035】
また、図5〜11に示すように、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5とが接続しており、これに第3種分割線溝(あるいは接続孔)D2、第4種分割線溝D3の順に並んでいるものも、本発明の実施形態2に含まれる。このように、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続された場合、これらの分割線溝は実施形態1における第2種分割線溝D1と等価なものとなる。一方で、実施形態1においては、第2種分割線溝D1が、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通するように形成されるのに対して、実施形態2においては、裏面透明導電層2を貫通する第5種分割線溝D4と、レーザ光吸収層3および裏面電極層4を貫通する第6種分割線溝D5とが別に形成される。そのため、実施形態2においては、分割線溝D4、D5周辺部の加工断面が変質する問題が抑制され、あるいはその変質に起因して該分割線溝周辺部の膜が盛り上がる等の問題が抑制され、光電変換装置の曲線因子(Fill Factor)を高く保つことが可能となる。このような実施形態の構成および製造例については、後の実施例において、より詳細に説明する。
【0036】
なお、本発明による集積型薄膜光電変換装置は受光面透明電極層6上にグリッド金属電極配線7を付加的に含むこともでき、その場合には第4種分割線溝D3はグリッド金属電極配線7をも貫通している。
【0037】
本発明による集積型薄膜光電変換装置を製造する方法においては、分割線溝のすべてが透光性基板1側からレーザビームを照射することによって形成されることが好ましい。このように一方向からレーザビームを照射することで、異なるレーザ加工の間で基板の表裏を反転させる必要がなくなり、基板反転のための装置と作業が不要となることに加えて、位置合わせを容易にし、加工精度の向上にも寄与することができる。
【0038】
また、好ましくは、分割線溝の形成において、透光性基板1が、裏面透明導電層2よりも鉛直上方に位置した状態で、すべての分割線溝が形成される。このように透光性基板1が上方となるようにすると、レーザビームを上方から照射することとなり、裏面電極層等の各層を加工する際に生じた飛沫は、レーザにより光電変換装置の外部に排出されるとともに、重力によって下方に落下するために、光電変換装置に戻ってくることが抑制される。そのため、飛沫によるショート等の光電変換性能の低下が抑制される。
【0039】
また、本発明の製造方法の一実施形態においては、裏面透明導電層2を貫通しない溝、すなわち、実施形態1においては第3種、および第4種の分割線溝D2、D3、実施形態2においては第3種、第4種および第6種の分割線溝D2,D3,D5が、裏面透明導電層2を透過するレーザビームを用いて形成される。かかる実施形態の一例において、レーザ光吸収層3がシリコンおよびゲルマニウムを主要元素とする半導体からなり、これらの裏面透明導電層2を貫通しない溝は例えばYAGレーザの第2高調波のビーム(波長:532nm)を用いて形成され得る。
【0040】
また、本発明の製造方法の別の一実施形態においては、裏面透明導電層2を貫通する溝、すなわち、実施形態1においては第2種分割線溝D1、実施形態2においては第5種分割線溝D4が、裏面透明導電層2に吸収されるレーザビームを用いて形成される。かかる実施形態の一例において、裏面透明導電層2が透明導電性酸化物を含み、裏面透明導電層2を貫通する溝はYAGレーザの基本波のビーム(波長:1064nm)を用いて形成され得る。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、裏面電極層にダメージを与えることなくレーザビーム加工によって集積型薄膜光電変換装置を得ることができ、その光電変換特性を顕著に向上させることができる。また、本発明の製造方法によれば、レーザビーム加工において基板側からのビーム照射のみが行なわれるので、これによっても加工精度と光電変換特性の改善された集積型薄膜光電変換装置を高い生産性と低いコストで得ることができる。
【0042】
また、互いに隣接する各光電変換セルが電気的に直列接続されるための手段として一般的には、レーザ吸収層にレーザ加工を施して接続孔を作り、裏面電極領域と裏面透明導電層を電気的に接続する手法が考えられる。しかし本発明ではレーザ吸収層に導電性不純物を含有させ導電性を持たせることで、レーザ加工の必要無く、裏面電極領域と裏面透明導電層を電気的に接続することが可能である。よって本発明では接続孔レーザ加工による膜の変質や、接続孔の接触不良による光電変換性能における曲線因子の低下などの問題が少ない。すなわち、本発明ではより少ない製造工程で、光電変換装置の高い集積型薄膜光電変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態1による積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態1による積層型薄膜光電変換装置の一例を示す模式的斜視図である。
【図3】本発明の実施形態2による積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図4】従来の積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図5】実施例6における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図6】実施例7における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図7】実施例8における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図8】実施例9における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図9】実施例12における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図10】比較例3における積層型薄膜光電変換装置の製造工程を説明するための模式的断面図である。
【図11】本発明の実施形態1による積層型薄膜光電変換装置における、分割線溝と複数の第1種接続孔D0との配置状況の一例を示す、概念図である。
【図12】図11において、第3種分割線溝(D2)に代えて第3種接続孔(D2)を備える場合の、概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の第1は、
「透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置であって、
前記レーザ光吸収層(3)は、前記裏面透明導電層(2)と前記裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有し、
前記裏面電極層(4)は、前記裏面透明導電層(2)、前記レーザ光吸収層(3)、および前記裏面電極層(4)を貫通する複数の第2種分割線溝(D1)によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されており、
前記半導体光電変換層(5)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、および前記半導体光電変換層(5)を貫通しかつ前記第2種分割線溝(D1)に平行な複数の第3種分割線溝(D2)によって複数の短冊状光電変換領域に分割されており、
前記第3種分割線溝(D2)は内部を前記受光面透明電極層(6)で満たされ、これにより前記裏面透明導電層(2)と前記受光面透明電極層(6)が電気的に接続されており、
前記受光面透明電極層(6)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、前記半導体光電変換ユニット(5)および前記受光面透明電極層(6)を貫通しかつ前記第2種分割線溝(D1)に平行な複数の第4種分割線溝(D3)によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されており、
各種分割線溝は、第2種分割線溝(D1)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
互いに隣接する前記光電変換セル間において、一方のセルの前記裏面電極領域は前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面透明導電層(2)、および前記第3種分割線溝(D2)を介して他方のセルの前記受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されていることを特徴とする集積型薄膜光電変換装置」である。
【0045】
なお、「各種分割線溝は、第2種分割線溝(D1)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
」とは
D1、D2、D3、D1、D2、D3、D1、D2、D3・・・の様な配置をいう。後述するようにD2が接続孔の場合は、「各種分割線溝は」を「各種分割線溝および接続孔は」と読み替え、また、「第3種分割線溝(D2)」を「第3種接続孔(D2)」と読み替える。
【0046】
本発明では、この配置を主として含めば良く、直列接続の末端部分においてどの溝が存在するか、は問わない。すなわち、直列接続の直列方向の末端部分においては、D3、D1,D2等が配置の末端となりうる。またこれらの配置は、光電変換ユニットの発電面積をなるべく大きく取るために、D1、D2、D3が近接して存在していることが望ましい。
【0047】
本発明は、また、
「透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置であって、
前記裏面透明導電層(2)は裏面透明導電層(2)を貫通する複数の第5種分割線溝(D4)によって複数の短冊状透明導電領域に分割されており、
前記レーザ光吸収層(3)は、前記裏面透明導電層(2)と前記裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有し、
前記裏面電極層(4)は、前記レーザ光吸収層(3)、および前記裏面電極層(4)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に平行な複数の第6種分割線溝(D5)によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されており、
前記半導体光電変換ユニット(5)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、および前記半導体光電変換ユニット(5)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に略平行な位置に配置される複数の第3種分割線溝(D2)によって複数の短冊状に類似した光電変換領域に分割されており、
前記第3種分割線溝(D2)は内部を前記受光面透明電極層(6)で満たされ、これにより前記裏面透明導電層(2)と前記受光面透明電極層(6)が電気的に接続されており、
前記受光面透明電極層(6)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、前記半導体光電変換ユニット(5)、および前記受光面透明電極層(6)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に平行な複数の第4種分割線溝(D3)によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されており、
各種分割線溝は、第5種分割線溝(D4)、第6種分割線溝(D5)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順、もしくは第6種分割線溝(D5)、第5種分割線溝(D4)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
互いに隣接する前記光電変換セル間において、一方のセルの前記裏面電極領域は前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面透明導電層(2)、および前記第3種分割線溝(D2)を介して他方のセルの前記受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されていることを特徴とする集積型薄膜光電変換装置」である。
【0048】
なお、「各種分割線溝は、第5種分割線溝(D4)、第6種分割線溝(D5)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、」とは、D4、D5、D2、D3、D4、D5、D2、D3、D4、D5、D2、D3・・・の様な配置をいう。後述するようにD2が接続孔の場合は、「各種分割線溝は」を「各種分割線溝および接続孔は」と読み替え、また、「第3種分割線溝(D2)」を「第3種接続孔(D2)」と読み替える。
【0049】
本発明では、この配置を主として含めば良く、直列接続の末端部分においてどの溝が存在するか、は問わない。すなわち、直列接続の直列方向の末端部分においては、D3、D4(あるいはD5),D2等が配置の末端となりうる。またこれらの配置は、光電変換ユニットの発電面積をなるべく大きく取るために、D5、D2、D3が近接して存在していることが望ましい。また、裏面電極層4と裏面透明導電層2の接続におけるレーザ吸収層3での抵抗損失、もしくはリーク電流を小さくするために、D4、D5が近接もしくは重なって存在していることが望ましい。
【0050】
