説明

離型フィルムおよびこの製造方法

本発明は、合成樹脂を含む基材フィルムと、前記基材フィルムの上に形成され、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む1以上の突出部が形成されたエンボス模様層と、を備える離型フィルムおよびこの製造方法に係り、本発明によれば、施工性に優れており、表面粗さが低くて、高級感溢れるとともに見栄えのよい離型フィルムが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス模様層付き離型フィルムおよびこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの反射紙、広報用フィルムおよびインテリアフィルムなどには、製品の用途上、裏面に粘着剤の塗布処理を施した後、離型紙または離型フィルムで粘着剤面を保護する。すなわち、通常、粘着シートは、圧延やキャストにより基材シートを生産した後、離型紙の上に粘着剤を塗布し、粘着剤の塗布された面と基材シートとを貼り合わせて生産する。
【0003】
従来より、施工に際して、離型紙を粘着剤から引き剥がし易くするために、紙基材の上にシリコン溶液を塗布処理した離型紙が汎用されてきている。
【0004】
一般に、粘着シートは、粘着力の均一性を図るために、離型紙の上に粘着剤が一様に塗布できるように、粘着剤が塗布される離型紙面の平滑度を良好にする必要があるが、この場合、製品を所望の被着物に貼着するときに空気が抜け出ず、シートの表面が膨らんでしまう現象が発生するという不都合があった。
【0005】
このような問題点を解決するために、離型紙の粘着剤が塗布される面に所定の間隔をあけてエンボス模様を与えて施工に際して空気が抜け出る通路を提供する方案が提案されている。
【0006】
ところが、従来の方法によって形成されたエンボス模様付き離型紙は、表面粗さが高くて外観不良を招く虞があるという問題点がある。
【0007】
このような離型紙は、現在、多くの分野、例えば、各種のステッカーをはじめとするラベル、使い捨てバンドなどをはじめとする医薬品、包装のためのテープ、アスファルト舗装、自動車の組み立て工程およびポリウレタン合成皮革などの種々の産業分野において広範に用いられているが、前記製品の外観を高級感溢れるように維持し得る離型紙の開発が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記技術開発の必要性を充足するために案出されたものであり、その目的は、合成樹脂を含む基材フィルムの上に光硬化性樹脂を用いて立体的なエンボス模様層を形成して、粘着シートを施工し易くすると共に、合成樹脂および光硬化性樹脂を用いることから、表面粗さが低くて、高級感溢れる外観を形成し得る離型フィルムおよびこの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するための手段として、合成樹脂を含む基材フィルムと、前記基材フィルムの上に形成され、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む1以上の突出部が形成されたエンボス模様層と、を備える離型フィルムを提供する。
【0010】
また、本発明は、上記の課題を解決するための他の手段として、合成樹脂を含む基材フィルムの上に光硬化性樹脂を用いてエンボス模様パターンを形成する第1のステップと、前記第1のステップにおいて形成されたエンボス模様パターンを硬化させる第2のステップと、を含む離型フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、施工性に優れており、表面粗さが低くて優れた表面外観品質が得られるエンボス模様付き離型フィルムを提供することができる。また、本発明においては、上記の離型フィルムを一層容易に且つ効率よく製造する製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る離型フィルムの断面構造を示す概略図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る離型フィルムの断面構造を示す概略図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態に係る離型フィルムの断面構造を示す概略図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態に係る離型フィルムの断面構造を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る離型フィルムの製造方法を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、合成樹脂を含む基材フィルムと、前記基材フィルムの上に形成され、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む1以上の突出部が形成されたエンボス模様層と、を備える離型フィルムに関する。
【0014】
以下、本発明に係る離型フィルムについて詳述する。
【0015】
本発明に係る離型フィルムは、上述したように、合成樹脂を含む基材フィルムと、前記基材フィルムの上に形成され、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む1以上の突出部が形成されたエンボス模様層と、を備える。
【0016】
ここで、前記合成樹脂の種類は、特に制限されるものではなく、例えば、表面粗さが低い合成樹脂フィルムを用いることが好ましい。具体的には、例えば、本発明においては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート、ポリウレタンおよびポリエステル系樹脂よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含む合成樹脂フィルムが使用でき、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含む合成樹脂フィルムが使用できる。
【0017】
このような合成樹脂を含む基材フィルムは、この分野において通常的に知られているフィルムの成形方法によって製造することができる。なお、本発明においては、基材フィルムとして合成樹脂を用いることから、従来より用いられてきている紙基材に比べて、遥かに低い表面粗さを有する結果、離型フィルムの表面粗さを顕著に下げることができる。
