説明

難燃性の硬化性成形材料

【課題】難燃性の硬化性成形材料を提供する。
【解決手段】本発明は、硬化性成形材料用のハロゲン−フリー防炎剤、硬化性成形材料の難燃処理のためのかかる防炎剤の使用、ハロゲン−フリーの難燃性の硬化性成形材料の製造方法、およびハロゲン−フリーの難燃性の硬化性成形材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性成形材料用のハロゲン−フリー防炎剤、硬化性成形材料の難燃処理のためのかかる防炎材料の使用、ハロゲン−フリーの難燃性の硬化性成形材料の製造方法、およびハロゲン−フリーの難燃性の硬化性成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂またはポリウレタンをベースとする硬化性成形材料は、ガラス繊維で強化されてもよいコーティング、半仕上げ製品および部品の製造のために使用される。硬化製品は、それらの良好な機械的特性、それらの低い密度、化学薬品に対する十分な耐性およびそれらの優れた表面品質を特徴とする。それらは、これらの特性および有利な価格により、鉄道車両、建築業および航空機産業の分野での用途で金属材料に徐々に取って代わってきている。
【0003】
使用のそれぞれの分野に応じて、硬化性成形材料およびそれらから製造され得る硬化製品は、機械的、電気的および防炎特性に関する様々な要件を満たさなければならない。
【0004】
建築材料、部品および材料の防炎要件は広範囲に及ぶ。このように、例えば、建築材料および部品はDIN 4102に従って、電気機器用の部品はUL 94またはIEC−60695−2に従って、そして鉄道車両用の部品はDIN 5510に従って分類されてもよく、それらの使用のために適切な難燃処理を施されてもよい。特別な要件が、例えば、航空機(例えばFAR 25.853)または船舶(例えばIMO A.652(16))の処理に対して設定されている。多数の試験および要件の概説は、例えば、(非特許文献1)に記載されている。
【0005】
加えて、防炎要件はますます厳しくなりつつある。このように、例えば、既存の国家試験標準に置き換わることを意図される新たな欧州標準は、実質的により高い防炎要件を設定している。このように、SBI試験(EN 13823)は、例えば、燃焼挙動のみならず、煙密度が考慮されるよう要求している。鉄道車両に対して提案された新標準(prEN 45545)は、例えば、ヒューム密度およびヒューム毒性を考慮している。とりわけ、ヒューム中のハロゲン化水素濃度の測定によってしばしば決定される、ヒューム毒性に関する要件は、例えば、十分に試行されたハロゲン含有防炎剤の使用を不可能にするかもしれない。使用の多くの分野について、これは、十分に試行された、機能する防炎処理が標準に沿って新要件を満たすように修正されなければならないことを意味する。
【0006】
例えば、不飽和ポリエステル樹脂は臭素−または塩素−含有酸またはアルコール成分を使用することによって難燃性にされ得ることが知られている。これらの例は、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(HET酸)、テトラブロモフタル酸またはジブロモネオペンチルグリコールである。エポキシ樹脂のケースでは、難燃性は、先行技術に従って一般にアルコール成分としてテトラブロモビスフェノールAの組み入れによって達成される。三酸化アンチモンが相乗剤としてしばしば使用される。かかる臭素−または塩素−含有樹脂の欠点は、電子部品への、例えばリレーへのかなりの損傷につながるかもしれない腐食性ガスの形成を火がもたらすことである。別の実質的な欠点は、ポリ塩素化またはポリ臭素化ジベンゾダイオキシンおよびジベンゾフランが不都合な条件下に生じるかもしれないことである。アンチモン含有添加剤は毒性学的理由で望ましくない。
【0007】
それ故、難燃性最終製品を与えるために次に加工することができるハロゲン−フリーの難燃性の硬化性成形材料がさらに必要とされている。
【0008】
先行技術、例えば、(非特許文献2)は、不飽和ポリエステル樹脂を含む成形材料が、例えば、水酸化アルミニウムなどのフィラーで処理されることを開示している。比較的高温での水酸化アルミニウムからの水の除去によって、幾らかの難燃性がそれにより得られる。100部の不飽和ポリエステル樹脂当たり150〜400部の水酸化アルミニウムという非常に高いフィラー含有率のケースでは、自己消火および低いヒューム密度をそのとき達成することができる。総材料の高い比重および機械的特性の低下は、かかるシステムのケースでは不利である。高いフィラー含有率はまた材料の光透過率を低下させる。これは、例えば、ドームライトなどの幾つかの部品にとって不利である。防炎剤として水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを含む、かかる未硬化の不飽和ポリエステル樹脂の高い粘度のため、該樹脂が吹き付けまたは含浸のために使用される場合に処理が困難である。さらに、注入法は、かかる調合物で用いることができない。