なお、「各種分割線溝は、」「もしくは第6種分割線溝(D5)、第5種分割線溝(D4)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、」とは、D5、D4、D2、D3、D5、D4、D2、D3、D5、D4、D2、D3・・・の様な配置をいう。後述するようにD2が接続孔の場合は、「各種分割線溝は」を「各種分割線溝および接続孔は」と読み替え、また、「第3種分割線溝(D2)」を「第3種接続孔(D2)」と読み替える。
【0051】
本発明では、この配置を主として含めば良く、直列接続の末端部分においてどの溝が存在するか、は問わない。すなわち、直列接続の直列方向の末端部分においては、D3、D4(あるいはD5),D2等が配置の末端となりうる。またこれらの配置は、光電変換ユニットの発電面積をなるべく大きく取るために、D5、D2、D3が近接して存在していることが望ましい。また、裏面電極層4と裏面透明導電層2の接続におけるレーザ吸収層3での抵抗損失、もしくはリーク電流を小さくするために、D4、D5が近接、もしくは重なって存在していることが望ましい。
【0052】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)が導電型決定不純物を含み、かつ、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、および非晶質ゲルマニウムからなる群から選択される層を1以上含む、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0053】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)が含む導電型決定不純物が、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、およびTi(チタン)からなる群から選択される1以上を含む、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0054】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)が、SIMSによる元素の定量で、導電型不純物としてホウ素原子(B)を1016〜1021cm−3もしくはリン原子(P)を1016〜1021cm−3含んでいる前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0055】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)の導電率が102〜10−6S/cmである、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0056】
本発明は、また、
「前記第3種分割線溝(D2)に代えて第3種接続孔(D2)を備えて、当該第3種接続孔(D2)の基板に鉛直な方向から見た形状が、円、楕円、三角形、四角形、多角形、不定形、1以上の溝形状、交差する複数の溝形状、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上である、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0057】
なお、第3種接続孔D2は、複数存在しさえすれば良く、隣接する第3種接続孔同士が透光性基板の主面に対して平行な方向において繋がって形成される実質的な分割線溝に近いものであってもよい。レーザ照射等で、一度に作製できるという観点では、第3種接続孔D2は、隣接する第3種接続孔同士が透光性基板の主面に対して平行な方向において繋がって形成される実質的な分割線溝であることが好ましい。
【0058】
本発明は、また、
「前記第5種分割線溝(D4)と前記第6種分割線溝(D5)とが接続しており、
第6種分割線溝(D5)は第5種分割線溝(D4)よりも溝の幅が狭くかつ第5種分割線溝(D4)の内側に形成されているか、
または、
第5種分割線溝(D4)は第6種分割線溝(D5)よりも溝の幅が狭くかつ、第6種分割線溝(D5)の内側に形成されている
ことを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0059】
本発明は、また、
「前記受光面透明電極層(6)上にグリッド金属電極配線(7)をさらに含み、前記第4種分割線溝(D3)は前記グリッド金属電極配線(7)をも貫通していることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0060】
本発明は、また、
「前記の集積型薄膜光電変換装置を製造するための方法であって、
前記分割線溝および接続孔のすべてが前記透光性基板側からレーザビームを照射することによって形成されることを特徴とする、集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0061】
本発明は、また、
「前記透光性基板(1)が、前記裏面透明導電層(2)よりも鉛直上方に位置した状態で、すべての分割線溝および接続孔が形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0062】
本発明は、また、
「前記第2種分割線溝(D1)が、波長およびパワー密度の少なくともいずれか一方が異なる2種類のレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0063】
本発明は、また、
「前記第5種分割線溝(D4)が、前記第6種分割線溝(D5)を形成するレーザビームとは、波長およびパワー密度の少なくともいずれか一方が異なるレーザビームにより形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0064】
本発明は、また、
「前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝が、裏面透明導電層(2)を透過するレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0065】
本発明は、また、
「前記レーザ光吸収層(3)がシリコンまたはゲルマニウムを主要元素とする半導体からなり、かつ、前記裏面透明導電層(2)を透過するレーザビームがYAGレーザの第2高調波のビームであることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0066】
本発明は、また、
「前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝が、裏面透明導電層(2)に吸収されるレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0067】
本発明は、また、
「前記裏面透明導電層(6)は透明導電性酸化物を含み、前記第2種分割線溝はYAGレーザの基本波のビームを用いて形成されることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0068】
本発明は、また、
「前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝と、前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝とが、同一波長のレーザビームを用いて形成され、前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝を形成するためのレーザビームは、前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝を形成するためのレーザビームよりもパワー密度が高いことを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置の製造方法」である。
【0069】
本発明は、また、
「前記半導体光電変換ユニット(5)が少なくとも1以上の結晶質シリコン系半導体光電変換ユニットを含み、その結晶質シリコン系半導体光電変換ユニットはその膜面に平行な(220)の優先結晶配向面を有しており、θ−2θ法によるX線回折測定において2θ=47.4°付近に現れる(220)回折ピークと2θ=28.5°付近に現れる(111)回折ピークの強度比が、(220)回折ピーク強度/(111)回折ピーク強度比=2.0以上である、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。この構成によって、光電変換特性の優れた集積型薄膜光電変換装置が得られる。
【0070】
本発明は、また、
「前記裏面電極層(4)が凹凸構造を有しており、半導体光電変換ユニット(5)を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、裏面電極層(4)の凹部近傍を始点として、半導体光電変換ユニット(5)内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均して1個以下見られることを特徴とする前記の集積型薄膜光電変換装置」である。この構成によって、いわゆる結晶粒界が少ない、より高品質の、光電変換特性の優れた集積型薄膜光電変換装置が得られる。
【0071】
光閉じ込めの観点から半導体光電変換ユニット5の下層である裏面電極層4が凹凸構造を持たせることが多い。その場合、半導体光電変換ユニット5を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、半導体光電変換ユニット下層の凹部を発生源として、前記半導体光電変換ユニット5内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均1個以下であることが光電変換性能上好ましい。さらに望ましくはこの白色部が0個であると良い。
【0072】
本発明は、また、
「前記受光面透明電極層(6)上に、さらに、充填材および封止材をさらに含む、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0073】
本発明は、また、
「前記封止材にガラスが含まれていることを特徴とする、前記の集積型薄膜光電変換装置」である。
【0074】
前記に述べた集積型光電変換装置に、(具体的には、前記受光面透明電極層(6)上に、さらに、)充填材(EVA、PVB)を重ねて、表側に表面封止材(単体のガラス板などの表面封止材や、フッ化ビニル樹脂(たとえばデュポン社製テドラー)またはフッ化ビニル樹脂/Al/フッ化ビニル樹脂などからなる背面カバーフィルムなど)を設けることで太陽電池モジュールにすることができる。
【0075】
好適な一態様について、以下、より詳しく述べる。
【0076】
集積型光電変換装置のデバイス部分の両端には電極が設けられている。この電極に、例えば2mm幅の銅箔を這わせる。電極と銅箔の接合は、例えば、セラミック専用の半田(商品名:セラソルザエコ)などを好適に用いることができる。約25mm間隔ではんだ付けを行い、その半田に半田をコーティングした2mm幅の銅箔を這わせて接合する。片側をガラスよりも大きくしてリードを出す。なお、電極より大きくなった部分については2mm幅の銅箔の両側に充填材が在るようにする。具体的にはリードに沿って小さな充填材を挟み込む。次にガラスより少し大きな充填材を設けるか、あるいは、若干小さな充填材と周囲の部分にブチルゴムを設ける。具体的な例としては、特開2001−148496に記載がある。
【0077】
更に、ガラスあるいは、透明か不透明なカバーフィルムを設けて真空ラミネータに投入し封止工程を終える。真空ラミネータで、例えば150℃30分間保持することにより樹脂は硬化する。
【0078】
充填材の具体的な例としては、EVA(エチレン−酢ビ共重合体)、PVB(ポリビニルブチラール)等が一般的ではあるがこれに限定されるものでは無い。
【0079】
封止材として用いうるガラスとしては、白板ガラスを強化したもの(いわゆる強化ガラス)が好適に用いられる。封止材として用いるフィルムとしてはETFE、PFAの単膜あるいは複合膜が好適に用いられる。何れの場合においても近赤外線に対する吸収が少ないことが望ましい。封止材としては、従来使われているような、金属箔の両面を樹脂フィルムで覆った形態のサンドイッチ構造等の複合的な封止材であってもよい。
【0080】
このようにして完成したモジュールの周辺のリードの取り回しには、例えば、特開平10−303447や特開2005−347698にあるような構造を用いて、ケーブルを引き回すことが可能である。
【0081】
この様なモジュールの設置には、取付け冶具を後ろに貼る方式やフレームを取り付ける方式などを採用して、設置場所に設置する。
【0082】
以下、実施形態のいくつかについて、説明する。
【0083】
[実施形態1]
図1において、本発明の実施形態1による集積型薄膜光電変換装置の作製方法の一例が模式的な断面図で図解されている。
【0084】
まず、図1(a)において透光性基板1上に裏面透明導電層2と順次積層される。透光性基板1はセル加工に使用するレーザの波長(532nm、1064nm)に対して透明であれば良い。裏面透明導電層2は、使用するレーザの波長に対して透明で有り、かつ表面に導電性を持つものであれば良い。例えば酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなどの透明導電性酸化物(TCO)で形成することができ、酸化亜鉛であればMOCVD法で作製されたものが特に望ましい。
【0085】
図1(b)において、裏面透明導電層2を覆うようにしてレーザ光吸収層3が積層される。ここで、レーザ光吸収層3は、導電性を有する。さらに具体的には、レーザ光吸収層(3)は、裏面透明導電層(2)と裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有する。
【0086】