【0018】
一方で、本発明に係る離型フィルムは、表面粗さが低くて高級感溢れる外観を実現できるものであり、前記離型フィルムに含まれる基材フィルムの表面粗さ(Rt)は、特に制限されるものではないが、例えば、3μm以下であってもよく、具体的には、1μm以下であってもよい。前記表面粗さ(Rt)の下限は、特に制限されず、0.1μm以上であってもよい。
【0019】
ここで、表面粗さ(Rt)は、表面粗さの最大値を意味する。
【0020】
前記離型フィルムの表面粗さが3μmを超えると、表面粗さが高過ぎてこれを備える粘着シートの表面外観が不良になる虞がある。
【0021】
このような離型フィルムの表面粗さを測定する方法としては、この分野において通常的に用いられる方法であれば、いずれも制限なしに使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、株式会社ミツトヨ製の型番SJ301などの公知の測定機器を用いて測定することができ、平均粗さ値であるRzと最大粗さ値であるRtとを用いて比較することができる。
【0022】
また、本発明に係る離型フィルムは、前記基材フィルムの上に形成され、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む突出部が形成されたエンボス模様パターンを有する。
【0023】
本発明において使用できる光硬化性樹脂組成物の種類は、特に制限されるものではなく、この分野において一般的に公知の組成の光硬化性樹脂組成物が使用できる。
【0024】
本発明において使用できる光硬化性樹脂組成物の例としては、光硬化性オリゴマー、希釈剤および光開始剤を含む樹脂組成物が挙げられる。
【0025】
前記光硬化性オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコンアクリレートおよびアクリル系高分子量体の一種または二種以上の混合物が挙げられ、中でも、アクリル系高分子量体を用いることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0026】
上記の各オリゴマーの具体的な種類は、特に制限されるものではなく、この分野において公知の通常の光硬化性樹脂組成物の成分が使用できる。例えば、前記ポリエステルアクリレートとして、ポリエステルポリオールおよび(メタ)アクリル酸の縮合反応物が使用でき、エポキシアクリレートとしては、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた反応物が使用でき、ポリエーテルアクリレートとしては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが使用できる。
【0027】
また、前記ウレタンアクリレートとしては、ポリエステル型またはポリエーテル型ポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させて得られた、末端にイソシアネートが存在するウレタンプレポリマーにヒドロキシ基を含む(メタ)アクリレートを反応させて製造したものが挙げられる。前記イソシアネート化合物の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタン−4,4’ジイソシアネートなどが挙げられ、(メタ)アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0028】
さらに、アクリル系高分子量体としては、アクリル系単量体を含む単量体混合物の重合体、部分重合体またはオリゴマーが使用できる。
【0029】
本発明において、上記のアクリル系高分子量体は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸アリールエステルと、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルと、ヘテロシクリック(メタ)アクリレートと、カルボキシル基含有化合物と、ヒドロキシ基含有化合物と、窒素含有化合物と、グリシジル基含有化合物と、スチレン系化合物およびカルボン酸ビニルエステルよりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含む単量体混合物を重合または部分重合させて製造することができる。
【0030】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリール(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートまたはイソボルニル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20の直鎖状または分枝状、または非環状または環状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アリールエステルの例としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレートまたはフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレートが挙げられ、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの例としては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートまたはエトキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、ヘテロシクリック(メタ)アクリレートの例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