【0009】
上述の注入法は、ガラス繊維強化材が2つの堅い金型半分の間に置かれ、そして金型半分が閉じられた後に冷硬化性反応材料がガラス繊維強化材で部分的に満たされた空洞中へ注入されることを特徴とする。当然ながら、ポンプ送液できるまたは流動性を有する不飽和ポリエステル樹脂混合物(反応材料のような)がこの目的にために必要とされる。
【0010】
最近では、スチレン不溶性バインダーを含む織物ガラスマットが強化材料として主に使用される。単位面積当たり異なる重量を有する連続マットおよび織布もまた好適である。
【0011】
比較的低いフィラー含有率を有するハロゲン−フリーの難燃性不飽和ポリエステル樹脂を得るために、水酸化アルミニウムを他の防炎剤で部分的にまたは完全に置き換えることができる。(特許文献1)は、水酸化アルミニウムとアルキルホスフェートとの組み合わせを開示している。(特許文献2)は、水酸化アルミニウムとアンモニウムポリホスフェートとの組み合わせを記載している。(特許文献3)によれば、水酸化アルミニウムと1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンとの混合物が難燃性不飽和ポリエステル樹脂の製造に好適である。不飽和ポリエステル樹脂用の防炎剤としての赤リンの使用は、例えば、(特許文献4)から公知である。自然発火する赤リンの困難な処理、毒性ホスフィンを形成するその傾向およびその固有の赤色が不利である。
【0012】
しかしながら、すべての上述の不飽和ポリエステル樹脂およびそれらの製造について記載された方法には、それらが依然として非常に高いフィラー含有率を有し、それ故工業的に広く用いられる注入法を用いて所望の製品を与えるために金型成形することができないという考慮すべき欠点がある。水酸化アルミニウムと他の防炎剤または他の防炎システムとの今までに知られているすべての組み合わせは、この方法によって、処理できるとしても、辛うじて処理できるにすぎない。
【0013】
(特許文献5)は、不飽和ポリエステル樹脂用の防炎剤として膨張性グラファイトを提案している。所望の難燃性をここでは非常に低いフィラー含有率で達成することができるが、この解決策は依然として特別な用途に限定されている。慣例の固体防炎剤と比べると極めて大きい膨張グラファイト粒子は、注入、スプレーまたは含浸法による処理を複雑にするかまたは妨げる。膨張性グラファイトの黒い固有色もまた不利である。
【0014】
(特許文献6)は、ハロゲン−フリーの不飽和ポリエステル樹脂用の防炎剤として、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンとリン含有添加剤、例えば、エチレンジアミンホスフェートとの組み合わせを記載している。総樹脂調剤を基準として、15重量%、好ましくは20重量%が1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンの最低有効量と記載されている。(特許文献6)についての実施例では、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンの最低量は20重量%である。
【0015】
(特許文献7)および(特許文献8)は、防炎剤としてホスフィン酸塩と相乗剤との組み合わせを含有する、例えば不飽和ポリエステル樹脂をまたはエポキシ樹脂をベースとする、難燃性の熱硬化性プラスチック材料を権利請求している。ホスフィン酸塩は、最大300℃超の高い熱安定性を特徴とする。それらはそれ故、例えば、ポリアミドの難燃処理に使用される。ホスフィン酸塩の製造は、低原子価リン化合物の取り扱いのため特別な安全対策を用いて実施されなければならない複雑な多段合成を必要とする。特別な熱安定性が必要ではないので、これに関連した多大な技術的努力および高コストは、不飽和ポリエステル樹脂での使用に見合わない。(特許文献9)または(特許文献8)による硬化性成形材料はそれ故、低コストというその上述の利点を失うであろう。
【特許文献1】米国特許第3,909,484号明細書
【特許文献2】EP−A 0 308 699