本発明においては、レーザ光吸収層(3)が導電性を持っているため、裏面電極層(4)と裏面透明導電層(2)の導通を取るために、新たにレーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いという、従来に比べて、格段に顕著な効果が有る。レーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いということは、レーザスクライブ工程が1種類削減されることであり、これは、量産時には莫大なメリットとなる。
【0087】
レーザ光吸収層3の一態様としては、導電型不純物を含む薄膜非単結晶のシリコンまたはゲルマニウムもしくはそれらの合金によって形成することができる。導電型不純物としては、B、P、Al、Ga、As、Sb、In、Ti等が考えられるが、B、Pが特に望ましい。不純物濃度としてはBまたはPを1016〜1021cm−3含むことが望ましく、5×1018〜5×1020cm−3含むことがさらに望ましい。またレーザ光吸収層3は102〜10−6S/cmの導電率を有することが望ましく、特に10−5S/cm以上の導電率を有することが望ましい。
【0088】
図1(c)において、レーザ光吸収層3を覆うように裏面電極層4が積層される。この裏面電極層4は、例えば銀などの金属を利用して形成することができる。また、裏面電極層4は、レーザ光吸収層3に近い側から、第一の透明導電層、金属層、および第二の透明導電層を順に含むことが好ましい。このように、透明導電層を有することで、裏面電極層4とレーザ光吸収層3および、裏面電極層4と半導体光電変換ユニット5の密着力が高まり、光電変換特性を向上し得る。裏面電極層4を形成する第一の透明導電層としては酸化亜鉛、酸化錫、チタンなどが用いられる。裏面電極層4を形成する金属層としては銀、アルミニウム、およびニッケルなどが用いられる。裏面電極層4を形成する第二の透明導電層としては、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、チタンなどが用いられるが主として酸化亜鉛を含むものが好適に用いられる。
【0089】
図1(d)において、透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB1によって複数の領域に分割される。レーザビームLB1は、透明導電層2およびレーザ光吸収層3に吸収されて発熱を生じるものが選択される。例えばYAGレーザの基本波、ファイバレーザなどが好ましい。このレーザにより生じた発熱によって裏面電極層4が比較的容易に分割されて、第2種分割線溝D1が形成され得る。こうして形成された複数の第2種分割線溝D1の各々は、互いに平行であって、図面の紙面に直交する方向に延びている。
【0090】
図1(e)において、分割された裏面電極層4および第2種分割線溝D1を覆うように、半導体光電変換ユニット5が積層される。この半導体光電変換ユニット5は、その主面に平行な半導体pn接合、もしくはpin接合(図示せず)を含んでおり、例えば薄膜非単結晶のシリコンまたはゲルマニウムもしくはそれらの合金によって形成することができる。またこの半導体光電変換ユニット5は2つ以上のpn接合を直列に接続したタンデム型も可能である。
【0091】
図1(f)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、および半導体光電変換ユニット5は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB2aによって複数の領域に分割される。このとき、レーザビームLB2aは、レーザ光吸収層3に吸収されて発熱を生じる。そして、その発熱によって、裏面電極層4と半導体光電変換ユニット5が比較的容易に分割され得る。こうして形成された複数の第3種分割線溝D2の各々は、第2種分割線溝D1に対して近接しかつ平行に延びている。
【0092】
図1(g)において、分割された半導体光電変換ユニット5および第3種分割線溝D2を覆うように、受光面透明電極層6が堆積される。受光面透明電極層6には酸化亜鉛、酸化インジウム錫(ITO)などが用いられる。受光面透明電極層6の膜厚は50nm〜100nmの範囲が好ましいが、反射防止の点から600nm〜800nmが特に好ましい。酸化亜鉛を用いる場合はスパッタ法、MOCVD法などによる製膜が考えられるが、MOCVD法により製膜された酸化亜鉛光閉じ込めの点で好ましく、その膜厚は500nm〜3000nmが好ましく、さらに望ましくは1500nm〜2500nmが好適とされる。
【0093】
また本発明における集積型半導体光電変換装置は、複数のセルが集積されているため、非集積の半導体光電変換装置と比べて1セルあたりの表面積が非常に小さい。このため本発明では、集電用にグリッド電極を作製しなくても、受光面透明電極層6のみで電気抵抗の影響をほとんど受けずに集電でき、高い光電変換性能を有する半導体光電変換装置が作製可能である。
【0094】
最後に、図1(h)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB3aによって複数の領域に分割される。このとき、レーザビームLB3aは、レーザ光吸収層3に吸収され発熱を生じる。そして、その発熱によって、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6が比較的容易に分割され得る。こうして形成された複数の第4種分割線溝D3の各々は、第3種分割線溝D2に対して近接しかつ平行に延びている。
【0095】
以上のようにして、1つの透光性基板1上に、複数の細長い短冊状の薄膜光電変換セルが形成される。1つのセルの裏面電極層4はレーザ光吸収層3を介して透明導電層2に接続されており、また受光面透明電極層6は第3種分割線溝D2を介して隣接するセルの透明導電層2に接続されている。すなわち、隣接する短冊状のセルは、互いに電気的に直列に接続されている。なお、図1(h)においては図面の簡略化のために1つの基板上に限られた数の光電変換セルのみが示されているが、通常はさらに多くの光電変換セルが形成される。また、図面の明瞭化のために、各層の厚さが適宜にかつ顕著に拡大されて示されていることに留意されたい。
【0096】
上述のように、図1に示された集積型薄膜光電変換装置においては、レーザ光吸収層3を介して透明導電層2と裏面電極層4とが電気的に接続され得る。このことによって、半導体光電変換ユニット5を分割するためのレーザビームLB2aおよび受光面透明電極層6を分割するためのレーザビームLB3aを透光性基板1側から入射させることが可能となる。その結果、本発明の実施形態1においては、先行技術による図4(d)におけるような分割線溝D2x内で裏面電極層4へのダメージを回避でき、図4(f)におけるように分割線溝D3xの深さを半導体光電変換ユニット5の途中までに設定する必要もなくかつ分割線溝D3xに沿って裏面電極層4にダメージを与えることもない。
また、半導体光電変換ユニット5の下層に凹凸構造をつけることが光電変換性能を高める上で有効であるが、図1に示された集積型薄膜光電変換装置においては、透光性基板1、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4の4層で様々な凹凸構造を作り出すことができ、光閉じ込めを考える上で有利である。例えば透光性基板1は化学的エッチングによる凹凸、裏面透明導電層2は導電性酸化物成長の凹凸、レーザ光吸収層のエッチングによる凹凸、裏面電極層4は金属層成長の凹凸などが考えられ、これらを組み合わせて最適な光閉じ込めを作り出すことが可能となる。
【0097】
また、本発明の実施形態1においては、利用されるすべてのレーザビームLB1、LB2a、LB3aを透光性基板1側から入射させることができるので、異なるレーザ加工の間で基板の表裏を反転させる必要がない。そして、基板反転のための装置と作業が不要であることは、特に大面積の基板上に集積型薄膜光電変換装置を作製する場合に、生産性の改善とコスト低減に寄与し得る。さらに、異なるレーザ加工の間で基板を反転させる必要がないことは、異なるレーザ加工の間における位置合わせを容易にし、加工精度の向上にも寄与することができる。
【0098】
特に大面積の光電変換装置の作製においては、基板の表裏を反転させるために規模の大きい装置を必要とする上に、高精度の位置合わせが困難であることから、裏表を反転させる必要がない本願発明の構成を適用することの利点が大きい。かかる観点から、本発明の光電変換装置は大面積であることが好ましい。具体的には、基板サイズは910mm×455mm(0.41m2)以上、好ましくは、0.5m2以上、より好ましくは1000mm×1000mm(1.0m2)以上、さらに好ましくは1000mm×1300mm(1.3m2)以上、あるいは1000mm×1400mm(1.4m2)以上、特に好ましくは1200mm×1200mm(1.44m2)以上である。適用し得る基板サイズに上限は無く、例えば2000mm×2000mm(4.0m2)以上の基板に本発明の構成を適用することも可能である。
【0099】
また、図1(a)〜(h)においては、集積型薄膜光電変換装置の製造工程の理解を容易とする観点から、透光性基板1が透明導電層2よりも下方となるように図示したが、本発明においては、レーザビームの照射を、透光性基板1が、透明導電層2よりも鉛直上方に位置する状態で分割線溝の形成を行うことが好ましい。レーザビームの照射により分割線溝を形成する際に、裏面電極層等の各層の加工により生じた飛沫は、レーザにより光電変換装置の外部に排出されるが、透光性基板1側を上方として、上方からレーザビームを照射することによって、飛沫は重力によって下方に落下し、光電変換装置内に戻ってくることが抑制される。そのため、加工時の飛沫に起因するショート等の光電変換性能の低下が抑制される。
【0100】
本発明の実施形態1の一応用例によれば、図2の模式的斜視図に示されているような集積型薄膜光電変換装置を作製することも可能である。この集積型薄膜光電変換装置の作製においては、受光面透明電極層6上にグリッド金属電極配線7を形成した後に、透光性基板1側からレーザビームLB3aを入射させることによって第4種分割線溝D3を形成し、これによってグリッド金属電極配線7がセルごとに分割される。図2の集積型薄膜光電変換装置においては、比較的抵抗率の高い受光面透明電極層6からグリッド金属電極配線7に電荷を集電して効率的に輸送することができるので、直列抵抗成分の低減が可能となり、各セルの幅を広くすることも可能となる。そして、各セルの幅を広くすることは、分割線溝D1、D2、D3の本数を低減させることになり、レーザ加工が簡略化され得る。
【0101】
以上のように、本発明の実施形態1によれば、光電変換特性の優れた積層型薄膜光電変換装置が、高い加工精度、高い生産効率、および低いコストで提供され得る。
【0102】
[実施形態2]
図3において、本発明の実施形態2による集積型薄膜光電変換装置の作製方法が模式的な断面図で図解されている。
【0103】
実施形態2は、実施形態1と同様に、透光性基板1上に順次積層された裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を含み、これらの層の各々は平行に設けられた複数の各分割線溝によって複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている。
そして、前記レーザ光吸収層3が導電性を有する点、半導体光電変換ユニット5がレーザ光吸収層3、裏面電極層4、および半導体光電変換ユニット5を貫通する複数の第3種分割線溝D2によって複数の短冊状光電変換領域に分割されている点、受光面透明電極層6がレーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6を貫通する複数の第4種分割線溝D3によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されている点、および、互いに隣接する光電変換セル間において、一方のセルの裏面電極領域がレーザ光吸収層3、裏面透明導電層2、および第3種分割線溝D2を介して他方のセルの裏面電極領域に電気的に接続されている点において、実施形態1と構成が共通している。
【0104】
実施形態2において、透光性基板1、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6は、実施形態1の説明において記載したのと同様のものを同様の方法により形成することができる。
【0105】
前記実施形態1においては、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通する第2種分割線溝D1によって裏面電極層4が複数の短冊状裏面電極領域に分割されているのに対して、実施形態2においては、これに代え、裏面透明導電層2を貫通する第5種分割線溝D4と、レーザ光吸収層3および前記裏面電極層4を貫通する第6種分割線溝D5を有している。そして、裏面透明導電層2は、複数の第5種分割線溝D4によって複数の短冊状裏面透明導電領域に分割されており、裏面電極層4は、複数の第6種分割線溝D5によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されている。
【0106】
図3において、本発明の実施形態2による集積型薄膜光電変換装置の作製方法の一例が模式的な断面図で図解されている。以下、図3における集積型薄膜光電変換装置の作製方法について説明する。なお、図3において、図1と同一の参照符号は前記実施形態1と同一部分または相当部分を示している。以下の説明において、前記実施形態1と重複する内容についての記載は省略されている。
【0107】
まず、図3(a)において、ガラスなどの透光性基板1上に裏面透明導電層2が積層される。その後、裏面透明導電層2は透光性基板1側から入射されるレーザビームLB4によって形成される第5種分割線溝D4により複数の領域に分割される。ここで使用されるレーザビームLB4は裏面透明導電層2に吸収されるものであり、これにより裏面透明導電層2は比較的容易に分割加工され第5種分割線溝D4が形成される。このように形成された複数の分割線溝D4は互いに平行であって、図面の紙面に直交する方向に延びている。
