説明

集積温度制御コントロール及び温度センサを備えた多機能電位差ガスセンサアレイ

本発明の態様は、一種以上のガスを検知するためのガスセンサ及び方法に関する。一態様では、デバイスの感度及び種選択性が検出電極の別々の対の間で調整できるように、同一または異なる温度に保持された検出電極アレイを含む。具体的な態様では、燃焼排ガス及び/または化学反応副生成物をモニターするためのガスセンサアレイに関する。本発明に関連するデバイスの態様は高温で操作し、且つ化学的に過酷な環境に耐えることができる。デバイスの態様は、単一基板上に作られる。デバイスはこれらが単一基板上の一つのアレイの一部であるかのように、個別の基板上に作り、個々にモニターすることもできる。本デバイスは、同一環境内に検出電極を含むことができ、これにより電極を同一平面上とすることができるので、製造コストを低く維持できる。本デバイスの態様は、表面温度制御により、感度、選択性及び信号干渉に対し改良点を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願に対するクロスリファレンス
【0002】
本出願は、全ての図面、表または図形を含むその全体が本明細書中、参照として含まれる、2007年10月9日出願の米国仮特許出願シリアル番号第60/978,696号の恩恵を請求する。
【背景技術】
【0003】
同一ガス環境における半導体金属酸化物と貴金属擬似−参照電極(pseudo-reference electrode)との間の電位差を測定することに基づく電位差ガスセンサは、製造し易く且つ性能が劣化することなく過酷な環境に耐えることができる高度に選択的なデバイスを提供する。さらに、これらは燃焼排ガスで発生するようなO2濃度の大きな変動には反応しない。そのような固体電位差ガスセンサは、排気ガスをモニターするためにppb〜ppmレベル濃度のNOx、CO及び炭化水素などの汚染物質を検出するのに有望である。またこれらは、呼気分析用の生物医学分野などのような他の用途でも使用することができる。
【0004】
電位差ガスセンサは、種々の多くの方法で測定し得、且つガス混合物中の(単数または複数種類の)ガス濃度または他のガスの非存在下での様々な濃度の単一種ガスの濃度を個々に検出するのに使用できる、出力電圧信号(output voltage signal)を有する。「電極-対」を作り出す二つの電極間の電圧差は、一つまたはそれぞれの電極で電位が変化するにつれてモニターすることができる。
【0005】
電位差ガスセンサは、ガス混合物中の(単数または複数種類の)個々のガス濃度、または他のガスの非存在下での単一種の様々な濃度の検出に使用できる出力電圧信号を測定することによって使用される。
【0006】
半導体金属酸化物電極(たとえばp-型La2CuO4(LCO))を備えた固体電位差ガスセンサは、燃焼排ガス中の汚染ガス(たとえばNOx)をモニターするのに非常に有望であった。これらはppmレベルのNOx及び濃度に感受性がある。しかしながら、これらのセンサの選択性及び交差感度(cross-sensitivity)は現在の所、商業的応用には適当ではない。この主な例として、NOとNO2(NOxの主成分)とを区別することができないということがある。これら個々のガスの濃度を知るのは重要なことが多い。しかしながら、殆どのNOxセンサは、これらのどれが存在するかを検出することも、混合ガス流中のそれらの絶対濃度を検出することもできない。実際、選択性が低いため、殆どの固体汚染物質センサを妨害する。燃焼排ガス及び/または反応副生成物をモニターするために現在利用可能なデバイスは、幾つかの点で限られている。現行デバイスは測定値からガス濃度を外挿法によって推定するか、または測定値を取るために、高価な電子機器を使用することによってのみ、たった一種類のガスを検出するか、または多様な種を検出している。
【0007】
現行デバイスは空気参照が必要なことがあり、このため設計が複雑になり、及び/またはコストを増加させる複雑な製造段階となっていた。
【0008】
通常、参照電極を使用して、変化しないEMF(即ち、参照状態)に対して、検出電極の変化するEMFを比較する。擬似参照は、単一ガス環境中で他の全ての検出電極を比較するために使用し得る電極である。しかしながら、擬似参照は、検出電極が変化しているのと同時に変化するEMFをもつ。従って、擬似参照は実際には真の参照状態を示さない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様は、一種以上のガスを検出するためのガスセンサ及び方法に関し、具体的な態様は一種以上のガスを検出するための電位差ガスセンサ及び方法に関連する。追加の態様は、一種以上のガスを検出するための電流測定及び/またはインピーダンス測定(impedimetric)ガスセンサ及び方法に関する。一態様は、デバイスの感度及び種選択性が様々な対の検出電極間で微調整できるように、似たような温度または様々な温度で保持される検出電極のアレイを含む。具体的な態様は、燃焼排ガス及び/または反応副生成物をモニターするためのガスセンサアレイに関する。本発明に関連するデバイスの一例は高温で作動し、過酷な化学的環境に耐えることができる。
【0010】
本デバイスの態様は単一基板上に作られる。他の態様では、幾つかの様々な単一の電極-対デバイスを別々の基板上に製造することができる。デバイスは同一環境中に検出電極を含むことができるため、電極を同一平面上にできるので、製造コストを低く維持できる。本デバイスの態様は、表面温度の制御により感度、選択性及び、信号干渉に対して改良点を提供できる。
【0011】
本デバイスの態様は単一擬似参照をもつことができる。他の態様では、互いに擬似参照として全ての電極を使用することができる。電極は「電極-対(electrode-pair)」を作るものとみなされ、これは電位差信号として測定することができる。(「電極-対」を作る)二つの電極間の電圧差は、一つまたはそれぞれの電極の電位の変化として測定される。態様としては、バッテリー、他の電源または自動車シャシーによって提供されるもののような別の固定電圧を参照としても有し得る。
【0012】
検出電極は金属(たとえばプラチナ若しくは金)、半導体(たとえば、La2CuO4若しくはWO3などの半導体酸化物(semiconducting oxides))、または単一若しくは複数のガス種に対して感受性を示す任意の他の材料であってもよい。通常、所与の検出電極材料は、一種または多くの様々なガス種に対して様々な感度(即ちEMFの変化)及び選択性をもつ。これは、電極-対を作っている電極間の温度差及びそれぞれの電極の温度に依存する。これは材料と相互作用する特定種の濃度及び化学的特性にも依存する。変化する感度及び/または選択性の度合いは、材料及びその特性、存在するガス種、並びに温度に依存する。それぞれの電極は一種以上の「電極-対」の一部であってもよいので、測定可能な信号数は、実際の検出電極数よりも多くなり得る。
【0013】
実際の電極数よりも信号が多いと、デバイスでは好都合なことがある。通常、信号の数が多ければ、多くのガス種のパターン認識が容易になる。電極-対の電圧応答は、一種以上のガス種濃度に対する暴露などの様々な既知条件で測定でき、これらの測定値を使用して未知のガス種濃度に対して暴露する間にとった測定値を解釈することができる(即ち、センサを較正することができる)。従って、電極の総数よりも信号の数値結果が多いということは、デバイスが同一または良い選択性に関してより少ない電極しか必要としないということを意味する。これは従って、コスト低下及びより小さなデバイスの可能性のあることを意味する。
【0014】
センサアレイの設計としては、個々のデバイスとして、または単一デバイスに、二つの異なる(different)「電極-対」スキームを一緒に含むことができる。一つのスキームでは多数の材料を同時に使用し、これは(加熱または冷却法を使用して)同一及び/または異なる温度に保持することができる。デバイスは、一種以上の異なる温度で保持される同一材料の多数の電極も含み得る。
【0015】
同一材料の電極は、電極の他の特徴、たとえば微細構造(たとえば粒径若しくは表面粗度)、サイズ、形状または厚さが異なる場合でも、同一温度に保持し得る。さらにガスセンサアレイは、用途に依存して、単一デバイス(または複数のデバイス)でこれらのスキームの一つまたは両方を使用することができる。
【0016】
任意の所与の検出電極材料は通常、一つ以上のガス種に対して感受性である。この感度は、温度及びガス種で変動する。従って、同一材料の電極を、電極-対を形成する電極の少なくとも一方の感度を変えるように変更すると、同一材料の二つの電極からの信号を測定することができる。所与の電極材料の感度は、その微細構造、形状(geometry)、温度の差、または所望の方法で化学(若しくは電気化学)反応を促進または変える(alter)ために電極の局所環境を変える他の方法により変更することができる。同一変更を使用して、異なる材料でできた測定可能な電極-対を得ることができる。
【0017】
費用効果を高くするためには、(単数または複数の)デバイスを単一基板上に作ることができる。さらに、(単数または複数の)デバイスは同一環境中に検出電極をもつことができるので、これによって電極を同一平面上(即ち、基板の一方の側に全てがある)とすることができ、製造コストを増加するかもしれない複雑な設計を回避できる。これらのセンサの感度及び選択性は温度で変動する。従って(単数または複数の)そのようなデバイス温度は、周囲温度が変動する場合や、その他の理由により電極温度が変動する場合には、迅速に制御且つ変更することができる。
【0018】
