説明

離型フィルム

【課題】本発明の課題は、プレスセットの作業性を良好にすることができると共にFPC等の良品率を高めることができる離型フィルムを提供することにある。
【解決手段】本発明に係る離型フィルム100,100Aは、第1離型層110,110aおよびクッション層120を備える。第1離型層は、ポリエステルを主成分とする樹脂から形成される。クッション層は、ポリプロピレン樹脂とエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体とを含有する。そして、このクッション層は、第1離型層の片側に設けられても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開05/030466号パンフレット(特許文献1)には、離型層と追従層(クッション層)を有する離型フィルムの発明が提案されている。このような離型フィルムは、例えば、回路が露出したフレキシブルフィルム(以下「回路露出フィルム」と称する)に接着剤を介してカバーレイフィルム(以下「CLフィルム」と称する)を加熱プレスにより接着してフレキシブルプリント回路基板(以下「FPC」と称する)を作製する際の離型フィルムとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開05/030466号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような離型フィルムは、クッション層の存在により離型フィルムの回路露出フィルムへの埋め込み性が向上するものとなる。しかしながらクッション層に用いる樹脂によっては、クッション層の弾性率が著しく低下するため、加熱プレス中にフィルム端部から軟化したクッション層が流出するという不具合が生じる場合がある。また軟化したクッション層の流出は、プレス熱盤の汚染につながり作業効率が著しく低下する。
【0005】
本発明の課題は、プレス時のクッション層のフィルム端部からの流出によるプレス盤汚染を防ぎ、かつ十分な埋め込み性を得ることができる離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る離型フィルムは、少なくとも第1離型層およびクッション層を備える。第1離型層は、ポリエステル系樹脂(A)を主成分とする樹脂から形成される。クッション層は、ポリプロピレン樹脂(B1)と、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(B2)とを含有する。前記クッション層は、第1離型層の片側に設けられている。
【0007】
前記クッション層中に含有されるポリプロピレン樹脂(B1)とエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(B2)との重量比(B1/B2)はB1/B2=10/90〜30/70であることが好ましい。
【0008】
前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下MFRとする。)[測定方法:JIS K7210、測定条件 加熱温度:230℃、荷重21.18N]は、0.5g/10min以上2.5g/10min以下であることが好ましい。
【0009】
前記エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体はメタアクリル酸メチルから誘導される単位を5重量%以上14重量%含有するものであることが好ましい。
【0010】
前記ポリエステル系樹脂(A)はPBT系樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明の離型フィルムは、前記クッション層形成側の反対側に第2離型層が形成されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の離型フィルムはプレス中にクッション層端面から溶融した樹脂の熱盤への流出量を低減でき、フィルム同士の熱融着を防ぐとともに十分に回路パターンに追従する。その結果、回路露出フィルムへのCLフィルムの接着時に回路露出フィルムとCLフィルムとの間の接着剤が回路パターンへ流出する量が少なくなり、FPCの良品率が高めることができる。
【0013】
またクッション層の第1離型層形成側の反対側に第2離型層を形成すると、回路露出フィルムへのCLフィルムの接着時にクッション層がプレス熱盤に付着することを防止することができる。このため、回路露出フィルムへのCLフィルムの接着工程等に費やされる時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る離型フィルムの縦断面図である。
【図2】変形例(A)に係る離型フィルムの縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る離型フィルムの製造装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る離型フィルムの使用方法の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る離型フィルムを使用してCLフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるときの加熱プレスの加熱パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る離型フィルム100は、図1に示されるように、主に、離型層110およびクッション層120から構成される。なお、本実施の形態において、離型フィルム100の厚みは25〜300μmであるのが好ましい。
以下、これらの層それぞれについて詳述する。