【0108】
図3(b)において、分割された裏面透明導電層2および第5種分割線溝D4を覆うようにレーザ光吸収層3が積層される。
【0109】
このレーザ光吸収層3は後に積層される裏面電極層4と裏面透明導電層2を導通させるのに十分な導電性を有している。
【0110】
図3(c)において分割されたレーザ光吸収層3を覆うように裏面電極層4が積層される。
【0111】
図3(d)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4は透光性基板1側から入射されるレーザビームLB5によって形成される第6種分割線溝D5により複数の領域に分割される。ここで使用されるレーザビームLB5は裏面透明導電層2に吸収されず、レーザ光吸収層3に吸収され発熱し、これによりレーザ光吸収層3、裏面電極層4は比較的容易に分割加工され第6種分割線溝D5が形成される。こうして形成された複数の分割線溝D5の各々は平行に延びている。
【0112】
図3(e)において、分割された裏面電極層4および第6種分割線溝D5を覆うように、半導体光電変換ユニット5が積層される。
【0113】
図3(f)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、および半導体光電変換ユニット5は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB2aによって複数の領域に分割される。
【0114】
図3(g)において、分割された半導体光電変換ユニット5および分割線溝D2を覆うよう
に、受光面透明電極層6が堆積される。
【0115】
最後に、図3(h)において、レーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5、および受光面透明電極層6は、透光性基板1側から入射されるレーザビームLB3aによって複数の領域に分割される。
【0116】
また、本発明の実施形態2においては、前記実施形態1と同様に、第3種分割線溝D2x内で裏面電極層4へのダメージを回避でき、かつ第4種分割線溝D3xに沿って裏面電極層4にダメージを与えることもない。
【0117】
さらに、利用されるすべてのレーザビームLB4、LB5、LB2a、LB3aを透光性基板1側から入射させることができるため、レーザビームの照射を、透光性基板1が、裏面透明導電層2よりも鉛直上方となるようにして分割線溝の形成を行うことで、加工時の飛沫によるショート等の光電変換性能の低下が抑制される。
【0118】
また、実施形態1と同様に、受光面透明電極層6上にグリッド金属電極配線7を形成した後に、透光性基板1側からレーザビームLB3aを入射させることによって第4種分割線溝D3を形成し、これによってグリッド金属電極配線7をセルごとに分割することで、比較的抵抗率の高い受光面透明電極層6からグリッド金属電極配線7に電荷を集電して効率的に輸送することができ、直列抵抗成分の低減が可能となる。
【0119】
[実施形態2A]
実施形態2の一例として、前記第5種分割線溝D4と、前記第6種分割線溝D5が接続した実施形態2Aを採用することもできる。このように、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続した場合、これらの分割線溝は実施形態1における第2種分割線溝D1と等価なものとなる。一方で、実施形態1においては、第2種分割線溝D1が、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を貫通するように形成されるのに対して、実施形態2においては、裏面透明導電層2を貫通する第5種分割線溝D4と、レーザ光吸収層3および裏面電極層4を貫通する第6種分割線溝D5とが別に形成される。そのため、実施形態2においては、分割線溝D4、D5周辺部の加工断面が変質する、もしくはその変質に起因して該分割線溝周辺部の膜が盛り上がる等の問題が抑制され、曲線因子を高く保つことが可能となる。このような実施形態の構成および製造例については、後の実施例において、より詳細に説明する。
【0120】
[全ての実施形態に共通する、レーザ光吸収層の他の態様]
本明細書中では、主に、レーザ光吸収層の素材を、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、および微結晶ゲルマニウムからなる群から選択される層を1以上含むように記載している。例えば、レーザ光吸収層の素材シリコンもしくはゲルマニウム系半導体を含む半導体であるように、記載している。レーザ光吸収層は、例えば、プラズマCVD法によって堆積されてなる非晶質シリコン(a−Si)層や、半導体のpn接合またはpin接合を含む態様などである。
【0121】
しかしながら、本発明のレーザ光吸収層の具体例としては、他に引き続く工程に耐久性が有る限りにおいては、無機物・有機物を問わないあらゆる層を適用可能である。レーザ光吸収層は、200〜250℃程度の高温に耐えうる耐熱性を有する物質・素材を主たるマトリックス材料として、公知のレーザ光吸収物質が分子結合されているか、あるいは、分散されているような、層であっても良い。また、そのマトリックス材料だけでレーザ光吸収する場合は、そのような材料も、レーザ光吸収層として適用可能である。
【0122】
マトリックス材料の耐熱性という点では、例えば、ポリイミド材料、アラミド材料等が、好ましい。他にも、有機物に対して親和性を有する無機物ともいえるシルセスキオキサン(Silsesquioxanes)類を含む材料が、レーザ光吸収層のマトリックス材料であっても良い。例えばポリイミド材料をマトリックス材料とする場合には、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を、ワニス状態で調製した後、基板上にキャストし加熱して脱水縮合反応をすることによって、ポリイミド材料を作製することもできる。
【0123】
なお、レーザ光吸収層は、本発明で主に説明したようなCVD法で作製する以外にも、真空装置を使わない他の安価な方法や簡便な方法によって作製することも、できる。すなわち、レーザ光吸収層は、印刷法、ナノインプリント法、スピンコート法、ロールコーター法、ディップ法等、公知の方法で作製することも、できる。
【0124】
すなわち、本発明のレーザ吸収層を作製するCVD法は、例示の一つである。引き続く他の工程との親和性という観点では、CVD法で作製することは、好ましい。ただし、前述の、真空装置を使わない他の安価な方法や簡便な方法の方が、より好ましい。
【0125】
レーザ光吸収層の必要特性としては、レーザ光を吸収して、レーザスクライブ等で分割可能であること、である。
【0126】
本発明の一態様としては、レーザ光吸収層の表面に、何らかのテクスチャ構造を形成しても良い。テクスチャ構造の一例としては、凹凸(concavities and convexities)や、2次元あるいは3次元的に周期的な構造を有するような構造、ある一定の表面粗さを有する構造、等が有り得るが、他にも、当業者が想到しうるあらゆる変形が可能である。
【0127】
[全ての実施形態に共通する、本願の利点]
以下に、全ての実施形態に共通する、本願の利点を述べる。
【0128】
本発明においては、レーザ光吸収層(3)が導電性を持っているため、裏面電極層(4)と裏面透明導電層(2)の導通を取るために、新たにレーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いという、従来に比べて、格段に顕著な効果が有る。レーザ光吸収層(3)を貫通した孔等を形成する必要が無いということは、工程が1種類削減されることであり、これは、量産時には莫大なメリットとなる。
【0129】
すなわち、透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置においては、光電変換セル1つに対応してレーザスクライブ工程が1つ削減されることであり、レーザスクライブ工程を1つ実施する時間が削減されることであり、製造時間の短縮につながり、量産時には莫大なメリットとなる。
【0130】
本発明の半導体光電変換ユニット5は2つ以上のpn接合を直列に接続したタンデム型も可能である。一例として微結晶シリコンpin接合と非晶質シリコンpin接合の2積層構造等が選択され得る。この構造を考えた時、微結晶シリコンpin接合製膜時の製膜温度は自由度が高く、100℃〜450℃の範囲から選択され得る。製膜温度が高まると、結晶質光電変換ユニットの光電変換層の結晶性が向上するため、有利である。また、本発明の構成によって、微結晶シリコンpin接合製膜時のパワー密度や、製膜圧力などにおいても、自由度が高くなる。
【0131】
例えば、結晶質光電変換ユニットと非晶質光電変換ユニットとの2つの光電変換ユニットを備える、タンデム型の集積型薄膜光電変換装置を製造するにあたり、従来技術においては製膜温度の自由度が少なかったが、本発明においては製膜温度について自由度が非常に高い。本発明の有利な効果を具体的に説明することによって、本発明の技術的意義を説明する。
【0132】
従来、光透過側から順に、透光性基板上に、順次積層された透明電極層と、非晶質光電変換ユニットと、結晶質光電変換ユニットと、裏面電極層とを含むような非晶質光電変換ユニット/結晶質光電変換ユニットの2段タンデム型光電変換装置(ハイブリッド型光電変換装置)を製造するためには、2つの光電変換ユニットの内、最初に非晶質光電変換ユニットを製膜する必要が有った。下地である非晶質光電変換ユニットに対して熱的ダメージを与えないようにするために、結晶質光電変換ユニットを製膜する際には、例えば200℃以下の製膜温度を選択せざるを得なかった。
【0133】
一方、本発明では、透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、結晶質光電変換ユニット、非晶質光電変換ユニット、および受光面透明電極層(6)を含み、光は、受光面透明電極層側から透過する。本発明では、2つの光電変換ユニットの内、最初に結晶質光電変換ユニットを製膜することができる。従来技術で下地となっていた非晶質光電変換ユニットに対する熱的ダメージを、本発明では、全く気にする必要が無い。すなわち、本発明では、結晶質光電変換ユニットを製膜する際に、例えば100℃〜450℃の範囲から適宜選択することが可能である。製膜温度が高まると、結晶質光電変換ユニットの光電変換層の結晶性が向上するため、有利である。また、本発明では、プラズマCVD法等で製膜する際、従来よりも製膜時のパワー密度を高くすることもできるため、製膜速度を格段に高めることができるという、従来に無い、著しい効果も有る。
【0134】
本発明の一態様である非晶質光電変換ユニットと結晶質光電変換ユニットとの2段タンデム型の光電変換装置の場合、非晶質シリコンと結晶質シリコンの光吸収係数等の関係で、非晶質光電変換ユニットの厚みは薄く、結晶質光電変換ユニットの厚みは厚い。通常、非晶質シリコン層は、300〜600nm程度であるのに対して、長波長光閉じ込め効果を必要とする結晶質シリコン層は2000〜4000nm程度の膜厚を有する。より厚みの大きい結晶質光電変換ユニットの製膜速度を格段に高めることができる本発明は、工業的な意味で、製造時間を格段に短縮できるという意味なども含めて、従来技術よりも、大量生産時の生産効率が著しく高い。
【0135】
ここまでに、非晶質光電変換ユニット/結晶質光電変換ユニットの2段タンデム型光電変換装置が説明されたが、1つ以上の非晶質光電変換ユニットおよび/または1つ以上の結晶質光電変換ユニットをさらに含む多段タンデム型光電変換装置にも本発明が適用され得ることはいうまでもない。
【0136】
また、前記の光電変換ユニットの中や、タンデム型の複数の光電変換ユニット同士の界面等には、光電変換効率を高める目的で、例えば、シリコンカーバイドや、シリコンゲルマニウムなどのシリコン系合金材料や、シリコンと酸素との非晶質合金中にシリコン結晶相を含むシリコン複合層などを、適宜、挿入可能である。
【0137】
またこの微結晶シリコンpin接合はX線回折で測定した時、(220)配向のピーク強度が(111)配向のピーク強度に対して1.5倍以上あることが好ましく、望ましくは2.5倍以上がさらに好ましい。 また、光閉じ込めの観点から半導体光電変換ユニット5の下層である裏面電極層4が凹凸構造を持つ場合、半導体光電変換ユニット5であるの一例である、前記微結晶シリコンpin接合を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、半導体光電変換ユニット下層である裏面電極層(4)の凹部を発生源として、前記微結晶シリコンpin接合内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均1個以下であることが光電変換性能上好ましい。さらに望ましくはこの白色部が0個であると良い。この白色部は、凹凸基板上に結晶が成長する時、成長した結晶同士がぶつかり合い発生した微小なクラックだと考えられ、このクラックが多数存在すると、開放電圧が低下するため、クラックができるだけ発生しないような凹凸基板、結晶質の半導体光電変換ユニットの微結晶シリコン成長条件を選択することが必要である。
【0138】
なお、前記の態様は、「前記裏面電極層(4)が凹凸構造を有しており、半導体光電変換ユニット(5)を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、裏面電極層(4)の凹部近傍を始点として、半導体光電変換ユニット(5)内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均して1個以下見られることを特徴とする前記の集積型薄膜光電変換装置」に関する。この態様は、前記の全ての実施形態でも、同様に、好ましい。
【0139】