注目している二種以上のガス種をモニターし得るデバイスを得るためには、検出電極のアレイを使用することができる。アレイ信号はアルゴリズムに入って、個々の種の濃度を決定することができる。個々の種の濃度を決定するためにパターン認識を実施する(implement)ことができる。選択性を改良することによって、デバイスはより少ない検出電極を使用して、より多い信号で、高い交差感度をもつデバイスのように効果的に同一種を検出することができる。これによりデバイスを単純化し、且つデバイスの構築コスト及び消費電力を低減化することができる。
【0019】
検出電極の一つ以上の温度を制御するために、本発明ではヒーターを利用することができる。そのようなヒーターは一つ以上の加熱部材を使用して、これにより電流は検出電極の温度を変えるために発熱するように駆動され得る。加熱部材は、任意の導電性材料または抵抗性材料(たとえばプラチナ)を使用することができ、この材料は加熱部材(及びその性能)が経時で及び過酷な環境で劣化しないようにするのに必要な熱的及び化学的安定性をもつ。加熱部材はレジスタとして機能することができる。熱はジュール熱、または加熱部材に電流を通すことによって生成される。生成熱は、時間を乗じた電流の二乗に比例する。追加の態様では、検出電極の温度を低下させるために冷却装置を使用することができる。本目的に関し本発明の態様には、当業者に公知の様々な冷却方法が含まれ得る。
【0020】
本デバイスの態様の温度制御は種々の方法で実施することができる。最小変動で温度を詳細に制御するのは、安定なセンサ信号を得るのに有用である。従って、サーマルモデリング(thermal modeling)はデバイス用の温度プロフィールを設計する方法を提供することができる。個々の電極をアレイの基板上に配置する場合や、いかに温度プロフィールが変動するガス流速度で変化するかを決定する際にこの情報を使用することができる。
【0021】
表面温度測定は困難な場合がある。検出電極の温度を知ることにより、デバイス性能を高めることができる。一部の金属、半導体、または他の材料の抵抗は、種々の数学モデルにより予測できる方法で温度で変化するだろう。データがモデルに合ったら、ソフトウエアは、モデルからの係数と温度センサ素子の抵抗測定値とを使用して、センサ操作時に表面温度を容易に計算することができる。具体的な態様では、抵抗測定値または他の温度決定法は、たとえば検出電極の温度に対して値を与えるために、ガス検出測定前後などで検出電極に適用することができる。さらに検出法として電圧(たとえば熱電対)または静電容量における変化を使用する温度センサも、本デバイスに組み込むことができる。
【0022】
加熱部材は、別の物体を加熱するためだけでなく、同時に温度センサとして使用することができる。ヒーターの抵抗を(たとえば4線式方法(four-wire method)を使用して)正確に決定することができれば、加熱部材の温度(そして検出電極の温度)は計算することができる。通常、ジュール熱のため、電流がヒーターに供給されるにつれて抵抗は増加する。これは電圧測定にも電流測定にも大きく影響しない。つまり測定値は回路内の実際の電流と、ヒーターの電圧降下を表す。従って、計算した抵抗、そしてヒーターの温度は真の値を表す。
【0023】
加熱部材の形状は、任意の所与の検出電極の温度が確実に均一であるように設計することができるか、または所望により、温度が意図的に非均一であるように設計することができる。加熱部材は、C形、らせん形、曲がりくねった(serpentine)形、またはデバイス内に所望の熱分布を達成するための任意の他の有用なパターンであってもよい。加熱部材は、印加電圧または電流のいずれかによって制御することができる。選択される方法は、用途に依存する。たとえば自動車では、適当な電源は自動車のバッテリーであろう。従って加熱部材は、制御された電圧かもしれない。
【0024】
単一の加熱部材(または温度センサ、若しくは冷却部材)、あるいは多数の加熱部材(または温度センサ、若しくは冷却部材)を使用して、(単数または複数の)任意の所与の検出電極の温度を制御することができる。
【0025】
加熱部材(または温度センサ、若しくは冷却部材)は、一つ以上の断熱層または熱伝導層により(単数または複数の)電極及び固体電解質から離れた、個々のまたは(単数若しくは複数の)多数の検出電極の下側にあ(り、そして好適に整列す(align))ることができる。
【0026】
加熱部材(または温度センサ、若しくは冷却部材)は、断熱層若しくは熱伝導層により、基板若しくは他の層の配置により、またはそれらの間の空間により互いに隔てられていてもよい。
【0027】
加熱部材(または温度センサ、若しくは冷却部材)は、デバイスの他の領域から熱的に隔離するために、キャビティ内に吊り下げられていてもよい。
【0028】
加熱部材(または温度センサ、若しくは冷却部材)は、断熱層または熱伝導層により完全に覆われて(即ち、デバイス内に埋め込まれて)いてもよく、デバイス層のどこに存在していてもよい。
【0029】
プラチナは、加熱部材、温度センサ及び/または冷却部材の製造のために選択することができる。プラチナは耐久性並びに化学的及び熱的安定性のため、高温抵抗-温度-デバイス(high-temperature resistance-temperature-device:RTP)用及びガスセンサの加熱部材として業界的に標準である。しかしながらそのようなデバイスではヒーターとして他の材料も使用し得る。また、温度センサまたは冷却部材用に他の材料を使用することができる。
【0030】
また、そのようなデバイスに温度制御を組み込むと、経時でセンサ性能に変化をもたらしたりデバイスを完全に破壊する、所与の(単数または複数種類の)ガス及び(単数または複数種類の)濃度に暴露するために繰り返し可能な方法でデバイスが応答しないようにする電極「作用阻害(poisoning)」または他の現象を逆転させることが可能である。
【0031】
本発明の態様は、二種以上のガス種の選択性を改善する及び/または二種以上のガス種に対する感度を改善することができる。電極-対アレイを備えた単一デバイスは、感度及び選択性のいずれをも改善することができる。
【0032】
図1及び図2に示されているデバイスは、小サイズ及び低電力消費用に製造された集積プラチナヒーター及び温度センサをもつセンサアレイを包含する。このアレイは二つの(半導体)La2CuO4(LCO)電極1、3とプラチナ(Pt)参照電極2をもち、これらは全て長方形のテープキャストイットリア-安定化-ジルコニア(Yttria-Stabilized-Zirconia:YSZ)基板4上の同一側にある。別の態様では、三つ全ての電極はLCOなどの一材料であり得るか、またはそれぞれの電極の材料は異なり得る。プラチナレジスタ部材はヒーター5及び/または温度センサ5、6、7として使用して、検出電極の温度を制御且つモニターする。有限要素モデリング(Finite Element Modeling)を使用して、アレイ内の温度プロフィールを推測した。次いでアレイは、他の二つの電極に関してLCO電極1をより熱く保持するように設計した。このデバイスからの結果は、種々の温度に保持した検出電極をもつガスセンサアレイは、NO及びNO2濃度を選択的に決定し得るデバイスを生成し得ることを示した。これらのガスの個々の濃度は操作時に計算することができる。検出電極間の種々の検出電極材料及び/または種々の温度差を使用して、他のガスの検出及び/または他のガスの濃度測定に使用することができる。
【0033】
図7〜8を参照して、YSZ12をベースとする別のガスセンサは、二つのLCO検出電極と二つのプラチナ参照電極とを包含する。内側のLCO9とPt10電極を加熱し、同時に外側のLCO11とPt8電極は周囲温度付近に保持する。Pt部材14及び15を使用して加熱し、温度測定し、同時に13及び16は温度測定だけに使用する。このデバイスは、複数の電極対の間の電位差を測定する能力を提供する。さらなる態様では、加熱部材及び/または温度検出部材(sensing element)は、検出電極と同一基板面上に、または基板から離れて配置することができる。
【0034】
具体的な電極温度での変化傾向(trend)から、感度(ガス濃度のディケード変化(decade change)当たりの信号のmV変化)を表す、図9〜10のプロット(及び他の電極-対に関する同様のセンサ応答プロット)の傾斜を使用して、図11〜16の感度プロットを作成した。各線は異なるヒーター設定点を表し、これは示されているように、電極間の個別の温度差(|dT|)を表す。これは、4つの検出電極からの6つの信号のそれぞれに対して繰り返した。変化傾向プロットでは、|dT|が0である場合は、ヒーターが操作されていなかったときの測定値を表す。
【0035】
図17Aは、操作の間の図7〜8のセンサアレイにおける温度変化の等高線図を示す。プロットのそれぞれの等高線は、デバイス内の所与の温度を示す。デバイスの中間の温度プロフィールは図17Bに見ることができる。図7〜8のセンサアレイは手製だったので、結果は必ずしも理想的ではないことに留意すべきである。従って、各電極は同一材料製であるときでさえも互いに少し異なっていた。電極-対が同一材料で形成され、且つヒーターが操作されていない時は、感度は0であるべきである。しかしながら、プロットに示されているように、感度は実際にはゼロではない。
【0036】