【0016】
<離型層>
離型層110は、ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂から形成される。
【0017】
ポリエステル系樹脂は PET系樹脂、PEN系樹脂、PBT系樹脂等が挙げられる。離型性と埋め込み性の観点からPBT系樹脂が好ましい。PBT系樹脂とはポリブチレンテレフタレート単独重合体もしくは、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体が挙げられる。PBT系樹脂として具体的に入手可能なものとしては、例えば、三菱エンジニアリングプラスチック(株)から商品名ノバデュラン(登録商標)(NOVADURAN(登録商標))として市販されている。本実施の形態において、離型層110の厚みは3μm以上15μm以下であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより良好な離型性を示し、前記上限値以下とすることで良好な埋め込み性を発揮する。
【0018】
離型層には本発明の効果を妨げない範囲でポリエステル系樹脂以外の樹脂を含めることができる。例えば、エラストマー樹脂や、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。なお、これらの樹脂は単独で、または、二種以上を組み合わせて離型層に含めることができる。
【0019】
なお、エラストマー樹脂としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、またはエチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム、もしくはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート−シロキサン等のシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、直鎖状高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ポリブテン、1,2−ポリブタジエン、4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン及びこれらの共重合体(例えば、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体等)等が挙げられる。
【0021】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、高耐衝撃ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、スチレンーメタアクリル酸共重合体、スチレンーメタアクリル酸・アルキルエステル共重合体、スチレンーメタアクリル酸・グリシジルエステル共重合体、スチレンーアクリル酸共重合体、スチレンーアクリル酸・アルキルエステル共重合体、スチレンーマレイン酸共重合体、スチレンーフマル酸共重合体等が挙げられる。
【0022】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン(登録商標)6、ナイロン(登録商標)6,6等が挙げられる。
【0023】
離型層には、各種機能を付与するために各種の添加剤、例えば、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、核剤、帯電防止剤、プロセスオイル、可塑剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、顔料等が配合されてもかまわない。
【0024】
なお、アンチブロッキング剤としては、以下のような無機粒子または有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、IA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩及びそれらの含水化合物、並びにそれらを中心とする複合化合物及び天然鉱物粒子が挙げられる。
【0025】
このような無機粒子の具体的な例としては、フッ化リチウム、ホウ砂(ホウ酸ナトリウム含水塩)等のIA族元素化合物;炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、フッ化カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム等のIIA族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウム等のIVA族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデン等のVIA族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガン等のVIIA族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルト等のVIII族元素化合物;ヨウ化第一銅等のIB族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛等のIIB族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミナシリケート(ケイ酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)等のIIIB族元素化合物;酸化ケイ素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラス等のIVB族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱等の天然鉱物の粒子が挙げられる。