さらに、カルボキシル基含有化合物としては、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二重体、イタコン酸、マレイン酸またはマレイン酸無水物などが挙げられ、ヒドロキシ基含有化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレートまたは2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、窒素含有単量体としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルフォリンまたはn−置換(メタ)アクリルアミド(例えば、n−メチロール(メタ)アクリルアミド)などが挙げられ、グリシジル基含有化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、スチレン系化合物としては、スチレンまたはアルファメチルスチレンなどが挙げられ、カルボン酸ビニルエステルとしては、ビニルアセテートなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0032】
本発明において、前記アクリル系高分子量体を構成する単量体混合物は、上述した成分に加えて、さらに多官能性アクリレートを含んでいてもよい。本発明において使用できる前記多官能性アクリレートの種類は、特に制限されない。本発明においては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートまたは9,9−ビス[4−2−アクリロイルオキシエトキシフェニル]フルオレンなどの2官能型アクリレートと、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレートまたはトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型アクリレートと、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型アクリレートと、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型アクリレートと、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレート(例えば、イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物などの6官能型アクリレート)などが使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0033】
本発明においては、上記の各種の単量体のうち単量体混合物に含まれる単量体の種類および2種以上配合された場合における配合割合などは特に制限されず、目的とする特性を考慮して自由に選択することができる。
【0034】
本発明において、上記の単量体混合物を用いてアクリル系高分子量体を製造する方法は、特に制限されず、例えば、バルク重合などの通常の方式により、前記単量体混合物を重合または部分重合させて製造することができる。
【0035】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上述したオリゴマー成分に加えて、さらに希釈剤を含んでいてもよい。このような希釈剤は、樹脂組成物の粘度を調節して作業性を改善したり、硬化反応時に諸架橋または付加重合によって硬化構造物の一部になり得る。
【0036】
本発明において使用できる前記希釈剤の具体例としては、アクリル系単量体、ウレタン系アクリレート系単量体、エポキシアクリレート系単量体およびビニル系単量体などよりなる群から選ばれるいずれか一種以上が挙げられ、これらの中でアクリル系単量体を用いることが好ましく、具体的には、単官能または多官能性アクリレートが使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0037】
前記単官能または多官能性アクリレートとしては、例えば、上述したアクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸アリールエステルと、ポリアルキレングリコールモノメタアクリレートと、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルと、ヘテロシクリックメタアクリレート及び多官能性アクリレートから反応目的に応じて適切に選択することができる。
【0038】
また、前記光重合開始剤としては、本発明の光重合性樹脂組成物に含まれる、この分野において公知の光重合開始剤が特に制限なしに使用でき、例えば、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、アントラキノン系、チオキサントン系、ケタル系およびベンゾフェノン系などの化合物を1種または2種以上併用できる。
【0039】
より具体的に、ベンゾインエーテル系化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルおよびベンゾインフェニルエーテルなどが挙げられ、アセトフェノン系化合物としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0040】
また、アントラキノン系化合物としては、2−メチルアントラキノンおよび2−アミルアントラキノンなどが挙げられ、チオキサントン系化合物としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンおよび1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられ、ケタル系化合物としては、アセトフェノンジメチルケタルおよびベンジルジメチルケタルなどが挙げられ、ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンおよび3,3’,4,4’−テトラ−t−ブチルペルオキシルカニボニルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0041】
さらに、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、キサントン、2−メチル−1−[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−4−モルフォリノフェニル−ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなどが使用できる。
【0042】
さらに、本発明において用いられる光硬化性樹脂は、前記反応性オリゴマー、反応性希釈剤および光重合開始剤に加えて、当該技術分野において公知の種々の添加剤をさらに含むことができ、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルおよび2−ジメチルアミノエチルベンゾエートなどの光重合促進剤または増減剤を含むことができる。