【特許文献3】DE−A 2 159 757
【特許文献4】EP−A 0 848 035
【特許文献5】カナダ国特許2,334,274号明細書
【特許文献6】国際公開第97/31056号パンフレット
【特許文献7】EP−A 1 403 309
【特許文献8】EP−A 1 403 310
【特許文献9】EP−A 1 403 309
【非特許文献1】ジュルゲン トロイツシュ(Juergen Troitzsch)著、「プラスチック可燃性ハンドブック(Plastics Flammability Handbook)」、ミュンヘン(Munich)、Carl Hanser Verlag社、2004年
【非特許文献2】ベッカー/ブラウン(Becker/Braun)著、「Kunststoff Handbuch Duroplaste[プラスチック・ハンドブック熱硬化性プラスチック(Plastics Handbook Thermosetting Plastics]、ミュンヘン、ウィーン(Vienna)、Carl Hanser Verlag社、1988年、第10巻、180ページ、291ページ、314および326ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
それ故、最終製品を得るためのさらなる加工時に、低フィラー含有率のケースでさえも、特に全体成形材料を基準として15重量%未満のフィラー含有率で、様々な分野で適用できる防炎標準を満たすハロゲン−フリーの難燃性の硬化性成形材料を提供することが本発明の目的である。加えて、難燃性の硬化性成形材料は、スプレー、含浸および注入法によってそれらをさらに加工する可能性を提供すべきである。例えば、成形材料粘度の増加または硬化成形材料の機械的特性の劣化などの、特に、固体防炎剤の使用から生じる成形材料および材料への影響は、できるだけ小さく保たれるべきである。最終的には、経済的であり、かつ、入手するのが技術的に簡単である原材料を用いて前記目標を達成することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
極めて低いフィラー含有率を有するハロゲン−フリーの難燃性の硬化性成形材料は、エチレンジアミンホスフェートと少なくとも2つのさらなる添加剤との組み合わせが防炎剤として使用される場合に製造できることが意外なことにも分かった。
【0018】
本発明は、エチレンジアミンホスフェートと少なくとも1つのハロゲン−フリー・リン化合物および少なくとも1つのハロゲン−フリー窒素化合物との組み合わせであることを特徴とする硬化性成形材料用のハロゲン−フリー防炎剤に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
用語「ハロゲン−フリー」は、その分子中に原子フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が存在しない化合物を意味する。本発明による防炎剤は好ましくは工業用原材料から製造される。これらの工業用原材料は、それらの製造の結果として、しかし総防炎剤を基準にして1000ppm以下のハロゲン含有不純物を含有するかもしれない。
【0020】
本発明によれば、エチレンジアミンホスフェートは、エチレンジアミンとオルトリン酸との中和生成物を意味すると理解される。それは、例えば、EP−A 0 104 350に記載されているように成分から非常に容易に製造することができ、商業的に入手可能である。
【0021】
0.1μm〜1000μmの、特に好ましくは0.5μm〜250μmの粒度を有するエチレンジアミンホスフェートが好ましくは使用される。
【0022】
ハロゲン−フリー・リン化合物は好ましくは、ホスフィンオキシド、有機置換ホスフィン酸のエステルもしくは塩、有機置換ホスホン酸のエステルもしくは塩、亜リン酸のエステルもしくは塩またはオルト−、ピロ−もしくはポリリン酸のエステルもしくは塩からなる群から選択された化合物である。ハロゲン−フリー・リン化合物は、分子当たり1、2もしくはそれ以上のリン原子を有してもよい。
【0023】
ハロゲン−フリー・リン化合物は好ましくはジメチルメタンホスホネート、ジエチルエタンホスホネート、ジメチルプロパンホスホネート、ジメチルブタンホスホネート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソプロピル化アリールホスフェートの混合物、第三ブチル化アリールホスフェートの混合物、テトラフェニルレゾルシノールジホスフェートまたはテトラフェニルビスフェノールAジホスフェート、ジエチルホスフィン酸の、モノメチルメタンホスホネートのまたはモノメチルプロパンホスホネートのカルシウム、アルミニウム、または亜鉛塩である。これらの物質の任意の所望の混合物を使用することもまた可能である。これらの物質はすべて公知方法によって容易に製造することができおよび/または商業的に入手可能である。