【0026】
有機粒子としては、テフロン(登録商標)、メラミン系樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジンシリコーン及びそれらの架橋体が挙げられる。
【0027】
上述の無機粒子や有機粒子の平均粒径は0.1〜10μmであるのが好ましく、添加量は0.01〜15重量%であるのが好ましい。
【0028】
なお、これらのアンチブロッキング剤は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、2−[(1−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートなどが挙げられる。なお、これらの酸化防止剤は単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
核剤としては、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)等のカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム等のリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等が挙げられる。なお、これらの核剤は単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等が挙げられる。なお、これらの可塑剤は、単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
離型剤としては、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸金属塩等が挙げられる。なお、これらの離型剤は単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
プロセスオイルとしては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイルが挙げられる。なお、これらの中でもn−d−M法で算出されるパラフィン(直鎖)に関わる炭素数の全炭素数に対する百分率が60%Cp以上のパラフィン系オイルが好ましい。
【0034】
プロセスオイルの粘度は、40℃での動粘度が15〜600csであるのが好ましく、15〜500csであるのがさらに好ましい。また、プロセスオイルの添加量は、離型性形成樹脂100重量部に対して0.01〜1.5重量部であるのが好ましく、0.05〜1.4重量部であるのがより好ましく、0.1〜1.3重量部であるのがさらに好ましい。なお、これらのプロセスオイルは、単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
<クッション層>
クッション層120は、ポリプロピレン樹脂(B1)とエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(B2)とを含有する。
【0036】
クッション層中に含有されるポリプロピレン樹脂(B1)とエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(B2)との重量比(B1/B2)は、プレス時のクッション層の流出を抑制させるとともに良好な回路パターンへ追性させるためには、B1/B2=10/90〜30/70とすることが好ましい。
【0037】
ポリプロピレン樹脂(B1)としては、公知のもの即ちホモタイプ、ランダムタイプ、ブロックタイプのポリプロピレン樹脂が使用可能である。
【0038】
またポリプロピレン樹脂(B1)のMFR[測定方法:JIS K7210、測定条件 加熱温度:230℃、荷重:21.18N]は0.5g/10min以上2.5g/10min以下であることが好ましい。前記範囲下限値以上とすることで良好な回路パターンへの追従性を示し、前記範囲上限値以下とすることでクッション層の流出を防ぐ。
【0039】
エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(B2)としては、メタアクリル酸メチルから誘導される単位が5重量%以上14重量%以下を含有するものを用いることが好ましい。メタアクリル酸メチルから誘導される単位が前記範囲下限値以上とすることで良好な回路パターンへの追従性を示し、前記範囲上限値以下とすることでクッション層の端部からの流出を防ぐことができる。
【0040】
<離型フィルムの製造方法>
本実施の形態に係る離型フィルム100は、共押出法や押出ラミネート法等の方法で製造することができる。
【0041】
共押出法では、フィードブロック、マルチマニホールドダイを使用して離型層110とクッション層120とを同時に押し出すことにより離型フィルム100を製造する。なお、共押出法では、ダイス210を通過した融解物Mは、図3に示されるように、第1ロール230に誘導され、第1ロール230から脱離するまでの間に第1ロール230により冷却され、離型フィルム100となる。その後、その離型フィルム100は、第2ロール240によりフィルム送り方向(図3の矢印参照)下流側に送られ、最終的に巻取ロール(図示せず)に巻き取られる。なお、このとき、第1ロール230の温度は30〜100℃であるのが好ましく、第1ロール230に対する第2ロール240の周速比は0.990〜0.998であるのが好ましい。なお、必要に応じて、第1ロール近傍にタッチロールを配設してもかまわない。
【0042】