なお、本発明の明細書中では構成要件等を、「符号の説明」欄に記載の符号を入れた形で説明している部分も有るが、本発明は、単なる例示であるこれらの符号や図面等に拘束されるものではない。すなわち、本発明は、当分野において通常の知識を有する者により、本発明の技術的思想内で、以下説明する符号等に拘束されることなく多くの変形が、可能である。
【実施例】
【0140】
上述のような本発明による実施形態に対応する具体的な例として、以下においていくつかの実施例が比較例と共に説明される。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0141】
[実施形態1に関する実施例]
(実施例1)
本発明の実施例1においては、図1に対応して集積型薄膜光電変換装置が作製された。まず、図1(a)において、透明ガラス基板1上に酸化錫の裏面透明導電層2を積層した。その裏面透明導電層2は、熱CVD法によって約800nmの厚さに堆積された。こうして堆積された裏面透明導電層2は、微細な凹凸を含む表面テクスチャ構造を有している。この表面テクスチャ構造は、後に堆積される裏面電極層4中の金属層表面に伝えられる。そして、その金属層表面における微細な表面凹凸は、光の乱反射を生じて、半導体光電変換ユニット5内の光吸収効率を高めるように作用し得る。
【0142】
図1(b)において裏面透明導電層2を覆うようにレーザ光吸収層3が堆積された。レーザ光吸収層3としては、Bが添加されたp型非晶質シリコン(p:a−Si)層がプラズマCVD法によって200nmの厚さに堆積された。このp型非晶質シリコンの導電率は10−4S/cmであった。また、レーザ吸収層3をSIMSにより元素の定量を行ったところ、導電型不純物であるB(ホウ素)が1019cm−3含まれていた。なお、レーザ光吸収層3は後の全てのレーザビーム加工を可能ならしめる厚さを有していればよく、この前提の下で適宜に選択された厚さを有し得る。
【0143】
図1(c)において、レーザ光吸収層3を覆うように裏面電極層4を堆積させた。裏面電極層4としては、スパッタリング法を用いて第一の透明電極層である厚さ90nmの酸化亜鉛層、金属層である厚さ200nmの銀層、および第二の透明電極層である厚さ90nmの酸化亜鉛層を順次積層させた。裏面電極層4に含まれる酸化亜鉛層は、レーザ光吸収層3および後に堆積される半導体光電変換ユニット5と銀層との密着強度向上および銀の反射率を高めるために好ましい。
【0144】
図1(d)において、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)の赤外レーザビームLB1を透明ガラス基板1側から照射し、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を加工して分割線溝D1を形成した。前述のように裏面透明導電層2はYAGレーザの基本波(波長1064nm)の赤外光を吸収して発熱し得るので、レーザビームLB1による裏面透明導電層2およびレーザ光吸収層3の発熱によって、それらの層および裏面電極層4を比較的容易に同時に分割加工することができる。
【0145】
このように、裏面透明導電層2およびその他の層を分割加工するためのレーザビームLB1としては、裏面透明導電層2に吸収されるものが好ましく、YAGレーザの基本波(波長1064nm)の他に、例えば、これと同じ波長のレーザ光を射出するYVO4レーザの基本波や、略同じ波長のレーザを射出し得るファイバレーザ等を用いることができる。下記の分割線溝D2、D3を形成するための、レーザビームLB2aにおいても同様である。
【0146】
図1(e)において、分割された裏面電極層4および分割線溝D1を覆うように、半導体光電変換ユニット5をプラズマCVD法により堆積した。その半導体光電変換ユニット5は、順次積層された厚さ約20nmのn型微結晶Si層、厚さ約300nmのi型a−Si:H(Hを含むa−Si)層、および厚さ約15nmのp型a−SiC:H(Hを含むa−SiC)層を含んでいる。すなわち、本実施例1における半導体光電変換ユニット5は、その主面に平行な一組のnip接合からなる単一の光電変換ユニットを含んでいる。
【0147】
図1(f)において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB2aを透明ガラス基板1側から照射して分割線溝D2を形成した。ここで使用されるレーザビームLB0は、裏面透明導電層2にダメージを与えることなくレーザ光吸収層3、裏面電極層4および半導体光電変換ユニット5を分割加工できればよい。例えばYAGレーザに関して、a−Siのレーザ光吸収層3は、第2高調波(波長532nm)の光をよく吸収し得る。他方、裏面透明導電層2は、YAGレーザの基本波(波長1064nm)の赤外ビームをよく吸収する。しかし、YAGレーザの第2高調波(波長532nm)の光に関しては、裏面透明導電層2はほぼ透明であって僅かに吸収するだけである。したがって、例えばYAGレーザの第2高調波であって12kW/cm2のパワー密度と60μmの断面径を有するレーザビームLB0を照射することによって、裏面透明導電層2にダメージを与えることなくレーザ光吸収層3、裏面電極層4、半導体光電変換ユニット5のみを分割加工することができる。
【0148】
このように、裏面透明導電層2にダメージを与えることなくレーザ光吸収層3を分割加工するためのレーザビームとしては、裏面透明導電層2に対してほぼ透明で、かつ、レーザ光吸収層3に吸収されるものが好ましく、YAGレーザの第2高調波(波長532nm)の他に、例えば、これと同じ波長のレーザ光を射出するYVO4(イットリウム・バナデート)レーザの第2高調波や、略同じ波長のレーザを射出し得るファイバレーザ等を用いることができる。
【0149】
図1(g)において、分割された半導体光電変換ユニット5および分割線溝D2を覆うように、電子ビーム蒸着法によって酸化インジウムの受光面透明電極層6を約80nmの厚さに堆積した。
【0150】
図1(h)において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB3aを透明ガラス基板1から照射して分割線溝D3を形成した。波長532nmのレーザビームLB3aはレーザ光吸収層3および半導体光電変換ユニット5によって効率的に吸収されて発熱を生じるので、それらの層とともに裏面電極層4および受光面透明電極層6をも比較的容易に同時に分割加工することができる。
【0151】
本実施例1において得られた集積型薄膜光電変換装置にリード線を接続し、環境温度25℃において、ソーラーシミュレータを用いてAM1.5の光を100mW/cm2の強度で照射して光電変換特性を測定したところ、短絡電流密度が16.21mA/cm2、一セルあたりの開放端電圧が0.891V、曲線因子0.727、そして光電変換効率が10.5%であった。
【0152】
(実施例2)
本発明の実施例2による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例1に比べて、下記事項(1)と(2)のみにおいて変更されていた。
すなわち実施例2におけるレーザ光吸収層3の不純物濃度はBを1019cm−3含み、導電率は10−4S/cmであった。
【0153】
(1) 図1(a)の工程において、レーザ光吸収層3の厚さが200nmではなくて400nmの厚さに増大された。
【0154】
(2) 図1(e)の工程において、半導体光電変換ユニット5は、下段のnip接合からなる下段光電変換ユニットと上段のnip接合からなる上段光電変換ユニットを含むタンデム型に変更された。この下段光電変換ユニットとして、厚さ約20nmのn型微結晶Si層、厚さ約2μmのi型微結晶シリコン光電変換ユニット、そして厚さ約15nmのp型微結晶Si層が順次積層された。他方、上段光電変換ユニットは、実施例1における光電変換ユニットと同じ条件で形成された。
【0155】
(実施例3)
本発明の実施例3による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてPが添加されたn型非晶質シリコン(n:a−Si)層が400nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例3における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このn型非晶質シリコンは不純物としてPを1019cm−3含み、導電率は10−3S/cmであった。
【0156】
(実施例4)
本発明の実施例4による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてBが添加されたp型非晶質シリコンゲルマニウム(p:a−SiGe)層が300nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例4における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このp型非晶質シリコンゲルマニウムは不純物としてBを1019cm−3含み、導電率は10−5S/cmであった。一般的に非晶質シリコンゲルマニウムは非晶質シリコンよりも加工に使用するレーザの波長(例えば532nm、1064nm)で光吸収係数が高く、レーザ吸収層の膜厚を薄くすることが可能である。
【0157】
(実施例5)
本発明の実施例5による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてBが添加されたp型非晶質ゲルマニウム(p:a−Ge)層が300nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例5における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このp型非晶質ゲルマニウムは不純物としてBを1019cm−3含み、導電率は10−4S/cmであった。一般的に非晶質ゲルマニウムは非晶質シリコンよりもレーザの波長(nm)で光吸収係数が高く、レーザ吸収層の膜厚を薄くすることが可能である。
【0158】
(実施例6)
本発明の実施例6による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてBが添加されたp型微結晶シリコン(p:mc−Si)層が800nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例5における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このp型非晶質シリコンは不純物としてBを1019cm−3含み、導電率は10−4S/cmであった。一般的に微結晶シリコンは非晶質シリコンよりもレーザの波長(nm)で光吸収係数が小さいため、レーザ吸収層として微結晶シリコンを用いる場合は、非晶質シリコンを用いた場合と比べ、レーザ吸収層の膜厚を厚くする、もしくはレーザ加工条件を変更する必要がある。
【0159】
(実施例7)
本発明の実施例7による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3としてBが添加されたp型微結晶ゲルマニウム(p:mc−Ge)層が400nm堆積された点のみが異なっていた。すなわち、本実施例5における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。また、このp型微結晶ゲルマニウムの導電率は10−2S/cmであった。
【0160】
(実施例8)
本発明の実施例8による集積型薄膜光電変換装置も図1に図解されている工程によって作製されたが、実施例2に比べて、レーザ光吸収層3として、導電率が10−6S/cm である400nmのp型非晶質シリコン(p:a−Si)層を用いており、 レーザ光吸収層の導電率が小さい点が異なっていた。このレーザ吸収層3をSIMSにより元素の定量を行ったところ、Bが1016cm−3含まれていた。また本実施例8における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。
【0161】
(実施例9)
本発明の実施例9においては、図2に対応する集積型薄膜光電変換装置が作製された。そして、本実施例9の集積型薄膜光電変換装置の作製では、実施例2に比べて、図1(g)の工程において受光面透明電極層6上にアルミニウムのグリッド金属電極配線7が蒸着法によって付加的に形成されたことのみにおいて異なっていた。すなわち、本実施例9における半導体光電変換ユニット5も、実施例2の場合と同様のタンデム型である。
【0162】
(実施例10)
本発明の実施例10においては、図1に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、図1(d)の工程において、レーザビームLB1として、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)を用いる代わりに、パワー密度60kW/cm2のQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)を用いた点において実施例2と異なっていた。
【0163】
(実施例11)
本発明の実施例11においては、図1に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、図1(c)の工程において、裏面電極層4の第ニの透明導電層がMOCVD法にて酸化亜鉛が90nmの厚さで作製された点において、実施例2と異なっていた。
【0164】
[実施形態2Aに関する実施例]
(実施例12)
本発明の実施例12においては、図5に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、下記の点において実施例2と異なっていた。
【0165】