【0043】
本発明において、上記の光重合性樹脂組成物を製造する方法は、特に制限されない。本発明においては、例えば、上述したポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレートまたはシリコンアクリレートなどのオリゴマーを希釈剤、光開始剤などの添加剤と混合して樹脂組成物を製造することができる。なお、本発明において、前記アクリル系高分子量体により樹脂組成物を構成しようとする場合には、例えば、アクリル系高分子量体を構成する単量体および希釈剤として用いられる単量体などを含む単量体混合物をラジカルバルク重合などの方式により部分重合させて、高分子量体および希釈剤が混在された重合物を製造し、ここに光開始剤などのその他の添加剤を配合して樹脂組成物を製造することもできる。
【0044】
また、前記光硬化性樹脂組成物中に含有されている物質の含量が特に制限されることはないが、例えば、前記組成物を光硬化性オリゴマー100重量部に対して、希釈剤10〜4000重量部および光重合開始剤0.1〜5重量部を含んでいてもよい。
【0045】
一方、本発明において、エンボス模様層は、前記光硬化性樹脂組成物を用いて形成した立体的なエンボス模様パターンが形成された層を意味する。この場合、エンボス模様の形状および大きさは、特に制限されるものではなく、離型フィルムの用途に応じて適切に調節することができ、例えば、図1から図4に示す突出部が所定のパターンで形成された形状であってもよい。前記突出部は、離型フィルムの平面上においてドット状またはチャンネル状にパターン化されていてもよい。本発明においては、前記エンボス模様層の突出部の最大高さPが1μm〜20μmであり、底面の幅Wが100μm〜500μmであってもよく、より具体的に、前記突出部は、高さが5μm〜15μmであり、底面の幅が200μm〜400μmであってもよい。
【0046】
図1は、本発明の一実施の形態に係る離型フィルムの断面構造を示す概略図である。
【0047】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る離型フィルム100は、基材フィルム110の上にエンボス模様付きエンボス模様層130が形成されたものであってもよい。
【0048】
一方、本発明に係る離型フィルムは、エンボス模様層の上に形成された離型処理層をさらに備えていてもよい。
【0049】
前記離型処理層は、離型処理のためにエンボス模様層の上に形成され、高い剥離性を有する層であって、例えば、シリコン材料を含んでいてもよい。
【0050】
前記シリコン材料は、特に制限されるものではなく、この分野において公知のシリコン材料をいずれも含んでいてもよいが、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンおよびオルガノハイドロジェンポリシロキサンなどを含むものであってもよい。
【0051】
ここで、前記アルケニル基は、具体的に、ビニル基、プロフェニル基、ブテニル基、ペンテニル基またはヘキセニル基などであってもよく、オルガノポリシロキサンは、具体的に、分子鎖両末端のジメチルビニルシロキシ基が封止されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端のジメチルビニルシロキサン基が封止されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端のジメチルビニルシロキシ基が封止されたジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端のトリメチルシロキシ基が封止されたメチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端のトリメチルシロキシ基が封止されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端のトリメチルシロキシ基が封止されたジメチルシロキサン・メチル5−ヘキセニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端のジメチルビニルシロキシ基が封止されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端のジメチルヒドロキシ基が封止されたメチルビニルポリシロキサンまたは分子鎖両末端のジメチルヒドロキシ基が封止されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体などであってもよい。
【0052】
上記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとして分類されるそれぞれの物質は、離型処理層に単独でまたは2種以上が混合されていてもよい。
【0053】
また、前記シリコン材料は、前記物質に加えて、白金系硬化触媒をさらに含んでいてもよい。前記白金系硬化触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンとの錯物、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯物、塩化白金酸とケトン類との錯物、白金を担持した酸化アルミニウム微粉末、白金を担持したシリカ微粉末または白金黒などが挙げられる。
【0054】
上記の白金系硬化触媒も、離型処理層内に単独でまたは2種以上混合されていてもよい。
【0055】
図2は、本発明の他の実施の形態に係る離型フィルムの断面構造を示す概略図である。図2を参照すれば、本発明の他の実施の形態に係る離型フィルム200は、基材フィルム210およびエンボス模様層230に加えて、前記エンボス模様層230の上に形成された離型処理層250をさらに備えていてもよい。
【0056】
一方で、本発明に係る離型フィルムは、前記基材フィルムとエンボス模様層との間に形成された第1のプライマー層をさらに備えていてもよい。
【0057】
ここで、前記第1のプライマー層は、基材フィルムの上に形成されるエンボス模様層がより一層簡単に貼着可能に滑らかな表面を形成する役割を果たし、その種類は、特に制限されることはないが、例えば、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含むものであってもよい。