押出しラミネート法では、押出機シリンダーの温度を225〜250℃に設定して離型層110を押出し、その離型層110をクッション層120と合流させることにより離型性110とクッション層120とを積層して離型フィルム100を製造する。なお、押出しラミネート法では、ダイス210を通過した離型層形成樹脂の融解物Mは、図3に示されるように、第1ロール230に誘導され、第1ロール230から脱離するまでの間に第1ロール230により冷却されて離型層フィルムFとなる。その後、その離型層フィルムFは、第2ロール240によりフィルム送り方向(図3の矢印参照)下流側に送られる。そして、フィルム送り方向下流側に送られた離型層フィルムFに、クッション層120を形成する樹脂ブレンド物の溶融物(図示せず)が合流させられて離型層フィルムFと一体化され、離型フィルム100が製造される。なお、このようにして製造された離型フィルム100は、さらにフィルム送り方向下流側に設けられる巻取ロール(図示せず)に巻き取られる。なお、このときも、第1ロール230の温度は30〜100℃であるのが好ましく、第1ロール230に対する第2ロール240の周速比は0.990〜0.998であるのが好ましい。なお、必要に応じて、第1ロール近傍にタッチロールを配設してもかまわない。
【0043】
<離型フィルムの使用の一例>
本発明の実施の形態に係る離型フィルム100は、回路露出フィルムへのCLフィルム接着時にCLフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにCLフィルムを包むように配置され、回路露出フィルム及びCLフィルムと共にプレス装置により加圧される。具体的には、離型フィルム100は、図4に示されるように、回路露出フィルムとCLフィルムとが接着剤により仮止めされたもの340を、離型層110が対向するように挟み込んだ後、テフロン(登録商標)シート330、ゴムクッション320及びステンレス板310で順次挟み込まれ、熱盤300でプレスされる(図4の白抜矢印参照)。なお、その熱盤300による加熱方法としては、図5に示される通りである。つまり、熱盤300は、加圧を開始してから15分で常温から170℃まで昇温された後、35分間その温度に維持される。その後、熱盤300は、50分かけて170℃から常温まで冷却される。なお、熱盤300による加圧は、0分の時点で開始され、100分の時点で開放される。なお、このときのプレス圧力は、5〜15MPaで適宜調節される。
【0044】
<変形例>
(A)
先の実施の形態では、クッション層120の片側にのみ離型層110が設けられる離型フィルム100が紹介されたが、図2に示されるように、クッション層120の両側に離型層110a,110bが設けられる離型フィルム110Aも本発明の一実施の形態に含まれる。なお、以下、符号110aの離型層を「第1離型層」と称し、符号110bの離型層を「第2離型層」と称する。
【0045】
第1離型層110aは、先の実施の形態に係る離型層110と同一の組成を有する。その一方、第2離型層110bは、第1離型層110aと同一の樹脂組成物を用いてもよいし、第1離型層110aと異なる樹脂組成物を用いてもよい。
【0046】
第2離型層が第1離型層と異なる組成を有するものとする場合に用いられる樹脂としては、離型フィルムの離型層として用いられる公知の樹脂を用いることができ、具体的にはPET樹脂やPBT樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン、1,4メチルペンテン、SPSなどが挙げられる。
【0047】
先の実施の形態に係る離型フィルムの使用の一例では、離型フィルム100と熱盤300との間にテフロン(登録商標)シート330、ゴムクッション320及びステンレス板310で順次挟み込まれていたが、テフロン(登録商標)シート330、ゴムクッション320及びステンレス板310は省かれてもかまわない。
【0048】
(実施例1)
<離型フィルムの製造>
(1)第1離型層の原料
第1離型層の原料として、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体(ポリブチレンテレフタレート構成単位/ポリテトラメチレングリコール構成単位 90重量部/10重量部)(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のノバデュラン(登録商標)5505S)を用いた。
【0049】
(2)クッション層の原料
クッション層の原料としては、ポリプロピレン(住友化学(株)製、ノーブレン(登録商標)FH1016:MFR0.5g/10min、表1においてPP1と示す。)を10重量%、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(メタアクリル酸メチル誘導単位含有量:5重量%、表1においてEMMA1と示す。)(住友化学(株)製、アクリフト(登録商標)WD106)を90重量%用いた。
【0050】
(3)第2離型層の原料
第2離型層の原料として、ポリプロピレン(住友化学(株)製、ノーブレン(登録商標)FS2011DG2)を用いた。
【0051】
(4)接着層の原料
第1離型層とクッション層とを接着する接着層を形成する樹脂として、変性ポリエチレン(三菱化学(株)製、モディック(登録商標)F515A)を用いた。
【0052】
<離型フィルムの作製>
共押出法を利用して、クッション層の表裏に第1離型層および第2離型層を有する離型フィルム(図2参照)を作製した。
【0053】
なお、具体的には、フィードブロック、マルチマニホールドダイを使用してポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体、変性ポリエチレン、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体とポリプロピレンのブレンド品およびポリプロピレンを同時に押し出して離型フィルムを作製した。なお、この際、図3に示される装置を用いたが、第1ロール230の温度は30℃であった。