実施例2における図1(d)の工程に代えて、図5(d1)のように裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4に透光性基板1側から入射されるQスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4aによって分割線溝D4が形成された。さらに、図5(d2)のように分割線溝D4の上から、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4をレーザビームLB4aよりもビーム径の大きいQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB5aが照射され分割線溝D5が形成された。
【0166】
これらの工程により、第5種分割線溝D4および第6種分割線溝D5が形成され、図5(f)に示すように、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続しており、第5種分割線溝D4は、第6種分割線溝D5よりも溝の幅が狭く、かつ、第6種分割線溝D5の内側に形成されている集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0167】
(実施例13)
本発明の実施例13においては、図6に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、下記の点において実施例2と異なっていた。
【0168】
実施例2における図1(d)の工程に代えて、図6(d1)のようにレーザ光吸収層3、および裏面電極層4に透光性基板1側から入射されるQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB5bによって分割線溝D5が形成された。さらに、図6(d2)のように分割線溝D5の上から、裏面透明導電層2をレーザビームLB5bよりもビーム径が小さいQスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4bが照射され分割線溝D4が形成された。
【0169】
これらの工程により、第5種分割線溝D4および第6種分割線溝D5が形成され、図6(f)に示すように第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続しており、第5種分割線溝D4は、第6種分割線溝D5よりも溝の幅が狭く、かつ、第6種分割線溝D5の内側に形成されている集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0170】
(実施例14)
本発明の実施例14においては、図7に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、実施例2に比べて、下記の(1)、(2)において異なっていた。
【0171】
(1) 実施例2における図1(a)の工程に代えて、図7(a1)のように透光性基板1上に裏面透明導電層2が堆積された後に、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4cにより分割線溝D4が形成され、その後、図7(a2)のようにレーザ光吸収層3が堆積された。
【0172】
(2) 実施例2における図1(d)の工程に代えて、図7(d)のように分割線溝D4の上から、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4にレーザビームLB4cよりもビーム径の大きいQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長533nm)のレーザビームLB5cが照射され分割線溝D5が形成された。
【0173】
これらの工程により、第5種分割線溝D4および第6種分割線溝D5が形成され、図7(f)に示すように第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続しており、第5種分割線溝D4は、第6種分割線溝D5よりも溝の幅が狭く、かつ、第6種分割線溝D5の内側に形成されている集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0174】
(実施例15)
本発明の実施例15においては、図8に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、実施例2に比べて、下記の(1)、(2)において異なっていた。
【0175】
(1) 実施例2における図1(a)の工程に代えて、図8(a1)のように透光性基板1上に裏面透明導電層2が堆積された後に、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4dにより分割線溝D4が形成され、その後、図8(a2)のようにレーザ光吸収層3が堆積された。
【0176】
(2) 実施例2における図1(d)の工程に代えて、図8(d)のように分割線溝D4の上から、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4をレーザビームLB4dよりもビーム径の小さいQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB5dが照射され分割線溝D5が形成された。
【0177】
これらの工程により、図8(f)に示すように第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5が接続しており、第6種分割線溝D5は、第5種分割線溝D4よりも溝の幅が狭く、かつ第5種分割線溝D4の内側に形成されている集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0178】
(実施例16)
本発明の実施例16においては、図6に図解されている工程によって、実施例7と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、図6(d2)の工程において、レーザビームLB4bとして、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)を用いる代わりに、パワー密度60kW/cm2QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)を用いた点において実施例7と異なっていた。
【0179】
(実施例17)
本発明の実施例17においては、実施例7と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、図6(g)の工程において受光面透明電極層6上にアルミニウムのグリッド金属電極配線7が蒸着法によって付加的に形成された点において実施例7と異なっていた。
【0180】
これによって、受光面透明電極層上にグリッド金属電極配線を含み、第4種分割線溝がグリッド金属電極配線を貫通している集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0181】
(実施例18)
本発明の実施例18においては、図9に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、実施例2に比べて、下記の(1)、(2)において異なっていた。
【0182】
(1) 実施例2における図1(a)の工程に代えて、図9(a1)のように透光性基板1上に裏面透明導電層2が堆積された後に、QスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB4eにより分割線溝D4が形成され、その後、図9(a2)のようにレーザ光吸収層3が堆積された。
【0183】
(2) 実施例2における図1(d)の工程に代えて、図9(d)のように第5種分割線溝D4の近傍において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB5eが照射され第6種分割線溝D5が形成された。これらの工程により、図9(f)に示す集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0184】
(実施例19)
本発明の実施例19においては、図1に図解されている工程によって、実施例2と同様に半導体光電変換ユニット5がタンデム型である集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、下記の点において実施例2と異なっていた。
【0185】
図1(e)において半導体光電変換ユニット5の構成が、裏面電極層4側から順に、厚さ約15nmのp型微結晶Si層、厚さ約2μmのi型微結晶シリコン光電変換層、厚さ約20nmのn型微結晶Si層の順から成る下段光電変換ユニットと、厚さ約15nmのp型a−SiC:H(Hを含むa−SiC)層、厚さ約300nmのi型a−Si:H(Hを含むa−Si)層、および厚さ約20nmのn型微結晶Si層の順から成る上段光電変換ユニットを含むタンデム型となっていた。すなわち実施例2と比べ半導体光電変換ユニット5の整流特性が逆向きとなっていた。
【0186】
実施例2〜19において得られた集積型薄膜光電変換装置にリード線を接続し、実施例1の場合と同様にして光電変換特性を測定した。結果を表1に示す。
【0187】
(比較例1)
上述の種々の実施例との対比のための比較例1として、図4に対応して集積型薄膜光電変換装置が作製された。
【0188】
まず、図4(a)〜(c)において、透明ガラス基板1上に透明酸化錫層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4が、堆積された。ここでレーザ光吸収層3は不純物添加の無いi型非晶質シリコン(i:a−Si)が200nmの厚さで堆積された。透明酸化錫層2、裏面電極層4は実施例2の場合と同じ条件で堆積された。
【0189】
図4(d)において、実施例1の場合の図1(d)の工程と同じ条件下でQスイッチYAGレーザの基本波(波長1064nm)のレーザビームLB1を透明ガラス基板1側から照射し、裏面透明導電層2、レーザ光吸収層3、および裏面電極層4を加工して分割線溝D1xを形成した。
【0190】
図4(e)において、実施例1の場合の図1(e)の工程と同じ条件下で、分割された裏面電極層4および分割線溝D1xを覆うように半導体光電変換ユニット5を堆積した。
【0191】
図4(f)において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB2xを半導体光電変換ユニット5側から照射して分割線溝D2xを形成した。
【0192】
図4(g)において、実施例1の場合の図1(g)の工程と同じ条件下で、分割された半導体光電変換ユニット5および分割線溝D2xを覆うように受光面透明電極層6を堆積した。
【0193】
図4(h)において、QスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)のレーザビームLB3xを受光面透明電極層6側から照射して分割線溝D3xを形成した。
【0194】
(比較例2)
比較例2として、比較例1と同様に、図4に対応して集積型薄膜光電変換装置が作製されたが、比較例1に比べて、下記事項(1)と(2)のみにおいて変更されていた。
【0195】
(1) 図4(b)の工程において、レーザ光吸収層3の厚さが200nmではなくて400nmの厚さに増大された。
【0196】
(2) 図1(e)の工程において、半導体光電変換ユニット5は、下段のnip接合からなる下段光電変換ユニットと上段のnip接合からなる上段光電変換ユニットを含むタンデム型に変更された。この下段光電変換ユニットとして、厚さ約20nmのn型微結晶Si層、厚さ約2μmのi型微結晶シリコン光電変換層、そして厚さ約15nmのp型微結晶Si層が順次積層された。他方、上段光電変換ユニットは、比較例1における光電変換ユニットと同じ条件で形成された。
【0197】
(比較例3)
比較例3による集積型薄膜光電変換装置は図10の工程によって作製された。図10の工程は、図1の工程に比べて図10(b2)の工程が追加されたものであり、その他は図1と同じ工程を踏んでいる。よって本比較例3は、実施例2に比べて、下記の点(1)(2)のみが異なっていた。
(1)レーザ光吸収層3として不純物添加無しのa−Si層が積層された。このレーザ光吸収層の導電率は10−7S/cmであった。
(2)各光電変換領域を直列接続するためには、裏面電極層4と裏面透明導電層2とが導通していなければいけない。
【0198】
しかし本比較例3ではレーザ光吸収層の導電率が10−7S/cmと低いため、裏面電極層4と裏面透明導電層2の導通をとるために、図10(b2)の工程においてレーザ光吸収層が積層された後、YAGレーザ第2高調波(532nm)によりレーザ光吸収層3を貫通する複数の接続孔D0が作製された。この接続孔D0は図10(c)の工程で内部を裏面電極層4で満たされ、これにより裏面電極層4と裏面透明導電層2が導通することになる。
【0199】
比較例1、2、3において得られた集積型薄膜光電変換装置にリード線を接続し、実施例1の場合と同様にして光電変換特性を測定した。結果を表1に示す。
【0200】
【表1】
【0201】
[光電変換特性の対比]
表1から明らかなように、単一の光電変換ユニットを含んでいる、比較例1と実施例1を対比すると、本発明の積層型薄膜光電変換装置は、いずれの光電変換特性においても優れていることがわかる。また、タンデム型の光電変換ユニットを含む比較例2と実施例2〜19を対比すると、これらの実施例の積層型薄膜光電変換装置は、比較例2の積層型薄膜光電変換装置に比して、光電変換効率に優れていることがわかる。
【0202】
比較例3は実施例2に比べレーザ光吸収層3をノンドープとし、かわりにレーザによって接続孔を設ける工程を加えたものであるが、実施例2と光電変換性能を比較すると曲線因子の点で劣っていることがわかる。これは接続孔における接続不良等に起因する直列抵抗成分が影響していると考えられる。よって本発明による実施例2は、比較例3とくらべ、工程数においても光電変換性能においても優れていることが判る。
【0203】