【0024】
ハロゲン−フリー・リン化合物は好ましくは、20℃で10,000mPa.s未満の粘度を有する液体であり、特に好ましくは粘度は20℃で1000mPa.s未満である。
【0025】
ハロゲン−フリー窒素化合物は、ウレア、ウレアシアヌレート、グアニジン、アラントイン、グリコウリル(glycouril)、ジシアンジアミド、シアヌル酸もしくはその誘導体、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、イソシアヌル酸もしくはその誘導体、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンシアヌレート、メレム(melem)、メラム(melam)、メロン(melon)、アンモニウムホスフェート、アンモニウムポリホスフェート、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンホスフェートおよび1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンポリホスフェートからなる群から選択された化合物である。これらの物質はすべて容易に商業的に入手可能である。
【0026】
ハロゲン−フリー窒素化合物は好ましくは1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンである。
【0027】
本発明による防炎剤は好ましくは、100質量部の防炎剤当たり1〜98質量部のエチレンジアミンホスフェート、1〜98質量部のハロゲン−フリー・リン化合物および1〜98質量部のハロゲン−フリー窒素化合物を含有する。加えて、防炎剤はさらなる物質、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムまたはホウ酸もしくはその塩を含有してもよい。
【0028】
本発明はまた、硬化性成形材料の難燃処理のための少なくとも1つのハロゲン−フリー・リン化合物および少なくとも1つのハロゲン−フリー窒素化合物と組み合わせてエチレンジアミンホスフェートを含有する防炎剤の使用、ならびに硬化によってそれらから製造され得る成形品、ラミネートまたはコーティングに関する。
【0029】
成形品、ラミネートまたはコーティングは好ましくはガラス繊維で強化される。
【0030】
本発明はまた、硬化性成形材料の製造用の公知原材料がエチレンジアミンホスフェートと少なくとも1つのハロゲン−フリー・リン化合物および少なくとも1つのハロゲン−フリー窒素化合物との組み合わせからなる防炎剤と混合されることを特徴とする、ハロゲン−フリーおよび難燃性の硬化性成形材料の製造方法に関する。防炎成分の組み合わせは、個々にかまたは任意の所望の混合物の形態で使用することができる。
【0031】
本発明による方法では、100質量部の硬化性成形材料当たり、好ましくは1〜100質量部のエチレンジアミンホスフェート、1〜20質量部のハロゲン−フリー・リン化合物および1〜50質量部のハロゲン−フリー窒素化合物が使用される。
【0032】
特に好ましくは、100質量部の硬化性成形材料当たり、5〜50質量部のエチレンジアミンホスフェート、1〜10質量部のハロゲン−フリー・リン化合物および5〜30質量部のハロゲン−フリー窒素化合物が使用される。
【0033】
本発明はまた、防炎剤としてエチレンジアミンホスフェートと少なくとも1つのハロゲン−フリー・リン化合物および少なくとも1つのハロゲン−フリー窒素化合物との組み合わせを含有することを特徴とするハロゲン−フリーの難燃性の硬化性成形材料に関する。
【0034】
好ましくは、硬化性成形材料は、100質量部の硬化性成形材料当たり1〜100質量部のエチレンジアミンホスフェート、1〜20質量部のハロゲン−フリー・リン化合物および1〜50質量部のハロゲン−フリー窒素化合物を含有する。
【0035】
特に好ましくは、硬化性成形材料は、100質量部の硬化性成形材料当たり5〜50質量部のエチレンジアミンホスフェート、1〜10質量部のハロゲン−フリー・リン化合物および5〜30質量部のハロゲン−フリー窒素化合物を含有する。
【0036】