【0054】
この離型フィルムの第1離型層の厚みは6μmであり、接着層の厚みは10μmであり、クッション層の厚みは94μmであり、第2離型層の厚みは10μmであった。
【0055】
2.CLフィルム接着試験
実際に、CLフィルムが接着剤を介して仮止めされた回路露出フィルムを、第1離型層が回路露出フィルムに対向するように上記離型フィルムで両側から包み込み、熱盤プレスにより図5に示される加熱パターンで加熱プレスした。その結果、回路露出フィルムとCLフィルムとの間の接着剤が回路パターンへ流出した量(以下CL接着剤染み出し量)は、70μmであり、良好な回路パターン追従性を示した。(表1参照)。また、加熱プレス後の離型フィルムの剥離不良も発生せず、良好な結果となった(表1参照)。さらに、フィルム端面からのクッション層の流出も低減され、プレス盤の汚染(以下プレス汚染)および、フィルム同士の熱融着(以下フィルム熱融着)も発生しなかった。なお前記CL接着剤染み出し量が少ないものほど、回路パターンへの追従性を示すものとなる。本試験においては、CL接着剤染み出し量が90μm未満のものを回路パターン追従性に優れるものであり合格とした。一方CL接着剤染み出し量が90μm以上のものを回路パターン追従性に劣るものであり不合格とした。
【0056】
(実施例2)
クッション層の原料としては、ポリプロピレン(住友化学(株)製のノーブレン(登録商標)FH1016:MFR0.5g/10min)30重量%、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(メタアクリル酸メチル誘導単位含有量:5重量%)(住友化学(株)製のアクリフト(登録商標)WD106)70重量%を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムの評価を行った。
【0057】
実施例1と同様の評価をおこなった結果、CL接着剤染み出し量は、70μmであった(表1参照)。また、加熱プレス後の離型フィルムの剥離不良も起こらなかった(表1参照)。さらに、フィルム端面からのクッション層の流出も低減され、プレス盤の汚染および、フィルム同士の熱融着も発生しなかった。
【0058】
(実施例3)
クッション層の原料としては、ポリプロピレン(住友化学(株)製のノーブレン(登録商標)FH1016:MFR0.5g/10min)30重量%、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(メタアクリル酸メチル誘導単位含有量:14重量%、表1においてEMMA2と示す。)(住友化学(株)製のアクリフト(登録商標)CM8033)70重量%を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムの評価を行った。
【0059】
回路露出フィルムとCLフィルムとの間の接着剤が回路パターンへ流出した量は、65μmであり良好な結果となった。また、加熱プレス後の離型フィルムの剥離不良も起こらなかった。(表1参照)。さらに、フィルム端面からの中間層の流出も低減され、プレス盤の汚染および、フィルム同士の熱融着も発生しなかった。
【0060】
(実施例4)
クッション層の原料としては、ポリプロピレン(住友化学(株)製のノーブレン(登録商標)FS2011DG2:MFR2.5g/10min、表1においてPP2と示す。)30重量%、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(メタアクリル酸メチル誘導単位含有量:5重量%)(住友化学(株)製のアクリフト(登録商標)WD106)70重量%を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムの評価を行った。
【0061】
回路露出フィルムとCLフィルムとの間の接着剤が回路パターンへ流出した量は、70μmであった(表1参照)。また、加熱プレス後の離型フィルムの剥離不良も起こらなかった。(表1参照)。さらに、フィルム端面からの中間層の流出も低減され、プレス盤の汚染および、フィルム同士の熱融着も発生していなかった。
【0062】
(比較例1)
クッション層の原料としては、ポリプロピレン(住友化学(株)製のノーブレン(登録商標)FH1016:MFR0.5g/10min)100重量%を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムの評価を行った。
【0063】
加熱プレス後の離型フィルムの剥離不良も起こらず、フィルム端面からの中間層の流出は低減され、プレス盤の汚染およびフィルム同士の熱融着も発生していなかった。しかし回路露出フィルムとCLフィルムとの間の接着剤が回路パターンへ流出した量は、90μmであり回路パターンへの形追従性に劣るものとなる結果となった(表1参照)。
【0064】
(比較例2)
クッション層の原料としては、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(メタアクリル酸メチル誘導単位含有量:5重量%)(住友化学(株)製のアクリフト(登録商標)WD106)100重量%を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その積層フィルムの評価を行った。
【0065】