実施例2〜8はレーザ光吸収層3に含まれる材料と導電率がそれぞれ異なる積層型薄膜光電変換装置の例である。これらを対比すると、実施例8と比べ、実施例2〜7における光電変換性能が優れていることがわかる。実施例8では導電不純物Bの濃度が1016cm−3と小さいため導電率が低く、その直列抵抗が光電変換性能に影響を及ぼし始めていると考えられる。よってレーザ吸収層の不純物濃度としては少なくとも1016cm−3より大きいことが望ましい。
【0204】
一方で、実施例2〜7における光電変換性能はそれぞれほぼ等しくなっている。これより、レーザ光吸収層3は一定以上の不純物濃度、導電率を有していれば、材料、多少の不純物濃度の大小、多少の不純物の大小によらずほぼ等しい性能となることが判る。
【0205】
実施例2と実施例10を比較すると、いずれの光電変換特性においてもほぼ同等の特性であることから、裏面透明導電層2に吸収されず透過するQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)でもパワー密度が十分高ければ、裏面透明導電層2を分離し、分割線溝D1を形成出来ることがわかる。
【0206】
実施例2と実施例12〜18を比較すると、実施例12から実施例18の集積型薄膜光電変換装置は、実施例2の光電変換装置と比べて、曲線因子、光電変換効率において優れている。これは、実施例2においては、第2種分割線溝D1を1種類のレーザビーム(YAGレーザの基本波)により一度に形成するのに対して、実施例6〜実施例12においては、第5種分割線溝D4と、第6種分割線溝D5とが別のレーザビームにより形成されるため、分割線溝D1周辺部の変質が軽減されたものと推測される。
【0207】
実施例12と実施例16を比較すると、いずれの光電変換特性においてもほぼ同等の特性であることから、裏面透明導電層2に吸収されず透過するQスイッチYAGレーザの第2高調波(波長532nm)でもパワー密度が十分高ければ、裏面透明導電層2を分離し、分割線溝D1を形成出来ることがわかる。
【0208】
実施例2と、実施例19を比較すると、光電変換セルにp型層側から光が入射する構造を有している実施例2の集積型薄膜光電変換装置は、光電変換セルにn型層側から光が入射する構造を有している実施例19の集積型薄膜光電変換装置と比べて、各光電変換性能に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0209】
1 透光性基板
2 裏面透明導電層
3 レーザ光吸収層
4 裏面電極層
5 半導体光電変換ユニット
6 受光面透明電極層
7 グリッド金属電極配線
LB1〜LB5 レーザビーム
D1〜D5 分割線溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置であって、
前記レーザ光吸収層(3)は、前記裏面透明導電層(2)と前記裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有し、
前記裏面電極層(4)は、前記裏面透明導電層(2)、前記レーザ光吸収層(3)、および前記裏面電極層(4)を貫通する複数の第2種分割線溝(D1)によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されており、
前記半導体光電変換層(5)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、および前記半導体光電変換層(5)を貫通しかつ前記第2種分割線溝(D1)に平行な複数の第3種分割線溝(D2)によって複数の短冊状光電変換領域に分割されており、
前記第3種分割線溝(D2)は内部を前記受光面透明電極層(6)で満たされ、これにより前記裏面透明導電層(2)と前記受光面透明電極層(6)が電気的に接続されており、
前記受光面透明電極層(6)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、前記半導体光電変換ユニット(5)および前記受光面透明電極層(6)を貫通しかつ前記第2種分割線溝(D1)に平行な複数の第4種分割線溝(D3)によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されており、
各種分割線溝は、第2種分割線溝(D1)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
互いに隣接する前記光電変換セル間において、一方のセルの前記裏面電極領域は前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面透明導電層(2)、および前記第3種分割線溝(D2)を介して他方のセルの前記受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されていることを特徴とする集積型薄膜光電変換装置。
【請求項2】
透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置であって、
前記裏面透明導電層(2)は裏面透明導電層(2)を貫通する複数の第5種分割線溝(D4)によって複数の短冊状透明導電領域に分割されており、
前記レーザ光吸収層(3)は、前記裏面透明導電層(2)と前記裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有し、
前記裏面電極層(4)は、前記レーザ光吸収層(3)、および前記裏面電極層(4)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に平行な複数の第6種分割線溝(D5)によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されており、
前記半導体光電変換ユニット(5)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、および前記半導体光電変換ユニット(5)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に略平行な位置に配置される複数の第3種分割線溝(D2)によって複数の短冊状に類似した光電変換領域に分割されており、
前記第3種分割線溝(D2)は内部を前記受光面透明電極層(6)で満たされ、これにより前記裏面透明導電層(2)と前記受光面透明電極層(6)が電気的に接続されており、
前記受光面透明電極層(6)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、前記半導体光電変換ユニット(5)、および前記受光面透明電極層(6)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に平行な複数の第4種分割線溝(D3)によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されており、
各種分割線溝は、第5種分割線溝(D4)、第6種分割線溝(D5)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順、もしくは第6種分割線溝(D5)、第5種分割線溝(D4)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
互いに隣接する前記光電変換セル間において、一方のセルの前記裏面電極領域は前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面透明導電層(2)、および前記第3種分割線溝(D2)を介して他方のセルの前記受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されていることを特徴とする集積型薄膜光電変換装置。
【請求項3】
前記レーザ光吸収層(3)が導電型決定不純物を含み、かつ、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、および非晶質ゲルマニウムからなる群から選択される層を1以上含む請求項1または2に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項4】
前記レーザ光吸収層(3)が含む導電型決定不純物が、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、およびTi(チタン)からなる群から選択される1以上を含む、請求項3に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項5】
前記レーザ光吸収層(3)が、SIMSによる元素の定量で、導電型不純物としてホウ素原子(B)を1016〜1021cm−3もしくはリン原子(P)を1016〜1021cm−3含んでいる請求項3または4に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項6】
前記レーザ光吸収層(3)の導電率が102〜10−6S/cmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項7】
前記第3種分割線溝(D2)に代えて第3種接続孔(D20)を備えて、当該第3種接続孔(D20)の基板に鉛直な方向から見た形状が、円、楕円、三角形、四角形、多角形、不定形、1以上の溝形状、交差する複数の溝形状、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項8】
前記第5種分割線溝(D4)と前記第6種分割線溝(D5)とが接続しており、
第6種分割線溝(D5)は第5種分割線溝(D4)よりも溝の幅が狭くかつ第5種分割線溝(D4)の内側に形成されているか、
または、
第5種分割線溝(D4)は第6種分割線溝(D5)よりも溝の幅が狭くかつ、第6種分割線溝(D5)の内側に形成されている
ことを特徴とする、請求項2に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項9】
前記受光面透明電極層(6)上にグリッド金属電極配線(7)をさらに含み、前記第4種分割線溝(D3)は前記グリッド金属電極配線(7)をも貫通していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置を製造するための方法であって、
前記分割線溝および接続孔のすべてが前記透光性基板側からレーザビームを照射することによって形成されることを特徴とする、集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項11】
前記透光性基板(1)が、前記裏面透明導電層(2)よりも鉛直上方に位置した状態で、すべての分割線溝および接続孔が形成されることを特徴とする、請求項10に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2種分割線溝(D1)が、波長およびパワー密度の少なくともいずれか一方が異なる2種類のレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、請求項10または11に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項13】
前記第5種分割線溝(D4)が、前記第6種分割線溝(D5)を形成するレーザビームとは、波長およびパワー密度の少なくともいずれか一方が異なるレーザビームにより形成されることを特徴とする、請求項10または11に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項14】
前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝が、裏面透明導電層(2)を透過するレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項15】
前記レーザ光吸収層(3)がシリコンまたはゲルマニウムを主要元素とする半導体からなり、かつ、前記裏面透明導電層(2)を透過するレーザビームがYAGレーザの第2高調波のビームであることを特徴とする、請求項14に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項16】
前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝が、裏面透明導電層(2)に吸収されるレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項17】
前記裏面透明導電層(6)は透明導電性酸化物を含み、前記第2種分割線溝はYAGレーザの基本波のビームを用いて形成されることを特徴とする請求項16に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項18】
前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝と、前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝とが、同一波長のレーザビームを用いて形成され、前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝を形成するためのレーザビームは、前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝を形成するためのレーザビームよりもパワー密度が高いことを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項19】
前記半導体光電変換ユニット(5)が少なくとも1以上の結晶質シリコン系半導体光電変換ユニットを含み、その結晶質シリコン系半導体光電変換ユニットはその膜面に平行な(220)の優先結晶配向面を有しており、θ−2θ法によるX線回折測定において2θ=47.4°付近に現れる(220)回折ピークと2θ=28.5°付近に現れる(111)回折ピークの強度比が、(220)回折ピーク強度/(111)回折ピーク強度比=2.0以上である、請求項請求項1〜9のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項20】