前記防炎剤に加えて、本発明による成形材料は、顔料、安定剤、インヒビター、反応性希釈剤、架橋剤、加工助剤、滑剤、剥離組成物、離型組成物、導電性添加剤、ガラス繊維、カーボンファイバー、合成繊維または増粘剤などの、さらなる構成成分を含有してもよい。
【0037】
本発明の特に好ましい実施形態では、硬化性成形材料は不飽和ポリエステル樹脂である。
【0038】
不飽和ポリエステル樹脂は、飽和酸および不飽和ジカルボン酸またはそれらの酸無水物とジオールとの重縮合物である。不飽和ポリエステル樹脂は、スチレン、メチルメタクリレート、ジアリルフタレートおよび類似のビニル化合物などのモノマーでのフリーラジカル重合によって硬化させられる。硬化は、例えば、過酸化物などの開始剤、および硬化促進剤によって制御される。ポリエステル鎖中の二重結合は共重合性の溶解力のあるモノマーの二重結合と反応する。
【0039】
最も重要なジカルボン酸または酸無水物は無水マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸およびテレフタル酸である。最もよく使用されるジオールは1,2−プロパンジオールである。加えて、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールを使用することもまた可能である。スチレンは架橋のためのモノマーとして最も広く使用される。それは不飽和ポリエステル樹脂と無限に混和性であり、容易に重合することができ、不飽和ポリエステル樹脂のスチレン含有率は通常25〜40重量%である。
【0040】
不飽和ポリエステル樹脂をベースとする硬化性成形材料は、軽量板、表面要素およびスイミングプールの製造のためにおよびシーリング材料、コーティングおよび修理モルタルとして建設業界で;飲料、灯油、化学薬品、化学肥料、食品および飼料用の容器の、ならびに化学器具、廃水パイプおよび冷却塔の製造のために一般産業で;ケーブル配線およびスイッチキャビネット、照明カバー、多点連結器、スイッチカバーなどのために電気産業で;キャラバンおよび冷凍トラック用の上部構造物のために、バンパー、貨物容器、シートシェルなどの製造のために輸送部門で;スポーツおよび救助ボート、漁船、救命ブイおよび救命筏の建造のためのボートおよび船舶建造で;非常に広範囲の造形品(装置ハウジング、椅子、ベンチ、交通標識、ヘッドプレートなど)の製造のために使用される。
【0041】
本発明のさらなる、特に好ましい実施形態では、硬化性成形材料はエポキシ樹脂である。
【0042】
分子当たり2つ以上のエポキシド基を有するオリゴマー化合物はエポキシ樹脂と称される。熱硬化プラスチックへのエポキシ樹脂の転化は、例えば、ポリアミンもしくはジシアンジアミドなどの、好適な硬化剤での重付加反応によって、またはエポキシド基による重合によって達成される。主な割合のエポキシ樹脂は、400〜10,000g/モルのモル質量を有するオリゴマーの形成と共にビスフェノールAをアルカリ性媒体中でエピクロロヒドリンと反応させることによって製造される。低モル質量を有するエポキシ樹脂は自由流動ないし粘稠であるが、高モル質量を有するものは固体である。分子当たりのエポキシド基およびヒドロキシル基の数に依存して、エポキシ樹脂は、2成分システムの冷硬化、エナメルまたは粉末コートに焼き付けを施すために処理することができる。
【0043】
エポキシ樹脂をベースとする硬化性成形材料は、モーターおよび絶縁体用の部品の製造のために電気産業で、工具製作で、プラスチック、金属およびコンクリート要素用の接着剤だけでなく、仕上げ、コーティングおよびカバリングのために建設業で注型用樹脂として、ならびに航空機および車両建造のためラミネートして使用される。エポキシ樹脂はまた、例えば、灯油および燃料用のタンクおよび容器の外部および内部コーティングとしても使用され、そして、例えば、パイプライン、接続金具およびデバイスの保護コーティングとして、ならびに床および壁をコーティングするために好適である。
【0044】
本発明は、それによって本発明を限定するいかなる意図もなしに、下記の実施例に関してより詳細に説明される。
[実施例]
【0045】
試験検体の製造
試験検体は、規定された比で、表1に述べる原材料から製造する。先ず、液体および固体防炎剤を樹脂へ撹拌しながら入れる。すべての成分を次に十分に分散させる。その後、過酸化物および触媒を引き続いて撹拌しながら入れ、分散させる。直ちに反応性の混合物を、その中で材料を硬化させることができる金型へ注ぎ込む。混合物および金型の温度は、十分なポットライフが使用のために利用可能であるが原料が沈降し得るほど得られるポットライフが長くないように選択されるべきである。24時間後に、金型をオーブン中80℃で8時間ポスト硬化させる。