図9〜16のプロットは6つの特徴的な信号を作る個々の電極-対を示すように分類されていることに留意すべきである。このプロットでは、図7〜8の電極8、9、10及び11はそれぞれPt(1)、LCO(2)、Pt(3)及びLCO(4)と指定されている。特定の設定点では、加熱されていない電極は、このアレイの特徴的な設計のため、僅かに温度上昇し始めた。これは加熱された電極から加熱されていない電極をさらに遠くへ移動させることや、断熱バリヤを作るなど、設計上でマイナーチェンジすることで非常に容易に訂正することができる。デバイスは、ヒーター及び互いのヒーターの設計及び電極レイアウトを変えて改良することができる。また、ヒーターは互いに別に配置することができる。サーマルモデリングで、温度均一性に関してデバイス性能で何を期待すべきかを決定し易くなる。
【0037】
LCO(4)-LCO(2)及びPt(3)-Pt(1)電極-対からの信号を示す図11及び12を参照すると、電極対の感度は、これらの間の温度差が増加するにつれて変化する。LCO(4)-LCO(2)に関しては、加熱した電極であるLCO(2)の温度が上昇するにつれて、NO感度は大きく上昇する。実際、電極間に温度差が存在しない場合には、初期感度の約10倍の増加がある。ヒーター設定点が上昇するに連れて、NO2感度は殆ど0に減少する。後の設定点では感度がやや増加するが、この電極-対の設定点の少なくとも小さな範囲ではNO2に対しては無反応である。従って、この電極-対はNOにのみ感度を示し、NO選択的とすべきである。Pt(3)-Pt(1)からの信号はさらに、同一材料の個々の電極温度を変化させることによって、感度が変動し得ることを示す。
【0038】
LCO(2)-Pt(3)及びLCO(4)-Pt(1)電極-対からのシグナルを示す図13及び14を参照すると、電極対の感度は、電極間の温度差が増加するにつれて変化する。LCO(2)-Pt(3)に関しては、電極-対は事実上NOに対して無反応になった。しかしながらNO2感度はより正になり、電極間の温度差が増加するにつれて負の応答から正の応答へ変化する。従って、この電極-対はNO2に対して選択的である。LCO(4)-Pt(1)に関しては、NO感度は、操作の間にヒーターを使用しない信号のレベルで殆ど止まったままである。このことは、個々の電極の温度を変化させることによって、種々の材料の電極に関して感度を変化させ得ることを示している。
【0039】
LCO(4)-Pt(3)及びLCO(2)-Pt(1)電極-対からの信号を示している図15及び16を参照して、電極対間の温度差が増加するにつれて電極対の感度は変化する。LCO(4)-Pt(3)に関しては、NOに対する感度は、電極間の温度に変化がなくても状態に関して殆ど二倍になる。また電極間の温度差が増加するにつれて、NO2に対する感度はより正になり、負の応答から正の応答に変化する。このことは、二つの電極間に多少温度差があると、NO2感度はゼロになることを示している。LCO(2)-Pt(1)に関しては、電極間の温度差が増加するにつれて、NO感度は次第に負になる。このことは、電極-対を形成している電極温度を種々変動させることにより、NO及びNO2の両方における感度について大きな変化が可能であることを示している。
【0040】
図18〜21は、可能な種々の追加のセンサ態様を示す。図18Aは図1及び2並びに図7及び8に示されているのと同様のデバイスの断面図を示す。この態様において、電解質層17は(同一または互いに異なっていてもよい)検出電極18とまだ結合している。しかしながら、Pt部材19(ヒーター及び/または温度センサとして使用される)は、支持材料20の上部に存在する。支持体は電気的に絶縁体または電解質であってもよく、これは電解質層17と同一でも異なっていてもよい。電解質17(及び結合した検出電極18)はPt部材19を覆い、支持体20の上にも位置する。図18Bに示された態様は、図18Aのものと同様であるが、検出電極21は支持体23上部の電解質層22に結合したままである。主な違いは、Pt部材24がもう支持体23の中に埋め込まれているという点である。図18Cにおいて、デバイスは上部に検出電極26と電解質27をもつ支持材料25を含む。電解質層27は支持体25と接触している。Pt部材28は支持体25の背面に存在する。図18Dは、(同一または異なる)検出電極30で製造された一つ(または二つ以上の)電極-対ごとに一つの電解質層29を含む。検出電極30をもつ別の電解質層31は電解質29とは離れて存在する。電解質層29と31はいずれも支持体32の上部に存在する。背面にはPt部材33が同様に支持体上に存在する。この配置の多くの組み合わせが可能である。
【0041】
図19は、内部にPt部材36が埋め込まれた、電解質35の一方の面に(同一または異なる)検出電極34をもつ態様の断面図を示す。電解質36のもう一つの側には、追加の(同一または異なる)検出電極37がある。電極対は検出電極34と37の任意の組み合わせによって製造することができる。デバイスの両面に検出電極を備えると、各検出電極周囲の局所的なガス雰囲気が分離され、特定の場合には、クロストークを下げ、選択性を改善することとなる。
【0042】
図20は、デバイスの中央に中空チャンバをもつ態様の断面図である。図19の態様で使用したのと同様の形で、このチャンバは検出電極の局所環境を隔てるように作用し、参照として既知濃度の別のガス流を提供するのに使用することができる。デバイスは中空の空間の外側には(同一または異なる)検出電極38と、内側には(同一または異なる)検出電極39とを含み、電解質40に付けられている。Pt部材41はチャンバ内側(または外側)にも存在することができ、また電解質40に付けられている。加熱したり温度を検出するための追加のPt部材は、デバイス周囲の種々の位置に配置することができる。
【0043】
図21A及び21Bは、基板に対する電極配置が図1及び2並びに図7及び8に示されているものとは異なっている態様の上面図を示す。図21Aは、電解質及び/または構造支持体43の上に(同一または異なる)検出電極42をもつ態様を示す。他の態様と比較して、検出電極42は電解質(支持体)43上部で互い違いになっており且つ互いに離れている。図21Bは、検出電極44は、図21Aに示されている態様とは、電解質及び/または支持体45とガス流方向に関して異なるように配置されている態様を示す。他の態様で示されているような様々な配置及び特徴は、これら及び他の態様に関して、Pt部材(ヒーター及び/または温度センサとして使用される)、他の温度センサ、または、冷却部材に関して使用することができる。
【0044】
図22〜31は、図7及び8のデバイスからの信号を表し、本発明の態様に従った方法及び/または装置を使用するものを示しており、個々の電極の温度が変化するにつれてセンサアレイは、特定のガス種に対して選択的とすることができる。電極間の温度差及びそれぞれの電極の絶対温度は、センサ性能に重要である。図22〜25はLCO(2)-Pt(1)信号に関するNOxガス混合物の結果を示し、LCO(4)-LCO(2)信号は図26〜31に示される。
【0045】
図22は、0ppmのNO(実線)と200ppmのNO(点線)のガス混合物条件でのNO2ガス暴露に対するLCO(2)-Pt(1)センサ応答を表す。プロットのX軸は対数目盛である。四角形、丸及び菱形の記号は、それぞれ0、〜13mW、〜54mWの全出力をPt加熱部材に伝えた状況を表し、電極間でより大きな温度差(dT)となった。以上のように、NO2に対する感度(ガス濃度におけるディケード変化当たりの信号のmV変化)を表す、それぞれのセットの線の傾斜は、ヒーター電力の適用と共に大きくなる。さらに、感度はNO2暴露の間にNOを添加することによっても殆ど変わらない。図23は、0ppmのNO2(実線)と200ppmのNO2(点線)でのNOガス暴露に対するセンサ応答を示す。プロットのX軸は対数目盛である。図23で見られるように、NOに対する感度は、ヒーターへの電力が増加するにつれて低下する。それぞれのヒーター設定点に関しこの図で際立ったものは、200ppmのNO2をガス混合物に添加するときの、NO感度の近似(approximate)シフトである。このシフトは、図22に示されているようにNO2に対するより大きな(負の)応答を考慮するときに予想されるように、全て負である。ヒーター電力が増加するにつれて、シフトは調べられたNO濃度の全範囲にわたってより一様になる。ヒーター電力がより低いと、シフトはより高いNO濃度に関してより顕著である(即ち、200ppmのNO2を添加すると、感度は低下する)。ヒーターを使用しない場合、センサ応答におけるシフトは、全NO濃度範囲で0.18から1.3mVである。ヒーター電力13mWに関しては、シフトは3.2から3.7mWである。54mWでは、ヒーター電力は曲線が水平になる角度にNO応答を低下させるのに十分である。200ppmのNO2を導入すると、曲線は水平のままであるが、負の値へ6.8mWシフトする。
【0046】
図24は、図22と同一条件で0ppmのNOでのNO2センサ応答を示す。しかしながらx-軸は均等目盛であり、このプロットは0ppmのNO2の条件に関するデータを含む。図24で際立ったものは、0ppmのNO2ベースラインと200ppmのNO2ガス目盛り(step)との間の測定された電圧差における差である。図23におけるNO(0ppmと200ppmのNO2)に関する結果を、0ppmのNO2ベースラインと200ppmのNO2ガス目盛りの間の電圧変化と比較すると(図24)、ヒーター電力が増加するにつれて、NO2選択性が改良することが明らかである。ヒーターを使用しない場合には、0ppmから200ppmのNO2への変化は、3.5mWの電圧変化を生じる(図24)のに対して、ガス混合物中にNOも存在すると、これら二つの条件の間のシフトは0.18から1.3mWである(図23)。この差は、ガス混合物中のNO及び/またはNO2ガス濃度を決定しようとするときに較正することができる。というのも測定された実際の電圧は予想と違うからである。少しの電力(〜13mV)をヒーターに伝えると、5mVの電圧における予想変化(図24)と、NOとNO2が存在するときに見られる3.2から3.7mVの実際の変化(図23)とを比較すると解るように、状況はやや改善する。既に述べたように、電力54mVを伝えるヒーター設定点では、NO2感度は高まり(図22)、NO感度は全く無くなる(図23における水平曲線)。さらにNO2が0ppmと200ppmの条件の間の予想電圧変化は6.5mVである。(図24)。これは0ppmと200ppmのNO2が存在したときの測定でNOガス暴露の間のシフト(6.8mV)と殆ど同じである。NOとNO2とのガス混合物はNO2における変化に対して予想された電圧変化に影響を及ぼさないのだから、ガスセンサアレイはガス混合物中に存在するNO2の実際の濃度を正確に表現するのに使用することができる。同じ原理を使用して、センサアレイは、NO、NO2、NH3、CO、CO2及び/または炭化水素類などのどんなガスに対しても改善された選択性をもつように製造することができる。