前記裏面電極層(4)が凹凸構造を有しており、半導体光電変換ユニット(5)を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、裏面電極層(4)の凹部近傍を始点として、半導体光電変換ユニット(5)内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均して1個以下見られることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項21】
前記受光面透明電極層(6)上に、さらに、充填材および封止材をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項22】
前記封止材にガラスが含まれていることを特徴とする、請求項21に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項1】
透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置であって、
前記レーザ光吸収層(3)は、前記裏面透明導電層(2)と前記裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有し、
前記裏面電極層(4)は、前記裏面透明導電層(2)、前記レーザ光吸収層(3)、および前記裏面電極層(4)を貫通する複数の第2種分割線溝(D1)によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されており、
前記半導体光電変換層(5)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、および前記半導体光電変換層(5)を貫通しかつ前記第2種分割線溝(D1)に平行な複数の第3種分割線溝(D2)によって複数の短冊状光電変換領域に分割されており、
前記第3種分割線溝(D2)は内部を前記受光面透明電極層(6)で満たされ、これにより前記裏面透明導電層(2)と前記受光面透明電極層(6)が電気的に接続されており、
前記受光面透明電極層(6)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、前記半導体光電変換ユニット(5)および前記受光面透明電極層(6)を貫通しかつ前記第2種分割線溝(D1)に平行な複数の第4種分割線溝(D3)によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されており、
各種分割線溝は、第2種分割線溝(D1)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
互いに隣接する前記光電変換セル間において、一方のセルの前記裏面電極領域は前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面透明導電層(2)、および前記第3種分割線溝(D2)を介して他方のセルの前記受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されていることを特徴とする集積型薄膜光電変換装置。
【請求項2】
透光性基板(1)上に順次積層された裏面透明導電層(2)、レーザ光吸収層(3)、裏面電極層(4)、半導体光電変換ユニット(5)、および受光面透明電極層(6)を含み、これらの層の各々は複数の短冊状光電変換セル領域に分割されており、かつそれら複数の光電変換セルが電気的に直列接続されている集積型薄膜光電変換装置であって、
前記裏面透明導電層(2)は裏面透明導電層(2)を貫通する複数の第5種分割線溝(D4)によって複数の短冊状透明導電領域に分割されており、
前記レーザ光吸収層(3)は、前記裏面透明導電層(2)と前記裏面電極層(4)とを少なくともその膜厚方向に電気的に接続できる導電性を有し、
前記裏面電極層(4)は、前記レーザ光吸収層(3)、および前記裏面電極層(4)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に平行な複数の第6種分割線溝(D5)によって複数の短冊状裏面電極領域に分割されており、
前記半導体光電変換ユニット(5)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、および前記半導体光電変換ユニット(5)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に略平行な位置に配置される複数の第3種分割線溝(D2)によって複数の短冊状に類似した光電変換領域に分割されており、
前記第3種分割線溝(D2)は内部を前記受光面透明電極層(6)で満たされ、これにより前記裏面透明導電層(2)と前記受光面透明電極層(6)が電気的に接続されており、
前記受光面透明電極層(6)は、前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面電極層(4)、前記半導体光電変換ユニット(5)、および前記受光面透明電極層(6)を貫通しかつ前記第5種分割線溝(D4)に平行な複数の第4種分割線溝(D3)によって複数の短冊状受光面透明電極領域に分割されており、
各種分割線溝は、第5種分割線溝(D4)、第6種分割線溝(D5)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順、もしくは第6種分割線溝(D5)、第5種分割線溝(D4)、第3種分割線溝(D2)、第4種分割線溝(D3)の順に並んでおり、
互いに隣接する前記光電変換セル間において、一方のセルの前記裏面電極領域は前記レーザ光吸収層(3)、前記裏面透明導電層(2)、および前記第3種分割線溝(D2)を介して他方のセルの前記受光面透明電極領域に電気的に接続されており、これによってそれらの光電変換セルが電気的に直列接続されていることを特徴とする集積型薄膜光電変換装置。
【請求項3】
前記レーザ光吸収層(3)が導電型決定不純物を含み、かつ、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウム、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、および非晶質ゲルマニウムからなる群から選択される層を1以上含む請求項1または2に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項4】
前記レーザ光吸収層(3)が含む導電型決定不純物が、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、およびTi(チタン)からなる群から選択される1以上を含む、請求項3に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項5】
前記レーザ光吸収層(3)が、SIMSによる元素の定量で、導電型不純物としてホウ素原子(B)を1016〜1021cm−3もしくはリン原子(P)を1016〜1021cm−3含んでいる請求項3または4に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項6】
前記レーザ光吸収層(3)の導電率が102〜10−6S/cmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項7】
前記第3種分割線溝(D2)に代えて第3種接続孔(D20)を備えて、当該第3種接続孔(D20)の基板に鉛直な方向から見た形状が、円、楕円、三角形、四角形、多角形、不定形、1以上の溝形状、交差する複数の溝形状、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項8】
前記第5種分割線溝(D4)と前記第6種分割線溝(D5)とが接続しており、
第6種分割線溝(D5)は第5種分割線溝(D4)よりも溝の幅が狭くかつ第5種分割線溝(D4)の内側に形成されているか、
または、
第5種分割線溝(D4)は第6種分割線溝(D5)よりも溝の幅が狭くかつ、第6種分割線溝(D5)の内側に形成されている
ことを特徴とする、請求項2に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項9】
前記受光面透明電極層(6)上にグリッド金属電極配線(7)をさらに含み、前記第4種分割線溝(D3)は前記グリッド金属電極配線(7)をも貫通していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置を製造するための方法であって、
前記分割線溝および接続孔のすべてが前記透光性基板側からレーザビームを照射することによって形成されることを特徴とする、集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項11】
前記透光性基板(1)が、前記裏面透明導電層(2)よりも鉛直上方に位置した状態で、すべての分割線溝および接続孔が形成されることを特徴とする、請求項10に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2種分割線溝(D1)が、波長およびパワー密度の少なくともいずれか一方が異なる2種類のレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、請求項10または11に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項13】
前記第5種分割線溝(D4)が、前記第6種分割線溝(D5)を形成するレーザビームとは、波長およびパワー密度の少なくともいずれか一方が異なるレーザビームにより形成されることを特徴とする、請求項10または11に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項14】
前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝が、裏面透明導電層(2)を透過するレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項15】
前記レーザ光吸収層(3)がシリコンまたはゲルマニウムを主要元素とする半導体からなり、かつ、前記裏面透明導電層(2)を透過するレーザビームがYAGレーザの第2高調波のビームであることを特徴とする、請求項14に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項16】
前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝が、裏面透明導電層(2)に吸収されるレーザビームを用いて形成されることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項17】
前記裏面透明導電層(6)は透明導電性酸化物を含み、前記第2種分割線溝はYAGレーザの基本波のビームを用いて形成されることを特徴とする請求項16に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項18】
前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝と、前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝とが、同一波長のレーザビームを用いて形成され、前記裏面透明導電層(2)を貫通する分割線溝を形成するためのレーザビームは、前記裏面透明導電層(2)を貫通しない分割線溝を形成するためのレーザビームよりもパワー密度が高いことを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置の製造方法。
【請求項19】
前記半導体光電変換ユニット(5)が少なくとも1以上の結晶質シリコン系半導体光電変換ユニットを含み、その結晶質シリコン系半導体光電変換ユニットはその膜面に平行な(220)の優先結晶配向面を有しており、θ−2θ法によるX線回折測定において2θ=47.4°付近に現れる(220)回折ピークと2θ=28.5°付近に現れる(111)回折ピークの強度比が、(220)回折ピーク強度/(111)回折ピーク強度比=2.0以上である、請求項請求項1〜9のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項20】
前記裏面電極層(4)が凹凸構造を有しており、半導体光電変換ユニット(5)を断面TEM(透過型電子顕微鏡)像で観察した時に、裏面電極層(4)の凹部近傍を始点として、半導体光電変換ユニット(5)内を基板に対し垂直方向へ伸びている白色部(低密度部分)が、基板に平行した方向1μmあたり平均して1個以下見られることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項21】
前記受光面透明電極層(6)上に、さらに、充填材および封止材をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【請求項22】
前記封止材にガラスが含まれていることを特徴とする、請求項21に記載の集積型薄膜光電変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−283172(P2010−283172A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135595(P2009−135595)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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