【0046】
燃焼挙動の試験
離型後に、試験検体をUL94(部品およびデバイス用のプラスチック材料の可燃性についての標準試験)に従ってそれら燃焼挙動に関して試験する。この目的のために、約125×13×3.5mmの寸法を有する試験検体をホルダーに垂直に固定し、小さなバーナーの火炎を引き続き2回当てる。一調合物からの一連の5試験検体での後燃焼時間の合計が50秒未満である場合、試験検体は火炎の除去後10秒より多くは全く燃え続けず、試験検体は燃焼中の粒子を全く垂らさず、調合物はクラスV−0に割り当てられる。
【0047】
表1の調合物構成成分の規定量は重量部であり、防炎剤の含有率は、総硬化性成形材料を基準とする重量パーセントとして記載する。その中に記載されるすべての調合物は、UL94によるクラスV−0を達成する。
【0048】
【表1】

【0049】
結果
表1は、必要とされる難燃性(UL94によるクラスV−0)を達成するために必要である防炎剤の含有率を示す。水酸化アルミニウムを用いて、固形分含有率の低下は、液体リン化合物ジメチルプロパンホスホネートの割合を増やすことによって達成することができる(比較例6および7)が、固形分含有率を15%未満に下げることはできない。水酸化アルミニウムをより有効な防炎剤防炎剤1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンシアヌレートまたはアルミニウムモノメチルプロパンホスホネートで置き換えることによって、防炎剤の総含有率を下げることは可能であるが、固形分含有率をそれによって下げることはできない(比較例4および5)。1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンと国際公開第97/31056号パンフレットに開示されたリン化合物との組み合わせのケースでさえも、改良は全く観察できない(比較例3)。これは、固体防炎剤の量が難燃性を犠牲にすることなく国際公開第97/31056号パンフレットに記載された15%の最小量未満に落とすことができないことを裏付ける。
【0050】
意外なことに、エチレンジアミンホスフェートと1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンおよびジメチルプロパンホスホネートとの組み合わせは、すべての他の調合物と比較して特別な有効性を示す(実施例1および2)。固体防炎剤の量はこれらのケースでは15%未満に下げることができるが、ここでもまた液体リン化合物の割合は比較例でのものより高くない。
【0051】
それらの低い固形分含有率のために、本発明による防染剤は、低粘度が硬化性成形材料の加工で必要とされ、そして良好な難燃性、高い機械的価値、低密度および良好な光透過率が硬化樹脂のケースで必要とされる場合に特に好適である。それらはハロゲン−フリーであるので、先行技術で開示されたハロゲン含有成形材料の欠点が回避される。工業的に容易に入手可能な、かつ、経済的な原材料を使用することによって、硬化性成形材料の経済的利点は保持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンジアミンホスフェートと少なくとも1つのハロゲン−フリー・リン化合物および少なくとも1つのハロゲン−フリー窒素化合物との組み合わせを含有することを特徴とする硬化性成形材料用の防炎剤。
【請求項2】
前記ハロゲン−フリー・リン化合物がジメチルメタンホスホネート、ジエチルエタンホスホネート、ジメチルプロパンホスホネート、ジメチルブタンホスホネート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソプロピル化アリールホスフェートの混合物、第三ブチル化アリールホスフェートの混合物、テトラフェニルレゾルシノールジホスフェートまたはテトラフェニルビスフェノールAジホスフェート、ジエチルホスフィン酸の、モノメチルメタンホスホネートのまたはモノメチルプロパンホスホネートのカルシウム、アルミニウムまたは亜鉛塩であることを特徴とする請求項1に記載の防炎剤。
【請求項3】
前記ハロゲン−フリー窒素化合物がウレア、ウレアシアヌレート、グアニジン、アラントイン、グリコウリル、ジシアンジアミド、シアヌル酸もしくはその誘導体、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、イソシアヌル酸もしくはその誘導体、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンシアヌレート、メレム、メラム、メロン、アンモニウムホスフェート、アンモニウムポリホスフェート、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンホスフェートまたは1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンポリホスフェートであることを特徴とする請求項1または2に記載の防炎剤。