【0047】
図25は、図7及び8の態様のLCO(2)-Pt(1)信号に関する感度対全ヒーター電力のプロットを示し、NO(0及び200ppmのNO2)とNO2(0及び200ppmのNO)のガス混合物が示されている。NO2の存在下及び非存在下におけるNOに対する感度は、ヒーター電力が増加するにつれて0mV/decade ppm NOに減少する。これが起きるにつれて、200ppmのNO2をガス混合物に導入すると、観察感度における変化も減少する。NO2の存在下及び非存在下におけるNOに対する感度は、ヒーター電力が増加するにつれて0mV/decade ppm NOに減少する。ヒーター電力が増加するにつれて、NOの存在下及び非存在下でNO2に対する感度は、殆ど2倍に増える。NO0ppmと200ppmのNO2に対する感度は、ヒーター電力の同じ範囲にわたって殆ど変化しないままである。さらに、(ヒーター電力54mWで得られた)最大dTでこの電極対を操作することによって、NOに対する交差感受性が除去される(ゼロか負になる)ので、NO2に対する感度及び選択性がいずれも高いセンサが得られる。先に述べたように、NO及びNO2のガス混合物への暴露で観察された感度及び電圧シフトにおけるこれらの変化を考慮すると、本方法の態様を使用して全般的にセンサアレイ性能を高め得ることが明らかである。
【0048】
図26〜28は、ガス混合物中にNOとNO2とが一緒に存在するときに、図7及び8の態様のLCO(4)-LCO(2)電極-対がいかにして全NOx濃度を検出するのに使用し得るかを示す。0ppmのNO(実線)と200ppmのNO(点線)のガス混合物条件に関するNO2ガス暴露に対するLCO(4)-LCO(2)応答を、0、13及び54mWの全ヒーター電力に関して図26に示す。同じ全ヒーター電力に関しては、図27は、0ppmのNO2(実線)と200ppmのNO2(点線)のガス混合物に関してNOガス暴露に対する応答を示す。図26と27を参照して、NO2(0ppmと200ppmのNO)ガス混合物に対する応答は常に正の応答を示す。NOに対して本質的に全く感度のない、ヒーターを使用しない(0mW全ヒーター電力)時の場合を除き、NO(0及び200ppmのNO2)ガス混合物に対しても同様に言える。さらに、図26のようにNOをNO2ガス段階に導入するときと、図27のようにNOガス段階にNO2を添加するとき、LCO(4)-LCO(2)信号におけるシフトは常に正である。図26と27のいずれの場合に関しても応答でシフトがあるとき、より高い全ヒーター電力設定でさえも、傾斜は比較的変動しないままである。図28には、NO(0及び200ppmのNO2)とNO2(0及び200ppmのNO)に関する感度(mV/decade ppmのNOまたはNO2感度)対全ヒーター電力のプロットが示されている。この図において、NOとNO2の両方に対する感度は、LCO(2)電極温度が上昇するにつれて、全ヒーター電力の増加と共に増加することに留意すべきである。NO及びNO2濃度のそれぞれの組み合わせに関して、特徴的な電圧変化が生まれる。これは、0mW、13mW及び54mWそれぞれに関してセンサ応答対ガス混合物中の全NOxppmを示す、図29から31に示されている。ヒーターを使用しない場合(図29)、LCO(4)-LCO(2)信号はNOに対して無反応であるが、NO2に対しては感度はある。従って、これらの条件下では、LCO(4)-LCO(2)電極-対は、NO2に対して選択的である。しかしながら、加熱されたLCO(2)電極の温度が高くなる(即ち、ヒーター電力を適用するとき)につれて、図29から31から明らかなように、信号がNOに対して感受性になるにつれて、NO2感度は維持したままで、全NOx測定は可能になる。図30と31とを比較すると、ヒーター電力がさらに増加するにつれて、NO及びNO2に対する感度はさらにもっと増加する。さらに、NO(0ppmと200ppmのNO2)とNO2(0ppmと200ppmのNO)を含むガス混合物測定の間では重複がある。たとえば、全NOx濃度400ppm(200ppmのNOと200ppmのNO2)では、測定値がNO2の動的ガス段階(dynamic gas step)と固定(static)NO濃度、またはこの反対の場合で測定したかにかかわらず、センサ応答は全く同じである。要約すると、少なくとも一方の検出電極の温度をもう一方に対して変動させることにより、電極-対を形成するそれぞれの電極に関して同一材料を使用するときでも、NOとNO2とのガス混合物中の全NOxを測定することが可能になる。
【0049】
図22から31に示されているように、図7及び8の態様及び同様のセンサアレイは、NO及びNO2の個々の濃度を検出する能力をもつ。これは、LCO(2)-Pt(1)電極-対が、LCO(2)電極を局所的に加熱する時に、NOxガス混合物中でNOよりもNO2を選択的に検出できるため可能である。さらに同一材料の二つの検出電極から作られるが異なる温度であるLCO(4)-LCO(2)電極-対も、全NOxを検出することが可能である。NO濃度は、検出したNOx濃度から検出したNO2濃度を引くことによって計算することができる。この方法は間接的ではあるが、同様または異なる温度の電極-対を形成する個々の電極を局所的に加熱する同じ方法を使用して、図9〜16に示されているようにNO、NO2、(またはCO、CO2、アンモニア及び他のガス)の選択的検出を提供し得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明に従ったデバイスの具体的態様を示す。
【図2】図2は、図1の態様の断面図を示す。
【図3】図3は、三つの検出電極からとった非加熱(non-heated)LCO電極対非加熱プラチナ電極のセンサ応答対NO2濃度を示す。
【図4】図4は、三つの検出電極からとった加熱LCO電極対非加熱プラチナ電極のセンサ応答対NO2濃度を示す。
【図5】図5は、三つの検出電極からとった加熱LCO電極対非加熱プラチナ電極のセンサ応答対NO2濃度を示す。
【図6】図6は、三つの検出電極からとった非加熱LCO電極対非加熱プラチナ電極のセンサ応答対NO2濃度を示す。
【図7】図7は、本発明の追加の態様を示す。
【図8】図8は、図7の態様の断面図を示す。
【図9】図9は、温度差が増加していく結果を示す、非加熱LCO検出電極と加熱プラチナ検出電極をもつ電極-対、LCO(4)-Pt(3)のセンサ応答対NO濃度を示す。
【図10】図10は、温度差が増加していく結果を示す、非加熱LCO検出電極と加熱プラチナ検出電極をもつ電極-対、LCO(4)-Pt(3)のセンサ応答対NO2濃度を示す。
【図11】図11は、NOのガス濃度における変化に応答する、図7及び8の態様のLCO(4)-LCO(2)及びPt(3)-Pt(1)電極-対からの信号の結果を示す。
【図12】図12は、NO2のガス濃度における変化に応答する、図7及び8の態様のLCO(4)-LCO(2)及びPt(3)-Pt(1)電極-対からの信号の結果を示す。
【図13】図13は、NOのガス濃度における変化に応答する、図7及び8の態様のLCO(2)-Pt(3)及びLCO(4)-Pt(1)電極-対からの信号の結果を示す。
【図14】図14は、NO2のガス濃度における変化に応答する、図7及び8の態様のLCO(2)-Pt(3)及びLCO(4)-Pt(1)電極-対からの信号の結果を示す。
【図15】図15は、NOのガス濃度における変化に応答する、図7及び8の態様のLCO(4)-Pt(3)及びLCO(2)-Pt(1)電極-対からの信号の結果を示す。
【図16】図16は、NO2のガス濃度における変化に応答する、図7及び8の態様のLCO(4)-Pt(3)及びLCO(2)-Pt(1)電極-対からの信号の結果を示す。
【図17A】図17Aは、図7及び8に示されている態様の温度等高線プロットを示す。
【図17B】図17Bは、図17Aの断面の温度プロフィールを示す。
【図18A】図18Aは、複数の電極対が存在していてもよい、上部に配置された検出電極と埋め込まれたヒーターとを備えた電解質と、構造支持体を備えた態様を示す。
【図18B】図18Bは、複数の電極対が存在していてもよい、上部に配置された検出電極と、電解質と、埋め込まれたヒーターを備えた構造支持体、を備えた態様を示す。
【図18C】図18Cは、背面にヒーターを備えた構造支持体と、複数の電極対が存在していてもよい、上部に配置された検出電極と電解質、を備えた態様を示す。
【図18D】図18Dは、背面にヒーターを備えた構造支持体と、複数の電極対と電解質層とが存在していてもよい、種々の電極-対用の検出電極を備えた別個の電解質層、を備えた態様を示す。
【図19】図19は、埋め込まれたヒーターを備えた電解質支持体と、複数の電極対と電解質層とが存在していてもよい、電解質の反対側に検出電極を備えた態様を示す。