フィルム端面からのクッション層の流出が多く、プレス盤の汚染および、フィルム同士の熱融着が発生した。なお、回路露出フィルムとCLフィルムとの間の接着剤が回路パターンへ流出した量は、65μmであった。また、加熱プレス後の離型フィルムは、フィルム同士の熱融着が発生したため、剥離不良であった。(表1参照)。
【0066】
(比較例3)
クッション層の原料としては、低密度ポリエチレン(東ソー(株)製のペトロセン173R、表1においてLDPEと示す。)を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その積層フィルムの評価を行った。
なお前記低密度ポリエチレンは、特許文献1の実施例おいて中間層として用いられている樹脂である。
【0067】
フィルム端面からのクッション層の流出が多く、プレス盤の汚染および、フィルム同士の熱融着が発生した。なお、回路露出フィルムとCLフィルムとの間の接着剤が回路パターンへ流出した量は、65μmであった。また、加熱プレス後の離型フィルムは、フィルム同士の熱融着が発生したため、剥離不良であった。(表1参照)。
【0068】
【表1】



【符号の説明】
【0069】
100,100A 離型フィルム
110 離型層(第1離型層)
110a 第1離型層
110b 第2離型層
120 クッション層
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る離型フィルムは、プレスセットの作業性を良好にすることができると共に、FPC等の良品率を高めることができるという特徴を有し、加圧プレスによる回路露出フィルムへのCLフィルム接着時にCLフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにカバーレイフィルムを包むように用いられる離型フィルムとして特に有用である。
【0071】
離型フィルムとしては他に(1)積層板製造時に用いられるもの、(2)先端複合材料製品製造時に用いられるもの、(3)スポーツ・レジャー用品製造時に用いられるものが知られているが、本発明に係る離型フィルムは、これらの離型フィルムとしても有用である。なお、積層板製造時に用いられる離型フィルムとは、多層プリント基板を製造する際のプレス成形において、プリント基板とセパレータープレート又は他のプリント基板との間の接着を防止するためにそれらの間に介在させるフィルムである。また、先端複合材料製品製造時に用いられる離型フィルムとは、例えば、ガラスクロス,炭素繊維又はアラミド繊維とエポキシ樹脂からなるプリプレグを硬化させて種々の製品を製造する際に用いられるフィルムである。また、スポーツ・レジャー用品製造時に用いられる離型フィルムとは、例えば、釣り竿、ゴルフクラブのシャフト、ウィンドサーフィンのポール等の製造において、プリプレグを円筒状に巻いてオートクレーブ中で硬化させる際にそのプリプレグの上に巻かれるフィルムである。
【0072】
この離型フィルムは、その他、粘着テープ、両面テープ、マスキングテープ、ラベル、シール、ステッカー、皮膚貼付用湿布剤等の剥離フィルムとしても有用である。
【0073】
この離型フィルムは、プリント回路基板やセラミックス電子部品、熱硬化性樹脂製品、化粧板等の製造時に用いられる工程フィルムとしても有用である。なお、ここにいう工程フィルムとは、プリント基板やセラミックス電子部品、熱硬化性樹脂製品、化粧板等を製造する時、金属板同士や樹脂同士が接着してしまわないように、成形工程時に該金属板同士の間や樹脂同士の間に挟み込まれるフィルムをいい、特に積層板製造時、フレキシブルプリント基板製造時、先端複合材料製品製造時、スポーツ・レジャー用品製造時に好適に用いられるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリエステル系樹脂(A)を主成分とする樹脂から形成される第1離型層並びに、樹脂成分としてポリプロピレン樹脂(B1)およびエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(B2)を含有し、前記第1離型層の片側に設けられるクッション層を備える離型フィルム。
【請求項2】
前記クッション層中に含有されるポリプロピレン樹脂(B1)とエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(B2)との重量比(B1/B2)がB1/B2=10/90〜30/70である請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート[JIS K7210 加熱温度 230℃、荷重21.18N]が0.5g/10min以上2.5g/10min以下である請求項1または2記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(B2)はメタアクリル酸メチルから誘導される単位が5重量%以上14重量%含有されるものである請求項1〜3に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記ポリエステル系樹脂(A)がPBT系樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記クッション層の第1離型層形成側の反対側に形成される第2離型層をさらに備える請求項1に記載の離型フィルム。




























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−135935(P2012−135935A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289441(P2010−289441)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】