【0058】
図3は、本発明のさらに他の実施の形態に係る離型フィルムの断面構造を示す概略図である。図3を参照すれば、本発明のさらに他の実施の形態に係る離型フィルム300は、基材フィルム310と、エンボス模様層330および離型処理層350を備え、前記基材フィルム310およびエンボス模様層330の間に第1のプライマー層370がさらに配設されていてもよい。
【0059】
また、本発明に係る離型フィルムは、基材フィルムの下面に形成される第2のプライマー層をさらに備えていてもよい。
【0060】
前記第2のプライマー層は、基材フィルムの下面を保護する役割を果たし、前記第2のプライマー層の種類も特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂およびポリエステル樹脂よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含むものであってもよい。
【0061】
図4は、本発明のさらに他の実施の形態に係る離型フィルムの断面構造を示す概略図である。図4を参照すれば、本発明のさらに他の実施の形態に係る離型フィルム400は、基材フィルム410と、第1のプライマー層470と、エンボス模様層430および離型処理層450を備え、前記基材フィルム410の下面に第2のプライマー層490がさらに配設されていてもよい。
【0062】
また、本発明は、合成樹脂を含む基材フィルムの上に光硬化性樹脂を用いてエンボス模様パターンを形成する第1のステップと、前記第1のステップにおいて形成されたエンボス模様パターンを硬化させる第2のステップと、を含む離型フィルムの製造方法に関する。
【0063】
前記第1のステップは、上述したように、基材フィルムの上に光硬化性樹脂を用いてエンボス模様パターンを形成するステップである。
【0064】
第1のステップにおいて、エンボス模様は、この分野において公知の種々の塗布方法によって形成可能であり、その種類が特に制限されるものではないが、例えば、ダイレクトグラビアコート、オフセットコートおよびスクリーンコートよりなる群から選ばれるいずれか一種の塗布方法を用いることができ、具体的に、ダイレクトグラビアコート、リバースグラビアコート、グラビアオフセットコート、マイクログラビアコート、シルクスクリーンコート、ロータリスクリーンコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、カーテンロールコート、ナイフコート、エアーナイフコートおよびバーコートなどよりなる群から選ばれるいずれか一種の方式によって行われ、より具体的には、グラビアコートおよびダイレクトロールコートよりなる群から選ばれるいずれか一種の方式によって行われる。
【0065】
一方、前記第2のステップは、前記エンボス模様層に含有されている光硬化性樹脂を硬化させるステップである。
【0066】
すなわち、前記第2のステップは、前記光硬化性樹脂が硬化可能に紫外線などを照射するステップであり、ここで、前記光硬化性樹脂を硬化させるあらゆる光源を備えることができ、前記光源は、特に制限されるものではなく、光硬化条件も特に限定されるものではないが、例えば、前記第2のステップにおいて、光硬化は、エンボス模様パターンに倣って塗布された光硬化性樹脂に300nm〜450nmの波長を有するUV光を0.1〜120秒間照射することにより行われる。
【0067】
以下、図5に基づき、本発明の一実施の形態に係る離型フィルムの製造方法をより具体的に説明する。
【0068】
先ず、基材フィルム110をガイドローラーを用いてエンボス模様パターン付きローラー10の上に通過させつつ、前記ローラーのエンボス模様パターン内に充填されていた光硬化性樹脂を基材フィルム110の上にエンボス模様パターンに倣って塗布する。
【0069】
次いで、前記エンボス模様パターン付き基材フィルム110をローラー10の上に移動させ続けつつ、紫外線照射装置30を用いて紫外線を照射することにより、エンボス模様パターンを硬化させる。
【0070】
これにより、基材フィルム110の上にエンボス模様層130が形成された離型フィルムを製造することができる。
【0071】
但し、これは本発明の一実施の形態に過ぎず、本発明に係る離型フィルムの製造方法が上記の工程に制限されることはない。
【実施例】
【0072】
以下、本発明に従う実施例および本発明に従わない比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例によって制限されるものではない。
【0073】
[製造例1]光硬化性樹脂の製造
メチルメタクリレート50重量部、エチルアクリレート49.8重量部、ヘキサンジオールジアクリレート0.2重量部およびAIBN開始剤0.1重量部を含む単量体混合物を、60℃で1時間バルクラジカル重合して、光硬化性オリゴマーおよび単量体の形態の希釈剤が混在された部分重合物を製造した。前記部分重合物において、光硬化性オリゴマーの含量は10重量部であり、希釈剤の含量は90重量部であった。前記光硬化性オリゴマーの含量は、バルクラジカル重合により得られた部分重合物1gを150℃で60分間乾燥して希釈剤として用いられた単量体成分を揮発させた後に残留する成分の重さを測定して求めた。
【0074】
次いで、前記製造された部分重合物に、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(バスフ社製)を全体固形分100重量部に対して0.5重量部添加して光硬化性樹脂組成物を製造した。
【0075】
[製造例2]シリコン離型処理液の製造
ダウコーニング社製のシルオフQ2−7785100重量部およびシルオフQ2−75603重量部を配合してシリコン離型処理液を製造した。
【0076】
膜厚が75μmであり、アクリル樹脂で表面処理されたPETフィルム(SKC社製、SH22)および凹部の平均深さが5μmであるエンボス模様パターン付きグラビアコートロールを準備した。次いで、前記グラビアコートロールの凹部に前記製造例1に従い製造された光硬化性樹脂組成物を充填し、ガイドローラーを介して前記PETフィルムをグラビアコートロールに移動させた。前記PETフィルムは、グラビアコートロールに押し付けたままで印刷を行い、光硬化樹脂組成物を前記PETフィルムの上に塗布して、エンボス模様パターン付きエンボス模様層を製造した。
【0077】