【図20】図20は、構造体電解質内に一つ以上のチャンバをもつ態様を示し、ヒーターはチャンバの一つの面上に配置され、検出電極は反対の面上に配置され、追加の検出電極は構造体電解質の外側に配置されており、ここでチャンバは参照ガス用に使用することができる。
【図21A】図21Aは、電解質及び/または構造支持体の上部に互い違いに、且つ互いに離れている検出電極を備えた態様を示す。
【図21B】図21Bは、ガス流方向に対して異なるように配置された検出電極を備えた態様を示す。
【図22】図22は、全ヒーター電力の種々の場合に関する、図9〜16よりも高い周囲温度で試験した、図7及び8の態様のLCO(2)-Pt(1)電極-対に関するセンサ応答対NO2の(対数目盛)プロットを示し、ここで試験条件は、NO0ppmとNO200ppmガス混合物のNO2ガス段階を含む。
【図23】図23は、全ヒーター電力の種々の場合に関する、図9〜16よりも高い周囲温度で試験した、図7及び8の態様のLCO(2)-Pt(1)電極-対に関するセンサ応答対NOの(対数目盛)プロットを示し、ここで試験条件は、NO0ppmとNO2200ppmガス混合物のNOガス段階を含み、ここでNO2のNOガス流への導入によって生じた応答におけるシフトも付す。
【図24】図24は、図7及び8の態様に関する、図22の(均等目盛)プロットを示し、NO20〜200ppmの電圧変化はそれぞれのヒーター電力条件に関して付す。
【図25】図25は、図22及び23からとった、図7及び8の態様の、LCO(2)-Pt(1)電極-対に関する感度対全ヒーター電力を示す。
【図26】図26は、全ヒーター電力の種々の場合の、図9〜16よりも高い周囲温度で試験した、図7及び8の態様のLCO(4)-LCO(2)電極-対のNO応答を示す。
【図27】図27は、全ヒーター電力の種々の場合の、図9〜16よりも高い周囲温度で試験した、図7及び8の態様のLCO(4)-LCO(2)電極-対のNO2応答を示す。
【図28】図28は、図26及び27からとった、図7及び8の態様の、LCO(4)-LCO(2)電極-対に関する感度対全ヒーター電力を示す。
【図29】図29は、ヒーターを使用せずに(即ち全ヒーター電力は0mW)、図7及び8の態様の、LCO(4)-LCO(2)電極-対の全NOx検出能力を示す。
【図30】図30は、全ヒーター電力13mWでの、図7及び8の態様の、LCO(4)-LCO(2)電極-対の全NOx検出能力を示す。
【図31】図31は、全ヒーター電力54mWでの、図7及び8の態様の、LCO(4)-LCO(2)電極-対の全NOx検出能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の態様は、一種以上のガスを検出するためのガスセンサ及び方法に関し、具体的な態様は、一種以上のガスを検出するための電位差ガスセンサ及び方法に関する。追加の態様は、一種以上のガスを検出するための電流測定及び/またはインピーダンス測定ガスセンサ及び方法に関する。一態様は、デバイスの感度及び種選択性が種々の対の検出電極間で微調整できるように、似たような温度または種々の温度で保持される検出電極のアレイを含む。具体的な態様は、燃焼排ガス及び/または反応副生成物をモニターするためのガスセンサアレイに関する。本発明に関連するデバイスの一態様は高温で作動し、過酷な化学的環境に耐えることができる。
【0052】
デバイスの態様は、電極を同一平面上にできる、同一環境中に検出電極をもつことができる。これらのセンサの感度及び選択性は温度により変動し得る。従って、具体的な態様に関しては、デバイスの温度は所望により正確に制御され、且つ所望により迅速に変動され得る。注目している二種以上のガス種をモニターできるデバイスを得るためには、検出電極アレイを含むことができる。アレイ信号は線形アルゴリズム(または他の好適な(単数または複数種類の)アルゴリズム)によって、一種以上の個々の種の存在及び/または濃度を決定することができる。パターン認識は実施するのには容易な仕事ではないため、追加の電子機器が必要となり得、それによりデバイスのコストが吊り上がるので、最小の干渉で他の種の存在下で単一種を個々にモニターする能力をもつのが好ましい。このようにして、本デバイスは、もしあったとしても大規模なパターン認識は全く必要としないであろう。
【0053】
本発明の態様は、個々の検出電極及び/または全デバイスの温度を変えることにより、選択性及び感度に改良点を提供することができる。さらに温度を一様に保持する場合には、信号ノイズを改善することができる。また、本デバイスの態様に温度制御を組み込むと、デバイスの経時におけるセンサ性能の変化まはた完全な故障となる電極「作用阻害(poisoning)」や他の現象を低減させ、または、逆転させることが可能である。
【0054】
本方法及びデバイスは、燃焼副生成物のモニタリングまたは化学/ガスモニタリング用の他のプロセスに使用することができる。具体的な態様では、本デバイスは、触媒式排出ガス浄化装置(catalytic converter)が故障したかを測定するために、または駆動条件が変化するにつれて変動するかもしれない、EPA(または他の)要件をベースとするエンジンの空気対燃料費を調節する情報を提供するために、自動車での排出ガスをモニターするのに使用することができる。本装置は、発電所または任意の工業的製造プロセスで、燃焼副生成物(または他の化学品/ガスに関連するプロセス)をモニターするのにも使用することができる。
【0055】
本発明に従ったセンサアレイの態様は、小さなサイズで且つ低電力消費のために組み立てられた集積プラチナヒーター及び温度センサを含む。アレイは、長方形の、テープキャストYSZ基板の同一面上に全て、二つのLa2CuO4電極とプラチナ参照電極を含む。プラチナレジスタ部材はヒーター及び/または温度センサとして使用して、検出電極の温度を制御且つモニターする。有限要素モデリングを使用して、アレイ内の温度プロフィールを推測した。次いでアレイは、他の二つの電極に関してLa2CuO4電極を熱く保持するように設計した。このデバイスからの結果は、種々の温度に保持した検出電極をもつガスセンサアレイが、NO及びNO2濃度を選択的に決定し得るデバイスを生成し得ることを示した。追加の態様では、センサアレイの選択性は、検出電極の局所温度を制御することによって高めることができる。
【0056】
検出電極の局所温度の制御は、加熱に加えて、または加熱する代わりに冷却することによって実行することができる。当業界で公知の受動(passive)及び/または能動(active)冷却法を、本発明で用いることができる。
【0057】
検出電極は、金属(たとえばプラチナ)、半導体(たとえば、La2CuO4若しくはWOなどの半導体酸化物)、またはガスに対して感受性を示す他の材料で製造することができる。通常、任意の所与の検出電極材料は、電極の温度に依存して、種々のガス種に対して様々な感度及び選択性をもつだろう。変動する感度及び/または選択性の程度は、材料、ガス及び温度に依存する。それぞれの電極は一つ以上の「電極-対」の一部であってもよい。このことは、測定可能な信号数が実際の検出電極数よりも多くなることがあり得ることを意味する。具体的には、センサアレイの設計は、(個々のデバイスとして、または単一デバイス内に一緒に)二つの異なる「電極-対」スキームを含むことができる。一つのスキームでは多数の材料を同時に使用でき、これは同一及び/または異なる温度に保持することができる。温度制御は、加熱及び/または冷却技術により実施することができる。デバイスは、一種以上の種々の温度に保持されている同一材料の複数の電極も含むことができる。同一材料の電極は、同一温度に保持することができ、一種以上の他の特徴の電極、たとえば微細構造、サイズまたは厚さは、種々の電極で異なり得る。従って、ガスセンサアレイは、用途に依存して、単一デバイス内にこれらのスキームの一つ以上を使用することができる。
【0058】
本発明に従ったガスセンサは、個々の検出電極の上側の温度を制御するために特別に設計された加熱部材を含むことができる。一態様では、検出電極は基板の上側にあり、加熱部材は基板の背面にある。別の態様では、検出電極は基板の両側にある。基板は、たとえばYSZ基板または他の電解質であり得る。基板は構造支持体、たとえばAl2O3などであってもよく、電解質層は上部にある。加熱部材は、過酷な環境中で経時で劣化しない熱的及び化学的安定性をもつプラチナなどの任意の材料で作ることができる。加熱部材はレジスタとして機能し、加熱部材に電流を通すことによって、ジュール熱により発熱することができる。
【0059】
本発明の種々の態様に従って、基板用に種々の電解質材料を使用することができ、検出電極には種々の材料を使用することができ、任意の加熱部材を使用することができる。好適な材料の例は、本明細書中、その全体が参照として含まれる米国特許第6,598,596号に記載されている。電極は、金属及び半導体などの種々の材料から製造することができる。半導体材料は好ましくは金属酸化物または金属酸化物化合物である。「金属酸化物(metal oxide)」及び「金属酸化物化合物(metal oxide compound)」なる用語は、O2と混和した元素金属をもつ化合物を意味するために本明細書中で交換可能に使用される。本発明で有用な金属酸化物の例としては、SnO2、TiO2、TYPd5、MoO3、ZnMoO4(ZM)及びWO3及びWR3、La2CuO4並びにその混合物が挙げられる。半導体材料は金属酸化物を含み得る。金属酸化物は、好ましくはSnO2、TiO2、TYPd5、MoO3、ZnMoO4またはWR3であり、ここでTYPd5及びWR3は以下に定義される頭字語である。頭字語TYPd5は本明細書中、約85:10:5の重量比でTiO2(チタニア)、Y2O3(イットリア)及びPdを選択することにより製造される複合材料(composite)を表すのに使用する。