【請求項4】
前記ハロゲン−フリー・リン化合物がジメチルメタンホスホネート、ジエチルエタンホスホネートまたはジメチルプロパンホスホネートであり、そして前記ハロゲン−フリー窒素化合物が1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンホスフェート、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンポリホスフェートまたは1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンシアヌレートであることを特徴とする請求項1に記載の防炎剤。
【請求項5】
硬化性成形材料の難燃処理のためのエチレンジアミンホスフェートと少なくとも1つのハロゲン−フリー・リン化合物および少なくとも1つのハロゲン−フリー窒素化合物とを含有する防炎剤の使用ならびにそれらから硬化によって製造することができる成形品、ラミネート、またはコーティング。
【請求項6】
硬化性成形材料の製造用の公知原材料がエチレンジアミンホスフェート、少なくとも1つのハロゲン−フリー・リン化合物および少なくとも1つのハロゲン−フリー窒素化合物の組み合わせからなる防炎剤と混合されることを特徴とするハロゲン−フリーおよび難燃性の硬化性成形材料の製造方法。
【請求項7】
防炎剤としてエチレンジアミンホスフェート、少なくとも1つのハロゲン−フリー・リン化合物および少なくとも1つのハロゲン−フリー窒素化合物の組み合わせを含有することを特徴とするハロゲン−フリーおよび難燃性の硬化性成形材料。
【請求項8】
不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項7に記載の成形材料。
【請求項9】
エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項7に記載の成形材料。
【請求項10】
前記ハロゲン−フリー・リン化合物がジメチルメタンホスホネート、ジエチルエタンホスホネート、またはジメチルプロパンホスホネートであり、そして前記ハロゲン−フリー窒素化合物が1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンホスフェート、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンポリホスフェートまたは1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンイソシアヌレートであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の成形材料。
【請求項11】
100質量部の成形材料当たり1〜100質量部のエチレンジアミンホスフェート、1〜20質量部のハロゲン−フリー・リン化合物および1〜50質量部のハロゲン−フリー窒素化合物を含有することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の成形材料。
【請求項12】
100質量部の成形材料当たり5〜50質量部のエチレンジアミンホスフェート、1〜10質量部のハロゲン−フリー・リン化合物および5〜30質量部のハロゲン−フリー窒素化合物を含有することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の成形材料。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか一項に記載の硬化性成形材料から製造されたことを特徴とする成形品、ラミネートまたはコーティング。
【請求項14】
ガラス繊維で強化されていることを特徴とする請求項13に記載の成形品、ラミネートまたはコーティング。

【公開番号】特開2008−101212(P2008−101212A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273035(P2007−273035)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】