前記工程と並行して、グラビアコートロールの上部から紫外線水銀ランプを用いて紫外線を照射することによりエンボス模様を硬化させた後、グラビアロールからPETフィルムと硬化済みのエンボス模様層を取り外した。硬化済みのエンボス模様の上に、製造例2に従い製造されたシリコン離型処理液を、10μmの厚さでバーコーターを用いて塗布し、100℃の温度条件下で2分間乾燥した。
【0078】
これにより、実施例1による離型フィルムが製造された。
【0079】
[比較例1]
基材フィルムとしてPETフィルムの代わりに紙を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして比較例1による離型紙を製造した。
【0080】
[試験例]表面粗さの測定
ミツトヨ社製の型番SJ301を用いて、実施例1による離型フィルムと比較例1による離型紙の表面粗さを測定し、その結果を下記表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
上記表1に示すように、比較例1に比べて、実施例1の最大表面粗さ(Rt)および平均表面粗さ(Ra)の値が低いので、離型フィルムの外観を高級感あふれるように実現することができる。
【符号の説明】
【0083】
100 離型フィルム
110 基材フィルム
130 エンボス模様層
200 離型フィルム
210 基材フィルム
230 エンボス模様層
250 離型処理層
300 離型フィルム
310 基材フィルム
330 エンボス模様層
350 離型処理層
370 プライマー層
400 離型フィルム
410 基材フィルム
430 エンボス模様層
470 第1のプライマー層
450 離型処理層
490 第2のプライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂を含む基材フィルムと、前記基材フィルムの上に形成され、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む1以上の突出部が形成されたエンボス模様層と、を備える離型フィルム。
【請求項2】
前記合成樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリウレタンおよびポリエステル系樹脂よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含む請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムは、表面粗さ(Rt)が3μm以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記光硬化性樹脂は、光硬化性オリゴマー、希釈剤および光重合性開始剤を含む請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記光硬化性オリゴマーは、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートおよびシリコンアクリレートよりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含む請求項4に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記突出部は、最大高さが1μm〜20μmであり、底面の幅が100μm〜500μmである請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項7】
エンボス模様層の上に形成されたシリコン離型処理層をさらに備える請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムと前記エンボス模様層との間に形成された第1のプライマー層をさらに備える請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記第1のプライマー層は、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリウレタン樹脂よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を備える請求項8に記載の離型フィルム。
【請求項10】
前記基材フィルムにおける前記エンボス模様層の反対面に形成された第2のプライマー層をさらに備える請求項8に記載の離型フィルム。
【請求項11】
前記第2のプライマー層は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂およびポリエステル樹脂よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含む請求項10に記載の離型フィルム。
【請求項12】
合成樹脂を含む基材フィルムの上に光硬化性樹脂を用いてエンボス模様パターンを形成する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて形成されたエンボス模様パターンを硬化させる第2のステップと、
を含む離型フィルムの製造方法。
【請求項13】
第1のステップにおいて、エンボス模様パターンは、ダイレクトグラビアコート、リバースグラビアコート、グラビアオフセットコート、マイクログラビアコート、シルクスクリーンコート、ロータリスクリーンコート、ナイフコート、バーコートおよびダイレクトロールコートよりなる群から選ばれるいずれか一つの塗布法によって形成される請求項12に記載の離型フィルムの製造方法。
【請求項14】
第2のステップにおいて、硬化は、エンボス模様パターンに300nm〜450nmの波長を有する紫外線を0.1秒〜120秒間照射することにより行われる請求項12に記載の離型フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−514914(P2013−514914A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545867(P2012−545867)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009499
【国際公開番号】WO2011/081446
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(510244710)エルジー・ハウシス・リミテッド (17)
【Fターム(参考)】