【0060】
電解質は好ましくは酸素イオン伝導性電解質(oxygen ion-conducting electrolyte)である。酸素イオン伝導性電解質は、ZrO2、Bi2O3またはCeO2をベースとすることができる。好ましい酸素イオン伝導性電解質は電解質混合物であり、この混合物は通常、ZrO2、Bi2O3またはCeO2などのベース材と、安定剤として機能し得るカルシア(calcia)(CaO)及びイットリア(Y2O3)などの一種以上のドーパント、または他の数種の好適な酸素イオン透過可能な材料を含む。たとえばイットリアで安定化させたジルコニア(yttria stabilized zirconia:YSZ)電解質はイットリアとZrO2とを混合することによって形成し得る。ハロゲン化物などの酸素イオン以外のイオン種を伝導する電解質は当業界で公知であり、ハロゲン含有ガス種を測定するために本発明でも有用性が知見されている。電解質用材料の選択は、測定すべきガス混合物中の成分に依存し得る。かくして、たとえばNOx、COxまたはSOxなどの酸化物成分の濃度を測定するためには、電解質は酸素イオン伝導性電解質であるのが好ましい。好ましい酸素イオン伝導性電解質は、ジルコニア(ZrO2)、酸化ビスマス(Bi2O3)及びセリア(CeO2)をベースとする電解質混合物である。実際の電解質混合物は通常、カルシア(CaO)及びイットリア(Y2O3)などの一種以上のドーパントまたは、数種の他の好適な酸素イオン透過可能な材料を含む。
【0061】
ガスセンサの具体的な態様は、二つのLCO検出電極と二つのプラチナ参照電極とを含む。内側LCO及びPt電極を加熱し、同時に外側LCO及びPt電極は周囲温度近くに保持する。さらに、複数の電極対の間の電位差を測定して、信号を提供することができる。材料及び操作温度の同一の組み合わせの電極としないことにより、四つの電極の組み合わせによって検出し得る全部で六つの別個の信号がある。これらの信号を比較して、ガス混合物中のガス濃度を検出し易くできる。
【0062】
これらのデバイスの温度制御は重要であり得る。最小変動で温度を詳細に制御すると、デバイスは安定なセンサ信号を発生することができる。従って、サーマルモデリングを設計段階で実施して、アレイ基板上の検出電極及び加熱電極の種々の位置でデバイスの温度プロフィールに関して情報提供することができる。
【0063】
プラチナは、加熱部材及び温度センサの製造に使用することができる。プラチナは、耐久性並びに化学的及び熱的安定性のため、高温耐性-温度デバイス(resistance-temperature-device:RTD)用及びガスセンサの加熱部材として業界標準である。しかしながら、本デバイスにおけるヒーターとして、他の材料を使用することができる。
【0064】
表面温度測定は困難であり、利用可能な最適方法の幾つかでは、光学赤外センサ及びRTDの使用が挙げられる。約400℃未満では、プラチナの耐性は温度に対して一次従属性(linear dependence)である。しかしながら、この温度を超えると、さらなる熱損失により、線形モデルが実験データから逸脱してしまうので、代わりのモデルは、
R(T)=a(1+bT−cT) (1)
(式中、a、b及びcは実験係数である)となる。このデータがモデルに合えば、ソフトウエアにより、(1)からの係数とプラチナ部材の抵抗測定値を使用して、センサ操作の間に表面温度を計算することができる。
【0065】
加熱部材は別の物体を加熱するためだけでなく、同時に温度センサとして使用することができる。ヒーターの抵抗が(たとえば、4線法を使用して)正確に測定できるならば、プラチナ部材の温度を計算することができる。ジュール熱のため、電流がヒーターに提供されるに連れて抵抗は増加する。これは電圧または電流測定に大きくは影響しない。即ち、測定値は、ヒーターを横切る電圧降下及び回路内の実電流を表す。従って、計算された抵抗値、そしてヒーターの温度は真の値を表す。
【0066】
加熱部材の形状は温度分布に重要である。一態様では、検出電極の温度は均一であるか、所望により好ましい方法では不均一である。一態様では、加熱部材はC-形状である。曲がりくねったパターンのヒーターも使用することができる。らせん形のヒーター、または任意の他の形状のヒーターも使用することができる。加熱部材は、印加電圧または電流のいずれかによって制御することができる。使用する加熱部材の制御方法は用途に依存する。一例として、自動車では、自動車のバッテリーは、加熱部材が電圧制御されるような電源であり得る。
【0067】
具体例では、YSZ基板は、一面上に複数の検出電極を有し得る。プラチナ(または他の抵抗材料)部材は、電極に整列してYSZ基板の反対面にある。検出電極は、互いに対称または非対称で配列(orient)されていてもよいし、これらは互い違い(stagger)になっていてもよい。プラチナ(または他の抵抗材料)部材はヒーターとして使用する必要がない。プラチナ部材は、ヒーター及び/または温度センサとして使用することができる。別の態様では、半導体部材は、たとえば熱電冷却によって、電極の冷却に使用することができる。冷却部材は、デバイスの特定の領域を冷却できる任意の材料でも製造することができる。加熱/冷却部材及び/または表面温度センサの熱的特徴は、デバイスの熱特性に影響を与えるデバイスへの特定の形状若しくは設計変更、たとえば空隙により、またはデバイス構造中に一体化される絶縁材料を使用することによって改善することができる。基板の形状も変更することができる。
【0068】
図1は、本発明に従ったデバイスの具体的な態様であり、図2は、同一態様の断面図を示す。このデバイスは、基板の第一面に、基板の間に二つのLa2CuO4電極とそれらの間にプラチナ電極を含み、ここで基板は電解質である。プラチナヒーターと二つのプラチナ温度検出部材は、基板のもう一面に配置することができる。図3〜6は、三つの検出電極からとった二つの異なる電極-対の組み合わせに関するセンサ応答対NOとNO2の濃度を示す。これらの結果は、デバイスが、NO2に主に感受性であった信号と、NOとNO2の両方に感受性であった信号とを発生できたことを示す。かくして、NOとNO2の個々の濃度の間接的な検出は、引き算によって可能である。
【0069】
図7は、本発明の別の具体的な態様を示し、図8は同一態様の断面を示す。このデバイスは、基板の一面に互いに交互嵌合(interdigitate)された、二つのLa2CuO4電極と二つのPt電極とを含む。電解質を含んでいる基板のもう一方の面には、四つのプラチナ電極があり、ここでは内側の二つがヒーターと温度センサであり、外側の二つが温度センサである。この配置によって、二つのLCO電極は様々な温度に保持され、且つ二つのプラチナ検出電極は様々な温度に保持することができる。もし二つの加熱された電極が一定温度に保持されると、これによって信号を受けるために6つの電極-対の組み合わせとなる。加熱された電極が操作の間にもっと高い温度を有するように設計されていると、もっと多くの電極-対の組み合わせを作り出すことができ、二つの異なる温度で特定の電極は、出力センサ信号を提供する目的のために二つの電極として機能する。図9〜10は、非加熱LCO電極と加熱プラチナ電極をもつ電極-対のNOおよびNO2に対するセンサ応答を示し、それぞれの電極の温度差と絶対温度を増加させる結果について示している。図9〜10からのプロットの傾斜は、感度(ガス濃度におけるディケード変化毎の信号のmV変化)を表して、図11〜16に提供されている傾向プロット(trend plot)をつくることができる。それぞれの曲線は異なるヒーター設定点を表し、これは図7〜8に示されているデバイスの電極間の異なる温度差を示す。これは、図7〜8に示されているデバイスの四つの検出電極からの六つの電極信号のそれぞれに関して繰り返した。この傾向プロットにおいて、|dT|がゼロに等しい場合の曲線は、ヒーターが操作されていなかった場合である。
【0070】
図7〜8に示されているデバイスに関して、デバイス自体の上の検出電極よりももっと多くの信号を測定することができる。これは電極の幾つかが様々な温度であるため可能である。さらに、デバイスは、NOだけに選択的である電極-対と、NO2だけに選択的である他の電極-対をもつことができる。他の態様では、CO及びCO2などの他のガスに選択的である電極対をもつことができる。実際、ヒーター設定点の幾つかに関しては、より正または負のいずれかになるのに連れて、その信号方向を切り替える電極-対の例があった。このことは、所与の電極材料または材料の対に関して、温度をそれらの間で異なるように保持すると、一種以上のガスに対して感受性または非感受性であるように、電極-対を使用できることを示している。
【0071】
さらに、センサは、電極-対を作っている電極間の温度差及び絶対温度の両方を変える好都合な点をもち得る。所与の種に対する感度は通常、高温では変化する。二つの検出電極を、一つのガスに対してもはや感受性でない温度であるが、両方とももう一つのガスに対してはまだ感受性である温度より上にすると、信号は選択的であろう。さらに、二つの電極の一方の温度をさらに高めると、現在は選択的である信号は、電極の個々の電位がさらに変化するにつれて、感度が増加するという利益を受けるだろう。このことは、電極が暴露される特定のガス種と温度により、検出電極の感度がどのように変わるかに基づいて利用することができる。具体的な態様では、パターン認識を使用しないので、デバイスコストを低減化し、センサ性能を改善する。電極間の温度差を得るのと同一方法を使用して電極-対の幾つかの感度を増加させることができるので、性能も改善される。これはデバイスの微細構造及び形状を変えることによっても改善することができる。
【0072】
本発明の種々の態様で使用される検出電極アレイは、種々の検出電極を含むことができる。所望により参照または擬似-参照電極を含むことができる。態様によっては、それぞれの検出電極は、「検出電極-対」を形成するために使用することができる。さらにそれぞれの検出電極をアレイの他の検出電極と組み合わせて使用して、複数の電極-対を形成することができる。種々の電極形状(configuration)または特性は、センサが機能するように変更し得る。これにより、具体的な用途に関してデバイスを所望の性能(たとえば感度、選択性及び応答時間)を達成するように具体的に調整できる。
【0073】
具体的な設計及び/または用途に依存して、検出電極は、同一または異なる電極材料を使用して同一及び/または異なる微細構造を使用して、同一及び/または異なる形状(geometry、形状及び厚さ)を使用して形作ることができ、及び/または同一または異なる温度で操作される。重要なことは、電解質が二つの電極と接触しているとき、検出電極-対を形成するために使用すべき二つの電極は、測定すべきガス種を含むガス混合物または測定すべきガス種に暴露されていると、検出電極-対にわたって電位差(voltage potential)を生み出すはずだということである。二つの電極が様々な温度で、様々な微細構造、様々な形状(形及び厚さ)、様々な材料、及び/または幾つかの点で材料を変える任意の他の変化、の組み合わせをもつことによって、検出電極-対を作り出す条件が存在することができる。
【0074】
検出電極の温度制御を使用して、所望の性能を達成することができる。検出電極-対に依存して、測定された信号の性能は通常、熱変形(thermal modification)により変更することができる。さらに、温度は、外部供給源(たとえばガス流温度の変化など)により、変化しないようにするのが好ましい。従って、デバイスの態様は、検出電極の温度をモニターするための手段及び、必要によりそれらの温度を変える手段を含むことができる。
【0075】
加熱部材を使用して、必要により検出電極の温度を変更することができる。加熱部材は、検出電極からみて基板の反対側にあってもよく、それぞれは具体的な検出電極に好適に整列している。加熱部材は、検出電極と同様に、基板の同じ側に配置され得る。加熱部材は電解質または支持体の中または上に埋め込まれていてもよい。デバイス上の理想熱分布を得るために、種々の加熱部材パターン(たとえばC-形、らせんまたは曲がりくねったパターン)を用いることができる。熱はジュール熱(熱=電力X時間=電流2X抵抗X時間)により発生することができる。加熱電流は、制御された電圧または電流であってもよく、パルスまたは一定で供給されてもよい。加熱電流は、単純な電流分割によりまたは加熱部材への個々の(電流若しくは電圧)出力により供給することができる。
【0076】
検出電極の温度は、単独または加熱と連動して、冷却により制御することもできる。一態様において、冷却は、例えば固相ヒートポンプを使用する、熱電気的冷却(thermoelectric cooling)として公知の方法を使用して実施することができる。冷却はヒートシンクを使用しても実施することができる。デバイスの他の領域の温度を変動させることによって、検出電極の下の温度も下げることができる。デバイスの特定領域の冷却を実施するための他の設計も可能である。
【0077】
温度モニタリングは、金属、半導体または検出電極の下若しくはその近くの領域を覆う他の材料でできた部材の抵抗または他の温度に関連するパラメーターを測定することにより実施することができる。温度センサも埋め込んだり、表面に露出させたままにすることができる。RTD及び熱電対の使用などを含む温度検出の多くの方法が可能である。温度センサは、加熱部材と同時に機能することができるか、独立型部材であり得る。温度センサは、冷却または加熱部材と同様に同時に作用することができる。
【0078】
幾つもの様々な信号をモニターし得る。モニターし得る種々の信号のうちの幾つかとしては、検出電極の電圧及び/または検出電極-対の電圧差が挙げられる。多重化(multiplexing)を使用して、対応する複数の検出電極-対からの複数の電圧信号をモニターすることができる。抵抗または温度センサの他のパラメーターのモニタリングも実施することができ、多重化することもできる。
【0079】
種々の態様は、検出電極に関する電気的特徴を測定するための検出器を含む。センサアレイにおける一つの検出方法は電位差滴定であってもよい。アレイは、ガス種を検出するための伝導度測定(インピーダンス測定(impedencemetric))、電気容量測定(capacitve)または他の方法などの他の検出法を含むことができる。センサアレイの拡張は、通常の測定システムに接続された別の基板で、または一体的に実施することができる。
【0080】
本デバイスの態様の製造では、多くの技術を使用することができる。複数デバイス(multiple device)は同時に製造することができるか、または製造後に種々の手段で分離することができる。以下の技術の任意の組み合わせを使用することができる。テープキャスティング及び/またはスクリーン印刷などの多層形成(multilayer fabrication)を使用することができる。ボトムアップ(追加の)アプローチ、たとえば直接法(direct-write method)(たとえばポンプまたはエーロゾルベースの蒸着)、レーザーマイクロマシニング、及び/またはレーザー焼結などを使用することができる。多段階(減法)アプローチ、たとえばフォトリソグラフィー、並びに、マイクロエレトロニクス及びマイクロエレクトロ-メカニカルシステム(MEMS)の製造で使用される他の技術を使用する微細加工、及び/または電子ビーム及びレーザビーム減法加工(subtractive fabrication)などを使用することができる。メタライゼーションまたはワイヤ接続法で使用される金属などのワイヤ接続法及びメタライゼーション(metalization)は、過酷な環境に耐えなければならない。ワイヤ接続(wire bonding)(たとえばAuまたはPtワイヤ)、ロウ付け、及び/またはワイヤ接続の他の方法を使用することができる。種々のメタライゼーション(材料かそうでないもの)は多くの層に存在し得、デバイスの層間または外部に存在するバイアス(vias)により互いに接続され得る。デバイスパッケージ化は、標準または他のパッケージング技術により実施することができる。高温(または任意の他の)エレクトロニクス及び/またはセンサの設計を本デバイスに関して使用し得る。これらは、モノリシックデバイス(monolithic device)用のセンサに組み込むことができ、またハイブリッドシステムの一部として存在することができる。
【0081】
本明細書中で参照または引用した全ての特許、特許出願、仮特許出願及び刊行物は、本明細書の明確な教示と矛盾しない程度まで、全ての図面及び表を含めてその全体を参照として含まれる。
【0082】
本明細書に記載の実施例及び態様は単なる説明目的のためのものであり、当業者にはその範囲内で種々の変更または変形が示唆され、本出願の趣旨及び範囲内に含まれるべきであることは理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質と接触している検出電極であって、目的の環境に暴露される前記電極;
前記検出電極の温度を変更するメカニズム;及び
前記検出電極について電気的特徴を測定するための検出器;
を含むガスセンサであって、ここで測定された電気的特徴は、目的の環境における一種以上のガスに関する情報を提供する、前記ガスセンサ。
【請求項2】
前記検出電極が基板表面上に配置されており、前記基板は電解質を含む、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記検出器は前記検出電極と参照との間のEMFを測定する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記検出器は前記電極のインピーダンスを測定する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記検出器は電極の電流を測定する、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項6】
測定されたEMFは、第一のガスが目的の環境中に存在するかどうかを示す、請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項7】
測定されたEMFは目的の環境中に存在する第一のガスの濃度を示す、請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項8】
少なくとも一つの追加の検出電極をさらに含む、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記少なくとも一つの追加の電極の一つが参照である、請求項8に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記検出電極の温度を変更できるメカニズムがヒーターを含む、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記ヒーターが前記電解質と熱的に接触している、請求項10に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記ヒーターは前記電解質及び検出電極から離れている、請求項10に記載のガスセンサ。
【請求項13】
前記ヒーターは前記検出電極を放射加熱する、請求項10に記載のガスセンサ。
【請求項14】
前記ヒーターは前記検出電極を伝導的に加熱する、請求項10に記載のガスセンサ。
【請求項15】
前記ヒーターは、前記検出電極と、電流で電極を駆動するための電源とを含む、請求項10に記載のガスセンサ。
【請求項16】
前記検出電極の温度を変動できるメカニズムは、前記検出電極を冷却することができる、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項17】
前記ヒーターは加熱部材を含み、加熱電流が加熱部材を通るとき、前記加熱部材は電極を加熱する熱を発生する、請求項10に記載のガスセンサ。
【請求項18】
さらに電解質と接触している少なくとも一つの追加の検出電極を含み、ここで前記検出電極と、前記少なくとも一つの追加の検出電極は、検出電極のアレイを形成する、請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項19】
前記参照は少なくとも一つの追加の検出電極の一つであり、前記参照は前記検出電極とは異なる形状である、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項20】
前記参照は少なくとも一つの追加の検出電極の一つであり、前記参照は前記検出電極とは異なる温度である、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項21】
前記参照は少なくとも一つの追加の検出電極の一つであり、前記参照は前記検出電極とは異なる材料から製造される、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項22】
前記参照は少なくとも一つの追加の検出電極の一つであり、前記参照は前記検出電極とは異なる微細構造を含む、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項23】
測定すべきガスに暴露すると、電極アレイの選択された二つの電極間でEMFが発生する、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項24】
前記電極アレイは同一材料だけから形成された電極含み、前記電極アレイの電極は、加熱部材の対応するアレイによって一種以上の異なる温度に保持される、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項25】
異なる温度に保持された電極アレイの任意の二つの電極は電極-対として機能する、請求項24に記載のガスセンサ。
【請求項26】
同一材料から形成され且つ同一温度に保持された電極は、様々な微細構造、サイズまたは厚さをもつ一つ以上の電極を含む、請求項24に記載のガスセンサ。
【請求項27】
異なる温度に保持され、異なる微細構造をもち、異なるサイズをもち及び/または異なる厚さをもつ電極アレイの任意の二つの電極は、電極-対として機能する、請求項26に記載のガスセンサ。
【請求項28】
前記電極アレイは第一の材料の一つ以上の電極と、第二の材料の一つ以上の電極とを含み、前記電極アレイの電極は加熱部材のアレイにより一以上の異なる温度に保持される、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項29】
異なる材料で形成される及び/または異なる温度で保持される電極アレイの任意の二つの電極は電極-対として機能する、請求項28に記載のガスセンサ。
【請求項30】
同一材料で形成し同一温度に保持された電極は、種々の微細構造、サイズ、または厚さをもつ一つ以上の電極を含む、請求項28に記載のガスセンサ。
【請求項31】
異なる材料により形成され、異なる温度に保持され、異なる微細構造をもち、異なるサイズをもち及び/または異なる厚さをもつ電極アレイの任意の二つの電極は、電極-対として機能する、請求項30に記載のガスセンサ。
【請求項32】
前記電極アレイの電極は、金属または半導体酸化物を含む、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項33】
前記電極アレイの電極は少なくとも一つのプラチナ電極を含む、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項34】
前記電極アレイの電極は少なくとも一つのLa2CuO4(LCO)電極を含む、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項35】
前記加熱部材のアレイは抵抗部材を含む、請求項28に記載のガスセンサ。
【請求項36】
前記抵抗部材はプラチナから形成される、請求項35に記載のガスセンサ。
【請求項37】
各抵抗部材は、電極アレイの電極の一つに対して電解質の反対面にパターンとして配置される、請求項35に記載のガスセンサ。
【請求項38】
各抵抗部材のパターンは、C-形パターン、らせんパターンまたは曲がりくねったパターンを含む、請求項35に記載のガスセンサ。
【請求項39】
検出電極の温度を測定するための温度センサをさらに含む、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項40】
前記検出電極が半導体から製造される、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項41】
前記検出電極は金属製である、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項42】
前記半導体は金属酸化物または金属酸化物化合物である、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項43】
前記半導体は以下のSnO2、TiO2、TYPd5、MoO3、ZnMoO4(ZM)及びWO3及びWR3、La2CuO4並びにその混合物の一つ以上を含む、請求項42に記載のガスセンサ。
【請求項44】
前記電解質は酸素イオン伝導性電解質である、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項45】
前記電解質がZrO2、Bi2O3またはCeO2をベースとする、請求項44に記載のガスセンサ。
【請求項46】
前記一種以上のガスが一種以上のNOx、COx及びSOxである、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項47】
前記一種以上のガスがNOである、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項48】
前記一種以上のガスがNO2である、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項49】
前記一種以上のガスがNO及びNO2である、請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項50】
前記電極アレイの第一の電極-対は前記一種以上のガスの第一のガスに関する情報を提供する第一の電気的特徴を提供し、且つ前記電極アレイの第二の電極-対は前記一種以上のガスの第二のガスに関する情報を提供する第二の電気的特徴を提供する、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項51】
前記第一のガスがNOであり、且つ第二のガスがNO2である、請求項50に記載のガスセンサ。
【請求項52】
前記電極アレイの第一の電極-対は一種以上のガスの第一のガスに関する情報を提供する第一の電気的特徴を提供し、且つ前記電極アレイの第二の電極-対は前記一種以上のガスの前記第一及び第二のガスに対して情報を提供する第二の電気的特徴を提供する、請求項18に記載のガスセンサ。
【請求項53】
前記第一のガスがNO2であり、且つ二種のガスがNO及びNO2である、請求項50に記載のガスセンサ。
【請求項54】
NO及びNO2に関する前記情報は、NO及びNO2の濃度の合計である、請求項53に記載のガスセンサ。
【請求項55】
一種以上のガスを検出する方法であって、
目的の環境に対して検出電極を暴露する段階、ここで前記検出電極は電解質と接触しており;
前記検出電極の温度を変更する段階;及び
前記検出電極に関して電気的特徴を測定する段階;
を含み、
ここで測定した電気的特徴は、目的の環境中の一種以上のガスに関する情報を提供する、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2011−501127(P2011−501127A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529056(P2010−529056)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/079416
【国際公開番号】WO2009/049091
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(504433168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インク. (10)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF FLORIDA RESEATCH FOUNDATION,INC.
【Fターム(参考)】